JPH11199351A - 多孔性無機有機複合体およびその製造方法 - Google Patents

多孔性無機有機複合体およびその製造方法

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JPH11199351A
JPH11199351A JP9350983A JP35098397A JPH11199351A JP H11199351 A JPH11199351 A JP H11199351A JP 9350983 A JP9350983 A JP 9350983A JP 35098397 A JP35098397 A JP 35098397A JP H11199351 A JPH11199351 A JP H11199351A
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fluorine
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inorganic porous
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JP9350983A
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Kazuo Okuyama
和雄 奥山
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Asahi Chemical Industry Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 含フッ素有機物質が無機多孔体に担持、固定
化されており、極性の有機溶媒によっても含フッ素有機
物質の流出が少ない多孔性無機有機複合体およびその製
造方法を提供する。 【解決手段】 無機多孔体の孔表面上に、含フッ素有機
物質を担持し固定化した多孔性無機有機複合体。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、イオン交換、キレ
ート、各種クロマトグラフィーなど、触媒、特に酸触媒
に好適な多孔性無機有機複合体とその製造法に関し、具
体的には、無機多孔体に含フッ素有機物質を担持、固定
化してなる新規な多孔性無機有機複合体とその製造法に
関する。
【0002】
【従来の技術】イオン交換樹脂、キレート樹脂、無機イ
オン交換体などは、吸着クロマトグラフィー、イオン交
換クロマトグラフィー、分配クロマトグラフィー等の分
離工程や、吸着工程に広範囲に使用されている。しかし
ながらイオン交換樹脂やキレート樹脂については物理的
強度、粒子の寸法安定性等の面で、また無機イオン交換
体は粒形や有効吸着容量等の面から満足のいくものでは
ない。すなわち、これらが原因で充填塔の高さ、粒子充
填密度、展開圧力等が厳しく制限される。
【0003】一方、無機構造体の物理的強度を活用し
て、無孔性あるいは多孔性無機体の外表面にシリル化反
応で官能基を導入して複合体とする例が、特公昭52−
48518号公報において開示されている。しかし、こ
の複合体では導入できる交換基の量が著しく小さく、単
位複合体あたりで大きな吸着量、分離量を獲得するには
不十分である。
【0004】また、多孔性無機担体の孔内にラジカル重
合性単量体及び/または架橋剤をラジカル開始剤ととも
に含浸し架橋重合した後官能基を導入したりしてイオン
交換用やキレート用の複合体とする方法が、特開昭52
−146298号公報において開示されている。この複
合体では毛細管現象で無機担体の孔に重合性単量体が入
るものの、孔を閉塞させるように入り込むため、被吸着
物が孔内の官能基に向かって移動する空間が大きく制限
され、その結果として吸着速度が遅い問題が生じる。こ
の欠点を克服するものとしては、無機多孔体粒子の孔の
内部表面を部分的にあるいは完全に樹脂が占有し、かつ
樹脂部分の内部に無機多孔体粒子の外部と連続した空間
を有する複合体が特公平6−62346号公報に開示さ
れている。しかしながら、この複合体では吸脱着する化
学種は樹脂内部にある比較的小さな空間を拡散する。そ
のため化学種の吸脱着速度には限界がある。
【0005】一方、フッ素を含んだ化合物はフッ素の大
きな電気陰性度と小さな原子半径のために緻密な構造体
となり、大きな耐熱性及び耐薬品性を示す。さらに、フ
ッ素を含んだ化合物がカルボン酸やスルホン酸などのカ
チオン交換基を有している場合には、そのカルボン酸や
スルホン酸は高い酸性度を示す。フッ素のこの性質を利
用しやすくするために形態を粒子状にしたものとして
は、ペルフルオロカーボンスルホン酸の一つであるナフ
ィオン(E.I.duPontdeNemoursan
dCompany社製)を、粒子状にしたものがに開示
されている(CHEMTECH1987,Americ
an Chemical Society,17,43
8)。この粒子は有機反応の酸触媒に使うことを目的と
している。しかしながら、この粒子は表面積が0.02
2 /g以下と非常に小さく、大部分のスルホン酸基は
粒子内部に埋め込まれ有効に働いていない。
【0006】また、別の例としては、アルコキシシラン
にナフィオンの溶液を加えて加水分解する(ゾル−ゲル
法)ことで、シリカ骨格にナフィオンが絡み合った複合
多孔体が提案されている(J.Am.Chem.So
c.,(1996)118,7708)。この複合体
は、使用中にナフィオンが抜け出にくいといわれてい
る。しかし、実際は極性のある有機溶媒中に浸漬すると
ナフィオンが抜け出る欠点が確認された。また、製造工
程における加水分解で副成するアルコール及びそれに引
き続き生じる縮合反応で副成する水が、ゲルから外部に
抜ける際に、数十nm程度の小さな孔径の孔を形成して
いる。この小さな孔を通して反応物が移動するのである
が、孔が小さすぎるために反応物の移動速度が小さく反
応効率が悪くなる。そこで、ゾルに炭酸カルシウムの粒
を入れてゲル化後溶出して孔径の大きな(500nm程
度)孔を共存させるという工夫も行われている。しか
し、大きな孔の分散状態が均一になりにくいこと、シリ
カ骨格が粒子状であることから、複合体粒子の強度は弱
い。さらには、実際の使用時にはゾル−ゲル法で作った
塊を粉砕して使用しているため、形状は球状ではなく破
砕型形状である。破砕型形状の粒子は取り扱い中、又は
使用中に角張った部分が欠け落ちやすく、カラム詰まり
や損失の原因となりやすい。
【0007】また、酸触媒としては、現在、各種有機反
応の酸触媒として硫酸をはじめとする鉱酸やトリフルオ
ロメタンスルホン酸等の強有機酸が用いられている。し
かしながら、これらは、腐食性を有すること、生成物あ
るいは反応物と触媒との分離が困難なこと、そして触媒
の再生再使用が出来ないことなどの欠点を有し、これら
の欠点をなくす固体酸触媒が切望されている。このた
め、上記のゾル−ゲル法によるナフィオンとシリカとの
複合体や、リンタングステン酸をやはりゾル−ゲル法で
シリカ内部に閉じこめたものを使用することが提案され
ている。しかしながら、ゾル−ゲル法によるナフィオン
とシリカとの複合体では、上述の通り、極性有機溶媒中
でナフィオン成分が溶出するという問題点がある。
【0008】また、リンタングステン酸とシリカとの複
合体では、リンタングステン酸が10wt%以下しか複
合化できないので酸触媒としての活性点が少ないこと、
やはり破砕型であること、孔が小さく拡散に時間がかか
ること、酸性度がペルフルオロカーボンスルホン酸より
小さいこと等の欠点がある。次に、担体となる無機多孔
体粒子に関しては、クロマト担体、触媒担体用等に使用
する場合、比較的均一なマクロ孔(なお、本発明ではマ
クロ孔とは1000Å以上の孔径を有する孔を意味す
る。)を多数有することが有利とされる。そのため、空
孔率の大きな材料が強く望まれている。また、上記用途
