JPH1060021A - ビニルエステル系重合体及びその製造方法 - Google Patents

ビニルエステル系重合体及びその製造方法

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JPH1060021A
JPH1060021A JP21357996A JP21357996A JPH1060021A JP H1060021 A JPH1060021 A JP H1060021A JP 21357996 A JP21357996 A JP 21357996A JP 21357996 A JP21357996 A JP 21357996A JP H1060021 A JPH1060021 A JP H1060021A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 一次構造を精密に制御したビニルエステル系
重合体及びその製造方法を提供する。 【解決手段】 炭素数3〜20のビニルエステル系単量
体を重合して得られる重合体であって、その分子量分布
〔重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)〕が
1.05〜1.9である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、一次構造を精密に
制御されたビニルエステル系重合体及びその製造方法に
関する。詳しくは、分子量を制御したビニルエステル系
重合体、分子量分布(重量平均分子量と数平均分子量と
の比)が狭いビニルエステル系重合体に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】ビニルエステル系重合体は、ポリ酢酸ビ
ニルに代表されるように、工業的にはラジカル重合によ
って製造することができる。しかし、一般的なラジカル
重合では、再結合、不均化等の停止反応や連鎖移動など
の副反応が多く起こるため、得られるビニルエステル系
重合体は、分子量分布が広く、分子量を任意に制御する
こと、末端基の制御やブロックポリマーの合成は困難で
あった。
【0003】また、酢酸ビニルは、カチオン重合によっ
ても重合できるとの報告がなされているが、低分子量の
ものしか得られておらず、その重合体の一次構造の制御
に関しては報告がなく、また、工業的にもポリマーを得
ることは困難であった。
【0004】ビニルエステル系重合体の分子量、分子量
分布を任意にコントロールしたり、その末端基を制御し
たり、ブロックポリマー化することは、高機能化、高性
能化を図る上で必要不可欠な技術である。すなわち、分
子量を制御することによって、例えば、力学的強度、流
動特性、熱安定性、他の樹脂との相容性、可塑化効率、
分散安定効果などをコントロールすることができる。
【0005】さらに、分子量分布が狭く低分子量成分を
含有しない重合体により、接着性能、力学的強度、流動
特性等の向上が予想される。また、分子量分布の制御に
よって、動的粘弾性特性が、特定の温度域、周波数領域
で特異的に高くなるように設計することができ、相容性
などをコントロールすることも可能である。
【0006】分子量分布の制御に関して、例えば、特公
平7−13094号公報に、酢酸ビニルをラジカル重合
によって、分子量分布をある程度制御する技術が開示さ
れている。この技術は、連鎖移動とモノマーの添加を巧
みに用いることにより、低分子量で分子量分布が狭いポ
リ酢酸ビニルの重合に関するものであり、ある特定の連
鎖移動定数を持つ溶媒を用い、酢酸ビニルを逐次仕込み
ながら超低分子量のポリ酢酸ビニルを得た後、それをケ
ン化してポリビニルアルコールを得る方法である。
【0007】しかしながら、この技術を用いて得られた
ポリ酢酸ビニルの分子量分布は、未だ満足のいくレベル
ではなく、モノマーを逐次添加することは操作が煩雑に
なり、且つ、得られる重合体の数平均分子量(Mn)
は、13200以下の低いものに限定されていた。
【0008】これらの技術課題を解決する手段として、
例えばリビングラジカル重合が考えられる。リビングラ
ジカル重合を用いれば、分子量の制御、分子量分布の制
御、分子末端基の制御などが可能となり、ブロックポリ
