JPH11192036A - トランスジェニック動物の創出方法 - Google Patents

トランスジェニック動物の創出方法

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JPH11192036A
JPH11192036A JP10030322A JP3032298A JPH11192036A JP H11192036 A JPH11192036 A JP H11192036A JP 10030322 A JP10030322 A JP 10030322A JP 3032298 A JP3032298 A JP 3032298A JP H11192036 A JPH11192036 A JP H11192036A
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gene
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transgenic animal
cell
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Chihiro Koike
千裕 小池
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Abstract

(57)【要約】 【解決課題】相同組換え体のトランスジェニック動物を
得るのに適した新規なトランスジェニック動物の創出法
を提供する。 【手段】胎仔から採取した発生途上の胎仔細胞に外来遺
伝子を導入し、これらの胎仔細胞から組換え体を選別
し、選別した組換え体を受精卵に注入し、この受精卵を
擬妊娠状態の雌の子宮内に移植する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、新規なトランス
ジェニック動物の創出法に関し、詳しくは、外来遺伝子
を胎児由来の未分化細胞に導入し、外来遺伝子の導入さ
れた未分化細胞を受精卵に導入することにより、外来遣
伝子が生殖細胞および/又は体細胞に導入されたトラン
スジェニック動物を創出する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】染色体に外来遺伝子の導入する方法とし
ては、染色体上の不特定位置に導入するランダムインテ
グレーションと染色体上の所望の位置に導入する相同的
組換え、すなわち、同所的組換えとがある。ランダムイ
ンテグレーションでは、外来遺伝子は、外来の調節因子
によって発現調節する必要がある。これに対し、同所的
組換えでは、外来遺伝子は内在する調節因子により発現
調節するようにすることが可能である。
【0003】ここに、従来、外来遺伝子を導入したトラ
ンスジェニック動物を創出する方法として、主要な方法
は、マイクロインジェクション法とES細胞を用いる方
法である。マイクロインジェクション法で、外来遺伝子
を染色体上に有した仔が生まれてくるのは、技術的習熟
度にも依るが、処理した受精卵の個数に対して0.1〜
10%である。また、成熟体細胞に対して、外来遺伝子
をトランスフェクションすると、導入方法にも依るが、
導入効率は0.1〜1%であり、外来遺伝子の導入され
たES細胞を受精卵に導入した場合、外来遺伝子を有す
る仔の生まれてくるのは、移植された受精卵の個数の約
10〜20%である。
【0004】これらのどちらの方法でも、理論上は染色
体上の任意の位置に外来遺伝子を組み込むランダムイン
テグレーションによるトランスジェニック動物を創出す
ることはできる。所望の染色体上の位置に外来遣伝子を
導入したトランスジェニック動物を作出しようとする
と、マイクロインジェクション法では、膨大な数の受精
卵を操作しなければならず、現実的には相同組換え体を
得るのは不可能である。相同組換えは、ランダムインテ
