JPH111625A - 水溶性錯体及びそれを利用した造影剤 - Google Patents

水溶性錯体及びそれを利用した造影剤

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JPH111625A
JPH111625A JP9154916A JP15491697A JPH111625A JP H111625 A JPH111625 A JP H111625A JP 9154916 A JP9154916 A JP 9154916A JP 15491697 A JP15491697 A JP 15491697A JP H111625 A JPH111625 A JP H111625A
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water
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ligand
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JP9154916A
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Manabu Kawa
学 加和
Tetsuo Hayase
哲郎 早瀬
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Mitsubishi Chemical Corp
Original Assignee
Mitsubishi Chemical Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 血流中に金属元素を分子レベルで極めて安定
に分散させることにより、安全性に優れた水溶性の金属
陽イオン錯体を提供する。また、安全性に加え、強いM
RI信号強度を得ることができ、かつ、低粘度であるた
め、使用時の便利性にも優れた造影剤を提供する。 【解決手段】 金属陽イオンと、β−ジケトネート基を
有する配位子を構成成分とする水溶性錯体及びこれを利
用した造影剤。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、金属陽イオンとβ
−ジケトネート基を有する配位子からなる水溶性錯体に
関する。本発明の水溶性錯体は、血流中に金属元素を分
子レベルで安定に分散させる手段を与えるものであり、
エックス線造影技術、又は核磁気共鳴現象を利用した造
影技術において好適に利用される。本発明の水溶性錯体
は特に超分岐分子構造を有する配位子を使用した場合、
従来の錯体に比べ錯体の熱運動性、特に回転運動性が非
常に抑制されたMRI技術に好適な造影剤に適応可能で
ある。
【0002】
【従来の技術】エックス線造影技術(以下XRI技術と
略)は、エックス線吸収能の大きい原子番号の高い元素
を何らかの方法で生体内に注入し、次いでエックス線の
照射を行うことにより像を得る技術である。また、核磁
気共鳴現象(以下NMR現象と略)を利用した造影技術
(以下MRI技術と略)は、NMR現象を起こす常磁性
化学種(通常はガドリニウム陽イオン等の常磁性遷移元
素陽イオン)を何らかの方法で生体内に注入し、次いで
磁場の印加を行うことにより像を得る技術である。いず
れの場合も、特定の検査部位で良好な造影を行うために
は、血流中、即ち電解質水溶液中にかかる造影化学種を
安定に分散させる技術が必須である。
【0003】初期のXRI技術においては、血液中にヨ
ウ化物イオン(I- )の塩を注入する方法が行われた
が、これを投与された患者にショック症状、疼痛感、あ
るいは甲状腺障害を引き起こす問題があった。こうした
重篤な副作用を緩和する目的で、非イオン性ヨウ素化合
物、例えばヨウ素原子を高濃度で含有する有機化合物に
親水性を付与したものが現在広く用いられている。しか
し、かかる有機ヨウ素化合物においても、依然としてヨ
ウ素に起因すると考えられる副作用が報告されており、
新しいXRI用造影剤の開発が望まれている。
【0004】MRI技術においては、造影化学種として
3価のガドリニウム陽イオン(Gd 3+)を安定に血流中
に分散させる方法が種々提案されている。例えば、エチ
レンジアミン4酢酸(通称EDTA)、ジエチレントリ
アミン5酢酸(通称DTPA)、あるいは1,4,7,
10−トリ(アセティックアシッド)テトラアザシクロ
ドデカン(通称DOTA)等のポリアミノカルボン酸類
を配位子とする錯体が実用化されている。かかる錯体
は、該陽イオンの3価の陽電荷を中和するために3つの
カルボキシル基がカルボキシレート陰イオン(CO
- )となり、配位子中の残りのカルボキシル基の酸素
原子とアミノ基の窒素原子が該陽イオンの残った配位座
に配位した構造を有するが、錯体の安定性は十分でな
く、遊離した該陽イオンが血流より吸収され骨に沈着す
る等の副作用が知られている。ガドリニウム等のランタ
ノイドの化学的性質は、一般にマグネシウムやカルシウ
ム等のアルカリ土類元素のそれに類似しているものの、
その毒性や安全性は十分に把握されているとは言えな
い。例えば、谷本;日本放射線技術学会雑誌,53巻3
号,386頁(1997)にも指摘されているように遊
離Gd3+の潜在的毒性を抑制することはMRI技術にお
ける重要な課題である。
【0005】一方、MRI技術における造影効果を支配
する1つの因子として、例えばToth,E.et a
l.;Chem.Eur.J.,2巻12号,1607
頁(1996)に詳述されているように、錯体のRot
ational correlation time
(τR と略)が挙げられる。これは、定性的には錯体の
回転運動性の尺度であり、これが大きいこと、即ち錯体
が自由に回転運動しにくいことが望ましい。上記文献の
記載のように、該τR 値を大きくする手段として高分子
を配位子に結合することが提案されており、特に効果的
な高分子としてデンドリマーが例示されている。
【0006】デンドリマーとは、例えば、Hawke
r,C.J.et al;J.Chem.Soc.,C
hem.Commun.,1990年,1010頁、T
