JPH11221273A - 潤滑性医療用具およびその製造方法 - Google Patents

潤滑性医療用具およびその製造方法

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JPH11221273A
JPH11221273A JP10028664A JP2866498A JPH11221273A JP H11221273 A JPH11221273 A JP H11221273A JP 10028664 A JP10028664 A JP 10028664A JP 2866498 A JP2866498 A JP 2866498A JP H11221273 A JPH11221273 A JP H11221273A
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JP
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medical device
polymer
polymer compound
compound
treatment
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JP10028664A
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Yoshito Ikada
義人 筏
Hiroo Iwata
博夫 岩田
Hiroyuki Kawashima
裕幸 川島
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KANEKA MEDICS KK
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KANEKA MEDICS KK
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 湿潤状態において優れた潤滑性を有すると共
に、当該潤滑性の耐久性と安定性が優れている潤滑性医
療用具およびその製造方法を提供すること。 【解決手段】 本発明の潤滑性医療用具は、医療用具を
構成する基材の表面に、アクリル酸、メタクリル酸、そ
れらのエステルおよび塩、並びにアクリル酸アミドおよ
びメタクリル酸アミドの少なくとも1種による成分を含
有してなる親水性高分子物質が付着されている。この潤
滑性医療用具は、医療用具を構成する基材の表面に、活
性エステル基を側鎖に有する高分子化合物を作用させて
当該高分子化合物を前記基材の表面に結合させる工程
と、この結合された高分子化合物を親水性高分子物質に
変換する後処理工程とを含む、潤滑性付与処理がなされ
て製造することができる。ここに、高分子化合物の例は
N−ヒドロキシ酸イミド化合物の不飽和カルボン酸エス
テルの重合体または共重合体である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば管状器官を
通して生体内に挿入されて使用されるカテーテルなどの
医療用具に関し、特に表面が湿潤状態で高い潤滑性を示
す潤滑性医療用具およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、カテーテル、ガイドワイアなど
の例えば管状器官を通して生体内に挿入されて留置され
る医療用具においては、その挿入操作を容易にするため
に、その表面が高い潤滑性を有することが必要とされて
いる。医療用具は、通常、シリコーンその他の生体組織
に適合する高分子物質により形成されるが、その表面に
潤滑性を与えるための方法として、従来、いくつかの方
法が知られている。
【0003】例えば特公平1−33181号公報には、
医療用具の基材の表面に無水マレイン酸系高分子物質層
を設けることが示されており、また特公平3−7781
9号公報には、基材の表面にイソシアネート基を生成さ
せ、これを利用して親水性樹脂を基材の表面に結合させ
る方法が開示されている。
【0004】しかしながら、以上のような従来の方法で
は、マレイン酸が体液中で多価金属イオンとコンプレッ
クスを作るために潤滑性が低下することがある。一方、
そのようなことを防止するためにハーフエステル化する
ことが考えられるが、この場合は操作が繁雑となる。ま
た、特開平4−90877号公報では、アジド化合物を
含有するコーティング物質を塗布する方法が提案されて
いるが、操作がきわめて煩雑であって量産に適さず、実
用的なものではない。更に、特表平8−505295号
公報には、プラズマ処理によって親水性重合体を基材に