グレーションの約1000分の1の確率でしか起こらな
いからである。したがって、現在のところ、ES細胞を
用いる方法でしか、相同組換え体のトランスジェニック
動物を作出することはできていない。
【0005】しかしながら、現在のところ、ES細胞系
列が確立されているのは、限られた種、今のところはマ
ウスのみで、それもほんの数系列のみであり、他の種に
おいてもES細胞系列の確立に多大な努力が傾けられて
きているが、今のところ、その成功の報告例がない。こ
のように、マウス以外にES細胞系列が確立されていな
いことが、相同組換え体のマウス以外のトランスジェニ
ック動物を創出することが出来ない大きな原因であっ
た。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明では、
相同組換え体のトランスジェニック動物を得るのに適し
た新規なトランスジェニック動物の創出法を提供するも
のである。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記した課題を解決する
ために、本発明では、細胞増殖が盛んであり、かつ未分
化の胎仔の細胞に着目し、この細胞に外来遺伝子を導入
して、組換え体を選別し、選別した組換え体を未分化の
状態のまま受精卵に注入することにより、外来遺伝子が
組換えられて形質転換されたトランスジェニック動物を
創出する方法を見いだし、本発明を完成した。すなわ
ち、本発明は、胎仔から採取した発生途上の細胞に外来
遺伝子を導入し、外来遣伝子が導入された組換え体を選
別し、選別された組換え体を受精卵に注入し、この受精
卵を擬妊娠状態の雌の子宮内に移植するトランスジェニ
ック動物の創出方法である。この方法によると、確立さ
れたES細胞系列を用いることなく、外来遺伝子の導入
された形質転換動物を得ることができる。
【0008】
【発明の実施の形態】(発生途上の細胞)前記発生途上
の細胞は、子宮内の胎児から採取される。胎仔細胞を採
取する胎児の臓器は、発生途上の臓器で、未分化度が高
い細胞に富んだ、細胞増殖が盛んな臓器であることが好
ましい。採取する発生途上の胎仔細胞は、胎児中の生殖
隆起から採取されることが好ましい。生殖隆起から採取
した胎仔細胞は、始原生殖細胞が多く含まれているから
であり、始原生殖細胞に外来遺伝子を導入した組換え体
を受精卵に注入すれば、生殖系列に外来遺伝子が導入さ
れたトランスジェニック動物が得られやすいからであ
る。また、発生途上の細胞は、受精卵の内部細胞塊から
採取することもできる。
【0009】採取した発生途上の胎仔細胞は、胎児血清
を添加した培地で培養することが好ましい。胎児血清
は、増殖因子に富み、胎仔細胞の増殖性を高め、外来遺
伝子の導入効率を高めるからである。
【0010】胎仔細胞に外来遺伝子を導入するのに用い
るDNAコンストラクトは、ランダムインテグレーショ
ン用のコンストラクトであっても、相同組換え用に構築
されたコンストラクトであってもよい。ES細胞がなく
ても、相同組換え体のトランスジェニック動物を創出す
ることができるという点において、相同組換え用DNA
コンストラクトを用いることが好ましい。DNAコンス
トラクトには、目的とする外来遺伝子の発現等を調節す
る発現調節領域や、一般的に知られている選択用マーカ
ー遺伝子をDNAコンストラクトの一部に導入しておく
ことができる。
【0011】(発生途上にある細胞への外来遺伝子の導
入)外来遺伝子の導入自身が個体に対し害を及ぼした
り、期待通りの発現様式を示すとは限らないことが良く
知られているが、それは外来遺伝子を染色体のどの位置
に導入するかについてあらかじめコントロールすること
は出来ないからであると考えられている。このため個体
にとって安全なトランスジェニック動物を創出するに
は、標的とする遺伝子座に目的の外来遺伝子を相同組換
