JPH11236697A - アルミニウム材の着色方法、模様付け着色体及びその製造方法 - Google Patents

アルミニウム材の着色方法、模様付け着色体及びその製造方法

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JPH11236697A
JPH11236697A JP5734498A JP5734498A JPH11236697A JP H11236697 A JPH11236697 A JP H11236697A JP 5734498 A JP5734498 A JP 5734498A JP 5734498 A JP5734498 A JP 5734498A JP H11236697 A JPH11236697 A JP H11236697A
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colored
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oxide film
pores
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JP5734498A
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Kazuo Aikawa
和夫 相川
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 アルミニウム材の陽極酸化皮膜を陽極酸化電
圧よりも低い電圧で電解着色できる着色方法、耐光性、
耐久性に優れた所望の模様の着色酸化皮膜を有する模様
付け着色体及びその製造方法を提供する。 【解決手段】 陽極酸化皮膜を形成したアルミニウム材
を希アルカリ水溶液によりエッチング処理して陽極酸化
皮膜の細孔底部のバリヤー層の露出部表面を化学的に溶
解した後、金属塩を含む電解着色浴中で電解着色する
か、又は顔料分散体中に浸漬し、陽極酸化皮膜の細孔中
に電気泳動法によって顔料粒子を泳動・析出させて着色
する。このような方法によれば、エッチング処理部分を
非処理部分と異なる色に着色することができるので、こ
の性質を、希アルカリ水溶液を電気泳動着色法により形
成された着色酸化皮膜表面の一部に直接作用させる部分
脱色技術や、マスキングパターン印刷技術と組み合わせ
ることにより、種々のパターン状着色模様を形成するこ
とができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、アルミニウム材の
着色方法、模様付け着色体及びその製造方法に関する。
さらに詳しくは、陽極酸化処理後にアルカリエッチング
を行うことによってその後の電解着色又は顔料の電気泳
動による着色を低電圧で行うことができ、しかもアルカ
リエッチングの処理部分を非処理部分と異なる色に着色
できる着色法に関する。本発明はまた、このような着色
法を、アルカリエッチングによる脱色処理及び/又はマ
スキング法と組み合わせて、堅牢で鮮やかな種々の模様
の着色酸化皮膜を形成する模様付け表面処理技術に関す
るものである。なお、本明細書中において、アルミニウ
ム材とは、アルミニウム及びアルミニウム合金を総称す
るものである。
【0002】
【従来の技術】近年の消費生活、需要嗜好の多様化に伴
って、アルミニウム材製品についても種々の色に着色
し、又は着色模様を施すことが要求されるようになって
いる。従来、陽極酸化処理したアルミニウム材の着色方
法としては、金属塩を含有する浴中での交流電解による
電解着色法がよく知られている。特に高電圧で陽極酸化
処理して得られる陽極酸化皮膜、例えばリン酸や有機酸
を用いて高電圧で陽極酸化して得られる陽極酸化皮膜
は、緻密なバリヤー層を有し、耐食性や耐摩耗性等に優
れるため、このような陽極酸化皮膜を電解着色すること
が望まれる場合がある。
【0003】しかしながら、交流電解着色法では、陽極
酸化処理時の印加電圧(以下、陽極酸化電圧という)よ
りもかなり低い電圧では着色できないという難点があ
る。これは、交流電流の−成分は陽極酸化電圧の影響を
受けないが、+成分はそのピーク電圧が陽極酸化電圧の
7〜8割程度以上となってから初めて流れ始めるためで
ある。また、交流電解着色時の電圧が高過ぎると、陽極
酸化皮膜はアルミニウム地金から剥離するという問題が
発生する。特に前記したような高電圧で陽極酸化処理し
て得られる酸化皮膜に電解着色を行う場合、高電圧の交
流が必要になり、省エネルギーの観点から望ましくな
く、しかもそのために陽極酸化皮膜がアルミニウム地金
から剥離し易くなるという問題がある。
【0004】一方、アルミニウム材の陽極酸化皮膜に着
色模様を付ける方法としてこれまで実用化されているも
のとしては、(1)弁当箱、なべ、やかんなどに応用さ
れている模様を描いたシールを貼り付ける方法、(2)
サインボード、ネームプレートなどに利用されているス
クリーン印刷法、(3)陽極酸化皮膜表面に感光性乳剤
を塗布し、フォトマスクを通して露光した後、現像して
所定の模様を描く方法、(4)看板等にカッティングプ
ロッターで切り抜いたシートを貼り付ける方法などが知
られている。
【0005】しかしながら、前記(1)のシール貼着法
の場合、シールは傷が付き易く、また耐久性がないとい
う問題があり、そのため適用できる製品が限定されてし
まう。また、前記(2)のスクリーン印刷法の場合、印
刷インキは単に陽極酸化皮膜表面に付着しているだけで
あるため、インキが剥れ落ちて模様が消え易く、耐久性
に劣るという難点がある。一方、前記(3)の写真法の
場合、模様は写真用乳剤で描かれているため、日光(紫
外線)によって色褪せし易いという問題がある。さらに
前記(4)の方法の場合、カッティングプロッターでシ
ートを切り抜いて模様を描くため、小さな文字や微細パ
ターンは描けないという問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記したよ
うな従来技術の問題点に鑑みなされたものであり、その
基本的な目的は、アルミニウム材の陽極酸化皮膜を陽極
酸化電圧よりも低い電圧で電解着色でき、皮膜性能に優
れた着色酸化皮膜を形成できるアルミニウム材の着色方
法を提供することにある。さらに本発明の目的は、単一
の又は一連の着色処理により、陽極酸化皮膜を形成した
アルミニウム材を異なる色の部分に模様付けできるアル
ミニウム材の模様付け着色体の製造方法を提供すること
にある。本発明の他の目的は、屋外で用いられても充分
な耐光性、耐久性を示すと共に、変・褪色もなく、堅牢
で色鮮やかな所望の模様の着色酸化皮膜を有するアルミ
ニウム材の模様付け着色体及びその製造方法を提供する
ことにある。さらに本発明の目的は、比較的に簡単な一
連の工程で、文字、図形等の微細なパターンの耐久性に
優れた着色模様を形成したアルミニウム材及びその製造
方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に、本発明の第一の側面によれば、アルミニウム材の着
色方法が提供され、その第一の態様は、陽極酸化皮膜を
形成したアルミニウム材を希アルカリ水溶液によりエッ
チング処理して陽極酸化皮膜の細孔底部のバリヤー層の
露出部表面を化学的に溶解した後、金属塩を含む電解着
色浴中で電解着色することを特徴としている。この方法
によれば、アルミニウム材の陽極酸化皮膜を陽極酸化電
圧よりも低い電圧で電解着色できると共に、エッチング
処理部分と非処理部分を異なる色に着色することができ
るので、この性質を模様付けに利用することが可能とな
る。
【0008】さらに本発明のアルミニウム材の着色方法
の第二の態様は、陽極酸化皮膜を形成したアルミニウム
材を希アルカリ水溶液によりエッチング処理して陽極酸
化皮膜の細孔底部のバリヤー層の露出部表面を化学的に
溶解した後、顔料分散体中に浸漬し、陽極酸化皮膜の細
孔中に電気泳動法によって顔料粒子を泳動・析出させて
着色することを特徴としている。この電気泳動着色法に
よっても、アルミニウム材の陽極酸化皮膜を陽極酸化電
圧よりも低い電圧で着色できると共に、エッチング処理
部分を非処理部分と異なる色に着色することができるの
で、この性質を模様付けに利用することが可能となる。
【0009】また、本発明の第二の側面によれば、上記
電解着色法又は電気泳動着色法を利用したアルミニウム
材の模様付け着色体の製造方法が提供される。電解着色
法を利用した方法は、陽極酸化皮膜を形成したアルミニ
ウム材の表面の一部を希アルカリ水溶液によりエッチン
グ処理してその部分の陽極酸化皮膜の細孔底部のバリヤ
ー層の露出部表面を化学的に溶解した後、金属塩を含む
電解着色浴中で電解着色することにより、上記エッチン
グ処理部分を非処理部分と異なる色に着色することを特
徴としている。一方、電気泳動着色法を利用した方法
は、(a)陽極酸化皮膜を形成したアルミニウム材を顔
料分散体中に浸漬し、陽極酸化皮膜の細孔中に電気泳動
法によって顔料粒子を泳動・析出させて着色する工程、
(b)該着色酸化皮膜表面の一部を希アルカリ水溶液に
よりエッチング処理してその部分を脱色する工程、
(c)部分的に脱色したアルミニウム材を、別の顔料分
散体中に浸漬し、陽極酸化皮膜の細孔中に電気泳動法に
よって顔料粒子を泳動・析出させて着色するか、又は金
属塩を含む電解着色浴中に浸漬して電解着色処理を施
し、エッチング処理部分を非処理部分と異なる色に着色
する工程を含むことを特徴としている。このような方法
により、優れた耐光性、耐久性を示すと共に、変・褪色
もなく、堅牢で色鮮やかな所望の模様の着色酸化皮膜を
有するアルミニウム材の模様付け着色体が得られる。
【0010】さらに本発明の第三の側面によれば、前記
したような着色法をマスキングパターンの印刷及び除去
