JPH11215594A - 音響インピーダンス整合用樹脂材及びこの樹脂材の製造方法並びにこの樹脂材を適用した超音波トランスジューサ - Google Patents

音響インピーダンス整合用樹脂材及びこの樹脂材の製造方法並びにこの樹脂材を適用した超音波トランスジューサ

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JPH11215594A
JPH11215594A JP1610398A JP1610398A JPH11215594A JP H11215594 A JPH11215594 A JP H11215594A JP 1610398 A JP1610398 A JP 1610398A JP 1610398 A JP1610398 A JP 1610398A JP H11215594 A JPH11215594 A JP H11215594A
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acoustic impedance
resin material
ultrasonic wave
bubbles
mixed
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JP1610398A
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Isao Mizowaki
功 溝脇
Yoshihiko Suzuki
義彦 鈴木
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Osaka Prefecture
Aichi Tokei Denki Co Ltd
Original Assignee
Osaka Prefecture
Aichi Tokei Denki Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 気体に対する超音波トランスジューサの整合
層の音響インピーダンスを可能な限り低くし、気体と振
動子との整合を改善する。 【解決手段】 超音波トランスジューサ1は、超音波を
発生するPZT等のピエゾセラミックスからなる振動子
2の振動面2aに超音波の伝搬媒体である空気と振動子
2との音響インピーダンスの整合を行う整合層3を設け
て構成されている。整合層3は、振動子2で発生される
超音波の波長λに対して略(2m+1)・λ/4(m=
整数)の厚みtを有するガラスバルーン4と気泡5とが
均一に含有されたエポキシ樹脂6からなる音響インピー
ダンス整合用樹脂材で構成されている。ガラスバルーン
4が混入されたエポキシ樹脂6に更に気泡5を混入する
ことで、音響インピーダンスを一層、低下し、超音波ト
ランスジューサ1の放射能率(感度)を高めるようにし
た。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、音響インピーダン
スのマッチングに適用される音響インピーダンス整合用
樹脂材及びこの樹脂材の製造方法並びにこの樹脂材を適
用した超音波トランスジューサに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、図9に示すように、PZT(チタ
ン酸ジルコン酸鉛)等のピエゾセラミックスを用いた超
音波振動子101の振動面101aにガラスバルーン
(中空の微小なガラス球)103が混入されたエポキシ
樹脂からなる音響インピーダンス整合用の樹脂層102
が設けられた超音波トランスジューサ100が知られて
いる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、PZT等の
圧電素子を用いた気体用超音波トランスジューサにおい
ては、一般に、PZTで発生した超音波を効率良く伝搬
媒体である気体(空気)に放射するため、その振動面に
空気との音響インピーダンスを整合するための整合層が
設けられる。PZTで発生した超音波を空気中に放射す
る超音波トランスジューサでは、空気(気体)の音響イ
ンピーダンスZ1(約34g/s・cm2)がPZT
(固体)の音響インピーダンスZ3(約30×105
/s・cm2)に対して略10万分の1と桁違いに小さ
いため、整合層の音響インピーインダンスが極めて重要