えにより導入することが重要であると考えられている。
さらに、より完璧なトランスジェニック動物を創出する
には、目的とする外来遺伝子以外の他の外来遺伝子はで
きるだけ導入しないようにすることが好ましいと考えら
れている。このような相同組換えを達成するDNAコン
ストラクトとしては、たとえばウイルス由来のプロモー
ターのような、宿主細胞がその発現を調整できないよう
な外来プロモータ領域をはじめとする調節領域を含まな
いようにすることが好ましい。すなわち、相同組み換え
の結果において内在性のプロモーターにより、外来遺伝
子が発現するようなDNAコンストラクトを設計するこ
とが好ましい。それは、このようなDNAコンストラク
トが同所性に組み換えを起こして染色体に組み込まれた
場合、その外来遣伝子は、内在性のプロモーターにより
発現調節を受け、その結果、その外来遺伝子は個体にと
って必要な時期に必要なだけ発現されることになるから
である。
【0012】(組み換え体の選択)また、かかる相同組
換えの際には、相同組換え体を選別するためのいわゆる
選別用マーカー遺伝子も導入しないようにすることがよ
り好ましい。選別用マーカー遺伝子を含めることなく相
同組換え体を選択できる場合とは、目的の外来遺伝子に
よる相同組換え体そのものが、容易に選別できる要素を
備えている場合である。このような例として、相同組換
えにより細胞表面にある抗原をはじめとする内在性の細
胞表在性物質を他の細胞表在性の抗原等の細胞表在性物
質に転換する例をあげることができる。
【0013】この場合、内在性の細胞表在性物質に対す
る抗体による細胞被傷害性の差異を利用して、相同組換
え体を選別することができる。すなわち、外来遺伝子導
入により、内在性の細胞表在性物質のかわりに外来の細
胞表在性物質を発現した相同組換え体は、前記特異的抗
体に対する特異的抗原が量的に減少している。この結
果、前記相同組換え体における、特異的抗体及び補体に
よる細胞被傷害性は、無操作の細胞群における場合より
も低減している。したがって、細胞被傷害性のこの差異
を利用することにより、かかる相同組換え体を選別する
ことができる。しかも、抗原抗体反応および補体活性化
は速やかに進行するので、従来の耐性薬剤マーカーによ
る選別よりも速く選別できるというメリットがある。具
体的には、数時間から24時間程度であれば、十分に選
別が可能である。選別が速いというメリットはこれだけ
に留まらない。一般に、ES細胞を使う従来の方法は薬
剤耐性マーカーを使用するので、組み換え体の選別に際
し、7日から10日位の日数を要する。この間にES細
胞は分化するので、増殖抑制因子を投与してその分化を
抑制している。しかし、選別が速い場合、組み換え体の
細胞群はその間にあまり分化しないので、かかる増殖因
子を投与する必要がなくなるというメリットがある。そ
の結果従来技術に一般に用いられてきた薬剤耐性マーカ
ーに関する遺伝子という極めて人工的な構築物の染色体
への組み込みを必要としない。この点は、かかる組み換
え動物またはヒトの細胞あるいは臓器が何らかの形でヒ
トのからだの中に入る形で利用されるときには極めて重
要な点である。
【0014】なお、この明細書において、細胞表在性物
質とは、糖類、タンパク質、脂質、糖タンパク質、糖脂
質等の複合タンパク質等の各種化合物を挙げることがで
きる。これらの化合物は、細胞表面のレセプター、抗
原、細胞表在性の化合物、細胞表面で分泌される化合物
等のいずれかを構成する。
【0015】このような形質転換の具体例としては、非
霊長ほ乳類細胞を形質転換して、非霊長ほ乳類特有の抗
原であるG抗原を高等霊長類を持つH抗原に置換しよう
とする場合がある。他に、ヒト細胞を形質転換して、そ
の細胞のABO型を他のヒトの血液型抗原に置換しよう
とする場合がある。また、移植において重要な主要組織
適合性抗原において、レシピエントに対し不一致のドナ