マーを得ることも可能となる。特に、スチレン、メタク
リレート、アクリレートなどの種々のモノマーについ
て、盛んに研究が行われ、それぞれ特有のリビングラジ
カル重合系が検討されており、そのポリマーの一次構造
をある程度精密に制御できることが広く知られるように
なってきた。
【0009】しかし、モノマーにより反応性が大きく異
なるために、どのモノマーにも適用可能な手法は見出さ
れるには至っていない。特に、酢酸ビニルの場合は、連
鎖移動定数が前記のスチレン、メタクリレートモノマー
と比較して100倍以上大きいため連鎖移動が起こり易
く、更に、電子の共鳴安定効果が低く成長ラジカルが不
安定であるため、副反応が生じやすく、その精密制御は
一般的に他のモノマーと比較して非常に技術バリアーが
高いと考えられており、未だ課題を解決するに至ってい
ない。
【0010】スチレン単量体に対する一次構造の精密制
御に関して、特開平7−126322号公報に、炭素−
ヨウ素結合を有するヨウ素化合物およびラジカル重合開
始剤の存在下で、比較的狭い分子量分布を有する重合体
を得ることができるとの記載がある。しかし、これはビ
ニルエステル系重合体に関するものではなく、且つ、余
り高分子量のポリマーを得ることができず、高分子材料
として物性を発現するものを得ることは困難であった。
【0011】上記特開平7−126322号公報と同様
の報告が文献[(Macromolecules,vol. 28,page8051-8056
(1995)] に記載されており、スチレン単量体とアクリレ
ート単量体についてはある程度制御のできるポリマーが
得られることが示されているが、酢酸ビニル単量体につ
いてはポリマーが得られていないとの報告がある。
【0012】酢酸ビニルのリビングラジカル重合に関し
て、文献[Macromolecules,vol.27,page645-649(1994)]
に、トリイソブチルアルミニウム、2,2'-ジピリジル
及び2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニル
オキシ(TEMPO)の三成分系からなる触媒系で可能
であるとの記載がある。しかし、空気、水分に対して不
安定な金属錯体を触媒系として用いることが必要であ
り、微量の酸素、水分の存在によって重合の再現性が損
なわれ、工業化には適さない。
【0013】更に、ポリビニルアルコール、ポリビニル
アセタール樹脂等は、工業的には酢酸ビニル重合体を変
性して得ている。従って、酢酸ビニルの精密重合技術が
存在しないため、ポリマーの一次構造を精密に制御した
ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール樹脂等の
誘導体を工業的に得ることができなかった。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記問題点
を解決するものであり、今まで困難であった一次構造を
精密に制御したビニルエステル系重合体及びその製造方
法を提供することを目的とする。即ち、分子量分布の狭
いビニルエステル系重合体及びその工業化が容易な製造
方法を提供する。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明のビニルエステル
系重合体は、炭素数3〜20のビニルエステル系単量体
を重合して得られる重合体であって、その分子量分布
〔重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)〕が
1.05〜1.9であることを特徴とする。
【0016】本発明者らは、ビニルエステル系重合体の
一次構造を精密に制御することを目的として、鋭意検討
する中で、特定のヨウ素化合物を、通常のラジカル重合
系に添加することにより、得られた高分子の分子量分布
が狭くなることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】本発明のビニルエステル系重合体は、ある
特定のヨウ素化合物の存在下で、炭素数3〜20のビニ
ルエステル系単量体をラジカル重合することにより得ら
れ、その分子量分布(Mw/Mn)は、1.05〜1.
