JPH11196914A - 宝石類における亀裂の充填方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【解決手段】宝石類の亀裂に液状のエポキシ樹脂を充填
し、その後充填されたエポキシ樹脂を硬化させる宝石類
における亀裂の充填方法。 【効果】極めて簡単な方法によりオイル抜けのないエメ
ラルド等の宝石類における亀裂の充填が可能となり、し
かも充填したエポキシ樹脂が亀裂より抜け出すことがな
いため、宝石類の美しさが半永久的に保たれる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、エメラルド等の宝石
類における亀裂の充填方法に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】宝石類は自然界から産した原石の状態で
人為的手段として唯一、研磨のみを加えて色、輝きを発
揮させる、所謂天然のものが好ましいが、現実には研磨
のみで高い評価を受けるものは数少なく、一般には内部
に亀裂を有する原石が多数産出される。

【０００３】これら亀裂を有するエメラルド等の原石
は、カット、研磨処理だけでは商品価値を発揮し得ない
ので、原石の産出国で原石の亀裂にセダーウッドオイル
（杉の油）、パームオイル（椰子の油）、或は好ましく
ない例としてはサラダオイル、機械油を充填する所謂オ
イル充填処理が施されている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかし、これらオイル
充填処理された原石は加工処理する場合に少しでも熱を
加えると、亀裂に充填したオイルが抜け出す所謂オイル
抜けの現象が見られる。

【０００５】オイル抜けは、極端な場合ショーケースに
陳列されているだけでも生じ、しかもオイル抜けした部
分は白く目立って見えて宝石類の商品価値が著しく損な
われるところから、宝飾品取扱業者には細心の注意が要
求されていた。

【０００６】そこで、この発明は取扱時にオイル抜けを
生ずることなく、宝石類に半永久的に美しさを保たせる
ような宝石類における有効な亀裂の充填方法を提供する
ことを目的とする。

【０００８】

【課題を解決するための手段】この発明は、上記実情に
鑑み、亀裂に液状のエポキシ樹脂を充填し、その後充填
されたエポキシ樹脂を硬化させる宝石類における亀裂の
充填方法を提案するものである。

【０００９】この発明で使用するエポキシ樹脂は分子内
にエポキシ基を２個以上含む高分子化合物、及びそのエ
ポキシ基の開環反応によって生成する合成樹脂である
が、(1) 常温で硬化し、不溶不融性の樹脂となる。(2)
硬化の際に揮発性物質がないので容積縮小が非常に少な
い。(3) 硬化の際にその接する材料面に強い接着力を持
つ。(4) 化学薬品に対する抵抗性が大きい等の特性があ
るため、これを亀裂に充填して硬化させれば、その後の
取扱時に抜け出す虞がない。

【００１０】しかも、エポキシ樹脂は屈折率が1.57と、
エメラルド(1.569〜1.582)と同じであるため、エメラル
ドの亀裂充填に最適である。

【００１１】一方、エメラルド等の宝石類における亀裂
の隙間は、数ミクロンと非常に狭く、これに完全に充填
するためには、加熱乃至加圧によりエポキシ樹脂に流動
性を高めて亀裂内に充填することが好ましい。

【００１２】この場合、加圧方式としては、真空式、空
気圧式、油圧式等を採用することができるが、本願発明
者の研究によればこのうち空気圧力コンプレッサーには
(1)操作が安全で、且つ簡単である、(2) 容器が離脱で
きる（加熱ができる）、(3)高い圧力が得られる等の利
点があり、この発明に使用するには最も好ましい。

【００１３】また、エポキシ樹脂の充填圧力については
加圧時間、加熱温度、亀裂の大きさ等によっても異なる
が、一般には25〜30Kg/cm²以上、好ましくは60Kg/cm²程
度であり、これ以下の場合にはエポキシ樹脂が亀裂の入
口に留り、内部まで充填されない。

【００１４】更に、加圧時間は、充填圧力、加熱温度、
亀裂の大きさ等、特に充填圧力によって異なり、充填圧
力が大きい場合には加圧時間は短くてすみ、充填圧力が
小さい場合には加圧時間は長時間を要し、一般には３時
間以上の加圧が好ましい。

【００１５】また、加熱はエポキシ樹脂の流動性を高め
て亀裂内に充填し易くするために行われるが、この場合
一般に使用されるエポキシ樹脂を70℃加熱して充填した
り、或はこれに圧力を加えながら充填する。

【００１６】一方、亀裂内に充填されたエポキシ樹脂を
硬化させる硬化剤としては、従来知られているエポキシ
樹脂硬化剤を使用することができ、例えば脂肪族ポリア
ミン、芳香族ポリアミン、脂環式ポリアミン、ポリアミ
ドアミン、三級アミン等のアミン系硬化剤を使用するこ
とができる。

