JPH11196671A - 植物栽培方法 - Google Patents

植物栽培方法

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JPH11196671A
JPH11196671A JP10002324A JP232498A JPH11196671A JP H11196671 A JPH11196671 A JP H11196671A JP 10002324 A JP10002324 A JP 10002324A JP 232498 A JP232498 A JP 232498A JP H11196671 A JPH11196671 A JP H11196671A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は、植物の生育を効果的に調整可能な
植物栽培方法の提供を目的とする。 【解決手段】 定植部5に植え付けた植物6に人工光を
照射して植物の生育を調整する植物栽培方法であり、人
工光として、複数の半導体レーザ8を有するレーザパネ
ル7から照射される波長670〜685nmの赤色光
と、青色蛍光燈9から照射される波長400〜500n
mの青色光とを用い、定植部5の表面における赤色光の
光強度を250〜500μmol/m2/sに保ちながら人
工光を植物6に照射することを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は植物栽培方法に関
し、特に、農作物や園芸作物に適用する植物栽培方法に
関する。
【0002】
【従来の技術】従来、このような分野の技術としては、
特開平8−242694号公報によって開示されたもの
が知られている。この公報に記載された従来の植物栽培
方法は、発光ダイオード等の光半導体を光源として、平
均照度300〜5000lx(約5.4〜90μmol/
2/s)の範囲で植物に光を照射するものである。ま
た、同公報には、照射する光として、波長600〜75
0nmの赤色光と波長400〜500nmの青色光を併
用する植物栽培方法が記載されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
植物栽培方法には、次のような課題が存在していた。す
なわち、花や果実を収穫することを目的として栽培す
る、例えば、イネ等の農作物、園芸作物の生育には、多
くの光量が必要とされ、照射する光量(平均照度)が3
00〜5000lxでは実際のところ不十分である。ま
た、発光ダイオードを光源とした場合、多くの光量を確
保することが困難である。更に、発光ダイオードの発光
スペクトルは広いことから、光合成効率を高めるべく波
長700nm以上の遠赤色光領域の光を含まないように
すると、発光の中心波長は660nm付近に設定せざる
を得ないが、この波長660nm付近の赤色光を植物に
照射しても、光合成は十分に促進されない。このよう
に、従来の植物栽培方法では、植物の生育を効果的に調
整することが困難であった。
【0004】そこで、本発明は、植物の生育を効果的に
調整可能な植物栽培方法の提供を目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の本発明に
係る植物栽培方法は、定植部に植え付けた植物に人工光
を照射して植物の生育を調整する植物栽培方法におい
て、人工光として、波長670〜685nmの赤色光と
波長400〜500nmの青色光とを用い、定植部の表
面における赤色光の光強度(光合成有効光量子束密度)
を250〜500μmol/m2/sに保ちながら人工光を
植物に照射することを特徴とする。
【0006】本発明者らは、花や果実を収穫することを
目的として栽培する農作物、園芸作物の生育調整を低コ
ストで効果的に実現可能な植物栽培方法について鋭意研
究を進めた結果、波長670〜685nmの赤色光と波
長400〜500nmの青色光とを用い、定植部の表面
における赤色光の光強度(光合成有効光量子束密度:P
PFD)を250〜500μmol/m2/sに保ちながら
人工光を植物に照射すると実用上極めて良好な結果が得
られることを見出した。すなわち、この植物栽培方法
は、波長670〜685nmの赤色光を照射することに
より、植物の光合成を極めて効果的に促進させるもので
ある。また、植物の生育促進等に必要とされる光量を、
