JPH11264061A - Al系材料とFe系材料との混合粉末溶射方法 - Google Patents

Al系材料とFe系材料との混合粉末溶射方法

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JPH11264061A
JPH11264061A JP8494398A JP8494398A JPH11264061A JP H11264061 A JPH11264061 A JP H11264061A JP 8494398 A JP8494398 A JP 8494398A JP 8494398 A JP8494398 A JP 8494398A JP H11264061 A JPH11264061 A JP H11264061A
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研二 宮井
Masashi Takahashi
正志 高橋
Harunobu Suzuki
晴信 鈴木
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 低コストでAl系材料とFe系材料との混合
皮膜を形成することができ、かつ量産においても定常的
に均一な混合皮膜が得られ、生産性が高く、溶射フレー
ム中で発生する混合粉末の分離現象にも対応できるよう
にしたAl系材料とFe系材料との混合粉末溶射方法を
提供する。 【解決手段】 Al系材料とFe系材料とを各々別の粉
末供給装置を用いて溶射ガンに供給することとした。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、Al系材料とFe
系材料との混合粉末溶射方法に関する。
【0002】
【従来の技術】Al系材料とFe系材料とを混合して溶
射する方法は、特開昭52−123340号公報等に記
載されており、1976年頃から既に提案されている。
近年には、特開平6−25821号公報、特開平8−2
53856等のようにブレーキやピストンへの応用が提
案されている。しかし、このような混合物を溶射する方
法について具体的に記載する特許あるいは文献は存在し
ない。従来、混合溶射を行う場合、図9に示すように予
め十分混合しておいた粉末101を粉末供給装置104
に単に供給し、溶射ガン105によって溶射していた。
しかし、Al系材料102とFe系材料103とは比重
差が約5もあり、混合し難い。その上、図10に示すよ
うに混合粉末101(状態I)に振動110を加えると
分離する(状態II)。したがって、量産時に粉末供給
装置に大量に粉末を供給すると、時間の経過とともに、
粉末供給時の振動111によりAl系材料102とFe
系材料103との分離が促進され(状態III)、目的
とする成分組成の皮膜を得ることができなくなるおそれ
があった。
【0003】これに対し、少量を数回に分けて粉末供給
装置に入れるといった対策も考えられるが、工程数を増
やすことになり、コストアップにつながるといった懸念
があった。さらに、テルミット反応に象徴されるように
Al系材料とFe系材料とは反応しやすく、取扱いを誤
ると混合時に爆発の可能性がある。そこで、混合機内を
不活性ガスで満たして混合する必要があった。そして、
混合機から粉末供給装置内に混合粉末を入れる場合、混
合粉末を大気に曝す時期があり、粉塵爆発の可能性が指
摘されている。これに対して大気に曝されることを防止
する装置の改良も可能であるが、工程が複雑となり、コ
ストが上昇するといった欠点があった。
【0004】ここで、Al系材料とFe系材料との分離
の問題を解消する方法として、複合化粉末を使用する方
法(特開平6−240436号公報)がある。しかし、
この複合化粉末は、アルミニウムのサブ粒子を約1〜2
0μmの粒径とし、鉄ベースのサブ粒子を約10〜44
μmの粒径とすることを提案している。通常溶射で用い
る金属粉末は粒径が小さいほど酸化(発火、粉塵爆発を
含む)の問題が大きくなるので、10〜125μmの粒
径、溶融しやすい材料で150μm程度の粒径としてい
ることから考慮すると、これはかなり小さい粒径であ
る。すなわち、上記のようなサブ粒子を用いて複合化粉
末を作製する場合は、粉末混合の場合よりもさらに作
製、分級、保管のための付加的設備が要求されることと
なる。結果的に工程数も増大し、工業的に見合わなくな
る、といった不都合があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記事情に対して、本