に用いられる場合、球状であることが非常に有利であ
る。破砕型のような変形粒子の場合、取り扱い中に粒子
角が崩れやすく発生した微粉はカラム詰まりや圧力損失
の増加の原因になりやすい。加えて充てん状態が不安定
になりやすい。従来、無機多孔体粒子としては、シリカ
ゲルや多孔性ガラスが知られている。シリカゲルは通常
珪酸ソーダと硫酸または塩酸との反応によりシリカヒド
ロゲルとし、水洗、乾燥、さらに必要ならば焼成して製
造される。このようにして得られるシリカゲルは球状で
はあるが孔径分布が広かったり、あるいは孔径が小さい
(数百Å)、さらには表面にシリカの殻があり粒子内部
への物質の移動にたいして障壁となりうるといった特徴
を有する。加えて、その骨格形状はシリカ微粒子がくっ
ついた構造(粒子状)であるため強度が比較的小さい。
シリカゲルの製造法は、例えば特開昭58−10401
7号公報、特開平7−5817号公報に開示されてい
る。
【0009】また、多孔性ガラスは特定組成のホウケイ
酸ガラスを溶融、成形後、一定の温度範囲内で熱処理し
て相分離を生ぜしめ、その後、酸処理、水洗して溶出相
を除去し、さらに乾燥して製造される。このような多孔
性ガラスは、骨格は柱状で絡み合った構造(柱状)をし
ているが、一般に空孔率が小さい。また、代表的には9
6%の無水珪酸の他に、無水ホウ酸及び酸化ナトリウム
を構成成分として含んでいるため、酸等の耐薬品性に限
界がある。さらには、高温で溶融してしまうために塊状
で得られ、粉体として利用するには破砕する必要があ
り、結果として破砕型形状の粒子となる。多孔性ガラス
の製造法は、例えば米国特許第2,106,744号
(1934)や第4,657,875号(1987)に
記載されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、含フッ素有
機物質の有する耐薬品製や耐熱性、さらには適当な官能
基を持たせることなどにより優れたイオン交換能、触媒
能、金属イオン吸着能を発揮するという性質を比較的少
量の含フッ素有機物質により効率的に発揮させることが
でき、また、含フッ素有機物質が無機担体に固定化され
ており、かつ実用上の取り扱い性や機械的強度、耐薬品
性に優れた多孔性無機有機複合体およびその製造方法を
提供することを課題とする。
【0011】また、本発明は、極性の有機溶媒によって
も含フッ素有機物質の流れ出しが少なく、含フッ素有機
物質が無機多孔体の孔表面上に安定に担持、固定化され
ている多孔性無機有機複合体を提供することを課題とす
る。さらには、酸触媒として用いた場合に、含フッ素有
機物質が溶出しにくく、反応効率が高く効率的な多孔性
無機有機複合体を提供することを課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者は上記の問題点
を解決するために鋭意研究の結果、本発明をなすに至っ
た。即ち、本発明は下記の通りである。 1.無機多孔体中の孔表面上に、含フッ素有機物質を担
持し固定化した多孔性無機有機複合体。
【0013】2.無機多孔体中の孔表面上に担持し固定
化された含フッ素有機物質の溶出率が70%以下である
1.に記載の多孔性無機有機複合体。 3.無機多孔体が、平均粒径が1μmから1mm、空孔
率が0.20から0.90、平均孔径が10から500
0nmである無機多孔体粒子である1.に記載の多孔性
無機有機複合体。
【0014】4.含フッ素有機物質が官能基を有する含
フッ素高分子物質である1.に記載の多孔性無機有機複
合体。 5.含フッ素有機物質を含有せしめた無機多孔体を、該
含フッ素有機物質の融点より50℃低い温度以上でかつ
該含フッ素有機物質の分解温度以下の温度範囲で加熱処
理し、しかるのち冷却する1.に記載の多孔性無機有機
複合体の製造方法。
【0015】6.含フッ素高分子物質を含むアルコキシ
シランを加水分解するゾル−ゲル法でえられた混合物
を、該含フッ素有機物質の融点より50℃低い温度以上
でかつ該含フッ素有機物質の分解温度以下の温度範囲で
加熱処理し、しかるのち冷却する1.に記載の多孔性無
機有機複合体の製造方法。 7.無機多孔体に、含フッ素有機物質と希釈剤とを含む
溶液を含有させ、次いで該希釈剤を除去し、その後、該
含フッ素有機物質の融点より50℃低い温度以上でかつ
該含フッ素有機物質の分解温度以下の温度範囲で加熱処
理し、しかるのち冷却する1.に記載の多孔性無機有機
複合体の製造方法。
【0016】8.無機多孔体に、含フッ素有機物質とな
りうる重合性単量体または重合性オリゴマー、架橋剤、
ラジカル開始剤および希釈剤を含む混合液、または、含
フッ素有機物質、架橋剤および希釈剤を含む混合液を含
有させた後、重合反応および/または架橋反応を生じさ
せ、次いで該希釈剤を除去する1.に記載の多孔性無機
有機複合体の製造方法。
【0017】9.官能基がカチオン交換基である4.に
記載の多孔性無機有機複合体を用いた酸触媒。 以下、本発明につき詳述する。本発明の多孔性無機有機
複合体は、特定の無機多孔体に含フッ素有機物質を包含
させ、かつ固定化処理を行うことにより、担体である無
機多孔体の孔からの含フッ素有機物質の溶出を減少せし
めたもの、すなわち、含フッ素有機物質を無機多孔体内
に実質的に固定化したものである。
【0018】本願における無機多孔体は、実質的に含フ
ッ素有機物質と複合体を作り得るものであれば全て含ま
れる。無機多孔体の空効率は0.20〜0.90、平均
孔径は40Å〜20μmであることが望ましい。含フッ
素有機物質と無機多孔体との複合体の形状には特に制限
はなく、必要に応じて、粒子状、板状、ハニカム状等の
形状に加工し用いる。無機多孔体としては、公知の多孔
体セラミックスが好ましく使用される。具体的には、シ
リカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、チタニア、ジルコ
ニアもしくはこれらの二以上の混合物による無機多孔体
が例示される。
【0019】本発明の多孔性無機有機複合体をイオン交
換体や固体触媒等として用いる場合、流動床または固定
床として用いる。このような場合には、本願の多孔性無
機有機複合体の担体として使用する無機多孔体は粒子状
が好ましく、平均粒径は1μmから1mm、さらに好ま
しくは20μm〜500μmである。無機多孔体粒子の
粒径が1μm以上で取り扱いが比較的容易であり、ま
た、例えばカラムに充填して使用する場合にはカラム前
後の圧力損失が比較的低くできる。平均粒径が1mm以
下で多孔性無機有機複合体の孔の内部における拡散に要
する時間が短くて済み有機物質の機能、例えばイオン交
換、触媒、金属元素の吸着などが十分に機能しうる。
【0020】無機多孔体の空孔率α(無機多孔体全体積
に占める孔の体積の割合)は、機械的強度と触媒効率の
両立の観点から0.20≦α≦0.90である。好まし
くは0.60≦α≦0.90である。より好ましくは
0.65≦α≦0.90である。空孔率が大きいと、そ
れだけ多くの有機物質を担持することが可能となり、無
機有機複合体としての能力、例えば触媒活性点量等を大
きくすることができる。仮に空孔率が0.50(i)と
0.80(ii)のシリカ多孔体にポリトリフルオロス
チレンスルホン酸を担持した場合を定量的に比較してみ
る。無機有機複合体1mlで空孔量が0.25mlを確
保したい場合を想定する。(i)ではシリカが0.50
ml、ポリトリフルオロスチレンスルホン酸0.25m
l、空孔量が0.25mlとなり、無機有機複合体の体
積あたり及び重量あたりの交換容量は1.47ミリ当量
/mlと1.01ミリ当量/gである(シリカの比重を
2.2、ポリトリフルオロスチレンスルホン酸の比重を
1.40とする。(ii)の計算においても同じ。)。
一方、(ii)では、シリカが0.20ml、ポリトリ
フルオロスチレンスルホン酸が0.55ml、孔量が
0.25mlとなり、無機有機複合体の体積あたり及び
重量あたりのポリトリフルオロスチレンスルホン酸の交
