JPH11178251A - 電気機械の電機子 - Google Patents

電気機械の電機子

Info

Publication number
JPH11178251A
JPH11178251A JP33960297A JP33960297A JPH11178251A JP H11178251 A JPH11178251 A JP H11178251A JP 33960297 A JP33960297 A JP 33960297A JP 33960297 A JP33960297 A JP 33960297A JP H11178251 A JPH11178251 A JP H11178251A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
core
armature
plate
varnish
iron core
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP33960297A
Other languages
English (en)
Inventor
Takashi Obara
小原  孝志
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Fuji Electric Co Ltd
Original Assignee
Fuji Electric Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Fuji Electric Co Ltd filed Critical Fuji Electric Co Ltd
Priority to JP33960297A priority Critical patent/JPH11178251A/ja
Publication of JPH11178251A publication Critical patent/JPH11178251A/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Iron Core Of Rotating Electric Machines (AREA)
  • Insulation, Fastening Of Motor, Generator Windings (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】磁性薄板材の積層構造を持つ鉄心類の熱伝導性
能が向上された電気機械の電機子を提供する。 【解決手段】電気機械(タービン発電機)1は、従来例
に対し、鉄心板3が用いられた固定子鉄心(段落し部7
7を含む)21と、磁気遮蔽鉄心4,4とを備えた電機
子(固定子)2を有している。鉄心板3の原形材の両板
面に形成されるワニス膜と、磁気遮蔽鉄心4の環状の鉄
心板の両板面に形成されるワニス膜には、粉末状の酸化
チタンを含むワニス膜が用いられている。このワニス膜
には、例えば、樹脂成分をエポキシ樹脂とし、数〔μ
m〕の粒径の粉末状酸化チタンの単体を約90〔重量
%〕の混入率で混入したコアワニスが用いられる。な
お、前記ワニス膜を鉄心板の一方の板面のみに形成する
ことも、前記鉄心類の鉄心板の積層方向に関する熱抵抗
の低減に有効である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、タービン発電機
などの回転電気機械を含む電気機械が備える電機子に係
わり、電機子が有する磁性薄板材の積層構造を持つ鉄心
類の熱伝導性能を向上するべく改良されたその構造に関
する。
【0002】
【従来の技術】電機子を備える各種の電気機械の内で現
時点で最も多用されているものは回転電気機械であり、
この回転電気機械の内でも大容量のものとしてはタービ
ン発電機が著名であるので、電気機械の電機子の従来技
術を、このタービン発電機に代表させて説明する。そう
して、まずは一般例のタービン発電機の冷却構造を主体
とする構成の概要の説明を、図4〜図7を用いて行う。
図4は、一般例のタービン発電機の主要部を模式化して
示すその縦断面図であり、図5は、図4に示したタービ
ン発電機のP矢視図であり、図6は、図5におけるA−
C断面図であり、図7は、図5におけるB−C断面図で
ある。
【0003】図4〜図7において、9は、回転子8と、
固定子7と、ケーシング6と、周知の軸流ファンである
ファン69,69と、冷却装置93とを備えた、一般例
の回転電気機械としての2極のタービン発電機である。
そうして、固定子7がこの事例における電機子である。
回転子8の円形状の外周面と,固定子7の円形状の内周
面との間には、ギャップ91が介在されている。回転子
8は、回転軸部81と、回転軸部81と一体に構成され
ると共に,回転軸部81と同心の円形の外径を持つ回転
子鉄心部82と、2極機に対応した1対の回転子巻線8
5,85と、保持体83,83とを備えており、ケーシ
ング6および図示しない軸受部を介して固定子7に回転
自在に支持されている。
【0004】それぞれの回転子巻線85は、平角状の導
体である平角銅線を巻回し、回転子鉄心部82の外周の
円周方向に沿わせて形成されている図示しない複数のス
ロット(回転子巻線用のコイルを装填するための溝)
に、それぞれのコイルが異なるスロットに装填されるよ
うにして複数のコイルで構成されている。回転子巻線8
5の各コイルのスロットに収納されている部位には、回
転軸部81の軸長方向に分布して多数の通気孔88が形
成されている。
【0005】そうして、上述の構造を持つ1対の回転子
巻線85,85は、回転軸部81の中心軸線X−X(図
4中に1点鎖線で示す)に関して互いに線対称の関係と
なる基本構成とされている。回転子巻線85のスロット
内に収納されないことで回転子鉄心部82の両端部から
突き出される状態に配置される部位である端部89,8
9は、円筒状をした保持体83によってその少なくとも
外周部が保持をされ、回転子8が回転することで発生さ
れる強大な遠心力によって変形をしないよう保護されて
いる。
【0006】それぞれのファン69は、回転子8,固定
子7を冷却する冷媒ガス(例えば、空気)99を回転電
気機械9内に循環させるために設けられており、この事
例の場合には、図示の如く回転子巻線85の両端部89
の回転軸部81の軸長方向に関する外側の位置のそれぞ
れに配設されている。固定子7は、周知のごとく、多数
の薄板材製の鉄心板を積層してなり,回転軸部81と同
心の円形の内径を持つ電機子鉄心(固定子鉄心)71
と、固定子鉄心71に形成されている図示しない複数の
スロット(電機子巻線用のコイルを装填するための溝)
に装填された複数のコイルよりなる電機子巻線(固定子
巻線)72とを備えている。そうして、固定子鉄心71
の鉄心板の積層方向の要所には、冷媒ガス99を通流さ
せるための通気ダクト73の複数個が形成されている。
【0007】ケーシング6は、冷媒ガス99の通流路を
備えているので、次にこれについて説明をする。まず、
この事例の場合には、ケーシング6は、固定子鉄心71
の外周面に外接させて合計4枚の仕切板61,62が固