固定する方法が記載されているが、当該処理は製造条件
が繊細であって量産性に欠け、しかも耐久性がなお不十
分である、という問題点がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような
問題点を解決し、湿潤状態において優れた潤滑性を有す
ると共に、当該潤滑性の耐久性または安定性が優れてい
る潤滑性医療用具を提供することを目的とする。本発明
の他の目的は、上記のような潤滑性医療用具を有利に製
造することのできる方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の潤滑性医療用具
は、医療用具を構成する基材の少なくとも表面に、アク
リル酸、メタクリル酸、それらのエステルおよび塩、並
びにアクリル酸アミドおよびメタクリル酸アミドの少な
くとも1種による成分を含有してなる親水性高分子物質
が付着されていることを特徴とする。ここに、親水性高
分子物質は、N−ビニルピロリドンなどの親水性モノマ
ー成分を含有する共重合体であることが好ましい。ま
た、上記の親水性高分子物質を構成する重合体におい
て、アクリル酸、メタクリル酸、それらのエステルおよ
び塩、並びにアクリル酸アミドおよびメタクリル酸アミ
ドの少なくとも1種による成分の含有割合が1〜100
モル%であることが好ましい。
【0007】本発明の潤滑性医療用具の製造方法は、医
療用具を構成する基材の表面に、活性エステル基を側鎖
に有する高分子化合物を作用させて当該高分子化合物を
前記基材の表面に結合させる工程と、この結合された高
分子化合物を親水性高分子物質に変換する後処理工程と
を含む、潤滑性付与処理がなされることを特徴とする。
【0008】また、医療用具を構成する基材におけるア
ミノ基が導入された表面に、アミノ基と反応する活性エ
ステル基を側鎖に有する高分子化合物を作用させて当該
高分子化合物を前記基材の表面に結合させる工程と、こ
の結合された高分子化合物を親水性高分子物質に変換す
る後処理工程とを含む、潤滑性付与処理がなされること
を特徴とする。
【0009】以上において、高分子化合物が、N−ヒド
ロキシ環状イミド化合物の(メタ)アクリル酸エステル
による単量体成分を含有する重合体または共重合体であ
ることが好ましい。また、この共重合体において、N−
ヒドロキシ環状イミド化合物の(メタ)アクリル酸エス
テルによる単量体成分の含有割合が1〜99モル%であ
ることが好ましい。
【0010】高分子化合物を構成するN−ヒドロキシ環
状イミド化合物の(メタ)アクリル酸エステルにおける
N−ヒドロキシ環状イミド化合物の部分がN−ヒドロキ
シコハク酸イミドまたはその誘導体によるものであるこ
とが好ましい。
【0011】また、高分子化合物を親水性高分子物質に
変換するための後処理工程は、水を作用させることによ
って活性エステル基をカルボキシル基に変換する工程、
またはアンモニアを作用させることによって活性エステ
ル基をアミド基に変換する工程である。
【0012】本発明の潤滑性医療用具は、その表面に、
アクリル酸、メタクリル酸、それらのエステルおよび
塩、アクリル酸アミド並びにメタクリル酸アミドの少な
くとも1種による成分を含有してなる親水性高分子物質
が付着されているため、湿潤状態においてきわめて優れ
た潤滑性を示すものとなる。
【0013】本発明の製造方法によれば、側鎖に活性エ
ステル基を有する高分子化合物を利用することにより、
目的とする基材の表面に親水性高分子物質を安定に付着
させることができ、当該親水性高分子物質が基材の表面
に強固に結合されたものとなるため、潤滑性の耐久性が
優れたものとなり、長期間にわたって安定した潤滑性が
発揮される潤滑性医療用具が得られる。以上において、
高分子化合物として、N−ヒドロキシ環状イミド化合物
の(メタ)アクリル酸エステルによる単量体成分を有す
る重合体または共重合体を用いることにより、アミノ基
を有する基材の表面に当該高分子化合物を化学的に結合
させることができる。また、高分子化合物が、当該特定
の(メタ)アクリル酸エステルによる単量体成分と、N
−ビニルピロリドンによる単量体成分とを有する共重合
体であることにより、実際上、きわめて好ましい潤滑性
医療用具が得られる。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明について具体的に説
明する。本発明においては、医療用具を構成する基材の
表面に、特定の単量体から得られる親水性高分子物質を
付着させることにより、潤滑性を付与して潤滑性医療用
具を得る。ここに、親水性高分子物質は、アクリル酸、
メタクリル酸、それらのエステルおよび塩、並びにアク
リル酸アミドおよびメタクリル酸アミドの少なくとも1