換容量は3.24ミリ当量/mlと2.67ミリ当量/
gとなる。(ii)は、(i)に比べて空孔率は1.6
倍にすぎないにもかかわらず、体積あたり及び重量当た
りの交換容量が2.2倍及び2.6倍であることがわか
る。空孔率は機械的強度が許す限り大きめにすること
が、多孔性無機有機複合体粒子内の物質拡散速度が確保
されるため好ましい。
【0021】無機多孔体の平均孔径は40Å〜20μm
であり、好ましくは10nm〜5000nmであり、よ
り好ましくは500〜2000nmである。平均孔径が
下限以上の場合に、無機多孔体の孔中にある有機物質へ
反応物質が進入できる経路が確保されやすく、その結
果、例えば触媒反応が効率よく生じる。平均孔径が上限
以下で無機多孔体の機械的強度が維持される。
【0022】無機多孔体として粒子形状とする場合は、
公知の多孔体セラミックス粒子が好ましく使用される。
具体的には、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、チ
タニア、ジルコニアもしくはこれらの二以上の混合物に
よる無機多孔体粒子が例示される。これらの中でシリカ
多孔体粒子は、実質的に球状のものを容易に作れるこ
と、その粒径分布が狭いこと、及びシリカの高い耐酸性
のため好ましい。
【0023】無機多孔体の骨格構造には、一般に柱状絡
み合い構造と粒子状構造がある。本発明において担体と
して使用する無機多孔体の骨格が、柱状絡み合い構造で
あることは好ましい。通常のシリカ多孔体粒子の骨格構
造は粒子状構造であるが、柱状絡み合い構造をとること
で大きな空孔率でも実用に耐える強度を発現することが
できる無機多孔体が得られる。柱状絡み合い構造とは、
ほぼ同じ太さの柱状シリカが三次元的に発達した構造を
言い、例えば図1のごとき構造である。このような構造
では、応力集中するような弱い箇所が特定されないか、
もしくは少ないために本来シリカが有している強度を発
揮できるものと考えられる。
【0024】一方、粒子状構造では、シリカ微粒子が粒
子形状を保持したまま互いに接触して三次元構造を形成
しており、シリカ微粒子どうしの接触部分の径はシリカ
微粒子自体の径より小さい。そのため、圧縮などの力が
加わった場合にもっとも弱いシリカ微粒子の接触部分に
応力集中が生じ、全体的な強度が低下すると考えられ
る。例えば図2のごとき構造である。
【0025】実際に、シリカ多孔体粒子一個に圧縮荷重
をかけたときの破壊強度を微小圧縮試験機MCTM−5
00形(島津製作所製)で測定すると、空孔率0.68
のシリカゲルMB5000(富士シリシア化学製、粒子
状構造の例)の圧縮破壊強度は91kg/cm2 であ
り、本発明で使用した柱状絡み合い構造のシリカ多孔体
は空孔率0.74で圧縮破壊強度が128kg/cm2
であった。通常の粒状構造のシリカゲルは、柱状絡み合
い構造のシリカ多孔体より強度が小さいことが実験的に
も明らかである。
【0026】さらには、シリカ多孔体表面の開孔状態が
内部と同様であり、表面に開孔状態の低い殻がないもの
が、例えば吸着剤として使用する場合の被吸着種の粒子
内への移動において好ましい。無機多孔体の形状は、特
に限定されるものではないが粒子状である場合は、球状
あるいはそれに近い形のものが好ましく、球状化率75
以上が特に好ましい。球状化率が低くなるほどその強度
が小さくなるからである。無機多孔体の球状化率:A
は、下記(1)式で定義される。
【0027】 A=B×100/C (1) ここで、Bは粒子の断面積、Cはその粒子断面の最小外
接円の面積である。実際に球状化率を測定する場合は、
走査型原子顕微鏡を用い画像解析法にて行うことができ
る。本発明では走査型顕微鏡(日立製作所製)で撮影し
た各種無機多孔体粒子の200倍の写真を使って、画像
解析装置P1000(旭化成工業株式会社製)で解析し
た。
【0028】このような無機多孔体粒子を使用すること
により、単位体積あたりの含フッ素有機物質の包含量を
大きくすることが出来、装置をよりコンパクトにするこ
とが可能になる。また、無機多孔体中に含フッ素有機物
質を包含した後の空間の量(空孔量)を大きくとること
ができるので、例えばカラムに充填して使用する場合で
はカラム圧力を低く抑えることができる。さらには、例
えば、含フッ素有機物質としてイオン交換体を用いた場
合、吸着・脱着時の溶離液などの種類や濃度の変化に対
する強度上の耐性が増し、大型カラムに充填した際の粒
子の破砕、微粒化が防止でき、安定して分離操作を繰り
返すことが出来る。
【0029】以下に、柱状絡み合い構造を示す無機多孔
体粒子の製法の一例を示すが、本発明の無機多孔体はこ
れに限定されるものではない。まず、水ガラスあるいは
シリカゾルを、スプレードライヤーや振動造粒機の如き
装置で造粒することにより、球状あるいはそれに近い形
状に成形することが出来る。粒子中への孔形成は、原液
の水ガラスあるいはシリカゾルに、塩化ナトリウム、モ
リブデン酸、リン酸ソーダ等の無機塩を含ませ、中間製
品としての無機塩含有シリカ粒子を例えば500℃以上
に加熱、焼成した後、脱塩することによって作ることが
できる。この際、条件を選定することによって所望の孔
径や狭い孔径分布のシリカ多孔体を得ることが出来る。
具体的には特公平3−39730号公報または特公平6
−15427号公報において開示されている方法が例示
される。
【0030】特に平均粒径が1μmから1mm、空孔率
が0.60から0.90、平均孔径が500から200
0nmでその骨格が柱状絡み合い構造である無機多孔体
粒子を得るためには、上記の製法において、好ましくは
無機塩としてモリブデン酸アンモニウムとリン酸1ナト
リウム(Na/Moモル比で6/4〜0.5/9.5の
組成)を用い、塩/シリカの体積比が2/1(空孔率
0.60)〜12/1(空孔率0.90)の仕込み組成
で水溶液とする。この水溶液を造粒した後、675℃で
1時間(平均孔径500nm)〜750℃で4時間(平
均孔径2000nm)で焼成することが望ましい。
【0031】加えて、球状化率を75以上にするには、
シリカゲルとモリブデン酸アンモニウム、リン酸1ナト
リウムの溶液の酸性度(pH)を調製することが好まし
い。pHを7以上とし、溶液のゲル化を進めた状態で噴
霧乾燥する。本発明の多孔性無機有機複合体は、上記で
例示されるごとき無機多孔体に含フッ素有機物質を担持
し、実質的に固定化したものである。
【0032】本願発明で使用する含フッ素有機物質は、
その組成、分子構造等の化学的特性に限定されることは
なく、フッ素分子を持つ各種の有機化合物から選ぶこと
ができる。フッ素化物はフッ素の大きな電気陰性度と小
さな原子径による優れた耐熱性、耐溶剤性のために好ま
しい。特にペルフルオロカーボンは耐熱性、耐溶剤性が
優れているので好ましい。また、含フッ素有機物質に限
らず、フッ素以外のハロゲン原子を有する含ハロゲン有
機物質を用いても良い。
【0033】含フッ素有機物質は、さまざまな用途に対
応した官能基を有することが望ましい。ここにいう官能
基とは、機能性をもつ官能基および化学反応性に富む原
子または原子団である反応基を言う。官能基のもつ機能
性を具体的にあげれば、たとえば、イオン交換能、キレ
ート形成能、酸化還元能、触媒配位能などがある。ま
た、これらの機能性を有する官能基の例としては、スル
ホン酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基、第1級から第
3級までのアミン、ヒドロキノン基、チオール基などが
ある。また、化学反応性に富む反応基としては、たとえ
ば、イソシアネート基、ジアゾニウム基、クロロメチル
基、アルデヒド基、エポキシ基、ハロゲン基、カルボキ
シル基、アミノ基などがある。これらの官能基を有する
含フッ素有機物質の例としては、イオン交換含フッ素樹
脂、キレート配位子を含むキレート含フッ素樹脂、ヒド
ロキノン、チオールなどをもつ酸化還元含フッ素樹脂な