定植部の表面における赤色光の光合成有効光量子束密度
を250〜500μmol/m2/sに保つことにより確保
するものである。
【0007】この植物栽培方法によれば、花や果実を収
穫することを目的として栽培する農作物、園芸作物の生
育促進、栽培期間の短縮、単位面積当たりの収量増大等
が低コストで効果的に実現可能となる。従って、この植
物栽培方法は、砂漠等の劣悪な環境下や、狭い土地での
植物栽培、高温/低温期での植物栽培、更には、近時そ
の重要性がますます指摘されるに至っている植物工場、
とりわけ、完全制御型の植物工場等に応用することが期
待されるものである。
【0008】この場合、赤色光の光源としては、半導体
レーザを用いると好ましい。これより、レーザ光が有す
る単色性という特性から、光合成を最も効率よく促進さ
せる波長670〜685nmの赤色光を容易に照射させ
ることが可能となる。また、植物に照射する光の光源と
して、高圧ナトリウムランプを採用した場合と比較する
と、光源の駆動及び、ランプ放熱を除去するための冷房
施設等に必要とされる電力が不要となることから、植物
栽培に要する電力コストを大幅に低減することができ
る。
【0009】また、定植部の表面における赤色光の光強
度(光合成有効光量子束密度)を300〜400μmol
/m2/sに保ちながら人工光を植物に照射すると好ま
しい。このような方法は、様々な農作物の中でも、とり
わけ、イネの栽培促進に有効であり、イネの植え付けか
ら収穫までの期間をおよそ3ヶ月とすることを可能とす
るものである。従って、この植物栽培方法を応用するこ
とより、年間5回のイネの収穫を可能とする植物工場の
実現も期待できる。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、図面と共に本発明による植
物栽培方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0011】図1は、本発明による植物栽培方法を用い
るための植物栽培装置を示す斜視図である。同図に示す
植物栽培装置1は、イネを栽培するためのものとして構
成された人工光を利用する完全制御形の植物栽培装置で
ある。植物栽培装置1は、略立方体形状を有する人工気
象箱2を備え、この人工気象箱2には、図示しない環境
制御装置が接続されている。この環境制御装置を操作す
ることにより、人工気象箱2の内部における温度、湿度
等を任意に設定することができる。また、人工気象箱2
の内部には、イネを定植させるための水耕装置3が配置
されている。水耕装置3は、培養液を満たした栽培槽4
と、栽培槽4の上に浮かべられた発泡スチロール製の定
植板5等を有する。イネ6の苗は、この定植板5に植え
付けられる。
【0012】また、人工気象箱2の上壁内面には、レー
ザパネル7が配置されている。このレーザパネル7に
は、複数(例えば30個)のAlGaInP系半導体レ
ーザ8が互いに所定間隔を隔ててマトリクス状に配設さ
れている。各半導体レーザ8は、直径およそ10mm程
度の円筒形状を呈すると共に、CW点灯で300mW以
上の出力をもち、波長670〜685nmの赤色光(人
工光)を、上方からレーザパネル8と対向する水耕装置
3に対して照射することができる。このように赤色光の
光源として半導体レーザを用いることにより、レーザ光
が有する単色性という特性から、光合成を最も効率よく
促進させる波長670〜685nmの赤色光を容易に照
射させることが可能となる。また、イネに照射する光源
として、例えば、高圧ナトリウムランプを採用した場合
と比較すると、電力に対する光量の変換効率が高く、発
熱量が少ないことから、光源の駆動及び、ランプ放熱を
除去するための冷房施設等に必要とされる電力が不要と
なり、植物栽培に要する電力コストを大幅に低減するこ
とができる。なお、レーザパネル7に配設された各半導
体レーザ8は、図示しないレーザ駆動装置によって駆動
される。
【0013】更に、人工気象箱2の互いに対向し合う1
組の側壁の内面には、補助光源として青色光を発する青
色蛍光燈9が配置されている。各側壁に対しては、互い
に平行な2個の青色蛍光燈9が設けられており、各青色
蛍光燈9は、定植板5に植え付けられたイネ6に対し
て、側方から400〜500nmの青色光(人工光)を
照射することができる。
【0014】この植物栽培装置1を用いて、植物、すな