種による成分から得られるホモポリマーまたは共重合体
である。そして、共重合体とする場合の共単量体として
は例えばN−ビニルピロリドンが好ましく用いられ、こ
れにより、好適な生体適合性が得られる。
【0015】上記の親水性高分子物質は水に対する親和
性が大きいため、水、各種の体液、その他の水性液体に
接触して湿潤状態とされたときに、優れた潤滑性が発揮
される。従って、当該親水性高分子物質が表面に付着さ
れた本発明の医療用具は、それ自体がきわめて好適な潤
滑性を示すものとなる。
【0016】本発明において、医療用具を構成する基材
としては、特に限定されるものではなく、例えばポリア
ミド、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、
ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、
ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、ポリプロピレ
ン、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、
各種ゴム、その他の重合体もしくは共重合体などの有機
高分子体、またはガラス、セラミックス、ステンレス鋼
その他の金属などの無機材質であってもよい。本発明に
おいては、特に有機高分子体よりなるものが好ましく、
シリコーン樹脂、ポリアミド、ポリエステル、ポリ塩化
ビニル、ポリウレタン、天然ゴムが好ましい。
【0017】基材の表面に親水性高分子物質を付着させ
るためには、当該親水性高分子物質によって基材を処理
すればよいが、表面に活性個所が存在しない基材に対し
て単に付着処理を行っただけでは、親水性高分子物質の
基材に対する結合の程度が低いものとなるために使用上
の耐久性が小さく、潤滑性が容易に消失してしまう。こ
のような点から、親水性高分子物質は、基材の表面に化
学的に結合されていることが好ましい。
【0018】しかしながら、上記の親水性高分子物質
は、それ自体、化学的活性が低いものであるため、本発
明においては、以下のような方法により、潤滑性医療用
具を製造する。すなわち、表面に活性基を有する基材を
用意し、当該活性基と化学的に反応する活性エステル基
を側鎖に有する高分子化合物を当該基材に作用させ、こ
のようにして得られる基材に対して後処理を施すことに
より、当該高分子化合物より親水性高分子物質を生成さ
せる。このような方法によれば、親水性高分子物質の基
材に対する結合状態が強固で安定なものとなり、当該親
水性高分子物質による潤滑性が十分に優れた耐久性を有
するものとなる。
【0019】医療用具を構成する基材の表面における活
性基としては、生体適合性の点からアミノ基が好まし
い。基材を構成する材質がアミノ基を有する場合には、
特にアミノ基を導入することは不要であるが、一般的に
は、表面に充分なアミノ基を有する基材は少ないので通
常、アミノ基を導入することが必要である。アミノ基を
導入する手段としては、基材を例えば各種のアミノ基含
有カップリング剤によって処理する方法、基材の表面に
イソシアネート基を導入した後、当該イソシアネート基
を加水分解してアミノ基に変換する方法などを利用する
ことができる。
【0020】そして、基材の表面にアミノ基またはイソ
シアネート基を導入するためには、それらの基を有する
適宜の化合物よりなる処理物質を適宜の溶剤に溶解また
は分散させることによって処理液を調製し、この処理液
中に基材を浸漬し、または基材の表面に処理液を塗布
し、乾燥し、更に必要に応じて加熱して固定する方法を
利用することができる。
【0021】アミノ基を導入するための処理物質として
は、特にアミノ基含有シランカップリング剤を好適に用
いることができる。その具体例としては、例えばγ−ア
ミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチ
ル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β
(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシ
シラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキ
シシランなどを挙げることができる。
【0022】また、イソシアネート基を導入するための
処理物質の具体例としては、例えば4,4’−ジフェニ
ルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネー
