JPH11269063A - マトリックス型徐放性製剤の製法 - Google Patents

マトリックス型徐放性製剤の製法

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JPH11269063A
JPH11269063A JP9385998A JP9385998A JPH11269063A JP H11269063 A JPH11269063 A JP H11269063A JP 9385998 A JP9385998 A JP 9385998A JP 9385998 A JP9385998 A JP 9385998A JP H11269063 A JPH11269063 A JP H11269063A
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drug
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methacrylate
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JP9385998A
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Masayuki Kuzutani
昌之 葛谷
Shinichi Kondo
伸一 近藤
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Eisai Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 メカノケミカル反応による乾式マトリッ
クス型徐放性製剤の製法を提供する。 【解決手段】 無酸素条件下で、高分子化合物に機械的
なエネルギーを加えて該高分子化合物の主鎖を切断して
メカノラジカルを持つ高分子化合物を生成させ、無酸素
条件下で該高分子化合物と薬物とを混合粉砕するか、或
いは無酸素条件下で前記メカノラジカルを持つ高分子化
合物とビニルモノマーと薬物とを混合粉砕することより
成るメカノケミカル反応によるマトリックス型徐放性製
剤の製法である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、メカノケミカル反
応による乾式マトリックス型徐放性製剤の製法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】薬物の生体内挙動を厳重に制御すること
を目的とした薬物治療の理想である薬物送達システム
(Drug Delivery System:DDS)は、国内外を問わず医薬
品の開発研究のなかでも最も活発な研究分野の一つであ
る。このDDS の基本設計の代表的なものとして、リザー
バー型とモノリティック(マトリックス)型の徐放性固
体性製剤とがある。前者の薬物放出の速度定数は、外層
の網目構造の大きさとその均一性によって定まるため、
網目の形成方法としてどのような技術を選択し、工夫す
るかが問題となる。また、後者では基剤として種々の高
分子化合物が利用されており、大きく分けてタイプ1の
ような高分子基剤が不溶性のものと、タイプ2のような
可溶性のものがあり、マトリックス型DDS からの薬物放
出性は基剤の溶解性、吸水性(膨潤度)に強く依存する
ことが知られている。したがって、基幹高分子化合物を
化学修飾し、その物理化学的性質を変えることにより、
薬物放出制御が可能になると期待される。
【0003】ところで、高分子化合物は近年、DDS にお
けるマトリックス基剤だけでなく、医薬学の場で広く用
いられている。中でも、生体適合性、医用機能性を有す
る多くの医用高分子化合物が、人工臓器、医療用品、検
査用品などの材料や歯科材料として、広く用いられてお
り、薬剤・製剤の面でも種々の医用高分子化合物が製剤
添加物、包装材料、高分子医薬などとして使用されてい
る。また、高分子化合物それ自身は薬理活性をもたない
が、これに薬理活性を持つ低分子化合物を何らかの方法
で結合または複合することにより治療効果を高めようと
する考え方が最近盛んになってきている。これらの高分
子化合物は「高分子ドラッグキャリヤー」と呼ばれてい
る。キャリヤーとして具備すべき条件としては、用いる
薬剤の種類、投与方法、標的部位などによって異なる
が、主なものを挙げると次のようになる。
【0004】1)原則的には生分解性であること(生分
解性でなくても、少なくとも貯蓄性がないこと)。 2)代謝産物も含めて毒性や抗原性を持たないこと。 3)投与後も必要な時間は安定であること。 4)薬剤や細胞特異性素子を結合させうる官能基やスペ
ーサーを備えていること。 5)適切な分子サイズのものが得られること。 このような条件を満たす高分子化合物が高分子キャリヤ
ーとして利用される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明者等は、かねて
より各種プラズマ照射高分子表面に生成する固相ラジカ
ルの電子スピン共鳴(Electron Spin Resonance: ESR)
スペクトル研究およびプラズマ照射高分子を利用する新
規な乾式DDS の構築に関する研究をしている。一方、あ
る種の高分子化合物は機械的エネルギーにより、いわゆ
るメカノラジカルを生成することが知られているが、従
来のそれらの研究は低温(77K)、かつ、長時間の粉
砕による特殊条件下での基礎的研究であった。また、薬
学領域に限らず粉砕自身の集合体物性変化についての報
告例は多数あるが、国内外を問わず粉砕操作が通常行わ
れる室温下におけるメカノラジカル生成に関心をはらっ
た研究はこれまでに行われていなかった。
【0006】本発明者等は、プラズマ照射高分子ラジカ
ルの構造決定のための相補的研究として、室温における
高分子メカノラジカル生成特性に関する詳細な動力学的
研究およびその知見に基づいたメカノケミカル固相重合
を利用する新規高分子プロドラッグの構築に関する詳細
な動力学的研究をした。
【0007】
【課題を解決するための手段】メカノケミカル固相重合
は固体ビニルモノマーを無酸素条件下、金属製容器を用
いて高速振動処理することにより重合を行う方法であ
り、本重合法には次のような利点を有することを見い出