と組み合わせたアルミニウム材の模様付け着色体の製造
方法が提供される。その一つの態様は、(イ)陽極酸化
皮膜を形成したアルミニウム材を希アルカリ水溶液によ
りエッチング処理して陽極酸化皮膜の細孔底部のバリヤ
ー層の露出部表面を化学的に溶解するアルカリエッチン
グ工程、(ロ)アルミニウム材表面にマスキングパター
ンを印刷する工程、(ハ)マスキングパターンを印刷し
たアルミニウム材を顔料分散体中に浸漬し、陽極酸化皮
膜の細孔中に電気泳動法によって顔料粒子を泳動・析出
させるか、又は金属塩を含む電解着色浴中で電解着色し
て非マスキング部分を着色する工程、(ニ)上記マスキ
ングパターンを除去する工程、及び(ホ)上記部分的に
着色したアルミニウム材を別の顔料分散体中に浸漬し、
陽極酸化皮膜の細孔中に電気泳動法によって顔料粒子を
泳動・析出させて着色するか、又は別の電解着色浴中で
電解着色処理を施し、マスキングパターン除去部分を非
マスキング部分と異なる色に着色する工程を含むことを
特徴としている。上記(イ)アルカリエッチング工程と
(ロ)マスキングパターン印刷工程は、アルカリエッチ
ング工程後にマスキングパターン印刷を行ってもよく、
又はその逆の順序で行ってもよい。
【0011】さらに本発明の第四の側面によれば、前記
したような着色法を、マスキングパターンの印刷・除去
及びアルカリエッチングによる脱色処理と組み合わせた
アルミニウム材の模様付け着色体の製造方法が提供され
る。その基本的な態様は、(A−1)陽極酸化皮膜を形
成したアルミニウム材を顔料分散体中に浸漬し、陽極酸
化皮膜の細孔中に電気泳動法によって顔料粒子を泳動・
析出させて着色する工程、(B)上記(A−1)工程で
得られた着色酸化皮膜表面にマスキングパターンを印刷
する工程、(C)希アルカリ水溶液によりエッチング処
理して非マスキング部分を脱色する工程、(D)上記マ
スキングパターンを除去する工程、及び(A−2)上記
(C)工程で部分的に脱色したアルミニウム材を、別の
顔料分散体中に浸漬し、陽極酸化皮膜の細孔中に電気泳
動法によって顔料粒子を泳動・析出させて着色するか、
又は金属塩を含む電解着色浴中で電解着色処理を施し、
非マスキング部をマスキングパターン除去部分と異なる
色に再着色する工程を含むことを特徴としている。
【0012】また、別の態様によれば、(A−1)陽極
酸化皮膜を形成したアルミニウム材を顔料分散体中に浸
漬し、陽極酸化皮膜の細孔中に電気泳動法によって顔料
粒子を泳動・析出させて着色する工程、(B)上記(A
−1)工程で得られた着色酸化皮膜表面にマスキングパ
ターンを印刷する工程、(C−1)希アルカリ水溶液に
よりエッチング処理して非マスキング部分の着色酸化皮
膜を脱色する工程、(A−2)上記(C−1)工程で部
分的に脱色したアルミニウム材を、別の顔料分散体中に
浸漬し、陽極酸化皮膜の細孔中に電気泳動法によって顔
料粒子を泳動・析出させて着色するか、又は金属塩を含
む電解着色浴中で電解着色処理を施し、非マスキング部
をマスキングパターン除去部分と異なる色に再着色する
工程、(D)上記マスキングパターンを除去する工程、
(C−2)上記着色酸化皮膜表面の一部を希アルカリ水
溶液によりエッチング処理して脱色する工程、及び(A
−3)上記(C−2)工程で部分的に脱色したアルミニ
ウム材を、さらに別の顔料分散体中に浸漬し、陽極酸化
皮膜の細孔中に電気泳動法によって顔料粒子を泳動・析
出させて着色するか、又は別の電解着色浴中で電解着色
処理を施し、脱色した部分をそれ以外の部分と異なる色
に再着色する工程を含むことを特徴とするアルミニウム
材の模様付け着色体の製造方法が提供される。
【0013】さらに他の態様によれば、陽極酸化皮膜を
形成し、希アルカリ水溶液によりエッチング処理して陽
極酸化皮膜の細孔底部のバリヤー層の露出部表面を化学
的に溶解したアルミニウム材を、(A−1)顔料分散体
中に浸漬し、陽極酸化皮膜の細孔中に電気泳動法によっ
て顔料粒子を泳動・析出させて着色する工程、(B−
1)上記(A−1)工程で得られた着色酸化皮膜表面に
マスキングパターンを印刷する工程、(C−1)希アル
カリ水溶液によりエッチング処理して非マスキング部分
の着色酸化皮膜を脱色する工程、(D−1)上記マスキ
ングパターンを除去する工程、(A−2)上記(C−
1)工程で部分的に脱色したアルミニウム材を、別の顔
料分散体中に浸漬し、陽極酸化皮膜の細孔中に電気泳動
法によって顔料粒子を泳動・析出させ、脱色した部分を
マスキングパターン除去部分と異なる色に再着色する工
程、(B−2)上記(A−2)工程で得られた着色酸化
皮膜表面にマスキングパターンを印刷する工程、(C−
2)希アルカリ水溶液によりエッチング処理して非マス
キング部分の着色酸化皮膜を脱色する工程、(D−2)
上記(B−2)工程で形成されたマスキングパターンを
除去する工程、及び(E)酸性電解液中に浸漬して再度
陽極酸化処理する工程を含むことを特徴とするアルミニ
ウム材の模様付け着色体の製造方法が提供される。上記
方法においては、上記(A−2)工程、(B−2)工
程、(C−2)工程及び(D−2)工程を1回又は2回
以上繰り返すことができ、それによってフルカラー模様
付けが可能となる。
【0014】前記アルミニウム材の模様付け着色体の製
造方法のいずれも態様においても、前記再着色工程(A
−2)又は(A−3)のいずれかの工程の前にアルミニ
ウム材に再度陽極酸化処理を施して陽極酸化皮膜のバリ
ヤー層の修復を行うことが好ましい。さらに最終工程と
して封孔処理及び/又はクリヤー塗装を施し、着色酸化
皮膜の着色堅牢度、耐侯性等の皮膜特性を向上させるこ
とが好ましい。前記したような方法により、アルミニウ
ム材に形成された多孔質陽極酸化皮膜の細孔の開口部か
ら孔底にかけて顔料等の着色物質が析着もしくは充填さ
れ、顔料等の着色物質の離脱及びそれに伴う変・褪色も
なく、堅牢で色鮮やかな所望のパターンに模様付けされ
たアルミニウム材の着色体が得られる。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明者は、陽極酸化皮膜を形成
したアルミニウム材を希アルカリ水溶液によりエッチン
グ処理して陽極酸化皮膜の細孔底部のバリヤー層の露出
部表面を化学的に溶解した後、金属塩を含む電解着色浴
中で電解着色するか、あるいは陽極酸化皮膜細孔内へ顔
料を電気泳動法により析出させて着色(以下、電気泳動
着色という)すれば、アルミニウム材の陽極酸化皮膜を
陽極酸化電圧よりも低い電圧で着色できると共に、エッ
チング処理部分を非処理部分と異なる色に着色できるこ
とを見出し、またこの性質を利用して着色模様付けを行
えることを見出した。
【0016】周知のように、アルミニウム材表面に形成
された陽極酸化皮膜は、六角柱状のセルの集合体であ
り、各セルの中央にはアルミニウム地金に垂直な細孔が
形成されており、細孔の底部にはアルミニウム地金と接
して略椀状のバリヤー層(Al23 )が形成されてい
る。このバリヤー層は電気絶縁性であるため、交流電解
着色時又は電気泳動着色時に電流が流れにくくなる。ア
ルミニウム材を硫酸浴中で陽極酸化処理した場合のよう
にバリヤー層の厚さが比較的に薄い場合にはそれ程問題
はないが、高電圧型電解質の浴、例えばリン酸浴や有機
酸浴を用いて高電圧、例えば100〜150V程度の電
圧で陽極酸化処理した場合、細孔径が大きくなると共
に、バリヤー層の厚さも70〜150nm程度にまで厚
くなるため、陽極酸化電圧よりもかなり低い電圧では電
解着色又は電気泳動着色できなくなる。一方、高電圧で
着色しようとした場合、陽極酸化皮膜の剥離又は破壊が
生じ易くなる。
【0017】そのため、本発明では、陽極酸化アルミニ
ウム材を希アルカリ水溶液でエッチング処理し、陽極酸
化皮膜の細孔底部のバリヤー層の露出部表面(表層部
分)を化学的に溶解するものであり、それによって交流
電解着色時に電流が流れ易くなり、陽極酸化電圧よりも
かなり低い電圧であっても電解着色可能となる。このこ
とは電気泳動着色についても当てはまる。従って、本発
明に係るアルミニウム材の着色方法の基本プロセスは、
図1の実線で示すフローである。上記アルカリエッチン
グ処理では、陽極酸化皮膜の表面(表層部及び細孔内壁
表面)も僅かに溶解するが、皮膜性能には影響がない程
度である。同様に細孔底部のバリヤー層の溶解も僅かで
あり、一般に数十nm程度であるが、例えばリン酸浴を
用いて形成される陽極酸化皮膜のバリヤー層の厚さは約
100nm弱であり、この程度の溶解量でも電解着色処
理又は電気泳動着色処理の電圧や電流に大きな影響があ
る。その結果、陽極酸化電圧よりもかなり低い電圧でも
電解着色や電気泳動着色が可能となる。
【0018】また、後述する実施例1から明らかなよう
に、アルカリエッチングの処理条件によって、同一の電
解着色浴を用いても陽極酸化皮膜は異なった色に着色さ
れ、また、同一のアルカリエッチング処理条件及び同一
の電解着色浴を用いても、電解着色処理の設定電圧によ
り異なった色に着色される。例えば、アルカリエッチン
グ処理条件に関しては、処理時間が長くなる程、また希
アルカリ水溶液の液温が高くなる程、バリヤー層のエッ
チングが進行し、それだけ電流が流れ易くなるため、濃
色系の色に着色され、また同系統の色に電解着色するた
めの電圧は低電圧側にシフトする。従って、このような
性質を利用して、陽極酸化アルミニウムに模様付け着色
を行うことができる。
【0019】すなわち、陽極酸化アルミニウム材の表面
の一部(平面的な一部領域)を希アルカリ水溶液により
エッチング処理してその部分の陽極酸化皮膜の細孔底部
のバリヤー層の露出部表面を化学的に溶解した後、金属
塩を含む電解着色浴中で電解着色すると、上記エッチン
グ処理部分と非処理部分を異なる色に着色することがで
きる。例えば、電解着色時の電圧を、エッチング非処理