わち、イネ6を栽培する場合は、イネ6に照射する光と
して、波長670〜685nmの赤色光と波長400〜
500nmの青色光とを用い、定植板5の表面における
赤色光の光強度、すなわち、光合成有効光量子束密度
(PPFD)を250〜500μmol/m2/s、より好
ましくは、300〜400μmol/m2/sに保ちながら
人工光をイネ6に照射する。これにより、イネ6の光合
成が極めて効果的に促進させられると共に、イネ6の生
育促進等に必要とされる光量が十分に確保されるので、
イネ6の生育促進、栽培期間の短縮等が低コストで効果
的に実現可能となる。
【0015】次に、この植物栽培装置1を用いて行った
実験及びその結果について説明する。この実験では、栽
培する植物として、イネ(品種:キタイブキ)を採用し
た。ここで、イネの生長の程度は、完全に開いた状態の
葉の数(以下「葉齢」という)で表すこととし、2番目
に芽生えた葉が完全に開いた状態を2葉展開と、3番目
に芽生えた葉が完全に開いた状態を3葉展開といったよ
うに表すこととする。実験に先立っては、イネの苗を、
ウレタン製の苗床に播種した後、約10日間程経過さ
せ、3番目に芽生えた葉が5割程度に開いた状態になる
まで生育させた(このような状態を「2.5葉展開」と
いうものとする)。そして、この2.5葉展開の状態に
なったイネの苗を、上述した植物栽培装置1に含まれる
水耕装置3の定植板5に植え付けた。
【0016】実験に際しては、人工気象箱2の内部の環
境を、気温25℃、湿度70%に設定した。このような
条件下で、定植板5の表面における赤色光の光強度(光
合成有効光量子束密度)を350μmol/m2/sに保ち
ながら、イネに対してレーザパネル7に配設された半導
体レーザ8から680nmの赤色光を照射すると共に、
青色蛍光燈9から水銀の輝線スペクトル405nm及び
436nmを含む400〜500nmの青色光を照射し
た。また、青色光の赤色光に対する割合は、光強度で約
5%となるように設定し、日長時間は12時間とした。
そして、およそ3ヶ月(11週間)にわって、毎週、葉
齢、草丈、稈数(イネ科植物の茎の数をいう)、穂数を
調査した。更に、対照区として、植物栽培装置1のレー
ザパネル7を高圧ナトリウムランプに置き換えた植物栽
培装置(以下「高圧ナトリウム区」という)を用意し、
植物栽培装置1と同様の条件下で、葉齢、草丈、稈数、
穂数について調査を行った。この実験の結果を、図2〜
5に掲げる図表に示す。
【0017】図2は、680nmの赤色光に5%の割合
で青色光を加えた人工光を用いた植物装置1(以下「赤
LD+青色光区」という)と、高圧ナトリウム区との間
におけるイネの草丈を比較する図表であり、縦軸に草丈
をとり、横軸に、定植板5にイネを定植させた後の週数
(以下「定植後週数」という)をとったものである。同
図に示すとおり、定植後6週間程までは、草丈は定植後
週数にほぼ比例して増加しているが、その後は、ほぼ一
定となり、両者の間に草丈についての大きな差は見られ
ない。
【0018】一方、葉齢について比較すれば、高圧ナト
リウム区では、図3に示すように、定植後8週間目まで
は、イネの葉齢が増加し、定植後8週間目に葉齢が11
葉展開となった段階、すなわち、11番目に芽生えた葉
が完全に開いた段階で葉齢の増加が止まっており、この
段階で、止め葉(最上位の葉をいう、この止め葉が出現
した後に、穂が出現する)が出現したことがわかる。こ
れに対して、赤LD+青色光区では、定植後6週間目に
葉齢が10葉展開となった段階で葉齢の増加が止まって
おり、この段階で、止め葉が出現している。この結果か
ら、赤LD+青色光区にてイネを栽培すれば、止め葉の
出現が高圧ナトリウム区にてイネを栽培する場合よりも
2週間程度早まることがわかる。すなわち、赤LD+青
色光区にてイネを栽培すれば、イネの苗の植え付けから
収穫までに要する期間を高圧ナトリウム区にてイネを栽
培する場合よりも2週間程度短縮できる。
【0019】また、図4に、赤LD+青色光区にて栽培
したイネの稈数及び穂数を、図5に高圧ナトリウム区に
て栽培したイネの稈数及び穂数を示す。これらの図表に
示すように、稈数については、赤LD+青色光区にて栽
培したイネは(図4参照)、定植後4週目に稈数4とな
り、その後、稈数の増加は見られないことから、高圧ナ
トリウム区にて栽培したイネ(図5参照)と比べて稈数
