JPH11100718A - 易フィブリル化繊維およびその製造方法 - Google Patents
易フィブリル化繊維およびその製造方法Info
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- JPH11100718A JPH11100718A JP26357397A JP26357397A JPH11100718A JP H11100718 A JPH11100718 A JP H11100718A JP 26357397 A JP26357397 A JP 26357397A JP 26357397 A JP26357397 A JP 26357397A JP H11100718 A JPH11100718 A JP H11100718A
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Abstract
(57)【要約】
【課題】 ゴム補強および不織布用途に要求されている
補強効果と地合の良好な均一シ−トを得ることができる
易フィブリル化繊維とその製造方法を提供する。 【解決手段】 ビニルアルコ−ル系ポリマ−(A)およ
びポリマ−(A)と非相溶なポリマ−(B)とを共通の
有機溶媒に溶解し、得られた紡糸原液をポリマ−(A)
およびポリマ−(B)に対して固化能を有する固化溶媒
と前記有機溶媒とからなる固化浴に湿式または乾式紡糸
し、形成された糸条中に含有される前記有機溶媒を除去
した後置換浴にて乾燥し、延伸後、特定の条件で乾熱処
理を施すことにより、沸水収縮率が7%以下、フィブリ
ル化指数が50秒以上で、60℃、90%RH、1週間
放置後におけるフィブリル化指数の保持率が70%以上
である易フィブリル化繊維を得る。
補強効果と地合の良好な均一シ−トを得ることができる
易フィブリル化繊維とその製造方法を提供する。 【解決手段】 ビニルアルコ−ル系ポリマ−(A)およ
びポリマ−(A)と非相溶なポリマ−(B)とを共通の
有機溶媒に溶解し、得られた紡糸原液をポリマ−(A)
およびポリマ−(B)に対して固化能を有する固化溶媒
と前記有機溶媒とからなる固化浴に湿式または乾式紡糸
し、形成された糸条中に含有される前記有機溶媒を除去
した後置換浴にて乾燥し、延伸後、特定の条件で乾熱処
理を施すことにより、沸水収縮率が7%以下、フィブリ
ル化指数が50秒以上で、60℃、90%RH、1週間
放置後におけるフィブリル化指数の保持率が70%以上
である易フィブリル化繊維を得る。
Description
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は容易にフィブリル化
するビニルアルコ−ル系ポリマ−と、該ポリマ−に非相
溶なポリマ−よりなる易フィブリル化繊維およびその製
造方法に関する。化学的膨潤力および/または機械的応
力により、容易に極細フィブリルとなり、湿式または乾
式不織布、セメントやゴム等の補強繊維等に好適に用い
ることができる繊維に関する。
するビニルアルコ−ル系ポリマ−と、該ポリマ−に非相
溶なポリマ−よりなる易フィブリル化繊維およびその製
造方法に関する。化学的膨潤力および/または機械的応
力により、容易に極細フィブリルとなり、湿式または乾
式不織布、セメントやゴム等の補強繊維等に好適に用い
ることができる繊維に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、フィブリル化繊維は主として2種
類のポリマ−を混合して溶融紡糸し、1種類のポリマ−
を溶剤で溶解除去して製造されている。かかる繊維は概
ね直径が2〜3ミクロン以下と極細で風合いに優れてい
るため合成皮革や不織布として使用されるが、強度が低
く、補強繊維として使用することはできにくかった。ま
た溶剤によるフィブリル化工程が繁雑でもある。
類のポリマ−を混合して溶融紡糸し、1種類のポリマ−
を溶剤で溶解除去して製造されている。かかる繊維は概
ね直径が2〜3ミクロン以下と極細で風合いに優れてい
るため合成皮革や不織布として使用されるが、強度が低
く、補強繊維として使用することはできにくかった。ま
た溶剤によるフィブリル化工程が繁雑でもある。
【0003】また、単繊度が2〜3デニ−ルの複合繊維
を溶融紡糸により製造し、10〜50に分割して極細繊
維を得る方法もあるが、かかる極細繊維も繊維直径が3
ミクロン(繊度0.1〜0.3デニ−ル)と太く、強度
もせいぜい4g/デニ−ルと低いものであり、ゴム補強
等の補強繊維としての使用には不向きであった。さら
に、乾式不織布の用途では風合いやワイパ−性能の一層
の向上が図られており、繊度の小さい極細繊維の開発が
望まれている。
を溶融紡糸により製造し、10〜50に分割して極細繊
維を得る方法もあるが、かかる極細繊維も繊維直径が3
ミクロン(繊度0.1〜0.3デニ−ル)と太く、強度
もせいぜい4g/デニ−ルと低いものであり、ゴム補強
等の補強繊維としての使用には不向きであった。さら
に、乾式不織布の用途では風合いやワイパ−性能の一層
の向上が図られており、繊度の小さい極細繊維の開発が
望まれている。
【0004】一方、ゴム補強用繊維は通常レゾルシン−
ホルマリンラテックスなどの接着剤処理を施し、ゴムと
混練してゴム中に埋設し使用されるが、接着剤の存在な
くしてもゴムとの接着が良好な補強用繊維が望まれてい
る。かかる用途においては補強効果の発現のためには繊
維の強度が高いこと、およびフィブリル化速度が速いこ
とが必要条件である。ゴムと混練することによりフィブ
リル化させるためには、フィブリル化速度が遅いと混練
時間を長くする必要が生じ、結果としてゴムの劣化を招
いてしまうのである。
ホルマリンラテックスなどの接着剤処理を施し、ゴムと
混練してゴム中に埋設し使用されるが、接着剤の存在な
くしてもゴムとの接着が良好な補強用繊維が望まれてい
る。かかる用途においては補強効果の発現のためには繊
維の強度が高いこと、およびフィブリル化速度が速いこ
とが必要条件である。ゴムと混練することによりフィブ
リル化させるためには、フィブリル化速度が遅いと混練
時間を長くする必要が生じ、結果としてゴムの劣化を招
いてしまうのである。
【0005】また、フィブリル化繊維を含む不織布の製
造方法は、リファイナ−やビ−タ−で繊維を叩解してフ
ィブリル化した後シ−ト化する方法(叩解法)、湿式抄
紙シ−トまたはカ−ドウエブを水流絡合でフィブリル化
させる方法(水絡法)の2つに大別される。前者の方法
においてはフィブリル化速度が遅いと叩解に長時間を要
し、繊維がもつれて地合の良好な均一シ−トを得ること
ができにくい。また、後者の方法においてもフィブリル
化速度が遅いと、水圧を高めたり、ライン速度を低下さ
せることが必要になり、生産コスト的に高価となる。
造方法は、リファイナ−やビ−タ−で繊維を叩解してフ
ィブリル化した後シ−ト化する方法(叩解法)、湿式抄
紙シ−トまたはカ−ドウエブを水流絡合でフィブリル化
させる方法(水絡法)の2つに大別される。前者の方法
においてはフィブリル化速度が遅いと叩解に長時間を要
し、繊維がもつれて地合の良好な均一シ−トを得ること
ができにくい。また、後者の方法においてもフィブリル
化速度が遅いと、水圧を高めたり、ライン速度を低下さ
せることが必要になり、生産コスト的に高価となる。
【0006】上述のような要求に答えるべく、極細繊維
(フィブリル化繊維)を得る方法として、ブレンドポリ
マ−の相分離現象を利用する試みが数多くなされ提案さ
れている。たとえば特公昭49−10617号公報、特
公昭51−17609号公報、特開昭48−56925
号公報、特開昭49−6203号公報等には、ポリアク
リロニトリルを海成分とし、ポリビニルアルコ−ルにア
クリロニトリルをグラフト重合したポリマ−やメチルメ
タアクリレ−ト系ポリマ−を島成分とする海島構造繊維
を叩解してフィブリル繊維を得ることが記載されてい
る。
(フィブリル化繊維)を得る方法として、ブレンドポリ
マ−の相分離現象を利用する試みが数多くなされ提案さ
れている。たとえば特公昭49−10617号公報、特