部分に着色しない電圧に設定すると、処理部分のみに電
解着色できる。従って、非処理部分の陽極酸化皮膜の地
色(シルバー)と処理部分の電解着色された色の2色模
様を形成できる。一方、電解着色時の電圧を、エッチン
グ非処理部分にも着色できる電圧に設定すると、処理部
分と非処理部分では異なった色に着色されるので、同様
に2色模様を形成できる。エッチング処理を所定のパタ
ーンに従って行うことにより、所望のパターン状着色模
様が得られ、また図1の破線のフローで示すようにエッ
チング処理と電解着色処理を繰り返し行うことにより、
多色パターン状模様を得ることができる。
【0020】一方、電気泳動着色を利用したアルミニウ
ム材の模様付け着色体の製造方法の基本プロセスは、図
2の実線で示すフローである。すなわち、陽極酸化処理
後のアルミニウム材表面の全体又は一部に電気泳動着色
(一次着色)を行い、これによって着色された陽極酸化
皮膜の一部を希アルカリ水溶液でエッチング処理して脱
色(顔料の陽極酸化皮膜細孔からの脱離)すると、脱色
と同時にその部分の細孔底部のバリヤー層表層部分も化
学的に溶解するので、より低い電圧で電解着色又は電気
泳動着色できる。従って、このように部分脱色処理した
アルミニウム材を、別の電解着色浴中又は顔料分散体中
で電解着色又は電気泳動着色(二次着色)を行うと、所
定電圧以下では脱色部分のみに電解着色又は電気泳動着
色できるので、脱色部分をそれ以外の着色酸化皮膜部分
(非脱色部分)と異なる色に着色できる。一方、非脱色
部分にも着色できる高電圧で電気泳動着色又は電解着色
を行った場合、非脱色部分は一次着色と二次着色の色の
混合色となるので、脱色部分の二次着色のみの色とは異
なった色に着色される。また、図2の破線のラインで示
すように所定のパターンに従って部分脱色と着色を繰り
返すことにより、多色パターン状模様を得ることができ
る。
【0021】上記方法は、陽極酸化皮膜の細孔内に電気
泳動により顔料粒子が泳動・析出して着色された酸化皮
膜は希アルカリ水溶液により脱色されるという現象、及
び脱色された部分の細孔底部のバリヤー層表層部分は脱
色と同時に希アルカリ水溶液によりエッチングされて電
流が流れ易くなるという現象を巧みに利用したものであ
る。後者の現象については既に説明したとおりである。
アルカリ脱色について述べると、例えば電気泳動着色法
に用いられる顔料分散体としては、後述するように、例
えば有機顔料をアクリル・スチレン樹脂などの分散剤も
しくはバインダーと共に分散させた水分散体が一般に用
いられる。電気泳動の際、顔料そのものはアクリル・ス
チレン樹脂で被覆された状態で陽極酸化皮膜の細孔内へ
泳動・析出し、アクリル・スチレン樹脂を介して孔壁に
付着する。このように着色された陽極酸化皮膜に酸処理
又は温水湯洗、焼付けなどの熱処理を施すと、アクリル
・スチレン樹脂が硬化し、希アルカリ水溶液によるエッ
チング処理でも脱色され難くなるが、アクリル・スチレ
ン樹脂が熱や酸で固まらないうちであれば、希アルカリ
水溶液により容易に脱色できる。
【0022】例えば、後述する実施例3に示すように、
リン酸−マレイン酸電解液中で130Vで50分間陽極
酸化したアルミニウム材全面に、フタロシアニンブルー
の顔料分散体を用いて125Vで電気泳動着色(一次着
色)し(処理材の色:青)、アルミニウム材の下半部の
みを0.1%NaOH水溶液に浸漬して脱色した後(上
半部は青、下半部はシルバー)、再度アントラキノン系
顔料分散体中に全体的に浸漬して115Vで電気泳動着
色(二次着色)を行うと、アルミニウム材の上半部は
青、下半部は赤に着色された模様が得られた。また、種
々の電圧で二次電気泳動着色を行うと、110〜125
Vで良好な着色皮膜が得られた。
【0023】NaOH水溶液に浸漬した部分は、その時
間と電圧により電気泳動着色の仕上がりの濃さが異な
る。これは、前述したように、NaOHにより、陽極酸
化皮膜細孔底部のバリヤー層が溶解し、電流が流れ易く
なっており、電気泳動着色の電圧や電流に応じて流れる
電流の大きさが異なるためと考えられる。NaOH水溶
液への浸漬時間の長いものほど、一定の着色電圧で濃い
色に仕上がるのはこのためと思われる。また、同じ浸漬
時間であっても、電圧が高いほど着色しやすいのは非浸
漬部と同じである。このようなことから、陽極酸化アル
ミニウム材のNaOH水溶液への非浸漬部と浸漬部を同
時に電気泳動着色処理した場合、浸漬部がより濃い仕上
がりになる。また、適当な浸漬条件及び電気泳動条件を
選定すれば、非浸漬部には全く着色せず、浸漬部にのみ
所望の濃さに着色できることが分かる。さらに、試料全
体がすでに電気泳動着色されていた場合、前記のよう
に、浸漬部を脱色した後にその部分だけを別の色に着色
することができることになる。
【0024】また、前記陽極酸化処理は130Vで行っ
たが、NaOH水溶液に浸漬していない通常の着色部
(上半部)の仕上がりから、この陽極酸化電圧により形
成された陽極酸化皮膜に対して良好に電気泳動着色する
ための電圧は、110V程度が下限であることがわか
る。また、着色電圧が陽極酸化電圧に近づくに従い、電
流が多く流れて濃い色となり(125V)、陽極酸化電
圧を越すあたりから、さらに電流が多く流れ、顔料の異
常析出が起こるようになる。これは、局部的なバリヤー
層の溶解の進行やバリヤー層の不均一な溶解が原因と考
えられる。このような顔料の異常析出を防止するために
は、脱色後、適切な電圧(前記した例においては115
〜120V程度)で短時間再陽極酸化を行ってバリヤー
層を修復したり(図2参照)、適切な電圧をかけたまま
バリヤー層を維持しながらアルカリ水溶液中で脱色を行
うなどの対策が考えられる。細孔内に有機顔料を析出さ
せて着色した陽極酸化皮膜は、酸中に浸漬しても殆ど変
色しない(顔料の溶出は認められない)ので、上記再陽
極酸化処理により脱色を生ずることなく陽極酸化皮膜を
成長させることができる。この再陽極酸化処理により脱
色が生じないのは、前記したように顔料粒子を被覆して
いる分散剤(アクリル・スチレン樹脂)が酸によって硬
化して孔壁への付着強度を高めるためと考えられ、ま
た、陽極酸化皮膜の成長が認められるのは、顔料の析出
は、電解着色法によるコロイド状金属などの析出のよう
に陽極酸化皮膜細孔の孔底に析出しているわけでなく、
孔壁全体に析出しているためと考えられる。
【0025】以下、前記した本発明のアルミニウム材の
着色方法及びそれを利用した模様付け着色体の製造方法
の各工程について詳しく説明する。まず、必要に応じて
アルミニウム材表面に脱脂、エッチング、中和等の前処
理を施す。なお、ここでいうエッチング処理は、素材の
アルミニウム材の表面全体を平滑にすることを目的とし
ており、前記した陽極酸化工程後のアルカリエッチング
とはその目的、効果を全く異にする別個の処理である。
【0026】前記した前処理の後に行う陽極酸化は、常
法に従って行うことができ、前記のように処理したアル
ミニウム材を陽極に接続して、酸性電解液中で10〜2
00Vの直流電解、又は交流電解もしくは交直重畳電解
を行うことにより、陽極酸化皮膜を形成する。着色処理
として電解着色法を用いる場合、周知の無機酸及び/又
は有機酸電解液、例えば、硫酸、クロム酸等の無機酸、
あるいはこれらの混酸、またシュウ酸等の有機酸、ある
いはこれらの混酸、さらには上記無機酸と有機酸との混
酸などを含有する電解液中で、直流もしくはこれに類似
の電流波形又は交流波形、交直重畳波形を使用して、前
記アルミニウム材を陽極酸化する。陽極酸化処理の印加
電圧、印加時間等は常法通りで充分であるが、通常、処
理液の種類にもよるが、5〜150Vの範囲で行なう。
5V未満では希望する陽極酸化皮膜厚を得るのに長時間
必要となり、生産性が悪く、一方、150Vを越えると
皮膜厚のバラツキが大きく、また高電圧での処理のため
エネルギー的にも無駄が大きいので望ましくない。ま
た、電解液としては、マレイン酸、マロン酸、スルファ
ミン酸、酒石酸、スルホサリチル酸等の高電圧型有機
酸、リン酸、ホウ酸、ホウ酸アンモン等の高電圧型無機
酸、及びそれらの混合物を用いることもできる。これら
はいずれも高電圧型電解質であり、用いる電解質によっ
て陽極酸化電圧は異なるが、電圧30〜200V、好ま
しくは30〜150V程度である。
【0027】一方、電気泳動着色工程で顔料の離脱もな
く、堅牢で色鮮やかなアルミニウムの着色酸化皮膜を得
るためには、顔料が多孔質陽極酸化皮膜の細孔内に出来
るだけ深く析着もしくは充填されることが必要であり、
そのため顔料粒子の微細化及び水分散化と共に、顔料を
析着もしくは充填できる陽極酸化皮膜細孔の生成や調整
(細孔径拡大処理)が必要となる。顔料を泳動・析出さ
せる陽極酸化皮膜としては、通常の陽極酸化皮膜の細孔
径よりも大きな細孔径、例えば30〜200nm(30
0〜2000Å)程度、好ましくは50〜200nm程
度の細孔を持つ陽極酸化皮膜が望ましい。
【0028】このような大きな細孔を有する陽極酸化皮
膜は、従来公知の種々の方法により作成可能である。ま
た、本出願人により既に特開平5−93296号公報で
提案されている陽極酸化皮膜の作成方法を好適に用いる
ことができ、その方法は大別して以下の二つの方法から
なる。 (1)アルミニウム材を鉱酸又は有機酸、例えば硫酸、
リン酸、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸等の1種又は
2種以上の酸水溶液中で高電圧(例えば、DC120〜
200V、好ましくは150〜200V)で陽極酸化
し、該アルミニウム材の表面に通常の約50nm以下の
細孔径より大きい細孔を持つ陽極酸化皮膜を形成させる
方法、及び(2)アルミニウム材を鉱酸又は有機酸の1
種又は2種以上の酸水溶液中で陽極酸化し、該アルミニ
ウム材の表面に陽極酸化皮膜を形成させた後、リン酸、
