JPH1067664A - 活性酸素障害抑制剤 - Google Patents

活性酸素障害抑制剤

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JPH1067664A
JPH1067664A JP24255996A JP24255996A JPH1067664A JP H1067664 A JPH1067664 A JP H1067664A JP 24255996 A JP24255996 A JP 24255996A JP 24255996 A JP24255996 A JP 24255996A JP H1067664 A JPH1067664 A JP H1067664A
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JP
Japan
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cells
active oxygen
suppressing agent
added
chroman
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JP24255996A
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English (en)
Inventor
Takuo Koga
拓郎 古賀
Keiko Moro
敬子 茂呂
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NODA SANGYO KAGAKU KENKYUSHO
Original Assignee
NODA SANGYO KAGAKU KENKYUSHO
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 強い抗酸化作用を有し、しかも従来知られて
いる抗酸化物質よりも効率的に細胞内に取り込まれるこ
とができて細胞などが受ける活性酸素障害を抑制する優
れた効果を発現する活性酸素障害抑制剤を提供する。 【解決手段】次の一般式 【化1】 (式中のR1、R2は水素原子又は炭素数2〜24の飽和
若しくは不飽和脂肪酸残基であり、それぞれ同一であっ
てもよいし、異なっていてもよく、またnは1〜5の整
数、Xは1価の陽イオンである)で表わされるホスファ
チジルクロマノール誘導体を有効成分とする活性酸素障
害抑制剤。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ホスファチジルクロマ
ノール誘導体を有効成分とする活性酸素障害抑制剤に関
するものである。
【0002】
【従来の技術】活性酸素による生体内での酸化反応は、
動脈硬化、白内障、リューマチ性関節炎、心筋並びに消
化器の虚血−再灌流後の組織障害などの種々の疾病や障
害をひき起こすこと、さらには発癌や老化にも関わるこ
とが知られている[”FreeRadicals in
Biology and Medicine,sec
ond ed.”(Halliwell, B. an
d Gutteridge, J.M.C.,e
d.), Clarendon Press,Oxfo
rd(1989), ”Oxidative Stre
ss:Oxidants and Antioxida
nts”(Sies,H.,ed.),Academi
c Press,London(1991)参照]。ま
た、細胞レベルでの活性酸素が関与する障害としては、
脂質の酸化変性による細胞膜構造の破壊やタンパク質の
酸化変性による機能障害、DNAの切断などが挙げられ
る[”Free Radicals in Molec
ular Biology, Aging, and
Disease”(Armstrong, D. et
al., eds.), Raven Press,
NewYork,293−305(1984)参照]。
【0003】したがって、培養細胞や生体より分離した
細胞などは、この様な活性酸素障害により保存中に死滅