どが挙げられる。なお、イオン交換含フッ素樹脂は、カ
チオン、又は、アニオンの交換基を有している含フッ素
樹脂の他、カチオン及びアニオン双方の交換基を有する
含フッ素樹脂であっても良い。カチオン交換基の例とし
ては、スルホン酸基、カルボキシル基またはリン酸基が
挙げられる。
【0034】官能基の導入方法としては、無機多孔体粒
子に含有させる前の含フッ素有機物質が官能基を有して
いても良いし、無機多孔体粒子に担持させた後で官能基
導入剤と反応せしめることにより官能基を導入しても良
い。特に酸触媒等として本発明の多孔性無機有機複合体
を利用する場合に有用な含フッ素有機物質の例として、
下記式(2)で表される重合性単量体の一種以上を使用
し、これに後述の重合性単量体群から選ばれた一種類ま
たは二種類以上の重合性単量体とを組み合わせて得られ
る共重合体があげられる。
【0035】
【化1】
【0036】(式中、−Yは、−SO3 H,−SO
2 F、−SO3 Na、−SO3 K、−SO 2 NH2 、−
SO2 NH4 、−COOH、−CN、−COF、−CO
OR(Rは炭素数1〜10のアルキル基)、−PO3
2 または−PO3 Hである。aは0〜6の整数、bは0
〜6の整数、cは0または1であり、且つa+b+c≠
0であり、nは0〜6の整数である。Xは、n≧1のと
きCl、BrまたはFのいずれか一種、または複数種の
組合せである。Rt およびRt ′は独立に、F、Cl、
1〜10個の炭素原子を有するパーフルオロアルキル基
および1〜10個の炭素原子を有するフルオロクロロア
ルキル基から選択されるものである。) そして、これらに共重合させる重合性単量体群として
は、テトラフルオロエチレン、トリフルオロモノクロロ
エチレン、トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、
1,1−ジフルオロ−2,2−ジクロロエチレン、1,
1−ジフルオロ−2−クロロエチレン、ヘキサフルオロ
プロピレン、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロ
ピレン、オクタフルオロイソブチレン、エチレン、塩化
ビニルおよびアルキルビニルエステル等が挙げられる。
これらの共重合は、これらの重合性単量体を担体である
無機多孔体に含有させる前に行っても良いし、含有させ
た後に行っても良い。共重合後、必要であれば、例え
ば、加水分解したりするなどの後処理にて官能基をイオ
ン交換基に変換する。
【0037】なお、このような含フッ素有機物質を担持
した複合体が有するイオン交換基の交換容量は、乾燥複
合体1g当たりのイオン交換基のモル数で定義され、通
常、滴定法により測定される。本発明の多孔性無機複合
体で望ましい交換容量は、0.70〜2.00ミリ当量
/gであり、好ましくは0.90〜1.40ミリ当量/
g、より好ましくは1.00〜1.40ミリ当量/gで
ある。0.90ミリ当量/gより小さいと複合体として
の交換容量が小さくなり性能が低下する。また、2.0
0ミリ当量/gより大きいと複合体中で形状保持が出来
にくくなり、含フッ素有機物質の複合体からの溶出の原
因となりやすい。
【0038】本発明の複合体では、無機多孔体粒子に含
有された含フッ素有機物質が、さまざまな使用条件下
で、担体である無機多孔体粒子から溶出しないことが重
要である。溶出を防ぐための固定化方法としては以下の
三つの方法が例示できる。なお、本発明の多孔性無機有
機複合体は、以下に例示する溶出防止方法に限定される
ものではない。
【0039】一つ目の方法は、含フッ素有機物質と無機
多孔体を混合、含フッ素有機物質を担持せしめた後、一
定時間一定温度範囲で加熱し、その後冷却する方法であ
る。適当な条件下で加熱処理を行うことにより意外にも
含フッ素有機物質を無機多孔体粒子に実質的に固定化す
ることが出来る。たとえば、ゾル−ゲル法でシリカと含
フッ素有機物質を混合し乾燥した状態、あるいは無機多
孔体に含フッ素有機物質の溶液を含浸し、乾燥した状態
では、含フッ素有機物質のポリマー鎖同志が十分絡まり
あっておらず、また結晶化も生じていない状態である。
これを、融点付近で加熱することでポリマー鎖が十分絡
まり、冷却することで結晶化が生じて、溶出しなくなる
と考えている。加熱する際の温度範囲は、含フッ素有機
物質の融点より50℃低い温度以上であって、かつ含フ
ッ素有機物質の分解温度以下の温度であることが望まし
く、より好ましくは含フッ素有機物質の融点以上から分
解温度以下の温度範囲である。含フッ素有機物質がペル
フルオロカーボンスルホン酸の場合、Na塩やK塩であ
れば示差走査熱量計による融点が明確に現れることか
ら、Na塩やK塩にしてから、その融点付近で加熱する
ことが好ましい。加熱時間は加熱温度に関連し、比較的
高い温度では比較的短時間で、比較的低い温度では比較
的長時間での加熱処理が、溶出防止に効果がある。好ま
しくは30分から2時間である。
【0040】加熱処理終了後、冷却する。冷却温度は室
温付近であればよい。パーフルオロカーボンスルホン酸
の一つであるアシプレックス(旭化成工業株式会社製)
を用いて、含浸、加熱、冷却工程を経て作成した多孔性
無機有機複合体を使用して、広角X線回折法(理学社
製、RigakuRotaflexRU−200)でパ
ーフルオロカーボンスルホン酸の結晶化度を測定したと
ころ、交換容量が1.11ミリ当量/gで結晶化度は1
0%、1.00ミリ当量/gで16%、0.91ミリ当
量/gで18%であった。
【0041】含フッ素有機物の溶出を防止できる二つ目
の方法は、含フッ素有機物質を無機多孔体に担持させた
のち、含フッ素有機物質を架橋させることである。この
架橋剤として使用できる二官能または多官能性単量体の
例をあげるならば、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエ
ン、ジビニルキシレン、ジビニルエチレルベンゼン、ト
リビニルベンゼン、ジビニルジフェニル、ジビニルジフ
ェニルメタン、ジビニルジベンジル、ジビニルフェニル
エーテル、ジビニルジフェニルスルフィド、ジビニルジ
フェニルアミン、ジビニルスルホン、ジビニルケトン、
ジビニルピリジン、フタル酸ジアリル、マレイン酸ジア
リル、フマル酸ジアリル、コハク酸ジアリル、シュウ酸
ジアリル、アジピン酸ジアリル、セバシン酸ジアリル、
ジアリルアミン、トリアリルアミン、N,N’一エチレ
ンジアクリルアミド、N,N’−メチレンジアクリルア
ミド、N,N’−メチレンジメタクリルアミド、エチレ
ングリコールジメタクリレ−ト、1,3−ブチレングリ
コールジアクリレート、トリアリルイソシアヌレート、
クエン酸トリアリル、トリメリット酸トリアリル、シア
ヌル酸トリアリルなどである。
【0042】さらに溶出防止の三つ目の方法としては、
無機多孔体に共有結合で含フッ素有機物質を結合させる
ことである。例えば、ビニルシランやアリルシランなど
の官能基を有するシリル化剤によりシリカ多孔体表面に
官能基を導入し、ビニル基を持つ含フッ素有機物質とラ
ジカル重合反応を行う。これにより、複合体からの含フ
ッ素有機物質の溶出が防げる。
【0043】これらの中で、加熱処理による方法が、比
較的簡単な後処理で効果が得られるため好ましい。含フ
ッ素有機物質の無機多孔体への固定化特性は、ジメチル
スルホキシド中で加熱する方法で評価した。具体的に
は、多孔性無機有機複合体1gをジメチルスルホキシド
(和光純薬製特級)100gに加え90℃で3時間加熱
し、濾別し、ジメチルスルホキシドで洗浄後、交換容量
を測定した。ジメチルスルホキシド処理前の交換容量を
D、処理後の交換容量をEとすると、溶出率(%)を次
式(3)で定義する。
【0044】 溶出率=(D−E)×100/D (3) 本発明の複合体の溶出率は0〜70%であり、好ましく
は0〜50%である。本発明で例示した溶出防止方法
(固定化方法)によると、溶出しやすい部分が溶出した