になる。
【0004】超音波振動子の振動面に音響インピーイン
ダンスの整合層を設けた場合の超音波振動子から外部伝
搬媒体への超音波エネルギー透過率Tを求める理論式
は、下記(1)式で表される。
【0005】
【数1】
【0006】上記(1)式において、整合層の厚みtを
λ/4の整数倍に設定すると、1/tan2(θ)≒0となる
から、超音波エネルギー透過率Tは、下記(2)式のよ
うに簡素化される。
【0007】
【数2】
【0008】従来のエポキシ樹脂を用いた整合層におい
て、空気に対する超音波エネルギー透過率Tと整合層の
音響インピーダンスZ2との関係を検討すると、エポキ
シ樹脂の音響インピーダンスはおよそ3×105g/s
・cm2で、Z22≒9×1010となるのに対し、上述の
例ではZ1・Z3はZ1・Z3=34×30×105
914×105で、Z1・Z3≪Z22となるので、上記
(2)式は、更にT≒4・Z1・Z3/Z22に近似さ
れ、超音波エネルギー透過率Tは整合層の音響インピー
ダンスZ2の2乗に反比例することがわかる。すなわ
ち、整合層の音響インピーダンスZ2は小さい程、超音
波エネルギー透過率Tは向上する。
【0009】上記従来のガラスバルーン入りエポキシ樹
脂からなる整合層の音響インピーダンスはおよそ2×1
5g/s・cm2で、エポキシ樹脂のみからなる整合層
の音響インピーダンスに対して略2/3であるから、エ
ポキシ樹脂のみからなる整合層を用いたものに比べる
と、超音波エネルギー透過率Tは9/4倍に改善され
る。しかし、それでも上記(2)式よりガラスバルーン
入りエポキシ樹脂からなる整合層を用いた場合の超音波
エネルギー透過率Tを算出すると、T≒1%であるか
ら、音響インピーダンスはできる限りは低くした方がよ
いことが分かる。
【0010】従来の整合層は、エポキシ樹脂に超音波の
波長に比べて粒径の小さいガラスバルーンを混入するこ
とにより(すなわち、エポキシ樹脂内に超音波を乱反射
させないような音響インピーダンスの小さい空気の隙間
を散在させることにより)整合層の音響インピーダンス
Z2を低下させるものであるから、エポキシ樹脂剤に対
するガラスバルーンの混合比率を高めて音響インピーダ
ンスの一層の低下を図ることも考えられるが、ガラスバ
ルーンの混合比率を高くすると、ガラスバルーン入りの
エポキシ樹脂剤の粘度が高くなり、ガラスバルーンとエ
ポキシ樹脂剤とを均一に混合することが困難となるの
で、エポキシ樹脂剤に対するガラスバルーンの混合比率
を高めるには一定の限界がある。従って、ガラスバルー
ン入りエポキシ樹脂でより一層、音響インピーダンスの
低い整合層を製造することは困難である。
【0011】本発明は、上記課題に鑑みてなされたもの
であり、エポキシ樹脂剤とガラスバルーンと混入された
気泡を混合することにより可能な限り音響インピーダン
スの低い音響インピーダンス整合用樹脂材及びこの樹脂
材の製造方法並びにこの樹脂材を適用した超音波トラン
スジューサを提供するものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明は、使用超音波の
波長よりも小さい粒径を有するガラスバルーンが混入さ
れた樹脂に更に気泡を混入してなり、この気泡は、上記
使用超音波の波長よりも小さい粒径の気泡であることを
特徴とする音響インピーダンス整合用樹脂材である(請
求項1)。なお、好ましくは、上記ガラスバルーンは、
上記樹脂に対して略同一の体積比で混入するとよい(請
求項2)。
【0013】上記構成によれば、使用超音波の波長より
も小さい粒径のガラスバルーンが混入された樹脂に、更
に使用超音波の波長よりも小さい粒径の気泡とを混入し
ているので、ガラスバルーン入り樹脂からなる音響イン
ピーダンス整合用樹脂材よりも一層、音響インピーダン
スが低下する。従って、気体用超音波トランスジューサ
の整合材に適用すると、使用超音波の放射効率(エネル
ギー変換能率)を高めることができる。
【0014】また、本発明は、上記音響インピーダンス
整合用樹脂材の製造方法であって、熱硬化樹脂剤に使用
超音波の波長よりも小さい粒径を有するガラスバルーン
を混入し、上記熱硬化樹脂剤と上記ガラスバルーンとを
気泡を混入させつつ均一に混合する第1の工程と、上記
熱硬化樹脂剤、ガラスバルーン及び気泡の混合液から上
