JPH11217575A - パティキュレート低減用軽油 - Google Patents
パティキュレート低減用軽油Info
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- JPH11217575A JPH11217575A JP31656498A JP31656498A JPH11217575A JP H11217575 A JPH11217575 A JP H11217575A JP 31656498 A JP31656498 A JP 31656498A JP 31656498 A JP31656498 A JP 31656498A JP H11217575 A JPH11217575 A JP H11217575A
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- Production Of Liquid Hydrocarbon Mixture For Refining Petroleum (AREA)
Abstract
(57)【要約】
【課題】ディーゼルエンジンから排出される粒子状物質
を構成するSOFとISFの両者の量を最小限にしたパ
ティキュレート低減用軽油を得ることを課題とする。 【解決手段】ASTMD86−90に基づく蒸留試験お
いて、留出温度が320℃までの留分で構成される直鎖
のパラフィン系炭化水素であって、該留出温度320℃
における留出残分が3容量%以下であるパティキュレー
ト低減用軽油。主として直鎖のパラフィンで構成される
燃料であって、該燃料中の直鎖パラフィン以外の炭化水
素の主成分が分岐パラフィンおよび/またはナフテンの
場合にはその量は2容量%以下であり、該燃料中の直鎖
パラフィン以外の炭化水素の主成分が芳香族炭化水素の
場合にはその量は1容量%以下であるパティキュレート
低減用軽油。
を構成するSOFとISFの両者の量を最小限にしたパ
ティキュレート低減用軽油を得ることを課題とする。 【解決手段】ASTMD86−90に基づく蒸留試験お
いて、留出温度が320℃までの留分で構成される直鎖
のパラフィン系炭化水素であって、該留出温度320℃
における留出残分が3容量%以下であるパティキュレー
ト低減用軽油。主として直鎖のパラフィンで構成される
燃料であって、該燃料中の直鎖パラフィン以外の炭化水
素の主成分が分岐パラフィンおよび/またはナフテンの
場合にはその量は2容量%以下であり、該燃料中の直鎖
パラフィン以外の炭化水素の主成分が芳香族炭化水素の
場合にはその量は1容量%以下であるパティキュレート
低減用軽油。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ディーゼルエンジ
ンから排出される粒子状物質(以下PMと略称する)
を、NOXの増加をもたらすことなく低減するパティキ
ュレート低減用軽油に関するものである。
ンから排出される粒子状物質(以下PMと略称する)
を、NOXの増加をもたらすことなく低減するパティキ
ュレート低減用軽油に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ディーゼルエンジンからの排気ガスに対
して、PM、未燃焼炭化水素(以下HCと略称する)、
スモークなどの排気規制が実施されている。PMは燃料
に由来する物質と潤滑油に由来する物質とから構成され
ている。1970年代に、ディーゼル車などから排出さ
れるPMに発ガン性物質が含まれていることが発表され
て以来、PMと軽油性状の関係について多くの研究が報
告されてきた。過去約20年間に検討されてきた軽油性
状は、密度、粘度、90%留出温度、アロマ量、セタン
価など、約10種類である。
して、PM、未燃焼炭化水素(以下HCと略称する)、
スモークなどの排気規制が実施されている。PMは燃料
に由来する物質と潤滑油に由来する物質とから構成され
ている。1970年代に、ディーゼル車などから排出さ
れるPMに発ガン性物質が含まれていることが発表され
て以来、PMと軽油性状の関係について多くの研究が報
告されてきた。過去約20年間に検討されてきた軽油性
状は、密度、粘度、90%留出温度、アロマ量、セタン
価など、約10種類である。
【0003】これらの特性の中で、PM量に対してある
程度相関が認められてきた特性としては、90%留出温
度(K.Tsurutani,Y.Takei,Y.Fujimoto,J.Matsudaira a
ndM.Kumamoto SAE952349)、密度(S.A.Floysand、F.V
inge and W.E.Betts SAE932683)などが挙げられ
る。その他、多環アロマ量もPM量に関わりがあるとさ
れている(C.Betroli,N.Del Giacomo,B.Iorio and M.V.
Prati,SAE932733)。
程度相関が認められてきた特性としては、90%留出温
度(K.Tsurutani,Y.Takei,Y.Fujimoto,J.Matsudaira a
ndM.Kumamoto SAE952349)、密度(S.A.Floysand、F.V
inge and W.E.Betts SAE932683)などが挙げられ
る。その他、多環アロマ量もPM量に関わりがあるとさ
れている(C.Betroli,N.Del Giacomo,B.Iorio and M.V.
Prati,SAE932733)。
【0004】しかし、これまでに軽油の性状に関してP
M量を予測できる決定的な指標は、明らかにされていな
い。したがって、PM排出量の少ない軽油の仕様も明ら
かにされていない。
M量を予測できる決定的な指標は、明らかにされていな
い。したがって、PM排出量の少ない軽油の仕様も明ら
かにされていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】今日まで、PM量の予
測に有効な指標が見いだされなかった原因の1つとし
て、従来検討されてきた軽油特性がPM生成の上で持つ
意味について、十分吟味されていなかったことが挙げら
れる。また、軽油からPMが生成する過程を組成の面か
ら調べた研究が、極めて少なかったことが挙げられる。
測に有効な指標が見いだされなかった原因の1つとし
て、従来検討されてきた軽油特性がPM生成の上で持つ
意味について、十分吟味されていなかったことが挙げら
れる。また、軽油からPMが生成する過程を組成の面か
ら調べた研究が、極めて少なかったことが挙げられる。
【0006】軽油に由来するPMは軽油が未反応のまま
で排出された物質、反応途上で排出された物質および完
全に反応した物質から構成される。このPMを構成する
物質は、ジクロルメタンへの溶解性によって、可溶性有
機物質(以下SOFと略称する)と不溶性物質(以下I
SFと略称する)に分けられる。本発明は、このPMを
構成する物質が生成する過程を詳細に検討することによ
り、ディーゼルエンジンから排出されるSOFとISF
の両者を最小限にするパティキュレート低減用軽油を提
案することを課題とする。
で排出された物質、反応途上で排出された物質および完
全に反応した物質から構成される。このPMを構成する
物質は、ジクロルメタンへの溶解性によって、可溶性有
機物質(以下SOFと略称する)と不溶性物質(以下I
SFと略称する)に分けられる。本発明は、このPMを
構成する物質が生成する過程を詳細に検討することによ
り、ディーゼルエンジンから排出されるSOFとISF
の両者を最小限にするパティキュレート低減用軽油を提
案することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】前記したようにパティキ
ュレート(PM)は、有機溶媒に溶ける成分(SOF)
と不溶の成分(ISF)からなる。本発明者らの研究に
よれば、これらの成分の生成経路は大きく異なることが
分かっている。これに基づき、本発明のパティキュレー
ト低減用軽油は、2つの仕様からなる。
ュレート(PM)は、有機溶媒に溶ける成分(SOF)
と不溶の成分(ISF)からなる。本発明者らの研究に
よれば、これらの成分の生成経路は大きく異なることが
分かっている。これに基づき、本発明のパティキュレー
ト低減用軽油は、2つの仕様からなる。
【0008】第1の仕様は、請求項1に記載の発明であ
って、SOFを低減するために軽油中の高沸点分を制限
するものである。すなわち、炭化水素からなる燃料であ
って、ASTMD86−90に基づく蒸留試験におい
て、320℃で蒸留されない残油の量を3%以下である
ことを特徴とする。