公昭51−17609号公報、特開昭48−56925
号公報、特開昭49−6203号公報等には、ポリアク
リロニトリルを海成分とし、ポリビニルアルコ−ルにア
クリロニトリルをグラフト重合したポリマ−やメチルメ
タアクリレ−ト系ポリマ−を島成分とする海島構造繊維
を叩解してフィブリル繊維を得ることが記載されてい
る。
【0007】しかしながら、これらの提案はポリアクリ
ロニトリルを海成分としているので、固化浴として、水
と紡糸原液溶媒の混合系や固化能のある有機溶剤の単独
系が使用されているが、強い凝固作用により均一なゲル
糸を得ることができず、高倍率の延伸が困難であり、工
業的に安定でかつ安価に補強性に優れた繊維を得ること
は困難である。またグラフトポリマ−を混合すると相溶
性が良好となり相分離構造を形成しがたいため、繊維の
フィブリル化が困難となるばかりか、得られたフィブリ
ル化繊維が逆に細すぎて絡み易く、ファイバ−ボ−ルを
形成しやすいという問題点もある。
ロニトリルを海成分としているので、固化浴として、水
と紡糸原液溶媒の混合系や固化能のある有機溶剤の単独
系が使用されているが、強い凝固作用により均一なゲル
糸を得ることができず、高倍率の延伸が困難であり、工
業的に安定でかつ安価に補強性に優れた繊維を得ること
は困難である。またグラフトポリマ−を混合すると相溶
性が良好となり相分離構造を形成しがたいため、繊維の
フィブリル化が困難となるばかりか、得られたフィブリ
ル化繊維が逆に細すぎて絡み易く、ファイバ−ボ−ルを
形成しやすいという問題点もある。
【0008】このような問題点を解消すべく、本発明者
等は、連続相(海成分)がポリビニルアルコ−ル主体、
独立相(島成分)がポリアクリロニトリルからなる易フ
ィブリル繊維(特開平8−81818号公報)、連続相
(海成分)がポリビニルアルコ−ル、独立相(島成分)
がセルロ−スよりなる繊維であって、水に濡らして機械
的応力を作用させると容易にフィブリルする繊維(特開
平8−284021号公報)を提案した。これらの繊維
は容易にフィブリル化するとともに補強用繊維として十
分な強度を有するもである。
等は、連続相(海成分)がポリビニルアルコ−ル主体、
独立相(島成分)がポリアクリロニトリルからなる易フ
ィブリル繊維(特開平8−81818号公報)、連続相
(海成分)がポリビニルアルコ−ル、独立相(島成分)
がセルロ−スよりなる繊維であって、水に濡らして機械
的応力を作用させると容易にフィブリルする繊維(特開
平8−284021号公報)を提案した。これらの繊維
は容易にフィブリル化するとともに補強用繊維として十
分な強度を有するもである。
【0009】しかしながら、これらのフィブリル化繊維
は気温60℃以上、90%RHという厳しい条件下に放
置されると、1週間でフィブリル化速度が放置前の3〜
7割まで低下することが判明した。
は気温60℃以上、90%RHという厳しい条件下に放
置されると、1週間でフィブリル化速度が放置前の3〜
7割まで低下することが判明した。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、ゴム補強お
よび不織布用途に要求されている補強効果と地合の良好
な均一シ−トを得ることができる易フィブリル化繊維と
その製造方法を提供することを目的とする。
よび不織布用途に要求されている補強効果と地合の良好
な均一シ−トを得ることができる易フィブリル化繊維と
その製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】上述の目的は、ビニルア
ルコ−ル系ポリマ−(A)が海成分、ポリマ−(A)と
非相溶なポリマ−(B)が島成分をなしており、沸水収
縮率が7%以下、フィブリル化指数が50秒以上で、6
0℃、90%RH、1週間放置後におけるフィブリル化
指数の保持率が70%以上であることを特徴とする易フ
ィブリル化繊維、およびその製造方法を提供することに
よって達成される。
ルコ−ル系ポリマ−(A)が海成分、ポリマ−(A)と
非相溶なポリマ−(B)が島成分をなしており、沸水収
縮率が7%以下、フィブリル化指数が50秒以上で、6
0℃、90%RH、1週間放置後におけるフィブリル化
指数の保持率が70%以上であることを特徴とする易フ
ィブリル化繊維、およびその製造方法を提供することに
よって達成される。
【0012】
【発明の実施形態】まず、本発明の繊維はビニルアルコ
−ル系ポリマ−[以下、PVAと略称する](A)と、
該PVA(A)と非相溶なポリマ−(B)とからなり、
PVA(A)が海成分、ポリマ−(B)が島成分を形成
する。PVA(A)は強い極性基を有するので高強度、
高ヤング率の繊維を得ることができ、かつセメントやゴ
ム等との接着性が高く、耐アルカリ性でもあり、補強材
としてマトリックス成分はPVA(A)であることが重
要である。
−ル系ポリマ−[以下、PVAと略称する](A)と、
該PVA(A)と非相溶なポリマ−(B)とからなり、
PVA(A)が海成分、ポリマ−(B)が島成分を形成
する。PVA(A)は強い極性基を有するので高強度、
高ヤング率の繊維を得ることができ、かつセメントやゴ
ム等との接着性が高く、耐アルカリ性でもあり、補強材
としてマトリックス成分はPVA(A)であることが重
要である。
【0013】繊維を構成する海成分であるPVA(A)
の比率は、50重量%以上であることが好ましい。PV
A(A)が50重量%未満の場合には、PVA(A)が
海成分を形成しにくく、強度の高い繊維を得ることはで
きにくい。また、PVA(A)が80重量%を越えると
明確な相分離構造を得ることができにくく、後のフィブ
リル化が困難となる。繊維の強度、ヤング率、フィブリ
ル化度、フィブリル化後の繊維の分散性等の点により、
PVA(A)の比率は50〜80重量が好ましく、とく
に60〜70重量%であることが好ましい。
の比率は、50重量%以上であることが好ましい。PV
A(A)が50重量%未満の場合には、PVA(A)が
海成分を形成しにくく、強度の高い繊維を得ることはで
きにくい。また、PVA(A)が80重量%を越えると
明確な相分離構造を得ることができにくく、後のフィブ
リル化が困難となる。繊維の強度、ヤング率、フィブリ
ル化度、フィブリル化後の繊維の分散性等の点により、
PVA(A)の比率は50〜80重量が好ましく、とく
に60〜70重量%であることが好ましい。
【0014】上述のPVAとは、ビニルアルコ−ル単位
を70モル%以上有するポリマ−を意味しており、エチ
レン、酢酸ビニル、イタコン酸、ビニルアミン、アクリ
ルアミド、ピバリン酸ビニル、無水マレイン酸、スルホ
ン酸含有ビニル化合物等の化合物が30モル%未満の割
合で共重合されていてもよい。ケン化度は80%以上が
好ましく、配向結晶化のためには全構成ユニットの95
%以上がビニルアルコ−ル単位であるPVAがより好ま
しく、さらには99%以上がビニルアルコ−ル単位であ
るPVAが好ましい。PVAの重合度はとくに限定はな
いが、高強度のフィブリル化繊維を得るためには重合度
は500以上であることが好ましく、1500以上であ
ることがより好ましい。また、耐熱水性の改善のために
は、繊維化後、ホルムアルデヒド等のアルデヒド化合物
を用いてPVA分子内および/または分子間のアセタ−
ル化等の後反応を施しておくことも可能である。
を70モル%以上有するポリマ−を意味しており、エチ
レン、酢酸ビニル、イタコン酸、ビニルアミン、アクリ
ルアミド、ピバリン酸ビニル、無水マレイン酸、スルホ
ン酸含有ビニル化合物等の化合物が30モル%未満の割
合で共重合されていてもよい。ケン化度は80%以上が
好ましく、配向結晶化のためには全構成ユニットの95
%以上がビニルアルコ−ル単位であるPVAがより好ま
しく、さらには99%以上がビニルアルコ−ル単位であ
るPVAが好ましい。PVAの重合度はとくに限定はな
いが、高強度のフィブリル化繊維を得るためには重合度
は500以上であることが好ましく、1500以上であ
ることがより好ましい。また、耐熱水性の改善のために
は、繊維化後、ホルムアルデヒド等のアルデヒド化合物