ーの抗原を、レシピエントに適合するような抗原に置換
する、という例をあげることができる。あるいは、様々
な遺伝子疾患における異常遺伝子を正常遣伝子と置換す
る、という例も上げることが出来る。さらにいえば、特
定の遺伝子座に任意の遣伝子を導入することも出来る。
【0016】新たに導入しようとする目的の外来遺伝子
が、このような細胞表在性物質に関連するものでない場
合には、上記した細胞表在性物質の発現に関与する外来
遣伝子を選別用マーカーとすることができる。具体的に
は、これらの外来遺伝子を相同組換えにより組み込むこ
とのできるDNAコンストラクトを、選別用コンストラ
クトとし、目的の外来遺伝子を含むDNAコンストラク
トと同時導入する。このとき、選別用コンストラクトに
対する目的の外来遣伝子を含むDNAコンストラクトの
割合を多くしておけば、選別用DNAコンストラクトに
よって選別された一次組換え体のうちの一部には、目的
とする外来遺伝子が相同組換えにより導入された組換え
体が含まれているはずである。したがって、一次組換え
体のなかから、PCR等によって、目的とする外来遺伝
子が相同組換えにより導入された二次組換え体を選別す
ることができる。
【0017】なお、かかる選別用コンストラクトにおい
ても、選別用外来遺伝子は、内在性の調節領域によって
発現制御されるようにすることが好ましい。
【0018】発生途上にある細胞へのDNAコンストラ
クトの導入は、従来公知の各種方法を用いることができ
るが、リポフェクチン(Gibco社製)等を用いたリ
ポソーム法を好ましく用いることができる。また、この
際、導入効率をよくするために、内在性の細胞表在性物
質に対して親和性の高い物質をリポソームに換えて、あ
るいはリポソームと同時に使用することが好ましい。か
かる親和性の高い物質としては、例えば、非高等霊長類
の細胞表在性物質であるG抗原に対するレクチンをあげ
ることができる。
【0019】(受精卵への組換え体の注入)選別された
組換え体は、発生途上、すなわち、分化が完全に達成さ
れていない状態で、受精卵に注入される。本発明方法に
おいて、速やかに組換え体を選別できる方法を採用すれ
ば、外来遺伝子の導入から組換え体の選別までを、発生
途上の段階において完了させることができる。組換え体
が注入される受精卵は、ES細胞を用いる場合と同じ
く、受精卵中の全細胞が分化全能性を備えている、桑実
胚期ないし胚盤胞期の受精卵を好ましく用いることがで
きる。ここで言う注入とは、外部から受精卵の透明帯の
内部へ組み換えされた細胞群を移植することを意味す
る。この結果、組み換えされた細胞群が受精卵の細胞群
と混和され、胎児がキメラの状態で成長出来ることを可
能にする。受精卵への組換え体の注入の際には、従来公
知の各種方法を用いることができる。また、選別された
組換え体は、外来遺伝子の導入の有無やその導入位置を
確認するのに供されたりする。
【0020】組換え体を注入した受精卵を、偽妊娠雌子
宮への移植すると、一定の妊娠の後、この偽妊娠動物か
ら産仔が得られるが、その産仔の毛色の変化等により組
換え体由来の細胞/組織を検出することが出来る。例え
ば、組み換え体細胞が黒色の毛色を持つ個体から由来
し、他方受精卵が白色の毛色の個体から由来する場合
は、得られる産仔は白色と黒色が混じったまだら状(キ
メラ)となる。従って、この場合、黒色の毛の部分から
DNAを抽出することにより、外来遺伝子の導入の有無
やその導入の部位を確認することが出来る。
【0021】以上のことから、本発明は、以下に示す実
施形態をとることができる。 (1)胎仔から採取した発生途上の細胞に同所的組換え
により内在性の細胞表在性物質を量的に減少させるよう
に外来遺伝子を導入し、前記内在性細胞表在性物質によ
る細胞被傷害性の差異に基づいてこれらの胎仔細胞から
同所的組換え体を選別し、選別した組換え体を受精卵に