【００１７】硬化剤を初めから混合した１液型のエポキ
シ樹脂を使用し、これを亀裂内に充填して硬化させても
良いが、２液混合型のエポキシ樹脂を使用し、初めにエ
ポキシ樹脂溶液を亀裂内に充填し、次に硬化剤溶液を加
えてエポキシ樹脂溶液を硬化させても良く、２液混合型
のエポキシ樹脂を使用した方が作業性が良い。

【００１８】なお、この発明の適用される代表的な宝石
類としては、エメラルド等を挙げることができるが、勿
論これに限定されるものではなく、他の宝石類にも適用
できる。

【００１９】

【実施例】以下、この発明を図示の実施例に基づいて説
明すると、１はこの発明に使用するオイル含浸装置を示
すものであり、２は上部2aと下部2bを結合部３で螺着し
て構成される鉄製の充填用容器、４は圧力計、５はエア
ーコンプレッサー、容器２とコンプレッサー５とは開閉
バルブ６を設けた高圧用ホース７で結合する。

【００２０】次に、オイル含浸装置１を使用したエメラ
ルドａの亀裂充填について説明すると、エメラルドａに
は図２に示すようにミクロンオーダーの亀裂ｂがある。

【００２１】先ず、エメラルドａをアセトン(CH₃COCH₃)
に60秒浸けて不純物を取り除き、70℃に熱したエポキシ
樹脂（商品名CS2340-5 セメダイン社製）の主剤（液
体）ｃの入った小型ビーカー８内にエメラルドａを入れ
る。

【００２２】次に、鉄製の充填用容器２に小型ビーカー
８ごと入れて密封し、エアーコンプレッサー５で空気圧
を60Kg/cm²かけ、更に容器２のバルブ６を閉じて、容器
ごと保温器の上で保温(70 ℃) し、圧力をかけたまま３
時間放置する。

【００２３】容器２内からビーカー８を取り出し、ビー
カー８の中のエメラルドａの位置を変え、再び圧力をか
けて更に３時間放置し、その後ビーカー８からエメラル
ドａを取り出し、亀裂ｂにエポキシ樹脂が充填されてい
るかどうかを確かめ、充填されていればビーカー８中に
硬化剤溶液を入れ、ガラス棒で良くかき混ぜてからビー
カー８の中にエメラルドａを入れて再び加圧し、３時間
常温で放置する。

【００２４】なお、ビーカー８より取り出したエメラル
ドａは硬化速度を速めるために、表面の溶剤を拭き取ら
ずそのまま白熱球の下で約20〜30分温め、エメラルドの
表面に付いてる液体がやや硬化したら、拭き取り、その
まま常温で１時間以上放置する。

【００２５】一方、充填処理圧力と加圧時間との間には
相関関係があり、図３は流動性を高めるために、70℃に
加熱したエポキシ樹脂をエメラルドの亀裂に充填した場
合の処理圧力と加圧時間との関係を示すものであり、こ
れによれば処理圧力25〜30Kg/cm²以上、加圧時間３時間
以上で亀裂へのエポキシ樹脂の充填が認められる。

【００２６】

【発明の効果】以上要するに、この発明によれば極めて
簡単な方法によりオイル抜けのないエメラルド等の宝石
類における亀裂の充填が可能となる。

【００２７】しかも、この発明では充填したエポキシ樹
脂が亀裂より抜け出すことがないため、宝石類の美しさ
が半永久的に保たれる。

【図面の簡単な説明】

【図１】 この発明に使用する宝石類における亀裂の充
填装置の概略図

【図２】 亀裂のあるエメラルドを示すものであり、
（Ａ）は平面図、（Ｂ）は側面図

【図３】 エメラルドの亀裂充填における処理圧力と加
圧時間との関係図

【符号の説明】

１はオイル含浸装置 ２は充填用容器 2aは容器の上部 2bは容器の下部 ３は結合部 ４は圧力計 ５はエアーコンプレッサー ６は開閉バルブ ７は高圧用ホース ８は小型ビーカー ａはエメラルド ｂは亀裂 ｃは液状のエポキシ樹脂

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 宝石類の亀裂に液状のエポキシ樹脂を充
   填し、その後充填されたエポキシ樹脂を硬化させること
   を特徴とする宝石類における亀裂の充填方法。
2. 【請求項２】 液状のエポキシ樹脂を加熱及び／或は加
   圧して亀裂内に充填する請求項１記載の充填方法。