したり、あるいは重大な機能障害を受けたりするため、
細胞を保存する上での大きな問題点となっている[Cy
tobiology,25,377−393,(198
8)参照]。細胞内にはビタミンE(α−トコフェロー
ル)などの抗酸化物質やカタラーゼ、スーパーオキシド
ジスムターゼ、グルタチオンペルオキシダーゼなどの抗
酸化酵素が存在する。しかし、酸化的細胞障害がおこる
こと自体、これらの生体内物質だけでは不十分なことを
示している(日本食品工業学会誌,Vol.40,21
8−223,1993年 参照)。そこで、抗酸化物質
の添加による細胞の活性酸素による障害の抑制に関して
様々な検討[例えばBiochimica et Bi
ophysica Acta,1123,309−31
5(1992),Free Radical Biol
ogy and Medicine,16,405−4
09(1994)など]が行われている。
【0004】しかしながら、従来用いられてきた抗酸化
物質では細胞の活性酸素障害を完全に防ぐにはことはで
きなかった。特に、細胞内に抗酸化剤を効率良く取り込
ませることが困難であり、このことを解決するために様
々な試み[例えばビタミンC誘導体による赤血球の酸化
的溶血抑制効果を調べたChemistry andP
hysics of Lipids,71,95−97
(1994)など]がなされてきた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、強い抗酸化
作用を有し、しかも従来知られている抗酸化物質よりも
効率的に細胞内に取り込まれることができ、細胞などが
受ける活性酸素障害を抑制する優れた効果を発現する活
性酸素障害抑制剤を提供することを目的としてなされた
ものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは前記目的を
達成するために鋭意研究を重ねた結果、本発明者らの一
人が抗酸化剤、乳化剤として先に特開平6−22817
0号公報で提案した、特定のホスファチジルクロマノー
ル誘導体が、細胞内に効率的に取り込まれ、細胞の活性
酸素障害に対して極めてすぐれた抑制効果を有すること
を見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至っ
た。
【0007】すなわち、本発明は、次の一般式
【0008】
【化2】
【0009】(式中のR1、R2は水素原子又は炭素数2
〜24の飽和若しくは不飽和脂肪酸残基であり、それぞ
れ同一であってもよく、また互いに異なっていてもよ
く、またnは1〜5の整数、Xは1価の陽イオンであ
る)で表わされるホスファチジルクロマノール誘導体を
有効成分とすることを特徴とする活性酸素障害抑制剤で
ある。なお、本発明における活性酸素障害抑制剤とは、
強い抗酸化作用を有し、しかもそれが細胞内に効率的に
取り込まれることによって、細胞が受ける酸化的障害を
抑制する優れた効果を示す成分を含有したものをいう。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明
する。先ず、本発明に用いるホスファチジルクロマノー
ル誘導体は、前記一般式において、R1、R2は水素原
子、又は前記誘導体の製造原料として入手が容易な炭素
数2〜24の飽和若しくは不飽和脂肪酸残基であり、そ
れらはそれぞれ同一であってもよいし、また互いに異な
っていてもよく、例えばミリスチン酸、パルミチン酸、
パルミトオレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノ
ール酸、リノレン酸、アラキドン酸、イコサペンタエン
酸、ドコサヘキサエン酸などの炭素数10〜22の脂肪
酸残基が好ましい。また、前記R1及びR2の脂肪酸残基
は、保存安定性の観点から、飽和のものが好ましく、こ
のことから不飽和のものはあらかじめ水素添加などの処
理をして用いるのが望ましい。さらにまた、前記一般式
において、Xは1価の陽イオンであって、例えば水素原
子、カリウム、ナトリウムなどのアルカリ金属イオン、