注入し、この受精卵を擬妊娠状態の雌の子宮内に移植す
ることを特徴とするトランスジェニック動物の創出方
法。 (2)前記(1)において、前記発生途上の細胞は、G
抗原を有するブタ、ウシ、ヒツジ、ウサギ等の非高等霊
長類の胎仔から採取し、前記内在性の細胞表在性物質は
G抗原であることを特徴とするトランスジェニック動物
を創出する方法。 (3)前記(1)において、内在性細胞表在性物質発現
関連タンパク質の造伝子座に、外来性細胞表在性物質発
現関連タンパク質のDNA配列を同所的に導入して、こ
の遺伝子座において内在性細胞表在性物質発現関連たん
ぱく質のかわりに外来性細胞表在性物質発現関連タンパ
ク質を発現するようにして、結果的に内在性細胞表在性
物質の量を減少させることにより、内在性細胞表在性物
質による細胞被傷害性に基づいて同所的組換え体を選択
することを特徴とするトランスジェニック動物を創出す
る方法。 (4)前記(1)において、前記発生途上の細胞は、G
抗原を有するブタ、ウシ、ヒツジ、ウサギ等の非高等霊
長類の胎仔から採取し、G抗原を生成するα1、3−ガ
ラクトシルトランスフェラーゼ(GT)の遺伝子座にヒ
トH抗原を生成するα1、2−フコシルトランスフェラ
ーゼ(Fr)をコードするDNA配列を同所的に導入し
て、この遺伝子座においてGTのかわりにFTを発現す
るようにして、結果的にG抗原の量を減少させることに
より、G抗原による細胞被傷害性に基づいて同所的組換
え体を選択することを特徴とするトランスジェニック動
物を創出する方法。
【0022】
【実施例】1)胎児からの発生途上の胎仔細胞の採取 マウス57/BL6系統(黒色皮膚)の雄と雌(各々約
10週令)を交配させた。交配後約11日目ないし12
日目に、妊娠雌を開腹し、滅菌的に子宮を摘出した(以
後の処理はすべて滅菌的に行うものとする)。上記子宮
を約37℃の温PBS溶液内で切開し、胎児を露出させ
た。上記胎児の臍帯を切断し、別の温PBS溶液内に移
した。これらの胎児を1匹づつ別の温PBC溶液3〜4
mlを含む直径3cmのシャーレ内に移し、胎児の腹部
を切開し、左右の生殖隆起を摘出し、これらを別のDM
EM溶液内に移した。こうしてすべての胎児から生殖隆
起だけを集め、上記DMEM溶液を含むシャーレ内に移
した。
【0023】上記DMEM溶液内の生殖隆起を、滅菌処
理した眼科用穿刀にて細切した。上記細切した組織を含
むDMEM溶液を、滅菌処理した微細金属網の上に注い
だ。上記微細網を通過した流れ落ちる液体を別のシャー
レで受け止めた。上記微細網の上に残った組織について
は、注射用シリンジを利用してさらに破砕し、前記シャ
ーレの中に移した。上記のシャーレ内の溶液を遠心分離
し、上清を取り除き、生殖隆起由来の細胞を集め、生殖
隆起細胞とした。
【0024】一方、上記において生殖隆起が摘出された
残りの胎児については、胎児をもみだすことにより、胎
児血液を出来るだけ多く流出させた。胎児血液が流出さ
れたこれらの溶液を集め、これを遠心分離し、細胞成分
を取り除き、上清を集め、これを胎児血清と呼んだ。ま
た、前記胎児血清を加えたDMEM溶液を、単に胎児血
清加DMEM溶液と呼んだ。(血清の濃度はおよそ1〜
5%と考えられる。) 前記生殖隆起細胞を胎児血清加DMEM溶液を含むシャ
ーレの中で、およそ1X10cells/mlになる
まで培養した。
【0025】2)同所性組み換え用DNA構築物の作製 MC1ネオ配列(ポリオーマウイルスのチミジンキナー
ゼ遺伝子のプロモータとネオマイシン耐性遺伝子とを含
む)は、pMC1ネオポリA(Strat agen
e,La Jolla,CA)より得られた。ホスホグ
ルコキナーゼ(PGK)遺伝子のプロモータ配列とジフ
テリアトキシンフラグメントA(DTA)遺伝子は、村
松博士(名古屋大学医学部、第1生化学教室)より得ら
れた。MC1ネオ配列、PGKのプロモータ配列及びD