omalia,D.A.et al;Angew.Ch
em.Int.Ed.Engl.,29巻,138頁
(1990)、Frechet,J.M.J.;Sci
ence,263巻,1710頁(1994)、あるい
は柿本雅明;化学,50巻,608頁(1995)等の
文献に詳述されている規則的な樹枝状分岐を有する分岐
高分子の総称であり、かかる分子は、分子の中心から規
則的な分岐をした高分子構造を有するため、例えば上記
のTomaliaら著の文献に解説されているように、
高分子量化するにつれて生じる分岐末端の極度の立体的
込み合いにより球状の分子形態をとるようになる。
【0007】上記のTothら著の文献は、デンドリマ
ーは制御された高度の樹枝状分岐構造を有するため、直
鎖状高分子鎖に比べ該高分子鎖が分子内で回転運動をす
る自由度が極度に制限されていることが該τR 値を大き
くする上で好ましいと説明している。しかし、該文献に
記載の錯体は、デンドリマーの高分子鎖末端(即ち球状
分子の表面)に1,4,7,10−トリ(アセティック
アシッド)テトラアザシクロドデカン(DOTAと略)
等の公知のポリアミノカルボン酸構造を多数結合したも
のを配位子とするポリ錯体であるため、錯体単位である
1つのGd3+に配位した1つのポリアミノカルボン酸構
造はどれも1箇所でデンドリマーに結合している。この
ため、該錯体単位は各デンドリマー末端において、高分
子鎖軸に沿った自由回転性のため完全には回転運動性を
抑制されてはいない。また、該錯体単位はデンドリマー
分子表面に露出しているため、実用化されている低分子
錯体と同様のGd3+の遊離性を有する懸念が指摘され
る。更に、デンドリマー表面に該錯体単位が濃縮されて
いるため、MRI技術におけるT2 短縮効果が強く出て
きて信号強度を低下させる場合もある。
【0008】一方、アセチルアセトンなどのβ−ジケト
ン類の化合物はランタノイド陽イオンと強固な錯体を作
ることが知られていて、これらをガドリニウムに配位さ
せた錯体はMRI用の造影剤として利用できる可能性が
あることが知られている。しかしながら、これまでのと
ころこれらの化合物がMRI造影剤のための配位子とし
て用いられた報告はない。これは、これまで報告されて
いるβ−ジケトン系の希土類錯体が一般に疎水性が強
く、水溶性の低いものが多いことが理由であると考えら
れる。したがって、水溶性が高く、かつ錯体の安定性が
高くなるようなβ−ジケトン類の化合物を設計し、それ
を配位子とするガドリニウム錯体を作成すれば、新規の
造影剤となることが期待される。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、副作
用を有するヨウ素を使用することなくことなく所望の大
きい原子番号を有する金属元素を陽イオンの形で含有す
ることのできる安全性に優れたXRI用造影剤、及び、
極めて抑制された陽イオン遊離性を有しかつ極度に抑制
された回転運動性のため大きな上記τR 値を有する安全
性及び性能的に優れたMRI用造影剤を提供することに
ある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決するために、特に金属陽イオンと有機材料との複
合化について鋭意系統的な研究を行った結果、β−ジケ
トネート基を有する配位子、特に超分岐分子構造を特定
の結合様式で含有する該配位子を金属陽イオンとともに
錯形成させることが非常に有効であることを見いだし
た。即ち、かかる錯体は、β−ジケトネート基の強力な
配位力により極めて安定化するため、血液中における極
めて抑制された陽イオン遊離性を示す。更に、超分岐分
子構造を有する配位子を使用した場合には、金属陽イオ
ンはデンドリマー表面に露出しておらず、金属陽イオン
の近傍に配置した該構造の大きな空間排除効果(大きな
空間を占有する効果)により外部環境から遮蔽された状
況にあるため、イオン交換反応等に起因する陽イオン遊
離が抑制される。また、かかる錯体において、金属陽イ
オンはこれに配位する錯形成官能基が超分岐分子構造の
特定の部位に結合しているため、非常に大きな上記τR
値を有し、強いMRI信号強度を得ることができること
を見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】即ち、本発明の要旨は、金属陽イオンと、
β−ジケトネート基を有する配位子を構成成分とする水
溶性錯体;β−ジケトネート基を有する配位子が、下記
一般式(1)の共鳴構造式で表されるβ−ジケトネート
基を有する前記水溶性錯体;
【0012】
【化3】
【0013】(上記式中、Rは水素原子、アルキル基、
アリール基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトリル
基、ニトロ基のいずれかを表す。)
【0014】配位子中のβ−ジケトネート基が超分岐分
子構造のフォーカルポイント原子との間に0以上50以
下の直列結合した原子を介して結合している前記水溶性
錯体;配位子が、活性水素原子含有官能基、又はポリア
ルキレンオキシド基を超分岐分子構造の末端に有する前
記水溶性錯体;配位子が、水酸基、又は繰り返し単位の
炭素数が4以下のポリアルキレンオキシド基を超分岐分
子構造の末端に有する前記水溶性錯体;配位子が、酸
素、窒素、硫黄、及びリンからなる群から任意に選ばれ
る元素を超分岐分子構造中に含有する前記水溶性錯体;
配位子が、エーテル、エステル、アミド、及び3級アミ
ンからなる群から任意に選ばれる構造を超分岐分子構造
中に含有する前記水溶性錯体;超分岐分子構造が、30
0以上50,000以下の分子量を有する前記水溶性錯
体;超分岐分子構造が、デンドリマー構造を有する前記
水溶性錯体;超分岐分子構造のフォーカルポイント原子
が、1つの金属陽イオンに対して平均して2つ以上含有
される前記水溶性錯体;金属陽イオンが、周期律表第6
周期に属する元素の陽イオンである前記水溶性錯体;金
属陽イオンが、3価の陽イオンである前記水溶性錯体;
金属陽イオンが、金又は白金の陽イオンである前記水溶
性錯体;金属陽イオンが、周期律表の3A族、4A族、
5A族、6A族、7A族、8族、1B族、及び2B族の