アンモニア、トリエタノールアミンなどの有機アミン、
リジン、アルギニンなどの塩基性アミノ酸などが挙げら
れる。また、nは1〜5、好ましくは1〜2の整数であ
る。
【0011】そして、本発明に用いるホスファチジルク
ロマノール誘導体の具体例としては、nが1のものとし
て、例えば次の様なものが例示される。なお、以下の例
示化合物名において、「−GPMC」は「−sn−グリ
セロ−3−ホスホ−2’−ヒドロキシメチル−2’,
5’,7’,8’−テトラメチル−6’−ヒドロキシ−
クロマン」を意味する。すなわち、1,2−ジラウロリ
ル−GPMC、1,2−ジミリストイル−GPMC、
1,2−ジパルミトイル−GPMC、1,2−ジステア
ロイル−GPMC、1,2−ジアラキドニル−GPM
C、1−ミリストイル−2−パルミトイル−GPMC、
1−ミリストイル−2−ステアロイル−GPMC、1−
パルミトイル−2−ミリストイル−GPMC、1−パル
ミトイル−2−ステアロイル−GPMC、1−ステアロ
イル−2−ミリストイル−GPMC、1−ステアロイル
−2−パルミトイル−GPMC、及びこれらの塩などで
ある。また、nが2の場合は、前記の各例示化合物名の
「GPMC」を「−sn−グリセロ−3−ホスホ−2’
−ヒドロキシエチル−2’,5’,7’,8’−テトラ
メチル−6’−ヒドロキシ−クロマン」(以下、「−G
PEC」と略す)と置き換えた化合物が例として挙げら
れる。
【0012】本発明に用いるホスファチジルクロマノー
ル誘導体は、化学的方法、酵素的方法などいずれの方法
で製造したものでも良いが、例えば以下に例示するよう
なホスホリパーゼDによる酵素的方法(特開平6−22
8170公報参照)を用いることにより、温和な条件
で、しかも高い収率で簡便に合成することができる。先
ず、基質としてリン脂質及び2,5,7,8−テトラメ
チル−6−ヒドロキシ−2−ヒドロキシメチル−クロマ
ン若しくは2,5,7,8−テトラメチル−6−ヒドロ
キシ−2−ヒドロキシエチル−クロマンを、モル比とし
て1:1〜1:10の割合で溶剤に溶解若しくは懸濁さ
せ、これにホスホリパーゼDを0.1〜100単位/m
l(反応液)となるように添加し、攪拌しながら、適当
な条件下でホスファチジル基の転移反応(リン酸エステ
ル結合反応)を行わせて、目的物質を含む反応物を得
る。
【0013】酵素反応を実施する際の反応系は水系、有
機溶媒系あるいはこれらの混合系などのいずれでもよ
い。またこの反応に用いられる溶剤としては、リン脂質
を溶解若しくは懸濁させるもので、酵素活性を著しく低
下させないものであればいずれでもよく、例えばn−ヘ
キサン、シクロヘキサン、ジエチルエーテル、クロロホ
ルム、酢酸エチル、アセトニトリル、tert−ブタノ
ール、またはこれらの任意の混合溶剤などが好適なもの
として挙げられるが、特にジエチルエーテル、酢酸エチ
ルが好ましい。また、酵素反応条件としてはホスホリパ
ーゼDが作用する条件であれば特に制限されず、勿論、
用いるホスホリパーゼDの好適作用条件が採用される
が、通常、例えばpH2〜10、好ましくはpH4〜
7、温度5〜80℃、好ましくは10〜50℃で10分
〜100時間、好ましくは30分〜60時間である。そ
して、例えばホスホリパーゼDとしてシグマ社製の商品
名:ホスホリパーゼD Type VIIを用いた場合
には、この酵素反応条件はpH3〜8、好ましくはpH
5〜6、温度10〜50℃、好ましくは20〜40℃で
15分〜48時間、好ましくは1〜10時間である。
【0014】この酵素反応終了後、反応物から本発明に
用いるホスファチジルクロマノール誘導体を精製するに
は、その精製法は特に限定されず、適宜の方法が採用さ
れる。その例としては、先ず溶媒、例えばクロロホル
ム:メタノール混液、ヘキサンなどを用いて目的物質を
抽出し、さらにこの抽出物にクロマトグラフィ、溶媒分
画法などの単独又は組合せによる精製法を施して、高純
度の目的物質を得ることができる。このときのクロマト
グラフィとしては、例えばカラムクロマトグラフィ、薄
層クロマトグラフィなどが挙げられる。またカラムクロ