を用いてPVA分子内および/または分子間のアセタ−
ル化等の後反応を施しておくことも可能である。
【0015】上述のポリマ−(B)とは、PVA(A)
に非相溶なポリマ−であり、PVA(A)と同一溶媒に
溶解し、かつ(A)と(B)とが海島構造の相分離構造
をなすポリマ−でなければならない。このようなポリマ
−としてポリアクリロニトリル、セルロ−スアセテ−
ト、コ−ンスタ−チ等を挙げることができ、中でもポリ
アクリロニトリル、セルロ−スアセテ−トが好ましい。
ポリアクリロニトリル(以下、PANと略称する)はア
クリロニトリル単位を70モル%以上有しているポリマ
−を示し、メチルアクリレ−ト、エチルアクリレ−ト、
メチルメタクリレ−ト等の(メタ)アクリル酸エステル
類、酢酸ビニルや酪酸ビニル等のビニルエステル類、塩
化ビニル等のビニル化合物類、アクリル酸、メタクリル
酸、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸類、スルホン
酸含有ビニル化合物等の化合物が30モル%未満の割合
で共重合されていてもよい。溶液紡糸の原液溶媒に対す
る溶解性を向上させるためには、PANホモポリマ−よ
りも他のビニルポリマ−を0.5〜10モル%、とくに
2〜8モル%共重合させたPAN系ポリマ−が好まし
い。また、セルロ−スアセテ−トとしてはセルロ−スジ
アセテ−トやセルロ−ストリアセテ−ト等の酢酸セルロ
−スを挙げることができ、繊維化した後に酢酸セルロ−
スをケン化してセルロ−スに変換したものがフィブリル
化し易いので、本発明においては好ましい。
に非相溶なポリマ−であり、PVA(A)と同一溶媒に
溶解し、かつ(A)と(B)とが海島構造の相分離構造
をなすポリマ−でなければならない。このようなポリマ
−としてポリアクリロニトリル、セルロ−スアセテ−
ト、コ−ンスタ−チ等を挙げることができ、中でもポリ
アクリロニトリル、セルロ−スアセテ−トが好ましい。
ポリアクリロニトリル(以下、PANと略称する)はア
クリロニトリル単位を70モル%以上有しているポリマ
−を示し、メチルアクリレ−ト、エチルアクリレ−ト、
メチルメタクリレ−ト等の(メタ)アクリル酸エステル
類、酢酸ビニルや酪酸ビニル等のビニルエステル類、塩
化ビニル等のビニル化合物類、アクリル酸、メタクリル
酸、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸類、スルホン
酸含有ビニル化合物等の化合物が30モル%未満の割合
で共重合されていてもよい。溶液紡糸の原液溶媒に対す
る溶解性を向上させるためには、PANホモポリマ−よ
りも他のビニルポリマ−を0.5〜10モル%、とくに
2〜8モル%共重合させたPAN系ポリマ−が好まし
い。また、セルロ−スアセテ−トとしてはセルロ−スジ
アセテ−トやセルロ−ストリアセテ−ト等の酢酸セルロ
−スを挙げることができ、繊維化した後に酢酸セルロ−
スをケン化してセルロ−スに変換したものがフィブリル
化し易いので、本発明においては好ましい。
【0016】このような構成の繊維のフィブリル化指数
は50秒以上である。ここでフィブリル化指数とは以下
の方法で測定した値である。すなわち、2mmに切断し
た繊維4gを400ccの20℃の水中で市販のミキサ
−で11000rpmで5分間叩解し、水を切った後乾
燥することなく重量を測定し、その1/8の重量(繊維
分で0.5g)を採取して再度400ccの20℃の水
中で刃を落としたミキサ−で20秒間分散させ、これに
水を加えて全量750ccにして試料とする。この試料
を、底部に直径17mmの栓と350メッシュのフィル
タ−を設けた内径63mmの円筒に移し、栓を抜いてか
ら750ccが濾過されるに要する時間を以てフィブリ
ル化指数とした。単に水のみを濾過させた時の該指数は
2.1秒である。この指数が50秒とは、30m/分の
ライン速度で100g/m2 の目付の不織布に対し、8
0kg/cm2 の圧力で表裏両面から水絡をかけた場合
にフィブリル化するか否か、または天然ゴムに2mm長
の繊維を20重量%添加して140℃、200rpmで
15分間混練してフィブリル化するか否かの境界に相当
するものである。
は50秒以上である。ここでフィブリル化指数とは以下
の方法で測定した値である。すなわち、2mmに切断し
た繊維4gを400ccの20℃の水中で市販のミキサ
−で11000rpmで5分間叩解し、水を切った後乾
燥することなく重量を測定し、その1/8の重量(繊維
分で0.5g)を採取して再度400ccの20℃の水
中で刃を落としたミキサ−で20秒間分散させ、これに
水を加えて全量750ccにして試料とする。この試料
を、底部に直径17mmの栓と350メッシュのフィル
タ−を設けた内径63mmの円筒に移し、栓を抜いてか
ら750ccが濾過されるに要する時間を以てフィブリ
ル化指数とした。単に水のみを濾過させた時の該指数は
2.1秒である。この指数が50秒とは、30m/分の
ライン速度で100g/m2 の目付の不織布に対し、8
0kg/cm2 の圧力で表裏両面から水絡をかけた場合
にフィブリル化するか否か、または天然ゴムに2mm長
の繊維を20重量%添加して140℃、200rpmで
15分間混練してフィブリル化するか否かの境界に相当
するものである。
【0017】上述のフィブリル化指数が50秒未満であ
ると、フィブリル化工程でフィブリル化しない場合があ
り、そのため叩解時間が長くなり、得られたフィブリル
化繊維の分散性が悪化し、ファイバ−ボ−ルを形成する
傾向となる。なぜ、叩解時間が長いとフィブリルの分散
性が悪化するかは定かではないが、フィブリルが細くな
って絡み易くなるためと推定される。なお、ファイバ−
ボ−ルは、叩解液40ccを300ccビ−カ−に採
り、粘剤(0.1%ポリエチレンオキサイド水溶液)2
gと水を加えて200ccとした後、ガラス棒で十分に
撹拌分散させた際、該分散液にフィブリル同士または繊
維とフィブリルとの絡み合いが形成され、ガラス棒によ
る撹拌操作だけでは解離することができない径3mm以
上のファイバ−ボ−ルの存在の有無によって確認でき
る。本発明の繊維はこのファイバ−ボ−ルが形成されに
くいという特徴を有している。
ると、フィブリル化工程でフィブリル化しない場合があ
り、そのため叩解時間が長くなり、得られたフィブリル
化繊維の分散性が悪化し、ファイバ−ボ−ルを形成する
傾向となる。なぜ、叩解時間が長いとフィブリルの分散
性が悪化するかは定かではないが、フィブリルが細くな
って絡み易くなるためと推定される。なお、ファイバ−
ボ−ルは、叩解液40ccを300ccビ−カ−に採
り、粘剤(0.1%ポリエチレンオキサイド水溶液)2
gと水を加えて200ccとした後、ガラス棒で十分に
撹拌分散させた際、該分散液にフィブリル同士または繊
維とフィブリルとの絡み合いが形成され、ガラス棒によ
る撹拌操作だけでは解離することができない径3mm以
上のファイバ−ボ−ルの存在の有無によって確認でき
る。本発明の繊維はこのファイバ−ボ−ルが形成されに
くいという特徴を有している。
【0018】さらに本発明の繊維は、60℃、90%R
Hの過酷な条件に1週間放置した後の、上述のフィブリ
ル化指数の保持率が70%以上である。製品の保管、輸
送条件によっては高温多湿条件下に放置する場合もあ
り、該フィブリル化指数の保持率が70%未満である
と、フィブリル化性能が著しく劣ったものになりかねな
い。フィブリル化性能の点において、該フィブリル化保
持率は80%以上、とくに90%以上であることが好ま
しい。
Hの過酷な条件に1週間放置した後の、上述のフィブリ
ル化指数の保持率が70%以上である。製品の保管、輸
送条件によっては高温多湿条件下に放置する場合もあ
り、該フィブリル化指数の保持率が70%未満である
と、フィブリル化性能が著しく劣ったものになりかねな
い。フィブリル化性能の点において、該フィブリル化保
持率は80%以上、とくに90%以上であることが好ま
しい。
【0019】また、本発明の繊維は湿熱収縮率(WS
r)が7%以下である。WSrが7%を越える繊維を、
60℃、90%RHの条件で1週間放置するとフィブリ