9に制限され、好ましくは1.05〜1.8である。
【0018】上記分子量分布1.05未満のビニルエス
テル系重合体は、実際の製造によって得ることは難しく
なる。また、分子量分布が1.9を超えると、例えば、
低分子量成分の割合が多くなり、接着性、力学的強度、
流動特性等を向上させることが難しくなる。尚、特公平
7−13094号公報の実施例に記載されている分子量
分布は2.1である。
【0019】上記ビニルエステル系重合体に用いられる
炭素数3〜20のビニルエステル系単量体としては、例
えば、酢酸ビニル、蟻酸ビニル、プロピオン酸ビニル、
酪酸ビニル、n−カプロン酸ビニル、イソカプロン酸ビ
ニル、オクタン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、パルミチ
ン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、トリメチル酢酸ビニ
ル、クロロ酢酸ビニル、トリクロロ酢酸ビニル、トリフ
ルオロ酢酸ビニル、安息香酸ビニル等があげられ、これ
らは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されても
よい。これらの中でも、特に酢酸ビニルが好適に用いら
れる。
【0020】また、ビニルエステル系以外の単量体を併
用して共重合させることも可能である。
【0021】上記ビニルエステル系重合体は、上記ビニ
ルエステル系単量体を、ヨウ素化合物の存在下でラジカ
ル重合することにより得られる。上記ビニルエステル系
単量体は、重合溶液に最初から全量添加してもよいし、
重合の進行に伴い逐次添加してもよい。
【0022】本発明で用いられるヨウ素化合物として
は、分子中に、炭素−ヨウ素結合、水素−ヨウ素結合及
びハロゲン−ヨウ素結合から選ばれる結合を1つ以上有
する化合物が挙げられる。
【0023】上記炭素−ヨウ素結合を持つ化合物とし
て、例えば、ヨウ化アルキル、ヨウ化パーフルオロアル
キル、ヨウ化フェニル等が挙げられる。
【0024】上記ヨウ化アルキルの具体例としては、ヨ
ードメタン、ヨードエタン、ヨードプロパン、ヨードブ
タン、ジヨードメタン、1,2ージヨードエタン、ヨードホ
ルム、クロロヨードメタン、ヨードアセトニトリル、ヨ
ード酢酸、1,6−ジヨードヘキサン、ヨードアセトア
ミド、ヨウ化水素とアルケンとの付加反応による生成物
等が挙げられる。
【0025】上記アルケンのの具体例としては、酢酸ビ
ニル等のビニルエステル系モノマー;イソブチルビニル
エーテル等のビニルエーテル系モノマー;スチレン系モ
ノマー等が挙げられる。上記ヨウ化水素とアルケンとの
付加反応の方法としては、無水のヨウ化水素をアルケン
と低温で混合する方法があげられる。
【0026】上記ヨウ化パーフルオロアルキルの具体例
としては、ヨードパーフルオロプロパン、1-ヨードパー
フルロオロヘキサン、1ーヨードパーフルオロオクタン、
1,2-ジヨードパーフルオロエタン、1,4-ジヨードパーフ
ルオロブタン、1,6-ジヨードパーフルオロヘキサン等が
挙げられる。
【0027】上記ヨウ化フェニルの具体例としては、ヨ
ードベンゼン、2-ヨードエチルベンゼン等があげられ
る。
【0028】上記水素−ヨウ素結合を持つ化合物として
は、例えば、ヨウ化水素等が挙げられる。上記ハロゲン
−ヨウ素結合を持つ化合物としては、例えば、一塩化ヨ
ウ素、三塩化ヨウ素、一臭化ヨウ素等が挙げられる。
【0029】上記ヨウ素化合物は、単独で用いられても
よく、2種以上が併用されてもよい。上記ヨウ素化合物
の中でより好ましくは、ヨードホルム、ジヨードメタ
ン、ヨードアセトニトリルなどのヨウ化アルキル、1-ヨ
ードパーフロオロヘキサン、1,4-ジヨードパーフルオロ
ブタン、1,6-ジヨードパーフルオロヘキサン等のヨウ化
パーフルオロアルキル;ヨウ化水素とアルケンの付加
体;ヨウ化水素である。
【0030】特に、数平均分子量の制御という観点か
ら、上記ヨウ素化合物としてヨードホルムを用いること
が好ましい。上記ヨウ素化合物の存在下での反応におい
て、ヨウ素化合物1分子から重合体1分子が生成すると
仮定して、数平均分子量を予測することができる。上記
ヨウ素化合物としてヨードホルムを用いた場合には、こ
の(計算による)予測値と得られた重合体の結果がよく
合うために、重合体の数平均分子量を制御する上で有利
である。
【0031】上記ヨウ素化合物の量は、得ようとする重
合体の分子量に合わせて適宜決定されるが、ヨウ素化合