マトグラフィを採用する場合には、その担体としては疎
水性のものであればよく、例えばシリカゲルなどが好適
である。本発明に用いられるホスファチジルクロマノー
ル誘導体の製造方法の参考例を以下に示す。
【0015】参考例1 (1,2−ジミリストイル−s
n−グリセロ−3−ホスホ−2’−ヒドロキシメチル−
2’,5’,7’,8’−テトラメチル−6’−ヒドロ
キシ−クロマンの製造) 市販のジミリストイル−L−α−ホスファチジルコリン
(シグマ社製)10gと2,5,7,8−テトラメチル
−6−ヒドロキシ−2−ヒドロキシメチル−クロマン
(株式会社クラレ製)4gにジエチルエーテル200m
lを加えて懸濁させ、これにCaCl20.01Mを含
む0.01Mクエン酸緩衝液(pH6.0)4800m
lを加えて37℃に保温したのち、市販のホスホリパー
ゼD(シグマ社製商品名:ホスホリパーゼD Type
VII)6000単位を含む酵素液200mlを加え
て撹拌しながら37℃で2時間反応させた。この反応物
につき、高速液体クロマトグラフィにより分析した結
果、目的物質への変換率(用いたリン脂質に対する生成
目的物質の割合)は95%と高率であった。得られた反
応物をクロロホルム:メタノール(2:1)で抽出処理
したのち、ケイ酸カラムに吸着させ、さらにクロロホル
ム:メタノール(95:5)で溶出後、減圧乾固して目
的物質7gを得た。この物質を薄層クロマトグラフィに
より、シリカゲルのプレート(SILICA GEL
60、メルク社製、以下同じ)、展開溶媒としてクロロ
ホルム:メタノール=80:20を用いて展開した結
果、塩化第二鉄−バソフェナントロリン試薬による発色
法で赤色を呈し(クロマン環の存在を示す)、かつディ
ットマー試薬による発色法で青色を呈する(リンの存在
を示す)単一のスポット(Rf=0.43)が検出され
た。このことから、同一分子中にリン脂質とクロマン環
を有する物質の生成が確認された。機器分析の結果、ホ
スホリパーゼDによる酵素反応で得られたこの物質はリ
ン脂質のリン酸と前記クロマン誘導体のアルコール性水
酸基とのリン酸エステル結合物(ホスファチジル基の転
移反応物)であることが確認され、そしてこの物質は前
記一般式において、R1、R2が共にミリスチン酸残基
で、nが1、XがK+である1,2−ジミリストイル−
sn−グリセロ−3−ホスホ−2’−ヒドロキシメチル
−2’,5’,7’,8’−テトラメチル−6’−ヒド
ロキシ−クロマンであることが確認された。
【0016】参考例2 (1,2−ジミリストイル−s
n−グリセロ−3−ホスホ−2’−ヒドロキシエチル−
2’,5’,7’,8’−テトラメチル−6’−ヒドロ
キシ−クロマンの製造) 2,5,7,8−テトラメチル−6−ヒドロキシ−2−
ヒドロキシメチル−クロマンの代わりに、2,5,7,
8−テトラメチル−6−ヒドロキシ−2−ヒドロキシエ
チル−クロマン(株式会社クラレ製)4gを用いた以外
は参考例1と同様にして目的物質7gを得た。なお、精
製前の反応物につき、高速液体クロマトグラフィにより
分析した結果、目的物質への変換率は95%と高率であ
った。この物質を薄層クロマトグラフィにより、シリカ
ゲルのプレート、展開溶媒としてクロロホルム:メタノ
ール=80:20を用いて展開した結果、塩化第二鉄−
バソフェナントロリン試薬による発色法で赤色を呈し、
かつディットマー試薬による発色法で青色を呈する単一
のスポット(Rf=0.48)が検出された。このこと
から、同一分子中にリン脂質とクロマン環を有する物質
の生成が確認された。機器分析の結果、ホスホリパーゼ
Dによる酵素反応で得られたこの物質はリン脂質のリン
酸と前記クロマン誘導体のアルコール性水酸基とのリン
酸エステル結合物(ホスファチジル基の転移反応物)で
あることが確認され、そしてこの物質は前記一般式にお
いて、R1、R2が共にミリスチン酸残基で、nが2、X
がH+である1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ
−3−ホスホ−2’−ヒドロキシエチル−2’,5’,
7’,8’−テトラメチル−6’−ヒドロキシ−クロマ
