JPH1111906A - オルダム式コンプレッサー使用の酸素濃縮装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 モーター回転力を有効にピストン上昇方向へ
の分力として取り出し、消費電力を低減化した酸素濃縮
装置を提供する。 【解決手段】 酸素又は窒素を選択的に吸着し得る吸着
剤を充填した１基又は２基以上の吸着床と、該吸着床に
連結された往復ピストン式コンプレッサー手段を具備し
た圧力変動吸着型酸素濃縮装置において、該コンプレッ
サー手段がオルダム継手を備えることを特徴とする酸素
濃縮装置。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本願発明は、大気から酸素濃
度の高められた酸素濃縮空気を安定して得るための酸素
濃縮装置に関する。さらに詳細には、本願発明は、酸素
又は窒素を選択的に吸着し得る吸着剤を充填した吸着床
を用いた圧力変動吸着型酸素濃縮装置であって、吸着床
において圧力変動を発生させるためのコンプレッサー手
段を改良した、優れた酸素濃縮装置を提供するものであ
る。

【０００２】

【従来技術】近年、ぜんそく、肺気腫症、慢性気管支炎
等の呼吸器系器官の疾患に苦しむ患者が増加する傾向に
あり、その治療法として最も効果的なものの１つに酸素
吸入療法がある。かかる酸素吸入療法とは、酸素ガスあ
るいは酸素富化空気を患者に吸入させるものであり、そ
のガス供給源として従来より酸素ガスボンベが用いられ
ていた。近年、空気中から酸素富化空気を分離する酸素
濃縮装置が開発され、使用時の便利さや保守管理の容易
さから次第に普及するようになってきている。

【０００３】かかる酸素濃縮装置としては、窒素を優先
的に吸着し得る吸着剤を用いた吸着型酸素濃縮装置があ
り、吸着床での吸着と脱着を圧力変動により繰り返し行
わせる圧力変動吸着型のものが主流であり、吸着床の圧
力を変動する手段としては、通常コンプレッサーが用い
られる。

【０００４】従来、かかる圧力変動吸着型酸素濃縮装置
に用いられているコンプレッサーは、入力軸の回転運動
を、クランクまたは扁心カムとロッドを介してシリンダ
内ピストンの往復運動として伝えるピストン往復式が一
般的である。

【０００５】また、コンプレッサーの方式としては、他
にもロータリー式やスクロール式などが知られている
が、騒音が大きい、製作コストが高い等の理由により、
特に医療用の酸素濃縮装置での使用は困難である。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】従来の酸素濃縮装置に
用いられるピストン往復式コンプレッサーは、シリンダ
から吐出される流体の圧力においては、ピストンが下死
点位置から上死点位置に移動する際に増加し、ピストン
が上死点位置に達した時点で最高となる。しかし、クラ
ンクまたは扁心カムとロッドの構成においては、ピスト
ンの下死点と上死点の中間位置以降、モーター回転力の
ピストン上昇方向への分力が減少する機構となってお
り、伝達効率が悪いという問題点を有している。酸素濃
縮装置の消費電力は、コンプレッサーの性能に左右され
るところが大きく、コンプレッサーの効率向上が望まれ
ている。

【０００７】本発明はかかる課題を解決して、モーター
回転力を有効にピストン上昇方向への分力として取り出
し、消費電力を低減化した酸素濃縮装置を提供するもの
である。

【０００８】

【課題を解決するための手段】本願発明者は、かかる問
題点を解決することを目的として鋭意研究した結果、圧
力変動吸着型酸素濃縮装置において、オルダム継手(old
ham coupling）を備えたコンプレッサーを採用すること
により、モーター回転力を有効にピストン上昇方向への
分力として取り出しうることを見出し、本願発明に到達
した。

【０００９】即ち、本願発明は、酸素又は窒素を選択的
に吸着し得る吸着剤を充填した１基又は２基以上の吸着
床と、該吸着床に連結された往復ピストン式のコンプレ
ッサー手段を具備した圧力変動吸着型酸素濃縮装置にお
いて、該コンプレッサー手段がオルダム継手を備えたも
のであることを特徴とする酸素濃縮装置を提供するもの
である。