後の残り部分は溶出しない。従って、官能基としてイオ
ン交換基を有する含フッ素有機物質を用いた場合は、ジ
メチルスルホキシド加熱処理した後の交換容量も実用的
に重要になる。この場合、ジメチルスルホキシド加熱処
理後の好ましい交換容量は0.10ミリ当量/g以上で
ある。0.10ミリ当量/gより小さい交換容量では吸
着、触媒等の効率が低く実用的に不利となりやすい。
【0045】次に本発明の複合体の製造方法について説
明する。本発明の複合体を製造する方法の一つ目は、ア
ルコキシシランの加水分解で多孔性シリカを作るゾル−
ゲル法である。これを用いて含フッ素有機物質と無機多
孔体とを混合することができる。例えば、テトラメトキ
シシラン、水そして塩酸を混合し、この混合溶液に、含
フッ素有機物質の一つであるナフィオンの溶液と水酸化
ナトリウムの混合溶液を加えることでゲル化させ、その
後乾燥し、塩酸で洗浄する。これらの方法はすでに公知
であり、例えばWO95/19222号根菜公開パンフ
レットに開示されており、実際にSAC−13R なる商
品名でも市販されている。しかし、ここまでの工程で得
られた混合固体は、単に含フッ素有機物質を無機多孔体
の孔表面上に担持せしめただけであり、本発明に関わる
上述の固定化処理が行われていないため、メタノール、
アセトン、ジメチルスルホキシド等の極性溶媒中で加熱
すると、混合固体中のナフィオンが溶出してくる。各種
条件で固体触媒あるいは吸着剤等として使用する場合、
このような溶出は、反応生成物との分離や触媒等として
の再使用、有機溶剤を用いる洗浄処理などの際に問題と
なる。従って、次に上述の固定化処理を行うことが必要
で、特に加熱処理を行うことが簡単で好ましい。
【0046】本発明の複合体を製造する方法の他の一つ
は、無機多孔体の孔内に含フッ素有機物質と希釈剤とを
含む均一混合液を含有させた後、希釈剤を除去し、その
後、上記の固定化処理の一つの加熱処理および冷却処理
をする方法である。含フッ素有機物質と希釈剤とを含む
均一混合液の組成については、特に制限されるものでは
ないが、好ましくは含フッ素有機物質が1〜70wt
%、より好ましくは2〜50wt%である。含フッ素有
機物質が少なすぎると、所定の量の含フッ素有機物質を
無機多孔体の孔に含ませるためには、混合液の含有・乾
燥工程を多数繰り返すことになるので効率的ではない。
また、多すぎると均一混合液の粘性が大きくなりすぎ、
実質的に含有処理が難しくなる。
【0047】含フッ素高分子物質と希釈剤を含む均一混
合液を無機多孔体の孔内に導入するために、均一混合液
を無機多孔体と接触させる。混合液の導入法としては、
各種の方法を利用することができる。例えば、大気圧下
で単に無機多孔体と均一混合液を、好ましくは低速で攪
拌しながら、接触させる方法、真空下で粒子と均一混合
液を接触させる方法、無機多孔体をシリル反応等で処理
した後、均一混合液と接触させる方法等が挙げられる。
このようにして得られた、均一混合液を含む無機多孔体
には、その外部表面に多少とも混合液が付着し残存す
る。この残存液は少なければ少ない程良い。残存液を少
なくするには、例えば無機多孔体と接触させる混合液の
量を、予め無機多孔体内部の孔量と等しいか、それ以下
としたうえで、低速の攪拌下で接触させればよい。この
ようにして、無機多孔体の外部表面に残存する混合液を
極めて少量にすることができる。それでも無機多孔体の
外部表面に残存した混合液を除く方法としては、無機多
孔体をグラスフィルター等の上においた後、混合液に不
溶性の不活性な液体で粒子を洗浄すれば良い。使用され
る不活性な液体の種類は均一混合液の種類に応じて変化
する。例えば、混合液が脂溶性のとき不活性な液体とし
て水が使用される。
【0048】均一混合液を無機多孔体に含有した後、希
釈剤を除去する。除去する方法に特に制限はないが、例
を上げると、加熱による蒸発乾燥(このときには必要に
応じて減圧状態にしてもよい。)、含フッ素高分子物質
を溶解せず希釈剤を溶解する溶剤での洗浄などの方法が
ある。次いで、加熱工程である。この工程の目的は上述
のごとく含フッ素高分子物質を溶融、結晶化により固定
化することであり、そのための加熱温度は、含フッ素高
分子物質の融点より50℃低い温度以上であって、含フ
ッ素高分子物質の分解温度以下、好ましくは含フッ素高
分子物質の融点以上から含フッ素高分子物質の分解温度
以下の温度範囲である。示差走査熱量計での測定による
と高分子物質は比較的ブロードな吸熱カーブを示す。そ
の吸熱カーブのピークの温度を融点とすると、それより
も低い温度でも溶融現象は生じており、従って、融点よ
り50℃低い温度でも加熱時間を長くすることで融解で
きる。加熱時間は、加熱温度に依存するが、実施する上
で効率的なのは30分から2時間である。
【0049】次いで冷却する。冷却の目的は溶融した高
分子の分子鎖の絡まりを保持することと結晶化させるこ
とである。これにより無機多孔体に含有させた含フッ素
有機物質が、無機多孔体に固定化されるものと考えられ
る。冷却方法は、この目的を達成する方法であれば特に
制限されない。例えば、加熱炉中から室温に取り出し放
冷する、加熱炉の電源を切りそのまま放冷する等があ
る。
【0050】本発明の複合体を製造する他の方法は、無
機多孔体の孔内に含フッ素高分子物質となりうる重合性
単量体または重合性オリゴマー、架橋剤、ラジカル開始
剤及び希釈剤を含む均一混合液、または、含フッ素有機
物質、架橋剤及び希釈剤とを含む均一混合液を含有させ
た後、加熱または光照射をおこなうことにより重合及び
/または架橋反応を行い、次いで生成した樹脂の内部よ
リ希釈剤を除去するという方法である。この製造方法
は、無機多孔体と上述の如き均一混合液との接触によ
る、混合液の孔への導入によって開始される。
【0051】均一混合液に使用される含フッ素高分子物
質となりうる重合性単量体としてはビニル基を有するも
のが好ましい。希釈剤としては、単量体、オリゴマーま
たは高分子化合物及び架橋剤と共に均一な混合液を形成
し得るものであればよい。一般に、単量体、オリゴマー
または高分子化合物が親油性のときは、有機液体が好ま
しく、逆にこれらの原料物質が親水性のときは水または
水溶液が好ましい。希釈剤は、単独で用いるだけでな
く、混合物として用いてもよい。しかし、好ましい希釈
剤の種類は、その他に複合体を製造する際の各種の条
件、例えば反応系の構成、温度や圧力、あるいは生成さ
れる複合体中の樹脂に付与すべき空間特性等に左右され
る。例えば、均一混合液を無機多孔体の孔の中に含有さ
せた後、重合または架橋反応によって樹脂を形成させる
方法は、そのまま加熱または光照射を施す方法、あるい
は分散液中に均一混合液を含有する無機多孔体を分散さ
せた後加熱または光照射を施す方法に大別されるが、後
者の方法では分散液と希釈剤との相溶性を考慮しなけれ
ばならない。即ち、分散液が親水性のときは希釈剤とし
て親油性有機液体が好ましく、一方、分散液が親油性の
ときは、親水性液体が好ましい。
【0052】希釈剤の具体例としては、水及びクロルベ
ンゼン、トルエン、キシレン、オクタン、デカン、メタ
ノール、ブタノール、オクタノール、フタル酸ジエチ
ル、フタル酸ジオクチル、安息香酸エチル、メチルイソ
プチルケトン、酢酸エチル、シュウ酸ジエチル、炭酸エ
チル、ニトロエタン、シクロヘキサノン等の有機液体が
挙げられる。
【0053】本製造法においても、無機多孔体の外表面
に付着する均一混合液を出来る限り少なくすることが好
ましい。すでに上述した方法に加え、重合反応や架橋反
応を開始する前に可能な限り付着した均一混合液を減少
させてもよい。この方法として二つの方法が例示でき
る。第一の方法は濾過法である。即ち、混合液を含有す
る無機多孔体を濾過することによってその外部表面に残
存する混合液を減じることができる。この場合、加圧濾
過、遠心濾過などの濾過法を用いれば、濾過時間が短縮
されて好ましい。