TAフラグメントA配列のそれぞれを、ブルースクリプ
ト(pBluescript)KSII+(Stara
tagene)のSal I、Eco RI/Pst
I、およびSma I/Bam HIサイトにそれぞれ
組み込んで、ポジティブネガティブセレクションのため
のターゲッティングベクターを作製した。以下、このタ
ーゲティングベクターをTVneoという。
【0026】マウスゲノムのGT造伝子(Rro.Na
tl.Acad.Sci.,U.S.A.86:822
7−8231,1989)のエクソン2からエクソン3
までの断片を、以下に示す2つのプライマーGT1,プ
ライマーGT2,を用いてLA−PCR(long−a
ctivepolymerasechmin reac
tion)を用いて129系マウスのDNAから抽出し
た。 また、マウスゲノムのGT遺伝子のエクソン4からエク
ソン6までの断片を、以下に示す2つのプライマーGT
3,プライマーGT4,を用いてLA−PCRを用いて
129系マウスのDNAから抽出した。
【0027】これらのPCRプロダクトを、それぞれp
GMT−T(Promega,Masidon,WI)
にサブクローニングし、Sph I/Cla I,Sa
lI/Apa Iでそれぞれ消化した。これらの断片を
抽出し、ターゲティングベクターTVneoに組み込ん
だ。このターゲティングベクターをTVGTneoとし
た。
【0028】ヒトゲノムのFT遺伝子(Proc.Na
tl.Acad.Sci.,U.S.A.87:667
4−6678(1990))のエクソン1からエクソン
2までの断片を、以下に示す2つのプライマーFT1,
プライマーFT2,を用いてPCRを用いてヒト白血球
ゲノムDNAから抽出した。 このPCRプロダクト、ppFTを、pCR3ベクター
(Invitorogen,San Diego,C
A)に組み込んでpCR/FTとした。このプラスミド
を、Xho IとSal Iで消化した。得られた2.
2kbpの断片を、同じ制限酵素で消化したTVGTn
eoに組み込んだ。このプラスミドをTG/GT/FT
とし、Sac IIで消化して直線化し、最終的に、置
換用ベクター、L−GT/FTとした。
【0029】この置換用ベクターは、4つの主要なDN
A領域を有している。上流から、1)PGK遺伝子のプ
ロモータ領域、DTA遺伝子、およびポリAを含む1.
0kbp以下の領域、2)マウスGT遣伝子のイントロ
ン2を含む5.8kbp以下の領域、3)ヒトFT遺伝
子のイントロン1と、FT遺伝子のスプライシングサイ
トとスタートコドンとストップコドンを含むヒトFTの
コード領域、とを含む2.2kbp以下の領域、4)マ
ウスGT遣伝子の、スタートコドンを含まないエクソン
4と、イントロン4、とを含む3.9kbp以下の領
域、である。すなわち、この置換用ベクターは、GT遺
伝子とFT遺伝子についてキメラである。しかしなが
ら、このベクターは本質的にゲノムで構成されている。
また、この置換用ベクターは、FTを発現するためのプ
ロモータ配列を有していないし、GT遺伝子のエクソン
4には、GTのスタートコドンをも有していない。一
方、この置換用ベクターはFTのスプライシングサイト
およびスタートコドンを有している。
【0030】4)DNA構築物の導入 前記生殖隆起細胞の培養液をDMEM溶液に替えてか
ら、核酸導入用合成脂質(リポフェクチン:GIBC
O)を用いて、そのプロトコルに従って、FT遺伝子を
含むDNA構築物を、前記生殖隆起細胞の培養液に添加
し、さらに約24時間培養した。ここで培養液を前記胎
児血清加DMEM溶液に替え、さらに約24時間培養し
た。
【0031】5)同所性組み換え細胞の選別 前記生殖隆起細胞を含む胎児血清加DMEM溶液をDM
EM溶液に替えた後、その溶液にヒト血清を添加し、約
6時間培養した。この結果、一つのシャーレから2つの
コロニーを得た。ヒト血清は健康な成人から得られたも