発明は低コストでAl系材料とFe系材料との混合皮膜
を形成することができ、かつ量産においても定常的に均
一な混合皮膜が得られ、生産性が高く、溶射フレーム中
で発生する混合粉末の分離現象にも対応できるようにし
たAl系材料とFe系材料との混合粉末溶射方法を提供
することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明にかかるAl系材料とFe系材料との混合粉
末溶射方法は、Al系材料とFe系材料とを各々別の粉
末供給装置を用いて溶射ガンに供給することを特徴とす
る。本発明ではAl系材料とFe系材料とを別々に保管
することによって、粉末の混合工程を不要とすることが
できる。粉末の混合工程がなくなることにより、生産時
間短縮によるコストダウンを図ることができ、混合時の
爆発の可能性を解消することができる。また、本発明で
はAl系材料とFe系材料とを送り量を制御して別々に
溶射ガンに供給するため、常に均一な成分で溶射するこ
とができ、皮膜性状が安定する。したがって、量産時に
皮膜性状を保つための数回に分けての粉末供給装置への
供給といった操作が不要となる。すなわち、各々の粉末
を粉末供給装置の許容範囲まで入れて装置の性能をフル
に活かした生産を行うことができる。
【0007】また、本発明にかかるAl系材料とFe系
材料との混合粉末溶射方法は、溶射距離を50mm以内
とすることを特徴とすることも含む。かかる方法におい
て、Al系材料とFe系材料とを各々別の粉末供給装置
を用いて溶射ガンに供給することも勿論できる。溶射距
離を50mm以内とすることで、混合粉末の飛行中の分
離を避け、比較的良好な分散状態の皮膜を形成すること
ができる。これにより、耐摩耗性と密着強さの両方を兼
ね備えた溶射皮膜を得ることができる。
【0008】さらに、本発明にかかるAl系材料とFe
系材料との混合粉末溶射方法は、溶射距離が50mm以
上で溶射フレームに対して角度を付けて溶射材料を投入
する場合において、溶射ガンを溶射粉末投入口側に向け
て移動させ、皮膜を形成するようにしたことを特徴とす
ることも含む。この場合も、Al系材料とFe系材料と
を各々別の粉末供給装置を用いて溶射ガンに供給するこ
とができる。これにより、基材界面に比較的Al材料の
粒子が密着する比率が高くなり、熱サイクルに強い皮膜
を得ることができる。皮膜表面付近には逆に耐摩耗性の
強い鉄系材料が多くなり、耐摩耗性が向上する。
【0009】本発明において、Al系材料の粒径は30
〜150μm、Fe系材料の粒径は10〜105μmの
範囲が好ましい。Al系材料としては具体的には、過共
晶AlSi合金等のAl−Si系合金、、Al−Pb系
合金、Al−ブロンズ系合金、Al−Cu合金、純Al
等を挙げることができ、これらの一種又は二種以上の混
合物であっても良い。Fe系材料としては具体的には、
白鋳鉄、炭素鋼、Fe−Mo系合金、Fe−Cr系合
金、Fe−Ni系合金等を挙げることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】以下に添付図面に示した実施の形
態を参照しながら、本発明をさらに説明する。発明の実施の形態(その1) 図1に本発明の基本概念を示す。本発明では溶射ガン1
にAl系材料2とFe系材料3とを別々に送る。供給源
としては、各々別の粉体供給装置4、5を配備すること
ができ、各々に粉末を粉末供給装置4、5の許容範囲ま
で入れることができる。これによって粉体供給装置4、
5の性能をフルに活かした生産を行うことができる。こ
こで、図2にいわゆるHVOF法によって溶射フレーム
11と並行して溶射材料を投入する場合を示す。溶射ガ
ン1の溶射材料を燃焼室で燃焼する。この場合、Al系
材料とFe系材料との分離現象は発生しない。溶射フレ
ーム11の方向14と溶射材料の投入方向12とが平行
だからである。
【0011】しかし、図3に示す実施の形態にかかるプ
ラズマ溶射のように、電極29によって励起される溶射
フレーム31の方向32に対して、溶射材料(混合粉
末)33を投入口34から角度を付けた方向35で投入
する場合、Al系材料とFe系材料との分離現象が発生
する。Al系材料とFe系材料とは比重が大きく違って
おり、粉末供給ガスによって得られる運動量も異なる。
これによって溶射フレーム31上での各々の材料の軌道
が変わり、溶射フレーム31中で分離現象が発生するこ
ととなる。これは溶射ガン30の出口30Aを始点とし