ト、ヘキサメチレンジイソシアネート、エチレンジイソ
シアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレン
ジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリ
フェニルメタントリイソシアネート、トルエントリイソ
シアネート、並びにこれらのポリイソシアネート体、そ
の他を挙げることができる。
【0023】上記のアミノ基が導入された医療用具の基
材に対し、後述する後処理によって特定の親水性高分子
物質層を形成する、アミノ基と化学的に反応する活性エ
ステル基をその側鎖に有する特定の高分子化合物を作用
させる。ここに、特定の高分子化合物としては、N−ヒ
ドロキシ環状イミド化合物の(メタ)アクリル酸エステ
ルによる単量体成分を含有する重合体または共重合体が
用いられる。
【0024】特定の高分子化合物を構成する必須の単量
体成分の代表的なものは、下記の式(1)で示されるア
クリル酸またはメタクリル酸と、N−ヒドロキシコハク
酸イミドまたはその誘導体とにより得られるエステルで
ある。式(1)は、Xが水素原子のときはN−ヒドロキ
シコハク酸イミドのアクリル酸エステルを、またXがメ
チル基のときはN−ヒドロキシコハク酸イミドのメタク
リル酸エステルを示す構造式である。
【0025】
【化1】
【0026】式(1)で示される単量体化合物が単独で
重合された重合体、または他の単量体化合物との共重合
体よりなる高分子化合物は、下記の式(2)に模式的に
示されている。式(2)において、波線は線状の高分子
鎖を表し、この線状の高分子鎖から分岐する側鎖を形成
するよう、鎖線で囲んで示すN−ヒドロキシコハク酸イ
ミドによる活性エステル基が結合している。そして、こ
の高分子化合物が、アミノ基を有する基材に作用され
る。実際には、当該高分子化合物を適宜の溶剤に溶解さ
せることによって処理液を調製し、この処理液中に基材
を浸漬し、または基材の表面に処理液を塗布し、乾燥
し、更に必要に応じて加熱して固定する方法を利用する
ことができる。
【0027】
【化2】
【0028】上記の処理により、下記の式(3)に示す
ように、高分子化合物の活性エステル基が基材のアミノ
基と反応する結果、基材は、基−CONH−を介して長
い高分子鎖が化学的に結合したものとなる。この反応に
おいて、アミノ基と反応する活性エステル基は全活性エ
ステル基の一部のみであり、相当の割合の活性エステル
基が長い高分子鎖に残存している。また、この反応で
は、N−ヒドロキシコハク酸イミドが副生される。
【0029】
【化3】
【0030】このようにして得られる基材は、更に、水
またはアンモニアが作用される後処理に付される。具体
的に説明すると、後処理において水が作用されると、下
記の式(4)に示すように、高分子化合物中に残存して
いる活性エステル基はカルボキシル基に変換され、これ
により、アクリル酸またはメタクリル酸による成分を含
有する親水性高分子物質となる。この水による後処理
は、弱アルカリ性で行うことが好ましい。この後処理の
反応においてはN−ヒドロキシコハク酸イミドが副生さ
れ、表面から除去される。ここに形成されたカルボキシ
ル基は、適宜の有機基によるエステルまたは金属による
塩の形態とすることができる。
【0031】
【化4】
【0032】後処理においてアンモニアが作用される場
合には、式(5)に示すように、活性エステル基はアミ
ド基に変換され、これにより、アクリル酸アミドまたは
メタクリル酸アミドによる成分を含有する親水性高分子
物質となる。この後処理の反応においても、N−ヒドロ
キシコハク酸イミドが副生され、表面から除去される。
【0033】
【化5】
【0034】本発明において、上記の高分子化合物は、
N−ヒドロキシ環状イミド化合物の(メタ)アクリル酸
エステルと、他の重合性単量体による共重合体であって
もよい。ここに、他の重合性単量体としては、N−ビニ
ル−2−ピロリドン、2−ヒドロキシエチルメタクリレ
ート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸
アミド、メタクリル酸アミド、その他を挙げることがで
きるが、これらのうち、特にN−ビニル−2−ピロリド
ンが、生体適合性に優れた親水性高分子物質が得られる
点で好ましい。
【0035】高分子化合物を構成する重合体において、
活性エステル基を有する(メタ)アクリル酸の割合は1
〜100モル%とされることが好ましく、これにより、
良好な湿潤潤滑性の耐久性を有し、しかもその安定性が
優れた潤滑性医療用具を得ることができる。一方、この
活性エステル化された(メタ)アクリル酸の割合が過小
