JPH11158571A - 焼結合金及びこれを用いた圧縮成形用金型 - Google Patents

焼結合金及びこれを用いた圧縮成形用金型

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JPH11158571A JP32312397A JP32312397A JPH11158571A JP H11158571 A JPH11158571 A JP H11158571A JP 32312397 A JP32312397 A JP 32312397A JP 32312397 A JP32312397 A JP 32312397A JP H11158571 A JPH11158571 A JP H11158571A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 杵や臼等の圧縮成形用金型に好適な、高い機
械的性能と優れた耐腐食性を有する焼結合金により、保
管処理や生産管理などのメンテナンス等が容易な圧縮成
形用金型を形成する。 【解決手段】 コバルト(Co)を36〜53重量%、ク
ロム(Cr)を27〜35重量%、タングステン(W)を1
0〜20重量%、炭素(C)を2〜3重量%含有する成分
に、タンタル(Ta)とニオブ(Nb)の少なくともいずれか
一方を0.2〜5重量%加え、通常の手法により焼結し
て、耐腐食性に優れた焼結合金からなる圧縮成形用金型
を形成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、錠剤の製造等に用いら
れる圧縮成形用金型に好適な、耐腐食性に優れた焼結合
金と、これを用いて形成した圧縮成形用金型に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に錠剤は、打錠機に設けられた杵と
臼とを用いて打錠末を圧縮成形することにより打錠され
る。即ち、回転盤に付設された臼内に臼孔を形成し、臼
孔の下方に配置した下杵の位置を調整して臼孔内の空間
を所定容積に設定し、この臼孔内に粉末薬剤等の打錠末
を収容したのち上杵で圧縮して錠剤を形成し、その後、
下杵で押し上げて上記錠剤を臼孔内から取り出すように
構成してある。上記杵と臼は、頻繁に繰り返される上記
圧縮操作で容易に変形してはならないことから高い機械
的強度が要求され、従来は超硬合金や合金工具鋼を用い
て形成されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記合金工具鋼などを
用いた従来の杵や臼は、その金属材料が基本的に腐食さ
れる性質を有するため、保管中は表面に油膜を形成した
り、真空中で保管したりするなど、複雑で煩雑な保管処
理が必要である。また、錠剤を構成する薬物には強酸性
物質を含む場合があり、これを打錠する場合には上記金
属材料の腐食が一層進行し易く、打錠中に腐食が開始す
る虞れもある。
【0004】これらの腐食が杵や臼の表面に発生する
と、表面の滑り性や打錠末との離型性が低下し、錠剤を
臼孔から取出し難くなるうえ、杵臼の表面に打錠末が付
着して打錠された錠剤表面が粗面になったり、錠剤表面
にクラックを生じたり、錠剤表面に明瞭な刻印を形成で
きなくなったりする等の問題を生じる。また、上記腐食
により生じた異物が錠剤に混入する虞れもあり、これら
の結果、生産性が著しく低下する問題がある。
【0005】また、上記杵や臼には腐食防止のため一般
にクロムメッキ等の表面処理を施しているが、この表面
処理で腐食を完全に抑制することは容易ではなく、例え
ば下地の処理不良により処理膜が剥がれたり、処理膜の
均一性不良によりピンホールが発生したりして、十分な
防食効果を得ることができない場合がある。そこで、従
来は杵と臼の表面を頻繁に清掃したり、打錠雰囲気を低
湿度に保持して腐食の進行を抑制するなどの対策が必要
であり、生産管理やその他のメンテナンスの上でも極め
て煩雑であった。
【0006】本発明は、上記問題点を解消し、杵や臼等
の圧縮成形用金型に好適な、高い機械的性能と優れた耐
腐食性を有する焼結合金と、この耐腐食性に優れた焼結
合金を用いて形成し、保管処理や生産管理などのメンテ
ナンス等が容易な圧縮成形用金型を提供することを技術
的課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は上記課題を解決
するために、次のように構成したものである。即ち、本
発明1は、コバルト(Co)を重量で36〜53%(以下、
比率は全て重量%を表す)、クロム(Cr)を27〜35
%、タングステン(W)を10〜20%、炭素(C)を2〜