硫酸、シュウ酸、スルファミン酸の1種又は2種以上の
酸水溶液に浸漬する処理、又は浸漬と交流電解を一定サ
イクルで繰り返す処理により、上記多孔質陽極酸化皮膜
の細孔の孔径拡大処理を行う方法。
【0029】次に、前記のように陽極酸化したアルミニ
ウム材は、図1に示すプロセスでは、希アルカリ水溶液
により全面的に又は部分的にアルカリエッチングされ、
図2に示すプロセスでは、後述する電気泳動着色を行っ
た後、部分的にアルカリエッチング(部分脱色)され
る。エッチング液としては、例えば水酸化ナトリウム、
水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、
アミン類などのアルカリ水溶液を用いることができ、そ
の濃度は0.03〜3%、好ましくは0.05〜1.0
%が適当である。アルカリ濃度が低過ぎると充分なエッ
チングを行い難く、一方、高すぎると陽極酸化皮膜やバ
リヤー層の溶解が進み過ぎ、エッチングの程度を制御し
難くなるので好ましくない。エッチング処理時間は、ア
ルカリ水溶液の濃度や温度によっても異なるが、一般に
室温において0.5分〜10分程度である。エッチング
は、アルカリ水溶液の濃度と温度、及び処理時間により
コントロールできる。処理方法としては、陽極酸化アル
ミニウム材の全面をエッチングする場合には浸漬法が適
当であるが、部分的にエッチングする場合には、所望の
形状の濾紙、フェルト等の多孔質担体にアルカリ水溶液
を含浸させ、これを陽極酸化アルミニウム材の表面に接
触させる方法を採用できる。さらに小さな部分や線など
のパターン状に部分エッチングを行う場合には、アルカ
リ水溶液による凹版印刷やインクジェット印刷(ハンビ
ック印刷)などの方法を用いることができる。
【0030】次に、前記のようにアルカリエッチングさ
れた陽極酸化アルミニウム材は、次いで電解着色法又は
電気泳動着色法により着色される。電解着色法としては
従来公知の方法を適宜採用することができる。電解着色
法に用いられる金属塩としては、例えばニッケル、コバ
ルト、クロム、銅、カドミウム、チタン、マンガン、モ
リブデン、カルシウム、マグネシウム、バナジウム鉄、
金、銀、鉛及び亜鉛などの硝酸塩、塩酸塩、シュウ酸
塩、酢酸塩、酒石酸塩、クロム酸塩、リン酸塩などが挙
げられる。電解着色法は、これらの金属塩と、鉱酸又は
有機酸(例えばホウ酸、硫酸、シュウ酸、リン酸、クロ
ム酸、スルフアミン酸)、好ましくは弱酸、それらのア
ンモニウム塩、アミノ塩、イミノ塩等を含む着色浴中
で、交流電解、直流陰極電解又は交直重畳電解などの適
宜の電流波形を用いて、5〜75V程度の電圧で電解処
理する。それによって、陽極酸化皮膜はブロンズ、アン
バー、黒、緑、青、褐色などの各種色調に着色される。
陽極酸化処理の電圧にもよるが、一般に、電解電圧が5
V未満では、陽極酸化皮膜の電気抵抗が大きくて電流が
流れないため、電解着色浴中の金属イオンの分極は殆ど
行われず、着色不能となる。一方、電解電圧が75Vを
超えると、陽極酸化皮膜の破壊や剥離が生じ易くなる。
本発明の方法においては、前記したように陽極酸化皮膜
を僅かにアルカリエッチングするものであるため、より
低い電圧で電解着色可能である。
【0031】電気泳動着色に用いる顔料分散体として
は、好ましくは粒子径3〜150nmの有機顔料又は無
機顔料の顔料分散体が用いられる。また該顔料分散体の
浴の条件としては、顔料濃度は好ましくは50g/l以
下、より好ましくは10〜40g/l、浴の温度は好ま
しくは30℃以下、より好ましくは15〜25℃、浴の
pHは10以下が望ましく、より好ましくは8.5〜
9.5である。このような範囲に調整された顔料分散体
中で、アルミニウム陽極酸化皮膜を陽極として、電気泳
動法で着色すると、色むらの発生もなく、広い電圧範囲
で着色が可能となり、また濃淡の制御された着色が可能
となる。
【0032】浴中の顔料濃度が50g/lを越えて高く
なると、顔料濃度が大きいために顔料が凝集し易くな
り、陽極酸化皮膜表面に析出し易くなり、逆に顔料濃度
が10g/l未満であると、顔料が少ないために色を濃
くすることが難しく、いずれの場合も十分な着色を行う
ことができ難くなるので好ましくない。また、浴のpH
が8.5未満では、pHが低く、顔料の表面電位が低く
なり、凝集し易く、陽極酸化皮膜表面に析出し易くなる
ので好ましくない。一方、pHが10を越えるとアルカ
リ性が強く、細孔内に析出した顔料が再び溶解、分散し
易くなるために、色が薄くなって色むらを発生し易いの
で好ましくない。
【0033】顔料分散体の作製には、顔料として高級有
機顔料や無機顔料の1種以上、分散剤として陰イオン性
の高分子活性剤、例えばナフタリンスルホン酸のホルマ
リン縮合物、ポリスチレンスルホン酸塩、ポリアクリル
酸塩や、アクリル酸−スチレン共重合体、スチレン−マ
レイン酸共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニル
ピロリドン等のα,β−エチレン性単量体の重合物やそ
の変性樹脂等の水溶性樹脂が用いられる。これらの分散
剤は、顔料100重量部当り1〜500重量部、好まし
くは10〜200重量部程度の割合で用いることができ
る。また、樹脂の水に対する溶解性の向上のためにエタ
ノール等のアルコール類、エチレングリコール等のグリ
コール類、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類等の水溶
性有機溶剤を分散体中50重量%以下、好ましくは30
重量%以下の割合で添加することもできる。さらに、分
散剤の溶解や分散の安定剤として、アルカリや種々の添
加剤を加えることができ、また着色に供する際にもpH
の調整等のための薬品を加えることもできる。
【0034】無機顔料としてはカーボンブラック、酸化
チタン、酸化ケイ素等があり、その耐久性は充分満足で
きるが、特にカーボンブラックは粒子径を非常に小さく
し易く、本発明の方法に好適に用いることができる。有
機顔料としては、着色性及び耐光性、耐候性、耐熱性、
耐溶剤性等の耐久性に優れた高品位の有機顔料を好適に
用いることができる。この部類に属するものには、縮合
アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、及びペリレン系、
ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキ
サジン系、イソインドリノン系、イソインドリン系、キ
ノフタロン系、金属錯体系等の縮合多環顔料等がある。
これらの顔料粒子は、一般に、10〜500nmの大き
さの一次粒子が集合して凝集体を形成しており、この凝
集体を粒子径3〜150nm程度の大きさにまで分散さ
せることが好ましい。
【0035】これら顔料粒子の微細化と分散化は、前記
したような分散剤などと共にサンドミル、ロールミル、
ボールミル等の分散機で充分に分散させて安定な水分散
体を得る方法、サンドミル等で分散させる前に、前もっ
て顔料にプラズマ処理などの表面処理を施しておき、よ
り優れた水分散体を得る方法、あるいはさらに、濃硫酸
等に溶解する顔料については、一度濃硫酸等に溶解し、
それを水中に加えて、より微細な顔料粒子として析出さ
せる方法などを単独で又は併用して採用することが出来
る。また、分散の後、所望の顔料濃度となるようにこれ
を希釈し、濾過等によって粗大粒子を取り除くこともで
きる。この時の分散体粘度は低い方が分級効率が良い。
1回の分級処理で目的の粒度に達しない時には、複数回
分級を繰り返すこともできる。
【0036】陽極酸化皮膜の細孔中への電気泳動による
顔料着色を好適に行うためには、分散体中の樹脂で被覆
される顔料が負でより大きな表面電荷(ゼータ電位)を
持つ方が好ましく、このため使用する樹脂は塩基性であ
る方が好ましい。一方、分散体中の顔料のゼータ電位は
負であるので、陽極として陽極酸化処理したアルミニウ
ム材を用いて着色することができる。ゼータ電位の値は
−10mV以下程度であれば好適に粒子が電気泳動し、
アルミニウム材の陽極酸化皮膜の細孔中に析出される。
【0037】また、微細な顔料を電気泳動法によって多
孔質陽極酸化皮膜の細孔内に析出させる着色方法におい
ては、顔料分散体の条件により、陽極酸化皮膜の着色状
態には色むらの発生や皮膜表面への顔料の異常析出がみ
られる場合がある。すなわち、微細な顔料の電気泳動法
による着色方法においては、電圧の印加により顔料が多
孔質陽極酸化皮膜の細孔内に泳動されるが、顔料分散体
が必要以上の電導性を持つと、電圧の印加によって顔料
の泳動に無関係な電流が多く流れる。この電気泳動に関
係のない電流により、陽極酸化皮膜の細孔内では水の電
気分解などの陽極反応が必要以上に起こり、着色皮膜の
細孔内又は皮膜近傍のpHを急激に低下させるため、顔
料が皮膜細孔内に不均一に析出したり、皮膜表面に凝集
(ゲル化)、析出し易くなる場合がある。これを防止す
るためには、顔料の電気泳動に作用しない電流が殆ど流
れないように、顔料分散体の浴の比電導度を、顔料濃度
10g/lとした溶液中で約1000μS/cm以下に
調整して電気泳動を行うことが好ましい。それによって
上記のような必要以上の陽極反応や皮膜近傍でのpHの
急激な低下が抑制され、顔料の凝集を効果的に防止でき
る。
【0038】電気泳動法としては、直流電圧を低電圧よ
り高電圧へ一定の昇圧速度で所望の色になるまで走査す
る直流電圧走査法、及び定電圧で所望の色になるまでの
時間を電解する直流定電圧法等により着色処理を行うこ
とができる。電気泳動処理の条件は、陽極酸化の条件、
使用する顔料分散体及び所望の色濃度等に応じて適宜設
定することができる。例えば直流定電圧電解法で電気泳
動を行う場合、泳動電圧が高くなるにしたがい皮膜は濃
く着色される。泳動電圧が高くなり過ぎると顔料の陽極