いずれかの族に属する遷移金属の陽イオンであり、か
つ、常磁性を有するものである前記水溶性錯体;金属陽
イオンがマンガン、鉄、あるいはランタノイド元素のい
ずれかの陽イオンである前記水溶性錯体;金属陽イオン
が、3価のガドリニウム陽イオン(Gd3+)である前記
水溶性錯体;β−ジケトネート基を有する配位子が、下
記一般式(2)で表される化合物である前記水溶性錯
体;
【0015】
【化4】 R1 −CO−CH2 −CO−R2 …(2) (上記式中、R1 及びR2 は、それぞれ独立して、芳香
環、あるいは、芳香環、ハロゲン原子、酸素原子、窒素
原子またはイオウ原子で置換されていても良いアルキル
基を表す。)前記水溶性錯体を必須成分とする造影剤;
並びに前記水溶性錯体、及び、薬学的に許容し得る担体
を含んでなる体内診断用医薬組成物に存する。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。 (錯体)本発明の水溶性錯体は、後述する金属陽イオン
とβ−ジケトネート基を有する配位子とを構成成分と
し、両成分間のクーロン力又は配位結合により構成され
るものである。本発明の水溶性錯体は、水溶性又は水中
で沈殿性の凝集を起こさない親水性を有する必要があ
る。かかる水溶性又は親水性の付与手段については後述
する。
【0017】(金属陽イオン)本発明において金属陽イ
オンとは、周期律表において、水素、ホウ素、炭素、窒
素、及びリンを除く、1A(アルカリ金属)、2A(ア
ルカリ土類金属)、3A、4A、5A、6A、7A、
8、1B、2B(以上遷移元素)、3B、4B、及び5
Bの各族に属する元素の陽イオンである。該金属陽イオ
ンの価数に特に制限はないが、立体的に込み合った超分
岐分子構造を特定の結合様式で含有する配位子を該金属
陽イオンの近傍に配置する場合、過度の空間的密集を避
けるために通常1ないし4価が好適であり、上記の空間
排除効果の効率の点でより好ましくは2又は3価、最も
好ましくは3価とする。
【0018】本発明の水溶性錯体に使用される具体的な
陽イオンとしては、Li+ ,Na+,K+ ,Rb+ ,C
+ ,Fr+ 等のアルカリ金属陽イオン、Be2+,Mg
2+,Ca2+,Sr2+,Ba2+,Ra2+等のアルカリ土類
金属陽イオン、Sc3+,Y3+等のスカンジウム族陽イオ
ン、Ti2+,Ti3+,Ti4+,Zr+ ,Zr2+,Z
3+,Zr4+,Hf+ ,Hf2+,Hf3+,Hf4+等のチ
タン族陽イオン、V+ ,V 2+,V3+,V4+,V5+,Nb
+ ,Nb2+,Nb3+,Nb4+,Nb5+,Ta+ ,T
2+,Ta3+,Ta4+,Ta5+等のバナジウム族陽イオ
ン、Cr+ ,Cr2+,Cr3+,Cr4+,Cr5+,C
6+,Mo+ ,Mo2+,Mo3+,Mo4+,Mo5+,Mo
6+,W+ ,W2+,W3+,W4+,W5+,W6+,等のクロム
族陽イオン、Mn+ ,Mn2+,Mn3+,Mn4+,M
5+,Mn6+,Mn7+,Tc+ ,Tc2+,Tc3+,Tc
4+,Tc5+,Tc6+,Tc7+,Re+ ,Re2+,R
3+,Re4+,Re5+,Re6+,Re7+等のマンガン族
陽イオン、Fe+ ,Fe2+,Fe3+,Fe4+,Fe6+
Ru+ ,Ru2+,Ru3+,Ru4+,Ru5+,Ru6+,R
7+,Ru8+,Os+ ,Os2+,Os3+,Os4+,Os
5+,Os6+,Os7+,Os8+等の鉄族陽イオン、C
+ ,Co2+,Co3+,Co4+,Co5+,Rh+ ,Rh
2+,Rh3+,Rh4+,Rh5+,Rh6+,Ir+ ,I
2+,Ir3+,Ir4+,Ir5+,Ir6+等のコバルト族
陽イオン、Ni+ ,Ni2+,Ni3+,Ni4+,Pd+
Pd2+,Pd 3+,Pd4+,Pt2+,Pt3+,Pt4+,P
5+,Pt6+等のニッケル族陽イオン、Cu+ ,C
2+,Cu3+,Cu4+,Ag+ ,Ag2+,Ag3+,Au
+ ,Au2+,Au3+,Au5+,Au7+等の銅族陽イオ
ン、Zn2+,Cd+ ,Cd2+,Hg+,Hg2+等の亜鉛
族陽イオン、La2+,La3+,Ce2+,Ce3+,C
4+,Pr 2+,Pr3+,Pr4+,Nd2+,Nd3+,Nd
4+,Pm2+,Pm3+,Sm2+,Sm 3+,Eu2+,E
3+,Gd2+,Gd3+,Tb2+,Tb3+,Tb4+,Dy
2+,Dy 3+,Dy4+,Ho2+,Ho3+,Er2+,E
3+,Tm2+,Tm3+,Yb2+,Yb 3+,Lu2+,Lu
3+等のランタノイド陽イオン、Ac3+,Th4+,P
3+,Pa 4+,Pa5+,U3+,U4+,U5+,U6+,Np
3+,Np4+,Np5+,Np6+,Pu 3+,Pu4+,P
5+,Pu6+,Am2+,Am3+,Am4+,Am5+,Am
6+,Cm 3+,Cm4+,Bk3+,Bk4+,Cf2+,C
3+,Cf4+,Es2+,Es3+,Fm 2+,Fm3+,Md
2+,Md3+,No2+,No3+等のアクチノイド陽イオ
ン、Al 3+,Ga2+,Ga3+,In+ ,In2+,I
3+,Tl+ ,Tl2+,Tl3+等の3B族陽イオン、S
2+,Si4+,Ge2+,Ge4+,Sn2+,Sn4+,Pb
2+,Pb4+等の4B族陽イオン、As3+,As5+,Sb
+ ,Sb3+,Sb5+,Bi+ ,Bi3+,Bi5+等の5B
族陽イオン等が挙げられる。
【0019】本発明の水溶性錯体のエックス線吸収能を
上昇させる目的では、上記の陽イオンのうち該金属陽イ
オンの原子番号が高いほど効果的である。具体的には、
周期律表の第4、第5、第6及び第7周期に属する元素
の陽イオンが挙げられる。但し、その効果と経済性の観
点から第6周期に属する元素の陽イオンが好ましく、中
でもランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プ
ロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウ
ム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビ
ウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム等のラン
タノイドの陽イオン、あるいは金、白金等の貴金属の陽
イオンがより好ましく、最も好ましいのは金又は白金で
ある。
【0020】MRI用造影剤として本発明の水溶性錯体
を使用する場合には、該陽イオンは常磁性を有する必要
がある。かかる目的では、通常、周期律表の3A族、4
A族、5A族、6A族、7A族、8族、1B族、及び2
B族のいずれかの族に属する遷移金属の陽イオンを用い
る。遷移金属の磁性は、酸化数や配位子の性質に依存し
た複雑な挙動を示すが、好適な陽イオンとしては、Pr
3+,Nd3+,Eu3+,Gd3+,Tb3+,Dy3+,H
3+,Er3+,Tm3+,Yb3+等の3価ランタノイド陽
イオン、Mn2+,Mn3+等のマンガン族陽イオン、Fe
2+,Fe3+等の鉄族陽イオン、Ni2+,Ni3+等のニッ
ケル族陽イオン等が代表的なものとして挙げられ、中で
もGd3+,Fe2+,Fe3+,Mn2+等が好ましく、最も
好適なのはGd3+である。
【0021】(配位子)本発明の水溶性錯体は、その必
須構成成分としてβ−ジケトネート基を有する配位子を
含有する。そして、該錯体は、本発明の効果を著しく損
なわない限りにおいてβ−ジケトネート基を有する配位
子以外の配位子(例えば、水酸基、メルカプト基、アミ
ノ基、ヒドラジド基、カルボニル基、カルボキシル基、
スルホン酸基、キサントゲン酸基、アミド基、カーバメ
ート基、尿素基、チオ酸基、ジチオ酸基等の電気的に中
性な官能基、カルボキシレート基、フェノラート基、ア
ルコラート基、チオフェノラート基、チオラート基、キ
サンテート基、スルフィド基、ジスルフィド基等の陰イ
オン基等を錯形成官能基とする配位子)をその構成成分
として含有しても良い。
【0022】ここでβ−ジケトネート基とは、β−ジケ
トン構造(一般式:−CO−CHR−CO−、但しRは
水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ハ
ロゲン原子、ニトリル基、ニトロ基のいずれかを表す)
の2つのカルボニル基で挟まれた炭素原子(α位)に結
合するα位水素原子の酸性を利用してこれを適当な塩基
(例えば水酸化物イオン、アルコキシイオン等)で引き
抜くことで生成する下記一般式(1)の共鳴構造式で表
される1価の陰イオン構造である。
【0023】
【化5】
【0024】(但しRは水素原子、アルキル基、アリー
ル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトリル基、ニト
ロ基のいずれかを表す) 上記一般式(1)で表されるβ−ジケトネート基は、そ
の両末端に任意の構造を結合して構わない。但し、β−
ジケトネート基の錯形成能力の点で、一方の末端に電子
吸引性構造(例えばトリフルオロメチル基、ペンタフル
オロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオ
ロブチル基、ウンデカフルオロペンチル基、トリデカフ
ルオロヘキシル基等のパーフルオロアルキル基及びこれ
らの基のフッ素原子を1つ除いた相当するパーフルオロ
アルキレン基、2−ニトロフェニル基、4−ニトロフェ
ニル基、2,4−ジニトロフェニル基、2,4,6−ト
リニトロフェニル基、2−シアノフェニル基、4−シア
ノフェニル基、2,4−ジシアノフェニル基、2,4,
6−トリシアノフェニル基等の電子吸引性基を結合した
フェニル基及びこれらのフェニル基の炭素原子に結合す
る水素原子を1つ除いた相当する電子吸引性基を結合し
たフェニレン基、ニトロ基やニトリル基等の窒素含有基
等)を、もう一方の末端に電子供与性構造(例えば2−
アルコキシフェニル基、4−アルコキシフェニル基、
2,4−ジアルコキシフェニル基、2,4,6−トリア
ルコキシフェニル基、2−アミノフェニル基、4−アミ
ノフェニル基、2,4−ジアミノフェニル基、2,4,
6−トリアミノフェニル基、2−ヒドロキシフェニル
基、4−ヒドロキシフェニル基、2,4−ジヒドロキシ
フェニル基、2,4,6−トリヒドロキシフェニル基等
の電子供与性基を結合したフェニル基及びこれらのフェ
ニル基の炭素原子に結合する水素原子を1つ除いた相当
する電子供与性基を結合したフェニレン基等、但しここ
で言うアルコキシ基は任意の構造と結合するアルキレン
オキシ構造をも含み、アミノ基は1級、2級、及び3級
のいずれでも良い)をそれぞれ結合させるのが好ましい
場合もある。更に、配位子構造のβ−ジケトネート基以
外の部分は、該基のいずれの末端に直接結合していても
良く、あるいは該基のいずれの末端に上記電子吸引性構
造又は電子供与性構造のいずれかを介して結合していて
も良い。なお、本発明においては、β−ジケトネート基
を有する配位子として下記一般式(2)で表される化合
物を使用することが可能である。
【0025】
【化6】 R1 −CO−CH2 −CO−R2 …(2) 上記式中、R1 及びR2 は、それぞれ独立して、芳香
環、あるいは、芳香環、ハロゲン原子、酸素原子、窒素
原子、イオウ原子、水酸基で置換されていても良い飽和
又は不飽和のアルキル基を表す。
【0026】本発明の水溶性錯体の配位子の好ましい構
造として、配位子中のβ−ジケトネート基が超分岐分子
構造のフォーカルポイント(focal point)
原子との間に0以上50以下の直列結合した原子を介し
て結合した構造が挙げられる。ここで超分岐分子構造と
は樹枝状分岐分子構造であり、例えば、前記したHaw
ker、Tomalia、Frechet、あるいは柿
本ら著の各文献詳述されているデンドリマーに代表され
る概念であるが、分子量に制限はない。本発明における
超分岐分子構造をより厳密に定義すれば、分岐の開始点
(以下、フォーカルポイント[Focal poin
t]と称す)が特定でき、該フォーカルポイントから任
意の分子末端に向かって分子鎖をたどった場合にフォー
カルポイント以外の分岐点を最低1 つ通過する分子構造
である。また、本発明におけるフォーカルポイントと
は、錯体中の配位子の任意の分子末端から分子鎖を逆行
してβ−ジケトネート基に至る最短経路中の最後の分岐
点を意味する。