記使用超音波の波長よりも大きい粒径の気泡を除去する
第2の工程と、上記第2の工程後に上記熱硬化樹脂剤、
ガラスバルーン及び気泡の混合液を所定の温度で加熱し
て硬化させる第3の工程とからなるものである(請求項
3)。
【0015】上記構成よれば、音響インピーダンス整合
用樹脂材は、熱硬化樹脂剤に使用超音波の波長よりも小
さい粒径を有するガラスバルーンを混入し、熱硬化樹脂
剤とガラスバルーンとを気泡を混入させつつ均一に混合
した後、この混合液から使用超音波の波長よりも大きい
粒径の気泡を除去して使用超音波の波長よりも小さい粒
径の気泡のみを混入させ、この後、ガラスバルーンと気
泡とを混入した熱硬化樹脂剤を所定の高温で加熱硬化し
て製造される。
【0016】なお、上記第2の工程は、上記第1の工程
で混合した混合液を所定の真空度で上記超音波の波長よ
りも大きい粒径の気泡のみを除去し得る所定の脱泡時間
だけ脱泡処理を行う真空脱泡工程で構成するとよい(請
求項4)。
【0017】上記構成によれば、ガラスバルーンと気泡
とが混入された熱硬化樹脂剤に真空脱泡処理を施すと、
粒径の大きい気泡が粒径の小さい気泡より速く気液界面
に上昇し、粒径の大きい気泡から除去される。従って、
使用超音波の波長よりも大きい粒径の気泡を除去し得る
所定の時間だけ脱泡処理することにより、ガラスバルー
ンが混入された樹脂に、更に使用超音波の波長よりも小
さい粒径の気泡を混入させることができる。
【0018】また、上記第2の工程における所定の真空
度と脱泡時間とは、上記第1の工程で混合した混合液の
粘度を計測し、その計測結果に基づき設定するとよい
(請求項5)。
【0019】上記構成によれば、ガラスバルーンと気泡
とを混入した熱硬化樹脂剤の粘度に基づいて設定された
所定の真空度と脱泡時間とを制御パラメータとして脱泡
処理が制御される。一般に、脱泡処理における気泡の気
液界面への上昇速度は液体の粘度によって変化し、使用
超音波の波長よりも大きい粒径の気泡を除去し得る脱泡
処理の真空度と脱泡時間の制御パラメータは液体の粘度
によって変化するが、ガラスバルーンと気泡とを混入し
た熱硬化樹脂剤の粘度に基づいて制御パラメータを設定
しているので、熱硬化樹脂剤の粘度がバラついている場
合にも使用超音波の波長よりも大きい粒径の気泡が好適
に除去される。
【0020】また、本発明は、超音波を発生する振動子
の振動面に上記音響インピーダンス整合用樹脂材からな
る整合層が設けられていることを特徴とする超音波トラ
ンスジューサである(請求項6)。なお、上記整合層
は、上記音響インピーダンス整合用樹脂材からなる整合
膜を上記振動子の振動面に接着して設けるとよい(請求
項7)。
【0021】上記構成によれば、振動子の振動面に使用
超音波の波長より小さい粒径を有するガラスバルーンと
気泡とが混入された樹脂からなる音響インピーダンスの
低い整合用樹脂材で構成された整合層が設けられている
ので、この整合層で超音波が減衰されることなく外部伝
搬媒体(気体)に伝搬され、効率良く超音波が外部伝搬
媒体に放射される。
【0022】
【発明の実施の形態】図1は、本発明に係る音響インピ
ーダンス整合用樹脂材が適用された超音波トランスジュ
ーサの断面図である。
【0023】同図に示す超音波トランスジューサ1は、
空気等の気体に超音波エネルギーを効率的に放射し得る
もので、例えばレベル計や距離計等の超音波センサとし
て利用し得るものである。超音波トランスジューサ1
は、超音波を発生するPZT(PbTiO3,PbZr
3)等のピエゾセラミックスからなる振動子2の振動
面2aに超音波の伝搬媒体である空気と振動子2との音
響インピーダンスの整合を行う整合層3とが設けられた
ものである。
【0024】振動子2は、圧電基板の一方表面に一対の
すだれ状電極を形成してなるインターデジタル形変換器
で、図略の発振器から供給された数10kHz〜数MH
zの電気信号を圧電基板の弾性波に変換し、整合層3を
介して気体中に放射するものである。
【0025】整合層3は、振動子2で発生される超音波
の波長λに対して略(2m+1)・λ/4(m=整数)
の厚みtを有するガラスバルーン4(図中、太線の円で
示す。)と気泡5(図中、細線の円で示す。)とが均一
に含有されたエポキシ樹脂6からなる音響インピーダン
ス整合用樹脂材で構成されている。
【0026】なお、ガラスバルーン4は、中空の微小な