酸化皮膜表面への異常析出が始まるが、顔料濃度が高く
なると異常析出する電圧が高くなるため、良好な状態で
濃く着色された皮膜が得られる。一方、低い電圧では、
顔料濃度が高いと色むらの発生がみられる。そのため、
例えば陽極酸化電圧が130Vの場合、顔料濃度に応じ
て一般に110〜140Vの範囲に設定することが望ま
しい。また、泳動電圧が低い場合、浴温度が高くなるに
したがって陽極酸化皮膜は濃く着色されるが、高電圧で
は大きな差はみられない。しかし、高電圧では、浴温度
が高いと顔料の陽極酸化皮膜表面への異常析出が起こり
易くなる。従って、浴温度は30℃以下、好ましくは1
5〜25℃の範囲が望ましい。このような電気泳動処理
条件で着色処理を行うことにより、色むらのない良好な
着色が可能となり、また顔料の陽極酸化皮膜表面への異
常析出を起こさないで皮膜の濃淡を広い電圧範囲で制御
できる。
【0039】前記したような方法で着色された陽極酸化
皮膜は、電解着色法の場合、金属塩を含有する電解着色
浴から金属イオンが細孔内に泳動し、コロイド状金属、
金属水酸化物、金属酸化物等の形態で細孔奥深くに析出
して着色され、一方、電気泳動着色法の場合、分散剤で
被覆された顔料粒子が細孔壁に付着した状態に析出して
着色されたものである。従って、着色物質が細孔から脱
離するようなことはないが、図1及び図2に破線のフロ
ーで示すように、さらに封孔処理及び/又はクリヤー塗
装を施すこともでき、それによって、さらに優れた耐光
性、耐久性を示すと共に、変・褪色もなく、堅牢で色鮮
やかな所望の着色模様を備えたものとなる。特に電気泳
動着色の場合、顔料粒子を被覆している樹脂分散剤が封
孔処理や塗装工程の乾燥・焼付処理により加えられる熱
によって硬化するので、細孔壁への付着強度が高くな
り、より堅牢な着色模様が得られる。
【0040】また、陽極酸化皮膜を部分的にアルカリエ
ッチング(部分脱色)した場合、電解着色又は電気泳動
着色の電圧を適当に選定することにより、エッチング
(脱色)した部分のみを選択的に着色することができ
る。図3は、図2に示すプロセスにおける陽極酸化皮膜
の断面構造の変化の概略図を示している。まず、一次電
気泳動着色により、図3(A)のようにアルミニウム材
1の陽極酸化皮膜2の細孔3内に顔料10が析着され、
次に、部分的にアルカリエッチングすることにより、図
3(B)のように部分脱色される。その後、別の色の顔
料11を含有する顔料分散体中に浸漬し、二次電気泳動
着色することにより、図3(C)に示すように、エッチ
ング処理部分の細孔内には顔料11が析着されて別の色
に着色され、2色の模様が得られる。他方、非エッチン
グ部分も着色されるように二次電気泳動着色の電圧を選
定すると、非エッチング部分の陽極酸化皮膜2の細孔3
内にも顔料11が析着され、図3(D)に示すようにさ
らに別の色(2種の顔料10及び11の混合色)に着色
された状態となる。
【0041】前記した着色方法及び模様付け着色体の製
造方法によれば、マスキング剤、デマスク剤を使用する
必要がなく、工程も簡素化されるという利点が得られる
が、さらに本発明によれば、前記したような着色方法を
マスキング法と組み合わせたアルミニウム材の模様付け
着色体の製造方法も提供される。図4はその一態様のプ
ロセスを示し、まず、陽極酸化皮膜を形成したアルミニ
ウム材1を前記したように希アルカリ水溶液でエッチン
グした後、図5(A)に示すように、陽極酸化皮膜2の
表面にマスキングパターン4を印刷する(マスキングパ
ターン印刷工程)。印刷法としてはスクリーン印刷、オ
フセット印刷、グラビアオフセット印刷、ハンビック印
刷(インクジェット方式)など種々の印刷法を採用でき
るが、特に高精細なパターンが必要な場合にはスクリー
ン印刷法やハンビック印刷法が好ましい。マスキング剤
としては、顔料分散体中の電気泳動着色工程において剥
離することなくマスキング機能を発揮し、溶剤によって
容易に剥離可能なものであれば全て使用でき、特定の物
質に限定されないが、例えばワセリン、シリコーンオイ
ル等の油脂や、アクリル系樹脂等の常温乾燥型の樹脂塗
料を好適に用いることができる。また、ハンビック印刷
法の場合、シリコーン系フッ素化合物等の疎水剤(塗被
表面を疎水性に改質する液体)を好適に用いることがで
きる。
【0042】次に、上記のようにマスキングパターン4
を印刷したアルミニウム材1の陽極酸化皮膜2の非マス
キング部分を電解着色するか、又は顔料分散体中に浸漬
し、電気泳動法により、図5(B)に示すように非マス
キング部分の陽極酸化皮膜2の細孔3内に顔料10を泳
動・析出させる(非マスキング部着色工程)。なお、以
下の説明においては、電気泳動着色の場合に基づいて説
明する。その後、アルミニウム材1を適当な剥離剤溶液
に浸漬してマスキングパターン4を剥離することによ
り、図5(C)に示すように、陽極酸化皮膜2の細孔3
内に顔料10が析出されて着色された部分(非マスキン
グ部分)と着色されずに陽極酸化皮膜2の地色(シルバ
ー色)の部分(マスキングされていた部分)の模様が得
られる(マスキングパターン除去工程)。例えば非マス
キング部分として文字、図形等が描かれるようにマスキ
ングパターンを陽極酸化皮膜表面に印刷し、電気泳動着
色を行うことにより、陽極酸化皮膜の地色(シルバー
色)を背景とし、その中に着色された文字、図形等が描
かれた模様が得られる。マスキングパターン4を剥離す
るための剥離剤としては、用いたマスキング剤に応じて
適当な剥離剤を選択使用でき、例えばマスキング剤とし
てワセリン等の油脂を用いた場合には、剥離剤としてヘ
キサン等の有機溶剤を好適に使用できる。
【0043】上記のような操作により得られたアルミニ
ウム材は、さらに着色処理に付することができ、例えば
別の色の顔料11を含有する顔料分散体中に浸漬し、前
記と同様に二次電気泳動着色(又は電解着色する)す
る。この際の電圧を所定電圧以下に設定すると、図5
(D)に示すように、マスキングパターン除去部分の細
孔内には顔料11が析着されて別の色に着色され、2色
の模様が得られる。他方、非マスキング部分も着色され
るように二次電気泳動着色の電圧を選定すると、図5
(E)に示すように、陽極酸化皮膜2の細孔3内に顔料
10、11が析出されて或る色(2種の顔料10及び1
1の混合色)に着色された部分(非マスキング部分)と
顔料11が析出されて別の色に着色された部分(マスキ
ングされていた部分)を生じ、2色の模様が得られる。
このことは、後述する他の方法においても同様である。
【0044】なお、前記マスキングパターン印刷工程か
ら二次電気泳動着色工程までの各工程は、図4の破線で
示すフローのように、種々の組合せで繰り返すことがで
きる。例えば、マスキングパターンを除去した図5
(C)に示す状態の陽極酸化皮膜表面に、既に電気泳動
着色された非マスキング部分を覆うようにマスキングパ
ターンを印刷したり、あるいは非マスキング部分とマス
キングされていた部分(非着色部分)の一部を覆うよう
にマスキングパターンを印刷した後、着色処理を行うこ
ともできる。あるいはまた、前記図2及び図3を参照し
て説明したように、アルカリ水溶液を用いた凹版印刷
法、インクジェット印刷法(ハンビック印刷法)等によ
る部分脱色工程と再電気泳動着色工程を行い、あるいは
これらの工程を繰り返すことにより、3色以上の多色パ
ターン状模様を得ることができる。その後、最終工程と
して封孔処理及び/又はクリヤー塗装を施すことが好ま
しいことは、前記したとおりであり、このことは、後述
する各方法においても同様である。
【0045】このようなマスキングパターンの印刷・除
去(あるいはさらに部分脱色)と着色処理を種々の態様
(印刷パターン、着色の色、順序等)で組み合わせるこ
とにより、種々の着色模様を得ることができる。また、
2種以上の顔料を陽極酸化皮膜の細孔内に泳動・析出さ
せて着色する場合、それらの顔料の混合色が得られる
が、その色相は電気泳動条件によって適宜調整できる。
例えば、3原色の顔料の各々の分散体を予め準備し、そ
れらを用いて順次電気泳動着色することにより、全ゆる
色相に着色可能となる。なお、2種以上の顔料を混合し
て所望の色相の分散体を調製し、1度の電気泳動着色で
着色処理を行うこともできるが、この方法の場合、着色
処理の都度、所望の色相の顔料分散体を調製することが
必要となる。これに対して、上記のように3原色の各顔
料分散体を用いて順次電気泳動着色する方法は、このよ
うな手間を省くことができ、生産性や経済性の点で有利
である。上記のような種々の態様は、本発明の他の方法
にも当てはまる。
【0046】図6は、前記図4に示す製造工程の変形例
を示しており、この場合、まず、陽極酸化処理したアル
ミニウム材の表面にマスキングパターンを印刷し、次に
これを希アルカリ水溶液に浸漬して非マスキング部分を
アルカリエッチングする。その後、非マスキング部分に
電気泳動着色法又は電解着色法により一次着色処理を施
す。この際、非マスキング部分には既にアルカリエッチ
ングが施されているため、前記したようにより低い電圧
で着色処理を行うことができる。次いで、マスキングパ
ターンを除去した後、電気泳動着色法又は電解着色法に
より二次着色処理を施し、マスキングされていた部分を
非マスキング部分と異なる色に着色した後、封孔処理及
び/又はクリヤー塗装を施す。なお、図6の破線で示す
フローのように、前記マスキングパターン印刷工程から
二次着色処理工程に至るプロセスは、繰り返すことがで
きる。
【0047】あるいはまた、マスキングパターン除去
後、一次着色処理で電気泳動着色された部分を、アルカ
リ水溶液を用いた凹版印刷法、インクジェット印刷法等
により部分脱色した後、二次着色処理を行うこともでき
る。また、このように電気泳動着色された部分に部分脱
色処理を行う場合、二次着色処理に先立って短時間再陽
極酸化を行うことが好ましい。すなわち、上記脱色工程