【0027】該配位子中のβ−ジケトネート基は、超分
岐分子構造のフォーカルポイント原子との間に0以上5
0以下の直列結合した原子を介して結合しているのが好
ましい。ここで言う直列結合した原子とは直鎖状構造で
あり、その構成元素に制限はないが、MRI造影剤とし
て本発明の水溶性錯体を使用する場合には中心陽イオン
近傍を親水的環境とするのが望ましいので、酸素、窒
素、硫黄等の元素を該直鎖状構造に含有させるのが好ま
しい場合もある。該直列結合した原子の数あるいは元素
の種類を制御することで、金属陽イオン近傍の空間的あ
るいは化学的環境を変えることができると考えられ、具
体的には、例えばMRI造影剤を念頭に置いた場合に
は、その性能を大きく左右する水分子の常磁性金属陽イ
オンへの接近容易性を制御できる。なお、該直列結合し
た原子の数が50以上となると、配位子中の超分岐分子
構造の遮蔽効果が低下する場合があるので好ましくな
く、より好ましくはこの数を40以下、さらに好ましく
は30以下、最も好ましくは25以下とする。
【0028】該配位子は、親水性あるいは水溶性を有す
ることが望ましい。ここで親水性とは該錯体が沈殿性の
凝集を水中で生じないことを意味し、水溶性とは該錯体
が水中で凝集構造を生じず溶解することを意味する。該
錯体が親水性あるいは水溶性を有さない場合でも、水あ
るいは水溶液への懸濁状態で造影剤として患者に投与す
ることも可能な場合もあるが、血流中での凝集の可能性
や造影効果低下等の理由で好ましいとは言えない。
【0029】該配位子に親水性あるいは水溶性を賦与す
る方法として、配位子の超分岐分子構造の末端に活性水
素原子含有官能基、又はポリアルキレンオキシド基を導
入する方法が好適に用いられる。これは、かかる末端が
該錯体の表面に存在するためである。上記の活性水素原
子含有官能基としては、水酸基、メルカプト基、アミノ
基、ヒドラジド基、カルボキシル基、スルホン酸基、ア
ミド基、カーバメート基、尿素基、チオ酸基、ジチオ酸
基等が例示できるが、水酸基、アミノ基、及び尿素基が
中でも好適である。ポリアルキレンオキシド基の好適な
例としては、ポリエチレンオキシド基、ポリプロピレン
オキシド基、ポリブチレンオキシド基、ポリペンチレン
オキシド基、ポリヘキシレンオキシド基、ポリイソプロ
ピレンオキシド基、ポリイソブチレンオキシド基、ポリ
シクロペンチレンオキシド基、ポリシクロヘキシレンオ
キシド基等の繰り返し単位の炭素数が6以下のアルキレ
ン基を有するモノマー単位構造が挙げられ、これらのモ
ノマー単位構造は2種以上が共重合されていても構わな
い。これらのうち好ましいのは、水酸基、尿素基、及び
ポリエチレンオキシド基、ポリプロピレンオキシド基、
ポリブチレンオキシド基等の繰り返し単位の炭素数が4
以下のポリアルキレンオキシド基であり、最も好ましい
のは水酸基、及びポリエチレンオキシド基である。ま
た、カルボニル基、エステル基、ニトリル基、ニトロ
基、アルデヒド基等の活性水素原子を有さない官能基も
親水性賦与に有効である。本発明の水溶性錯体の親水性
や水溶性を損なわない限りにおいて、その構成成分とし
て、上記の官能基2種以上を1分子内に有する配位子を
用いても良く、また異なる種類の配位子を混合して用い
ても良い。
【0030】該配位子に親水性あるいは水溶性を賦与す
るもう1つの方法として、配位子中の超分岐分子構造
に、酸素、窒素、硫黄、及びリンからなる群から任意に
選ばれる元素を含有せしめ、超分岐分子構造自身に親水
性あるいは水溶性を賦与する方法が挙げられる。かかる
構造の具体例としては、エーテル結合、カルボニル基、
エステル結合、カーボネート結合、フラン環等の酸素含
有構造、アミド結合、ウレタン結合、尿素結合、2級ま
たは3級アミン構造等の非芳香族窒素含有構造、ピロー
ル環、ピリジン環、キノリン環、ピリミジン環、プリン
環、イミダゾール環、イミダゾリジン環、トリアゾール
環等の含窒素芳香環、スルフィド結合、ジスルフィド結
合、チオカルボニル基、チオエステル結合、チオカーボ
ネート結合、チオウレタン結合、チオ尿素結合等の非芳
香族硫黄含有構造、チアゾール環、チオフェン環、チオ
ナフテン環等の含硫黄芳香環、リン酸エステル、亜リン
酸エステル、次亜リン酸エステル、2級又は3級ホスフ
ィン、ホスフィンオキシド等のリン含有構造等が挙げら
れる。このうち、エーテル結合、カルボニル基、エステ
ル結合等の酸素含有構造、アミド結合、3級アミン構造
等の非芳香族窒素含有構造、ピリジン環等の含窒素芳香
環、スルフィド結合等の非芳香族硫黄含有構造、3級ホ
スフィン、ホスフィンオキシド等のリン含有構造等が好
適で、中でもエーテル結合、エステル結合等の酸素含有
構造、アミド結合、3級アミン構造等の非芳香族窒素含
有構造が最も好適である。
【0031】前記超分岐分子構造として300以上5
0,000以下の分子量を有する高分子構造を用いる
と、金属陽イオンを遮蔽する効果と錯体のRotati
onalcorrelation time(τR
(前述のTothらの文献参照)を大きくする効果の点
で非常に好ましい場合がある。該分子量の範囲が300
に満たないと高分子を用いる効果はほとんど得られなく
なり、逆に50,000を超えると錯体が大きくなりす
ぎ体内からの排泄性が極端に悪化する。従って該分子量
の範囲は、好ましくは300以上40,000以下、よ
り好ましくは400以上30,000以下、更に好まし
くは450以上20,000以下、最も好ましくは50
0以上10,000以下とする。また、かかる高分子量
の超分岐分子構造を用いる場合、その分子量分布は、ゲ
ルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法で測
定される数平均分子量Mn(GPC) と重量平均分子量Mw
(GPC)とが1.0≦Mw(GPC) /Mn(GPC) ≦15なる
関係を満たすことが望ましい。上記のMw(GPC) /Mn
(GPC) の値が15を超えると、錯体の空間的広がりのば
らつきが大きくなりすぎ、遮蔽効果が損なわれる場合が
ある。従って、Mw(GPC ) /Mn(GPC) の値は小さけれ
ば小さいほど望ましいと言えるが、より好ましくは1.
