JPH10512278A - 酸吸引誘発急性肺損傷の治療方法 - Google Patents

酸吸引誘発急性肺損傷の治療方法

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JPH10512278A
JPH10512278A JP8523042A JP52304296A JPH10512278A JP H10512278 A JPH10512278 A JP H10512278A JP 8523042 A JP8523042 A JP 8523042A JP 52304296 A JP52304296 A JP 52304296A JP H10512278 A JPH10512278 A JP H10512278A
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エー. マッセイ、マイケル
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Abstract

(57)【要約】 酸吸引した患者に、抗IL−8抗体などの抗IL−8結合物質を投与することによって、酸吸引による肺損傷を治療する。

Description

【発明の詳細な説明】 酸吸引誘発急性肺損傷の治療方法 本発明は、米国国立衛生研究所により許可された、許可番号No.HL19155及びH L51854の下、米国政府の支持を受けてなされた。米国政府は、本発明について一 定の権利を有する。 本発明は、出願番号08/377,077号(1995年1月23日出願)の一部継続出願であ り、その開示はすべて、参考として本明細書に含まれる。 発明の背景1.発明の分野 本発明は、胃の内容物を吸引したか又は他の原因により生じる、酸に暴露され た患者の肺を治療及び保護する方法に関する。 胃酸の吸引は、例えば、意識のない患者が胃の内容物を吐き戻して肺へ入った ときなどに生じ得る。酸吸引は、成人呼吸困難症候群(ARDS)の第2の主要 な原因である。この症候群は、間質スペース及び肺胞内スペースへの血液及び血 漿の漏出を伴う肺内皮及び肺胞上皮への損傷に特徴がある。酸誘発ARDSの死 亡率は40%〜50%の範囲である。現在利用できる適当な治療はない。 このため、酸を肺に吸引して、ARDSが進行している危険に冒されている患 者を治療する方法が望まれている。特に、酸による損傷後1時間以内に治療がな されると、肺内皮及び肺胞上皮への損傷を減ずることができる方法がさらに望ま れる。2.背景技術の説明 ミリガンら(Mulligan et al)(1993年)J.Immunol.150巻:5585頁は、抗IL −8抗体を用いて、免疫学的に誘発される肺の炎症を治療することを記載してい る。セキドら(Sekldo et al)(1993年)Nature 365巻:654頁は、抗IL−8抗体 がウサギの虚血性肺組織の局所潅流(reperfusion)損傷を減ずることができるこ とを示している。抗IL−8抗体は、ウサギのエンドトキシン誘発胸膜炎モ デルの好中球流入を阻害することがわかった。ブロードゥスら(Broaddus et al) (1994年)J.Immunol.152巻:2960-2967頁。IL−8の上昇したレベルが存在し 、これにより成人呼吸困難症候群を患う患者の好中球流入が生じる。ミラーら(M iller et al)(1992年)Am.Rev.Respir.Dis.146巻:427-432頁。TNF−αを 中和することにより(多くの細胞でIL−8が製造される)、酸吸引により生じ る肺損傷を減ずることがわかった。ゴールドマンら(Goldman et al)(1990年)A nn.Surg.212巻:513-520頁。酸吸引誘発肺損傷の可能なメカニズムは、種々の 化学走化性及び炎症性分子の放出に依存する。次に、化学走化性及び炎症性分子 は、肺毛状内皮と結合する際又はそれを通って移動する際、好中球を補充する。 そのようなメカニズムは、多くの文献で議論されている。例えば、イシイら(Ish ii et al)(1989年)Prostaglandins Leukot.Essent.Fatty Acids 37巻:65-70 頁、ゴールドマンら(1990年)上掲、ゴールドマンら(1991年)J.Appl.Physi ol.70巻:1511-1517頁、ゴールドマンら(1992年)Surgery 111巻:55-61頁、 フォウラーら(Fowler et al)(1987年)Am.Rev.Respir.Dis.136巻:1225-1231 頁、キンドら(Kindt et al)(1987年)J.Appl.Physiol.70巻:1575-1585頁 、及びミラーら(1992年)上掲が挙げられる。