では、陽極酸化皮膜もアルカリ水溶液によって多少溶解
する。そのため、そのまま次の着色処理を行うと、顔料
粒子が部分凝集したり、後の脱色工程でも色ムラになる
場合がある。それを避けるために、図6に示すように脱
色工程の後に再度陽極酸化処理を行うことが好ましい。
再陽極酸化の条件としては、一次陽極酸化の処理条件等
にもよるが、一般に約100〜150Vで1分〜15分
程度が適当である。この再陽極酸化処理の際に、一次着
色処理により電気泳動着色された部分(非マスキング部
分)が酸性電解液中に浸漬されることにより、陽極酸化
皮膜の細孔内に析出している顔料粒子を覆っている樹脂
分散剤が硬化するので、二次着色処理の際に顔料粒子が
細孔内から離脱するようなこともない。
【0048】図7及び図8は本発明のアルミニウム材の
模様付け着色体の製造工程さらに他の例を示し、図7は
各工程の流れ図、図8は陽極酸化皮膜の断面構造の変化
の概略図を示している。まず、図8(A)に示すよう
に、陽極酸化処理したアルミニウム材1に、必要に応じ
てアルカリエッチングした後、前記したような方法によ
り電気泳動着色を施し、陽極酸化皮膜2全面の細孔2内
に顔料10を泳動・析着させる(電気泳動着色工程)。
次に、このように電気泳動着色したアルミニウム材1の
陽極酸化皮膜2の表面に、図8(B)に示すようにマス
キングパターン4を印刷する(マスキングパターン印刷
工程)。その後、このように処理したアルミニウム材1
を、使用した分散剤に応じた適当な希アルカリ水溶液に
浸漬し、顔料を再溶解させ、図8(C)に示すように非
マスキング部分の着色酸化皮膜の脱色を行う(非マスキ
ング部脱色工程)。
【0049】その後、アルミニウム材1を適当な剥離剤
に浸漬してマスキングパターン4を剥離することによ
り、図8(D)に示すように、陽極酸化皮膜2の細孔3
内に顔料10が析着されて着色された部分(マスキング
されていた部分)と脱色された陽極酸化皮膜2の地色
(シルバー色)の部分(非マスキング部分)の模様が得
られる(マスキングパターン除去工程)。次に、前記図
8(D)に示す状態のアルミニウム材を、例えば別の色
の顔料を含有する顔料分散体中に浸漬し、二次電気泳動
着色することにより、電解着色時の設定電圧に応じて、
図8(E)に示すように、陽極酸化皮膜2の細孔3内に
或る色の顔料10が析出されて着色された部分(マスキ
ングされていた部分)と別の色の顔料11が析出されて
着色された部分(非マスキング部分)からなる2色の模
様、又は図8(F)に示すように、マスキングされてい
た部分の陽極酸化皮膜細孔内に顔料11が析出されて2
種の顔料10、11の混合色に着色された部分と顔料1
1により着色された部分(非マスキング部分)からなる
2色の模様が得られる。なお、図7の破線で示すフロー
のように、前記マスキングパターン印刷から二次着色処
理に至るプロセスは繰り返すことができ、必要に応じて
最終工程として封孔処理及び又はクリヤー塗装を施す。
【0050】あるいはまた、図7に示すように、非マス
キング部分の脱色工程後、上記と同様にして二次着色処
理を行い、図8(G)に示すように非マスキング部分を
着色した後、マスキングパターンを除去する。次いで、
アルカリ水溶液を用いた凹版印刷法、インクジェット印
刷法等による部分脱色法又はマスキング印刷法等によ
り、二次着色処理された陽極酸化皮膜の一部を、図8
(H)に示すように部分的に脱色した後、所定の電圧で
三次着色処理を施すことにより、脱色した部分の陽極酸
化皮膜細孔内に顔料12が析着し、図8(I)に示すよ
うに着色された模様が得られる。なお、この三次着色処
理の設定電圧によっては、非脱色部分は顔料10と12
の混合色部分(マスキングされていた部分)と顔料11
と12の混合色部分(非マスキング部分)となる。ま
た、上記部分脱色工程後に再陽極酸化処理を行うことが
好ましいことは、前記したとおりである。
【0051】図9は、前記図8(D)に示す状態の陽極
酸化皮膜に対して前記電気泳動着色、マスキングパター
ン印刷、脱色、マスキングパターン除去及び電気泳動着
色の各工程を繰り返して得られた着色酸化皮膜の断面構
造の変化の概略図を示している。すなわち、前記図8
(D)に示す状態のアルミニウム材を別の色の顔料11
を含有する顔料分散体中に浸漬し、電気泳動着色するこ
とにより、図9(A−2)に示すように、非マスキング
部分が顔料11により着色され、マスキングされていた
部分が顔料10と別の顔料11の混合色に着色された着
色酸化皮膜が得られる(電気泳動着色工程)。次に、こ
のように電気泳動着色したアルミニウム材1の陽極酸化
皮膜2の表面に、図9(B−2)に示すようにマスキン
グパターン4を印刷する(マスキングパターン印刷工
程)。その後、このように処理したアルミニウム材1を
アルカリ水溶液に浸漬し、図9(C−2)に示すように
非マスキング部分の着色酸化皮膜の脱色を行う(非マス
キング部脱色工程)。次に、図9(D−2)に示すよう
にマスキングパターン4を除去した後(マスキングパタ
ーン除去工程)、再度、さらに別の色の顔料12を含有
する顔料分散体中に浸漬し、電気泳動着色することによ
り(電気泳動着色工程)、図9(A−3)に示すよう
に、顔料12により着色された部分(非マスキング部
分)と、2種の顔料11と12の混合色に着色された部
分と、3種の顔料10、11及び12の混合色に着色さ
れた部分とからなる着色模様の着色酸化皮膜が得られ
る。なお、電気泳動着色を或る一定の電圧以下の低い電
圧で行った場合、顔料12は非マスキング部分の細孔内
にのみ泳動・析出される。
【0052】図10は、本発明によるアルミニウム材の
多色模様付け着色体の製造工程のさらに別の例を示す流
れ図である。なお、その基本的な原理は前記図2乃至図
9に示す方法と同様であるので、陽極酸化皮膜の断面構
造の変化の図示は省略する。この方法は、陽極酸化皮膜
を形成したアルミニウム材にアルカリエッチングを行っ
た後、赤、黄、青の3原色の各顔料分散体を用い、それ
ぞれについて電気泳動着色、マスキングパターン印刷、
脱色、マスキングパターン除去の各工程を繰り返すもの
であり、それによって部分的に脱色された部分にパター
ニングされた様式で再着色でき、多色模様を形成でき
る。
【0053】また、図10では脱色工程後にマスキング
パターンの除去が行われている。これは、マスキング剤
として例えばワセリンを使用した場合、ワセリンは乾か
ないため一色目のマスキング剤として使用したワセリン
が二色目のパターンを描画する際に二色目のスクリーン
印刷版の表面に付着し、スクリーン印刷版を汚す恐れが
ある。これを防止するためには、脱色工程を終えてマス
キングが不要になった時点で、マスキングパターンを除
去しなければならないためである。しかしながら、マス
キング剤として常温乾燥型の樹脂を用いた場合、このよ
うな不都合はないため、例えば電気泳動着色工程の後に
マスキングパターン除去工程を行うこともできる。
【0054】上記方法による着色法は、印刷法とちょう
ど逆の手法であると言える。例えば、名刺のような小さ
な文字やパターンの着色をスクリーン印刷法により行う
場合、スクリーン印刷の製版技術を使って作製した版
(スクリーン)が必要不可欠である。この印刷用の版は
模様(文字)の部分に孔があいており、この孔から印刷
インクが染み出て、被印刷物に印刷される。これに対
し、前記方法ではこの版をマスキング剤のパターンを形
成するための道具として利用する。つまり、本来ならイ
ンキで印刷される部分にマスキング剤を付けたことにな
る。陽極酸化皮膜にこの方法でマスキングして着色を行
なうと、マスキング部分には着色されないで、マスキン
グされていない部分が着色されることになる。名刺の例
で言うならば、名刺の文字部分は白いまま(陽極酸化皮
膜の地色のまま)で、白い紙の部分が着色されることに
なり、写真でいう白黒反転したような仕上りとなる。従
って、従来の印刷技術で使用する版を使って、マスキン
グ部分が着色され、非マスキング部分は着色されないよ
うな模様付けを行なうためには、本発明の脱色法は極め
て有用な方法であると言える。
【0055】以下、実施例を示して本発明についてさら
に具体的に説明するが、本発明が下記実施例に限定され
るものでないことはもとよりである。
【0056】実施例1 常法に従って脱脂、エッチング、中和処理をしたアルミ
ニウム材A1050Pを陽極とし、リン酸を40g/l
含有する30℃の電解液中、DC125V、電流0.9
A/dm2 の条件で45分間電解を行い、皮膜厚さ約9
μmの陽極酸化皮膜を生成させた。次いで、このアルミ
ニウム板を0.1%NaOH水溶液中に5分間又は10
分間浸漬し、アルカリエッチングを行った後、硫酸ニッ
ケル(6水化物)30g/l、ホウ酸20g/l、硫酸
マグネシウム(7水化物)20g/l、硫酸アンモニウ
ム30g/lを含有するpH6.0の電解着色浴中で室
温で3分間、表1に示す種々の電圧で交流電解を行い、
陽極酸化皮膜を着色した。その結果を表1に示す。
【表1】 表1に示されるように、陽極酸化処理後にアルカリエッ
チングを行うことにより、より低い電圧で電解着色で
き、また電解着色できる電圧はアルカリ水溶液の温度が
高くなる程、またエッチング処理の時間が長くなる程、
低電圧側にシフトすることがわかる。また、このように
陽極酸化皮膜をアルカリエッチング後に電解着色するこ
とにより、アンバー色に着色された。ブロンズ系に着色
される場合でも、赤味の少ない色調となる。
【0057】実施例2 常法に従って脱脂、エッチング、中和処理をしたアルミ
ニウム材A1050Pを陽極とし、リン酸を30g/
l、マレイン酸を50g/l含有する32℃の電解液
中、DC110V、電流0.8A/dm2 の条件で45
分間電解を行い、皮膜厚さ約8μmの陽極酸化皮膜を生
成させた。次いで、このアルミニウム板を25℃の0.