【0054】第二の方法は、混合液を無機多孔体に含有
させた後、無機多孔体を混合液と反応もしなければ溶解
もしない液体の中で、強制的に攪拌しながら分散させる
ことである。この場合、分散剤を含んだ分散液を使うこ
とが好ましい。分散液は強制攪拌によって無機多孔体の
外部表面から振り切られた混合液を、安定に分散液体中
に保持し、混合液が無機多孔体表面に再付着することを
防止する。たとえば、分散液体として水を用いるに際し
ては、分散剤として、アラビヤゴム、ロジン、ペクチ
ン、アルギン酸塩、トラガカントゴム、寒天、メチルセ
ルロース、デンプン、カルボキシメチルセルロース、カ
ラヤゴム、ゼラチン等の粘質物、ポリアクリル酸ナトリ
ウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、
カルボポール、ジアセトオレイン等の合成高分子、マグ
ネシウム、アルミニウムシリケート、ベルマゲル、水加
マグネシウムシリケート、酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸
カルシウム、タルク、硫酸バリウム、リン酸カルシウ
ム、水酸化アルミニウム、無水硫ケイ酸等の無機物が用
いることができ、また必要に応じて、食塩等の塩、pH
調整剤、界面活性剤などを添加してもよい。
【0055】本製造法においては均一混合液を包含する
処理後の無機多孔体は、加熱処理または光照射処理に付
される。均一混合液が単量体またはオリゴマー、架橋剤
及び希釈剤から成る場合、加熱または光照射によって重
合や架橋反応が起こる。ビニル基を含有する単量体を用
いたときの重合反応は、さらに加えられる薬品や反応系
の構成によってラジカル重合またはイオン重合の機構に
従って進むいずれの重合でも利用できるが、生成される
樹脂の特性を制御し易い点でラジカル重合が好ましい。
ラジカル重合を行う場合、反応を促進して重合の温度を
下げたり、反応時間を短縮できるために、重合開始剤を
用いるのが好ましい。
【0056】ラジカル重合のための適当な重合開始剤と
しては、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル等の過酸
化アシル類、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−
アゾビス(2,4−ジメチルマレロニトリル)等のアゾ
ニトリル類、過酸化ジターシャリーブチル、過酸化ジグ
ミル、メチルエチルケトンパーオキシド等の過酸化物、
クメンヒドロペルオキシド、ターシャリーヒドロペルオ
キシド等のヒドロペルオキシド類を例示することができ
る。
【0057】必要な重合開始剤の量は、重合の反応温度
及び単量体の量や種類に依存するが、通常、単量体の重
量に対して0.01〜12重量%である。重合反応や架
橋反応を起こすために行う加熱処理の温度は、40〜1
50℃の温度、2〜100時間の範囲である。この際、
混合液を包含する無機多孔体は、そのまま加熱してもよ
いし、分散液に分散した状態で加熱してもよい。そのま
ま加熱する場合は、無機多孔体同志が外部表面に生成す
る樹脂によって付着し合うことを防止するため、低速の
攪拌を行うことが好ましい。分散液中に分散した状態で
加熱する場合は、無機多孔体の孔内に含有された混合液
が分散液中に溶出しないような希釈剤を選択することが
必要である。また、既述の通り予めシリル化剤で表面処
理した粒子を用いることも好ましい。
【0058】上記したような条件で製造された無機有機
複合体は、希釈剤を内部に含有している。それ故、それ
らを溶解する溶媒中に複合体を浸漬し、しばらく放置し
た後濾別するか、或いは複合体をカラムに入れ、洗浄溶
媒を流下させることにより、複合体の内部より希釈剤を
効果的に除去することができる。たとえば、希釈剤に有
機液体を用いる場合、洗浄溶媒としてメタノール、アセ
トン等の水溶性のものを用い、その洗浄溶媒をさらに水
洗することにより簡単に除去することができる。
【0059】このようにして得られる複合体は、イオン
交換樹脂クロマトグラフィー用充填剤、吸着剤等の用途
に、そのままで使用されるか、あるいは、さらに後反応
に付して複合体中の樹脂に官能基を導入してもよい。官
能基を導入する反応に制限はなく通常の有機反応で行う
ことができる。本発明の多孔性無機・含ハロゲン有機複
合体のひとつであるペルフルオロカーボンスルホン酸と
シリカ多孔体との複合体は、その大きな酸性度を利用し
て固体酸触媒として使用できる。
【0060】反応触媒として本発明の複合体の使用形態
に特に制限はなく、例えば、流動床型、固定床型、反応
蒸留型等である。反応終了後に、反応液と固体触媒と
は、例えば濾過法により簡単に分離できる。反応生成物
が反応液から固体で沈殿してくる場合は、例えば、濾過
法により反応液と触媒、生成物を分離し、その後生成物
を溶解する溶剤にて溶解し、触媒から分離できる。反応
系から分離した本発明の複合体は必要であれば鉱酸と接
触させることにより再生・精製が簡単にできる。
【0061】本発明の複合体を固体酸触媒として使う有
機反応には、特に制限はないが、例を上げるならば、ベ
ンゼン、トルエン等の芳香族化合物のオレフィン、アル
コール、アルキルハライド、アルキルエステル等による
アルキル化、アルキルベンゼンの異性化、不均化、トラ
ンスアルキル化、α−メチルスチレンの二量化、芳香族
化合物のニトロ化、アシル化、スルホニル化、ホスホリ
ル化、臭素化芳香族化合物の異性化、トランス臭素化、
オレフィンのカチオン重合、エーテル及びエステル合成
反応、アセタール、チオアセタール、gem−ジアセテ
ート類の合成反応、エポキシ基やエステル基の加水分解
反応、ピナコール/ピナコロンなどの転移反応、ジオキ
サン類合成などの縮合反応などである。さらには、水銀
やクロム、セリウムなどのイオンとの複合固体触媒とし
ても有用である。
【0062】本発明における多孔性無機複合体は、例え
ばイオン交換基を持たせた場合には、その実質的なイオ
ン交換容量は極めて高く、イオン交換体量が少量で済む
割に機械的強度に優れ、使用中に割れにくい、粒子形状
の場合は粒径を比較的均一にすることができる等とい
う、極めて優れた特性を有する。また、市販のシリカゲ
ルや多孔性ガラスを担体として用いた場合に比べて大き
な空孔率でかつ柱状絡み合い構造骨格のため大きな強度
を有している。それ故、本発明の多孔性無機複合体は、
ガスクロマトグラフィー及び液体クロマトグラフィー用
固定相、分取クロマトグラフィー用固定相、細胞培養担
体、吸着剤、触媒もしくはその担体、特に酸触媒等とし
て利用できる。
【0063】
【発明の実施の形態】以下、実施例、比較例を挙げさら
に具体的に説明する。なお、各種物性の測定は以下の方
法により行った。 (a)平均粒径 顕微鏡写真により20〜200倍に拡大して粒径を目視
測定した。 (b)空孔率α 孔に進入する物質としてヘリウムガスを用いた密度計
(商品名;マルチボリウム密度計1305、マイクロメ
リテックス社製)を使用して、無機多孔体粒子及び複合
体の真比重d(g/ml)を測定した。また、水銀ポロ
シメーター(商品名;PASCAL−240、CE−I
nstrument社製)を用いて単位重量当たりの空
孔量φ(ml/g)を測定した。
【0064】これらの値を用いて空孔率αを次式(4)
で算出した。 α=dφ/(1+dφ) (4) (c)平均孔径 水銀ポロシメーター(商品名;PASCAL−240、
CE−Instrument社製)を用いた水銀圧入法
で測定した。測定圧力レンジは0.1〜200MPa、
測定孔半径は3.7〜7500nmで行った。 (d)骨格構造 無機多孔体の骨格構造は、走査電子顕微鏡S−800
(日立製作所製)を用いて観察した。 (e)交換容量 多孔性無機有機複合体を直径10mm、長さ100mm
のガラス環の底に3Gのガラスフィルターを付けた専用
カラムに入れ、1N塩酸を流して、スルホン酸型にし、