定子鉄心71の鉄心板の積層方向に間隔を置いて図示の
如くに設けられている。外側の仕切板61と内側の仕切
板62とを接続するようにして複数の円筒状の連絡ダク
ト63が配置されている。仕切板61と仕切板62とに
よって区切られたそれぞれの空間は排気ダクト64,6
4であり、両側を仕切板62で区切られた空間は中央給
気ダクト65である。また、ケーシング6の両端部に
は、それぞれのファン69に対応させて吸気ダクト6
6,66が備えられている。
【0008】冷却装置93は、回転子8,固定子7を冷
却することで高温となった冷媒ガス99から熱を除去す
る周知の冷却器94と、冷却器94と排気ダクト64,
64とを接続する排気風胴95と、冷却器94と吸気ダ
クト66,66とを接続する吸気風胴96,96とを備
えている。一般例のタービン発電機9は上述のごとくに
構成されているので、それぞれのファン69で加圧され
たそれぞれの冷媒ガス99の流れは、まず、保持体83
が配置されている付近で大きく3つに分岐される。すな
わち、それぞれの保持体83の外周部を経て両端部から
ギャップ91に直接流入する冷媒ガス流99Aと、固定
子巻線72の両端部79のそれぞれを冷却した後に連絡
ダクト63を経て中央給気ダクト65に流入する冷媒ガ
ス流99Bと、それぞれの回転軸部81の外周面と保持
体83との間の空間のそれぞれから回転子8に流入する
冷媒ガス流99Cとである。
【0009】冷媒ガス流99Cは、回転子巻線85の端
部89を冷却しつつ回転子鉄心部82の端部に到り、冷
媒ガス流99Cの内の多くの部分はこの端部からスロッ
ト部に流入し、回転子8を冷却した後、通気孔88から
ギャップ91に順次流入する。冷媒ガス流99Bは、中
央給気ダクト65に連通されている通気ダクト73中を
通流し、固定子鉄心71および固定子巻線72を冷却し
つつ固定子鉄心71の鉄心板の積厚方向の中央部からギ
ャップ91に流入する。このようにして、ギャップ91
で合流されたそれぞれの冷媒ガス99は、排気ダクト6
4,64に連通している通気ダクト73中を通流し、固
定子鉄心71および固定子巻線72を冷却しつつ排気ダ
クト64,64に到る。
【0010】排気ダクト64,64に到達した冷媒ガス
99は、回転子8,固定子7を冷却したので比較的に高
温になっているが、この高温の冷媒ガス99は、排気風
胴95を経て冷却器94に流入して除熱をされる。冷却
器94で除熱をされて再び低温に戻った冷媒ガス99
は、吸気風胴96,96を経てファン69に流入される
のである。
【0011】次に、従来例のタービン発電機を図8〜図
11を用いて説明する。なお、図8〜図11を用いて行
う説明においては、図4〜図7に示した一般例のタービ
ン発電機と同一部分には同じ符号を付してその説明を省
略し、かつ、図4〜図7で付した符号については、極力
代表的な符号のみを記すようにしている。ここで、図8
は、図4におけるQ部に対応した部位における従来例の
タービン発電機の要部を示すその部分断面図であり、図
9は、図8に示した固定子鉄心の要部を示す図8におけ
るR矢視図である。図10は、図8,図9に示した鉄心
板の概要を示すその平面図であり、図11は、図10に
示した鉄心板の主な製作工程の概略を説明する説明図で
ある。図11では、鉄心板を図10におけるD−D断面
における一部分として示している。なお、図8には通気
ダクト(例えば、通気ダクト73)とファン(例えば、
ファン69)の図示を省略している。
【0012】図8〜図11において、9Aは、回転子8
と、電機子(固定子)7Aと、ケーシング6と、図示し
ないファン(例えば、ファン69)とを備えた、従来例
の回転電気機械としての2極のタービン発電機である。
固定子7Aは、固定子鉄心71Aと、固定子巻線72
と、押圧部78,78と、磁気遮蔽鉄心5,5とを備え
ている。固定子鉄心71Aは、一般例による固定子鉄心
71と対比すると、その鉄心板74の積層方向の両端部
のそれぞれに段落し部77を有している。固定子鉄心7
1Aに用いられている鉄心板74は、この事例の場合に
は、大容量のタービン発電機9A用であるために大形に
なる固定子鉄心71Aに対応し、その素材の利用度を向
上させるために、周知の扇形鉄心板とされて形成されて
いる。
【0013】この鉄心板74には、固定子巻線72を構
成しているコイル721を装填するためのスロット74
1と、スロット741に両側を挟まれることで形成され
た部位である歯部76とが交互に、しかも図示のように
等ピッチで形成されている。そうして、これ等のスロッ
ト741と歯部76とは、ギャップ91側である固定子
鉄心71Aの内周面71a側に形成されている。鉄心板
74は、磁性薄板材であるその素材に板厚が0.5〔m
m〕,0.65〔mm〕,0.7〔mm〕,1.0〔m
m〕などのけい素鋼板を用い、これをプレス法を用いて
加工することで、図10に示した形状のものを得るよう
にしている。
【0014】しかしながら、このプレス加工において得
られた鉄心板74の原形材74Aには、図11(イ)に
示したように、いわゆる,ばり74bが一方の面に生じ
ることは避けられないことである。このために、ばり取
り機749を用いて原形材74Aからばり74bを除去
する工程が設定されている〔図11(ロ)を参照〕。し
かしながら、ばり74bの除去工程において、原形材7
4Aの素材の表面に形成されている電気絶縁性の皮膜7
4aも共に除去されてしまうことになる。このために、
ばり74bの除去工程を経た原形材74Aの両板面に
は、電気絶縁性のワニス膜75が10〔μm〕前後程度
の厚さに形成をされ、鉄心板74を得るようにしている
〔図11(ハ)を参照〕。
【0015】このワニス膜75は、鉄心板74を積層す
る際に隣接される他の鉄心板74との相互間を電気絶縁
することで、固定子鉄心71Aに生じる渦流損を低減す
る周知の役目を担うものである。このワニス膜75用の
コアワニスには、エポキシ樹脂などの電気絶縁性の樹脂
材よりなる樹脂成分に、ワニス膜75の主として熱伝導
性能を改善するための充填剤を充填されたものが用いら
れている。ワニス膜75は、このコアワニスが原形材7
4Aの両板面に塗布をされ硬化処理が施されることによ
って形成されている。
【0016】従来技術によるワニス膜75用の充填剤に
は、硫化亜鉛,硫化バリウム,酸化亜鉛などの無機質材
の粉末状の単体または混合体が一般に用いられており、
この充填剤を樹脂成分に対して重量比で30〜90
〔%〕程度混入して用いることが一般である。また、充
填剤の粒径は、ワニス膜75の膜厚よりも小さいことが
必要であるので、数〔μm〕程度に設定されている。ワ
ニス膜75の熱伝導率値は、周知のごとく充填剤の混入
割合の増大に応じて増大されるが、充填剤の混入割合の
増大はコアワニスの粘度が増大される関係にもある。し
たがって、充填剤のこの混入割合値は、ワニス膜75の
熱伝導率値,コアワニス塗布工程での作業性などを勘案
して設定されることが一般である。
【0017】ところで、タービン発電機9Aが進相運転
をされる場合の電機子電流(固定子電流)による電機子
反作用は、周知のごとくに、回転子8によって生成され
た主磁束に対する増磁作用を引き起こす。進相運転時に