1%KOH水溶液中に10分間浸漬し、アルカリエッチ
ングを行った後、硫酸ニッケル(6水化物)30g/
l、ホウ酸20g/l、硫酸マグネシウム(7水化物)
20g/l、硫酸アンモニウム30g/lを含有するp
H6.0の電解着色浴中で室温3分間交流電解を行い、
陽極酸化皮膜を着色した。その結果、陽極酸化皮膜は、
電解着色処理の電圧が30Vの場合にはごく淡いグレー
色に、また40Vの場合にはうぐいす色に着色された。
【0058】実施例3 常法に従って脱脂、エッチング、中和処理をしたアルミ
ニウム材A1050Pを陽極とし、リン酸を30g/
l、マレイン酸を50g/l含有する32℃の電解液
中、DC130Vで50分間電解を行い、陽極酸化処理
した。次いで、このアルミニウム板を銅フタロシアニン
ブルーの水分散体中に浸漬し、該アルミニウム板を陽極
とし、1V/secでDC125Vまで昇圧し、その後
120秒間そのまま保持してアルミニウム材の陽極酸化
皮膜全面を青色に電気泳動着色した後、25℃の0.1
%NaOH水溶液中に上記アルミニウム板の下半分を1
0分間浸漬し、アルカリエッチングを行った。その結
果、アルミニウム板の下半分の着色酸化皮膜のみが脱色
され、シルバー色となった。その後、このように処理し
たアルミニウム板を、再度、アントラキノン系顔料水分
散体中に全体的に浸漬し、1V/secでDC115V
まで昇圧し、120秒間そのまま保持して電気泳動着色
を行ったところ、アルミニウム材の脱色した部分(下半
分)は赤色に着色したが、上半分は青色のままであっ
た。なお、銅フタロシアニンブルーの水分散体は、銅フ
タロシアニンブルー50gを98%の硫酸60ミリリッ
トルに溶解し、攪拌しながら、これを0.5%のポリア
クリル酸ソーダ水溶液5リットルに加えてフタロシアニ
ン粒子を析出させ、硫酸根がなくなるまで水洗した後、
水酸化ナトリウムでpH9に調整し、全量が1リットル
になるように0.5%アクリル酸ソーダ水溶液を加え、
次いで、これをサンドミルにかけて分散させ、平均粒子
径50nmの銅フタロシアニンブルーの水分散体を得
た。一方、アントラキノン系顔料水分散体は、ピラント
ロンレッド100gに1%ポリスチレンスルホン酸ソー
ダ水溶液を全量が1リットルとなるように加え、これを
サンドミルを用いて10時間分散させたもので、顔料の
平均粒子径は55nmであった。
【0059】実施例4 アルミニウム材A1050を常法に従って前処理した
後、30℃のリン酸水溶液中(30g/リットル)にお
いて1A/dm2 の電流密度で60分間陽極酸化し、得
られたアルミニウム材の陽極酸化皮膜に以下の工程を組
み合わせて実施し、着色模様付けを行った。 アルカリエッチング:被処理アルミニウム材を0.1%
NaOH水溶液に5分間浸漬した。 電気泳動着色(顔料着色):着色の電気泳動の条件とし
ては、1V/secで110Vまで昇圧し、そのまま1
20秒間維持した。顔料は、緑はフタロシアニングリー
ン、青はフタロシアニンブルーを使用した。顔料分散体
の調製方法は実施例3と同様である。 マスキングパターン印刷:パターンは色分解製版装置
(理想科学工業(株)製)で作製した版下(名刺)を用
い、印刷インキの代わりに無色で、かつ除去が比較的簡
単なワセリンを用いた。 脱色:マスキングパターンを印刷したサンプルを0.1
%NaOH水溶液に60秒間浸漬し、脱色した。 マスキングパターン除去 サンプルをヘキサンに10分間浸漬し、ワセリンを溶解
除去した。 電解着色:前記実施例1で用いた電解着色浴を用い、A
C60Vで3分間交流電解した。これらの工程を組み合
わせ、以下の3種類のサンプルを作製した。 サンプル1:前処理→陽極酸化→アルカリエッチング→
顔料着色(緑)→マスキングパターン印刷→非マスキン
グ部脱色→マスキングパターン除去 サンプル2:前処理→陽極酸化→アルカリエッチング→
マスキングパターン印刷→顔料着色(緑)→マスキング
パターン除去 サンプル3:前処理→陽極酸化→顔料着色(青)→マス
キングパターン印刷→非マスキング部脱色→マスキング
パターン除去→交流電解着色(ブロンズ) その結果、電話番号のような小さな文字まではっきりと
読み取れ、小さなパターンもこの方法で顔料着色できる
ことが分かった。また、サンプル3のように従来技術で
あるブロンズ電解着色と顔料着色という新しい技術の組
み合わせも可能であることも確認できた。さらに、サン
プル3の最後の工程である交流電解着色の代わりに、も
う一度異なる色で顔料着色を行なってツートーンの顔料
着色が可能であることも確認した。
【0060】実施例5 図10に示す工程順に従い、アルミニウム材の陽極酸化
皮膜に着色模様付けを行った。なお、各工程の条件は、
電気泳動着色において、青のフタロシアニンブルーの他
に赤はアントラキノン系、黄はキナクリドン系の顔料を
使用し、また電気泳動条件は、昇圧スピードを0.5V
/secとした以外は実施例4の場合と同様である。昇
圧スピードを遅くした理由は、赤の顔料着色時の色ムラ
を少なくするためである。また、脱色工程の後に1A/
dm2 で10分間の再陽極酸化を行なった。その結果、
原稿通りのパターンの多色模様に着色できた。
【0061】
【発明の効果】以上のように、本発明のアルミニウム材
の着色方法によれば、陽極酸化皮膜を形成したアルミニ
ウム材を希アルカリ水溶液によりエッチング処理して陽
極酸化皮膜の細孔底部のバリヤー層の露出部表面を化学
的に溶解した後、金属塩を含む電解着色浴中で電解着色
するか、あるいは陽極酸化皮膜細孔内へ顔料を電気泳動
法により析出させて着色するものであるため、アルミニ
ウム材の陽極酸化皮膜を陽極酸化電圧よりも低い電圧で
着色できると共に、エッチング処理部分を非処理部分と
異なる色に着色できる。また、本発明のアルミニウム材
の模様付け着色体の製造方法は、このような性質を、電
気泳動着色皮膜の部分脱色技術又はマスキングパターン
印刷技術と組み合わせることによって、アルミニウム材
の陽極酸化皮膜に着色模様付けを行うため、文字、図形
等の微細なパターンの着色模様の酸化皮膜をアルミニウ
ム材表面に形成でき、また顔料粒子の脱落やそれによる
変・退色もなく、陽極酸化皮膜が剥れない限り着色模様
が消えることはなく、耐久性、耐光性に優れた色鮮やか
な着色模様が得られる。また、マスキングパターン印刷
技術ではなく、希アルカリ水溶液を電気泳動着色法によ
り形成された着色酸化皮膜表面の一部に直接作用させる
部分脱色技術によれば、マスキング剤、デマスキング剤
を使用する必要がなく、工程も簡素化されるという利点
が得られる。また、耐光性に優れたカラフルな多色模様
付けをアルミニウム材の陽極酸化皮膜に施すことがで
き、しかも精細なパターンも可能であるので、例えば景
観材料のサインボード等の耐久性向上を図ることができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のアルミニウム材の着色方法の一実施態
様を示す流れ図である。
【図2】本発明のアルミニウム材の着色方法の他の実施
態様を示す流れ図である。
【図3】図2に示す各工程における陽極酸化皮膜の断面
構造の変化の概略図である。
【図4】本発明のアルミニウム材の模様付け着色体の製
造工程の一実施態様を示す流れ図である。
【図5】図4に示す各工程における陽極酸化皮膜の断面
構造の変化の概略図である。
【図6】本発明のアルミニウム材の模様付け着色体の製
造工程の他の実施態様を示す流れ図である。
【図7】本発明のアルミニウム材の模様付け着色体の製
造工程の別の実施態様を示す流れ図である。
【図8】図7に示す各工程における陽極酸化皮膜の断面
構造の変化の概略図である。
【図9】本発明のアルミニウム材の模様付け着色体の製
造工程のさらに他の実施態様における陽極酸化皮膜の断
面構造の変化の概略図である。
【図10】本発明のアルミニウム材の模様付け着色体の
製造工程のさらに別の実施態様を示す流れ図である。
【符号の説明】
1 アルミニウム材 2 陽極酸化皮膜 3 細孔 4 マスキングパターン 10,11,12 顔料

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 陽極酸化皮膜を形成したアルミニウム材
    を希アルカリ水溶液によりエッチング処理して陽極酸化
    皮膜の細孔底部のバリヤー層の露出部表面を化学的に溶