0以上12以下、更に好ましくは1.0以上9以下、最
も好ましくは1.0以上5以下とする。なお、超分岐分
子構造として高分子を用いる付随効果として、各金属陽
イオンがお互いに接近し難くなることから、MRI造影
剤として高濃度で使用した場合でもT2 短縮効果が強く
出ず信号強度の低下を抑えることも予想される。
【0032】上記の超分岐分子構造は、特に高分子量と
なった場合に可能な限り高度の分岐を有することが望ま
しい。これは、同一モノマー(繰り返し単位)構造で同
一の分子量を有する分子を考えた場合、分岐点数が多け
れば多いほど、空間排除効果の高い立体配座をとり易い
ためと考えられる。言い換えれば、分岐のない線状高分
子に近づくにつれて、空間排除効果の高い糸毬状に凝集
した立体配座から高分子鎖が伸びきった同効果の低い立
体配座まで変化しうるようになり、結果として空間排除
効果の低い状態をとる確率が高くなるということであ
る。高分子の分岐度を定量する手段としては、例えば希
薄溶液中での極限粘度と絶対分子量との関係の測定、或
いは核磁気共鳴(NMR)スペクトルにおける分岐単位
構造と非分岐単位構造のそれぞれに帰属されるシグナル
の積分値を利用する方法等が挙げられるが、本発明にお
いて超分岐分子構造の分子量が2,000を超える場合
の好ましい分岐度の条件として、例えば、マススペクト
ル法又は光散乱法で測定される重量平均分子量MwとG
PC法で測定される重量平均分子量Mw(GPC) とが、M
w/Mw(GPC) >1なる関係を満たすことが挙げられ
る。
【0033】MwがMw(GPC) よりも大きくなる例は、
Hawker,C.J.et al;J.Am.Che
m.Soc.,112巻,7638頁(1990)やU
hrich,K.E.et al;Macromole
cules,25巻,4583頁(1992)等に報告
されており、これは、マススペクトル法又は光散乱法で
測定されるような絶対分子量(即ち、Mw)が同一で
も、分岐度が高まるにつれて、良溶媒中で観測される高
分子鎖の空間的広がり(即ち、Mw(GPC) )は小さくな
ってゆくものと定性的には解釈されている。なお、上記
のマススペクトルの手法には分子ピークを与える限りに
おいて制限はなく、例えば分子量1000以上程度の比
較的高分子量の分子や不安定な分子に対して好適に用い
られるMatrix assisted laser
desorption ionization(MAL
DI)マススペクトルやElectrosprayマス
スペクトル等の新しい手法の適用が好ましい場合もあ
る。また、本発明の記述における全てのGPC測定は、
超分岐分子構造の良溶媒中で行われる必要がある。Mw
/Mw(GPC) の値は、上記分子量の範囲においては通常
高々3程度となるが、特に制限はない。
【0034】金属陽イオンを遮蔽する効果と錯体のτR
を大きくする効果の点で最も効果的な超分岐分子構造
は、前記デンドリマー構造である。これは、デンドリマ
ーの規則的かつ密集した分岐構造による、有効な空間排
除効果と該構造内部の自由回転性を極度に低下させる2
つの効果に主に起因するものと推定される。また、デン
ドリマーの場合、理論的にはその分子量分布をMw
(GPC) /Mn(GPC) の値で1.0とすることが可能であ
ることも利点である。また、1つの錯体中の超分岐分子
構造単位は、超分岐分子構造のフォーカルポイント原子
の数として、1つの金属陽イオンに対して平均して2つ
以上含有されているのが好ましい。これは、独立した複
数の超分岐分子構造単位が金属陽イオンの自由回転性を
大きく減少させる効果と考えられる。この効果の点で、
超分岐分子構造単位はフォーカルポイント原子の数とし
て、1つの金属陽イオンに対して平均して3つ以上含有
されているのが最も好ましい。
【0035】(錯体の製造方法)本発明の水溶性錯体
は、金属陽イオンと配位子中のβ−ジケトネート基との
間のクーロン力(イオン結合)又は配位結合によりな
る。イオン結合の生成は陰イオンの交換反応により可能
である。より具体的には、金属陽イオンの蟻酸、酢酸、
シュウ酸、プロピオン酸等のカルボン酸との塩、あるい
は塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオンとの塩
等と、配位子あるいは配位子の塩(例えばナトリウム
塩、カリウム塩等)とを混合して行われる。
【0036】本発明の水溶性錯体において、金属陽イオ
ンの正電荷を中和する対陰イオンは全て前記の配位子と
なっていることが望ましい。何故ならば、比較的小さな