物の量が少なすぎると、重合体の構造を制御することが
できず、多すぎると重合体を得ることができなくなるた
め、ビニルエステル系単量体1molに対して0.00
01〜0.2molの割合で添加することが好ましく、
より好ましくは、ビニルエステル系単量体1molに対
して0.0005〜0.1molの割合である。
【0032】上記ヨウ素化合物の添加方法としては、特
に限定されるものではないが、重合の開始前に重合系に
添加する方が、分子量分布の制御と、操作の簡便性の観
点から好ましい。
【0033】上記ビニルエステル系重合体の分子量は、
ヨウ素化合物の濃度により調整可能であり、数平均分子
量500〜500,000が好ましく、より好ましくは
数平均分子量1,000〜200,000である。数平
均分子量が500未満では、重合体としての機能が発現
せず、数平均分子量が分子量500,000を超えると
取り扱いが困難となるためである。
【0034】本発明により、従来公知の技術では実現が
困難であった、低分子量で且つ、分子量分布が狭いビニ
ルエステル系重合体を容易に得ることができる。
【0035】本発明においてラジカル重合させる方法と
しては、ラジカル重合開始剤の使用;光増感剤の使用と
光の照射;放射線、レーザー光、光などの照射;加熱な
どが挙げられるが、特に、工業的にはラジカル重合開始
剤を用いる方法が好ましい。
【0036】上記ラジカル重合開始剤としては、ラジカ
ルを発生し、ビニルエステル系単量体及びヨウ素化合物
と反応し、重合反応を起こすことができるものであれば
特に制限はないが、熱、光、放射線、酸化還元化学反応
などの作用によって、ラジカルを発生する化合物から選
ばれる。
【0037】上記ラジカル重合開始剤としては、アゾ化
合物、有機過酸化物、無機過酸化物、有機金属化合物、
光増感剤、レドックス重合開始剤等があげられる。
【0038】上記アゾ化合物としては、例えば、アゾビ
スイソブチロニトリル(以下、AIBNという)、アゾ
ビスイソ酪酸エステル、次亜硝酸エステル等が挙げられ
る。上記有機過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾ
イル(以下、BPOという)、過酸化ラウロイル、ジク
ミルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド等が
挙げられる。上記無機過酸化物としては、例えば、過硫
酸カリウム、過硫酸アンモニウム等が挙げられる。
【0039】上記レドックス重合開始剤としては、例え
ば、過酸化水素ー第1鉄系、BPO−ジメチルアニリン
系、セリウム(IV)塩−アルコール系等があげられる。
上記有機金属化合物としては、2族、3族の金属及び鉛
を含む化合物が挙げられる。
【0040】これらのラジカル重合開始剤の中で、特に
AIBNやBPO等が好適に用いられる。
【0041】光によるラジカル重合の場合には、アゾ化
合物、過酸化物、カルボニル化合物、硫黄化合物、色素
等の光増感剤を添加してもよい。
【0042】上記ラジカル重合開始剤は、単独で用いら
れてもよく、相互作用により重合進行へ悪影響を及ぼさ
ない範囲で、2種以上が併用されてもよい。また、ラジ
カル重合は、熱の作用により予めある程度まで重合を進
行させた後に、光により重合を完了させるなど複数の方
法を組み合わせて用いてもよい。
【0043】上記ラジカル重合開始剤の使用量は、重合
を開始させる程度の量であれば特に限定はされないが、
少なくなると重合反応が遅く、かつ重合率が低くなり、
多くなると重合反応を制御することが難しくなるので、
使用するヨウ素化合物1molに対して0.02〜20
molが好ましく、より好ましくは0.05〜10mo
lである。特に、ヨウ素化合物1molに対してラジカ
ル開始剤を0.1〜5molの範囲で用いることが好ま
しい。
【0044】また、ラジカル重合開始剤の使用量は、ビ
ニルエステル系単量体1molに対して、0.0000
5〜0.5molが好ましく、より好ましくは0.00
01〜0.2molである。
【0045】重合温度は、ラジカル重合反応の種類によ
り異なり、特に制限されないが、ー30℃〜120℃温
度範囲が好ましく、より好ましくは、0℃〜100℃で
ある。反応圧力は通常、常圧で行われるが、加圧しても
よい。
【0046】本発明による重合方法としては、従来公知
の方法が使用可能であり、例えば、塊状、溶液、懸濁、
乳化重合等が挙げられる。特に、連鎖移動を押さえてよ