IL−8は、炎症の血管外部位へ 好中球を補充する主な化学走化性因子として提案されている。コルディッツら( Colditz et al)(1990年)J.Leukoc.Biol.48巻:129-137頁及びクンケルら (Kunkel et al)(1991年)Exp.Lung Res.17巻:17-23頁。 発明の概要 本発明にしたがって、インターロイキン−8(IL−8)結合物質を患者に全 身投与することにより、酸吸引後の急性肺損傷の程度を軽減するか又は除去する 。IL−8結合物質は、酸に暴露された細胞から放出されるフリーのIL−8を 中和するのに選択される。IL−8を中和することにより、循環から肺の脈管外 スペースへの好中球の流入を阻害するか又は防止し、IL−8結合物質による好 中球の補充が減少すると、細胞の損傷が減少すると考えられる。IL−8結合物 質の例として、抗IL−8抗体がある。酸吸引後、できる限り迅速にIL−8結 合 物質を患者に投与し、治療上の有効性を実質的に失わないように、そのような投 与を1時間よりも遅くならないようにするのがよい。 図面の簡単な説明 図1A及び1B。ポジティブコントロール、前処置、処置、並びに6時間後( 図1A)及び24時間後(図1B)のネガティブコントロールグループの肺胞−動 脈酸素圧差。6時間の実験で2時間の時点で、前処置及び処置グループの肺胞− 動脈酸素圧差は、ポジティブコントロールグループより著しく低く、かつネガテ ィブコントロールグループとは違いがなかった。24時間の実験で2時間の時点で 、処置(長期)グループの肺胞−動脈酸素圧差は、ポジティブコントロール(長 期)グループより著しく低く、24時間でも低いままであった。ポジティブコント ロール(長期)グループのウサギ(n=3)はすべて、12〜14時間で死亡した。 データは、平均±SEMである。*p<0.05対ネガティブコントロールグループ (図1A)又は処置(長期)グループ(図1B)。†p<0.05対前処置グループ (図1A)、‡p<0.05対処置グループ(図1A)。 図2A及び2B。ポジティブコントロール、前処置、処置、及び6時間の(図 2A)ネガティブコントロールグループ並びに12〜14時間のポジティブコントロ ール(長期)グループ及び24時間後(図2B)の処置(長期)グループの脈管外 肺水(肺浮腫の定量指標)。短期の研究において、前処置及び処置グループの脈 管外肺水は、ポジティブコントロールグループより35%低く、ネガティブコント ロールグループと差異がない。正常な、点滴注入されてないウサギの肺の脈管外 肺水は、3.2g/(乾燥肺g)である。長期の研究において、処置(長期)グル ープの脈管外肺水は、ポジティブコントロール(長期)グループより100%低い 。データは、平均±SDである。*p<0.05対ポジティブコントロールグループ (図2A)又はポジティブコントロール(長期)グループ(図2B)。 図3A及び3B。ポジティブコントロール、前処置、処置、及び6時間のネガ ティブコントロールグループ(図3A)並びに24時間の処置(長期)グループ( 図3B)の、肺の脈管外スペースにおける、脈管タンパク質トレーサー、131I −アルブミンの集積量として測定し、かつ脈管外血漿等価物として表した肺の 内皮透過性。短期の研究において、脈管外血漿等価物は、6時間のポジティブコ ントロールグループと比較して、前処置及び処置で70%減少していた。同じよう な脈管外血漿等価物の減少が、12〜14時間のポジティブコントロール(長期)グ ループと比較した、24時間の処置(長期)グループに観察された。データは、平 均±SDである。*p<0.05対ポジティブコントロールグループ(図3A)又は ポジティブコントロール(長期)グループ(図3B)、#p<0.05対ネガティブ コントロールグループ(図3A)。 図4A及び4B。ポジティブコントロール、前処置、処置、及び6時間のネガ ティブコントロールグループ(図4A)並びに12〜14時間のポジティブコントロ ール(長期)グループ及び24時間の処置(長期)グループ(図4B)の、ウサギ の気室から洗浄した好中球の数。短期の研究において、前処置及び処置グループ の好中球の数は、ポジティブコントロールグループのそれよりと50%低く、6時 間のネガティブコントロールグループとの差異はなかった。長期の研究において 、24時間の処置(長期)グループの好中球の数は、12〜14時間のポジティブコン トロール(長期)グループより低く、75%より多く低い。