って、SOFを低減するために軽油中の高沸点分を制限
するものである。すなわち、炭化水素からなる燃料であ
って、ASTMD86−90に基づく蒸留試験におい
て、320℃で蒸留されない残油の量を3%以下である
ことを特徴とする。
【0009】第2の仕様は、請求項2に記載の発明であ
って、煤を低減するためのもので、主として直鎖のパラ
フィンで軽油を構成するものである。すなわち、主とし
て直鎖のパラフィンで構成される燃料であり、該燃料中
の直鎖パラフィン以外の炭化水素の主成分が分岐パラフ
ィンおよび/またはナフテン(脂環式炭化水素)の場合
は、その量は2容量%以下とし、該燃料中の直鎖パラフ
ィン以外の炭化水素の主成分が芳香族炭化水素の場合に
は、その量は1容量%以下とすることを特徴とする。
って、煤を低減するためのもので、主として直鎖のパラ
フィンで軽油を構成するものである。すなわち、主とし
て直鎖のパラフィンで構成される燃料であり、該燃料中
の直鎖パラフィン以外の炭化水素の主成分が分岐パラフ
ィンおよび/またはナフテン(脂環式炭化水素)の場合
は、その量は2容量%以下とし、該燃料中の直鎖パラフ
ィン以外の炭化水素の主成分が芳香族炭化水素の場合に
は、その量は1容量%以下とすることを特徴とする。
【0010】上記の第1および第2の両仕様を満足する
内容の仕様は、請求項3に記載された発明であって、こ
れによれば、パティキュレート中の可溶性有機成分と煤
の両者を同時に低減することができる。すなわち、炭化
水素からなる燃料であり、ASTMD86−90に基づ
く蒸留試験において、320℃の温度で蒸留されない成
分量が3容量%以下であり、該燃料中の直鎖パラフィン
以外の炭化水素の主成分が分岐パラフィンおよび/また
はナフテンの場合にはその量は2容量%以下であり、該
燃料中の直鎖パラフィン以外の炭化水素の主成分が芳香
族炭化水素の場合にはその量は1容量%以下であること
を特徴とする。
内容の仕様は、請求項3に記載された発明であって、こ
れによれば、パティキュレート中の可溶性有機成分と煤
の両者を同時に低減することができる。すなわち、炭化
水素からなる燃料であり、ASTMD86−90に基づ
く蒸留試験において、320℃の温度で蒸留されない成
分量が3容量%以下であり、該燃料中の直鎖パラフィン
以外の炭化水素の主成分が分岐パラフィンおよび/また
はナフテンの場合にはその量は2容量%以下であり、該
燃料中の直鎖パラフィン以外の炭化水素の主成分が芳香
族炭化水素の場合にはその量は1容量%以下であること
を特徴とする。
【0011】前記請求項1に記載の炭化水素は、主とし
て炭素数18以下の直鎖のパラフィンであることが好ま
しい。前記請求項2に記載の直鎖のパラフィンは、炭素
数18以下のパラフィン系炭化水素であることが好まし
い。前記請求項2に記載の直鎖のパラフィンは、炭素数
8〜18のパラフィン系炭化水素であることが好まし
い。
て炭素数18以下の直鎖のパラフィンであることが好ま
しい。前記請求項2に記載の直鎖のパラフィンは、炭素
数18以下のパラフィン系炭化水素であることが好まし
い。前記請求項2に記載の直鎖のパラフィンは、炭素数
8〜18のパラフィン系炭化水素であることが好まし
い。
【0012】前記直鎖のパラフィンは、ASTMD86
−90に規定される蒸留試験において、蒸留温度が32
0℃までに蒸留される成分であることが、PMフィルタ
に捕集される成分がないことという観点から、少なくと
も必要である。しかし、直鎖パラフィンの鎖長が大きく
なると共に、直鎖パラフィンは結晶しやすくなることか
ら、たとえば、28℃において液体である炭素数18以
下のパラフィンで構成するのが好ましい。
−90に規定される蒸留試験において、蒸留温度が32
0℃までに蒸留される成分であることが、PMフィルタ
に捕集される成分がないことという観点から、少なくと
も必要である。しかし、直鎖パラフィンの鎖長が大きく
なると共に、直鎖パラフィンは結晶しやすくなることか
ら、たとえば、28℃において液体である炭素数18以
下のパラフィンで構成するのが好ましい。
【0013】なお、前記直鎖のパラフィンは、混合によ
り流動性が高くなるので炭素数が8〜18の直鎖パラフ
ィンの一部(例えば、ペンタデカンとドデカン)からな
る混合物であってもよい。なお、上記で述べた軽油は、
主に原油に由来するところの硫黄については対象外とす
る。
り流動性が高くなるので炭素数が8〜18の直鎖パラフ
ィンの一部(例えば、ペンタデカンとドデカン)からな
る混合物であってもよい。なお、上記で述べた軽油は、
主に原油に由来するところの硫黄については対象外とす
る。
【0014】本発明のパティキュレート低減用軽油の製
造は、主として直鎖のパラフィンからなる原料、例えば
天然ガスをFischer-Trosch反応で合成したパラフィンの
豊富な原料を320℃までの蒸留温度範囲で蒸留して得
られる。なお、蒸留して得られた軽油の成分がASTM
D86−90に基づく蒸留試験おいて、320℃の温度
で蒸留されない成分量が3容量%を越える物であった
り、直鎖のパラフィン以外の炭化水素の主成分が芳香族
炭化水素の場合にはその量が1容量%を越えるもの、あ
るいは直鎖パラフィン以外の炭化水素の主成分が分岐パ
ラフィンおよび/またはナフテンの場合にはその量が2
容量%を越えるものである場合は、原料の高沸点成分を
取り除いたり、直鎖のパラフィン以外の成分を取り除く
等の前処理を必要とする。
造は、主として直鎖のパラフィンからなる原料、例えば
天然ガスをFischer-Trosch反応で合成したパラフィンの
豊富な原料を320℃までの蒸留温度範囲で蒸留して得
られる。なお、蒸留して得られた軽油の成分がASTM
D86−90に基づく蒸留試験おいて、320℃の温度
で蒸留されない成分量が3容量%を越える物であった
り、直鎖のパラフィン以外の炭化水素の主成分が芳香族
炭化水素の場合にはその量が1容量%を越えるもの、あ
るいは直鎖パラフィン以外の炭化水素の主成分が分岐パ
ラフィンおよび/またはナフテンの場合にはその量が2
容量%を越えるものである場合は、原料の高沸点成分を
取り除いたり、直鎖のパラフィン以外の成分を取り除く
等の前処理を必要とする。
【0015】軽油中に含まれる直鎖パラフィン以外の成
分の量は、次のようにして求めることができる。まず、
シリカゲルカラムクロマト法によって、軽油を脂肪族炭
化水素と芳香族炭化水素とに分離する。その後、脂肪族
炭化水素のフラクションを非極性カラムを用いるガスク
ロマト法により、直鎖パラフィンとその他の脂肪族炭化
水素に分別する。そして、このガスクロマト法で求めた
直鎖パラフィン以外の脂肪族炭化水素の量と、シリカゲ
ルカラムクロマト法で求めた芳香族炭化水素の量との和
から直鎖パラフィン以外の炭化水素の量を求める。
分の量は、次のようにして求めることができる。まず、
シリカゲルカラムクロマト法によって、軽油を脂肪族炭
化水素と芳香族炭化水素とに分離する。その後、脂肪族
炭化水素のフラクションを非極性カラムを用いるガスク
ロマト法により、直鎖パラフィンとその他の脂肪族炭化
水素に分別する。そして、このガスクロマト法で求めた
直鎖パラフィン以外の脂肪族炭化水素の量と、シリカゲ
ルカラムクロマト法で求めた芳香族炭化水素の量との和
から直鎖パラフィン以外の炭化水素の量を求める。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明者らはまず、軽油の組成を
詳細に分析した。その結果に基づいて、従来検討されて
きた軽油特性がPM生成において持つ意味を検討した。
さらに軽油、排出物およびPMについてその組成を分析
し、PM生成プロセスを明らかにした。
詳細に分析した。その結果に基づいて、従来検討されて
きた軽油特性がPM生成において持つ意味を検討した。
さらに軽油、排出物およびPMについてその組成を分析
し、PM生成プロセスを明らかにした。
【0017】これらの研究から以下のことが明らかにな
った。 1.軽油に由来する粒子状物質(PM)は図1のPMの
生成経路に示すように、軽油が未反応のままで排出され
た未反応物質、燃焼反応途上で排出された物質(炭化物
および酸化生成物)および完全に燃焼反応した物質
(煤、炭酸ガス、水など)から構成される。
った。 1.軽油に由来する粒子状物質(PM)は図1のPMの
生成経路に示すように、軽油が未反応のままで排出され
た未反応物質、燃焼反応途上で排出された物質(炭化物
および酸化生成物)および完全に燃焼反応した物質
(煤、炭酸ガス、水など)から構成される。
【0018】ここで、PMを構成する物質は、ジクロル