した。
【0008】1)反応は定量的に進行するので後処理操
作が不要である。 2)完全乾式法であるので残留溶媒の危惧がない。 3)ラジカル開始剤を必要としないのでクリーンな高分
子化合物が得られる。 4)生成高分子化合物は単分散性に近い分子量分布を持
ち分子量制御も可能である。 5)固体モノマーとメカノラジカル生成が可能な高分子
化合物との混合粉砕により、容易にブロック共重合体の
構築が可能である。
【0009】以上の様な利点を持つことから、本重合方
法は、高次の機能性高分子プロドラッグ構築法として大
変有用であることを見い出した。
【0010】かかる背景より本発明者等は、メカノケミ
カル固相重合の特徴と利点を利用し、完全乾式過程にお
ける、新規マトリックス型DDS 構築について研究した。
すなわち、通常DDS などの薬物放出制御基剤として用い
られている高分子化合物のメカノケミカルブロック共重
合を実施し、その高分子化合物の物理化学的性質を変え
ると同時に薬物を混合し、完全乾式過程におけるマトリ
ックス型DDS の構築を目指した。完全乾式過程で薬物と
メカノラジカルを持つ高分子化合物を混合粉砕するだけ
で、その薬物放出性が徐放化する方法は、新規なDDS 構
築法である。
【0011】本発明において使用される高分子化合物は
多糖類であって、これらにはセルロース及びセルロース
の誘導体例えばエチルセルロース、ヒドロキシエチルセ
ルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシ
プロピルメチルセルロース等が挙げられる。ただし、こ
れらに限定されるものではない。
【0012】本発明において使用される薬物としては、
テオフィリン、アセトアミノフェン、フルオロウラシ
ル、アムホテリシンB、メチルドパ、ニコチン酸アミ
ド、セファレキシンを例示することができる。ただし、
これらに限定されるものではない。
【0013】本発明においては、基幹高分子化合物とし
て医薬品添加物であり、徐放化コーティング剤として汎
用されれている多糖類である、エチルセルロースを代表
的に選び、まず、そのメカノラジカル生成反応特性、お
よび固体モノマーとのメカノケミカル重合反応性につい
て検討した。
【0014】さらに、これらの基礎的知見をもとに、メ
カノラジカルを持つ本高分子化合物と共にビニルモノマ
ーおよび薬物との三者を同時に混合粉砕することによっ
て、簡便な一工程のみで、メカノケミカル共重合反応を
生起させ、以って目的とするマトリックス型DDS を構築
し、調製条件によって薬物放出制御が可能であることも
見い出した。
【0015】本発明で使用されるビニルモノマーは、室
温で固体の疎水性又は親水性のビニルモノマーであっ
て、例えば4−アセトアミノフェニルメタクリレート及
びアクリルアミドが挙げられる。ただし、これらに限定
されるものではない。
【0016】すなわち、本発明は、無酸素条件下で高分
子化合物に機械的なエネルギーを加えて該高分子化合物
の主鎖を切断してメカノラジカルを持つ高分子化合物を
生成させ、無酸素条件下で該高分子化合物と薬物とを混
合粉砕することより成る、マトリックス型徐放性製剤の
製法に関する。この製法はメカノケミカル単一重合反応
によるものである。
【0017】また、本発明は、無酸素条件下で高分子化
合物に機械的なエネルギーを加えて該高分子化合物の主
鎖を切断してメカノラジカルを持つ高分子化合物を生成
させ、無酸素条件下で該高分子化合物とビニルモノマー
と薬物とを混合粉砕することより成る、マトリックス型
徐放性製剤の製法に関する。この製法はメカノケミカル
共重合反応によるものである。
【0018】以下に、その詳細について論述する。
【0019】エチルセルロースのメカノケミカル反応及
びエチルセルロースのメカノラジカルについて一般に、
高分子化合物に機械的なエネルギーを加えると、高分子
主鎖の切断によりメカノラジカルを生成することが知ら
れている。一方、セルロース及びその誘導体例えばエチ
ルセルロースなどのメカノケミカル反応によるメカノラ
ジカル生成に関する報告は見当たらない。かかる背景よ
り、エチルセルロースについて無酸素条件下金属製ボー
ルミルによる高速振動処理を実施し、そのメカノラジカ
ル生成について検討した。
【0020】エチルセルロースの構造式は次のとおりで
ある。
【化1】
【0021】この式において、 R: −H又は−C2 5 −OC2 5 :46.5〜51.0% n=150〜250
【0022】図面を概説すると次のとおりである。図1
は、マトリックス型DDS からの薬物放出の機構を示す概
念模式図であって、タイプ1とタイプ2とがある。図2
は、エチルセルロースの高速振動処理で得られるESR ス
ペクトル(A)と、15分間高速振動処理を行った試料
のESR スペクトルの室温放置経時変化(B)を示す。図
3は、エチルセルロースの高速振動処理時間(分)と、
スピン数/g(×1016) との関係を示すグラフ図であ
る。図4は、エチルセルロースの高速振動処理時間
(分)と数平均分子量〔Mn(×104)〕との関係を示す
グラフ図である。図5は、エチルセルロースの高速振動
処理時間と、単位重量あたりの総ラジカル量の逆数
〔(スピン数/g)-1×1016〕との関係を示すグラフ
図である。図6は、高速振動処理したエチルセルロース
とテオフィリンとの混合物と、エチルセルロースとテオ
フィリンとの混合物(対照)とについて、処理時間
(時)と、薬物放出性(%)との関係を示すグラフ図
(溶解プロフィル)である。図7は、高速振動処理した
エチルセルロースと薬物との混合過程を示す概念模式図
である。図8は、高速振動処理したエチルセルロースと
テオフィリンとの混合物について、無酸素条件下及び酸
素条件下における処理時間(時)とテオフィリン放出性
(%)との関係を示すグラフ図(溶解プロフィル)であ
る。図9は、高速振動処理したエチルセルロースとビニ
ルモノマーとしての4−アセトアミノフェニルメタクリ
レート(II)との混合物及び高速振動処理したエチルセ
ルロースとビニルモノマーとしてのアクリルアミド(II
I)との混合物におけるESR スペクトル図である。図10
は、エチルセルロースと4−アセトアミノフェニルメタ
クリレート(II)との種々の割合のブロック共重合体に