【００１０】また、本願発明は、該オルダム継手を備え
たコンプレッサーが、ロッド（３）の先端を連結したピ
ストン（２）を内部に挿入するシリンダ（１）を、上記
ロッド（３）の基底部の往復運動と連係して回転する入
力軸（７）を回転自在に軸支するケース（８）に固定
し、上記ケース（８）内にフランジ状の滑り子（６）を
収容し、滑り子（６）を前記ロッド（３）の端部に回転
軸支して連結し、上記滑り子（６）の両側には、相互に
一定の軸間距離（Ｌ）を介してケースの内面に回転自在
に軸支されるアイドラフランジ（５）と入力軸（７）に
固定される入力フランジ（４）とを設け、前記滑り子
（６）の両面にはアイドラフランジ（５）及び入力フラ
ンジ（４）の内面側に設けた凹凸条（５ｂ），（４ａ）
との間で相互にスライド可能に嵌合し互いに直交する方
向の凹凸条（６ｂ）、（６ａ）を形成し、該アイドラフ
ランジ（５）の軸心と入力フランジ（４）の軸心を前記
シリンダ１の軸心（Ｂ１）上に滑り子軌道１２の中心に
対して上下反対位置に振り分け配置するとともに、滑り
子（６）とアイドラフランジ（５）と入力フランジ
（４）の前記凹凸条（５ｂ），（６ｂ），（６ａ），
（４ａ）を、ピストン上死点位置およびピストン下死点
位置直前における入力フランジ（４）の回転トルクの分
力がロッド（３）の突出方向に大きく働くとともに、滑
り子（６）及びアイドラフランジ（５）を回転駆動させ
る方向に作用せしめるように組み合わせてなることを特
徴とする酸素濃縮装置を提供するものである。

【００１１】更に、本願発明は、該オルダム継手を備え
たコンプレッサーが、該アイドラフランジ（５）の代わ
りに第２入力軸（７’）と第２入力フランジ（５’）を
連結した構成であることを特徴とした酸素濃縮装置を提
供するものである。

【００１２】

【発明の実施の形態】本願発明の酸素濃縮装置に用いら
れるコンプレッサー手段には、吸着工程においては該吸
着床に原料空気を供給するためのコンプレッサー手段と
して機能し、脱着工程においては、該吸着床中の気体を
排出するための真空ポンプ手段として機能する装置が含
まれる。

【００１３】更に本願発明には、該吸着床の内圧が大気
圧以上で吸着工程を行ない、また該吸着床の内圧が大気
圧以下で脱着を行なう酸素濃縮装置が含まれる。

【００１４】更に本願発明の酸素濃縮装置においては、
該吸着床が１基または２基以上のいずれであってもよい
が、医療用の小型酸素濃縮装置の場合には２基以下が好
ましく、特に１基の場合が装置全体をコンパクトにしや
すい点で優れている。

【００１５】以下、本願発明の酸素濃縮装置が搭載する
往復ピストン式のコンプレッサー手段としてのオルダム
継手を備えたコンプレッサー（以下、「オルダム式コン
プレッサー」ともいう）の作用について詳述する。

【００１６】吸着床が１基の１塔式圧力変動吸着型酸素
濃縮器は、通常、１台のコンプレッサー手段が、吸着工
程においては、大気中から空気を吸着塔に供給するコン
プレッサーとして働き、脱着再生工程では、電磁弁を切
り替えることにより吸着塔から大気中に吸着した窒素等
を排出する真空ポンプとして働く。又、２基以上の吸着
床を用いる多塔式圧力変動吸着型酸素濃縮装置において
は、コンプレッサー手段は、どちらかの吸着塔を加圧す
るためのコンプレッサーとして働く。

【００１７】かかるコンプレッサー手段としては、図
１、２に示すようなオルダム式コンプレッサーを用いる
ことにより、コンプレッサーとしての最も負荷のかか
る、モーター回転力のピストン上昇方向への分力を高い
効率でピストンに伝達することができ、吸着工程時のコ
ンプレッサー手段の消費電力を抑えることができる。