メタンへの溶解性によって、可溶性有機物質(SOF)
と不溶性物質(ISF)に分けられる。なお、ここで述
べる酸化反応は、広義の酸化反応を意味し、炭化水素が
水素を放出して多環芳香族炭化水素(以下PNAと略称
する)および煤を生じる炭化反応も含む。当然、炭化水
素が酸素と反応し、アルコール、アルデヒド、有機酸、
さらには炭酸ガス、水を生じる狭義の酸化反応も含まれ
る。 2.SOFは、図1に示されるように未反応の炭化水
素、炭化水素の部分酸化物(アルコール、アルデヒド、
有機酸など)、および炭化水素の部分炭化物(PNAな
ど)の高沸点分(51.7℃のフィルタで捕集される物
質)である。 3.ISFは、PMからSOFを除いたもので、その主
成分は低硫黄軽油においては炭化反応によって生じた煤
である。その他、炭化反応途上の物質であるPNA(縮
合度が高く、ジクロルメタンに溶解しない物質)および
軽油中の硫黄化合物の酸化で生じた硫酸塩などを含むも
のである。
メタンへの溶解性によって、可溶性有機物質(SOF)
と不溶性物質(ISF)に分けられる。なお、ここで述
べる酸化反応は、広義の酸化反応を意味し、炭化水素が
水素を放出して多環芳香族炭化水素(以下PNAと略称
する)および煤を生じる炭化反応も含む。当然、炭化水
素が酸素と反応し、アルコール、アルデヒド、有機酸、
さらには炭酸ガス、水を生じる狭義の酸化反応も含まれ
る。 2.SOFは、図1に示されるように未反応の炭化水
素、炭化水素の部分酸化物(アルコール、アルデヒド、
有機酸など)、および炭化水素の部分炭化物(PNAな
ど)の高沸点分(51.7℃のフィルタで捕集される物
質)である。 3.ISFは、PMからSOFを除いたもので、その主
成分は低硫黄軽油においては炭化反応によって生じた煤
である。その他、炭化反応途上の物質であるPNA(縮
合度が高く、ジクロルメタンに溶解しない物質)および
軽油中の硫黄化合物の酸化で生じた硫酸塩などを含むも
のである。
【0019】上記の2.3.で述べたことを合わせ考え
ると、SOFとISFの発生機構は全く異なることが分
かる。 4.6点の負荷(Load)/回転数(Speed)(各回転数で
の最高出力を100%とする値/供試エンジンで最高出
力が得られる時の回転数を100%とする値)の条件で
測定された排気弁直後の排気ガス温度を横軸に、PM、
SOFおよびISFの排出量を縦軸としたグラフを図2
に示す。図2よりSOFは、排気温度が低い低負荷、低
回転数にて多く発生している。これに対して、ISFは
NOXと同様、排気温度が高い高負荷、高回転数時に多
く発生していることが判った。この結果は、上記の3.
で述べたことと対応している。
ると、SOFとISFの発生機構は全く異なることが分
かる。 4.6点の負荷(Load)/回転数(Speed)(各回転数で
の最高出力を100%とする値/供試エンジンで最高出
力が得られる時の回転数を100%とする値)の条件で
測定された排気弁直後の排気ガス温度を横軸に、PM、
SOFおよびISFの排出量を縦軸としたグラフを図2
に示す。図2よりSOFは、排気温度が低い低負荷、低
回転数にて多く発生している。これに対して、ISFは
NOXと同様、排気温度が高い高負荷、高回転数時に多
く発生していることが判った。この結果は、上記の3.
で述べたことと対応している。
【0020】エンジンのシリンダ内へ噴射された軽油が
シリンダから排出されるまでに通過する領域を、酸素濃
度と温度で大別すると図3の模式図に示すように、6つ
の領域で代表される。図3の太線で囲まれた領域はシリ
ンダ内へ噴射された燃料の存在を示す。この図3中に
は、SOF、ISFおよびHCの発生領域も併記した。
なお、括弧内の数値は、市販軽油で、負荷5%、回転数
60%の条件で運転した際の排出量(g/kWh)を表
す。
シリンダから排出されるまでに通過する領域を、酸素濃
度と温度で大別すると図3の模式図に示すように、6つ
の領域で代表される。図3の太線で囲まれた領域はシリ
ンダ内へ噴射された燃料の存在を示す。この図3中に
は、SOF、ISFおよびHCの発生領域も併記した。
なお、括弧内の数値は、市販軽油で、負荷5%、回転数
60%の条件で運転した際の排出量(g/kWh)を表
す。
【0021】領域は、火炎と呼ばれる領域で、高温の
酸化領域である。この領域は2000K近くの温度とな
り、この領域に入った炭化水素は、全て完全燃焼し炭酸
ガスと水とになる。領域は、火炎の内側の領域で、火
炎からの熱によって温度は高くなっているが、酸素が火
炎で消費されているため、酸素が不足している領域であ
る。すなわち、高温の還元雰囲気で、この領域に入った
炭化水素は、その殆どが、蒸し焼きにされて煤(ISF
の主成分)となる。
酸化領域である。この領域は2000K近くの温度とな
り、この領域に入った炭化水素は、全て完全燃焼し炭酸
ガスと水とになる。領域は、火炎の内側の領域で、火
炎からの熱によって温度は高くなっているが、酸素が火
炎で消費されているため、酸素が不足している領域であ
る。すなわち、高温の還元雰囲気で、この領域に入った
炭化水素は、その殆どが、蒸し焼きにされて煤(ISF
の主成分)となる。
【0022】領域は、火炎近傍で酸素が存在する領域
である。この領域は炭化水素の酸化反応が完結するため
には温度が不足する領域で、炭化水素はアルコール、ア
ルデヒドおよび有機酸などの部分酸化物となる。領域
は、領域の近傍で、酸素が不足し、且つ温度もやや低
い領域である。この領域では、炭化水素の炭化反応速度
が低いため、炭化水素は完全に炭化されない。すなわ
ち、多環芳香族炭化水素(PNA)を生成する。
である。この領域は炭化水素の酸化反応が完結するため
には温度が不足する領域で、炭化水素はアルコール、ア
ルデヒドおよび有機酸などの部分酸化物となる。領域
は、領域の近傍で、酸素が不足し、且つ温度もやや低
い領域である。この領域では、炭化水素の炭化反応速度
が低いため、炭化水素は完全に炭化されない。すなわ
ち、多環芳香族炭化水素(PNA)を生成する。
【0023】領域は、領域の近傍で、領域よりさ
らに温度が低い領域である。この領域には酸素は十分存
在するが、温度が低いため、酸化反応は殆ど進まない。
領域は、領域の近傍で、領域よりさらに温度が低
い領域である。この領域は酸素が不足しているが、温度
が低いため、炭化反応は殆ど進まない。すなわち、領域
とは、酸素濃度に違いがあるが、いずれも温度が低
いため、この領域を通過した炭化水素は、変化しないま
ま排出される。
らに温度が低い領域である。この領域には酸素は十分存
在するが、温度が低いため、酸化反応は殆ど進まない。
領域は、領域の近傍で、領域よりさらに温度が低
い領域である。この領域は酸素が不足しているが、温度
が低いため、炭化反応は殆ど進まない。すなわち、領域
とは、酸素濃度に違いがあるが、いずれも温度が低
いため、この領域を通過した炭化水素は、変化しないま
ま排出される。
【0024】以上より、燃料が領域またはを通過す
る場合に、炭化水素の安定性、反応性の違いが顕著に現
れると考えられる。すなわち、燃え難い炭化水素は、未
燃焼で排出される確率および炭化される確率が高いと考
えられる。なお、PMの排出量はエンジンの負荷条件に
よって大きく変化し、NOX排出量とトレードオフの関
係にあることが分かっている。本発明では、NOXの増
加をもたらすことなく、PM量を低減するための軽油組
成を提言するものである。
る場合に、炭化水素の安定性、反応性の違いが顕著に現
れると考えられる。すなわち、燃え難い炭化水素は、未
燃焼で排出される確率および炭化される確率が高いと考
えられる。なお、PMの排出量はエンジンの負荷条件に
よって大きく変化し、NOX排出量とトレードオフの関
係にあることが分かっている。本発明では、NOXの増
加をもたらすことなく、PM量を低減するための軽油組
成を提言するものである。
【0025】本発明のパティキュレート低減用軽油は、
上記の知見に基づいて見いだしたものである。本発明
は、2つの仕様からなる。その第1は、仮に、未燃焼で
排出された場合においてもPMフィルタに捕集される高
沸点の炭化水素を含まないことを仕様としたものであ
る。我々の実験によれば、51.7℃のフィルタに捕集
される炭化水素は、ASTMD86−90に基づく蒸留
試験において320℃で蒸留釜に残る成分である。この
残油の量を設定するにおいては、エンジンの運転条件お
よびPM排出規制値などが無くては決定が困難である
が、本発明では、次に示す結果に基づいて設定した。
上記の知見に基づいて見いだしたものである。本発明
は、2つの仕様からなる。その第1は、仮に、未燃焼で