の高分子化合物を用いた場合には、基材のアミノ基との
反応性が低くなる結果、良好な潤滑性が付与されないお
それがある。
【0036】上記高分子化合物における必須の単量体成
分において、(メタ)アクリル酸の部分は重合性を有す
るカルボン酸によるものであればよく、例えばフマル
酸、マレイン酸、クロトン酸、プロリン酸などの不飽和
カルボン酸によるものとすることができる。また、側鎖
に活性エステル基を形成するためのN−ヒドロキシ環状
イミド化合物の部分としては、N−ヒドロキシコハク酸
イミド以外に、同様の骨格を有する化合物、例えば下記
の式(6)に示すN−ヒドロキシスルホコハク酸イミド
によるものとすることができる。
【0037】
【化6】
【0038】以上において、必要に応じて用いられる溶
剤は、処理物質または高分子化合物を溶解するものであ
れば特に限定されるものではなく、例えばクロロホル
ム、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒ
ドロフラン、キシレン、メチルアルコールなどが用いら
れる。
【0039】以上の潤滑性付与処理により、医療用具を
構成する基材の表面に特定の親水性高分子物質が付着さ
れ、この親水性高分子物質によって優れた湿潤潤滑性が
付与される。しかも、この親水性高分子物質が基材に化
学的に結合した状態とされることにより、その耐久性が
大きくて容易に離脱することがなく、従って潤滑性の耐
久性も優れたものとなる。
【0040】以上において、基材に対するアミノ基導入
処理は必ずしも必要なものではないが、基材がアミノ基
またはイソシアネート基などの当該親水性高分子物質と
親和性を有する基を含有しない場合には、そのままで
は、親水性高分子物質の基材に対する結合状態が十分に
強固なものとならないために長期間にわたって優れた潤
滑性が発揮されない場合が多い。なお、アミノ基導入処
理または潤滑性付与処理において、各処理剤の付着量、
乾燥あるいは加熱温度、加熱時間などの処理条件につい
ては、基材の材質、処理剤の種類、その他の条件に応じ
て適宜選定することができる。
【0041】本発明の対象となる医療用具は、特に限定
されるものではなく、種々の医療用具に対して優れた潤
滑性を付与することができる。医療用具の具体例として
は、体内に挿入され、あるいは更に留置される各種のカ
テーテル、カニュラ、チューブ、ワイア、シート、その
他を挙げることができる。
【0042】
【実施例】実施例1 ポリアミド樹脂(ナイロン)エラストマー製のペバック
スシート(厚み1mm)を、エチルアルコールに浸漬し
た状態で30分間超音波洗浄した上で乾燥させたものを
試料として用い、これをγ−アミノプロピルトリエトキ
シシランの濃度1.0%のヘキサン溶液中に30秒間浸
漬した後、温度100℃で5分間加熱して固定し、更に
室温で放置冷却することにより、アミノ基導入処理を行
った。次に、N−ヒドロキシコハク酸イミドのアクリル
酸エステルと、N−ビニル−2−ピロリドンとを5:9
5のモル比となる割合で共重合させて得られた高分子化
合物の濃度0.5%のクロロホルム溶液中に、上記のア
ミノ基導入処理がなされた試料を10秒間浸漬した後、
温度100℃で1時間加熱して固定して室温で放置冷却
した。更に、この試料を0.1Nの水酸化ナトリウム溶
液中に5秒間浸漬して後処理を行い、その後直ちに蒸留
水で洗浄し、温度100℃で10分間乾燥させて、潤滑
性付与処理がなされたシートを得た。これを「処理試料
1」とする。
【0043】実施例2 ポリアミド樹脂(ナイロン)エラストマー製の清浄な血
管造影用カテーテルを医療用具の試料として用い、これ
を、γ−アミノプロピルトリエトキシシランの濃度1.
0%のメチルエチルケトン溶液中に60秒間浸漬した
後、温度115℃で5分間加熱して固定し、更に室温で
放置冷却することにより、アミノ基導入処理を行った。
次に、N−ヒドロキシコハク酸イミドのアクリル酸エス
テルと、N−ビニル−2−ピロリドンとを5:95のモ
ル比となる割合で共重合させて得られた高分子化合物の
濃度1.5%のクロロホルム溶液中に、上記のアミノ基
導入処理がなされた試料を10秒間浸漬した後、100
℃で1時間加熱して固定して室温で放置冷却した。更
に、この試料を0.1Nの水酸化ナトリウム溶液中に5
秒間浸漬して後処理を行い、その後直ちに蒸留水で洗浄
し、温度100℃で10分間乾燥させて、潤滑性付与処
理がなされた血管造影用カテーテルを得た。これを「処
理試料2」とする。
【0044】実施例3 ポリアミド樹脂(ナイロン)エラストマー製の清浄なマ
イクロカテーテルを医療用具の試料として用い、これ
を、γ−アミノプロピルトリエトキシシランの濃度1.