【００１８】かかるオルダム継手は、モーターにより入
力軸７を回転駆動すると入力フランジ４が回転し、フラ
ンジ４、５間と滑り子６の両面との間の凹凸条４ａ、６
ａ、６ｂ、５ｂの傾動とスライドにより滑り子６が回転
（自転）するとともに円形の滑り子軌道９に沿って回転
（公転）する。このときアイドラフランジ５は単に滑り
子６の自転・公転をガイドするようにフリー回転するの
みであるが、入力フランジ４は上記自転・公転をガイド
しながら回転するとともに、滑り子６に回転力（自転・
公転）を与え、ロッド３を介してピストン２の往復運動
を発生させる。滑り子６の自転・公転の回転と入力軸７
の回転比は２：１である。

【００１９】ピストン２が上死点に近づくに従い、滑り
子６が凹凸条４ａを入力フランジ４の回転中心方向に摺
動するため、滑り子６に作用する入力フランジ４の回転
トルクのロッド３突出方向の分力は、ピストン２が上死
点に達する際に最大にすることができる。

【００２０】また、上記アイドラフランジ５の代わりに
図３に示すような、第２入力軸７’と第２入力フランジ
５’を配置し、第２入力軸に第２モーターを連結し、ピ
ストン２を上死点に駆動させる際に入力フランジ４を、
下死点に駆動させる際に第２入力フランジ５’を駆動さ
せるよう２台のモーターを交互に回転駆動させれば、コ
ンプレッサーの排気・吸気の両行程においてピストン伝
達効率の向上を得ることも可能である。

【００２１】

【実施例】図４は本発明の酸素濃縮装置の実施様態の一
例を示したものである。また、図１〜３は本発明の酸素
濃縮装置が搭載するコンプレッサーの一実施例を示す原
理的な構造図である。

【００２２】シリンダ１内にはピストン２が挿入され、
吸排気口１０ａ、１０ｂを備えたシリンダヘッド側には
圧縮室１１が形成されるとともに、ピストン２には背
（下）両側からピストンロッド３の一端が連結軸１２に
よって連結され、該ロッド３の入力端は次に述べるオル
ダムケース８内に挿入されている。オルダムケース８は
その内部に後述するアイドラフランジ５と入力フランジ
４及び滑り子６を内蔵し且つ上記滑り子６が円形の軌道
９に沿って回転（公転）するスペースを備えるように正
面視で円形をなし、上端には開口部１３を有してその周
縁のフランジ部１４においてシリンダ１の下端開口部と
連結されている。

【００２３】オルダムケース８内の背面部には円盤状の
アイドラフランジ５が軸受け部１６によって回転自在に
軸支され、正面側には該アイドラフランジ５と平行で且
つ一定の軸間距離Ｌを介して回転自在に軸支され、該入
力フランジ４及び入力軸７はオルダムケース８の正面側
に着脱自在に嵌合されるキャップ兼用のハウジング１５
に軸支されている。上記フランジ４、５等の支持は対磨
耗性セラミック軸受け又はベアリング等を適宜介挿して
軸支し、周面が滑り面をなす場合はオイルライン（油
溝）が形成される。

【００２４】上記入力フランジ４とアイドラフランジ５
との間には２枚の円形プレートをその中心において軸１
７で一体的に連結形成したスプール状の滑り子６が挿入
され、上記軸１７にはロッド３の入力端が嵌合連結され
ている。さらに両フランジ４、５の対向面と滑り子６の
両面にはそれぞれの中心点を通り且つ互いにその法線方
向にスライド可能な如く嵌合し合う凹凸条４ａ、６ａと
６ｂ、５ｂとが形成されており、各凹凸条の断面は円弧
状であっても、図示するような角型断面等いずれでもよ
い。