排出された場合においてもPMフィルタに捕集される高
沸点の炭化水素を含まないことを仕様としたものであ
る。我々の実験によれば、51.7℃のフィルタに捕集
される炭化水素は、ASTMD86−90に基づく蒸留
試験において320℃で蒸留釜に残る成分である。この
残油の量を設定するにおいては、エンジンの運転条件お
よびPM排出規制値などが無くては決定が困難である
が、本発明では、次に示す結果に基づいて設定した。
【0026】エンジンのシリンダ内へ噴射された燃料
(燃料消費率)と未燃焼で排出された炭化水素の比率
は、アイドル運転において2%、80%負荷において
0.2%程度であった。一方、試験された軽油の320
℃における残油率は3〜26%であった。これらの比較
から、軽油に含まれる高沸点分のすべてが未燃焼で排出
されるものでないことがわかった。
(燃料消費率)と未燃焼で排出された炭化水素の比率
は、アイドル運転において2%、80%負荷において
0.2%程度であった。一方、試験された軽油の320
℃における残油率は3〜26%であった。これらの比較
から、軽油に含まれる高沸点分のすべてが未燃焼で排出
されるものでないことがわかった。
【0027】以上の結果から、本発明では、軽油に含ま
れる高沸点分、すなわち、蒸留温度320℃における残
油の量を3%以下とした。その第2は、軽油をH/C≒
0であるところの煤生成から最も遠い位置にある炭化水
素、すなわち、不飽和度が0のパラフィンで構成するこ
とである。さらには、パラフィンの中でも、燃えやすい
直鎖のパラフィンで構成することを仕様とするものであ
る。
れる高沸点分、すなわち、蒸留温度320℃における残
油の量を3%以下とした。その第2は、軽油をH/C≒
0であるところの煤生成から最も遠い位置にある炭化水
素、すなわち、不飽和度が0のパラフィンで構成するこ
とである。さらには、パラフィンの中でも、燃えやすい
直鎖のパラフィンで構成することを仕様とするものであ
る。
【0028】すなわち、直鎖パラフィン以外の炭化水素
が、芳香族炭化水素を含まない場合はその量を2容量%
以下とし、芳香族炭化水素を含む場合には、その量を1
容量%以下とするものである。ここでASTMD86−
90、JISK2254等で規定されている従来の蒸留
試験での結果は、留出率対温度の関係で整理されてき
た。そして90%留出温度(T90)で代表されるよう
に、留出分が所定の量(%)留出したときの温度で評価
されてきた。例えば、T90が高いことは、被蒸留成分中
の高沸点分の多さを示すこととして用いられてきた。
が、芳香族炭化水素を含まない場合はその量を2容量%
以下とし、芳香族炭化水素を含む場合には、その量を1
容量%以下とするものである。ここでASTMD86−
90、JISK2254等で規定されている従来の蒸留
試験での結果は、留出率対温度の関係で整理されてき
た。そして90%留出温度(T90)で代表されるよう
に、留出分が所定の量(%)留出したときの温度で評価
されてきた。例えば、T90が高いことは、被蒸留成分中
の高沸点分の多さを示すこととして用いられてきた。
【0029】そこで、発明者らは、高沸点の量を直接的
に示す値としてT80〜T90に相当する蒸留温度での残油
率を採用した。前記蒸留試験おいて留出温度が320℃
までの直鎖のパラフィンであることが、PMフィルタを
通過し易い炭化水素であり、また燃え易い炭化水素の条
件に適合する。したがって、図3の領域およびにお
いても、完全燃焼で排出される確率が高く、炭化される
確率が低くなる。このためSOF、ISFの発生が抑制
されPMの発生量を低減することができる。
に示す値としてT80〜T90に相当する蒸留温度での残油
率を採用した。前記蒸留試験おいて留出温度が320℃
までの直鎖のパラフィンであることが、PMフィルタを
通過し易い炭化水素であり、また燃え易い炭化水素の条
件に適合する。したがって、図3の領域およびにお
いても、完全燃焼で排出される確率が高く、炭化される
確率が低くなる。このためSOF、ISFの発生が抑制
されPMの発生量を低減することができる。
【0030】この蒸留試験おける留出温度が320℃ま
での直鎖のパラフィンは、例えば、表1に示す炭化水素
の沸点から炭素数18以下のものが該当する。なかでも
炭素数8〜18までの直鎖のパラフィンであるオクタ
ン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカ
ン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプ
タデカン、オクタデカンなどの混合物が燃焼性およびエ
ンジンが高出力を発揮する点で好ましい。より好ましく
は、ペンタデカンとデカンとの混合物である。
での直鎖のパラフィンは、例えば、表1に示す炭化水素
の沸点から炭素数18以下のものが該当する。なかでも
炭素数8〜18までの直鎖のパラフィンであるオクタ
ン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカ
ン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプ
タデカン、オクタデカンなどの混合物が燃焼性およびエ
ンジンが高出力を発揮する点で好ましい。より好ましく
は、ペンタデカンとデカンとの混合物である。
【0031】
【表1】 なお、前記蒸留試験において、供試する燃料が320℃
で全量、留出することが好ましいが、蒸留試験の再現性
やばらつき、さらに320℃残油の全てが未燃焼で排出
されるわけではないことを考慮して、320℃における
蒸留残油の量は3%以下とすることが必要である。これ
以上の蒸留残分が存在する場合には、目的とするPM
量、特にSOF量の低減が達成されないので、好ましく
ない。
で全量、留出することが好ましいが、蒸留試験の再現性
やばらつき、さらに320℃残油の全てが未燃焼で排出
されるわけではないことを考慮して、320℃における
蒸留残油の量は3%以下とすることが必要である。これ
以上の蒸留残分が存在する場合には、目的とするPM
量、特にSOF量の低減が達成されないので、好ましく
ない。
【0032】また、320℃で蒸留された留分に含まれ
る、直鎖パラフィン以外の炭化水素の量は、それが芳香
族炭化水素を福間に場合には、2容量%以下、芳香族炭
化水素を含む場合は、1容量%以下とする。ここで、直
鎖パラフィン以外の炭化水素の量を、その組成によっ
て、異なる値に設定する根拠は、分岐パラフィン、ナフ
テン、芳香族炭化水素という構造によって、燃え易さが
異なるためである。これについては、実施例で詳しく述
べる。
る、直鎖パラフィン以外の炭化水素の量は、それが芳香
族炭化水素を福間に場合には、2容量%以下、芳香族炭
化水素を含む場合は、1容量%以下とする。ここで、直
鎖パラフィン以外の炭化水素の量を、その組成によっ
て、異なる値に設定する根拠は、分岐パラフィン、ナフ
テン、芳香族炭化水素という構造によって、燃え易さが
異なるためである。これについては、実施例で詳しく述
べる。
【0033】
【実施例】以下、具体的に本発明を説明する。前記した
ように、PMを構成する物質は、ジクロルメタンへの溶
解性によって、SOFとISFとに分けられる。SOF
は排気中の物質が51.7℃のPMフィルタに捕集され
た物質、すなわちPMを構成する物質の中で、ジクロル
メタンで抽出される物質に相当する。
ように、PMを構成する物質は、ジクロルメタンへの溶
解性によって、SOFとISFとに分けられる。SOF
は排気中の物質が51.7℃のPMフィルタに捕集され
た物質、すなわちPMを構成する物質の中で、ジクロル
メタンで抽出される物質に相当する。
【0034】具体的には、軽油の未燃焼分と軽油の部分
酸化物、部分炭化物(縮合度の低い芳香族炭化水素)か
ら成る。上記のPMフィルタにはこれらの物質の中で高
沸点分のみがトラップされる。したがって、SOFを少
なくする方法として、軽油の高沸点分を少なくする方法
と、未燃焼または部分酸化あるいは部分炭化の状態で排
出される炭化水素を少なくする方法の2つが考えられ
る。
酸化物、部分炭化物(縮合度の低い芳香族炭化水素)か
ら成る。上記のPMフィルタにはこれらの物質の中で高
沸点分のみがトラップされる。したがって、SOFを少
なくする方法として、軽油の高沸点分を少なくする方法
と、未燃焼または部分酸化あるいは部分炭化の状態で排
出される炭化水素を少なくする方法の2つが考えられ
る。
【0035】第1の方法は、軽油の未燃焼分に由来する
SOFを最小にする方法で、51.7℃のPMフィルタ