3%含有する成分に、タンタル(Ta)とニオブ(Nb)の少
なくともいずれか一方を0.2〜5%加えたことを特徴
とする焼結合金である。
【0008】ここで上記焼結合金には、1〜5%の鉄
(Fe)と、1〜3%のケイ素(Si)と、5%以下のニッケ
ル(Ni)との、少なくともいずれかを含有するものであ
ってもよい。なお、上記焼結合金は、粉末状の原料金属
から通常の手法により所定形状の焼結金属を形成したも
のである。
【0009】また、本発明2は、上記焼結合金を用いて
形成したことを特徴とする、圧縮成形用金型である。こ
こで、上記圧縮成形用金型とは、粉末材料等を圧縮して
所定の形状に成形する場合に用いる金型をいい、例え
ば、錠剤を成形するための打錠機に用いる杵と臼等をい
う。
【0010】
【実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に基づ
き説明する。図1は、本発明の実施形態の杵と臼を用い
た、回転式打錠機の概略断面図である。
【0011】図1に示すように、この回転式打錠機(1)
の回転盤(2)には、周方向に所定間隔をおいて複数の臼
(3)を配置してあり、この臼(3)内に臼孔(3a)を形成し
てある。上記臼孔(3a)の上方には、上杵(4)を臼孔(3a)
に対して上下動可能に上杵保持盤(5)に保持してある。
また、臼孔(3a)の下方には下杵(6)を下杵保持盤(7)に
上下動可能に保持し、この下杵(6)の杵先を上記臼孔(3
a)内に下方から突入させてある。
【0012】上記上杵(4)の上方には、上杵(4)の上端
に設けた頭部と接触するように上杵ガイドレール(8)を
配置してあり、一方、下杵(6)の下方には、下杵(6)の
下端に設けた頭部と接触するように下杵ガイドレール
(9)を配置してある。そして、上記回転盤(2)と上杵保
持盤(5)及び下杵保持盤(7)は同軸に回転駆動され、こ
の回転により上杵(4)と下杵(6)はそれぞれ両ガイドレ
ール(8・9)に案内されて所定位置で上下に駆動され
る。
【0013】上記臼(3)と上杵(4)と下杵(6)とは、い
ずれもコバルトを36〜53%、クロムを27〜35
%、タングステンを10〜20%、炭素を2〜3%含有
し、場合によってはさらに1〜5%の鉄や、1〜3%の
ケイ素、5%以下のニッケルを含有する成分に、タンタ
ルとニオブの少なくともいずれか一方を0.2〜5%加
えて、通常の手法により焼結した焼結合金で形成してあ
る。
【0014】上記回転式打錠機では次の手順で錠剤が打
錠される。最初に、下杵ガイドレール(9)により下杵
(6)が所定高さに位置決めされて臼孔(3a)内の空間が所
定容積に設定され、充填ゾーンにおいてこの臼孔(3a)内
に打錠末(10)が充填される。次いで、圧縮ゾーンにおい
て上杵(4)が上杵ガイドレール(8)に案内され下方へ移
動して圧縮ローラに導かれ、上記打錠末(10)が圧縮され
ることにより打錠される。その後、上杵ガイドレール
(8)に案内されて上杵(4)が持ち上げられ、取出しゾー
ンにおいて下杵(6)が下杵ガイドレール(9)により押し
上げられ、臼孔(3a)から上記圧縮成形された錠剤が取出
される。
【0015】次に、上記焼結合金の具体的な組成とその
物性値や腐食性等を、従来の合金工具鋼と比較しながら
説明する。
【0016】
【実施例1】コバルトを50%、クロムを30%、タン
グステンを12%、炭素を2.5%、鉄を3%、ケイ素
を2%、タンタルとニオブを合計で0.5%含有する組
成の原料粉末を、通常の手法により焼結させて焼結合金
からなる杵と臼を得た。上記焼結合金の機械的強度は、
引張り強さが79kgf/mm2、圧縮応力が163kgf/m
m2、硬さが55HRCであり、従来杵臼の材料として用
いられている合金工具鋼の物性値と同程度であった。
【0017】上記の焼結合金で形成した杵と臼の腐食性
を、従来の合金工具鋼からなる杵臼(以下、従来品とい
う)と比較した結果は下記の表1に示す通りであった。
即ち、従来品は洗浄時に腐食の発生がみられ、また保管
時にも腐食を生じており、さらに強酸性物質との接触に
より腐食が大きく加速されたのに対し、本実施例1の杵
臼ではいずれの場合も全く腐食されなかった。なお、比
較に用いた上記従来品は、鉄を95%、クロムを1%、
タングステンを1.5%、炭素を1%、ケイ素を0.35
%、マンガンを0.8%、リンを0.03%、イオウを
0.03%含む合金工具鋼(SKS2)で製造したもので
ある。
【0018】
【表1】
【0019】次に、上記杵臼(杵の外径7mm)を用い、打
錠圧を1.0ton/杵、1.5ton/杵、2.0ton/杵、2.5
ton/杵にそれぞれ設定して打錠したのち、各杵の寸法変