のを、加熱処理せずに、約10%の濃度になるように使
用した。これらのコロニーから細胞を採取して、常法に
従いDNAを採取して、以下のプライマーA,Bを用い
てPCR法により同所性組み換えによって導入されたD
NA配列の存在を確認したところ、FT遺伝子からマウ
スGT遺伝子のエクソン6にわたる約4.5kbpのD
NA断片が、エチジウム染色による電気泳動にて確認さ
れた。この結果を図1に示す。図1のレーン1とレーン
2が、それぞれ2種の同所性組み換え体細胞群から抽出
されたDNAに対してプライマーA,BでPCR法を実
施して得たDNA試料であり、レーン4がDNAのサイ
ズを示すマーカー用DNAであり、レーン5及び6は、
外来遺伝子が導入されていない細胞から抽出されたDN
Aに対して同じプライマーによりPCR法を実施して得
たDNA試料である。なお、プライマーAは、センスプ
ライマーであり、導入用コンストラクト内に存在するF
T遺伝子の一部に対応し、プライマーBは、アンチセン
スプライマーであり、前記導入用コンストラクトには存
在せず、染色体上のGT遣伝子のエクソン6の一部に対
応している。従って、同所性組み換えでない場合は、P
CRにおいて所定のDNA断片を産出することがない。
逆に同所性組み換えの場合に限り、かかるDNA断片を
産出することが出来る。
【0032】6)前記同所性組換細胞の桑実胚ないし胚
盤胞への注入 Balb/c系統(白色)の成熟雄マウスと成熟雌とを
交配した後、約3日経過した雌の子宮を生理食塩水にて
環流することにより、桑実胚ないし胚盤胞を採取した。
かかる桑実胚ないし胚盤胞をマイクロインジェクション
法で用いる把持用ピペットで把持し、桑実胚においては
その透明帯の内部、あるいは胚盤胞においてはその胚盤
胞腔の内部へ、前記同所性組み換え細胞コロニーから採
取した細胞を約20個注入した。
【0033】7)前記桑実胚ないし胚盤胞の偽妊娠雌子
宮への移植 前記交配と同じ時期において、あらかじめ精管結紮処理
したBalb/c系統の成熟雄マウスと成熟雌とを交配
した後、約3日経過した雌の子宮内へ、前記桑実胚ない
し胚盤胞を約15個移植した。
【0034】8)キメラマウスの産出 前記移植された偽妊娠マウスから合計8匹の産仔を得
た。そのうち2匹(雄の方をA、雌の方をBと呼んだ)
が、白色の体毛の中に黒色の部分を含んでいた。これを
キメラマウスと呼んだ。
【0035】9)キメラマウスにおけるDNA構築物の
導入の同定 キメラマウスのおける体毛が黒色の部分の皮膚を採取
し、この皮膚からDNAを抽出した。このDNAに対し
て、上述のプライマーA,Bを用いてPCR法を実施し
てDNA試料を得た。このDNA試料につき電気泳動を
行ったところ、同所性組み換えに起因するFT遺伝子か
らGT遺伝子のエクソン6までのひとつづきの約4.5
kbpのDNA断片が確認された。
【図面の簡単な説明】
【図1】選別された同所性組み換え体において、L−G
T/FTが相同組換えによりマウスゲノムに組み込まれ
たことを確認したPCR産物の電気泳動結果(レーン
1、2、4、6、及び6)と、得られたキメラマウスに
おいて同所性組み換え体由来のDNAが存在することを
確認したPCRプロダクトの電気泳動結果(レーン3及
び4)を示す図である。

Claims (1)

    【明細書】 【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】胎仔から採取した発生途上の細胞に外来遺
    伝子を導入し、これらの胎仔細胞から組換え体を選別
    し、選別した組換え体を受精卵に注入し、この受精卵を
    擬妊娠状態の雌の子宮内に移植することを特徴とするト
    ランスジェニック動物の創出方法。
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