おけるこの電機子反作用による増磁作用により、ギャッ
プ91に通流する主磁束である周知のギャップ磁束の密
度が増大されるが、このギャップ磁束密度の増大に伴っ
て、固定子鉄心71Aのギャップ91付近の両端部に形
成される周知のフリンジング磁束の密度も増大される。
【0018】このフリンジング磁束は、鉄心板74の板
面にほぼ垂直な状態として固定子鉄心71Aに流出入さ
れる成分を多く含む磁束であるので、進相運転時には、
固定子鉄心71Aの端部に位置する鉄心板74の磁束密
度が増大すると共に、その渦流損の割合が増大する。す
なわち、タービン発電機9Aの進相運転時には、固定子
鉄心71Aの端部に高い温度上昇が生じる。このことに
対処するために設置されているのが、段落し部77,7
7である。
【0019】この両段落し部77は、この事例の場合に
は、図8,図9に示したように、固定子鉄心71Aの鉄
心板74の積層方向の端末部に近い部位ほど、電機子鉄
心71Aの内径が徐々にしかも順次に増大されて形成さ
れた、その内径寸法が互いに異なる4個のブロックで構
成されている。また、鉄心板74から段落し部77を説
明すると、段落し部77の各ブロックに用いられる鉄心
板74は、固定子鉄心71Aの内周面71a側である歯
部76の先端を順次短縮をすることで形成されている。
この歯部76の先端の短縮は、例えば、プレス切断によ
って行われる。
【0020】このような段落し部77を設けることによ
り、固定子鉄心71Aの両端部に対応する部位における
ギャップ磁束密度が低減をされるので、進相運転時にお
ける固定子鉄心71Aの端部における温度上昇を抑制す
ることができている。なお、段落し部77の歯部76に
は、フリンジング磁束による渦流損をさらに低減するた
めに、必要に応じてスリット76aが形成されている
(図9を参照)。
【0021】そうして固定子鉄心71Aは、段落し部7
7,77も含めて、鉄心板74の端末部のそれぞれに備
えられた押圧部78,78を介して、図示しない締付用
ボルトによって鉄心板74の積層方向に高い面圧によっ
て締付けられる。これによって、固定子鉄心71Aは、
長期間にわたって、その積厚寸法が安定に保持されるよ
うに構成されているのである。これ等の押圧部78は、
この事例の場合には、鋼材などの磁性金属材で作製され
た環状のプレスリング781と、非磁性金属材製の板材
で作製されて,プレスリング781の固定子鉄心71A
側の側面に溶接法などによって固着された複数のフィン
ガ782とを有している。
【0022】それぞれのフィンガ782は、固定子鉄心
71Aの歯部76と対峙する部位に、スリット76aが
形成されている場合にはこれを避けて配設されている。
固定子鉄心71Aは、フィンガ782によってその歯部
76を加圧されることで、歯部76に発生し易い経年的
な寸法の緩みに対処している。なお、フィンガ782
は、前記対処のために、その先端部に固定子鉄心71A
側に僅かに(例えば、1〔mm〕程度)出っ張る図示し
ない爪部を形成する場合もある。なおまた、中容量機な
どの場合には、プレスリング781とフィンガ782と
を別部材とはせず、プレスリング781の内径側にフィ
ンガ状の部分を一体に形成した押圧部の事例も知られて
いる。
【0023】固定子巻線72は、この事例の場合には、
コイル721に周知の転位コイル(ギッターコイル)が
用いられている。そうして、コイル721は、図示しな
いその素線として素線絶縁が施された周知の平角銅線を
用いることで形成されている。このコイル721のコイ
ル辺は、周知の対地絶縁層(主絶縁層)などが施された
うえで、前記スロット741に、周知の2層巻きとされ
てそれぞれ装填されている。
【0024】コイル721のコイル端は、固定子巻線7
2の端部79において、タービン発電機9Aの設計仕様
に合わせて互いに接続されている。ところで、固定子巻
線72の端部79においても、固定子電流によって磁束
が発生する。タービン発電機の分野などでは、端部79
におけるこの磁束は、コイル721のコイル端を連ねる
ことで環状に形成されていると見なされる等価的な導体
中を通流する電流によって生じる起磁力に基づくものと
して取り扱われている。
【0025】そうして、この等価的な環状導体は、端部
79の高さ(図8にHで示す)に関して、固定子鉄心7
1Aの端部からほぼ(2/3)Hの位置の端部79中に
存在するとされている。この等価的な環状導体中を通流
する電流は、リングカレントと呼ばれている。すなわ
ち、端部79における固定子電流によって生成された磁
束を、リングカレントによって生成された磁束として便
宜的に取り扱うのである。このリングカレントによる磁
束がこのまま存在していると、この磁束がプレスリング
781に作用してプレスリング781に損失が生じるこ
とになる。この損失は、タービン発電機9Aの進相運転
時には増大され、特に、プレスリング781の内周部ほ
どその増大程度は大きくなる。これに対処するために、
タービン発電機9Aにはプレスリング781に作用する
前記磁束を抑制する措置が施されている。これが、磁気
遮蔽鉄心5である。
【0026】磁気遮蔽鉄心5は、素材には鉄心板74に
用いられているものと同様のけい素鋼板が用いられ、こ
れを扇形状に形成したものを鉄心板として用いている。
この鉄心板を両端部における相互間の間隙が極力狭くな
るようにして円環状に並べたものを1層分とし、この鉄
心板の層の各層を、扇形状の前記鉄心板が互いに半重ね
されるようにして複数層を積層することで円筒状とされ
て作製されている。また、磁気遮蔽鉄心5用のそれぞれ
の鉄心板の両板面にもワニス膜75が形成されている。
【0027】この磁気遮蔽鉄心5は、この事例の場合に
は、固定子鉄心71A側とは反対側のプレスリング78
1の側面に直接に取り付けられている。磁気遮蔽鉄心5
のプレスリング781に対する電気絶縁層は、ワニス膜
75がその役目を果たしている。磁気遮蔽鉄心5が前記
のような構造を持っているので、磁気遮蔽鉄心5はリン
グカレントによって生成された磁束の内のプレスリング
781を通ろうとする分をバイパスすると共に、リング
カレントによって生成された磁束の内の磁気遮蔽鉄心5
と鎖交する磁束を打ち消す役目を果たしている。すなわ
ち、磁気遮蔽鉄心5は、リングカレントによって生成さ
れた鎖交磁束に対して短絡コイルとしても作用して、レ
ンツの法則によってこの鎖交された磁束を打ち消すよう
な電流な通流させて、この鎖交磁束を抑制する役目も果
しているのである。
【0028】その際、磁気遮蔽鉄心5を鉄心板を積層す
る構造にしたのは、磁気遮蔽鉄心5を通る磁束による渦
流損の低減と、磁気遮蔽鉄心5に通流する電流に表皮効
果が現れないようにするためである。そうして、磁気遮
蔽鉄心5がプレスリング781の側面に配設されている
ことで、リングカレントによる磁束がプレスリング78
1に作用する問題が解消されるのである。この磁気遮蔽
鉄心5には、鎖交磁束に対応する電圧Vが発生し、この
電圧Vによって前記鉄心板の積層体として構成された磁
気遮蔽鉄心5には、磁気遮蔽鉄心5の円環状のループが
持つインピーダンスZによる電流が流れることで、