ついて高速振動処理時間(分)と、4−アセトアミノフ
ェニルメタクリレート(II)の消失度(%)〔すなわ
ち、重合進行率〕との関係を示すグラフ図である。図1
1は、高速振動処理したエチルセルロースと、ビニルモ
ノマーと、薬物との混合過程を示す概念模式図である。
図12は、テオフィリンに対し、高速振動処理したエチ
ルセルロース(I)との混合物、種々の割合の高速振動
処理したエチルセルロース(I)及びアクリルアミド
(III)との混合物の処理時間(時)とテオフィリンの放
出性(%)との関係を示すグラフ図(溶解プロフィル)
である。図13は、テオフィリンに対し、高速振動処理
したエチルセルロース(I)との混合物、種々の割合の
高速振動処理したエチルセルロース(I)及び4−アセ
トアミノフェニルメタクリレート(II)との混合物、並
びに高速振動処理したエチルセルロース(I)と4−ア
セトアミノフェニルメタクリレート(II)の単一(ホ
モ)重合体との混合物の処理時間(時)と、テオフィリ
ンの放出性(%)との関係を示すグラフ図(溶解プロフ
ィル)である。図14は、高速振動処理したエチルセル
ロース(I)、及び種々の割合の高速振動処理したエチ
ルセルロース(I)と4−アセトアミノフェニルメタク
リレート(II)との混合物について、拡散過程における
放出律速段階と処理時間(時)との関係を示すグラフ図
である。図15は、種々の割合の高速振動処理したエチ
ルセルロース(I)とテオフィリンとの混合物につい
て、薬物の拡散過程における放出律速段階と処理時間
(時)との関係を示すグラフ図である。図16は、エチ
ルセルロース(I)と4−アセトアミノフェニルメタク
リレート(II)との共重合体中におけるエチルセルロー
ス(I)の割合(%)と、放出速度定数との関係を示す
グラフ図である。図17は、薬物の放出挙動、すなわち
テオフィリンに対し、エチルセルロース(I)と4−ア
セトアミノフェニルメタクリレート(II)との共重合体
の混合物、並びにエチルセルロース(I)と4−アセト
アミノフェニルメタクリレート(II)の単独重合体との
単純ブレンドマー(混合物)について、処理時間(時)
と薬物放出性(%)との関係を示すグラフ図(溶解プロ
フィル)である。図18は、高速振動処理したエチルセ
ルロース(I)と、4−アセトアミノフェニルメタクリ
レート(II)〔又は(II)の単独重合体〕と、薬物との
混合過程を示す概念模式図である。
【0023】図2の(A)に示すように、主鎖切断型の
単一ラジカルが生成するポリアクリルアミド(PAAm)や
ポリメタクリル酸メチル(PMMA)のメカノケミカル反応
では、高速振動処理時間によらずほぼ同一のESR スペク
トルが観測されるのに対し、エチルセルロースの場合、
粉砕時間によりスペクトル外形が著しく変化することが
示された。この結果より、エチルセルロースのメカノケ
ミカル反応により生成したラジカルの転位等による二次
的なラジカル生成の可能性が示された。
【0024】また図2の(B)に示すように、室温放置
によりESR スペクトル外形の著しい変化はなく強度が減
少し、長時間放置するとメカノラジカルは検出範囲内で
完全に消失した。従って、エチルセルロースのメカノラ
ジカルは熱的に不安定であり、不均化、再結合反応によ
り消失することが示された。
【0025】次に図3に高速振動処理時間とエチルセル
ロースのメカノラジカル量〔スピン数/g(×1
16)〕との関係を示す。メカノラジカル量の経時変化
は粉砕時間が15分の時ピークに達し、その後急速に減
少する傾向を示した。ラジカル量変化が最大値を示す事
実および、上述のようにメカノラジカルが熱的に不安定
であることより、エチルセルロースのメカノケミカル反
応では高分子主鎖の破断と同時に、逐次的にメカノラジ
カル間のカップリングを含めた失活反応が進行している
ことが証明された。
【0026】エチルセルロースのメカノケミカル反応に
おける分子量変化について エチルセルロースのメカノラジカルは高分子主鎖の破断
により生成するため、ラジカル量変化と分子量変化との
間には密接な関係がある。そこで、エチルセルロースの
メカノケミカル反応における粉砕試料の分子量の経時変
化についてGPC (Gel Permeation Chromatograph: ゲル
篩クロマトグラフ又はゲル濾過クロマトグラフ) を用い
て測定した。図4に示すように、数平均分子量(Mn)
は、粉砕開始から15分までは急激に減少するが、それ
以降の減少度合いは小さくなり、定常化に向かう傾向を
示した。図3と比較すると、15分以降の分子量の減少
速度が遅くなってからは、メカノラジカル生成量が減少
するために、ラジカル生成量に比較し失活反応が優勢に
進行するため見かけ上ラジカル量が減少すると考えられ
る。
【0027】以上の結果より、エチルセルロースのメカ
ノケミカル反応においては、高分子主鎖の破断によるメ
カノラジカル生成と同時に、ラジカルの転位、不均化、
再結合反応による失活が進行していることが証明され
た。従って、失活過程には再結合反応も含まれることを
考えると、分子間及び分子内での架橋反応が進行してい
ることが確実に証明された。
【0028】エチルセルロースのメカノケミカル反応に
おける薬物放出性への影響について 以上の結果から、エチルセルロースを無酸素条件下粉砕
することにより、エチルセルロースの架橋によるポリマ
ーネットワーク構造が構築できる可能性が証明された。
したがって、あらかじめメカノラジカルを生成させたエ
チルセルロースと、薬物テオフィリンとを同時に無酸素
条件下、高速振動処理を実施すれば、網目の形成により
薬物の徐放化が期待できる。したがって、エチルセルロ
ースのメカノラジカルを生成させた後、これ以上のエチ
ルセルロースのメカノラジカルが生成しない条件下高速
振動処理を実施すれば、ラジカルカップリングによりメ
カノラジカル間で効率良く網目が形成されると考えられ
る。そこで、エチルセルロースのメカノラジカル量が最
大である15分間粉砕を実施した後、エチルセルロース
のメカノラジカルをこれ以上生成させず効率良く再結合
反応を進行させるためテフロン製ボールミルを用いて高
速振動処理を実施した。本操作により実際にラジカル再
結合が進行するかについて検討するにあたり、メカノラ
ジカルを持つエチルセルロースをテフロン製ボールミル