に捕集される軽油の高沸点分を、軽油から完全に除くこ
とである。ディーゼルエンジンから排出されたSOFを
ガスクロマト法で分析した結果より、直鎖パラフィンの
ピーク強度(量)を読みとり、その炭素数に対してプロ
ットしたのが図4の(a)である。図4の(a)では燃
料自体、アイドル条件、低負荷および高負荷の条件で採
取したSOFの炭素数分布を示した。図4の(a)では
SOF中には炭素数16以上の成分が含まれていること
が分かる。
SOFを最小にする方法で、51.7℃のPMフィルタ
に捕集される軽油の高沸点分を、軽油から完全に除くこ
とである。ディーゼルエンジンから排出されたSOFを
ガスクロマト法で分析した結果より、直鎖パラフィンの
ピーク強度(量)を読みとり、その炭素数に対してプロ
ットしたのが図4の(a)である。図4の(a)では燃
料自体、アイドル条件、低負荷および高負荷の条件で採
取したSOFの炭素数分布を示した。図4の(a)では
SOF中には炭素数16以上の成分が含まれていること
が分かる。
【0036】図4の(b)は、図4(a)でエンジンに
供給した軽油と同じ軽油を温度310℃または320℃
まで蒸留をおこない、その際蒸留フラスコ中に残存する
蒸留残分を回収して図4の(a)の場合と同様に炭素数
分布を分析した結果を示した。図4の(b)では、留出
温度が310℃での残油は、320℃での残油と比較し
て炭素数の小さい成分をより多く含んでいることを示し
ている。この310℃の残油が示す炭素数の小さい炭化
水素は図4の(a)のSOFには認められない成分であ
る。
供給した軽油と同じ軽油を温度310℃または320℃
まで蒸留をおこない、その際蒸留フラスコ中に残存する
蒸留残分を回収して図4の(a)の場合と同様に炭素数
分布を分析した結果を示した。図4の(b)では、留出
温度が310℃での残油は、320℃での残油と比較し
て炭素数の小さい成分をより多く含んでいることを示し
ている。この310℃の残油が示す炭素数の小さい炭化
水素は図4の(a)のSOFには認められない成分であ
る。
【0037】一方、320℃での蒸留残油の炭素数分布
は図4(a)に示したSOFの炭素数分布と一致してい
る。すなわち、留出温度が320℃以上の炭化水素が未
燃焼のまま排気されるとPMフィルタに捕集されること
が分かった。そこで蒸留特性が異なる6点の軽油を、直
噴ディーゼルエンジンに供給し、排気試験を行った。排
気試験データの中から、エンジン回転数60%、負荷4
0%でのSOF量(図5中の縦軸に示す)と未燃焼炭化
水素(HC)の量(図5中の横軸に示す)を読みとり、
6点の軽油からのHC量に320℃での残油率を掛けた
値(HC×R320)とSOF量の関係を調べた。その結
果、図5の(a)に示したようにHC×R320とSOF
量は正の相関をしめしSOF量は軽油中の高沸点分の量
が大きく支配していることが判明した。
は図4(a)に示したSOFの炭素数分布と一致してい
る。すなわち、留出温度が320℃以上の炭化水素が未
燃焼のまま排気されるとPMフィルタに捕集されること
が分かった。そこで蒸留特性が異なる6点の軽油を、直
噴ディーゼルエンジンに供給し、排気試験を行った。排
気試験データの中から、エンジン回転数60%、負荷4
0%でのSOF量(図5中の縦軸に示す)と未燃焼炭化
水素(HC)の量(図5中の横軸に示す)を読みとり、
6点の軽油からのHC量に320℃での残油率を掛けた
値(HC×R320)とSOF量の関係を調べた。その結
果、図5の(a)に示したようにHC×R320とSOF
量は正の相関をしめしSOF量は軽油中の高沸点分の量
が大きく支配していることが判明した。
【0038】蒸留特性が異なる6点の軽油を、直噴ディ
ーゼルエンジンに供給し、排気試験を行った。排気試験
データの中から、エンジン回転数60%、負荷40%で
のSOF量と未燃炭化水素(HC)の量を読み取った。
始めに、6点の軽油の320℃での残油率と排気試験か
らのSOF量の関係を調べた。その結果、図5(a)に
示されるように、SOF量は軽油中の高沸点分の量が大
きく支配していることが判明した。
ーゼルエンジンに供給し、排気試験を行った。排気試験
データの中から、エンジン回転数60%、負荷40%で
のSOF量と未燃炭化水素(HC)の量を読み取った。
始めに、6点の軽油の320℃での残油率と排気試験か
らのSOF量の関係を調べた。その結果、図5(a)に
示されるように、SOF量は軽油中の高沸点分の量が大
きく支配していることが判明した。
【0039】ここで、SOFは排気中の未燃成分(主
に、軽油成分)の中の高沸点分である。従って、厳密に
は、水素炎イオン検出器(FID)等で計測される排気
中の炭化水素(HC)量に320℃での残油率を掛けた
値(HC×R320)とSOF量の関係を調べる必要があ
る。その結果を図5(b)に示す。図5(b)に示され
るように、SOF量は排気中の炭化水素の中の高沸点分
の量によって、支配されていることが判明した。
に、軽油成分)の中の高沸点分である。従って、厳密に
は、水素炎イオン検出器(FID)等で計測される排気
中の炭化水素(HC)量に320℃での残油率を掛けた
値(HC×R320)とSOF量の関係を調べる必要があ
る。その結果を図5(b)に示す。図5(b)に示され
るように、SOF量は排気中の炭化水素の中の高沸点分
の量によって、支配されていることが判明した。
【0040】なお、排気中の炭化水素(HC)の量は、
同じエンジン条件においても、軽油により異なる。これ
には、上に述べた炭化水素の沸点に加えて、炭化水素の
構造が影響する。しかし、排気中の炭化水素の中に、5
1.7℃に制御された捕集フィルタに捕捉されるような
高沸点成分が含まれなければ、SOF量は0となる。し
たがって、SOFを少なくする方法の1つは、留出温度
が320℃以上の炭化水素を軽油から除くことであるこ
とが判明した。
同じエンジン条件においても、軽油により異なる。これ
には、上に述べた炭化水素の沸点に加えて、炭化水素の
構造が影響する。しかし、排気中の炭化水素の中に、5
1.7℃に制御された捕集フィルタに捕捉されるような
高沸点成分が含まれなければ、SOF量は0となる。し
たがって、SOFを少なくする方法の1つは、留出温度
が320℃以上の炭化水素を軽油から除くことであるこ
とが判明した。
【0041】以上、第1の手段としては、軽油中の炭化
水素を、留出温度が320℃までの留分で構成すること
で、これによりSOFの発生を最小にすることが可能と
なる。なお、蒸留試験におけるばらつきを考えて、該蒸
留試験に供した炭化水素中に含まれる320℃における
留出残分を3容量%以下とする。第2の手段としては、
未燃焼および燃焼の途上で排出される炭化水素の量が最
小限となる軽油を調製することである。すなわち、燃え
やすい炭化水素のみで軽油を構成することである。軽油
を構成する炭化水素の組成マップを図6に示す。
水素を、留出温度が320℃までの留分で構成すること
で、これによりSOFの発生を最小にすることが可能と
なる。なお、蒸留試験におけるばらつきを考えて、該蒸
留試験に供した炭化水素中に含まれる320℃における
留出残分を3容量%以下とする。第2の手段としては、
未燃焼および燃焼の途上で排出される炭化水素の量が最
小限となる軽油を調製することである。すなわち、燃え
やすい炭化水素のみで軽油を構成することである。軽油
を構成する炭化水素の組成マップを図6に示す。
【0042】図6は軽油を構成する炭化水素の炭素数を
横軸に、各炭化水素分子のH/C比を縦軸に取ったマッ
プに示したもので、軽油中に含まれる炭化水素の組成を
示すことができる。図6に示したように、軽油には、不
飽和度(以下DBEと略称す、右側の縦軸)が0(飽和
炭化水素)から13程度の炭化水素が含まれている。
横軸に、各炭化水素分子のH/C比を縦軸に取ったマッ
プに示したもので、軽油中に含まれる炭化水素の組成を
示すことができる。図6に示したように、軽油には、不
飽和度(以下DBEと略称す、右側の縦軸)が0(飽和
炭化水素)から13程度の炭化水素が含まれている。
【0043】炭化水素の燃焼反応の第一段階は、炭化水
素から水素が引き抜かれて、炭化水素ラジカルを生成す
る反応である。この炭化水素ラジカルの生成しやすさに
は、炭化水素分子の安定性が大きく影響する。DBEで
1の増加は、水素1分子の脱離を意味する。水素の脱離
によって、炭化水素は安定化する。これは、水素の放出
に伴って、不飽和結合(二重結合、三重結合)または環
状構造が形成されるためである。不飽和結合が共役した
共役オレフィンおよび芳香環はπ電子がもたらす共鳴構