ンであることが確認された。
【0017】参考例3 (1,2−ジパルミトイル−s
n−グリセロ−3−ホスホ−2’−ヒドロキシメチル−
2’,5’,7’,8’−テトラメチル−6’−ヒドロ
キシ−クロマンの製造) ジミリストイル−L−α−ホスファチジルコリン(シグ
マ社製)の代わりに、市販のジパルミトイル−L−α−
ホスファチジルコリン(シグマ社製)10gを用いた以
外は参考例1と同様にして目的物質6gを得た。なお、
精製前の反応物につき、高速液体クロマトグラフィによ
り分析した結果、目的物質への変換率は95%と高率で
あった。この物質を薄層クロマトグラフィにより、シリ
カゲルのプレート、展開溶媒としてクロロホルム:メタ
ノール=80:20を用いて展開した結果、塩化第二鉄
−バソフェナントロリン試薬による発色法で赤色を呈
し、かつディットマー試薬による発色法で青色を呈する
単一のスポット(Rf=0.48)が検出された。この
ことから、同一分子中にリン脂質とクロマン環を有する
物質の生成が確認された。機器分析の結果、ホスホリパ
ーゼDによる酵素反応で得られたこの物質はリン脂質の
リン酸と前記クロマン誘導体のアルコール性水酸基との
リン酸エステル結合物(ホスファチジル基の転移反応
物)であることが確認され、そしてこの物質は前記一般
式において、R1、R2が共にパルミチン酸残基で、nが
1、XがH+である1,2−ジパルミトイル−sn−グ
リセロ−3−ホスホ−2’−ヒドロキシメチル−2’,
5’,7’,8’−テトラメチル−6’−ヒドロキシ−
クロマンであることが確認された。
【0018】このようにして得られた本発明の有効成分
であるホスファチジルクロマノール誘導体は、後述する
ごとく、ビタミンEやビタミンCなどの抗酸化ビタミン
やプロブコールやブチルヒドロキシトルエンなどの合成
抗酸化剤に比べて細胞内に非常に取り込まれやすく、ま
た細胞中での抗酸化活性が極めて高いという特性を有す
るので、これら誘導体の少なくとも1種を有効成分とし
て、例えば0.001〜100000μmol含有させ
ることにより、すぐれた活性酸素障害抑制剤として極め
て有用であり、本剤は、これを例えば培養細胞や生体よ
り分離した赤血球、リンパ球などの細胞に添加すれば、
それら細胞が受ける活性酸素障害を防ぐことができる。
【0019】本発明に用いる前記ホスファチジルクロマ
ノール誘導体は、その粗製物あるいは精製物のいずれで
もよく、また単独であるいは他の抗酸化物質と混合して
用いてもよく、またそのままの状態で、あるいはこれを
適当な溶剤、例えば水、ジメチルスルホオキシド、メタ
ノール、エタノールなどに溶解又は懸濁させた溶液、さ
らには常法により賦形剤、例えば糖類などを添加するか
しないで乾燥、粉末化などして得た固形物など、いずれ
の状態でも用いられる。
【0020】本発明の活性酸素障害抑制剤は、使用対
象、使用方法などに制限はないが、殊に細胞に対する活
性酸素障害抑制剤として、例えば培養細胞、赤血球やリ
ンパ球などの生体細胞などに極めて好適に用いられ、こ
のときの添加量は0.001〜100000μmol/
l、好ましくは0.01〜100μmol/lである。
【0021】
【実施例】次に実施例により、本発明をさらに詳細に説
明するが、本発明はこれらの例によってなんら制限され
るものではない。
【0022】実施例1 (赤血球に対する酸化的溶血抑
制効果試験) 健常人よりヘパリン採血した血液50mlを4℃で15
00G、10分間冷却遠心した。プラズマとバフィーコ
ートを除去後、赤血球部分を5倍容の予め冷却したリン
酸緩衝塩溶液(PBS)で3回洗浄して赤血球画分を調
製した。試験に用いた表1に示した抗酸化剤液は次の様
に調製した。ホスファチジルクロマノール誘導体は前記
参考例1に示した方法により合成した1,2−ジミリス
トイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−2’−ヒドロキ
シメチル−2’,5’,7’,8’−テトラメチル−
6’−ヒドロキシ−クロマン(DM−GPMC)を用い
た。DM−GPMCはPBSを添加後、超音波で分散さ