データは、平均±SD である。*p<0.05対ポジティブコントロールグループ(図4A)又はポジティ ブコントロール(長期)グループ(図4B)。 特定の実施の形態の詳細な説明 本発明は、酸誘発性肺損傷がインターロイキン−8(IL−9)−依存メカニ ズムにより肺に補充された好中球によって仲介されるということを見出したこと に少なくとも一部は基づく。吸引された胃酸による肺の直接的な損傷は、おそら く肺に入った後にすぐ酸が中和されるので、ある程度制限されると考えられる。 しかし、酸の吸引により、かなりの量のIL−8が肺の中の様々な細胞(気道、 上皮細胞、肺胞上皮細胞、及び肺胞マクロファージを含む)から気室に放出され るのを剌激する。気室中に生成されると、IL−8は肺の内皮に拡散して好中球 のための化学走性勾配を確立し、おそらくIL−8が循環している好中球と相互 作用する管腔内皮表面に結合する。IL−8と好中球の相互作用は、他のメカニ ズムによる内皮上への好中球接着分子のアップレギュレーション、活性内皮中の 好中球の移動、及び活性化のための好中球のプライミング(priming)を誘発す る。このように肺に補充された好中球は内皮損傷の多くの原因であると考えられ 、この内皮損傷によって酸吸入急性肺損傷の特徴である高タンパク肺水腫になる 。 本発明は、酸によって刺激された気道上皮細胞、肺胞上皮細胞、及び肺胞マク ロファージから放出されたフリーのIL−8の結合に基づく。結合は、好ましく は好中球上のIL−8受容体に結合するIL−8分子の領域を介して起こるため 、放出されたIL−8によって好中球の結合及び補充を直接ブロックする。結合 は少なくとも約107-1、好ましくは少なくとも108-1の親和力で起こるベ きである。 IL−8と循環している好中球との結合を抑制するための適当な結合物質とし て、放出されたIL−8と循環好中球との結合を破壊することができる、抗IL −8抗体及びそのフラグメント、即ちIL−8受容体タンパク質、又はそのフラ グメント若しくは類似体、又は他のあらゆるタンパク質、糖タンパク、炭水化物 、小分子等が挙げられる。IL−8結合物質は、好ましくは好中球上のIL−8 受容体に結合する分子上の領域で、又はその近くで、IL−8分子に結合する。 この領域に直接結合することによって、IL−8分子と好中球との間の相互作用 はブロックされる。この領域の近くに結合することによって、放出されたIL− 8による好中球の補充を効果的に抑制するのに充分なステアリン障害が提供され る。 現在好適なIL−8結合物質はIL−8分子に対する抗体を中和する。”中和 する”とは、その抗体がIL−8分子と循環好中球との間の結合を中和する、即 ち抑制することができるという意味である。このような抗体は、ポリクローナル 又はモノクローナル抗体を調製するための従来技術における免疫抗原のように、 IL−8又はIL−8フラグメントを用いて調製されてもよい。このような技術 は化学文献及び特許文献に詳しく記載されている。(例えば、"Antibodies:A L ABORATORY MANUAL,Harlow and Lane,Eds.,Cold Spring Harbor Laboratory P ress,Cold Spring Harbor,New York(1988)を参照)。モノクローナル抗体を 調製するための特定の技術はブロードダス(Broaddus)らのJ.IMMUNOL.152:2960 -2967(1994)に記載されている。 IL−8結合物質は、酸吸入が起こった後できるだけ早く全身系の、通常は静 脈内に患者に投与される。投与される特定の物質の性質によって、全投与量は体 重1kg当り1μg〜10mgで変化してもよい。モノクローナル抗体の例示的 なケースにおいて、投与量は典型的には体重1kg当り1mg〜10mgで変化 し、一回のボーラス又は何回かのボーラスで、全投与量が連続的に投与される。 静脈内投与が好ましいが、IL−8結合物質は他の全身系ルート、例えば気管内 等によって投与されることもできる。 意図された配送ルートに依って、IL−8結合物質は所望の投与量の結合物質 を含む好適な医薬組成物に組み込むことができる。このような組成物は、一般に 医薬上許容可能なキャリヤを含み、このキャリヤはIL−8結合物質を患者に送 るのに適切なあらゆる適合性の非毒性物質であってもよい。無菌水、アルコール 、脂肪、ろう、及び不活性固体がキャリヤとして使用することができる。医薬上 許容可能なアジュバント、緩衝剤等もまた、この医薬組成物に組み込むことがで きる。