5%のメチルエチルケトン溶液中に30秒間浸漬した
後、温度80℃で30分間加熱して固定し、更に室温で
放置冷却することにより、アミノ基導入処理を行った。
次に、N−ヒドロキシコハク酸イミドのアクリル酸エス
テルと、N−ビニル−2−ピロリドンとを5:95のモ
ル比となる割合で共重合させて得られた高分子化合物の
濃度0.1%のクロロホルム溶液中に、上記のアミノ基
導入処理がなされた試料を3秒間浸漬した後、80℃で
10分間の加熱固定処理を実施した。放置冷却後に、再
び濃度0.1%のクロロホルム溶液中に試料を3秒間浸
漬し、同様の加熱固定処理および放置冷却する操作を合
計3回繰り返し、その後、60℃で5時間加熱して固定
し、これを室温で放置冷却した。更に、この試料を0.
1Nの水酸化ナトリウム溶液中に5秒間浸漬して後処理
を行い、その後直ちに蒸留水で洗浄し、60℃で30分
間乾燥させて、潤滑性付与処理がなされたマイクロカテ
ーテルを得た。これを「処理試料3」とする。
【0045】参考例1 アミノ基導入処理を行わないほかは実施例1と同様にし
て潤滑性付与処理を施したシートを得た。これを「参考
試料1」とする。
【0046】また、下記の対照試料を作製した。 対照試料1A:実施例1において、アミノ基導入処理を
行う前のシート 対照試料1B:実施例1の潤滑性付与処理において、N
−ビニル−2−ピロリドンのホモポリマーよりなる親水
性高分子物質を処理剤として用いて得られたシート 対照試料2A:実施例2において、アミノ基導入処理を
行う前のカテーテル 対照試料3A:実施例3において、アミノ基導入処理を
行う前のマイクロカテーテル
【0047】以上の処理試料および対照試料の各々につ
いて、湿潤状態における潤滑性の程度を、動摩擦係数を
測定装置「HEIDON14DR」により動摩擦係数を
測定することにより調べた。測定は、試料がシートの場
合には次の条件Aにより、また試料がカテーテルの場合
は条件Bにより、行った。 〔条件A〕 直径が9.5mmのポリテトラフルオロエ
チレンの球体を、蒸留水によって湿潤状態にあるシート
の表面に対して荷重200gで押圧した状態のまま、移
動速度300mm/分、移動距離30mmの条件で所定
回数往復摺動させた。 〔条件B〕 直径が6.0mm、肉厚が1.5mmのポ
リ塩化ビニル製チューブをカテーテルの表面に対して垂
直になるよう、蒸留水によって湿潤状態にあるカテーテ
ルの表面に対して荷重100gで押圧した状態のまま、
移動速度300mm/分、移動距離30mmの条件で所
定回数往復摺動させた。 結果は表1に示すとおりである。
【0048】
【表1】
【0049】表1の結果から、本発明による潤滑性付与
処理が施された医療用具(処理試料1〜3)は、湿潤状
態においてきわめて良好な潤滑性を有することが明らか
であり、特に前処理が施されているために、当該潤滑性
の耐久性または安定性が優れていることが理解される。
【0050】実施例4〜8 潤滑性付与処理のためのN−ヒドロキシコハク酸イミド
のアクリル酸エステルの代わりにN−ヒドロキシコハク
酸イミドのメタクリル酸エステルを用い、これと、N−
ビニル−2−ピロリドンとの共重合比を種々に変化させ
たこと以外は実施例1と同様にして、アミノ基導入処理
および潤滑性付与処理を行って、処理試料4〜8を得
た。そして、その各々について、上記と同様にして湿潤
状態での潤滑性の程度を調べた。結果は表2に示すとお
りである。なお、表2において、「SuMA」はN−ヒ
ドロキシ環状イミド化合物のメタクリル酸エステル単量
体、「PVP」はN−ビニル−2−ピロリドン単量体を
示す。
【0051】
【表2】
【0052】表2の結果から明らかなように、本発明で
用いられる高分子化合物がN−ヒドロキシコハク酸イミ
ドの不飽和カルボン酸エステルを必須の単量体成分とす
ることにより、また特にその含有割合が5〜100モル
%であることにより、耐久性に優れた良好な湿潤潤滑性
を付与することができる。
【0053】
【発明の効果】本発明の潤滑性医療用具は、その表面
に、特定の親水性高分子物質が付着されているため、湿
潤状態においてきわめて優れた潤滑性を示すものとな
る。また、本発明の製造方法によれば、側鎖に活性エス
テル基を有する高分子化合物を利用することにより、目
的とする基材の表面に親水性高分子物質を安定に付着さ
せることができ、当該親水性高分子物質が基材の表面に
強固に結合されたものとなる。特に高分子化合物とし
て、N−ヒドロキシ環状イミド化合物の不飽和カルボン