せ、最終濃度50μMの本発明区分の試験液を作成し
た。また比較区分としたビタミンE(dl−α−トコフ
ェロール、エーザイ社製)、2,2,5,7,8−ペン
タメチル−6−クロマノール(PMC、エーザイ社
製)、プロブコール(シグマ社製)、ブチルヒドロキシ
トルエン(BHT、和光純薬工業社製)は、それぞれエ
タノールに溶解し、適量のPBSで希釈して最終濃度5
0μMの試験液を作成した。ビタミンC(シグマ社製)
はPBSに溶解して最終濃度50μMの試験液を作成し
た。前記した赤血球画分を試験管に1mlずつ分注し、
これに前記濃度に調製した試験液を1mlずつ加え、3
7℃で30分振盪しながら保温後、PBSで3回洗浄を
行い、抗酸化剤処理した赤血球を得た。
【0023】赤血球の溶血試験は次の様に行った。前記
の各抗酸化剤処理した赤血球を100μlずつ、3本
(それぞれA,B,C)の試験管に分注した。そしてA
には1mlのPBSを、B,Cにはフリーラジカル発生
剤である2,2’−アゾビス(2−アミジノプロピル)
ジハイドロクロライド(和光純薬工業社製)を75mM
含むPBS1ml加え、37℃、暗所で振盪しながら4
時間保温した。その後、A,BにはPBS4mlをCに
は0.1%トリトンX−100(和光純薬工業社製)溶
液を4ml加え、混合後、1500Gで5分間遠心分離
し、上清の540nmの吸光度を測定した。溶血率は次
式から算出した。 溶血率(%)=(Bの吸光度−Aの吸光度)÷(Cの吸
光度−Aの吸光度)×100 ホスファチジルクロマノール添加区と、ビタミンE、P
MC、ビタミンC、プロブコール又はBHTを添加した
比較区分の赤血球の各溶血率を求めた結果を表1に示
す。
【0024】
【表1】
【0025】表1から、本発明区分であるホスファチジ
ルクロマノールを添加したものは、他の抗酸化剤を添加
したものに比べて、活性酸素による赤血球の酸化的溶血
を極めて効果的に抑制することがわかる。
【0026】実施例2 (赤血球に取り込まれる抗酸化
剤の量の測定) 実施例1と同様の方法で抗酸化剤処理した赤血球中に取
り込まれた抗酸化剤の量を以下の方法で測定した。抗酸
化剤処理した赤血球0.5mlを試験管に取り、n−ヘ
キサン/エタノール液(4/1、vol/vol)を4
ml添加し、1分間超音波処理した。そこに2mlの脱
イオン水を加え、30秒間ボルテックスミキサーで攪拌
した後、1500Gで5分間遠心分離して上層のn−ヘ
キサン層を別の褐色スピッツロールに取り移した。下層
をさらにn−ヘキサンで3mlづつ2回の抽出操作を行
い、回収したn−ヘキサン層をエバポレータで濃縮して
溶媒を完全に留去し、残留物を直ちにn−ヘキサン10
0μlに溶かし試料液とした。試料液中の各抗酸化剤の
量を高速液体クロマトグラフィで測定した。なお、ビタ
ミンCのみは以下の操作で抽出したものを高速液体クロ
マトグラフィに供した。抗酸化剤処理した赤血球0.1
mlを遠沈管に取り、0.3mlの0.1%トリフルオ
ロ酢酸溶液を加え1分間超音波処理した後、10000
Gで15分間遠心分離した後、その上清を試料液とし
た。ホスファチジルクロマノール添加区と、ビタミン
E、PMC、ビタミンC、プロブコール又はBHTを添
加した比較区分の、赤血球に取り込まれた各抗酸化剤の
量を求めた結果を表2に示す。
【0027】
【表2】
【0028】表2から、本発明区分であるホスファチジ
ルクロマノールを添加したものは、他の抗酸化剤を添加
したものに比べて、赤血球内へ顕著に取り込まれやすい
ことがわかる。
【0029】実施例3 (牛大動脈血管内皮細胞に対す
る酸化的細胞障害抑制効果試験) 牛大動脈血管内皮細胞(BAEC)を子牛血清を10
%、ペニシリンを100ユニット/ml、ストレプトマ
イシン0.1mg/mlを添加したD−MEM(ギブコ
社製)で培養した。コンフルエントに達したBAECか
ら培地を除去後、滅菌したリン酸緩衝塩溶液(PBS)
で細胞を3回洗浄した。そして、tert−ブチルヒド
ロペルオキシド(シグマ社製)と表3に示す各抗酸化剤
を含むD−MEMを添加し、37℃、CO2インキュベ