り良好に制御されたビニルエステル系重合体を得るとい
う観点から、塊状重合が好適に用いられる。また、押し
出し機を用いて連続的に重合を行ってもよい。
【0047】また、溶液重合の溶媒には、アルコール、
トルエン、ベンゼンなどを用いることができるが、ビニ
ルエステル系単量体の重合時に連鎖移動定数が比較的小
さく、重合体の溶解性にも優れるベンゼンが特に好適に
用いられる。
【0048】本発明により得られるビニルエステル系重
合体の開始末端の多くは、ヨウ素化合物由来のアルキル
基、パーフルオロアルキル基、フェニル基等であり、ま
た、成長末端の多くはヨウ素であることが確認されてい
る。従って、官能基を有するヨウ素化合物を用いること
により、重合体の末端に官能基を導入することができ
る。また、末端の官能基やヨウ素の反応性を利用して、
他の官能基への変換することも可能である。これら末端
官能性の重合体は、マクロモノマーの合成、架橋点とし
ての利用でき、相容化剤、ブロックポリマーの原料等と
して用いることができる。
【0049】上記ビニルエステル系重合体の安定性を向
上させるために、重合停止時に重合系へメタノール、ア
ンモニア性メタノール、リチウムボロハイドライドなど
を添加して、重合体の成長末端に存在するヨウ素を脱離
させてもよい。また、得られた重合体をイソペンタン等
の存在下、紫外線を照射して、ヨウ素を水素で安定化し
てもよい。
【0050】上記ビニルエステル系重合体を得た後、他
のモノマーを重合系に添加して重合させることにより、
ブロック共重合体を得ることも可能である。異種のビニ
ルエステル系単量体のブロック共重合体以外に、ビニル
エステル系単量体とスチレン系、アクリル系、メタクリ
レート系モノマー等とのブロック共重合体を得ることも
可能である。
【0051】上記ヨウ素化合物として、重合に関与し得
るヨウ素を複数個有するヨウ素化合物を使用すること
や、重合後期に種々のジビニルモノマーを少量添加し架
橋することなどにより、多分岐重合体を得ることも可能
である。
【0052】得られたビニルエステル系重合体は、従来
公知の方法により一部又は全部ケン化することにより、
部分ケン化ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコー
ルなどを得ることができる。
【0053】また、上記で得られたポリビニルアルコー
ルが保有する水酸基の反応性、水素結合能などを利用し
て種々のポリマーへ変換したり、相容化剤等として用い
ることができる。特に、常法によりアセタール化するこ
とにより、ポリビニルアセタールを得ることができる。
【0054】さらに、ビニルエステル系重合体として末
端に官能性基を有する重合体を得ることができ、このよ
うな末端基を利用してマクロモノマーの合成、架橋点と
しての利用、ブロックポリマーの合成等が可能となる。
このようなブロックポリマーによって、モノマーの単独
重合とは異なる新たな物性を発現する重合体を得ること
ができ、例えば、ABA等のトリブロック共重合体とし
て、熱可塑性エラストマーを得ることができる。
【0055】
【発明の実施の形態】以下、本発明を実施例および比較
例に基づいて具体的に説明する。 (実施例1)AIBN(ラジカル重合開始剤)が180
mmol/l、ヨードホルムが90mmol/l、酢酸
ビニルモノマー(表中、モノマーで表示)が9mol/
l、n−へプタン(GPC内部標準用)が1.2mol
/lとなるように重合溶液を調整し、0℃にて均一に混
合した後、1mlずつ試験管に分注・溶封し、60℃に
加温して重合を開始させた。4時間反応させた後、重合
液をー78℃に冷却して重合を停止させた。重合液をト
ルエンで希釈した後、n−ヘキサン中で沈殿させ、沈殿
物を数回洗浄し、室温で減圧乾燥することにより重合体
を得た。
【0056】(実施例2〜25、比較例1〜4)表1〜
3に示す所定量の、ラジカル重合開始剤、ヨウ素化合物
及び酢酸ビニルモノマーを、実施例1と同様にして仕込
み均一に混合した後、表1〜3に示す温度及び反応時間
で重合を行い、得られた重合液を実施例1と同様に処理
して、重合体を得た。
【0057】なお、断りのない限り、モノマー、溶媒な
どは蒸留精製により重合禁止剤、不純物を取り除いた
後、脱酸素処理をして用いた。
【0058】上記実施例及び比較例で得られた重合体に
つき、下記の測定を行い、その測定結果を表1〜3に示
した。 (1)重合率の測定方法 重合率は、n−へプタンを内部標準として、ガスクロマ