酸エステルによる単量体成分を有する重合体または共重
合体を用いることにより、アミノ基を有する基材の表面
に当該高分子化合物を化学的に結合させることができ、
その結果、潤滑性の耐久性が優れたものとなり、長期間
にわたって安定した潤滑性が発揮される潤滑性医療用具
が得られる。また、高分子化合物が、当該特定の不飽和
カルボン酸エステルによる単量体成分と、N−ビニルピ
ロリドンによる単量体成分とを有する共重合体であるこ
とにより、実際上、きわめて好ましい潤滑性医療用具が
得られる。

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 医療用具を構成する基材の少なくとも表
    面に、アクリル酸、メタクリル酸、それらのエステルお
    よび塩、並びにアクリル酸アミドおよびメタクリル酸ア
    ミドの少なくとも1種による成分を含有してなる親水性
    高分子物質が付着されていることを特徴とする潤滑性医
    療用具。
  2. 【請求項2】 親水性高分子物質が、他の単量体による
    成分を含有する共重合体であることを特徴とする請求項
    1に記載の潤滑性医療用具。
  3. 【請求項3】 親水性高分子物質を構成する重合体にお
    いて、アクリル酸、メタクリル酸、それらのエステルお
    よび塩、並びにアクリル酸アミドおよびメタクリル酸ア
    ミドの少なくとも1種による成分の含有割合が1〜10
    0モル%であることを特徴とする請求項2に記載の潤滑
    性医療用具。
  4. 【請求項4】 医療用具を構成する基材の表面に、活性
    エステル基を側鎖に有する高分子化合物を作用させて当
    該高分子化合物を前記基材の表面に結合させる工程と、
    この結合された高分子化合物を親水性高分子物質に変換
    する後処理工程とを含む、潤滑性付与処理がなされるこ
    とを特徴とする潤滑性医療用具の製造方法。
  5. 【請求項5】 医療用具を構成する基材におけるアミノ
    基が導入された表面に、アミノ基と反応する活性エステ
    ル基を側鎖に有する高分子化合物を作用させて当該高分
    子化合物を前記基材の表面に結合させる工程と、この結
    合された高分子化合物を親水性高分子物質に変換する後
    処理工程とを含む、潤滑性付与処理がなされることを特
    徴とする潤滑性医療用具の製造方法。
  6. 【請求項6】 高分子化合物が、N−ヒドロキシ環状イ
    ミド化合物の(メタ)アクリル酸エステルによる単量体
    成分を含有する重合体または共重合体であることを特徴
    とする請求項4または5に記載の潤滑性医療用具の製造
    方法。
  7. 【請求項7】 高分子化合物が、N−ヒドロキシ環状イ
    ミド化合物の(メタ)アクリル酸エステルによる単独重
    合体またはこの単量体成分と他の親水性単量体成分とを
    有する共重合体であることを特徴とする請求項6に記載
    の潤滑性医療用具の製造方法。
  8. 【請求項8】 高分子化合物を構成する重合体におい
    て、N−ヒドロキシ環状イミド化合物の(メタ)アクリ
    ル酸エステルによる単量体成分の含有割合が1〜100
    モル%であることを特徴とする請求項7に記載の潤滑性
    医療用具の製造方法。
  9. 【請求項9】 高分子化合物を構成するN−ヒドロキシ
    環状イミドの(メタ)アクリル酸エステルにおけるN−
    ヒドロキシ環状イミド化合物の部分がN−ヒドロキシコ
    ハク酸イミドまたはその誘導体によるものであることを
    特徴とする請求項4〜8に記載の潤滑性医療用具の製造
    方法。
  10. 【請求項10】 高分子化合物を親水性高分子物質に変
    換するための後処理工程が、水を作用させることによっ
    て活性エステル基をカルボキシル基に変換する工程、ま
    たはアンモニアを作用させることによって活性エステル
    基をアミド基に変換する工程であることを特徴とする請
    求項4〜9に記載の潤滑性医療用具の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN112912788A (zh) * 2018-11-09 2021-06-04 东丽株式会社 医疗设备和其制造方法

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