ーター中で6時間培養した。tert−ブチルヒドロペ
ルオキシドの細胞毒性により細胞内から培地に洩れ出す
乳酸脱水素酵素活性を測定キット(ベーリンガーマンハ
イム社製)で測定した。また、抗酸化剤とtert−ブ
チルヒドロペルオキシドを含まないD−MEMを添加し
て6時間培養した細胞に0.1%ドデシル硫酸ナトリウ
ム溶液を加え、全細胞中の乳酸脱水素酵素活性を測定し
コントロールとした。tert−ブチルヒドロペルオキ
シドと試験する抗酸化剤を含む培地は次の様に調製し
た。ホスファチジルクロマノール誘導体は、前記参考例
2に示した方法により合成した1,2−ジミリストイル
−sn−グリセロ−3−ホスホ−2’−ヒドロキシエチ
ル−2’,5’,7’,8’−テトラメチル−6’−ヒ
ドロキシ−クロマン(DM−GPEC)を用いた。DM
−GPECは、tert−ブチルヒドロペルオキシド2
mMを含むD−MEMを添加後、超音波で分散させ、最
終濃度50μMの濃度の本発明区分の試験液を作成し
た。また比較区分のビタミンE(dl−α−トコフェロ
ール、エーザイ社製)、2,2,5,7,8−ペンタメ
チル−6−クロマノール(PMC、エーザイ社製)、プ
ロブコール(シグマ社製)、ブチルヒドロキシトルエン
(BHT、和光純薬工業社製)は、それぞれエタノール
に溶解し、tert−ブチルヒドロペルオキシド2mM
を含むD−MEMで希釈して、最終濃度50μMの各試
験液を作成した。ビタミンC(シグマ社製)は、ter
t−ブチルヒドロペルオキシド2mMを含むD−MEM
に溶解して、最終濃度50μMの試験液を作成した。
【0030】細胞障害率は次式で計算した。 細胞障害率(%)=培養液中の乳酸脱水素酵素活性÷コ
ントロールの乳酸脱水素酵素活性×100 ホスファチジルクロマノール添加区と、ビタミンE、P
MC、ビタミンC、プロブコール又はBHTを添加した
比較区分の細胞の受けた各障害率を求めた結果を表3に
示す。
【0031】
【表3】
【0032】表3から、本発明区分であるホスファチジ
ルクロマノールを添加したはものは、他の抗酸化剤を添
加したものに比べて、牛大動脈血管内皮細胞の活性酸素
障害を極めて効果的に抑制することがわかる。
【0033】実施例4 (マウス脾臓細胞に対する酸化
的細胞障害抑制効果試験) C3H/HeNマウス(6週令、メス)から脾臓細胞を
採取し、PBSで3回洗浄した後、tert−ブチルヒ
ドロペルオキシドと表4に示す各抗酸化剤を含むRPM
I−1640(ギブコ社製)に107個/mlとなるよ
うに浮遊させ、37℃、CO2インキュベーターで3時
間培養した。tert−ブチルヒドロペルオキシドの細
胞毒性により細胞内から培地に洩れ出す乳酸脱水素酵素
活性を測定キット(ベーリンガーマンハイム社製)で測
定した。また、抗酸化剤とtert−ブチルヒドロペル
オキシドを含まないRPMI−1640を添加して3時
間培養した細胞に0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(和
光純薬工業社製)溶液を加えた後、全細胞中の乳酸脱水
素酵素活性を測定しコントロールとした。tert−ブ
チルヒドロペルオキシドと試験する抗酸化剤を含む培地
は次の様に調製した。ホスファチジルクロマノール誘導
体は参考例3で示した方法により合成した1,2−ジパ
ルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−2’−ヒド
ロキシメチル−2’,5’,7’,8’−テトラメチル
−6’−ヒドロキシ−クロマン(DP−GPMC)を用
いた。DP−GPMCはtert−ブチルヒドロペルオ
キシド1mMを含むRPMI−1640を添加後、超音
波で分散させ、最終濃度50μMの濃度の本発明区分の
試験液を作成した。また比較区分のビタミンE(dl−
α−トコフェロール、エーザイ社製)、2,2,5,
7,8−ペンタメチル−6−クロマノール(PMC、エ
ーザイ社製)、プロブコール(シグマ社製)、ブチルヒ
ドロキシトルエン(BHT、和光純薬工業社製)は、そ
れぞれエタノールに溶解し、tert−ブチルヒドロペ