トグラフィー(島津製作所製、カラム:PEG1500
使用)により測定した。 (2)分子量の測定方法 数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)
〔GPC:日本分光社製、カラム:昭和電工社製「ポリ
スチレンゲル805L」、溶媒:クロロホルム、流速:
1ml/分〕により、ポリスチレン換算で測定した。
尚、分子量分布(MW/Mn)は、上記で測定された数
平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)から算
出した。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
【表3】
【0062】尚、表1〜3において、下記のものを使用
した。 〔ヨウ素化合物〕 a:ヨードホルム b:ジヨードメタン c:酢酸ビニルのヨウ化水素付加体 d:ヨウ化水素 e:1−ヨードパーフルオロヘキサン f:1,6−ジヨードパーフルオロヘキサン g:一塩化ヨウ素 h:クロロホルム i:ブロモホルム
【0063】〔ラジカル重合開始剤〕 A:アゾビスイソブチロニトリル B:過酸化ベンゾイル
【0064】表中、Mは酢酸ビニルモノマー、Iはヨウ
素化合物、Pはラジカル重合開始剤をそれぞれ示す。 Mn:数平均分子量 Mw/Mn:分子量分布(重量平均分子量/数平均分子
量)
【0065】実施例12では、高圧水銀ランプ(200
w)を9cmの距離から照射した実施例19、20では
ベンゼン、実施例21ではトルエンをそれぞれ溶剤とし
て加えた実施例23は、実施例22の操作後、さらに酢
酸ビニルモノマー9molを再添加して重合を7時間継
続した。
【0066】
【発明の効果】本発明のビニルエステル系重合体は、上
述したように、一次構造が精密に制御されるので、分子
量、分子量分布及び末端基等の制御が可能であり、ビニ
ルエステル系重合体の高機能化、高性能化を図ることが
できる。特に、分子量の制御によって、力学的強度、流
動特性、熱安定性、他の樹脂との相溶性、可塑化効率な
どを自由にコントロールすることができる。また、分子
量分布の制御、例えば、分子量分布を狭くして低分子量
成分を少なくすることにより、接着性向上、力学的強度
向上、流動特性向上等を図ることができる。
【0067】本発明のビニルエステル系重合体の製造方
法は、分子量が制御され、分子量分布が狭く、且つ末端
基が制御されたビニルエステル系重合体、ブロック共重
合体等を工業的に容易に提供可能であり、これらを変性
することにより、ポリビニルアルコール、ポリビニルア
セタール等の誘導体を得ることができる。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 炭素数3〜20のビニルエステル系単量
    体を重合して得られる重合体であって、その分子量分布
    〔重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)〕が
    1.05〜1.9であることを特徴とするビニルエステ
    ル系重合体。
  2. 【請求項2】 ビニルエステル系単量体にヨウ素化合物
    を添加し、ラジカル重合させてなることを特徴とするビ
    ニルエステル系重合体。
  3. 【請求項3】 ヨウ素化合物が、分子中に炭素−ヨウ素
    結合、水素−ヨウ素結合及びハロゲン−ヨウ素結合の中
    から選ばれる結合を1つ以上有するヨウ素化合物である
    ことを特徴とする請求項2記載のビニルエステル系重合
    体。
  4. 【請求項4】 ビニルエステル系単量体が酢酸ビニルで
    あることを特徴とする請求項1〜3記載のうちいずれか
    1項のビニルエステル系重合体。
  5. 【請求項5】 ビニルエステル系単量体を、ラジカル重
    合開始剤及びヨウ素化合物の存在下でラジカル重合する
    ことを特徴とする請求項1〜4記載のうちいずれか1項
    のビニルエステル系重合体の製造方法。
  6. 【請求項6】 ビニルエステル系単量体に対するヨウ素
    化合物のモル比が5×10-4〜0.1、かつヨウ素化合
    物に対するラジカル重合開始剤のモル比が0.1〜5と
    なるように添加してラジカル重合することを特徴とする
    請求項5記載のビニルエステル系重合体の製造方法。
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