ル化指数の保持率が70%未満、悪い場合には30%ま
で低下し、セメント、ゴム、樹脂などの補強効果、不織
布用途の地合の良好な均一性は到底望むべくもない。フ
ィブリル化指数の経時変化は繊維の結晶構造の緩和に起
因していると推測されるので、WSrは低いほうが該経
時変化が抑制されるのである。
r)が7%以下である。WSrが7%を越える繊維を、
60℃、90%RHの条件で1週間放置するとフィブリ
ル化指数の保持率が70%未満、悪い場合には30%ま
で低下し、セメント、ゴム、樹脂などの補強効果、不織
布用途の地合の良好な均一性は到底望むべくもない。フ
ィブリル化指数の経時変化は繊維の結晶構造の緩和に起
因していると推測されるので、WSrは低いほうが該経
時変化が抑制されるのである。
【0020】本発明の繊維は、上述のWSrおよびフィ
ブリル化指数、該指数の保持率が特定値を満足するもの
であるが、さらに強度が7g/デニ−ル以上であり、ヤ
ング率が100g/デニ−ル以上であることが好まし
い。強度が7g/デニ−ル未満、あるいはヤング率が1
00g/デニ−ル未満の場合には、セメント、ゴム、樹
脂等の補強効果が不十分となり易い。補強効果を考慮す
ると、強度は9g/デニ−ル以上、ヤング率は150g
/デニ−ル以上がより好ましい。
ブリル化指数、該指数の保持率が特定値を満足するもの
であるが、さらに強度が7g/デニ−ル以上であり、ヤ
ング率が100g/デニ−ル以上であることが好まし
い。強度が7g/デニ−ル未満、あるいはヤング率が1
00g/デニ−ル未満の場合には、セメント、ゴム、樹
脂等の補強効果が不十分となり易い。補強効果を考慮す
ると、強度は9g/デニ−ル以上、ヤング率は150g
/デニ−ル以上がより好ましい。
【0021】次に、上述の性能を有する繊維の製造方法
について詳述する。まず、PVA(A)とポリマ−
(B)を共通溶媒に溶解し紡糸原液とする。共通の溶媒
としてはジメチルスルホキシド(以下、DMSOと略称
する)、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムミド等
の極性有機溶媒を挙げることができる。とくに低温溶解
性、ポリマ−低分解性等の点によりDMSOが好まし
い。原液中のポリマ−濃度は10〜30重量%の範囲が
好ましく、原液温度は50〜140℃の範囲が好まし
い。
について詳述する。まず、PVA(A)とポリマ−
(B)を共通溶媒に溶解し紡糸原液とする。共通の溶媒
としてはジメチルスルホキシド(以下、DMSOと略称
する)、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムミド等
の極性有機溶媒を挙げることができる。とくに低温溶解
性、ポリマ−低分解性等の点によりDMSOが好まし
い。原液中のポリマ−濃度は10〜30重量%の範囲が
好ましく、原液温度は50〜140℃の範囲が好まし
い。
【0022】各ポリマ−の溶媒への溶解方法は限定され
るものではなく、2種類のポリマ−をそれぞれ単独で原
液溶媒に溶解したものを適当な割合で混合する方法、一
方のポリマ−を溶解した溶液に他方のポリマ−を添加し
て溶解させる方法、2種類のポリマ−を同時に溶解させ
る方法などいずれをも採用することができる。また紡糸
原液にはポリマ−の安定化剤として酸類、酸化防止剤な
どを添加してもよい。
るものではなく、2種類のポリマ−をそれぞれ単独で原
液溶媒に溶解したものを適当な割合で混合する方法、一
方のポリマ−を溶解した溶液に他方のポリマ−を添加し
て溶解させる方法、2種類のポリマ−を同時に溶解させ
る方法などいずれをも採用することができる。また紡糸
原液にはポリマ−の安定化剤として酸類、酸化防止剤な
どを添加してもよい。
【0023】上述の紡糸原液は、相分離構造をなしてお
り、PVA(A)が海成分、ポリマ−(B)が島成分と
なる、いわゆる海島構造となっている。この島成分の直
径は10〜100ミクロンの範囲であることが好まし
い。かかる相分離構造とは、紡糸原液をスライドガラス
上に約200ミクロンの厚さに滴下し、微分干渉顕微鏡
装置(BX−60型、オリンパス光学社製)を用いて写
真撮影し測定した値であり、判別できる大多数の島成分
の径が10〜100ミクロンの範囲の径を有しているこ
とを意味している。本発明においては、このような相分
離構造が、フィブリル化性能に大きく起因し、島成分の
径が100ミクロンを越える場合には紡糸原液安定性お
よび紡糸安定性の点で好ましくない。また大多数の島成
分の径が10ミクロン未満では相分離構造が小さく、す
なわち紡糸原液がより均一な傾向になり、得られた繊維
の叩解性(フィブリル化性能)が悪くなる。より好まし
い島成分の径は20〜50ミクロンの範囲である。紡糸
原液での相分離構造が固化時の核となり、フィブリル化
し易い繊維を得ることができるのである。
り、PVA(A)が海成分、ポリマ−(B)が島成分と
なる、いわゆる海島構造となっている。この島成分の直
径は10〜100ミクロンの範囲であることが好まし
い。かかる相分離構造とは、紡糸原液をスライドガラス
上に約200ミクロンの厚さに滴下し、微分干渉顕微鏡
装置(BX−60型、オリンパス光学社製)を用いて写
真撮影し測定した値であり、判別できる大多数の島成分
の径が10〜100ミクロンの範囲の径を有しているこ
とを意味している。本発明においては、このような相分
離構造が、フィブリル化性能に大きく起因し、島成分の
径が100ミクロンを越える場合には紡糸原液安定性お
よび紡糸安定性の点で好ましくない。また大多数の島成
分の径が10ミクロン未満では相分離構造が小さく、す
なわち紡糸原液がより均一な傾向になり、得られた繊維
の叩解性(フィブリル化性能)が悪くなる。より好まし
い島成分の径は20〜50ミクロンの範囲である。紡糸
原液での相分離構造が固化時の核となり、フィブリル化
し易い繊維を得ることができるのである。
【0024】紡糸原液の相分離構造を左右する因子とし
ては、両ポリマ−の相溶性、組成比、原液中の各ポリマ
−の濃度、原液溶媒の種類、原液の温度、溶解時の撹拌
速度等が考えられる。両ポリマ−の相溶性に関しては、
該相溶性が低下するにしたがって上述の島成分の径が小
さくなる傾向にあり、また島成分を構成するポリマ−の
混合比率が高くなると島成分の径が小さくなる傾向にあ
る。各ポリマ−濃度が高くなるにしたがって島成分の径
は小さくなる傾向があり、両ポリマ−に対して相溶性の
高い溶媒を使用すると島成分の径が小さくなる傾向にあ
る。また紡糸原液温度が高くなる程、溶解時の撹拌速度
が遅くなる程島成分の径は大きくなる傾向にある。した
がって、島成分の径を所望の範囲にするには、適当な条
件で紡糸原液を作製し、この時の島成分の径を測定し
て、その結果を元に上述の因子の少なくとも1つを変更
することにより、島成分の径を所望の径にすることがで
きる。
ては、両ポリマ−の相溶性、組成比、原液中の各ポリマ
−の濃度、原液溶媒の種類、原液の温度、溶解時の撹拌
速度等が考えられる。両ポリマ−の相溶性に関しては、
該相溶性が低下するにしたがって上述の島成分の径が小
さくなる傾向にあり、また島成分を構成するポリマ−の
混合比率が高くなると島成分の径が小さくなる傾向にあ
る。各ポリマ−濃度が高くなるにしたがって島成分の径
は小さくなる傾向があり、両ポリマ−に対して相溶性の
高い溶媒を使用すると島成分の径が小さくなる傾向にあ
る。また紡糸原液温度が高くなる程、溶解時の撹拌速度
が遅くなる程島成分の径は大きくなる傾向にある。した
がって、島成分の径を所望の範囲にするには、適当な条
件で紡糸原液を作製し、この時の島成分の径を測定し
て、その結果を元に上述の因子の少なくとも1つを変更
することにより、島成分の径を所望の径にすることがで
きる。
【0025】島成分の径を上述の10〜100ミクロン
の範囲にした紡糸原液の粘度は、湿式紡糸する場合には
10〜400ポイズ、乾湿式紡糸する場合には50〜2
000ポイズの範囲にあることが好ましく、かかる粘度
は溶融紡糸時の粘度より課なる低いものである。
の範囲にした紡糸原液の粘度は、湿式紡糸する場合には