造によって、特に安定となる(相原淳一「芳香族化合物
はなぜ安定か」サイエンス1988年6月号)。
素から水素が引き抜かれて、炭化水素ラジカルを生成す
る反応である。この炭化水素ラジカルの生成しやすさに
は、炭化水素分子の安定性が大きく影響する。DBEで
1の増加は、水素1分子の脱離を意味する。水素の脱離
によって、炭化水素は安定化する。これは、水素の放出
に伴って、不飽和結合(二重結合、三重結合)または環
状構造が形成されるためである。不飽和結合が共役した
共役オレフィンおよび芳香環はπ電子がもたらす共鳴構
造によって、特に安定となる(相原淳一「芳香族化合物
はなぜ安定か」サイエンス1988年6月号)。
【0044】これを裏付けるデータとして電子イオン化
質量分析における炭化水素分子イオンの相対感度が挙げ
られる。表1に示されるように、芳香環>飽和環>共役
オレフィン>アルカンの順で、分子イオン感度が高く、
不飽和度が高い炭化水素ほど安定であることが分かって
いる(F.E.McLafferty,F.Turecek Interpretation ofMa
ss Spectra Fourth Edition University Science Book
s, 55D Gate Five Road Sausalito, CA 94965,USA 199
3)。
質量分析における炭化水素分子イオンの相対感度が挙げ
られる。表1に示されるように、芳香環>飽和環>共役
オレフィン>アルカンの順で、分子イオン感度が高く、
不飽和度が高い炭化水素ほど安定であることが分かって
いる(F.E.McLafferty,F.Turecek Interpretation ofMa
ss Spectra Fourth Edition University Science Book
s, 55D Gate Five Road Sausalito, CA 94965,USA 199
3)。
【0045】
【表2】
【0046】ここで不飽和度が共に0の直鎖アルカン
(直鎖パラフィンに相当)と分岐アルカン(分岐パラフ
ィンに相当)を比較した場合、分岐アルカンは直鎖アル
カンに比べて、分子イオン感度が低い。たとえば、表2
に示したように炭素数5の炭化水素を比較した場合、直
鎖アルカンの分子イオンの強度が9であるのに対して、
2級炭素を持つ分岐アルカンでは6、3級の分岐アルカ
ンでは0.01と強度が小さい。すなわち、分子イオン
が不安定であることが示されている。これは、分岐アル
カン内の分岐炭素原子とそれに隣接する炭素原子の間の
結合が切れやすいためである。
(直鎖パラフィンに相当)と分岐アルカン(分岐パラフ
ィンに相当)を比較した場合、分岐アルカンは直鎖アル
カンに比べて、分子イオン感度が低い。たとえば、表2
に示したように炭素数5の炭化水素を比較した場合、直
鎖アルカンの分子イオンの強度が9であるのに対して、
2級炭素を持つ分岐アルカンでは6、3級の分岐アルカ
ンでは0.01と強度が小さい。すなわち、分子イオン
が不安定であることが示されている。これは、分岐アル
カン内の分岐炭素原子とそれに隣接する炭素原子の間の
結合が切れやすいためである。
【0047】直鎖アルカンと分岐アルカンから生じるラ
ジカルの反応性を示す値として、フロンティア電子密度
を表3に示す(木津貞次郎、永田親義、加藤博史、今村
詮、諸熊圭治「三訂 量子化学入門(上)」化学同人1
983p.245)。表3より直鎖アルキルラジカルは
フロンティア電子密度が最も高く、反応性が最も高いこ
とが判る。一方、分岐が多い炭化水素ほど、フロンティ
ア電子密度が低く、反応性が低いことが分かる。
ジカルの反応性を示す値として、フロンティア電子密度
を表3に示す(木津貞次郎、永田親義、加藤博史、今村
詮、諸熊圭治「三訂 量子化学入門(上)」化学同人1
983p.245)。表3より直鎖アルキルラジカルは
フロンティア電子密度が最も高く、反応性が最も高いこ
とが判る。一方、分岐が多い炭化水素ほど、フロンティ
ア電子密度が低く、反応性が低いことが分かる。
【0048】
【表3】 以上の傾向は、燃料評価用エンジンでの燃料評価、すな
わちオクタン価とセタン価における炭化水素の傾向と一
致している。
わちオクタン価とセタン価における炭化水素の傾向と一
致している。
【0049】ガソリンのアンチノック性の指標として用
いられるオクタン価は、炭化水素の自己着火し難さ(燃
え難さ)を示す。炭化水素のオクタン価は一般に次の順
序であることが判っている。芳香族炭化水素>オレフィ
ン、ナフテン≧分岐パラフィン>直鎖パラフィンまた、
パラフィンのオクタン価および芳香族炭化水素のオクタ
ン価より次のことが分かる(斉藤 猛監修 自動車工学
全書 7「自動車の燃料、潤滑油」P.69,70 山
海堂参照)。
いられるオクタン価は、炭化水素の自己着火し難さ(燃
え難さ)を示す。炭化水素のオクタン価は一般に次の順
序であることが判っている。芳香族炭化水素>オレフィ
ン、ナフテン≧分岐パラフィン>直鎖パラフィンまた、
パラフィンのオクタン価および芳香族炭化水素のオクタ
ン価より次のことが分かる(斉藤 猛監修 自動車工学
全書 7「自動車の燃料、潤滑油」P.69,70 山
海堂参照)。
【0050】1 分岐の数が多いものほど、オクタン価
が高い(燃え難い)。 2 炭素鎖の長さが長いものほど、オクタン価は低い
(燃え易い)。 3 ベンゼン環を持つ炭化水素は、オクタン価が高い
(燃え難い)。 一方、軽油のセタン価は、炭化水素の着火性、燃え易さ
を示す。すなわち、セタン価とオクタン価は、炭化水素
の燃焼性について、全く逆の関係にある。炭化水素のセ
タン価は、次の順であることが分かっている。
が高い(燃え難い)。 2 炭素鎖の長さが長いものほど、オクタン価は低い
(燃え易い)。 3 ベンゼン環を持つ炭化水素は、オクタン価が高い
(燃え難い)。 一方、軽油のセタン価は、炭化水素の着火性、燃え易さ
を示す。すなわち、セタン価とオクタン価は、炭化水素
の燃焼性について、全く逆の関係にある。炭化水素のセ
タン価は、次の順であることが分かっている。
【0051】直鎖パラフィン>分岐パラフィン>ナフテ
ン>オレフィン>芳香族炭化水素以上の傾向からも、軽
油に含まれる炭化水素の中で、最も燃焼し易い炭化水素
は、鎖長の大きい直鎖パラフィンであることが分かる。
第1の手段と第2の手段とから、蒸留試験での留出温度
が320℃以下の直鎖のパラフィンで構成された軽油が
PMの発生量を低減できることが分かる。
ン>オレフィン>芳香族炭化水素以上の傾向からも、軽
油に含まれる炭化水素の中で、最も燃焼し易い炭化水素
は、鎖長の大きい直鎖パラフィンであることが分かる。
第1の手段と第2の手段とから、蒸留試験での留出温度
が320℃以下の直鎖のパラフィンで構成された軽油が
PMの発生量を低減できることが分かる。
【0052】ISFの成分である煤、PNAの低減 軽油を構成する炭化水素は、前記の図6に示すように、
炭素数で8から24、不飽和度(DBE)で0から13
ほどの炭化水素から成る。これらの炭化水素は高温の還
元雰囲気において、脱水素反応を受ける。それと同時
に、分解、環化、縮合、凝集などの反応を起こす。その
結果、PNAを生じ、さらに、炭化されて、煤を生成す
る。
炭素数で8から24、不飽和度(DBE)で0から13
ほどの炭化水素から成る。これらの炭化水素は高温の還
元雰囲気において、脱水素反応を受ける。それと同時
に、分解、環化、縮合、凝集などの反応を起こす。その
結果、PNAを生じ、さらに、炭化されて、煤を生成す
る。
【0053】図6より、たとえば、パラフィン(DBE
=0)が、4環アロマ(DBE=13)となるために
は、水素分子を13回脱離する必要があることが分か
る。以上より、炭化反応(脱水素反応)において煤の発
生から最も遠い位置にある炭化水素、すなわち煤を最も
生成し難い炭化水素は、不飽和度が0のパラフィンであ
ることが分かる。
=0)が、4環アロマ(DBE=13)となるために
は、水素分子を13回脱離する必要があることが分か
る。以上より、炭化反応(脱水素反応)において煤の発
生から最も遠い位置にある炭化水素、すなわち煤を最も
生成し難い炭化水素は、不飽和度が0のパラフィンであ
ることが分かる。
【0054】なお、2種類存在するパラフィン(直鎖パ
ラフィンと分岐パラフィン)のなかで、燃焼性が低く、
そのため、高温の還元雰囲気を通過する確率が高いパラ
フィンは分岐パラフィンである。したがって、分岐パラ
フィンを軽油成分中から除くことが好ましいことが分か
る。ここで、軽油成分に含まれる直鎖パラフィンは、炭