ルオキシド2mMを含むRPMI−1640で希釈し
て、最終濃度50μMの各試験液を作成した。ビタミン
C(シグマ社製)は、tert−ブチルヒドロペルオキ
シド2mMを含むRPMI−1640に溶解して、最終
濃度50μMの試験液を作成した。
【0034】細胞障害率は次式で計算した。 細胞障害率(%)=培養液中の乳酸脱水素酵素活性÷コ
ントロールの乳酸脱水素酵素活性×100 ホスファチジルクロマノール添加区と、ビタミンE、P
MC、ビタミンC、プロブコール、BHTを添加した比
較区分の細胞の受けた各障害率を表4に示す。
【0035】
【表4】
【0036】表4から、本発明区分であるホスファチジ
ルクロマノールを添加したはものは、他の抗酸化剤を添
加したものに比べて、マウス脾臓細胞の活性酸素障害を
極めて効果的に抑制することがわかる。
【0037】実施例5 (活性酸素障害抑制剤の調製
例) 前記参考例1に示した方法により合成し、滅菌した1,
2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−
2’−ヒドロキシメチル−2’,5’,7’,8’−テ
トラメチル−6’−ヒドロキシ−クロマン(DM−GP
MC)10gをジメチルスフホキシドに懸濁させ、1分
間超音波処理した後、全量を1lとし、1アンプルに
1.0mlの割合で無菌的に封入して、活性酸素障害抑
制剤を調製した。
【0038】実施例6 (活性酸素障害抑制剤の調製
例) 前記参考例2に示した方法により合成し、滅菌した1,
2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−
2’−ヒドロキシエチル−2’,5’,7’,8’−テ
トラメチル−6’−ヒドロキシ−クロマン(DM−GP
EC)10gを生理食塩水に懸濁させ、1分間超音波処
理したものにビタミンC10gを溶解して全量を1lと
し、1アンプルに1.0mlの割合で無菌的に封入し
て、活性酸素障害抑制剤を調製した。
【0039】
【発明の効果】ホスファチジルクロマノール誘導体を有
効成分とする本発明の活性酸素障害抑制剤は、強い抗酸
化作用を有し、しかも従来の抗酸化剤に比べて細胞内に
効率的に取り込まれるので、例えば本剤を培養細胞や生
体より分離した赤血球、リンパ球などの細胞の保存の際
などに添加することにより、これら細胞などが受ける活
性酸素による障害を顕著に抑制することができる。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 次の一般式 【化1】 (式中のR1、R2は水素原子又は炭素数2〜24の飽和
    若しくは不飽和脂肪酸残基であり、それぞれ同一であっ
    てもよく、また互いに異なっていてもよく、またnは1
    〜5の整数、Xは1価の陽イオンである)で表わされる
    ホスファチジルクロマノール誘導体を有効成分とするこ
    とを特徴とする活性酸素障害抑制剤。
JP24255996A 1996-08-27 1996-08-27 活性酸素障害抑制剤 Pending JPH1067664A (ja)

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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010230447A (ja) * 2009-03-26 2010-10-14 Hiroshima Prefecture 家畜の血中ビタミンa及びベータカロテン濃度測定方法並びに家畜の血中ビタミンa及びベータカロテン濃度測定装置

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2010230447A (ja) * 2009-03-26 2010-10-14 Hiroshima Prefecture 家畜の血中ビタミンa及びベータカロテン濃度測定方法並びに家畜の血中ビタミンa及びベータカロテン濃度測定装置

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