で種々の時間高速振動処理を実施し、その総ラジカル量
をESR スペクトル測定により求めた。図5は、縦軸に単
位重量あたりの総ラジカル量の逆数を、横軸に時間をプ
ロットしたものである。その結果、良好な直線関係が示
されたことより、本反応は見かけ上ほぼ二次反応に従
い、二分子失活によってメカノラジカルが消失すること
が示された。
【0029】次に、上記の操作により得られた粉末から
の薬物放出試験を37±0.2℃、pH7.4リン酸緩衝液
中、異相反応条件下にて実施した。
【0030】また、対照としてエチルセルロースとテオ
フィリンを単純に混合した試料(ブレンドマー)を用い
た。図6にその結果を示す。
【0031】エチルセルロースとテオフィリン(薬物)
とを、単純に混合した試料は直ちに薬物を放出するのに
対し、エチルセルロースを高速振動処理したものと薬物
とを混合した試料は、期待通り徐放化された。したがっ
てメカノラジカルを持つエチルセルロースと薬物とを同
時に、テフロン製ボールミルで混合粉砕するこにより、
エチルセルロースのラジカル再結合の際に薬物がトラッ
プされることが実証された。また、エチルセルロースの
ラジカル再結合の際、実際に薬物がトラップされたこと
が徐放化の原因であるかを検討するにあたり、エチルセ
ルロースを無酸素条件下金属性ボールミルで15分間高
速振動処理を実施した後、酸素下でメカノラジカルが失
活するまで放置し、その後薬物とともにテフロン製ボー
ルミルで1時間、および4時間混合粉砕を実施した。こ
の場合、エチルセルロースのメカノラジカルが失活して
いるため、メカノラジカルの再結合による網目構造は形
成されない。したがって、テフロン製ボールミルでの混
合粉砕は、15分間粉砕したエチルセルロースと薬物と
の単純な混合操作であり、混合時間が長い程、薬物放出
性は徐放化されると考えられる。
【0032】その反応過程を図7に模式的に示し、その
薬物放出挙動を図8に示す。
【0033】酸素下、テフロン製ボールミルで粉砕した
試料からの薬物放出速度は、無酸素下で同様の操作を施
したものより速い。また、酸素下での操作では、長時間
粉砕した試料がより徐放化されることが示された。
【0034】以上の結果から、メカノラジカルを持つエ
チルセルロースと薬物を無酸素条件下テフロン製ボール
ミルで粉砕することにより、メカノラジカルの再結合の
際薬物がトラップされるため、酸素下で同様の操作を施
したものよりも徐放性を示した。
【0035】このように、高速振動処理した高分子化合
物と薬物を混合するのみでその薬物放出が徐放化される
ことが初めて見い出され、本方法は単純な混合操作によ
る薬物放出制御であり、その応用は広く有益な知見と考
えられる。
【0036】以上の知見を以下にまとめる。すなわち、
エチルセルロースを無酸素条件下、高速振動処理を実施
すればエチルセルロースの高分子の主鎖の破断により生
じたメカノラジカルの再結合反応による、ポリマーネッ
トワーク構造が構築できる。更に、このポリマーネット
ワーク構造中に薬物をトラップすることにより、その徐
放化が可能となった。
【0037】エチルセルロースと固体ビニルモノマーと
のメカノラジカルブロック共重合反応について エチルセルロースのメカノラジカル反応によって網目構
造が形成されることを利用して、薬物共存下において高
速振動処理することにより、網目構造に薬物を取り込む
ことによる薬物の徐放化が可能になることを見い出し
た。エチルセルロースのメカノラジカルと固体モノマー
とのメカノケミカル反応によりブロック共重合体を合成
すれば、エチルセルロースとは異なった物理化学的性質
を有するマトリックス基剤として利用でき、新たな薬物
放出性を付与できるものと考えられる。
【0038】かかる観点より、エチルセルロースと固体
ビニルモノマーとのメカノケミカル共重合反応の動力学
について検討した。ビニルモノマーとして、疎水性の4
−アセトアミノフェニルメタクリレート(II)と親水性
のアクリルアミド(III)を選んだ。
【0039】4−アセトアミノフェニルメタクリレート
の構造式は次のとおりである。
【化2】
【0040】アクリルアミドの構造式は次のとおりであ
る。
【化3】
【0041】メカノケミカルブロック共重合反応は、別
途にメカノラジカルを生成させたエチルセルロースと固
体ビニルモノマーを、テフロン製ボールミルを用い無酸
素条件下で高速振動処理を30分間実施することにより
行った。テフロン製ボールミルを用いたのは、メカノケ
ミカル反応の重合機構は金属製ボールミルからの固相一
電子移動反応により生成したアニオンラジカルが重合開
始剤となる反応であるため、テフロン製ボールミルを用
いれば一電子移動反応が起こらず、エチルセルロースの
メカノケミカル単独重合が進行しないためである。事
実、テフロン製ボールミルを用いるエチルセルロースの
メカノケミカル重合が進行しないことを確認した。
【0042】図9はメカノケミカルブロック共重合反応
により得られた粉末試料のESR スペクトルである。
【0043】図9(A)は、4−アセトアミノフェニル
メタクリレート(II)と高速振動処理したエチルセルロ
ースとの混合物のスペクトルであって、エチルセルロー
スを粉砕した時のスペクトル図2(A)とは明らかに異
なり、典型的なメタクリレート系高分子粉末のスペクト
ルパターンを示している。このことから、高速振動処理
したエチルセルロースのメカノラジカルによりエチルセ
ルロースの重合が進行していることが証明された。
【0044】図9(B)は、アクリルアミド(III)と高
速振動処理したエチルセルロースとの混合物についての
スペクトルであって、ポリアクリルアミドの生長ラジカ
ルのESR のスペクトルが観測された。
【0045】次に、メカノケミカル固相共重合反応にお
ける重合進行率(モノマー消失速度)について検討し
た。重合の速度は、粉砕試料の1H-NMRスペクトルを測定
し、モノマーのビニル基に由来するピークの消失と相当
するアルキル基の増加より求めた。図10は下記に示す
種々の組成の試料について反応時間による重合の進行率
(単量体の消失率)の変化を示したものである。 エチルセルロースと4−アセトアミノフェニルメタクリ
レートとの9:1のブロック共重合体 エチルセルロースと4−アセトアミノフェニルメタクリ