ガラス球からなるパウダー状の粒体であり、その粒径
は、整合層3内で使用超音波が散乱、減衰しないように
超音波の波長λよりも小さいサイズに設定される。ま
た、気泡5は、後述するようにエポキシ樹脂6とガラス
バルーン4とを混練する際に発生する気泡を利用してエ
ポキシ樹脂6に混入したもので、その粒径もガラスバル
ーン4と同様に超音波の波長λに対して小さいサイズと
している。
【0027】なお、ガラスバルーン4及び気泡5の粒径
は、より好ましくは使用超音波の波長λに対して十分に
小さいサイズ(例えばλ/10以下のサイズ)に設定す
るとよい。従って、超音波トランスジューサ1の小型
化、薄型化を考慮して整合層3をλ/4に設定する場合
は、ガラスバルーン4及び気泡5の粒径はλ/10以下
にするとよい。
【0028】例えば超音波の周波数を200kHzと
し、エポキシ樹脂の音速を略2500m/sとすると、
エポキシ樹脂内での超音波の波長λは略1.25mmと
なるから、整合層3の厚みtは、略0.3mmの整数倍
に設定され、ガラスバルーン4及び気泡5の粒径は、λ
/10以下として0.1mm以下に設定されている。
【0029】超音波トランスジューサ1は、図2に示す
ように、ガラスバルーン4と気泡5とが含有されたエポ
キシ樹脂材からなる、振動子2の振動面と略同一の断面
形状(例えば円形や矩形)を有する棒状の音響インピー
ダンス整合用樹脂材8を予め製造しておき、超音波の使
用周波数に応じた所要の厚みtで音響インピーダンス整
合用樹脂材をスライスして整合層3の膜を作成し、この
整合層3の膜を予め製造された振動子2の振動面2aに
接着剤で接着して製造される。なお、整合層3の膜が振
動子2の振動面2aに固定的に設けられるものであれ
ば、圧着等の接着以外の方法で整合槽3の膜を振動面2
aに設けるようにしてもよい。
【0030】そして、音響インピーダンス整合用樹脂材
7は、図3の工程図に従って製造される。すなわち、ま
ず、エポキシ樹脂6の主剤及び硬化剤並びにガラスバル
ーン4が製造ロットに応じて予め設定されている所定量
だけ秤量される(ステップS1,S2)。この場合、ガ
ラスバルーン4は、主剤と硬化剤とを混合してなるエポ
キシ樹脂6(液体)に対して体積比が略同一となる重量
が秤量される。すなわち、エポキシ樹脂6とガラスバル
ーン4の比重はそれぞれおよそ1.3と0.2であるか
ら、重量比でエポキシ樹脂6:ガラスバルーン4=1:
7となるようにガラスバルーン4が秤量される。
【0031】このようにガラスバルーン4の混合量を設
定しているのは、ガラスバルーン4をこれ以上、大量に
入れると、混合液の粘度が増大し、後の混練工程で混練
作業が良好に行い得なくなるので、限界値として略同一
の体積比となるようにしたものである。ガラスパルーン
4は、エポキシ樹脂6内に空気の部分を形成して音響イ
ンピーダンス整合用樹脂材7の音響インピーダンスを可
能な限り低くするためのものであるから、基本的には混
合液の粘度に応じてその量を決定すれば良く、エポキシ
樹脂6の種類に応じて混合液の粘度が異なる場合は、混
練工程で混練作業を良好に行い得る最大限の量を秤量す
るとよい。
【0032】続いて、エポキシ樹脂6の主剤と硬化剤と
が均一に混練された後(ステップS3)、このエポキシ
樹脂6(液体)にガラスバルーン4を混入し、ガラスバ
ルーン4とエポキシ樹脂液6とが均一に混練される(ス
テップS4)。
【0033】この混練工程では、通常、混合液に気泡が
混入し、気泡の混入を望まないエポキシ樹脂の製造工程
では、この後、脱泡処理により混入した気泡が除去され
るが、音響インピーダンス整合用樹脂材7は、ガラスバ
ルーン4を混入しても尚不足する気泡部分を補充するた
め、混練工程で積極的に気泡5を混入させ、次の脱泡工
程で不必要なサイズの気泡5を除去して所望のサイズの
気泡5をエポキシ樹脂6に混入するようにしている。
【0034】すなわち、上述のように気泡5が含有され
ていない場合では超音波エネルギー透過率Tが1%程度
で、音響インピーダンスZ2が極めて高く、ガラスバル
ーン4とエポキシ樹脂6との混練工程でエポキシ樹脂6
内に発生する気泡5を全て残存させたとしても音響イン
ピーダンス整合用樹脂材7の音響インピーダンスZ2を
所望のレベルにまで十分に小さくすることはできないの
て、音響インピーダンス整合用樹脂材7では、ガラスバ