【００２５】上記入力フランジ４、アイドラフランジ
５、滑り子６の組み合わせは、元来フランジ４、５のい
ずれか一方が回転すれば滑り子６の自転と公転を介して
他方のフランジにその回転が伝えられるオルダム継手機
構を構成している。そしてこの実施例では、図１、図２
に示された状態から入力フランジが時計方向に回転する
と凹凸条４ａ、６ａと同５ｂ、６ｂの傾動と滑り作用に
よって滑り子６が時計方向回転（自転）しながら円形の
滑り子軌道９に沿って同方向に回転（公転）するととも
に、ピストン２が上死点方向に駆動（上昇）する。この
とき、アイドラフランジ５はフリー回転しており、入力
フランジ４の１度の回転により滑り子６は２度の自転及
び公転を行い、すなわち入力軸７の１回転につきピスト
ンは２往復の行程を行う。

【００２６】なお、図示する実施例ではコンプレッサー
の基本的な構造のみ示したが、現実に入力軸７から安定
した高圧力を得るためには、軸１７や入力軸７側にバラ
ンスウェイトやフライホイールを嵌着することが望まし
いことは言うまでもない。さらに該コンプレッサーは在
来のクランク又は扁心カムによるコンプレッサーに比
し、モーター駆動（回転）に対するピストン駆動比が
２：１に増速するが、実用上の問題点を生じるものでは
ない。

【００２７】図３は本発明の酸素濃縮装置が搭載するコ
ンプレッサーの駆動用入力を２系統にした場合の例を示
し、オルダムケース８の入力フランジ４と対面する側に
第２入力軸７’を配置し、該アイドラフランジ５に代え
て第２入力フランジ５’を配置し入力軸７’と連結した
ものである。

【００２８】図１、２に示すオルダム継手を備えたコン
プレッサーを用い、図４に示す構成の酸素濃縮装置を組
み立てた。

【００２９】即ち、吸着床が１基の１塔式圧力変動吸着
型酸素濃縮器であり、オルダム式コンプレッサーが、吸
着工程においては、大気中から空気を吸着塔に供給する
コンプレッサーとして働き、脱着再生工程では、電磁弁
を切り替えることにより吸着塔から大気中に吸着した窒
素等を排出する真空ポンプとして働く。吸着床としては
窒素を選択的に吸着するゼオライト系吸着剤を充填し
た。

【００３０】

【発明の効果】本発明の酸素濃縮装置は、搭載するオル
ダム式コンプレッサーがピストンの下死点から上死点ま
でに至る際のモーター回転力のピストン上昇方向への分
力を、従来のクランク又は扁心カムを用いたコンプレッ
サーよりきわめて高い効率でピストンに伝達する結果、
酸素濃縮装置自体の消費電力を低減させるという効果が
ある。

【００３１】通常のピストン往復式のコンプレッサーを
用いた場合には、吸着工程、脱着工程の内、吸着工程の
消費電力が脱着工程の約１．５倍の値を示す。本願発明
の酸素濃縮装置では、特に吸着工程の消費電力を削減す
る効果を有する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の酸素濃縮装置が搭載するコンプレッサ
ーの断面図。

【図２】図１におけるII−II断面矢視図。

【図３】オルダム式コンプレッサーの駆動モーターを２
台とした場合の断面図。

【図４】本発明の酸素濃縮装置の実施態様。

【符号の説明】

１．シリンダ ２．ピストン ３．ロッド ４．入力フランジ ５．アイドラフランジ ５’．第２入力フランジ ６．滑り子 ４ａ、６ａ、６ｂ、５ｂ．凹凸条 ７．入力軸 ７’．第２入力軸 ８．オルダムケース ９．滑り子軌道 １０ａ、１０ｂ．吸排気口 １１．圧縮室 １２．連結軸 １３．開口部 １４．フランジ部 １５．ハウジング １６．軸受け部 １７．軸 Ｂ１．シリンダ軸心 Ｌ ．軸間距離 ２０．コンプレッサー手段（オルダム式コンプレッサ
ー） ２１．電磁弁 ２２．吸着床 ２３．製品タンク ２４．電磁弁 ２５．電磁弁 ２６．調圧弁

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 酸素又は窒素を選択的に吸着し得る吸着
   剤を充填した１基又は２基以上の吸着床と、該吸着床に
   連結された往復ピストン式のコンプレッサー手段を具備
   した圧力変動吸着型酸素濃縮装置において、該コンプレ
   サー手段がオルダム継手を備えたコンプレッサー手段で
   あることを特徴とする酸素濃縮装置。