化を調べたところ、いずれの打錠圧の場合にも、杵の全
長及び杵先径に寸法変化を生じなかった。また、杵臼の
表面は常に滑らかで離型性に優れており、打錠末を付着
することがなく、打錠機に用いる杵や臼としての必要な
物性及び機能を十分に備えていた。
【0020】上記打錠機の杵臼は、打錠を繰り返すこと
により次第に昇温するが、この温度変化により杵臼の寸
法が変化すると打錠圧や錠剤重量が設定値から外れてし
まう虞れがある。そこで、上記杵を60℃で24時間保
管して昇温による寸法変化を従来品と比較したところ、
本実施例1のものは下記表2に通り、従来品と同程度以
下の寸法変化にとどまっており、杵や臼としての特性を
十分に満足するものであった。
【0021】
【表2】
【0022】
【実施例2】コバルトを40%、クロムを33%、タン
グステンを17%、炭素を2.5%、鉄を3%、ケイ素
を2%、ニッケルを3%、ニオブを1%の組成で、通常
の手法により焼結させて、焼結合金からなる杵と臼を得
た。この焼結合金の機械的強度は、引張り強さが64kg
f/mm2、圧縮応力が170kgf/mm2、硬さが58HRC
であり、杵臼に必要な機械的強度を十分に備えていた。
また、この実施例2のものも、上記実施例1と同様に、
優れた耐腐食性を備えていた。
【0023】なお、上記実施形態では、圧縮成形用金型
を打錠機に用いる杵と臼に適用した場合について説明し
たが、本発明の圧縮成形用金型は、医薬品に限らず、農
薬や食品など他の圧縮成形用粉末材料にも適用でき、さ
らにプラスチック粉末やセラミックス粉末、金属粉末な
ど、他の粉末材料を成形する場合にも適用できることは
言うまでもない。
【0024】
【発明の効果】本発明1の、コバルトを36〜53%、
クロムを27〜35%、タングステンを10〜20%、
炭素を2〜3%含有する成分は、基本的に腐食される性
質を有しておらず、これに微量成分としてタンタルとニ
オブの少なくともいずれか一方を0.2〜5%加えて焼
結したので、従来の合金工具鋼等に匹敵する高い機械的
強度と、緻密な金属組織による均一な硬度分布を有す
る、耐腐食性に優れた焼結合金を得ることができた。
【0025】また、上記焼結合金を用いて形成した本発
明2の圧縮成形用金型は、高い機械的強度や昇温に対す
る良好な寸法安定性を有するとともに、優れた耐腐食性
を有するため、保管処理や生産管理などのメンテナンス
等を簡略にできるうえ、金型表面に腐食を生ずることが
ないので適正形状の製品を効率良く生産することが可能
となった。
【0026】特に錠剤を成形するための打錠機に用いる
杵と臼に適用した場合には、打錠末が強酸性物質を含む
場合であっても杵臼の表面に腐食を生じる虞れがないの
で、簡単なメンテナンス等により良品の錠剤を高速で多
量に生産でき、錠剤の生産性を大きく向上させることが
できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の杵と臼を用いた、回転式打
錠機の概略断面図である。
【符号の説明】
1…回転式打錠機、 2…回転盤、 3…臼(圧縮成形用金型)、 3a…臼孔、 4…上杵(圧縮成形用金型)、 5…上杵保持盤、 6…下杵(圧縮成形用金型)、 7…下杵保持盤、 8…上杵ガイドレール、 9…下杵ガイドレール、 10…打錠末(圧縮成形用粉末材料)。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 林 健二 大阪府吹田市千里山西6−62 南千里第2 コーポラスC117

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 コバルト(Co)を36〜53重量%、ク
    ロム(Cr)を27〜35重量%、タングステン(W)を1
    0〜20重量%、炭素(C)を2〜3重量%含有する成分
    に、タンタル(Ta)とニオブ(Nb)の少なくともいずれか
    一方を0.2〜5重量%加えたことを特徴とする焼結合
    金。
  2. 【請求項2】 1〜5重量%の鉄(Fe)と、1〜3重量
    %のケイ素(Si)と、5重量%以下のニッケル(Ni)と
    の、少なくともいずれかを含有する、請求項1に記載の
    焼結合金。
  3. 【請求項3】 請求項1又は請求項2に記載の焼結合金
    を用いて形成したことを特徴とする、圧縮成形用金型。
  4. 【請求項4】 錠剤を成形するための打錠機(1)に用い
    る杵(4・6)と臼(3)に適用した、請求項3に記載の圧
    縮成形用金型。
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