JPH11201703A - 多層構造物の地震時層間変位検出装置 - Google Patents

多層構造物の地震時層間変位検出装置

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JPH11201703A
JPH11201703A JP613998A JP613998A JPH11201703A JP H11201703 A JPH11201703 A JP H11201703A JP 613998 A JP613998 A JP 613998A JP 613998 A JP613998 A JP 613998A JP H11201703 A JPH11201703 A JP H11201703A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】多層構造物の安全性を地震後速やかに且つ簡単
に確認できる地震時層間変位検出装置を提供する。 【解決手段】層間変位を測定すべき層間2の対向する上
層床3又は下層床4に層間変位に応ずる径rの円7を有
するスケール6を固定する。剛性支持柱10の一端11に取
り付けた記録具17をスケール6の中心Oの周辺と摺動自
在に接するようにしつつ、該支持柱10の他端12をスケー
ル6と層間2を隔てて対向する下層床4又は上層床3に
固定する。地震前に記録具17をスケール6の中心Oに位
置決めし、地震後にスケール6上の記録具17による記録
位置から層間変位を求める。好ましくはスケール6上の
円の径rの大きさを、層間2の高さhと当該層間2にお
ける層間変形角の最大許容量δmaxとの積(r=δmax×
h)とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は多層構造物の地震時
層間変位検出装置に関し、とくに複数階建物や多層の土
木構造物等(以下、多層構造物という。)の地震時の層
間変位を検出することにより該構造物の安全性等を確認
するための地震時層間変位検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】大きな地震を受けた場合には、多層構造
物について安全性が維持されているか、あるいは再使用
可能であるかどうかを確認する必要がある。阪神淡路大
震災の際には、構造物の安全性や再使用可能性等の確認
(以下、単に安全性確認という。)をどのような方法で
行うかが大きな問題となった。
【0003】多層構造物の安全性は、その主体部分の骨
組、筋かい、壁材等の構造部材の損傷の程度に基づいて
判断することができる。そこで従来は構造物主体の構造
部材の外観を目視により調査し、その調査結果から損傷
の程度を判断して安全性確認をしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし従来の目視によ
る構造物の安全性確認は、地震後できるだけ速やかに実
施することが望ましいにも拘わらず、構造物主体の構造
部材の外観調査に時間がかかる問題点がある。また構造
部材を仕上げ材や耐火被覆等で覆った構造物の場合に
は、時間がかかるだけでなく、目視による外観調査が困
難となることもある。仕上げ材や耐火被覆等を取り除い
て構造部材を調査することは可能であるが時間がかか
り、多くの費用を要するので経済的負担も大きくなる。
多層構造物の安全性を地震後速やかにしかも簡単に確認
できる方法の開発が望まれている。
【0005】そこで本発明の目的は、多層構造物の安全
性を地震後速やかに且つ簡単に確認できる地震時層間変
位検出装置を提供するにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】過去の震災経験や実験に
より、地震による構造物主体の構造部材の損傷の程度
は、地震力により当該構造物の上層床と下層床との間に
生じる水平方向の層間変位の大きさに対応することが確
認されている。前記構造物の層間変位の当該層間の高さ
hに対する割合(以下、層間変形角という。)δが最大
許容量δmaxより大きくなると、構造物主体の構造部材
に有害な損傷が生じるおそれがある。本発明者は、地震
時の構造物の層間変位を求め且つ当該層間の高さから層
間変形角δを求め、層間変形角δと最大許容量δmax
対比することができれば、構造物主体の構造部材を直接
目視で調査せずとも、構造物主体の構造部材の損傷程度
が推定できるとの着想に基づき、層間変形角δと最大許