「(V/Z)2 ×R(磁気遮蔽鉄心5の円環状のループ
が持つ電気抵抗)」のジュール損が発生する。
【0029】そうして、タービン発電機9Aの進相運転
時における前述フリンジング磁束密度の増大は、固定子
巻線72の端部79における磁束分布にも影響を与える
ので、進相運転時には磁気遮蔽鉄心5と鎖交する磁束量
は増大する。これによって、磁気遮蔽鉄心5に発生する
損失も増大をする。次に、段落し部77と磁気遮蔽鉄心
5の冷却構造について説明する。まず、段落し部77が
持つ各ブロックには、段落し部77を除く固定子鉄心7
1Aに形成されている通気ダクト(例えば、通気ダクト
73)と同様構造の図示しない通気ダクトが形成されて
いる。これ等の通気ダクトには、図示しない冷媒ガス
(例えば、冷媒ガス99)が通流されることで、段落し
部77は冷却されている。
【0030】また、磁気遮蔽鉄心5には、図示しない複
数の貫通孔が、鉄心板を積層方向に貫通して形成されて
おり、さらに、プレスリング781にも、磁気遮蔽鉄心
5が持つ前記貫通孔と対向する部位に、複数の貫通孔が
形成されている。そうして、これ等の両貫通孔を貫流す
る経路で前記冷媒ガスの一部が、例えば、固定子巻線7
2の端部79→磁気遮蔽鉄心5の貫通孔→プレスリング
781の貫通孔→フィンガ782によって形成された空
間→固定子鉄心71Aの背面、による経路で通流するこ
とで、磁気遮蔽鉄心5は冷却されている。
【0031】
【発明が解決しようとする課題】前述した従来技術によ
るタービン発電機9Aの電機子(固定子)7Aにおいて
は、段落し部77を含む電機子鉄心(固定子鉄心)71
Aおよび磁気遮蔽鉄心5の温度上昇の抑制をある程度は
達成することが出来ているが、まだ次記する問題があ
り、その解決が課題となっている。すなわち、 タービン発電機9Aの固定子7Aでは、固定子巻線7
2のコイル721の素線で発生した周知の損失に基づく
熱流は、主絶縁層などを貫通して通流して固定子鉄心7
1Aに到り、固定子鉄心71A中を鉄心板74の積層方
向に流れたうえで、通気ダクト(例えば、通気ダクト7
3)内を通流する冷媒ガス(例えば、冷媒ガス99)に
よって収集されている。そうして、固定子鉄心71Aを
通流する前記熱流のほとんどは、コイル721のコイル
辺と対向し合う面積が広い歯部76中を通流することに
なるので、固定子鉄心71Aにおいての温度分布は、歯
部76で相対的に高く、固定子鉄心71Aの外周部分
(ヨーク部と呼ばれている)で相対的に低い分布となっ
ている。
【0032】発明者らは、タービン発電機9Aにおける
各部の温度値およびその温度差値として、図12に例示
する調査例を得ている。ここで図12は、従来例のター
ビン発電機の温度に関する調査例を説明する説明図で、
(a)は、各部の温度値に関する説明図であり、(b)
は、各部の温度差値に関する説明図である。なお、図1
2(b)は、温度差に関与する部位に関して図12
(a)と関連付けて示している。また、図12に記載さ
れている測温抵抗体は、温度計測用の周知の測温抵抗体
であり、この事例の場合には、2層巻きとされてスロッ
ト741に装填されているコイル721のコイル辺(主
絶縁層などが施されている)の、上側層のコイル辺と下
側層のコイル辺の間に介挿して配設されている。
【0033】なおまた、図12の調査例を得たタービン
発電機9Aの鉄心板74には、樹脂成分をエポキシ樹脂
とし、充填剤を粒径が数〔μm〕程度の硫化亜鉛粉末と
硫化バリウム粉末との混合体とし、この充填剤を約90
〔重量%〕の混入率で樹脂成分に混入したコアワニスが
用いられている。このコアワニスを用いたワニス膜75
の熱伝導率は、約0.6〔W/mK〕である。
【0034】図12を視察することにより、鉄心部温度
差ΔTF はコイル部温度差ΔTC よりも小さいことが分
かる。これは、前記熱流に関しては、固定子鉄心71A
における熱流の通過面積が広いことで、その熱抵抗が小
さいことを意味している。しかしながら、一般に電気機
械の寿命は、周知の如くに電機子巻線などの電気絶縁用
として用いられている電気絶縁材の耐熱寿命特性によっ
て決められるものであるので、タービン発電機9Aの固
定子7Aにおいての冷却すべき主対象はコイル721で
ある。この観点からすると、コイル部温度差ΔTC のほ
ぼ1/2の値を持つ鉄心内温度差ΔTF の値は、大き過
ぎる値であることになる。
【0035】ところで、コイル721の素線で発生した
損失に基づく熱流は、前述したように固定子鉄心71A
中を鉄心板74の積層方向に通流するものであり、鉄心
板74の板厚方向の熱伝導率値は周知のように40〔W
/mK〕程度であることにより、鉄心部温度差ΔTF
はワニス膜75の熱伝導率値が大きく関わっていること
になる。この鉄心板用のワニス膜の熱伝導率を向上させ
るためには、コアワニスに混入する充填剤に、従来品に
用いられている前記無機質材よりも高い熱伝導率値を持
つ無機質材を採用することが考えられる。工業的に採用
可能な高い熱伝導率値を持つ無機質材としては周知のア
ルミナが著名であるが、アルミナが高い硬度を持ってい
ることがその採用を困難にしている。
【0036】すなわち、アルミナ粉末を混入したコアワ
ニスを塗布した鉄心板を用いた場合には、前述したとこ
ろにより鉄心板が高い面圧で締め付けられるものである
ために、この鉄心板の締め付け時などに、鉄心板やワニ
ス膜がアルミナ粉末によって傷められてしまうのであ
る。したがって、アルミナ粉末を混入したコアワニス
は、特殊な場合を除き通常は採用されないのである。
【0037】また、発明者らは、タービン発電機9A
に対する測定例において、冷媒ガス用の冷却器(例え
ば、冷却器94)から流れ出た直後の冷媒ガスに対する
温度上昇値として、段落し部77を除く部位の鉄心部の
温度上昇値が20〔K〕である場合に、段落し部77の
鉄心部の最高の温度上昇値は約30〔K〕,磁気遮蔽鉄
心5の最高温度部の最高の温度上昇値は約60〔K〕で
あるとのデータを得ている。この結果は、段落し部77
および磁気遮蔽鉄心5が共に、その温度上昇がまだ過大
であることを意味している。
【0038】この発明は、前述の従来技術の問題点に鑑
みなされたものであり、その目的は、磁性薄板材の積層
構造を持つ鉄心類の熱伝導性能が向上された電気機械の
電機子を提供することにある。
【0039】
【課題を解決するための手段】この発明では前述の目的
は、 1)板面にワニス膜が形成された磁性薄板材製の鉄心板
の多数を積層してなる電機子鉄心と、電機子鉄心が有す
る複数のスロットにそれぞれ装填された複数のコイルか
らなる電機子巻線とを備える電気機械の電機子におい
て、電機子鉄心の鉄心板に形成されるワニス膜に用いら
れるコアワニスは、その充填剤に粉末状の酸化チタンが
用いられてなる構成とすること、または、 2)板面にワニス膜が形成された磁性薄板材製の鉄心板
の多数を積層すると共に,その積層方向に関する端部に
段落し部が形成されてなる円筒形の電機子鉄心と、電機
子鉄心がその内周側に有する複数のスロットにそれぞれ
装填された複数のコイルからなる電機子巻線とを備え、
前記段落し部は、鉄心板の積層方向の端末部に近い部位
ほど電機子鉄心の内径が徐々に増大されるようにして形