10〜400ポイズ、乾湿式紡糸する場合には50〜2
000ポイズの範囲にあることが好ましく、かかる粘度
は溶融紡糸時の粘度より課なる低いものである。
【0026】調整された紡糸原液は、紡糸ノズルを通す
ことにより固化浴中に湿式紡糸、または乾湿式紡糸す
る。固化浴を紡糸ノズルの直接接触させる湿式紡糸方法
では、ノズル孔ピッチを狭くしても繊維同士が膠着せず
に紡糸できるため多孔ノズルを用いた紡糸方法に適して
いる。一方、固化浴と紡糸ノズルとの間に空気相を設け
る乾湿式紡糸方法では、空気相部での伸びが大きいので
高速紡糸に適している。本発明においては、目的に応じ
て湿式紡糸方法、乾湿式紡糸方法のいずれを選択しても
よい。
ことにより固化浴中に湿式紡糸、または乾湿式紡糸す
る。固化浴を紡糸ノズルの直接接触させる湿式紡糸方法
では、ノズル孔ピッチを狭くしても繊維同士が膠着せず
に紡糸できるため多孔ノズルを用いた紡糸方法に適して
いる。一方、固化浴と紡糸ノズルとの間に空気相を設け
る乾湿式紡糸方法では、空気相部での伸びが大きいので
高速紡糸に適している。本発明においては、目的に応じ
て湿式紡糸方法、乾湿式紡糸方法のいずれを選択しても
よい。
【0027】上述の固化浴は、固化溶媒と原液溶媒とか
らなる混合液を使用し、固化溶媒としては有機溶媒を、
固化浴中での固化溶媒と原液溶媒との混合比は前者/後
者=25/75〜85/15(重量比)であることが好
ましい。固化溶媒は、メタノ−ル、エタノ−ル等のアル
コ−ル類、アセトンメチルエチルケトン等のケトン類な
ど、PVA(A)およびポリマ−(B)のいずれに対し
ても凝固能を有する有機溶媒を使用することが好まし
い。従来公知のPVA/PAN系のフィブリル化繊維の
場合には、ほとんどPANが主成分となっており、工業
的な固化浴としてはPANに対して強力な凝固能を有す
る水を使用しているが、水はPVAに対して凝固能がな
く、両ポリマ−に対する凝固能が著しく異なっており、
バランスを欠いているのに対し、有機溶媒系はいずれの
ポリマ−に対しても凝固能を有しており、しかも原液溶
媒を混合することによりバランスよく両ポリマ−を凝固
させることができる。
らなる混合液を使用し、固化溶媒としては有機溶媒を、
固化浴中での固化溶媒と原液溶媒との混合比は前者/後
者=25/75〜85/15(重量比)であることが好
ましい。固化溶媒は、メタノ−ル、エタノ−ル等のアル
コ−ル類、アセトンメチルエチルケトン等のケトン類な
ど、PVA(A)およびポリマ−(B)のいずれに対し
ても凝固能を有する有機溶媒を使用することが好まし
い。従来公知のPVA/PAN系のフィブリル化繊維の
場合には、ほとんどPANが主成分となっており、工業
的な固化浴としてはPANに対して強力な凝固能を有す
る水を使用しているが、水はPVAに対して凝固能がな
く、両ポリマ−に対する凝固能が著しく異なっており、
バランスを欠いているのに対し、有機溶媒系はいずれの
ポリマ−に対しても凝固能を有しており、しかも原液溶
媒を混合することによりバランスよく両ポリマ−を凝固
させることができる。
【0028】本発明において固化レベルを適正に維持す
るには、固化浴中の固化溶媒と原液溶媒の組成比は上述
した通りであり、固化浴中の原液溶媒の濃度が15重量
%未満の場合には、マトリックスを形成するPVA
(A)の凝固能が高すぎ、ノズル切れが生じ、紡糸調子
が不良となり易く、得られる繊維の強度、ヤング率が低
下る傾向となる。一方、原液溶媒の濃度が75重量%を
越えて高くなると、十分な凝固ができず、これもまた紡
糸調子が不良となりやすく、得られる繊維の強度、ヤン
グ率が低下する場合がある。したがって、固化浴中の原
液溶媒の濃度は20〜70重量、とくに25〜65重量
%の範囲であることが好ましい。なお、本発明において
は、固化浴は上述したように固化溶媒と原液溶媒との混
合溶媒が使用されるが、これら以外の液体や固体が得ら
れる繊維の諸性能を阻害しない範囲で添加されていても
よい。本発明においては、上述の混合溶媒としてはメタ
ノ−ル−DMSOの組合わせが好適である。
るには、固化浴中の固化溶媒と原液溶媒の組成比は上述
した通りであり、固化浴中の原液溶媒の濃度が15重量
%未満の場合には、マトリックスを形成するPVA
(A)の凝固能が高すぎ、ノズル切れが生じ、紡糸調子
が不良となり易く、得られる繊維の強度、ヤング率が低
下る傾向となる。一方、原液溶媒の濃度が75重量%を
越えて高くなると、十分な凝固ができず、これもまた紡
糸調子が不良となりやすく、得られる繊維の強度、ヤン
グ率が低下する場合がある。したがって、固化浴中の原
液溶媒の濃度は20〜70重量、とくに25〜65重量
%の範囲であることが好ましい。なお、本発明において
は、固化浴は上述したように固化溶媒と原液溶媒との混
合溶媒が使用されるが、これら以外の液体や固体が得ら
れる繊維の諸性能を阻害しない範囲で添加されていても
よい。本発明においては、上述の混合溶媒としてはメタ
ノ−ル−DMSOの組合わせが好適である。
【0029】固化浴で固化された糸条は、湿延伸、原液
溶媒の抽出工程を経てアルコ−ル類、ケトン類、水の3
成分系からなる置換浴でケトンが付与される。置換浴は
アルコ−ル類とケトン類との混合比率が前者/後者=9
/1〜1/9(重量比)で、水が全体の1〜30重量%
であることが好ましい。アルコ−ル類がこの範囲外の場
合には所望の繊維の叩解性を得ることができにくく、水
がこの範囲外の場合には糸条に膠着が生じ、得られる繊
維の強度、ヤング率の低下が見られたり、繊維の叩解性
が低下したりする。より好ましい置換浴の組成はアルコ
−ル類/ケトン類=7/3〜3/7、かつ水が全体の5
〜20重量%、とくにアルコ−ル類/ケトン類=7/3
〜6/4、かつ水が全体の5〜15重量%が好ましい。
なお、本発明においては、置換浴は上述したようにアル
コ−ル類、ケトン類および水との混合系が使用される
が、これら以外の液体や固体が得られる繊維の諸性能を
阻害しない範囲で添加されていてもよい。
溶媒の抽出工程を経てアルコ−ル類、ケトン類、水の3
成分系からなる置換浴でケトンが付与される。置換浴は
アルコ−ル類とケトン類との混合比率が前者/後者=9
/1〜1/9(重量比)で、水が全体の1〜30重量%
であることが好ましい。アルコ−ル類がこの範囲外の場
合には所望の繊維の叩解性を得ることができにくく、水
がこの範囲外の場合には糸条に膠着が生じ、得られる繊
維の強度、ヤング率の低下が見られたり、繊維の叩解性
が低下したりする。より好ましい置換浴の組成はアルコ
−ル類/ケトン類=7/3〜3/7、かつ水が全体の5
〜20重量%、とくにアルコ−ル類/ケトン類=7/3
〜6/4、かつ水が全体の5〜15重量%が好ましい。
なお、本発明においては、置換浴は上述したようにアル
コ−ル類、ケトン類および水との混合系が使用される
が、これら以外の液体や固体が得られる繊維の諸性能を
阻害しない範囲で添加されていてもよい。
【0030】ケトン類はメチルエチルケトン、メチルイ
ソブチルケトン、メチルイソプロピルケトン等、炭素数
が4以上のものであればよいが、メチルエチルケトン、
メチルイソプロピルケトンはアルコ−ル類、たとえばメ
タノ−ルと共沸し回収が困難となる場合があるので、メ
チルイソブチルケトンを用いることが好ましい。ケトン
類の付与は抽出工程後の繊維をアルコ−ル類−水−ケト
ン類の混合液中で行ってもよいし、予めアルコ−ル類−
水の混合液を付与した後、3成分系やケトン類−アルコ
−ル類の混合液を付与してもよい。
ソブチルケトン、メチルイソプロピルケトン等、炭素数
が4以上のものであればよいが、メチルエチルケトン、
メチルイソプロピルケトンはアルコ−ル類、たとえばメ
タノ−ルと共沸し回収が困難となる場合があるので、メ
チルイソブチルケトンを用いることが好ましい。ケトン
類の付与は抽出工程後の繊維をアルコ−ル類−水−ケト
ン類の混合液中で行ってもよいし、予めアルコ−ル類−
水の混合液を付与した後、3成分系やケトン類−アルコ
−ル類の混合液を付与してもよい。
【0031】かかる置換工程の後、150℃以下の乾燥
を行う。ここで乾燥温度が高い程、得られる繊維のフィ