    解した後、金属塩を含む電解着色浴中で電解着色するこ
    とを特徴とするアルミニウム材の着色方法。
  2. 【請求項2】 陽極酸化皮膜を形成したアルミニウム材
    を希アルカリ水溶液によりエッチング処理して陽極酸化
    皮膜の細孔底部のバリヤー層の露出部表面を化学的に溶
    解した後、顔料分散体中に浸漬し、陽極酸化皮膜の細孔
    中に電気泳動法によって顔料粒子を泳動・析出させて着
    色することを特徴とするアルミニウム材の着色方法。
  3. 【請求項3】 陽極酸化皮膜を形成したアルミニウム材
    の表面の一部を希アルカリ水溶液によりエッチング処理
    してその部分の陽極酸化皮膜の細孔底部のバリヤー層の
    露出部表面を化学的に溶解した後、金属塩を含む電解着
    色浴中で電解着色することにより、上記エッチング処理
    部分を非処理部分と異なる色に着色することを特徴とす
    るアルミニウム材の模様付け着色体の製造方法。
  4. 【請求項4】 (a)陽極酸化皮膜を形成したアルミニ
    ウム材を顔料分散体中に浸漬し、陽極酸化皮膜の細孔中
    に電気泳動法によって顔料粒子を泳動・析出させて着色
    する工程、(b)該着色酸化皮膜表面の一部を希アルカ
    リ水溶液によりエッチング処理してその部分を脱色する
    工程、(c)部分的に脱色したアルミニウム材を、別の
    顔料分散体中に浸漬し、陽極酸化皮膜の細孔中に電気泳
    動法によって顔料粒子を泳動・析出させて着色するか、
    又は金属塩を含む電解着色浴中に浸漬して電解着色処理
    を施し、エッチング処理部分を非処理部分と異なる色に
    着色する工程を含むことを特徴とするアルミニウム材の
    模様付け着色体の製造方法。
  5. 【請求項5】 (イ)陽極酸化皮膜を形成したアルミニ
    ウム材を希アルカリ水溶液によりエッチング処理して陽
    極酸化皮膜の細孔底部のバリヤー層の露出部表面を化学
    的に溶解するアルカリエッチング工程、(ロ)アルミニ
    ウム材表面にマスキングパターンを印刷する工程、
    (ハ)マスキングパターンを印刷したアルミニウム材を
    顔料分散体中に浸漬し、陽極酸化皮膜の細孔中に電気泳
    動法によって顔料粒子を泳動・析出させるか、又は金属
    塩を含む電解着色浴中で電解着色して非マスキング部分
    を着色する工程、(ニ)上記マスキングパターンを除去
    する工程、及び(ホ)上記部分的に着色したアルミニウ
    ム材を別の顔料分散体中に浸漬し、陽極酸化皮膜の細孔
    中に電気泳動法によって顔料粒子を泳動・析出させて着
    色するか、又は別の電解着色浴中で電解着色処理を施
    し、マスキングパターン除去部分を非マスキング部分と
    異なる色に着色する工程を含むことを特徴とするアルミ
    ニウム材の模様付け着色体の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記(イ)アルカリエッチング工程を行
    った後に(ロ)マスキングパターン印刷工程を行うか、
    又はその逆の順序で行う請求項5に記載の方法。
  7. 【請求項7】 (A−1)陽極酸化皮膜を形成したアル
    ミニウム材を顔料分散体中に浸漬し、陽極酸化皮膜の細
    孔中に電気泳動法によって顔料粒子を泳動・析出させて
    着色する工程、(B)上記(A−1)工程で得られた着
    色酸化皮膜表面にマスキングパターンを印刷する工程、
    (C)希アルカリ水溶液によりエッチング処理して非マ
    スキング部分を脱色する工程、(D)上記マスキングパ
    ターンを除去する工程、及び(A−2)上記(C)工程
    で部分的に脱色したアルミニウム材を、別の顔料分散体
    中に浸漬し、陽極酸化皮膜の細孔中に電気泳動法によっ
    て顔料粒子を泳動・析出させて着色するか、又は金属塩
    を含む電解着色浴中で電解着色処理を施し、非マスキン
    グ部をマスキングパターン除去部分と異なる色に再着色
    する工程を含むことを特徴とするアルミニウム材の模様
    付け着色体の製造方法。
  8. 【請求項8】 (A−1)陽極酸化皮膜を形成したアル
    ミニウム材を顔料分散体中に浸漬し、陽極酸化皮膜の細
    孔中に電気泳動法によって顔料粒子を泳動・析出させて
    着色する工程、(B)上記(A−1)工程で得られた着
    色酸化皮膜表面にマスキングパターンを印刷する工程、
    (C−1)希アルカリ水溶液によりエッチング処理して
    非マスキング部分の着色酸化皮膜を脱色する工程、(A
    −2)上記(C−1)工程で部分的に脱色したアルミニ
    ウム材を、別の顔料分散体中に浸漬し、陽極酸化皮膜の
    細孔中に電気泳動法によって顔料粒子を泳動・析出させ
    て着色するか、又は金属塩を含む電解着色浴中で電解着
    色処理を施し、非マスキング部をマスキングパターン除
    去部分と異なる色に再着色する工程、(D)上記マスキ
    ングパターンを除去する工程、(C−2)上記着色酸化
    皮膜表面の一部を希アルカリ水溶液によりエッチング処
    理して脱色する工程、及び(A−3)上記(C−2)工
    程で部分的に脱色したアルミニウム材を、さらに別の顔
    料分散体中に浸漬し、陽極酸化皮膜の細孔中に電気泳動
    法によって顔料粒子を泳動・析出させて着色するか、又
    は別の電解着色浴中で電解着色処理を施し、脱色した部
    分をそれ以外の部分と異なる色に再着色する工程を含む
    ことを特徴とするアルミニウム材の模様付け着色体の製
    造方法。
  9. 【請求項9】 陽極酸化皮膜を形成し、希アルカリ水溶
    液によりエッチング処理して陽極酸化皮膜の細孔底部の
    バリヤー層の露出部表面を化学的に溶解したアルミニウ
    ム材を、(A−1)顔料分散体中に浸漬し、陽極酸化皮
    膜の細孔中に電気泳動法によって顔料粒子を泳動・析出
    させて着色する工程、(B−1)上記(A−1)工程で
    得られた着色酸化皮膜表面にマスキングパターンを印刷
    する工程、(C−1)希アルカリ水溶液によりエッチン
    グ処理して非マスキング部分の着色酸化皮膜を脱色する
    工程、(D−1)上記マスキングパターンを除去する工
    程、(A−2)上記(C−1)工程で部分的に脱色した
    アルミニウム材を、別の顔料分散体中に浸漬し、陽極酸
    化皮膜の細孔中に電気泳動法によって顔料粒子を泳動・
    析出させ、脱色した部分をマスキングパターン除去部分
    と異なる色に再着色する工程、(B−2)上記(A−
    2)工程で得られた着色酸化皮膜表面にマスキングパタ
    ーンを印刷する工程、(C−2)希アルカリ水溶液によ
    りエッチング処理して非マスキング部分の着色酸化皮膜
    を脱色する工程、(D−2)上記(B−2)工程で形成
    されたマスキングパターンを除去する工程、及び(E)
    酸性電解液中に浸漬して再度陽極酸化処理する工程を含
    むことを特徴とするアルミニウム材の模様付け着色体の
    製造方法。
  10. 【請求項10】 前記(A−2)工程、(B−2)工
    程、(C−2)工程及び(D−2)工程を1回又は2回
    以上繰り返すことを特徴とする請求項9に記載の方法。
  11. 【請求項11】 前記再着色工程(A−2)又は(A−
    3)のいずれかの工程の前にアルミニウム材に再度陽極
    酸化処理を施すことを特徴とする請求項7乃至10のい
    ずれか一項に記載の方法。
  12. 【請求項12】 さらに最終工程として封孔処理及び/
    又はクリヤー塗装処理を含むことを特徴とする請求項1
    乃至11のいずれか一項に記載の方法。
  13. 【請求項13】 アルミニウム材の陽極酸化皮膜に前記
    請求項3乃至12のいずれか一項に記載の方法に従って
    着色模様を施してなるアルミニウム材の模様付け着色
    体。
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