容量δmaxとを速やかに且つ簡単に対比できる装置の研
究開発の結果、本発明の完成に至ったものである。
【0007】図1から3の実施例を参照するに、本発明
の多層構造物の地震時層間変位検出装置は、多層構造物
の地震時の層間変位を検出する装置において、測定すべ
き層間2の対向する上層床3又は下層床4に固定され且
つ層間変位に応ずる径rの円7を有するスケール6、一
端11がスケール6の中心Oの周辺と摺動自在に接するよ
うに他端12をスケール6と層間2を隔てて対向する下層
床4又は上層床3に固定した剛性支持柱10、及び剛性支
持柱10の一端11に取り付けた記録具17を備え、地震前に
記録具17をスケール6の円7の中心Oに位置決めし、地
震後にスケール6上の記録具17による記録位置から層間
変位を求めてなるものである。
【0008】
【発明の実施の形態】図1から3に示す本発明の層間変
位検出装置1の実施例は、多層構造物の層間2、即ち上
層床3と下層床4との間に配置される。図示例は上層床
3にスケール6を固定し、スケール6と対向する下層床
4に剛性支持柱10の下端を固定し、剛性支持柱10の上端
にスケール6と摺動自在に接する記録具17を取り付けて
いる。地震時にはスケール6が上層床3と共に移動し、
剛性支持柱10及び記録具17が下層床4と共に移動するの
で、スケール6上の記録具17の位置から上層床3と下層
床4との間の水平方向の層間変位を求めることができ
る。ただし本発明はこの実施例に限定されるものではな
く、例えばスケール6と剛性支持柱10との上下関係を逆
転させた配置とすることができる。
【0009】剛性支持柱10は、地震力による変形が十分
小さくなるように、例えば鋼管等の剛性の高い材料製の
ものとする。図1の剛性支持柱10は上端が上層床3のス
ケール6と接し、下端がスケール6と層間2を隔てて対
向する下層床4に固定される。すなわち剛性支持柱10は
層間2の高さhに相当する上下長さを有する。好ましく
は剛性支持柱10を測定すべき層間2の高さhに応じて長
さが調整可能な構造のものとし、異なる高さhの層間に
対しても容易に適応できるようにする。
【0010】図1の剛性支持柱10の下端には溶接等によ
りベースプレート18が取り付けられ、ベースプレート18
が例えばアンカーボルト19により下層床4のコンクリー
トスラブ等へ固定される。図3は図1の矢印III−III方
向から見たベースプレート18の頂面を示す。ただし剛性
支持柱10の固定方法は図示例に限定されない。また図示
例は剛性支持柱10を下層床4及び上層床3に対して直角
方向に固定しているが、剛性支持柱10の固定方向も図示
例に限定されない。
【0011】記録具17の一例は、スケール6上に摺動軌
跡を記録するペン又は鉛筆などの筆記具である。好まし
くは記録具17に、記録具17とスケール6との間の間隔変
動を吸収して記録具17をスケール6へ押圧する押圧手段
を含める。記録具17を筆記具とすれば、構造物の揺れの
軌跡を水平二方向同時に記録することができる。ただし
摺動軌跡の記録は本発明の必須要件ではなく、記録具17
はスケール6上に地震中の最大変位が記録できるもので
あれば足りる。最大変位の値により構造物の損傷程度が
予測できるからである。例えば記録具17を電磁気的な記
録手段としてもよい。
【0012】図2は図1の矢印II−II方向から見たスケ
ール6の正面図を示す。スケール6は、例えば測定対象
の層間2の高さと予測層間変形角とにより定まる径rの
円7を有し、円7が下層床4と対向するように例えばア
ンカーボルト8により上層床3のコンクリートスラブや
梁などに固定される。図2のスケール6は異なる径
a、rbの2つの同心円7a、7bを有するが、本発明のス
ケール6は少なくとも1つの円7を有すれば足りる。円
7の径rの大きさは、例えば前記層間変形角の最大許容
量δmaxと当該層間2の高さhとの積(r=δmax×h)
とすることができる。すなわち測定対象の層間の高さが
4mであり、層間変形角の最大許容量δmaxが1/200であ
る場合は、スケール6上の円7を径2cm(=400×(1/20
0))とすることができる。
【0013】地震発生前に剛性支持柱10の一端の記録具
17をスケール6の円7の中心Oに位置決めし、地震時に
記録具17をスケール6の中心Oから層間変位に応じた記
録位置へ移動させる。本発明によれば、記録具17の記録
位置がスケール6上の円7の内か外かを容易に判断する
ことができる。スケール6上の円7の径rを前記層間変