成されてなる電気機械の電機子において、電機子鉄心の
少なくとも前記段落し部の鉄心板に形成されるワニス膜
に用いられるコアワニスは、その充填剤に粉末状の酸化
チタンが用いられてなる構成とすること、または、 3)磁性薄板材製の鉄心板の多数を積層してなる円筒形
の電機子鉄心と、電機子鉄心がその内周側に有する複数
のスロットにそれぞれ装填された複数のコイルからなる
電機子巻線と、電機子電流により電機子巻線の端部から
発生された磁束の影響を低減するために電機子巻線の端
部に近接されて配設されて,板面にワニス膜が形成され
た磁性薄板材製の鉄心板の多数を積層してなる環状の磁
気遮蔽鉄心とを備える電気機械の電機子において、磁気
遮蔽鉄心が有する鉄心板に形成されるワニス膜に用いら
れるコアワニスは、その充填剤に粉末状の酸化チタンが
用いられてなる構成とすること、または、 4)前記1項から3項までのいずれかに記載の手段にお
いて、磁性薄板材製の鉄心板は、その両板面の凹凸度が
ワニス膜の膜厚よりも小さい程度に加工を施されたうえ
で、充填剤に粉末状の酸化チタンが用いられたコアワニ
スによるワニス膜がその一方の板面のみに形成されてな
る構成とすること、により達成される。
【0040】
【発明の実施の形態】以下この発明の実施の形態を図面
を参照して詳細に説明する。なお、この項の以下の説明
においては、図4〜図7に示した一般例の電気機械、お
よび、図8〜図12に示した従来例の電気機械と同一部
分には同じ符号を付し、その説明を省略する。また、こ
の項の以後の説明に用いる図中には、図4〜図12で付
した符号については、極力代表的な符号のみを記すよう
にしている。
【0041】図1は、この発明の実施の形態の一例によ
る電機子を備えたタービン発電機の要部を図4における
Q部に対応した部位において示すその部分断面図であ
り、図2は、図1に示した鉄心板の概要を示す図面で、
(a)はその平面図であり、(b)は図2(a)のE−
E断面における一部分を示すその断面図である。なお、
図1には通気ダクト(例えば、通気ダクト73)とファ
ン(例えば、ファン69)の図示を省略している。
【0042】図1,図2において、1は、図8〜図12
に示した従来例によるタービン発電機9Aに対して、電
機子(固定子)7Aに替えて固定子2を用いるようにし
たタービン発電機である。固定子2は、鉄心板3が用い
られた固定子鉄心21と、固定子巻線72と、押圧部7
8,78と、磁気遮蔽鉄心4,4とを備えている。固定
子鉄心21を従来例による固定子鉄心71Aと対比する
と、段落し部77を含めて、鉄心板74に替えて鉄心板
3が用いらていることのみが異なっている。鉄心板3
は、原形材74Aの両板面に形成されるワニス膜とし
て、この発明になる特徴的な構成体として、粉末状の酸
化チタンを含むワニス膜31が用いられている。
【0043】すなわち、ワニス膜31に用いられるコア
ワニスには、エポキシ樹脂などの電気絶縁性の樹脂材よ
りなる樹脂成分に対して混入される充填剤として、酸化
チタンを含む粉末状無機質材が用いられている。この酸
化チタンは、アルミナと対比すると、その熱伝導度はア
ルミナの約1.7倍であり、その硬度はアルミナの約半
分であるので、高い面圧によって締め付けられる電機子
の鉄心板に用いられるワニス膜の充填剤として好適な材
料である。この酸化チタンは、二酸化チタンとも呼ば
れ、天然には、それぞれ結晶構造の異なる鉱物として幾
つかの形のものが産出されるが、工業的には、それ等の
内のルチル形とアナタース形とが主とし用いられてい
る。
【0044】酸化チタンは、磁器の原料になる外、粉末
状化されたものはチタンホワイトとも呼ばれて、塗料,
化粧品,樹脂材,ゴムや紙などの顔料、さらには、医薬
品の保護材や研磨材などとして広く用いられている。ワ
ニス膜31の形成に用いられるコアワニスでは、この酸
化チタンは、従来品のワニス膜75の場合と同様の数
〔μm〕程度の粒径の粉末状とされて、単体または、従
来品に用いられている粉末状の硫化亜鉛,硫化バリウ
ム,酸化亜鉛などとの混合体として用いることができ
る。
【0045】また、酸化チタンを含む充填剤を用いるコ
アワニスでは、充填剤の混入割合は従来品と同等に設定
することができ、コアワニス塗布工程での作業性などを
考慮すると最大の混入割合は、充填剤の樹脂成分に対す
る重量比で示した場合に、従来品と同様の90〔重量
%〕程度である。粉末状の酸化チタンを含むこのコアワ
ニスは、ばり除去工程を経た原形材74Aの両板面に形
成され、電気絶縁性と熱伝導性とを兼備するワニス膜3
1が、従来品と同様にして10〔μm〕前後程度の膜厚
に形成をされ、鉄心板3が得られる。そうして、樹脂成
分をエポキシ樹脂とし、粒径が数〔μm〕程度の粉末状
酸化チタンの単体を約90〔重量%〕の混入率で混入し
たコアワニスが用いられたワニス膜31の熱伝導率は、
約1.0〔W/mK〕である。
【0046】これは、前述した従来品のワニス膜75の
熱伝導率(約0.6〔W/mK〕)に対して約1.7倍
向上されていることになる。熱伝導性能がこのように向
上されたワニス膜31を持つ鉄心板3を用いた固定子2
では、まず、鉄心板3の積層方向に通流する熱流(コイ
ル721の素線で発生した損失に基づく熱流)に対する
熱抵抗が減少されることで、前述の鉄心部温度差ΔTF
が低減され、その分、素線の平均温度TC が低減され
る。これによって、タービン発電機1は、耐熱寿命の延
長,または同一体格のままでその出力を増大することが
できることになる。
【0047】また、ワニス膜31が高い熱伝導度を持つ
ことで、固定子2の場合には、前記熱流の一部は、ワニ
ス膜31を含む鉄心板3を径方向にも流れ、相対的に温
度が低く,かつ熱流に対する通過面積が歯部76よりも
広い前記ヨーク部を介して通気ダクト(例えば、通気ダ
クト73)に到る経路を容易にとれることになる。すな
わち、歯部76を通流する熱流の密度が低減されること
になる。このことによっても、固定子鉄心中を通流する
熱流に関して、固定子鉄心21では、鉄心部温度差ΔT
F および素線の平均温度TC が低減される。そうして、
鉄心部の温度の低減に関する前記作用・効果は、段落し
部77の鉄心部にもそのまま働くことになるので、段落
し部77の鉄心部の温度低減も同時に得られることにな
る。
【0048】磁気遮蔽鉄心4は、従来例による磁気遮蔽
鉄心5と対比すると、用いられる鉄心板の両板面に形成
されるワニス膜に、前記ワニス膜31が用いられること
のみが異なっている。したがって、磁気遮蔽鉄心4は、
従来例による磁気遮蔽鉄心5が持つ電磁気的な機能をそ
のまま維持しながら、ワニス膜31が持つ前記作用・効
果によって、その温度を低減することができることにな
る。
【0049】次に、図3を用いて、この発明の実施の形
態の異なる例による電機子について説明する。ここで、
図3は、この発明の実施の形態の異なる例による電機子
の固定子鉄心に用いられる鉄心板の概要を示す図面で、
(a)はその平面図であり、(b)は図3(a)のF−
F断面における一部分を示すその断面図である。図3に
おいて、3Aは、図2に示したこの発明になる鉄心板3