ルーン4に加えて気泡5をエポキシ樹脂6に含有させる
ことでその音響インピーダンスZ2を小さくしている。
従って、この混練工程は、ガラスバルーン4とエポキシ
樹脂液6との混練工程であるとともに、気泡6の混入工
程ともなっている。
【0035】また、次の脱泡工程は、エポキシ樹脂内の
気泡を完全に除去する工程ではなく、上述のように不必
要な大きいサイズの気泡のみを除去する一部脱泡工程で
あり、残存する気泡から見れば、エポキシ樹脂に気泡を
含有させる気泡含有工程である。従って、次の脱泡工程
は、実質的に気泡含有工程となっている。
【0036】このように、混練工程で気泡6を積極的に
混入させているのは、従来の樹脂製造工程が利用できる
ので、気泡混入のための特別の装置を必要とせず、しか
も製造工程も増加しないので、音響インピーダンス整合
用樹脂材7を安価に製造することができるためである。
従って、所望のサイズの気泡5の混入方法は、混練工程
と脱泡工程とを利用する方法に限定されるものではな
く、気泡混入用の特殊な設備や工程の増加を考慮しなけ
れば、例えば脱泡処理後にガラスバルーン4とエポキシ
樹脂6との混合液に所望のサイズの気泡5のみを混入す
るようにしてもよい。
【0037】続いて、ガラスバルーン4とエポキシ樹脂
6との混合液の粘度ηが計測され(ステップS5)、こ
の測定結果に基づき次工程の脱泡処理における真空度P
と脱泡時間tkとが設定される(ステップS6)。ここ
で設定される真空度P及び脱泡時間tkは、エポキシ樹
脂6内に所要の微小サイズの気泡5(上述の例では粒径
が0.1mmよりも小さい気泡5)を含有させるため、
次の脱泡工程で不必要な大きいサイズの気泡(上述の例
では粒径が0.1mm以上の気泡)のみを除去し得る真
空度Pと脱泡時間tkとである。
【0038】ところで、真空脱泡処理は、粘体を取り囲
む空気の圧力を低下させることにより粘体内の気泡を膨
張させ(すなわち、気泡の比重を低下させ)、これによ
り気泡を粘体表面に上昇させて消滅させるものである。
図4において、液体8内の球形の気泡9の上向きの力
(浮力)Uは、球の半径をaとすると、U=k1・a
3(k1;比例定数)で表される。一方、気泡9の上昇時
の抵抗力Rは、液体8の粘度をη、気泡の上昇速度をv
とすると、R=−k2・a2ηv(k2;比例定数)で表
される。気泡9の上昇速度vが等速度であれば、気泡9
の浮力Uと抵抗力Rとが釣合い、k1・a3=k2・a2η
vとなるから、v=k1・a/k2・η=k3・a/η
(k3=k1/k2)となり、気泡9の上昇速度vは、気
泡9の径aが大きいほど(すなわち、気泡9の比重が小
さいほど)、速くなり、液体8の粘度ηが高いほど、遅
くなる。
【0039】従って、空気の真空度P及び粘体の粘度η
に応じて適当な脱泡時間tkを設定すれば、所要の微小
サイズの気泡を粘体内に残留させることができ、積極的
に粘体内に気泡を含有させることができる。
【0040】脱泡処理における脱泡時間tと気泡残存量
Sとの関係は、粘度ηをパラメータとすると、図5に示
すようになる。また、真空度Pをパラメータとした場合
は、図6に示すようになる。図5及び図6から明らかな
ように、粘度ηが小さいほど、若しくは真空度Pが大き
いほど、短時間に脱泡が進行し、不要な大きいサイズの
気泡を迅速に除去することができる。
【0041】本実施の形態では、予め図4又は図5に示
す特性を測定するとともに、所望の微小サイズの気泡が
残存し得る脱泡時間tk(図4及び図5におけるt1,t
2,…)を算出して粘度ηから脱泡時間tk及び真空度
Pを設定する演算テーブルを用意し、ステップS4で計
測された粘度ηに基づきこの演算テーブルを用いて真空
度Pと脱泡時間tkとを設定するようにしている。
【0042】図3に戻り、真空度P及び脱泡時間tkが
設定されると、続いて、ガラスバルーン4とエポキシ樹
脂6との混合液の脱泡処理(気泡含有処理)が行われる
(ステップS7)。この気泡含有処理は、図7に示す気
泡含有処理装置で行われる。図7に示す気泡含有処理装
置11は、主として真空ポンプ12、真空槽13、真空
計14、制御部15及び入力部16とから構成される。
制御部15は、真空計14の計測結果に基づき真空ポン
プ12の駆動を制御して真空槽13を入力部16から入
力された所定の真空度Pに設定し、保持する。また、制