形角の最大許容量δmaxと当該層間2の高さhとの積
(r=δmax×h)とした場合には、記録具17の記録位
置が円7の内側であれば層間変位が最大許容量δma x
満であると判断し、記録位置が円7の外側であれば最大
許容量δmaxより大きいと判断することができる。すな
わち構造物の層間変位の大きさを層間2における最大許
容量δmaxと簡単に比較することができるので、構造物
の損傷程度、即ち安全性確認を速やかに行うことができ
る。
【0014】こうして本発明の目的である「多層構造物
の安全性を地震後速やかに且つ簡単に確認できる地震時
層間変位検出装置」の提供が達成できる。
【0015】好ましくは、スケール6上の円7の内側と
外側とを異なる色彩とすることにより、本発明装置1に
よる構造物の安全確認を一層容易化することが期待でき
る。例えば円7の内側を青色とし、円7の外側を赤色と
することができる。
【0016】なお地震時には本発明装置1にも剛性に見
合った変形が起こり得る。地震時には、構造物の地震応
答と本発明装置1自体の地震応答とを加えた大きさの応
答加速度が本発明装置1にかかるからである。例えば図
1に示す本発明装置1を外径φ=200mm、肉厚3mm、長さ
4mの鋼管とした場合、応答加速度を比較的大きな3G
と仮定すると、剛性支持柱10の上端に約5mmの変形が生
じ得る。これを層間変形角δxに換算すると1/800(=5m
m/4m)となる。
【0017】この装置変形に起因する層間変位δxは、
上述した層間変形角の最大許容量δm axである1/200等に
比し相対的に小さい。また比較的頻繁におこる相対的に
小さい地震では応答加速度は上記の数分の一程度と予想
され、その際に生ずる装置の変形も前記層間変形角δx
に対して十分小さい。従って層間変形角の最大許容量δ
maxに比し装置の変形に起因する変形角は無視すること
ができ、装置の変形を考慮せずとも本発明装置1による
構造物の安全性確認を行うことが可能である。
【0018】ただし、スケール6上の円7の径r又はス
ケール6上の記録具17による記録位置を剛性支持柱10の
変形量に基づき補正することにより、一層正確な地震後
の層間変位を求めることも可能である。剛性支持柱自体
の変形量は概略予測できるので、例えば層間変形角の最
大許容量δmaxを剛性支持柱自体の予測変形量で補正し
た値から、スケール6上の円7の径rの大きさを求める
ことができる。上述の例では、応答加速度3Gの地震レ
ベルでは剛性支持柱自体の予測変形量は1/800であるの
で、例えばスケール6上の円7の径rの大きさを許容量
δmax=1/200と予測変形量1/800との差又は和(1/200±
1/800)から求めることができる。
【0019】
【実施例】図2のスケール6は異なる径ra、rbの2つ
の同心円7a、7bを有する。図示例では円7aの半径ra
安全範囲内と考え得る最大層間変形角δaと層間高さh
との積(ra=δa×h)とし、円7bの半径rbを一定程
度の危険が認められる層間変形角δbと層間高さhとの
積(rb=δb×h)としている。鉄骨フレーム構造の構
造物に適用できるスケール6の一例を表1に示し、鉄筋
コンクリート構造の構造物に適用できるスケール6の他
の一例を表2に示す。
【0020】ただしスケール6の同心円7a、7bに対応す
る層間変形角δa、δbの大きさは表1及び2に限定され
ず、各種基準値や設計当初に設定したクライテリアなど
に基づき構造物ごとに定めることができる。また表1、
2では、各同心円7a、7bの内側及び最外側円7bの外側を
それぞれ異なる色彩とし、本発明装置1による構造物の
安全性確認の容易化を図っている。ただし同心円7の数
は表1、2に限定されず、スケール6の円7aの内側、円
7aと7bとの間、円7bの外側に更に他の同心円を設けるこ
とが可能である。
【0021】
【表1】
【0022】
【表2】
【0023】図1に示す本発明装置1の剛性支持柱10
は、一端にベースプレート18が結合された中空外側筒体
13と、該中空外側筒体13の中空部に嵌合可能な内側柱体
14と、中空外側筒体13への内側柱体14の嵌合深さを調整
する長さ調整ボルト15とを有する。長さ調整ボルト15
は、外側筒体13内の適当な位置に内側柱体14を固定する
ことにより、測定すべき層間2の高さhに応じて、剛性
支持柱10の長さを調整することができる。剛性支持柱10
を長さ調整可能とすることにより、本発明装置を層間高
さhが異なる構造物に適用可能な汎用ユニットとするこ