に対して、鉄心板の原形材74Aに替えて原形材32を
用いると共に、前記ワニス膜31を原形材32の一方の
板面にのみ形成するようにした鉄心板である。原形材3
2は、原形材74Aと対比すると、原形材74Aの場合
の板面の凹凸度が7〜10〔μm〕程度であるのに対し
て、数〔μm〕(2〜3〔μm〕)程度またはそれ以下
の小さい凹凸度を持つことが特徴的な構成である。とこ
ろで、原形材74Aの場合の前記ばり取り機749を用
いて行うばり除去作業は原則的に1回であり、前記ばり
74bが持つ突起状部分の一部が除去しきれずに残るこ
とで、前記の大きな凹凸度を持つことになっている。
【0050】ワニス膜31の膜厚が10〔μm〕前後程
度であるので、互いに隣接する鉄心板の板面に共にワニ
ス膜31が形成されていないと、固定子鉄心21が鉄心
板3の積層方向に高い面圧によって締付けられる際に、
突起状部分が隣接する鉄心板に接触することになるの
で、渦流損の増加などを招く恐れがあったのである。原
形材32の場合には、これに対して、ばり除去作業を入
念に行うことで、前記の小さい凹凸度になし得ている。
原形材32では、ワニス膜31(膜厚は10〔μm〕前
後程度)を一方の板面のみに形成するようにしても、固
定子鉄心の締付時に突起状部分が隣接する鉄心板に接触
することは起こらないのである。
【0051】鉄心板3Aを用いた固定子鉄心では、鉄心
板3Aの積層方向に存在するワニス膜31の部分の割合
が、鉄心板3を用いる場合に対してほぼ半減されること
で、鉄心板3Aの積層方向に通流する熱流(コイル72
1の素線で発生した損失に基づく熱流)に対する熱抵抗
は、前述固定子2を用いた場合よりも減少される。ま
た、ワニス膜31を原形材32の一方の板面だけに形成
することで生み出されたスペースに鉄心板3Aを配設す
れば、固定子鉄心の磁束密度を低減することができて、
固定子鉄心で発生する損失が低減される。
【0052】これ等が総合されることによって、前述の
鉄心部温度差ΔTF がさらに低減され、その分、素線の
平均温度TC がさらに低減されることになる。なお、ワ
ニス膜31を原形材32の一方の板面にのみ形成するこ
とによる作用・効果は、段落し部(例えば、段落し部7
7)や磁気遮蔽鉄心(例えば、磁気遮蔽鉄心4)に対し
適用した場合でも同等の作用・効果をもたらすことにな
るが、重複を避けてその説明を省略する。
【0053】前述の説明では、この発明になるタービン
発電機は、段落し部を除く固定子鉄心,段落し部および
磁気遮蔽鉄心の3者に対して、コアワニスに粉末状の酸
化チタンが充填されたワニス膜31が用いられるとして
きたが、これに限定されるものではなく、段落し部や磁
気遮蔽鉄心の温度上昇は、前述したごとく段落し部を除
く固定子鉄心の温度上昇よりも高いので、段落し部と磁
気遮蔽鉄心の両方あるいはいずれか一方のみにワニス膜
31を適用することも極めて有効である。
【0054】また、前述の説明では、この発明になるタ
ービン発電機は、固定子2などは通気ダクトを利用して
冷媒ガスによって冷却されるとしてきたが、これに限定
されるものではなく、例えば、周知のバルブ水車発電装
置のように直接水冷されるケーシング6などを用い得る
場合には、固定子で発生した損失による熱流を固定子鉄
心用の鉄心板を径方向に通流させてケーシング6を介し
て冷媒に放散させることができる。その場合に、けい素
鋼板の熱伝導率値は周知のようにその板厚方向では40
〔W/mK〕程度であるのに対して、けい素鋼板の板面
方向(けい素鋼板が圧延加工を受けた際の圧延方向に沿
っている)では約18〔W/mK〕であるので、この発
明になる前記ワニス膜31を用いることは、鉄心板の径
方向の熱抵抗を低減できることで極めて有効である。
【0055】なおまた、前述の説明では、この発明にな
る電気機械の電機子は、回転電気機械であるタービン発
電機の固定子に対して適用されるとしてきたが、これに
限定されるものではなく、磁性薄板材製の鉄心板の多数
を積層してなる構造を持つ鉄心を備えたものであるなら
ば、例えば、各種の発電機や電動機の電機子、さらに
は、リニア形の電気機械の電機子などに適用しても、タ
ービン発電機の固定子において得られる前述作用・効果
と同様の作用・効果を得ることができる。
【0056】
【発明の効果】この発明になる電気機械の電機子におい
ては、前記課題を解決するための手段の項で述べた構成
とすることにより、次記する効果を奏する。 前記課題を解決するための手段の項の第(1)項によ
る構成とすることにより、磁性薄板材製の鉄心板の多数
を積層してなる電機子鉄心の積層方向および板面方向の
熱抵抗を低減できることで、電機子鉄心および電機子巻
線の温度を低減することが可能となり、電気機械の耐熱
寿命の延長,または同一体格のままでの出力の増大を図
ることが可能になる。また、 前記課題を解決するための手段の項の第(2)項によ
る構成とすることにより、磁性薄板材製の鉄心板の多数
を積層してなる段落し部の積層方向および板面方向の熱
抵抗を低減できることで、段落し部および段落し部に隣
接する電機子巻線の温度を低減することが可能となり、
電気機械の耐熱寿命の延長,または同一体格のままでの
出力の増大を図ることが可能になる。また、 前記課題を解決するための手段の項の第(3)項によ
る構成とすることにより、磁性薄板材製の鉄心板の多数
を積層してなる磁気遮蔽鉄心の積層方向および板面方向
の熱抵抗を低減できることで、磁気遮蔽鉄心の温度の低
減が可能になる。さらにまた、 前記課題を解決するための手段の項の第(4)項によ
る構成とすることにより、磁性薄板材製の鉄心板の積層
方向の熱抵抗をさらに低減できることで、前記〜項
による効果をさらに高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態の一例による電機子を備
えたタービン発電機の要部を図4におけるQ部に対応し
た部位において示すその部分断面図
【図2】図1に示した鉄心板の概要を示す図面で、
(a)はその平面図、(b)は図2(a)のE−E断面
における一部分を示すその断面図
【図3】この発明の実施の形態の異なる例による電機子
の固定子鉄心に用いられる鉄心板の概要を示す図面で、
(a)はその平面図、(b)は図3(a)のF−F断面
における一部分を示すその断面図
【図4】一般例のタービン発電機の主要部を模式化して
示すその縦断面図
【図5】図4に示したタービン発電機のP矢視図
【図6】図5におけるA−C断面図
【図7】図5におけるB−C断面図
【図8】図4におけるQ部に対応した部位における従来
例のタービン発電機の要部を示すその部分断面図
【図9】図8に示した固定子鉄心の要部を示す図8にお
けるR矢視図
【図10】図8,図9に示した鉄心板の概要を示すその
平面図
【図11】図10に示した鉄心板の主な製作工程の概略
を説明する説明図
【図12】従来例のタービン発電機の温度に関する調査
例を説明する説明図で、(a)は、各部の温度値に関す
る説明図、(b)は、各部の温度差値に関する説明図
【符号の説明】
1 電気機械(タービン発電機) 2 電機子(固定子) 21 固定子鉄心 3 鉄心板 4 磁気遮蔽鉄心 77 段落し部