ブリル化指数が小さくなる傾向にあるので、80℃以下
の温度で乾燥を行うことがより好ましい。
を行う。ここで乾燥温度が高い程、得られる繊維のフィ
ブリル化指数が小さくなる傾向にあるので、80℃以下
の温度で乾燥を行うことがより好ましい。
【0032】かかる乾燥工程を経た後、乾熱延伸工程に
糸条を供する。本発明においては全延伸倍率が8倍以上
となるように乾熱延伸を行うことが好ましい。全延伸倍
率とは、湿延伸倍率と乾熱延伸倍率との積で換算される
倍率であり、全延伸倍率が8倍未満の場合には容易にフ
ィブリル化する繊維を得ることができにくい。
糸条を供する。本発明においては全延伸倍率が8倍以上
となるように乾熱延伸を行うことが好ましい。全延伸倍
率とは、湿延伸倍率と乾熱延伸倍率との積で換算される
倍率であり、全延伸倍率が8倍未満の場合には容易にフ
ィブリル化する繊維を得ることができにくい。
【0033】全延伸倍率を8倍以上とするための因子と
しては、PVA(A)およびポリマ−(B)の組成比、
固化浴組成比や固化浴温度等の固化条件、湿延伸倍率等
の湿延伸条件、置換浴組成比等の置換浴条件、乾熱延伸
温度や乾熱延伸雰囲気での滞留時間(延伸速度)等の乾
熱延伸条件などを挙げることができる。PVA(A)お
よびポリマ−(B)の組成比では、前者の比率を高める
と全延伸倍率を高くすることができ、固化浴中の原液溶
媒の割合が高くなるに従い全延伸倍率が低くなり、固化
浴温度が高くなると全延伸倍率が高くなる傾向がある。
本発明においては、固化浴温度は0〜30℃の範囲が好
ましい。また湿熱延伸倍率を高くする、乾熱延伸温度を
高くする、滞留時間を長くすると全延伸倍率が高くなる
傾向にある。本発明においては、湿延伸倍率は1.5〜
4.5倍の範囲、乾熱延伸温度は210/250℃の範
囲、滞留時間は5〜90秒の範囲が好ましい。したがっ
て、全延伸倍率を所望の値にするためには、まず適当な
条件で紡糸、延伸を行い、その時の全延伸倍率を元に、
上記の因子の少なくとも1つを変更することにより、全
延伸倍率を所望の値に容易に変更することができる。本
発明においては、全延伸倍率は12倍以上であることが
より好ましく、15倍以上であることがさらに好まし
い。
しては、PVA(A)およびポリマ−(B)の組成比、
固化浴組成比や固化浴温度等の固化条件、湿延伸倍率等
の湿延伸条件、置換浴組成比等の置換浴条件、乾熱延伸
温度や乾熱延伸雰囲気での滞留時間(延伸速度)等の乾
熱延伸条件などを挙げることができる。PVA(A)お
よびポリマ−(B)の組成比では、前者の比率を高める
と全延伸倍率を高くすることができ、固化浴中の原液溶
媒の割合が高くなるに従い全延伸倍率が低くなり、固化
浴温度が高くなると全延伸倍率が高くなる傾向がある。
本発明においては、固化浴温度は0〜30℃の範囲が好
ましい。また湿熱延伸倍率を高くする、乾熱延伸温度を
高くする、滞留時間を長くすると全延伸倍率が高くなる
傾向にある。本発明においては、湿延伸倍率は1.5〜
4.5倍の範囲、乾熱延伸温度は210/250℃の範
囲、滞留時間は5〜90秒の範囲が好ましい。したがっ
て、全延伸倍率を所望の値にするためには、まず適当な
条件で紡糸、延伸を行い、その時の全延伸倍率を元に、
上記の因子の少なくとも1つを変更することにより、全
延伸倍率を所望の値に容易に変更することができる。本
発明においては、全延伸倍率は12倍以上であることが
より好ましく、15倍以上であることがさらに好まし
い。
【0034】次に乾熱延伸工程を経た糸条は乾熱処理を
施される。上述のフィブリル化指数を保持するために
は、この乾熱処理が重要な工程となる。本工程では延伸
倍率が1.5倍以下、温度210℃以上、処理時間15
秒以上の条件で処理が施される。本発明において、乾熱
延伸倍率とは、乾熱延伸後の糸条にさらに施す延伸の倍
率を意味し、全延伸倍率とは区別されるべきものであ
る。かかる条件で乾熱処理が施されないと、フィブリル
化指数の経時変化が生じ、本発明の効果を奏することが
できない。高温高湿条件下に放置された繊維は、その繊
維構造が緩和され、フィブリル化指数の経時変化が生じ
るが、乾熱延伸を施すことにより、この繊維構造の緩和
が抑制され、そのため、フィブリル化指数の経時変化が
抑制されるものと推測される。
施される。上述のフィブリル化指数を保持するために
は、この乾熱処理が重要な工程となる。本工程では延伸
倍率が1.5倍以下、温度210℃以上、処理時間15
秒以上の条件で処理が施される。本発明において、乾熱
延伸倍率とは、乾熱延伸後の糸条にさらに施す延伸の倍
率を意味し、全延伸倍率とは区別されるべきものであ
る。かかる条件で乾熱処理が施されないと、フィブリル
化指数の経時変化が生じ、本発明の効果を奏することが
できない。高温高湿条件下に放置された繊維は、その繊
維構造が緩和され、フィブリル化指数の経時変化が生じ
るが、乾熱延伸を施すことにより、この繊維構造の緩和
が抑制され、そのため、フィブリル化指数の経時変化が
抑制されるものと推測される。
【0035】このため、乾熱延伸温度は高いほうが好ま
しく、220℃以上、とくに230℃以上が好ましい。
210℃未満の温度での処理では繊維構造が十分に固定
されず、上述の構造の緩和抑制にはならない。また25
0℃以上の温度での処理では繊維が分解着色するので好
ましくない。
しく、220℃以上、とくに230℃以上が好ましい。
210℃未満の温度での処理では繊維構造が十分に固定
されず、上述の構造の緩和抑制にはならない。また25
0℃以上の温度での処理では繊維が分解着色するので好
ましくない。
【0036】乾熱延伸倍率については低いほうが好まし
く、0.9〜1.5倍の範囲が好ましく、0.95〜
1.2倍の範囲がより好ましい。該延伸倍率が1.5倍
を越えると、繊維構造の緩和抑制にならず、フィブリル
化指数の経時変化が生じることになる。また、該倍率が
0.9倍未満になるとフィブリル化指数が低下する場合
がある。また処理時間は長いほどよく、30秒以上が好
ましく、40秒以上であることがより好ましい。処理時
間が15秒未満の場合、繊維構造の固定が十分ではな
く、繊維構造の緩和抑制にならず、フィブリル化指数の
経時変化が生じることになる。
く、0.9〜1.5倍の範囲が好ましく、0.95〜
1.2倍の範囲がより好ましい。該延伸倍率が1.5倍
を越えると、繊維構造の緩和抑制にならず、フィブリル
化指数の経時変化が生じることになる。また、該倍率が
0.9倍未満になるとフィブリル化指数が低下する場合
がある。また処理時間は長いほどよく、30秒以上が好
ましく、40秒以上であることがより好ましい。処理時
間が15秒未満の場合、繊維構造の固定が十分ではな
く、繊維構造の緩和抑制にならず、フィブリル化指数の
経時変化が生じることになる。
【0037】上述の製造方法によって得られた繊維は、
無機微粒子と共に分散撹拌するとフィブリル化し、微粒
子捕捉性と補強性に優れ、しかも耐熱溶融性にも優れた
混合物を得ることができるため、ブレ−キやクラッチ等
の摩擦材として有用である。また、フィブリル繊維をセ
メントに混合分散させると、セメント粒子の捕捉性に優
れ、しかも補強性に優れているため、高強度スレ−ト板
に用いることもできる。さらにゴム素練り前に、本発明
の繊維を添加し、素練り等の機械的剪断力を加えると、
ゴム中でフィブリル化し、繊維を構成するポリマ−自体
のゴムに対する高接着性と、フィブリル化による比表面
積の増大により、レゾルシン−ホルマリンラテックス処
理を施さなくてもゴムに対する十分な補強効果を得るこ
とができる。
無機微粒子と共に分散撹拌するとフィブリル化し、微粒
子捕捉性と補強性に優れ、しかも耐熱溶融性にも優れた
混合物を得ることができるため、ブレ−キやクラッチ等
の摩擦材として有用である。また、フィブリル繊維をセ
メントに混合分散させると、セメント粒子の捕捉性に優
れ、しかも補強性に優れているため、高強度スレ−ト板
に用いることもできる。さらにゴム素練り前に、本発明
の繊維を添加し、素練り等の機械的剪断力を加えると、
ゴム中でフィブリル化し、繊維を構成するポリマ−自体