て距離が離れれば離れる程顕著となる。本願発明者らが
検討した結果、溶射距離が50mmを越えると分離現象
の影響が大きくなることが判明した。すなわち、溶射フ
レームに対し混合粉末を角度を付けて溶射ガン内で投入
する場合、溶射距離を50mm以下とすることが好適で
ある。
【0012】この理由を考察する。一方のFe系材料の
方は比重が大きく、溶射フレーム31を突き抜けやすい
傾向がある。したがって、プラスマフレームは図3に示
すような分布を取りやすい。すなわち、溶射粉末投入口
34側のフレーム36内はAl系材料の比率が高く、投
入口34に対して反対側のフレーム37はFe系材料の
比率が高くなる。中間のフレーム38は混合している。
これにより、50mm(D1)を越える溶射距離の領域
(D1を越える溶射距離D2の領域)では、溶射ガン3
0の移動方向により皮膜の内部構造が変わり、基材界面
にAl系材料の比率が高い層が形成したり、逆にFe系
材料の比率が高い層が形成したりする。
【0013】発明の実施の形態(その2) 先に述べたように、溶射フレーム中の分離現象は、混合
粉末溶射では避けられない現象であり、溶射距離が50
mmを越える場合、溶射ガンの移動方向により皮膜の内
部構造が変わってしまう。そこで、溶射ガンの移動方向
を限定し、基材界面にAl系材料比率の高い層を形成
し、次に混合層、最後にFe系材料比率の高い層を形成
することとしたのが本実施の形態である。Al系材料と
Fe系材料の混合溶射は、比較的温度の高い環境下で用
いられるAl合金部品の耐摩耗性皮膜(例えば、シリン
ダ、ピストン等)として用いられる。それはAl系材料
を混合することで、Al合金基材と熱膨張率を近くする
ことが大きな要因となっている。しかし、混合溶射にお
いて、Al合金基材界面にFe系材料比率の高い層を形
成してはAl系材料を混合する意味が薄れ、なおかつ、
表面付近でAl系材料の比率が高くなり、目的の耐摩耗
性を得ることができなくなってしまう。そこで、溶射ガ
ンの移動方向を限定し、Al合金基材界面にAl系材料
比率の高い層を形成して熱膨張率を低く押さえ、かつ表
層ではFe系材料の比率を高くすると理想的なAl系材
料−Fe系材料混合皮膜が得られる。
【0014】先述したようにフレーム内の溶射粉末投入
側は、Al系材料比率が高いため(図3)、この部分の
フレームが基材に先に到達するように溶射ガンを移動さ
せれば良い。すなわち、図4のように、溶射ガン30を
溶射粉末投入口側34の方向に移動させて皮膜を形成す
ると良い。この溶射ガン30のように溶射粉末投入口側
34から反対側にかけて、Al系粒子の多い領域36、
混合領域38、Fe系粒子の多い領域37の順にフレー
ム45内の粒子が分布する。そこで、溶射ガン30を溶
射粉末投入口側34の方向46に移動させて皮膜を形成
すると、基材、Al系材料の比率が高い領域、混合領
域、Fe系材料の比率が高い領域といった理想的な皮膜
が形成される。なお、図5に示すように基材51の上を
始点50から軌跡52のようにラダリングすることがで
きる。
【0015】
【実施例】実施例1 Al系材料とFe系材料の混合皮膜の均一性を評価する
ために、一つの粉末供給装置にAl系材料として過共晶
AlSi合金粉末とFe系材料として白鋳鉄を混合した
粉末を投入して溶射した試料1を作製した。また、二つ
の粉末供給装置に、過共晶AlSi合金粉末と白鋳鉄と
を各々投入して個々に制御して送給した試料2を作製し
た。装置としては図6に示すものを用いた。試料2では
溶射ガン60入口で混合するために、Y字管62を用い
た。図中61は基材、63は粉末投入口である。試料
1、2共に過共晶AlSi合金−80wt%(約60容
積%)白鋳鉄となるように粉末を配合した。表1に共通
の溶射条件を示す。表2に試料1溶射用条件を、表3に
試料2用溶射条件を示す。試料はそれぞれ10個作製
し、1個目と10個目の皮膜断面のAl面積率からAl
容積比を計算で求めた。計算結果を表4に示す。
【0016】
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【0017】この結果より、二つの粉末供給装置を用い
た方が均一な皮膜が定常的に形成できることがわかる。
また、実験中は爆発等の問題は起きなかったが、量産時
のように取り扱う量が増える場合、その可能性は高くな
る。 過共晶AlSi合金: Al−20wt%Si −3.5wt%−1.2wt%
Mg−5wt%Fe 白鋳鉄: Fe−3.14wt%C−0.52wt%Si −0.49wt%Mn −0.