陰イオン、例えばフッ化物イオン、塩化物イオン、臭化
物イオン、ヨウ化物イオン等のハロゲン化物イオン、硫
酸イオン、硝酸イオン、蟻酸イオン、酢酸イオン、シュ
ウ酸イオン等の一般的に広く用いられる陰イオンの残留
は、遮蔽効果や自由回転抑制効果を低下させるためであ
る。従って、上述の陰イオン交換反応により本発明の錯
体を製造する場合、金属陽イオンと配位子の当量関係を
正確に制御することが望まれる。但し、金属陽イオンに
対し過剰当量の配位子を作用させても生成物には所望の
錯体が含まれているので本発明の効果が得られる場合も
ある。
【0037】なお、上記一般式(2)で表される化合物
を配位子とする場合の錯体の製造方法を、金属陽イオン
としてガドリウムを使用した場合を例にして以下に示
す。β−ジケトン系ガドリニウム錯体の基本形であるア
セチルアセトネート錯体は市販の試薬としてたとえばア
ルドリッチ社から入手可能である(tris(acet
yl−acetonato)gadolinium(II
I) dihydrate)。その製造法を略記すれば以
下のようになる(J.Am.Chem.Soc.70,
3142(1948))。すなわち、塩化ガドリニウム
(III) 水溶液を撹拌しながら、その中にアセチルアセト
ンの水溶液を少量ずつ滴下する。この時、どちらの水溶
液もpH6−7の範囲に入るように、うすいアンモニア
水および塩酸で調整しておく。これはpHが酸性側に偏
って水酸化ガドリニウムの沈殿が生じるのを防ぐためで
ある。最終的に、ガドリニウム1モルに対してアセチル
アセトン4.5モルを加える。これはトリス錯体形成に
必要なアセチルアセトンの50%過剰量に相当する。撹
拌しながら12時間反応を行い、生じた沈殿を24時間
風乾する。β−ジケトン系配位子の上記一般式(2)中
のR1 、R2 の部位にハロゲン原子あるいは芳香環を導
入して錯体の安定性を向上させたもの、および水酸基を
導入して水溶性を増強させたもの等の種々の置換基を導
入したものも上述の基本形(トリスアセチルアセトネー
ト錯体)と同様の製法で作成することができる。
【0038】(造影剤)また、本発明の錯体を造影剤と
して用いる場合、通常静脈内投与などの非経口投与の方
法が用いられるが、経口投与することもできる。非経口
剤投与の製剤、即ち注射剤等の製造に用いられる溶剤、
または懸濁化剤としては、たとえば水、プロピレングリ
コール、ポリエチレングリコール、ベンジルアルコー
ル、オレイン酸エチル、レシチン等が挙げられる。製剤
の調製は常法によればよい。また経口投与する場合、単
独または薬学的に許容される担体と複合して、例えば顆
粒剤、細粒剤、散剤、錠剤、硬シロップ剤、軟カプセル
剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤、リポソーム、液剤等の
剤形にして経口投与する。固体製剤を製造する際に用い
られる賦形剤としては、例えば乳糖、ショ糖、デンプ
ン、タルク、セルロース、デキストリン、カオリン、炭
酸カルシウム等が挙げられる。経口投与のための液体製
剤、即ち乳剤、シロップ剤、懸濁剤、液剤等は、一般的
に用いられる不活性な希釈剤、例えば植物油等を含む。
この製剤は不活性な希釈剤以外に補助剤、例えば湿潤
剤、懸濁補助剤、甘味剤、芳香剤、着色剤または保存剤
等を含むこともできる。液体製剤にして、ゼラチンのよ
うな吸収されうる物質のカプセル中に含ませてもよい。
【0039】本発明による造影剤は、一般に所望の造影
効果が副作用を伴うことなく得られる投与量で投与され
る。その具体的な値は、医師の判断で決定されるべきで
あるが、一般に一回の診断につき成人当たり0.1mg
〜10g、好ましくは1mg〜5gである。本発明の化
合物は有効成分として一回の診断につき、成人当たり1
mg〜5g、更に好ましくは3mg〜3g含有され投与
されても良い。
【0040】
【実施例】以下、本発明を実施例により具体的に説明す
るが、本発明は、その要旨を越えない限り、これらの実
施例に限定されるものではない。 [β−ジケトン基を有するフォーカルポイント構成単位
の合成]4−アセチルベンゾニトリルにエタノール中で
乾燥塩化水素を作用させて得たエチル4−アセチルベン
ゾエートを、ナトリウムメトキシド存在下大過剰のエチ
ルヘプタフルオロブチレートと反応させ、次いで水酸化
ナトリウムを作用させてエチルエステルを加水分解し、
最後に塩酸酸性としてアルドール縮合生成物である4−
(3’−ヘプタフルオロプロピル−1’,3’−プロパ
ンジオニル)安息香酸(以下β−DKFと略)を得た。
【0041】[配位子の合成]Newkome,G.