のゴムに対する高接着性と、フィブリル化による比表面
積の増大により、レゾルシン−ホルマリンラテックス処
理を施さなくてもゴムに対する十分な補強効果を得るこ
とができる。
【0038】また、本発明の繊維を用いて得られたフィ
ブリル化シ−トは、緻密性、遮断性、不透明性、拭き取
り性、吸水性、吸油性、透湿性、保温性、高接着性、耐
候性、高強度、高引裂力、耐摩耗性、制電性、ドレ−プ
性、染色性、安全性等に極めて優れているため、エア−
フィルタ−、バグフィルタ−、液体フィルタ−、掃除機
用フィルタ−、水切りフィルタ−、菌遮断性フィルタ−
等の各種のフィルタ−用シ−ト;電離セパレ−タ−、コ
ンデンサ−用セパレ−タ−紙、フロッピ−ディスク包装
材等の各種電気器材用シ−ト;FRPサ−フェ−サ−、
粘着用テ−プ基材、吸油材、製紙フェルト等の各種工業
用シ−ト;家庭、業務、医療用ワイパ−、印刷ロ−ル用
ワイパ−、複写機クリ−ニング用ワイパ−、光学機器用
ワイパ−等の各種ワイパ−用シ−ト;手術衣、ガウン、
覆布、キャップ、マスク、シ−ト、タオル、ガ−ゼ、パ
ップ剤基布、おむつ、おむつライナ−、おむつカバ−、
絆創膏基布、おしぼり、ティッシュ等の各種医療・衛材
用シ−ト;芯地、パット、ジャンパ−ライナ−、ディス
ポ下着等の各種衣料用シ−ト;人工・合成皮革用基布、
テ−ブルトップ、壁紙、障子紙、ブラインド、カレンダ
−、ラッピング、カイロ・乾燥剤袋、防虫剤袋、芳香剤
袋、買い物袋、風呂敷、ス−ツカバ−、枕カバ−等の各
種生活資材用シ−ト;寒冷紗、内張カ−テン、遮光・防
草シ−ト、農薬包装材、育苗ポット、育苗ポット下敷紙
等の各種農業用シ−ト、防煙・防塵マスク、実験着、防
塵服等の各種防護用シ−ト;ハウスラップ、ドレン材、
濾過材、分離材、オ−バ−レイ、ル−フィング、タフト
カ−ペット基布、結露紡糸シ−ト、壁装材、防音・防振
シ−ト、木質ボ−ド、養生シ−ト等の各種土木建築用シ
−ト;フロア・トラックマット、天井成型材、ヘッドレ
スト、内張布等の各種車両内装材用シ−トなどの用途に
用いることができる。
ブリル化シ−トは、緻密性、遮断性、不透明性、拭き取
り性、吸水性、吸油性、透湿性、保温性、高接着性、耐
候性、高強度、高引裂力、耐摩耗性、制電性、ドレ−プ
性、染色性、安全性等に極めて優れているため、エア−
フィルタ−、バグフィルタ−、液体フィルタ−、掃除機
用フィルタ−、水切りフィルタ−、菌遮断性フィルタ−
等の各種のフィルタ−用シ−ト;電離セパレ−タ−、コ
ンデンサ−用セパレ−タ−紙、フロッピ−ディスク包装
材等の各種電気器材用シ−ト;FRPサ−フェ−サ−、
粘着用テ−プ基材、吸油材、製紙フェルト等の各種工業
用シ−ト;家庭、業務、医療用ワイパ−、印刷ロ−ル用
ワイパ−、複写機クリ−ニング用ワイパ−、光学機器用
ワイパ−等の各種ワイパ−用シ−ト;手術衣、ガウン、
覆布、キャップ、マスク、シ−ト、タオル、ガ−ゼ、パ
ップ剤基布、おむつ、おむつライナ−、おむつカバ−、
絆創膏基布、おしぼり、ティッシュ等の各種医療・衛材
用シ−ト;芯地、パット、ジャンパ−ライナ−、ディス
ポ下着等の各種衣料用シ−ト;人工・合成皮革用基布、
テ−ブルトップ、壁紙、障子紙、ブラインド、カレンダ
−、ラッピング、カイロ・乾燥剤袋、防虫剤袋、芳香剤
袋、買い物袋、風呂敷、ス−ツカバ−、枕カバ−等の各
種生活資材用シ−ト;寒冷紗、内張カ−テン、遮光・防
草シ−ト、農薬包装材、育苗ポット、育苗ポット下敷紙
等の各種農業用シ−ト、防煙・防塵マスク、実験着、防
塵服等の各種防護用シ−ト;ハウスラップ、ドレン材、
濾過材、分離材、オ−バ−レイ、ル−フィング、タフト
カ−ペット基布、結露紡糸シ−ト、壁装材、防音・防振
シ−ト、木質ボ−ド、養生シ−ト等の各種土木建築用シ
−ト;フロア・トラックマット、天井成型材、ヘッドレ
スト、内張布等の各種車両内装材用シ−トなどの用途に
用いることができる。
【0039】
【実施例】以下、実施例により本発明を詳述するが、本
発明はこれら実施例によりなんら限定されるものではな
い。なお、実施例中の各測定値は以下の方法により測定
算出された値である。 (1)湿熱収縮率 試料を所定長(L0 )を採取し、100℃沸水中に30
分間浸漬する。浸漬後の試料を室 温で15時間乾燥
し、繊維長さL(m)を測定し、下記式にて算出した。 湿熱収縮率(%)=[(L0 −L)/L0 ]×100 (2)強度・ヤング率 JIS L 1015に準拠して測定した引張強度およ
び初期引張抵抗度を示す。
発明はこれら実施例によりなんら限定されるものではな
い。なお、実施例中の各測定値は以下の方法により測定
算出された値である。 (1)湿熱収縮率 試料を所定長(L0 )を採取し、100℃沸水中に30
分間浸漬する。浸漬後の試料を室 温で15時間乾燥
し、繊維長さL(m)を測定し、下記式にて算出した。 湿熱収縮率(%)=[(L0 −L)/L0 ]×100 (2)強度・ヤング率 JIS L 1015に準拠して測定した引張強度およ
び初期引張抵抗度を示す。
【0040】実施例1 重合度1750、ケン化度99.8%のPVAと、酢酸
ビニル5モル%共重合したPANをDMSOに溶解し、
100℃で10時間窒素気流下150rpmで撹拌溶解
し、PVA/PAN=60/40(重量比)でポリマ−
濃度が20重量%の混合紡糸原液を得た。この原液を肉
眼で観察すると不透明であり、上記した方法で相分離構
造を観察すると10〜100ミクロンの範囲の径を有す
る島成分が確認された。また熱水処理によりPVAが海
成分、PANが島成分を構成していることも確認され
た。(従来の島成分の径よりも大きな径を有している
が、これは撹拌速度が150rpmと低速度であるため
である。) この紡糸原液を8時間静置脱泡したが、2相に相分離す
ることはなく極めて安定した相分離構造を呈していた。
ビニル5モル%共重合したPANをDMSOに溶解し、
100℃で10時間窒素気流下150rpmで撹拌溶解
し、PVA/PAN=60/40(重量比)でポリマ−
濃度が20重量%の混合紡糸原液を得た。この原液を肉
眼で観察すると不透明であり、上記した方法で相分離構
造を観察すると10〜100ミクロンの範囲の径を有す
る島成分が確認された。また熱水処理によりPVAが海
成分、PANが島成分を構成していることも確認され
た。(従来の島成分の径よりも大きな径を有している
が、これは撹拌速度が150rpmと低速度であるため
である。) この紡糸原液を8時間静置脱泡したが、2相に相分離す
ることはなく極めて安定した相分離構造を呈していた。
【0041】この紡糸原液(100℃)を、孔数100
0ホ−ル、孔径0.08mmの紡糸口金を通して、DM
SO/メタノ−ル=30/70(重量比)、温度が5℃
の固化浴中に湿式紡糸し、3倍の湿延伸を施し、糸条中
のDMSOをメタノ−ルで抽出し、最後の抽出洗浄をメ
タノ−ル/メチルイソブチルケトン/水=48/32/
20(重量比)の置換浴を通過させて行い、油剤を付与
し、80℃の熱風で乾燥し、紡糸原糸を得た。ついで、
該紡糸原糸を230℃で全延伸倍率16倍の乾熱延伸を
行い(乾熱延伸機中での滞留時間は30秒)、さらに2
30℃で定長乾熱処理を行い(乾熱処理機中での滞留時
間は45秒、延伸倍率1.0倍)、2000デニ−ル/
1000フィラメントのPVA/PANからなる繊維を
得た。この繊維のフィブリル化指数は100秒、湿熱収
縮率は5.0%、強度は8.1g/デニ−ル、ヤング率
は150g/デニ−ルであった。また、この繊維を60
℃、90%RHの条件下、1週間放置してもフィブリル
化指数は100秒と変わらなかった。
0ホ−ル、孔径0.08mmの紡糸口金を通して、DM
SO/メタノ−ル=30/70(重量比)、温度が5℃
の固化浴中に湿式紡糸し、3倍の湿延伸を施し、糸条中
のDMSOをメタノ−ルで抽出し、最後の抽出洗浄をメ
タノ−ル/メチルイソブチルケトン/水=48/32/
20(重量比)の置換浴を通過させて行い、油剤を付与
し、80℃の熱風で乾燥し、紡糸原糸を得た。ついで、
該紡糸原糸を230℃で全延伸倍率16倍の乾熱延伸を
行い(乾熱延伸機中での滞留時間は30秒)、さらに2