素数で8から24のものである。パラフィンに限らず、
分子内のアルキル炭素数が多くなるほど、セタン価が高
くなることが分かっている。
ラフィンと分岐パラフィン)のなかで、燃焼性が低く、
そのため、高温の還元雰囲気を通過する確率が高いパラ
フィンは分岐パラフィンである。したがって、分岐パラ
フィンを軽油成分中から除くことが好ましいことが分か
る。ここで、軽油成分に含まれる直鎖パラフィンは、炭
素数で8から24のものである。パラフィンに限らず、
分子内のアルキル炭素数が多くなるほど、セタン価が高
くなることが分かっている。
【0055】不飽和度0のパラフィンを含めて、同じ不
飽和度の炭化水素の中では、炭素数の大きいものほど、
すなわち、アルキル基の割合が高い炭化水素ほど、セタ
ン価が高くなる。一方、炭素数の増加と共に、直鎖パラ
フィンの沸点も高くなり、気化し難くなる。そのため、
分子レベルで酸素と会合できる確率が低くなる。その結
果、未燃焼のまま排出されて、HC量およびSOF量が
増加することになる。
飽和度の炭化水素の中では、炭素数の大きいものほど、
すなわち、アルキル基の割合が高い炭化水素ほど、セタ
ン価が高くなる。一方、炭素数の増加と共に、直鎖パラ
フィンの沸点も高くなり、気化し難くなる。そのため、
分子レベルで酸素と会合できる確率が低くなる。その結
果、未燃焼のまま排出されて、HC量およびSOF量が
増加することになる。
【0056】以上を総括すると、煤生成が最も少ない軽
油成分は、シリンダ内で気化しうる限り鎖長の大きな直
鎖パラフィンであると結論される。したがって、SOF
排出量の少ない軽油としては、蒸留試験による留出温度
が320℃以下の炭化水素からなり、かつ燃焼し易い炭
化水素(直鎖パラフィン)のみからなる混合物であると
結論づけることができる。
油成分は、シリンダ内で気化しうる限り鎖長の大きな直
鎖パラフィンであると結論される。したがって、SOF
排出量の少ない軽油としては、蒸留試験による留出温度
が320℃以下の炭化水素からなり、かつ燃焼し易い炭
化水素(直鎖パラフィン)のみからなる混合物であると
結論づけることができる。
【0057】また、PM排出量の少ない軽油としては、
炭素数8から18の直鎖パラフィンのみで構成される炭
化水素混合物と結論づけることができる。上記の条件を
満たすことで、この燃料は、PMのみならず、ブラック
スモーク、煤、未燃焼HCを最も少なくすることができ
る軽油となる。一方、ディーゼル燃料は、寒冷地におい
ても燃料タンクおよび配管の中で高い流動性を持つこ
と、シリンダ内へ噴射された後は、直ちに気化するこ
と、が要求される。
炭素数8から18の直鎖パラフィンのみで構成される炭
化水素混合物と結論づけることができる。上記の条件を
満たすことで、この燃料は、PMのみならず、ブラック
スモーク、煤、未燃焼HCを最も少なくすることができ
る軽油となる。一方、ディーゼル燃料は、寒冷地におい
ても燃料タンクおよび配管の中で高い流動性を持つこ
と、シリンダ内へ噴射された後は、直ちに気化するこ
と、が要求される。
【0058】これらの要求を満たす直鎖パラフィンを表
1(直鎖のパラフィンの炭素数1〜25の化合物の融点
と沸点を示す)から選ぶと、炭素数8から18の間の直
鎖パラフィンが挙げられる。例として、最低気温が6℃
の地域の場合、炭素数12または13の直鎖パラフィ
ン、最低気温が28℃の地域の場合、炭素数17または
18の直鎖パラフィンが挙げられる。
1(直鎖のパラフィンの炭素数1〜25の化合物の融点
と沸点を示す)から選ぶと、炭素数8から18の間の直
鎖パラフィンが挙げられる。例として、最低気温が6℃
の地域の場合、炭素数12または13の直鎖パラフィ
ン、最低気温が28℃の地域の場合、炭素数17または
18の直鎖パラフィンが挙げられる。
【0059】なお、直鎖パラフィン中に含まれる直鎖パ
ラフィン以外の炭化水素の定量は以下の方法でおこな
う。ディーゼル燃料は、一般に、液体クロマト法または
ガスクロマト法によって分析されている。本発明にかか
る直鎖パラフィン主体の燃料について、直鎖パラフィン
とその他の炭化水素との分離・定量法としては、非極性
カラムを用いるガスクロマト法が有効である。従来の市
販軽油のガスクロマトグラムを図7に示す。図7におい
て、○を付したピークは直鎖パラフィンに由来するピー
クである。図7で示される○印以外のピークは、直鎖パ
ラフィン以外の脂肪族炭化水素および芳香族炭化水素で
ある。ここで○印で示されるピークには、芳香族炭化水
素が重なる可能性がある。したがって、厳密に、直鎖パ
ラフィン以外の炭化水素の量を求める場合には、予め燃
料を液体クロマト法によって分離し、脂肪族炭化水素と
芳香族炭化水素に分離した後、前者の脂肪族炭化水素に
ついて、ガスクロ分析をおこない、脂肪族フラクション
に含まれる直鎖パラフィン以外の炭化水素量を求めるこ
とが必要である。液体クロマト法で分離された後の脂肪
族炭化水素フラクションをガスクロ分析した場合には、
直鎖のパラフィンに重なる炭化水素の存在確率が極めて
低くなる。
ラフィン以外の炭化水素の定量は以下の方法でおこな
う。ディーゼル燃料は、一般に、液体クロマト法または
ガスクロマト法によって分析されている。本発明にかか
る直鎖パラフィン主体の燃料について、直鎖パラフィン
とその他の炭化水素との分離・定量法としては、非極性
カラムを用いるガスクロマト法が有効である。従来の市
販軽油のガスクロマトグラムを図7に示す。図7におい
て、○を付したピークは直鎖パラフィンに由来するピー
クである。図7で示される○印以外のピークは、直鎖パ
ラフィン以外の脂肪族炭化水素および芳香族炭化水素で
ある。ここで○印で示されるピークには、芳香族炭化水
素が重なる可能性がある。したがって、厳密に、直鎖パ
ラフィン以外の炭化水素の量を求める場合には、予め燃
料を液体クロマト法によって分離し、脂肪族炭化水素と
芳香族炭化水素に分離した後、前者の脂肪族炭化水素に
ついて、ガスクロ分析をおこない、脂肪族フラクション
に含まれる直鎖パラフィン以外の炭化水素量を求めるこ
とが必要である。液体クロマト法で分離された後の脂肪
族炭化水素フラクションをガスクロ分析した場合には、
直鎖のパラフィンに重なる炭化水素の存在確率が極めて
低くなる。
【0060】直鎖パラフィンとそれ以外の脂肪族炭化水
素の重なりの確認は、質量分析を併用することで可能で
あり、標準物質との比較により、直鎖パラフィンを厳密
に定量することができる。本発明にかかる軽油は、上記
の液体クロマト法とガスクロ法で求めた直鎖パラフィン
以外の炭化水素の量が、芳香族炭化水素を含まない場合
はその量を2容量%以下とし、芳香族炭化水素を含む場
合には、その量を1容量%以下とするものである。
素の重なりの確認は、質量分析を併用することで可能で
あり、標準物質との比較により、直鎖パラフィンを厳密
に定量することができる。本発明にかかる軽油は、上記
の液体クロマト法とガスクロ法で求めた直鎖パラフィン
以外の炭化水素の量が、芳香族炭化水素を含まない場合
はその量を2容量%以下とし、芳香族炭化水素を含む場
合には、その量を1容量%以下とするものである。
【0061】
【発明の効果】本発明によれば、蒸留終点を320℃以
下とすることにより、未燃焼軽油に由来するSOF量を
最小限にすることができ、構成する炭化水素を直鎖パラ
フィン以外の成分量を規制することにより、不完全燃焼
および炭化反応で生じる煤を最小限にすることができ
る。この2つの要求を満たすことによってパティキュレ
ートはもちろん、HC排出量、ブラックスモークさらに
はNOXを最小限にすることができる。
下とすることにより、未燃焼軽油に由来するSOF量を
最小限にすることができ、構成する炭化水素を直鎖パラ
フィン以外の成分量を規制することにより、不完全燃焼
および炭化反応で生じる煤を最小限にすることができ
る。この2つの要求を満たすことによってパティキュレ
ートはもちろん、HC排出量、ブラックスモークさらに
はNOXを最小限にすることができる。
【図1】PMの生成経路を説明するチャートである。
【図2】排気温度とSOF量、ISF量の関係を示すグ
ラフである。
ラフである。
【図3】燃料の燃焼により生成するPM、HC、炭酸ガ
ス、水の生成領域を説明する模式図である。
ス、水の生成領域を説明する模式図である。
【図4】図4中の(a)は燃料およびSOFの成分であ
る直鎖パラフィンの炭素数分布を比較したグラフであ
り、(b)は燃料および燃料の310℃および320℃
における蒸留残油中の炭素数分布を示すグラフである。
る直鎖パラフィンの炭素数分布を比較したグラフであ