が少ない。しかしながら、赤LD+青色光区にて栽培し
たイネは、定植後6週目に、最初の穂が出現すると共
に、定植後8週目には、ほとんどすべての稈に穂が形成
されている。また、それぞれの穂の生育状態も良好であ
った。
【0020】これに対して、高圧ナトリウム区で栽培し
たイネは、定植後8週目にようやく最初の穂が出現し、
穂の形成期間は、定植後11週目に至るまでの3週間に
わたっている。また、この場合、定植後11週間目を過
ぎても、穂が形成された稈は、すべての稈のうちの半分
程度に過ぎない。従って、赤LD+青色光区にてイネを
栽培すれば、高圧ナトリウム区にてイネを栽培する場合
と比較して、イネの葉数、稈数等は少なくなるものの、
穂が早期かつ良好な生育状態で形成されると共に、稈に
対する穂の形成率が高くなることがわかる。従って、赤
LD+青色光区では、早期かつ効率よくイネを栽培、収
穫することが可能となる。
【0021】このように、図2〜5に示した実験結果よ
り、680nmの赤色光に、5%の割合で青色光を加え
た人工光を、定植板5の表面における赤色光の光強度
(光合成有効光量子束密度)を300〜400μmol/
2/s、とりわけ350μmol/m2/sに保つように
イネに照射することは、イネの栽培促進に極めて効果的
であり、イネの植え付けから収穫までの期間をおよそ3
ヶ月とすることが可能となることがわかる。従って、こ
の植物栽培方法を応用して、5〜6葉展開の状態となっ
たイネの苗を用いれば、年間5回のイネの収穫も可能で
ある。
【0022】上述したように、この植物栽培方法によれ
ば、花や果実を収穫することを目的として栽培する農作
物、園芸作物の生育促進、栽培期間の短縮、単位面積当
たりの収量増大等が低コストで効果的に実現可能とな
る。従って、この植物栽培方法は、砂漠等の劣悪な環境
下や、狭い土地での植物栽培、高温/低温期での植物栽
培、更には、近時その重要性がますます指摘されるに至
っている植物工場、とりわけ、完全制御型の植物工場等
に応用することが期待されるものである。
【0023】
【発明の効果】本発明による植物栽培方法は、以上説明
した手順に従って植物を栽培することにより、次のよう
な効果を得る。すなわち、定植部に植え付けた植物に照
射する人工光として、波長670〜685nmの赤色光
と波長400〜500nmの青色光とを用い、定植部の
表面における赤色光の光強度(光合成有効光量子束密
度)を250〜500μmol/m2/sに保ちながら人工
光を植物に照射することにより、植物の生育を効果的に
調整可能な植物栽培方法の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による植物栽培方法を用いる植物栽培装
置の一例を示す斜視図である。
【図2】図1の植物栽培装置を用いて行った実験の結果
を示す図表である。
【図3】図1の植物栽培装置を用いて行った実験の結果
を示す図表である。
【図4】図1の植物栽培装置を用いて行った実験の結果
を示す図表である。
【図5】図1の植物栽培装置を用いて行った実験の結果
を示す図表である。
【符号の説明】
1…植物栽培装置、2…人工気象箱、3…水耕装置、4
…栽培槽、5…定植板(定植部)、6…イネ、7…レー
ザパネル、8…半導体レーザ、9…青色蛍光燈。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 定植部に植え付けた植物に人工光を照射
    して前記植物の生育を調整する植物栽培方法において、 前記人工光として、波長670〜685nmの赤色光と
    波長400〜500nmの青色光とを用い、前記定植部
    の表面における前記赤色光の光強度(光合成有効光量子
    束密度)を250〜500μmol/m2/sに保ちながら
    前記人工光を前記植物に照射する植物栽培方法。
  2. 【請求項2】 前記赤色光の光源として、半導体レーザ
    を用いることを特徴とする請求項1記載の植物栽培方
    法。
  3. 【請求項3】 前記定植部の前記表面における前記赤色
    光の光強度を300〜400μmol/m2/sに保ちなが
    ら前記人工光を前記植物に照射する請求項1又は2記載
    の植物栽培方法。
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