R.,et al;Macromolecules,2
4巻,1443頁(1991)に記載の方法に準拠し
て、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンとアクリ
ロニトリルを原料としてトリス{(2−シアノエチル)
オキシメチル}アミノメタン(以下TCNと略)、及び
トリス{(2−エトキシカルボニルエチル)オキシメチ
ル}アミノメタン(以下TECと略)を合成した。TE
Cのアミノ基をジ−t−ブチルジカーボネートを用いる
定法によりt−ブトキシカルボニル基(BOC基)で保
護し、次いで水酸化ナトリウムを使用したエステルの加
水分解により相当するトリカルボン酸(以下BOC−T
Cと略)とした。上記アミド合成反応に準拠し、BOC
−TCに対してTCNを反応させて1分子のBOC−T
Cに3分子のTCNがアミド結合した化合物(以下BO
C−TC−TCN3 と略)を得た。BOC−TC−TC
3 のBOC基をTHF中トリフルオロ酢酸を触媒とし
て除去して生じたアミノ基を、上記同様のアミド合成反
応によりβ−DKFと反応させ、β−ジケトン基をフォ
ーカルポイントに有するデンドリマー骨格(以下β−D
KF−CN9 と略)を合成した。β−DKF−CN9
末端ニトリル基は、上記文献に記載の手順で相当するカ
ルボキシル基に変換し、上記同様のアミド合成反応によ
り平均分子量約350、片末端がメチルエーテル、もう
一方の末端がアミノ基であるポリエチレングリコール
(以下PEGと略)と反応させ、デンドリマーβ−ジケ
トン基をフォーカルポイントに有しPEGを末端に有す
るデンドリマー(以下β−DKF−PEGと略)を得
た。
【0042】[ガドリニウム錯体の合成]上記β−DK
F−PEGを水酸化ナトリウムで処理して、相当するβ
−ジケトネート陽イオンのナトリウム塩に変換し、市販
の塩化ガドリニウム(III) 水和物を加熱して得た無水塩
に対し3倍モルを水中で作用させ、β−ジケトネート基
を有する親水性デンドリマーを配位子とする3価ガドリ
ニウム陽イオン(Gd3+)錯体と食塩を含有する水溶液
を得た。この錯体は、大きなRotationalco
rrelation time(τR )を有するため、
強いMRI信号強度を得ることが可能である。
【0043】
【発明の効果】本発明の金属陽イオンとβ−ジケトネー
ト基を有する配位子からなる水溶性錯体は、血流中に金
属元素を分子レベルで極めて安定に分散させるため、安
全性に優れたものである。また、配位子に超分岐分子構
造を有する場合、該錯体の回転運動性が非常に抑制され
ているため大きなRotational correl
ation time(τR )を有するため、特にMR
I技術に好適な造影剤であり、その工業的利用価値は極
めて大である。さらに、本発明において、配位子に超分
岐分子構造を有する配位子からなる造影剤とした場合
は、その低粘度という性質から、使用時の便利性におい
ても非常に優れたものである。

Claims (19)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属陽イオンと、β−ジケトネート基を
    有する配位子を構成成分とする水溶性錯体。
  2. 【請求項2】 β−ジケトネート基を有する配位子が、
    下記一般式(1)の共鳴構造式で表されるβ−ジケトネ
    ート基を有する請求項1記載の水溶性錯体。 【化1】 (上記式中、Rは水素原子、アルキル基、アリール基、
    アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトリル基、ニトロ基の
    いずれかを表す。)
  3. 【請求項3】 配位子中のβ−ジケトネート基が超分岐
    分子構造のフォーカルポイント原子との間に0以上50
    以下の直列結合した原子を介して結合している請求項1
    または2に記載の水溶性錯体。
  4. 【請求項4】 配位子が、活性水素原子含有官能基、又
    はポリアルキレンオキシド基を超分岐分子構造の末端に
    有する請求項1ないし3に記載の水溶性錯体。
  5. 【請求項5】 配位子が、水酸基、又は繰り返し単位の
    炭素数が4以下のポリアルキレンオキシド基を超分岐分
    子構造の末端に有する請求項1ないし4に記載の水溶性
    錯体。
  6. 【請求項6】 配位子が、酸素、窒素、硫黄、及びリン
    からなる群から任意に選ばれる元素を超分岐分子構造中
    に含有する請求項1ないし5に記載の水溶性錯体。
  7. 【請求項7】 配位子が、エーテル、エステル、アミ
    ド、及び3級アミンからなる群から任意に選ばれる構造
    を超分岐分子構造中に含有する請求項1ないし6に記載
    の水溶性錯体。
  8. 【請求項8】 超分岐分子構造が、300以上50,0
    00以下の分子量を有する請求項1ないし7に記載の水
    溶性錯体。
  9. 【請求項9】 超分岐分子構造が、デンドリマー構造を
    有する請求項8に記載の水溶性錯体。
  10. 【請求項10】 超分岐分子構造のフォーカルポイント
    原子が、1つの金属陽イオンに対して平均して2つ以上
    含有される請求項1ないし9に記載の水溶性錯体。
  11. 【請求項11】 金属陽イオンが、周期律表第6周期に
    属する元素の陽イオンである請求項1ないし10に記載
    の水溶性錯体。
  12. 【請求項12】 金属陽イオンが、3価の陽イオンであ
    る請求項1ないし10に記載の水溶性錯体。
  13. 【請求項13】 金属陽イオンが、金又は白金の陽イオ
    ンである請求項11に記載の水溶性錯体。
  14. 【請求項14】 金属陽イオンが、周期律表の3A族、
    4A族、5A族、6A族、7A族、8族、1B族、及び
    2B族のいずれかの族に属する遷移金属の陽イオンであ
    り、かつ、常磁性を有するものである請求項1ないし1
    0に記載の水溶性錯体。
  15. 【請求項15】 金属陽イオンがマンガン、鉄、あるい
    はランタノイド元素のいずれかの陽イオンである請求項
    14に記載の水溶性錯体。
  16. 【請求項16】 金属陽イオンが、3価のガドリニウム
    陽イオン(Gd3+)である請求項15記載の水溶性錯
    体。
  17. 【請求項17】 β−ジケトネート基を有する配位子
    が、下記一般式(2)で表される化合物である請求項1
    に記載の水溶性錯体。 【化2】 R1 −CO−CH2 −CO−R2 …(2) (上記式中、R1 及びR2 は、それぞれ独立して、芳香
    環、あるいは、芳香環、ハロゲン原子、酸素原子、窒素
    原子、イオウ原子または水酸基で置換されていても良い
    アルキル基を表す。)
  18. 【請求項18】 請求項1ないし17のいずれかに記載
    の水溶性錯体を必須成分とする造影剤。
  19. 【請求項19】 請求項1ないし17のいずれかに記載
    の水溶性錯体、及び、薬学的に許容し得る担体を含んで
    なる体内診断用医薬組成物。
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