09wt%P−0.11wt%S
【0018】実施例2 実施例1の試料2の作製方法のうち、溶射距離だけ50
mmと60mmに変更した試料3、4を作製した。溶射
粉末の投入方向とトラバース方向Bについては図6のよ
うに行った。溶射距離50mm、60mmの場合のフレ
ームスポット幅Wを測定したところ、28mmと34m
mであり、溶射距離が離れるにしたがって、フレームス
ポット幅が広がって来ていることがわかる。試料3、4
の断面写真(×200)を図7、8に示す。図7、8は
試料をナイタール腐食液でエッチングした状態で撮影し
たため、写真中黒色部分が白鋳鉄層で白色部分が過共晶
合金層である。図7、8を比べると、図7は白色と黒色
が均一に分散しているのに対し、図8は基材界面付近に
黒色部分、皮膜表面側に白色部分が多いことがわかる。
したがって、溶射距離50mmの範囲までは、AlとF
eの比重差の影響による分離現象が目だたず、実用上問
題がないことが了解される。
【0019】本実施例の皮膜形成方法は図6で示したよ
うに、粉末投入口63とは反対側に溶射ガン30をトラ
バース(動かす)した。したがって、分離現象が目だつ
領域で溶射した場合、図8のように、先に白鋳鉄(黒色
部分)の比率が高い基材61の表面を覆い、次いで、混
合領域、過共晶AlSi合金(白色部分)の比率が高い
領域と層を形成しており、理想状態である(基材61、
Al系材料の比率が高い領域、混合領域、Fe系材料の
比率が高い領域)とは逆に形成されていることがわか
る。すなわち、粉末投入口側63に向かって溶射ガン6
0を移動させることが良い。
【0020】
【発明の効果】上記したところから明かなように、本発
明によれば、低コストでAl系材料とFe系材料との混
合皮膜を形成することができ、かつ量産においても定常
的に均一な混合皮膜が得られ、生産性が高く、溶射フレ
ーム中で発生する混合粉末の分離現象にも対応できるよ
うにしたAl系材料とFe系材料との混合粉末溶射方法
が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかるAl系材料とFe系材料との混
合粉末溶射方法の一実施の形態を説明する概念図であ
る。
【図2】本発明にかかるAl系材料とFe系材料との混
合粉末溶射方法に使用する溶射ガンの一実施の形態を説
明する部分断面図である。
【図3】本発明にかかるAl系材料とFe系材料との混
合粉末溶射方法に使用する溶射ガンの他の実施の形態を
説明する断面図である。
【図4】本発明にかかるAl系材料とFe系材料との混
合粉末溶射方法の一実施の形態について、溶射ガンの移
動態様を説明する概念図である。
【図5】本発明にかかるAl系材料とFe系材料との混
合粉末溶射方法の一実施の形態について、溶射ガンの移
動態様を説明する概念図である。
【図6】本発明にかかるAl系材料とFe系材料との混
合粉末溶射方法に使用する溶射ガンの他の実施の形態を
説明する断面図である。
【図7】Al系材料とFe系材料との混合粉末を溶射し
て得られた皮膜の断面を示す200倍の顕微鏡写真であ
る。
【図8】Al系材料とFe系材料との混合粉末を溶射し
て得られた皮膜の断面を示す200倍の顕微鏡写真であ
る。
【図9】従来のAl系材料とFe系材料との混合粉末溶
射方法を説明する概念図である。
【図10】従来の方法によって溶射される混合粉末の挙
動を示す概念図である。
【符号の説明】
1 溶射ガン 2 Al系材料 3 Fe系材料 4、5 粉末供給装置 11 溶射フレーム 12 溶射材料の投入方向 14 溶射フレームの方向 29 電極 30 溶射ガン 31 溶射フレーム 32 溶射フレームの方向 33 溶射材料 34 投入口 35 投入方向 45 溶射フレーム 46 溶射ガンの移動方向 50 始点 51 基材 52 軌跡 60 溶射ガン 61 基材 62 Y字管 63 粉末投入口 B トラバース方向 W フレームスポット幅 101 混合粉末 102 Al系材料 103 Fe系材料 104 粉末供給装置 105 溶射ガン 110、111 振動

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Al系材料とFe系材料とを各々別の粉
    末供給装置を用いて溶射ガンに供給することを特徴とす
    るAl系材料とFe系材料との混合粉末溶射方法。
  2. 【請求項2】 溶射距離を50mm以内とすることを特
    徴とするAl系材料とFe系材料との混合粉末溶射方
    法。
  3. 【請求項3】 溶射距離が50mm以上で溶射フレーム
    に対して角度を付けて溶射材料を投入する場合におい
    て、溶射ガンを溶射粉末投入口側に向けて移動させ、皮
    膜を形成するようにしたことを特徴とするAl系材料と
    Fe系材料との混合粉末溶射方法。
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