御部15は、内蔵するタイマ17に入力部16から入力
された所定の脱泡時間tkを設定し、脱泡処理開始と同
時にその脱泡時間tkをカウントする。そして、脱泡時
間tkのカウントが終了すると、真空ポンプ12の駆動
を停止し、真空槽13の圧力を常圧に戻して気泡含有処
理を終了する。なお、制御部15による自動制御ではな
く、マニュアルで真空ポンプ12の駆動を所定の脱泡時
間tkだけ駆動して気泡含有処理を行うようにしてもよ
い。
【0043】気泡含有処理が終了すると、続いて、注型
処理が行われる(ステップS8)。この注型処理は、図
2に示すような棒状の音響インピーダンス整合用樹脂材
7を成形するため、所定の型にガラスバルーン4及び気
泡5が含有されたエポキシ樹脂6(液体)を注入する処
理である。
【0044】続いて、エポキシ樹脂6の硬化処理が行わ
れる(ステップS9)。この硬化処理は、図8に示す硬
化装置で行われる。図8に示す硬化装置18は、恒温槽
19、エポキシ樹脂6が注入された型23を回転可能に
支持する支持部20、この支持部20を回転させるモー
タ21及び恒温槽19の温度制御及びモータ21の駆動
制御を行う制御部22を備えている。制御部22は、硬
化処理を開始すると、恒温層17を図略の入力部から入
力された所定の硬化温度に上昇させ、入力部から入力さ
れた所定の硬化時間だけその硬化温度に保持した後、常
温に戻す。また、制御部22は、熱硬化処理の間、モー
タ21を駆動して型23をゆっくり回転させる。型23
を回転させるのは、比重の異なるガラスバルーン4とエ
ポキシ樹脂6とが熱硬化処理中に分離しないようにする
ためである。
【0045】熱硬化処理が終了すると、恒温層19から
型23を取り出し、この型23から硬化したエポキシ樹
脂6を取り出して、ガラスバルーン4及び気泡5を含有
するエポキシ樹脂材からなる音響インピーダンス整合用
樹脂材7が得られる(ステップS10)。
【0046】そして、出願人は、上述の方法により略1
×105g/s・cm2の音響インピーダンスZ2を有す
る音響インピーダンス整合用樹脂材7が得られることを
確認している。上述のように、従来のガラスバルーン入
りエポキシ樹脂材の音響インピーダンスZ2はおよそ2
×105g/s・cm2であるから、音響インピーダンス
は略2倍改善され、超音波トランスジューサ1の超音波
放射能率はガラスバルーン入りエポキシ樹脂材を整合層
として用いたものより略4倍(超音波エネルギー透過率
Tを略4〜5%)に向上させることができる。
【0047】上記のように、ガラスバルーン4が混入さ
れたエポキシ樹脂6に更に気泡5を積極的に含有させて
音響インピーダンス整合用樹脂材7の音響インピーダン
スを一層、低下させるようにしているので、気体と振動
子2との整合性が改善され、気体用超音波トランジュー
サ1の放射能率(感度)を従来よりも数倍、向上させる
ことができる。
【0048】なお、上記実施の形態では、エポキシ樹脂
を用いているが、気泡を含有させることのできる樹脂で
あればエポキシ樹脂に限定されるものではない。例えば
ポリウレタンやゴム系材料等の他の材料を用いてもよ
い。
【0049】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
樹脂に使用超音波の所定波長よりも小さい粒径を有する
ガラスバルーンを混入し、更に使用超音波の所定波長よ
りも小さい粒径を有する気泡を混入して音響インピーダ
ンス整合用樹脂材を構成したので、従来のガラスバルー
ン入り樹脂からなる音響インピーダンス整合用樹脂材よ
りも一層、音響インピーダンスの低い音響インピーダン
ス整合用樹脂材を提供することができる。
【0050】また、本発明は、上記音響インピーダンス
整合用樹脂材の製造方法であって、熱硬化樹脂剤に使用
超音波の波長よりも小さい粒径を有するガラスバルーン
を混入し、熱硬化樹脂剤とガラスバルーンとを気泡を混
入させつつ均一に混合した後、この混合液から使用超音
波の波長よりも大きい粒径の気泡を除去して使用超音波
の波長よりも小さい粒径の気泡のみを混入させるように
したので、気泡混入用の特別の設備を必要とせず、従来
の設備を利用して簡単かつ廉価に音響インピーダンス整
合用樹脂材を製造することができる。
【0051】特に、ガラスバルーンと気泡とが混入され
た熱硬化樹脂剤の粘度を測定し、この測定結果に基づい