とができる。
【0024】本発明装置1は既存の構造物にも比較的簡
単に設置することができ、またスケール6を下層床4又
は上層床3と対向させて設置できる面積が確保できる限
り、例えば仕切り壁の内部や設備配管スペース等の僅か
な設置場所に設置することも可能である。
【0025】なおスケール6は地震のたびに取り替える
ことができる。また記録位置が安全範囲にある場合には
地震後も継続して使用することができる。スケール6を
継続して使用する場合は、記録位置が重ねて記録される
ため、過去における累積層間変位が検出可能となる。累
積層間変位が安全範囲にある限り、スケール6を取り替
えることなく継続使用することも可能である。
【0026】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の多層構造
物の地震時層間変位検出装置は、測定すべき層間変位に
応ずる径の円を有するスケール上に当該層間の地震時の
層間変位を記録するので、次の顕著な効果を奏する。
【0027】(イ)スケール上の記録が円の外まで出て
いるかどうかを見るだけで、構造物の所有者等が地震後
速やかに且つ容易に構造物の安全性を確認することがで
き、構造物の危険度や再利用性を早期に判断することが
できる。 (ロ)僅かな設置場所で設置することができ、既存の構
造物にも比較的容易に設置することができる。 (ハ)本発明装置を長さ調整可能とすることにより、層
間高さが異なる構造物に適用可能な汎用ユニットとする
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】は、本発明装置の一実施例の側面図である。
【図2】は、図1のII−II方向から見たスケールの説明
図である。
【図3】は、図1のIII−III方向から見たベースプレー
トの説明図である。
【符号の説明】
1…層間変位検出装置 2…層間 3…上層床 4…下層床 6…スケール 7、7a、7b…同心円 8…アンカーボルト 9…スケール外側 10…剛性支持柱 11…一端 12…他端 13…中空外側筒体 14…内側柱体 15…長さ調整ボルト 17…記録具 18…ベースプレート 19…アンカーボルト

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】多層構造物の地震時の層間変位を検出する
    装置において、測定すべき層間の対向する上層床又は下
    層床に固定され且つ層間変位に応ずる径の円を有するス
    ケール、一端が前記スケールの中心の周辺と摺動自在に
    接するように他端を前記スケールと前記層間を隔てて対
    向する下層床又は上層床に固定した剛性支持柱、及び該
    剛性支持柱の前記一端に取り付けた記録具を備え、地震
    前に前記記録具を前記スケールの円の中心に位置決め
    し、地震後に前記スケール上の前記記録具による記録位
    置から層間変位を求めてなる多層構造物の地震時層間変
    位検出装置。
  2. 【請求項2】請求項1の検出装置において、前記スケー
    ル上の円の径(r)の大きさを、前記層間の高さ(h)
    と当該層間における層間変形角の最大許容量(δmax
    との積(r=δmax×h)としてなる多層構造物の地震
    時層間変位検出装置。
  3. 【請求項3】請求項1又は2の検出装置において、前記
    スケール上の円の内側と外側とを異なる色彩としてなる
    多層構造物の地震時層間変位検出装置。
  4. 【請求項4】請求項3の検出装置において、前記スケー
    ル上に前記円の径と異なる径の同心円を設け、各同心円
    の内側及び最外側円の外側をそれぞれ異なる色彩として
    なる多層構造物の地震時層間変位検出装置。
  5. 【請求項5】請求項1から4の何れかの検出装置におい
    て、前記剛性支持柱に、該支持柱の一端と他端との間の
    長さを前記測定すべき層間の高さに応じて調整する調整
    機構を設けてなる構造物の地震時層間変位検出装置。
  6. 【請求項6】請求項1から5の何れかの検出装置におい
    て、前記スケール上の円の径又は前記スケール上の記録
    具による記録位置を前記剛性支持柱の変形に基づき補正
    してなる多層構造物の地震時層間変位検出装置。
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