30℃で定長乾熱処理を行い(乾熱処理機中での滞留時
間は45秒、延伸倍率1.0倍)、2000デニ−ル/
1000フィラメントのPVA/PANからなる繊維を
得た。この繊維のフィブリル化指数は100秒、湿熱収
縮率は5.0%、強度は8.1g/デニ−ル、ヤング率
は150g/デニ−ルであった。また、この繊維を60
℃、90%RHの条件下、1週間放置してもフィブリル
化指数は100秒と変わらなかった。
【0042】実施例2 実施例1において、定長乾熱処理の延伸倍率を1.5倍
にした以外は同様にして繊維を製造した。得られた繊維
のフィブリル化指数は150秒、湿熱収縮率は6.3
%、強度は8.5g/デニ−ル、ヤング率は160g/
デニ−ルであった。また、この繊維を60℃、90%R
Hの条件下、1週間放置したところフィブリル化指数は
120秒と若干低下していた。
にした以外は同様にして繊維を製造した。得られた繊維
のフィブリル化指数は150秒、湿熱収縮率は6.3
%、強度は8.5g/デニ−ル、ヤング率は160g/
デニ−ルであった。また、この繊維を60℃、90%R
Hの条件下、1週間放置したところフィブリル化指数は
120秒と若干低下していた。
【0043】実施例3 実施例1において、定長乾熱処理温度を210℃にした
以外は同様にして繊維を製造した。得られた繊維のフィ
ブリル化指数は120秒、湿熱収縮率は6.0%、強度
は8.2g/デニ−ル、ヤング率は150g/デニ−ル
であった。また、この繊維を60℃、90%RHの条件
下、1週間放置したところフィブリル化指数は100秒
と若干低下していた。
以外は同様にして繊維を製造した。得られた繊維のフィ
ブリル化指数は120秒、湿熱収縮率は6.0%、強度
は8.2g/デニ−ル、ヤング率は150g/デニ−ル
であった。また、この繊維を60℃、90%RHの条件
下、1週間放置したところフィブリル化指数は100秒
と若干低下していた。
【0044】実施例4 実施例1において、定長乾熱処理における滞留時間を1
5秒にした以外は同様にして繊維を製造した。得られた
繊維のフィブリル化指数は125秒、湿熱収縮率は6.
4%、強度は8.3g/デニ−ル、ヤング率は155g
/デニ−ルであった。また、この繊維を60℃、90%
RHの条件下、1週間放置したところフィブリル化指数
は100秒と若干低下していた。
5秒にした以外は同様にして繊維を製造した。得られた
繊維のフィブリル化指数は125秒、湿熱収縮率は6.
4%、強度は8.3g/デニ−ル、ヤング率は155g
/デニ−ルであった。また、この繊維を60℃、90%
RHの条件下、1週間放置したところフィブリル化指数
は100秒と若干低下していた。
【0045】比較例1 実施例1において定長乾熱処理を行わなかった以外は同
様にして繊維を製造した。得られた繊維のフィブリル化
指数は180秒、湿熱収縮率は9.0%、強度は10.
6g/デニ−ル、ヤング率は180g/デニ−ルであっ
た。また、この繊維を60℃、90%RHの条件下、1
週間放置したところフィブリル化指数は90秒と半分に
減少した。
様にして繊維を製造した。得られた繊維のフィブリル化
指数は180秒、湿熱収縮率は9.0%、強度は10.
6g/デニ−ル、ヤング率は180g/デニ−ルであっ
た。また、この繊維を60℃、90%RHの条件下、1
週間放置したところフィブリル化指数は90秒と半分に
減少した。
【0046】比較例2〜4 実施例1において、定長乾熱処理における温度を180
℃(比較例2)、延伸倍率を2.0倍(比較例3)、滞
留時間を10秒(比較例4)にした以外は同様にして繊
維を製造した。得られた繊維のフィブリル化指数、湿熱
収縮率、強度、ヤング率、60℃、90%RHの条件下
に1週間放置後のフィブリル化指数を下記に示す。
℃(比較例2)、延伸倍率を2.0倍(比較例3)、滞
留時間を10秒(比較例4)にした以外は同様にして繊
維を製造した。得られた繊維のフィブリル化指数、湿熱
収縮率、強度、ヤング率、60℃、90%RHの条件下
に1週間放置後のフィブリル化指数を下記に示す。
【0047】 湿熱収縮率 強 度 ヤング率 フィブリル化指数(秒) % g/テ゛ニ-ル g/テ゛ニ-ル 放置前 放置後 比較例2 8.0 9.0 170 140 85 3 7.5 11.2 190 170 102 4 8.5 9.2 175 150 90
【0048】
【発明の効果】本発明は汎用性ポリマ−PVAを主たる
成分として使用し、さらに該PVAと非相溶性のポリマ
−をブレンド使用することにより、約1ミクロン(デニ
−ル換算約0.01デニ−ル)の細さの極細フィブリル
に容易に分割可能な易フィブリル繊維を、性能を減ずる
ことなく提供することができるものであり、各ポリマ−
の特徴と極細フィブリルの特徴を合わせ持つ繊維を工業
的に安定にかつ安価に製造することができる方法を提供
することができるものである。
成分として使用し、さらに該PVAと非相溶性のポリマ
−をブレンド使用することにより、約1ミクロン(デニ
−ル換算約0.01デニ−ル)の細さの極細フィブリル
に容易に分割可能な易フィブリル繊維を、性能を減ずる
ことなく提供することができるものであり、各ポリマ−
の特徴と極細フィブリルの特徴を合わせ持つ繊維を工業
的に安定にかつ安価に製造することができる方法を提供
することができるものである。
フロントページの続き (72)発明者 大森 昭夫 岡山県倉敷市酒津1621番地 株式会社クラ レ内
Claims (3)
- 【請求項1】ビニルアルコ−ル系ポリマ−(A)が海成
分、ポリマ−(A)と非相溶なポリマ−(B)が島成分
をなしており、沸水収縮率が7%以下、フィブリル化指
数が50秒以上で、60℃、90%RH、1週間放置後
におけるフィブリル化指数の保持率が70%以上である
ことを特徴とする易フィブリル化繊維。 - 【請求項2】強度が7g/デニ−ル以上、ヤング率が1
00g/デニ−ル以上である請求項1記載の易フィブリ
ル化繊維。 - 【請求項3】ビニルアルコ−ル系ポリマ−(A)および
ポリマ−(A)と非相溶なポリマ−(B)とを共通の有
機溶媒に溶解し、得られた紡糸原液をポリマ−(A)お
よびポリマ−(B)に対して固化能を有する固化溶媒と
前記有機溶媒とからなる固化浴に湿式または乾式紡糸
し、形成された糸条中に含有される前記有機溶媒を除去
した後置換浴にて乾燥し、延伸後、下記に示す条件で乾
熱処理を施すことを特徴とする易フィブリル化繊維の製
造方法。 (乾燥延伸倍率・倍)≦1.5 (乾燥処理温度・℃)≧210 (乾燥処理時間・秒)≧15
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP26357397A JPH11100718A (ja) | 1997-09-29 | 1997-09-29 | 易フィブリル化繊維およびその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP26357397A JPH11100718A (ja) | 1997-09-29 | 1997-09-29 | 易フィブリル化繊維およびその製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH11100718A true JPH11100718A (ja) | 1999-04-13 |
Family
ID=17391437
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP26357397A Pending JPH11100718A (ja) | 1997-09-29 | 1997-09-29 | 易フィブリル化繊維およびその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH11100718A (ja) |
-
1997
- 1997-09-29 JP JP26357397A patent/JPH11100718A/ja active Pending
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