て脱泡処理における真空度と脱泡時間とを設定するよう
にしたので、熱硬化樹脂剤の粘度がバラついている場合
にも、脱泡処理において、使用超音波の波長よりも大き
い粒径の気泡を好適に除去することができる。
【0052】また、超音波を発生する振動子の振動面に
使用超音波の波長よりも小さい粒径のガラスバルーンと
気泡とが混入された低音響インピーダンス樹脂材からな
る整合層を設けて超音波トランスジューサを構成したの
で、振動子で発生した超音波エネルギーの外部伝搬媒体
(気体)へのエネルギー変換効率が向上し、高感度の超
音波トランスジューサを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る音響インピーダンス整合用樹脂材
を適用した超音波トランスジューサの断面図である。
【図2】本発明に係る音響インピーダンス整合用樹脂材
の外観の一例を示す斜視図である。
【図3】低音響インピーダンス樹脂材の製造工程を示す
工程図である。
【図4】粘体内の気泡の上昇速度を説明するための図で
ある。
【図5】粘度ηをパラメータとした脱泡時間tと気泡残
存量Sとの関係を示す図である。
【図6】真空度Pをパラメータとした脱泡時間tと気泡
残存量Sとの関係を示す図である。
【図7】気泡含有処理装置の構成図である。
【図8】硬化装置の構成図である。
【図9】従来の超音波トランスジューサの構造を示す断
面図である。
【符号の説明】
1 超音波トランスジューサ 2 振動子 3 整合層 4 ガラスバルーン 5,10 気泡 6 エポキシ樹脂 7 音響インピーダンス整合用樹脂材 8 粘体 11 気泡含有処理装置 12 真空ポンプ 13 真空槽 14 真空計 15,22 制御部 16 入力部 17 タイマ 18 硬化装置 19 恒温槽 20 支持部 21 モータ 23 型

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 使用超音波の波長よりも小さい粒径を有
    するガラスバルーンが混入された樹脂に更に気泡を混入
    してなり、この気泡は、上記使用超音波の波長よりも小
    さい粒径の気泡であることを特徴とする音響インピーダ
    ンス整合用樹脂材。
  2. 【請求項2】 上記ガラスバルーンは、上記樹脂に対し
    て略同一の体積比で混入されていることを特徴とする音
    響インピーダンス整合用樹脂材。
  3. 【請求項3】 熱硬化樹脂剤に使用超音波の波長よりも
    小さい粒径を有するガラスバルーンを混入し、上記熱硬
    化樹脂剤と上記ガラスバルーンとを気泡を混入させつつ
    均一に混合する第1の工程と、上記熱硬化樹脂剤、ガラ
    スバルーン及び気泡の混合液から上記使用超音波の波長
    よりも大きい粒径の気泡を除去する第2の工程と、上記
    第2の工程後に上記熱硬化樹脂剤、ガラスバルーン及び
    気泡の混合液を所定の温度で加熱して硬化させる第3の
    工程とからなる請求項1又は2記載の音響インピーダン
    ス整合用樹脂材の製造方法。
  4. 【請求項4】 上記第2の工程は、上記第1の工程で混
    合した混合液を所定の真空度で上記超音波の波長よりも
    大きい粒径の気泡のみを除去し得る所定の脱泡時間だけ
    脱泡処理を行う真空脱泡工程であることを特徴とする請
    求項3記載の音響インピーダンス整合用樹脂材の製造方
    法。
  5. 【請求項5】 上記第2の工程における所定の真空度と
    脱泡時間とは、上記第1の工程で混合した混合液の粘度
    を計測し、その計測結果に基づき設定されることを特徴
    とする請求項3記載の音響インピーダンス整合用樹脂材
    の製造方法。
  6. 【請求項6】 超音波を発生する振動子の振動面に請求
    項1又は2記載の音響インピーダンス整合用樹脂材から
    なる整合層が設けられていることを特徴とする超音波ト
    ランスジューサ。
  7. 【請求項7】 上記整合層は、請求項1又は2記載の音
    響インピーダンス整合用樹脂材からなる整合膜を上記振
    動子の振動面に接着して設けられていることを特徴とす
    る請求項6記載の超音波トランスジューサ。
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