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】板面にワニス膜が形成された磁性薄板材製
    の鉄心板の多数を積層してなる電機子鉄心と、電機子鉄
    心が有する複数のスロットにそれぞれ装填された複数の
    コイルからなる電機子巻線とを備える電気機械の電機子
    において、 電機子鉄心の鉄心板に形成されるワニス膜に用いられる
    コアワニスは、その充填剤に粉末状の酸化チタンが用い
    られてなることを特徴とする電気機械の電機子。
  2. 【請求項2】板面にワニス膜が形成された磁性薄板材製
    の鉄心板の多数を積層すると共に,その積層方向に関す
    る端部に段落し部が形成されてなる円筒形の電機子鉄心
    と、電機子鉄心がその内周側に有する複数のスロットに
    それぞれ装填された複数のコイルからなる電機子巻線と
    を備え、前記段落し部は、鉄心板の積層方向の端末部に
    近い部位ほど電機子鉄心の内径が徐々に増大されるよう
    にして形成されてなる電気機械の電機子において、 電機子鉄心の少なくとも前記段落し部の鉄心板に形成さ
    れるワニス膜に用いられるコアワニスは、その充填剤に
    粉末状の酸化チタンが用いられてなることを特徴とする
    電気機械の電機子。
  3. 【請求項3】磁性薄板材製の鉄心板の多数を積層してな
    る円筒形の電機子鉄心と、電機子鉄心がその内周側に有
    する複数のスロットにそれぞれ装填された複数のコイル
    からなる電機子巻線と、電機子電流により電機子巻線の
    端部から発生された磁束の影響を低減するために電機子
    巻線の端部に近接されて配設されて,板面にワニス膜が
    形成された磁性薄板材製の鉄心板の多数を積層してなる
    環状の磁気遮蔽鉄心とを備える電気機械の電機子におい
    て、 磁気遮蔽鉄心が有する鉄心板に形成されるワニス膜に用
    いられるコアワニスは、その充填剤に粉末状の酸化チタ
    ンが用いられてなることを特徴とする電気機械の電機
    子。
  4. 【請求項4】請求項1から3までのいずれかに記載の電
    気機械の電機子において、 磁性薄板材製の鉄心板は、その両板面の凹凸度がワニス
    膜の膜厚よりも小さい程度に加工を施されたうえで、充
    填剤に粉末状の酸化チタンが用いられたコアワニスによ
    るワニス膜がその一方の板面のみに形成されてなること
    を特徴とする電気機械の電機子。
JP33960297A 1997-12-10 1997-12-10 電気機械の電機子 Withdrawn JPH11178251A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP33960297A JPH11178251A (ja) 1997-12-10 1997-12-10 電気機械の電機子