レートとの1:1のブロック共重合体 エチルセルロースと4−アセトアミノフェニルメタクリ
レートとの1:3のブロック共重合体
【0046】図10より、エチルセルロースの含有量が
多いブロック共重合体ほど重合速度は遅くなっており、
4−アセトアミノフェニルメタクリレートの含有量が少
ないためメカノラジカル生成量が減少するためであると
考えられる。しかしながら、いずれの比率においても、
重合は約4時間前後で100%進行することが示され
た。また、エチルセルロース(I)とアクリルアミド
(III)のブロック共重合体についても同様に、約4時間
で100%進行することを確認した。
【0047】以上の結果より、メカノラジカルをもつエ
チルセルロースとビニルモノマーとのメカノケミカル共
重合反応は定量的に進行することが確認された。
【0048】メカノケミカル共重合体のマトリックス型
DDS への応用について、次に検討する。
【0049】親水性モノマーとの共重合体からの薬物放
出特性について先に、エチルセルロース(I)とビニル
モノマーとのメカノケミカル共重合反応が定量的に進行
することを確認した。この共重合反応により、図11に
示すような架橋構造を持つDDS の構築が可能であると考
えられる。そこでまず、親水性を賦与する目的でアクリ
ルアミド(III)とエチルセルロース(I)を下記に示す
種々の混合比で4時間高速振動処理を実施し、徐放化薬
物としてテオフィリンを選び、得られた粉末からの薬物
放出特性について検討した。なお、テオフィリンの有無
にかかわらず4時間の高速振動処理により、重合が完結
することも確認した。 テオフィリン(10mg)と、高速振動処理したエチルセル
ロース(100mg)との混合物 テオフィリン(10mg)と、高速振動処理したエチルセル
ロース(90mg)と、アクリルアミド(10mg)との混合物 テオフィリン(10mg)と、高速振動処理したエチルセル
ロース(95mg)と、アクリルアミド(5mg)との混合物
【0050】薬物放出試験は37±0.2℃、pH7.4リン
酸緩衝液中にて実施した。その結果、図12に示したよ
うに、エチルセルロース(I)とアクリルアミド(III)
との比が9:1の場合、アクリルアミド(III)の比率が
少ないにもかかわらず、薬物放出は非常に速やかに進行
した。しかし、アクリルアミド(III)の比率を更に少な
くすると、その薬物放出は遅くなり、この共重合体から
の薬物放出速度は、その組成比率の調整により制御可能
であることが示された。共重合体中のアクリルアミド
(III)の含有率が非常にわずかであるにもかかわらず、
その薬物放出速度に大きく影響することから共重合体の
親水性の増大と、共重合による網目の拡大の両因子に起
因するものと考えられる。
【0051】疏水性モノマーとの共重合体からの薬物放
出特性について 次に、下記に示す混合割合のエチルセルロース(I)と
疎水性モノマーである4−アセトアミノフェニルメタク
リレート(III)との共重合体からの薬物放出性について
検討した。 テオフィリン(10mg)と、高速振動処理したエチルセル
ロース(100mg)との混合物 テオフィリン(10mg)と、高速振動処理したエチルセル
ロース(90mg)と4−アセトアミノフェニルメタクリレ
ート(10mg)との混合物 テオフィリン(10mg)と、高速振動処理したエチルセル
ロース(50mg)と4−アセトアミノフェニルメタクリレ
ート(50mg)との混合物 テオフィリン(10mg)と、高速振動処理したエチルセル
ロース(25mg)と4−アセトアミノフェニルメタクリレ
ート(75mg) との混合物 テオフィリン(10mg)と、4−アセトアミノフェニルメ
タクリレートの単独重合体(100mg) との混合物 共重合体の調製、および薬物放出試験は、前記と同様の
操作にて実施した。図13にその結果を示す。疎水性の
モノマーを用いたにもかかわらず、4−アセトアミノフ
ェニルメタクリレート(II)の含有比率量の増加に伴い
薬物放出は速くなった。その理由として、4−アセトア
ミノフェニルメタクリレート(II)の含有量の増加によ
りグラフト部分が多く網目が広くなったため、薬物放出
が速くなったと考えられる。
【0052】薬物放出特性の速度論的解析について エチルセルロース(I)と4−アセトアミノフェニルメ
タクリレート(II)との共重合体は、その網目構造の中
に薬物をトラップするという、いわゆる基剤が不溶性の
マトリックス型のDDS である。概念的には、既にマトリ
ックス型DDS からの薬物放出速度について詳細な解析が
なされている。本発明者等は粉末試料を用いることによ
り球形マトリックスからの薬物放出速度式を適用し、薬
物放出速度解析を試みた。球形マトリックスからの薬物
放出過程を表す式は、Baker と Lonsdale によりまとめ
られており、以下のことが知られている。
【0053】薬物がマトリックス中での溶解度以上に含
まれ懸濁粒子が存在する場合で、薬物の移動がマトリッ
クス実質への溶解と拡散により生じ、その拡散過程が放
出の律速段階である場合、
【0054】 (3/2){1−(1−F)2/3}−F=(3DCms/r2o )t ……(式1)
【0055】になる。ここでFは放出分率、Dはマトリ
ックス中での薬物拡散係数、rはマトリックスの半径、
msはマトリックス中への薬物の溶解度、Co マトリッ
クス中の薬物の初濃度である。また、薬物がほとんどマ
トリックス実質に溶解せず、放出が外部より侵入した溶
媒に溶解し拡散することにより生じる場合、
【0056】 (3/2){1− (1−F)2/3}−F=(3Dw wsK/r2τ)t ……(式2)
【0057】の適用が考えられる。ここでDw は放出液
中の薬物拡散係数、Cwsは放出液への薬物の溶解度、K
は薬物の比容積、τは放出路の曲路率である。
【0058】そこで本発明者等は、いずれの式において
も、(3/2) {1-(1-F)2/3}−Fがtに比例することより
比例定数をK’とし、
【0059】 (3/2) {1−(1−F)2/3}−F=K't …… (式3)
【0060】を用いて、図13の溶出結果について解析
を行った。
【0061】その結果、下記試料は、図14に示すよう
に、いずれも相関係数(r)がほぼ1に近い原点を通る
直線を示したことより、式1もしくは式2に従う球形マ