次いでメタノールを流してボイド中の塩酸を除去した。
このとき、溶離メタノールが中性を示すことをリトマス
試験紙で確認した。(酸性を示すときは、さらにメタノ
ールを流した)。次いで、5wt%塩化ナトリウム水溶
液を流しスルホン酸ナトリウム型にし、溶離液中に生じ
た塩酸を0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液で滴定し
た。次に、カラムには0.1N塩酸、次いでメタノール
を流し、スルホン酸型にし、乾燥した。得られた乾燥重
量(A:g)と滴定した塩酸量(B:mmol)から、
複合体の交換容量(EC:ミリ当量/g)を(5)式で
計算した。
【0065】 EC=B/A (5)
【0066】
【製造例1】純水151.8gにスノーテックN−30
(シリカゾル水溶液、日産化学株式会社製)100.0
g、硝酸(和光純薬製、特級)14.0g、リン酸ーナ
トリウム(大平化学工業製、工業用)43.2g、そし
てモリブデン酸アンモニウム(日本無機化学工業製、工
業用)85.6gを加え均一溶液とした。この溶液に2
5%アンモニア水(和光純薬製、特級)14.2g加え
液pHを7.3とした。混合液は白濁してきて粘度が上
昇したので、さらに純水188.0gを加え、粘度を抑
えた不均一混合水溶液を調合した。この混合水溶液を攪
拌しながらスプレードライヤー(商品名OC−16型、
大川原化工機株式会社製)に導入し、造粒した。液滴生
成用回転皿は直径8cmのものを用い、回転数2100
rpmである。乾燥塔入り口温度は230℃、熱風量3
10Nm3 /時間、混合液導入量90L/時間である。
得られた造粒品を電気炉で350℃で2時間、その後7
50℃で1時間焼成した。このものを70℃の湯で洗浄
後、過剰の水で洗浄し、400メッシュ(目開き37μ
m)と200メッシュ(目開き74μm)の篩いで分級
した後、70℃にて減圧乾燥した。得られた球状無機多
孔体は平均孔径705nm、空孔率0.70の柱状絡み
合い構造であった。
【0067】
【実施例1】フラスコに製造例1で合成した球状無機多
孔体20gを秤取り、フラスコをロータリエバポレータ
ーに装着し、アスピレーターにて減圧にした。25分間
減圧にした後、アスピレータとエバポレーターの間のバ
ルブを閉とし、その減圧を利用して、アシプレックスの
メタノール−水溶液(旭化成工業株式会社製、アシプレ
ックスの交換容量1.10ミリ等量/g、濃度5wt
%、メタノール/水=50/50wt%)を19.8g
導入した。その後、減圧のまま、ロータリーエバポレー
ターにてゆっくり回転しながら混合含浸を20分行っ
た。その後、ウォーターバスにて加熱しながら減圧にし
て、溶媒である水−メタノールを蒸発除去した。この操
作を合計5回繰り返した。各操作でフィードしたアシプ
レックスのメタノール−水溶液は、二回目14.8g、
三回目14.1g、四回目13.6g、5回目13.2
gである。
【0068】得られたアシプレックス含有球状無機多孔
体の一部を過剰の5wt%塩化ナトリウム(和光純薬株
式会社製、特級)水溶液に浸し、室温で2時間保持し、
その後濾別して乾燥後、電気炉を用いて空気中250℃
で1時間熱処理した。熱処理終了後に室温中に取り出し
放冷した。次に交換容量を測定した。その結果、複合体
の交換容量は、乾燥複合体重量あたりで0.20ミリ当
量/gであった。
【0069】
【実施例2】実施例1で液含浸・乾燥したアシプレック
ス含有球状無機多孔体の一部を過剰の5wt%塩化ナト
リウム(和光純薬株式会社製、特級)水溶液に浸し、室
温で2時間保持し、その後濾別して乾燥後、電気炉を用
いて空気中250℃で30分熱処理した。熱処理終了後
に室温中に取り出し放冷した。
【0070】得られた複合体の交換容量を測定したとこ
ろ特に問題なく測定ができ、その値は0.20ミリ当量
/gであった。ジメチルスルホキシド加熱処理(保持特
性評価)後の交換容量は0.10ミリ当量/g(溶出率
50%)であった。
【0071】
【比較例1】実施例1で液含浸・乾燥したアシプレック
ス含有球状無機多孔体の一部を熱処理しなかった。これ
を用いて交換容量を測定しようとしたが、メタノ−ルを
流そうとしたら流れが非常に遅くなった。一晩かけてメ
タノールを流し終え、その後交換容量を測定したが、そ
の値は0.0ミリ当量/g(溶出率100%)で、全く
アシプレックスが保持されていなかった。
【0072】
【比較例2】実施例1で液含浸・乾燥したアシプレック
ス含有球状無機多孔体の一部を過剰の5wt%塩化ナト
リウム(和光純薬株式会社製、特級)水溶液に浸し、室
温で2時間保持し、その後濾別して乾燥後、電気炉を用
いて空気中250℃で10分熱処理した。熱処理終了後
に室温中に取り出し放冷した。
【0073】得られた複合体の交換容量を測定した。と
ころが、メタノ−ルを流そうとしたら流れが非常に遅く
なった。一晩かけてメタノールを流し終え、測定したと
ころ、その値は0.0ミリ当量/g(溶出率100%)
であった。
【0074】
【実施例3】フラスコに製造例1で合成した球状無機多
孔体20gを秤取り、フラスコをロータリエバポレータ
ーに装着し、アスピレーターにて減圧にした。25分間
減圧にした後、アスピレータとエバポレーターの間のバ
ルブを閉とし、その減圧を利用して、ナフィオンのメタ
ノール−水溶液(E.I.duPontdeNemou
rsandCompany社製、ナフィオンの交換容量
0.91ミリ等量/g、濃度5wt%、メタノール/水
=50/50wt%)を19.8g導入した。その後、
減圧のまま、ロータリーエバポレーターにてゆっくり回
転しながら混合含浸を20分行った。その後、ウォータ
ーバスにて加熱しながら減圧にして、溶媒である水−メ
タノールを蒸発除去した。この操作を合計7回繰り返し
た。各操作でフィードしたアシプレックスのメタノール
−水溶液は、2回目14.8g、3回目14.1g、4
回目13.6g、5回目13.2g、6回目12.8
g、7回目12.5gである。
【0075】得られたアシプレックス含有球状無機多孔
体の一部を過剰の5wt%塩化ナトリウム(和光純薬株
式会社製、特級)水溶液に浸し、室温で2時間保持し、
その後濾別して乾燥後、電気炉を用いて空気中250℃
で1時間熱処理した。熱処理終了後に室温中に取り出し
放冷した。交換容量を測定したところ、問題なく測定が
出来、その値は0.22ミリ当量/gであった。ジメチ
ルスルホキシド加熱処理後の交換容量は0.20ミリ当
量/g(溶出率9%)であった。
【0076】
【実施例4】テトラメトキシシラン(信越シリコーン株
式会社製)204gに水33gと0.04M塩酸(和光
純薬株式会社製)3gを混合した。一方、アシプレック
スのメタノール−水溶液(旭化成工業株式会社製、アシ
プレックスの交換容量0.91ミリ等量/g、濃度5w
t%、メタノール/水=50/50wt%)350ml
に0.4M水酸化ナトリウム(和光純薬株式会社製)1
50ml加えた。この液を上記テトラメトキシシラン混
合液に加え攪拌する。液はすぐにゲル化し、さらには固
体化する。この固体を95℃、24時間乾燥させた。こ
れを乳鉢で粉砕し、その後、3.5M塩酸水溶液に入れ
て一晩放置した。その後濾別し、水洗して、洗浄液が中
性になったのを確認し、95℃で乾燥した。得られた粉
体の交換容量は0.19ミリ当量/gであった。
【0077】得られた粉体の5g取り、5重量%塩化ナ
トリウム水溶液300mlに加え室温で一晩放置した。
その後濾別し水洗した後、100℃で5時間乾燥し、次
いで250℃で1時間熱処理した。その後、2N塩酸2
00mlに加え5時間保持した後、水洗し洗浄液が中性
であることを確認した。得られた複合体を100℃で一
晩乾燥した。得られた複合物の交換容量は0.19ミリ
当量/gであり、ジメチルスルホキシド加熱処理後の交
換容量は0.12ミリ当量/g(溶出率37%)であっ
た。
【0078】
【比較例3】実施例1で得られた熱処理前の粉体をジメ