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP33960297A JPH11178251A (ja) 1997-12-10 1997-12-10 電気機械の電機子

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH11178251A true JPH11178251A (ja) 1999-07-02

Family

ID=18329047

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP33960297A Withdrawn JPH11178251A (ja) 1997-12-10 1997-12-10 電気機械の電機子

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH11178251A (ja)

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007312475A (ja) * 2006-05-17 2007-11-29 Mitsubishi Electric Corp 回転電機
JP2011097737A (ja) * 2009-10-29 2011-05-12 Mitsubishi Electric Corp 回転電機、発電機、電動機
WO2011121982A1 (ja) * 2010-03-31 2011-10-06 ダイキン工業株式会社 回転電気機械
CN110504095A (zh) * 2019-08-27 2019-11-26 陆川县恒润电子厂 一种同方向弯脚色环电感器及其工艺方法

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007312475A (ja) * 2006-05-17 2007-11-29 Mitsubishi Electric Corp 回転電機
JP2011097737A (ja) * 2009-10-29 2011-05-12 Mitsubishi Electric Corp 回転電機、発電機、電動機
WO2011121982A1 (ja) * 2010-03-31 2011-10-06 ダイキン工業株式会社 回転電気機械
CN110504095A (zh) * 2019-08-27 2019-11-26 陆川县恒润电子厂 一种同方向弯脚色环电感器及其工艺方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
CN108352751B (zh) 电机
EP1320169B1 (en) AC generator stator for vehicle
US6191508B1 (en) Stator insulation structure of rotary electric machine
JP4699961B2 (ja) 回転電機用コイルとその製造方法、並びに回転電機とその製造方法
US7989996B2 (en) Five-phase generator
US6690099B2 (en) Automotive alternator
US5886443A (en) Spark suppression of induction type rotors of dynamoelectric machines
WO2020054233A1 (ja) 回転電機の固定子および該固定子を具備する回転電機
US20140327330A1 (en) Dynamoelectric machine having enhanced rotor ventilation
TW201547157A (zh) 永磁式旋轉電機
US20060145558A1 (en) Alternator for a vehicle
JPH11178251A (ja) 電気機械の電機子
KR100453492B1 (ko) 차량용 교류발전기
JP2003333772A (ja) 鉄−アルミニウム合金の層板を含むステータコア及びその使用方法
JP2010017056A (ja) 電動工具
WO2022259839A1 (ja) 回転電機
JP3518128B2 (ja) 回転電機の固定子巻線
WO2023106338A1 (ja) モータ
EP1009090A1 (en) Spark suppresion of induction type rotors
JP2018196173A (ja) 固定子およびそれを用いた回転電機
JP5794417B2 (ja) ディスクモータ及びそれを備えた電動作業機
JP3656381B2 (ja) 回転電気機械の円筒形回転子
WO2022195916A1 (ja) 固定子及びこれを有する回転電機
US20240195253A1 (en) Stator of an electric axial flux machine, and axial flux machine
JP2017118648A (ja) 掃除機用電動機

Legal Events

Date Code Title Description
A977 Report on retrieval

Effective date: 20040601

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

A131 Notification of reasons for refusal

Effective date: 20040608

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

A761 Written withdrawal of application

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A761

Effective date: 20040810