トリックス型の溶出挙動を示すことが確認された。 放出律速段階(計算値 3/2 {1-(1-F)2/3}-F) と時間
(時) との関係 高速振動処理したエチルセルロース(100mg) 高速振動処理したエチルセルロース(90mg)と4−アセ
トアミノフェニルメタクリレート(10mg)との混合物 高速振動処理したエチルセルロース(50mg)と4−アセ
トアミノフェニルメタクリレート(50mg)との混合物 高速振動処理したエチルセルロース(25mg)と4−アセ
トアミノフェニルメタクリレート(75mg)との混合物
【0062】更に、式1と式2のどちらに適合するかに
関して、式1に適合する場合、右辺の分母にCo がある
ため、放出率Fの次元で表わされる放出速度は薬物初期
含有率の増加に伴い減少する。また、式2の場合、薬物
の初期含有率の増加に伴いτが減少するため放出速度の
増加が観察される。そこで、本発明者等は薬物の初期含
有率を変化させ、その放出速度の変化について検討し
た。すなわち、別途にメカノラジカルを生成させたエチ
ルセルロース(I)100mgと、薬物(テオフィリン)
10mgもしくは20mgをテフロン製ボールミルで混合粉
砕することにより基剤を調製し、これらから薬物放出結
果を式3にあてはめ、それぞれのK’について比較検討
した。
【0063】図15に示すように、薬物含量が増加する
とその薬物放出速度も増加する。従って、これら基剤か
らの薬物放出機構は式2に適合する球形マトリックス型
の溶出挙動を示すことが明らかとなった。また、エチル
セルロース(I)と4−アセトアミノフェニルメタクリ
レート(II)との共重合体についても同様の結果を得
た。
【0064】更に、これら共重合体の組成比率と薬物放
出性の関係について検討した。なお、これらの放出性を
比較するにあたり、共重合体中のエチルセルロース
(I)の比率と図14で求めた見かけの放出速度定数
K’を用いた。その結果、図16に示すように、共重合
体においてはエチルセルロース(I)の比率と各々の
K’は良好な直線関係を示した。この結果より、エチル
セルロース(I)と4−アセトアミノフェニルメタクリ
レート(II)との比率を調整することにより、その共重
合体からの薬物放出速度を制御できることが明らかとな
った。
【0065】次に、これらの薬物放出挙動が、エチルセ
ルロース(I)と4−アセトアミノフェニルメタクリレ
ート(II)との共重合反応により形成される網目構造中
への薬物のトラップに起因するものか否かについて検討
した。すなわち、エチルセルロース(I)50mgと4−
アセトアミノフェニルメタクリレート(II)の単独重合
体50mgとをそれぞれのメカノラジカルが生成しない条
件下でテオフィリン10mgと混合した、いわゆるブレン
ドマーと、これと対比するためのエチルセルロース
(I)50mgと4−アセトアミノフェニルメタクリレー
ト(II)50mgとを共重合体とテオフィリン10mgの存
在下で共重合反応を行なった試料からの薬物放出性を比
較した。図17にその結果を示す。
【0066】図17により、明らかに共重合体からの薬
物放出が徐放性を示した。この結果は、図18に概念的
模式図を示すように、ブレンドマーでは共重合反応が起
こらないため網目構造は形成されず、マクロな粒子レベ
ルでの単純混合であり、薬物はすでに形成されている4
−アセトアミノフェニルメタクリレート(II)の網目構
造中にトラップされるのみであるため、その薬物放出は
速くなったと考えられる。この結果は、エチルセルロー
ス(I)50mgとテオフィリン10mgで調製したものか
らの薬物放出結果とほぼ一致することも確認した。一
方、共重合体ではその網目構造中に薬物がトラップされ
たため、徐放化されたと考えられる。
【0067】上記の知見をまとめると次のようになる。
本高分子基剤からの薬物放出は、エチルセルロース
(I)とビニルモノマーの比率を調整することにより、
その速度を制御することが可能である。更に、エチルセ
ルロース(I)と4−アセトアミノフェニルメタクリレ
ート(II)又はアクリルアミド(III)との共重合体(エ
チルセルロース単独を含む)からの薬物放出機構が、球
形マトリックスからの放出速度式にあてはまることよ
り、本基剤は不溶性の共重合体の網目構造中に薬物が分
散するマトリックスタイプであることが明らかとなっ
た。
【0068】本発明により得られた知見を以下に総括し
て示す。
【0069】1.エチルセルロース(I)を無酸素条件
下、高速振動処理を実施することにより、エチルセルロ
ース(I)の高分子主鎖の破断が起こり、メカノラジカ
ルの再結合反応によりポリマーネットワーク構造が構築
できることが示された。更に、このポリマーネットワー
ク構造中に薬物をトラップすることにより、その徐放化
が可能となった。
【0070】2.メカノラジカルをもつエチルセルロー
ス(I)とビニルモノマーとのメカノケミカル共重合反
応は、両者を無酸素条件下、混合粉砕することにより容
易にかつ定量的に進行した。
【0071】3.エチルセルロース(I)とビニルモノ
マーの比率を調整することにより、この基剤からの薬物
放出速度は制御可能であった。更に、エチルセルロース
(I)と4−アセトアミノフェニルメタクリレート(I
I)又はアクリルアミド(III)との共重合体(エチルセ
ルロースの単独を含む)からの薬物放出挙動が、球形マ
トリックスからの放出速度式と良く一致することより、
本基剤は不溶性の共重合体の網目構造中に薬物が分散す
るマトリックスタイプであることが明らかとなった。
【0072】以上の結果より、高分子メカノラジカルを
用いて固体モノマーとメカノケミカル共重合反応を実施
すれば、その高分子基剤に新たな物性・機能を賦与する
と同時に、完全乾式法による簡便なマトリックス型DDS
の構築も可能であることが明らかになり、今後さらに有
効なDDS 構築法としての発展が期待される。
【0073】〔実施例〕 エチルセルロースのメカノケミカル反応及びメカノラジ
カルに関する実験
【0074】1.試料 エチルセルロース(I) エチルセルロース(45〜55cps)は市販品(東京化
成)を減圧乾燥(室温、1時間)して用いた。
【0075】2.メカノケミカル固相反応 エチルセルロース(I)100mgを無酸素条件下、室温
において金属性ボールミルにより種々の時間高速振動処
理(57Hz)を実施した。