り、(b)は燃料および燃料の310℃および320℃
における蒸留残油中の炭素数分布を示すグラフである。
【図5】未燃焼HCの高沸点分量とSOF量の関係を示
すグラフである。図5中の(a)は軽油の高沸点分量と
SOF量の関係を示すグラフである。図5中の(b)は
排気中の炭化水素に320℃での残留率を掛けた値とS
OF量の関係を示すグラフである。
すグラフである。図5中の(a)は軽油の高沸点分量と
SOF量の関係を示すグラフである。図5中の(b)は
排気中の炭化水素に320℃での残留率を掛けた値とS
OF量の関係を示すグラフである。
【図6】軽油の組成マップと直鎖パラフィンの沸点を示
すグラフである。
すグラフである。
【図7】市販軽油のガスクロマトグラムである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山本 豊 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1株式会社豊田中央研究所内 (72)発明者 兵頭 志明 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1株式会社豊田中央研究所内 (72)発明者 山本 正美 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1株式会社豊田中央研究所内 (72)発明者 岡田 正則 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 (72)発明者 藤本 佳夫 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 (72)発明者 松平 純一 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内
Claims (6)
- 【請求項1】炭化水素からなる燃料であって、ASTM
D86−90に基づく蒸留試験において、320℃の温
度で蒸留されない成分量が3容量%以下であることを特
徴とするパティキュレート低減用の軽油。 - 【請求項2】主として直鎖のパラフィンで構成される燃
料であって、該燃料中の直鎖パラフィン以外の炭化水素
の主成分が分岐パラフィンおよび/またはナフテンの場
合にはその量は2容量%以下であり、該燃料中の直鎖パ
ラフィン以外の炭化水素の主成分が芳香族炭化水素の場
合にはその量は1容量%以下であることを特徴とするパ
ティキュレート低減用軽油。 - 【請求項3】炭化水素からなる燃料であり、ASTMD
86−90に基づく蒸留試験において、320℃の温度
で蒸留されない成分量が3容量%以下であり、該燃料中
の直鎖パラフィン以外の炭化水素の主成分が分岐パラフ
ィンおよび/またはナフテンの場合にはその量は2容量
%以下であり、該燃料中の直鎖パラフィン以外の炭化水
素の主成分が芳香族炭化水素の場合にはその量は1容量
%以下であり、パティキュレート中の可溶性有機成分と
煤の両者を低減することを特徴とするパティキュレート
低減用軽油。 - 【請求項4】前記炭化水素は、主として炭素数18以下
の直鎖のパラフィンであることを特徴とする請求項1に
記載のパティキュレート低減用軽油。 - 【請求項5】前記直鎖のパラフィンは、炭素数18以下
のパラフィン系炭化水素であることを特徴とする請求項
2に記載のパティキュレート低減用軽油。 - 【請求項6】前記直鎖のパラフィンは、炭素数8〜18
のパラフィン系炭化水素であることを特徴とする請求項
2に記載のパティキュレート低減用軽油。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP31656498A JPH11217575A (ja) | 1997-11-07 | 1998-11-06 | パティキュレート低減用軽油 |
Applications Claiming Priority (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP9-306130 | 1997-11-07 | ||
JP30613097 | 1997-11-07 | ||
JP31656498A JPH11217575A (ja) | 1997-11-07 | 1998-11-06 | パティキュレート低減用軽油 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH11217575A true JPH11217575A (ja) | 1999-08-10 |
Family
ID=26564578
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP31656498A Pending JPH11217575A (ja) | 1997-11-07 | 1998-11-06 | パティキュレート低減用軽油 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH11217575A (ja) |
Cited By (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2005529213A (ja) * | 2002-06-07 | 2005-09-29 | セイソル テクノロジー (プロプライエタリー) リミテッド | 減少した粒状物排出を有する合成燃料及び前記燃料を酸化触媒と連係して使用する圧縮着火エンジンの運転方法 |
JP2006510778A (ja) * | 2002-12-20 | 2006-03-30 | シエル・インターナシヨネイル・リサーチ・マーチヤツピイ・ベー・ウイ | ディーゼル燃料組成物 |
JP2006232978A (ja) * | 2005-02-24 | 2006-09-07 | Petroleum Energy Center | ディーゼルエンジン用燃料油組成物 |
JP2007039565A (ja) * | 2005-08-03 | 2007-02-15 | Idemitsu Kosan Co Ltd | ガソリン組成物 |
WO2008044641A1 (fr) * | 2006-10-06 | 2008-04-17 | Toyota Jidosha Kabushiki Kaisha | Composition d'huile légère |
WO2012117454A1 (ja) * | 2011-03-03 | 2012-09-07 | トヨタ自動車株式会社 | 内燃機関の排気処理方法 |
-
1998
- 1998-11-06 JP JP31656498A patent/JPH11217575A/ja active Pending
Cited By (7)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2005529213A (ja) * | 2002-06-07 | 2005-09-29 | セイソル テクノロジー (プロプライエタリー) リミテッド | 減少した粒状物排出を有する合成燃料及び前記燃料を酸化触媒と連係して使用する圧縮着火エンジンの運転方法 |
JP2006510778A (ja) * | 2002-12-20 | 2006-03-30 | シエル・インターナシヨネイル・リサーチ・マーチヤツピイ・ベー・ウイ | ディーゼル燃料組成物 |
JP2006232978A (ja) * | 2005-02-24 | 2006-09-07 | Petroleum Energy Center | ディーゼルエンジン用燃料油組成物 |
JP2007039565A (ja) * | 2005-08-03 | 2007-02-15 | Idemitsu Kosan Co Ltd | ガソリン組成物 |
WO2008044641A1 (fr) * | 2006-10-06 | 2008-04-17 | Toyota Jidosha Kabushiki Kaisha | Composition d'huile légère |
JP2008094879A (ja) * | 2006-10-06 | 2008-04-24 | Toyota Central R&D Labs Inc | 軽油組成物 |
WO2012117454A1 (ja) * | 2011-03-03 | 2012-09-07 | トヨタ自動車株式会社 | 内燃機関の排気処理方法 |
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