チルスルホキシド加熱処理した。その後の交換容量は
0.05ミリ当量/g(溶出率74%)であった。
【0079】
【実施例5】SAC−13(米国DuPont社製、ゾ
ル−ゲル法によるナフィオンとシリカの混合物)5g取
り、5重量%塩化ナトリウム水溶液300mlに加え室
温で一晩放置した。その後濾別し水洗した後、100℃
で5時間乾燥し、次いで250℃で1時間熱処理した。
その後、2N塩酸200mlに加え5時間保持した後、
水洗し洗浄液が中性であることを確認した。得られた複
合体を100℃で一晩乾燥した。得られた複合物の交換
容量は0.16ミリ当量/gであり、ジメチルスルホキ
シド加熱処理後の交換容量は0.10ミリ当量/g(溶
出率38%)であった。
【0080】
【比較例4】SAC−13(米国DuPont社製、ゾ
ル−ゲル法によるナフィオンとシリカの混合物)を交換
容量測定用カラムに入れ室温でエタノールを流したら、
すぐに流れがとまってしまった。その後、一晩放置した
が、エタノールは流れなかった。
【0081】
【比較例5】SAC−13(米国DuPont社製、ゾ
ル−ゲル法によるナフィオンとシリカの混合物)のジメ
チルスルホキシド加熱処理を行った。これの交換容量は
0.04ミリ当量/g(溶出率75%)であった。
【0082】
【実施例6】実施例1で合成したアシプレックス含有多
孔性無機有機複合体を固体酸触媒に用いて酢酸エチルの
加水分解反応を行った。酢酸エチル(和光純薬株式会社
製、特級)25gを水475gに加え5wt%酢酸エチ
ル水溶液を調合した。初めは酢酸エチルと水が分離して
いたが、室温で攪拌していると10分ほどで均一液とな
った。この酢酸エチル水溶液200gとり、実施例1で
合成した多孔性無機有機複合体0.500gを加え、5
7℃で攪拌反応した。反応開始後、30分、1時間、2
時間、3時間で反応液を10mlサンプリングした。サ
ンプリング液を水で150mlに希釈し、0.1N水酸
化ナトリウム水溶液(和光純薬株式会社製、滴定用)で
滴定した。その値から、反応液中で生じた酢酸濃度を求
めた。結果は、30分で2.2mmol/L、1時間で
4.0mmol/L、2時間で7.6mmol/L、3
時間で11.2mmol/Lであった。
【0083】この加水分解反応は一次反応で解析でき
る。反応速度定数:k(1/min)は(6)式で計算
出来る。 ln(CA /CA0)=−kt (6) ここで、CA は生成酢酸濃度(mmol/L)、CA0
初期酢酸エチル濃度(mmol/L)、tは時間(mi
n)である。
【0084】また、官能基当たりの反応速度定数:k1
(1/min/当量)を(7)式で算出し、固体酸触媒
性能の比較に用いた。 k1=kav/F/EC (7) ここで、kavは反応速度定数(1/min)、Fは用い
た触媒の量(g)、ECは交換容量(当量/g)であ
る。実施例1で得られた多孔性無機有機複合体の酢酸エ
チルの加水分解反応における官能基当たりの反応速度定
数は1.18/min/当量であった。比較例3で得ら
れた市販交換樹脂の5.9倍の性能を示した。
【0085】
【比較例6】実施例4と同じ反応を強酸性陽イオン交換
樹脂であるアンバーリスト15(米国ローム・アンド・
ハウス社製)0.500g用いて行った。その結果、反
応で生成した酢酸濃度は30分で7.8mmol/L、
65分で16.6mmol/L、2時間で32.0mm
ol/Lであり、官能基当たりの反応速度定数は0.2
/min/当量であった。
【0086】
【発明の効果】本発明の多孔性無機有機複合体は、含フ
ッ素有機物質が担体に実質的に固定化されており、安定
して使用することが出来る。たとえば、極性有機溶媒に
接触する環境下でも比較的安定して使用することができ
る。また含フッ素有機物質の利用効率に優れ、含フッ素
有機物質の担持量の割には含フッ素有機物質の特性、例
えば官能基における反応などが有効利用率が高い。
【0087】分離、吸着等の利用効率に優れる一方で、
孔量を大きくとることが可能となるので、分離カラムの
運転圧力を低く抑えることができる。さらに、粒子形状
とする場合は、粒子形が比較的均一の物が得られやす
く、孔が比較的大きいにも係わらず、機械的強度に優れ
るため、使用中に粒子が割れたりしにくく、取り扱いが
容易で、かつ使用中のカラム圧力の上昇が防止できる。
【0088】含フッ素有機物質として、例えばペルフル
オロカーボンスルホン酸を包含した多孔性無機複合体
は、その超強酸性と優れた耐熱性、耐溶剤性等から固体
酸触媒として有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】無機多孔体の骨格構造が、柱状絡み合い構造で
ある場合の一例を示す写真である。
【図2】無機多孔体の骨格状態が、粒子状構造である場
合の一例を示す写真である。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成9年12月26日
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図1
【補正方法】変更
【補正内容】
【図1】
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図2
【補正方法】変更
【補正内容】
【図2】

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 無機多孔体の孔表面上に、含フッ素有機
    物質を担持し固定化した多孔性無機有機複合体。
  2. 【請求項2】 無機多孔体の孔表面上に担持し固定化さ
    れた含フッ素有機物質の溶出率が70%以下である請求
    項1に記載の多孔性無機有機複合体。
  3. 【請求項3】 無機多孔体が、平均粒径が1μmから1
    mm、空孔率が0.20から0.90、平均孔径が10
    nmから5000nmの無機多孔体粒子である請求項1
    に記載の多孔性無機有機複合体。
  4. 【請求項4】 含フッ素有機物質が、官能基を有する含
    フッ素高分子物質である請求項1に記載の多孔性無機有
    機複合体。
  5. 【請求項5】 含フッ素有機物質を含有せしめた無機多
    孔体を、該含フッ素有機物質の融点より50℃低い温度
    以上でかつ該含フッ素有機物質の分解温度以下の温度範
    囲で加熱処理し、しかるのち冷却する請求項1に記載の
    多孔性無機有機複合体の製造方法。
  6. 【請求項6】 含フッ素高分子物質を含むアルコキシシ
    ランを加水分解するゾル−ゲル法でえられた混合物を、
    該含フッ素有機物質の融点より50℃低い温度以上でか
    つ該含フッ素有機物質の分解温度以下の温度範囲で加熱
    処理し、しかるのち冷却する請求項1に記載の多孔性無
    機有機複合体の製造方法。
  7. 【請求項7】 無機多孔体に、含フッ素有機物質と希釈
    剤とを含む溶液を含有させ、次いで該希釈剤を除去し、
    その後、該含フッ素有機物質の融点より50℃低い温度
    以上でかつ該含フッ素有機物質の分解温度以下の温度範
    囲で加熱処理し、しかるのち冷却する請求項1に記載の
    多孔性無機有機複合体の製造方法。
  8. 【請求項8】 無機多孔体に、含フッ素有機物質となり
    うる重合性単量体または重合性オリゴマー、架橋剤、ラ
    ジカル開始剤および希釈剤を含む混合液、または、含フ
    ッ素有機物質、架橋剤および希釈剤を含む混合液を含有
    させた後、重合反応および/または架橋反応を生じさ
    せ、次いで該希釈剤を除去する請求項1に記載の多孔性
    無機有機複合体の製造方法。
  9. 【請求項9】 官能基がカチオン交換基である請求項4
    に記載の多孔性無機有機複合体を用いた酸触媒。
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