【0076】3.ESR 測定 ESR スペクトルは、JES-REIX(日本電子KK製)型電子
スピン共鳴装置を用いて、磁場変調100KHZ、共振周
波数9.430±0.005GHZ、Field Modulation Width
0.1mT、およびマイクロ波出力0.01mWにて測定し、掃
引時間16分、磁場掃引幅25mTにて記録した。
【0077】4.分子量測定 分子量の測定は、屈折計(Shimadzu, RID-6A) 、ゲルカ
ラム(Shodex KF-800P,KF-80M)とデーター分析器(Shim
adzu, Chromatopac C-R4A )をつないだゲル浸透クロマ
トグラフィー(GPC Shimadzu, LC-6A)によって以下の条
件で測定を行った。 移動相 THF:流速 1.0ml/min.;カラム温度
40℃。
【0078】エチルセルロースのメカノケミカル反応に
おける薬物放出性の影響に関する実験
【0079】1.試料 テオフィリン テオフィリンは市販品(東京化成)を減圧乾燥(室温、
12時間)後、200メッシュを篩過させた後、再び減
圧乾燥(室温12時間)したものを用いた。
【0080】2.メカノケミカル固相反応による基剤の
調製 無酸素条件下、金属性ボールミルで15分間高速振動処
理(57Hz)したエチルセルロース(I)(100mg)
およびテオフィリン(10mg)を引き続き無酸素条件
下、室温においてテフロン製ボールミルにより高速振動
処理(4時間、57Hz)を実施し、基剤を調製した。ま
た、酸素条件下それぞれのボールミルのボールを用いず
に、以上と同様の操作を実施し、基剤を調製した。更
に、無酸素条件下、金属製ボールミルで15分間高速振
動処理(57Hz)したエチルセルロース(I)を空気中
に放置しメカノラジカルを失活させた後、テオフィリン
(10mg)とともに空気中にてテフロン製ボールミルに
より高速振動処理(4時間、57Hz)を実施し、基剤を
調製した。
【0081】3.薬物放出試験法 薬物放出試験法は、フラスコ振盪法で実施した。フラス
コ振盪法による溶出試験は試料(5mg)をナスフラスコ
(30ml)に入れ、37±0.2℃、pH7.4リン酸緩衝液
中、異相条件下で実施した。経時的にサンプリングを行
い、薬物の定量はUV(Shimadzu UV-2200/ 波長271nm)を
用いて行った。
【0082】エチルセルロースと固体ビニルモノマーと
のメカノケミカルブロック共重合反応に関する実験
【0083】1.試料 4−アセトアミノフェニルメタクリレートの合成 蒸留アセトニトリル(60mL)にアセトアミノフェン
(2g、13.2mmol)とトリエチルアミン(1.59g、
15.8mmol)を加え、メタクリロイルクロリド(1.65
g、15.8mmol)を滴下し、室温で30分撹拌した。反
応液を自然ろ過し、ろ液を減圧留去した後、残渣をクロ
ロホルム(50mL)に溶かし、中性になるまで水洗し
た。その後クロロホルム層に硫酸マグネシウムを入れて
乾燥した。自然ろ過後、ろ液を減圧留去し、ベンゼンよ
り再結晶したところ白色の針状結晶が得られた。 収量 2.0g(収率69.1%) mp.120−121℃ IR(KBR):1730、1660cm-1(C=0) 1H-NMR(DMSO-d6) δ: 1.99(s,3H,CH3), 2.05(s,3H,C
H3), 5.88(s,1H,-C=CH-), 6.26(s,1H,-C=CH-), 7.07-7.
63(m,4H,phenyl), 10.0(br,1H,amide).
【0084】アクリルアミド(AAm) AAm は市販品(東京化成)を精製ベンゼンから再結晶に
より精製後、減圧乾燥した。
【0085】2.メカノケミカル固相共重合 無酸素条件下、室温において金属製ボールミルにより1
5分間高速振動処理(57Hz)を実施し、メカノラジカ
ルを生成させたエチルセルロース(I)と4−アセトア
ミノフェニルメタクリレート(II)〔もしくはアクリル
アミド(III)〕との混合物(100mg)を引き続き無酸
素条件下、室温においてテフロン製ボールミルによる高
速振動処理(4時間、57Hz)により共重合体を合成し
た。
【0086】3.ESR 測定 ESR スペクトルは、JES-REIX(日本電子KK製)型電子
スピン共鳴装置を用いて、磁場変調100KHZ、共振周
波数9.430±0.005GHz 、Field Modulation Width
0.1mT、およびマイクロ波出力0.01mWにて測定し、掃
引時間16分、磁場掃引幅50mTにて記録した。
【0087】4.1H-NMR測定1 H-NMRスペクトルは、測定溶媒としてDMSO-d6 を用い、
JEOL JNM-GX270 FT-NMR 分光器を用いて測定した。内部
標準物質としてTMS (Tetramethyl silane; テトラメチ
ルシラン)を用いた。
【0088】1. メカノケミカル固相共重合による基
剤の調製 無酸素条件下、室温において金属製ボールミルにより1
5分間高速振動処理(57Hz)を実施しメカノラジカル
を生成させたエチルセルロース(I)と4−アセトアミ
ノフェニルメタクリレート(II)〔もしくはアクリルア
ミド(III)〕の混合物(100mg)およびテオフィリン
(10mg)を引き続き無酸素条件下、室温においてテフ
ロン製ボールミルにより高速振動処理(4時間、57H
z)を実施し、基剤を調製した。また4−アセトアミノ
フェニルメタクリレート(II)100mgを無酸素条件
下、室温において金属製ボールミルにより高速振動処理
(1時間、57Hz)を実施し、こうして得られた単独重
合体(100mg)およびテオフィリン(10mg)を無酸
素条件下、室温においてテフロン製ボールミルにより高
速振動処理(4時間、57Hz)を実施し、基剤を調製し
た。さらに、ブレンドマーの調製として、エチルセルロ
ース(I)を金属製ボールミルにて無酸素条件下15分
間高速振動処理(57Hz)した後、空気中にて放置しメ
カノラジカルを失活させたもの(50mg)と、上記と同
様の操作により得た4−アセトアミノフェニルメタクリ
レート(II)の単独重合体(50mg)の混合物およびテ
オフィリン(10mg)を空気中にて、テフロン製ボール
ミルで4時間高速振動処理(57Hz)を実施した。
【0089】2. 薬物放出試験 薬物放出試験は、フラスコ振盪法によりpH7.4のリン酸
緩衝液中(20ml)、37±0.2℃の異相反応条件下、
基剤5mgにて実施した。また、放出薬物(テオフィリ
ン)の定量は、UV(Shimadzu UV-2200/波長271nm)を
用いて行った。
【図面の簡単な説明】
【図1】マトリックス型DDS からの薬物放出の機構を示
す概念模式図であって、タイプ1と2とがである。
【図2】種々の高速振動処理時間におけるエチルセルロ
ースのESR スペクトル(A)と、15分間の高速振動処
理後、室温放置したエチルセルロースのESR スペクトル
の経時変化(B)を示す。
【図3】エチルセルロースの高速振動処理の間における
メカノラジカル濃度〔スピン数/g(×1016) 〕の経
時変化を示すグラフ図である。
【図4】エチルセルロースの高速振動処理の間における
数平均分子量の経時変化を示すグラフ図である。
【図5】エチルセルロースの高速振動処理時間と、スピ
ン数/gの逆数(×1016) との関係を示すグラフ図で
ある。
【図6】高速振動処理したエチルセルロースとテオフィ
リンとの混合物と、エチルセルロースとテオフィリンと
の混合物(対照)とについて、テオフィリンの放出性の
経時変化を示すグラフ図(溶解プロフィル)である。
【図7】テフロン混合器中での高速振動処理したエチル
セルロースと薬物との混合過程を示す概念模式図であ
る。 A: 無酸素条件下の場合 B: 酸素条件下の場合
【図8】高速振動処理したエチルセルロースとテオフィ
リンとの混合物について、無酸素条件下及び酸素条件下
における溶解プロフィルである。
【図9】高速振動処理したエチルセルロースとビニルモ
ノマーとの混合物のESR スペクトルである。 A:ビニルモノマーが4−アセトアミノフェニルメタク
リレートの場合 B:ビニルモノマーがアクリルアミドの場合
【図10】エチルセルロースと4−アセトアミノフェニ
ルメタクリレートとの種々の割合のブロック共重合体に
ついて高速振動処理時間と、4−アセトアミノフェニル
メタクリレートの消失度との関係を示すグラフ図であ
る。
【図11】高速振動処理したエチルセルロースと、ビニ
ルモノマーと、薬物との混合過程を示す概念模式図であ
る。
【図12】テオフィリンに対し、高速振動処理したエチ
ルセルロースとの混合物、並びに種々の割合の高速振動
処理したエチルセルロース及びアクリルアミドとの混合
物の溶解プロフィルである。
【図13】テオフィリンに対し、高速振動処理したエチ
ルセルロースとの混合物、種々の割合の高速振動処理し
たエチルセルロース及び4−アセトアミノフェニルメタ
クリレートとの混合物並びに4−アセトアミノフェニル
メタクリレートの単独重合体との混合物の溶解プロフィ
ルである。
【図14】高速振動処理したエチルセルロース、及び種
々の割合の高速振動処理したエチルセルロースと4−ア
セトアミノフェニルメタクリレートとの混合物につい
て、拡散過程における放出律速段階(計算値)と処理時
間との関係を示すグラフ図である。
【図15】種々の割合の高速振動処理したエチルセルロ
ースとテオフィリンとの混合物について、拡散過程にお
ける放出律速段階(計算値)と処理時間との関係を示す
グラフ図である。
【図16】エチルセルロースと4−アセトアミノフェニ
ルメタクリレートとの共重合体中におけるエチルセルロ
ースの割合と、放出速度定数との関係を示すグラフ図で
ある。
【図17】テオフィリンに対し、エチルセルロースと4
−アセトアミノフェニルメタクリレートとの共重合体と
の混合物、及びエチルセルロースと4−アセトアミノフ
ェニルメタクリレートの単独重合体とのブレンドマーと
の混合物の溶解プロフィルである。
【図18】高速振動処理したエチルセルロースと、ビニ
ルモノマー(又は4−アセトアミノフェニルメタクリレ
ートの単独重合体)と、薬物との混合過程の概念模式図
である。 A: 無酸素条件下の場合 B: 酸素条件下の場合

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 無酸素条件下で高分子化合物に機械的な
    エネルギーを加えて該高分子化合物の主鎖を切断してメ
    カノラジカルを持つ高分子化合物を生成させ、無酸素条
    件下で該高分子化合物と薬物とを混合粉砕することより
    成る、マトリックス型徐放性製剤の製法。
  2. 【請求項2】 無酸素条件下で高分子化合物に機械的な
    エネルギーを加えて該高分子化合物の主鎖を切断してメ
    カノラジカルを持つ高分子化合物を生成させ、無酸素条
    件下で該高分子化合物とビニルモノマーと薬物とを混合
    粉砕することより成る、マトリックス型徐放性製剤の製
    法。
  3. 【請求項3】 高分子化合物が多糖類である請求項1又
    は請求項2記載の製法。
  4. 【請求項4】 多糖類がセルロース、エチルセルロー
    ス、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピル
    セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースより
    成る群より選択したものである請求項3記載の製法。
  5. 【請求項5】 薬物がテオフィリン、アセトアミノフェ
    ン、フルオロウラシル、アムホテリシンB、メチルド
    パ、ニコチン酸アミド及びセファレキシンより成る群よ
    り選択したものである請求項1又は請求項2記載の製
    法。
  6. 【請求項6】 ビニルモノマーが室温で固体の疎水性又
    は親水性のビニルモノマーである請求項2記載の製法。
  7. 【請求項7】 ビニルモノマーが4−アセトアミノフェ
    ニルメタクリレート及びアクリルアミドより成る群より
    選択したものである請求項2記載の製法。
JP9385998A 1998-03-24 1998-03-24 マトリックス型徐放性製剤の製法 Pending JPH11269063A (ja)

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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