このような組成物は、腸管外投与、即ち静脈内投与、又は肺(気管内)配 送に適している。このような医薬組成物の調製は当技術においてよく知られてお り、参考文献、例えばレミントンのPHARMACEUTICAL SCIENCIES,Gennaro,Ed., Mack Publishing Co.,Easton,Pennsylvania 18042,18th Ed.,1990に記載さ れている。 以下の実施例は例示のために提供したのであって、これらに限定するために提 供したのではない。 実験 方法 動物、外科手術の準備及び通気 最初の方で述べたように雄のニュージーランド産の白ウサギ(n=32,体重 2.5〜3.5kg,Nitabell,Hayward,CA.,USA)の外科手術の準備をした 。(フォルケッソン(Folkesson)らのAM.J.RESPIR.CRIT.CARE MED.150:14 82-1485)。簡単に述べると、O2100%中のハロタン4%を用いて始めにウサ ギを麻酔し、この麻酔をO2100%中ハロタン0.8%に維持した。神経筋遮 断のために臭化パンクロニウム(0.3mg/h × kg体重; パブロン (Pavulon、登録商標)、オルガノン社(Organon Inc.)アメリカ合衆国 ニュ ージャージー州 ウェストオレンジ)を静脈内に投与した。 22ゲージのAngiocath(登録商標)を耳の縁の静脈に挿入し、流体及び薬を 投与した。PE−90カテーテルを右の頚動脈に挿入し、体血圧を測定して血液 サンプルを得た。内部直径4.0mmの気管を気管切開によって挿入した。実験 中ウサギをうつ伏せの状態にしたまま定量ピストンポンプ(ハーバード装置社( Harvard Apparatus Co.)アメリカ合衆国 マサチューセッツ ドーバー)を用 いてベースライン周期の間は吸入酸素フラクション1.0及びピーク気道圧15 〜18cmH2Oで通気し、及び陽性最終呼気圧4cmH2Oを補充した。ベース ライン周期の間、呼吸速度は動脈性PCO2が35〜40mmHgに維持される ように調節した。その後、実験の間を通して呼吸装置の設定を一定に保った。 点滴の調製 100mOsm/kgのNaCl(1/3の通常の食塩)溶液を、0.9%等張食塩 水及び蒸留水で調製した。1/3重量オスモル濃度を選んで胃の吸収液の重量オ スモル濃度に合わせた。次に、この溶液に塩酸(HCl)を加えてpH1.5に 滴定した。ネガティブコントロールのウサギの研究では、1/3通常食塩水を点 滴として使用した。エバンスブルー染料(Evans blue dye)(1mg、アルドリ ッヒケミカル社(Aldrich Chemical Company Inc.)アメリカ合衆国 ウィスコ ンシー州 ミルウォーキー)を全ての点滴に加え、注入された流体が両方の肺に 等分に分配されたことを死後の検査で確認した。 ウサギのrIL−8のモノクローナル抗体の生成 ウサギのrIL−8のモノクローナル抗体(ARIL8.2)の生成はブロー ドダス(Broaddus)らのJ.IMMUNOL.152:2960-2967(1994)に詳細に記載されてい る。ARIL8.2はウサギIL−8を識別する能力があるので、ARIL8. 2を用いて、125Iラベル化ウサギrIL−8がIL−8受容体と結合するのを 抑制し、IL−8受容体を介したウサギrIL−8誘発性シグナル導入をブロッ クし、及びウサギ好中球のためのウサギrIL−8誘発性化学走性作用を抑制し た。ARIL8.2は、ウサギIL−8(Kd=0.42nM)に対して高い親 和力を有していた。ARIL8.2は、ヒトIL−8とはクロス反応したが、密 接に関連したサイトカイン(hMGSA、血小板因子−4,β−トロンボグロブ リン)、他のヒトサイトカイン(IL−1β、TNF−α)、又は他の化学走性 因子(FMLP,C5a)にはクロス反応しなかった。抗体調製物を滅菌濾過し 、エンドトキシンはリムラス分析(Limulus assay)では検出不可能であった。 一般的な実験プロトコル 全ての実験において、手術準備後に、安定した心拍、全身血圧、及び動脈血液 ガスの1時間のベースラインが注入前に必要であった。ベースライン期間中の1 5分間、3μCi131I−ラベル化ヒト血清アルブミン(131I−アルブミン、フ ロスト(Frosst)実験室)を脈管トレーサタンパク質として静脈内に注入した。 ベースライン期間の残り45分間に血液サンプルを15分毎に採取した。脈管ト レーサを用いて、肺の脈管外スペースへの血漿タンパク質の流出を計算した。 注入に関しては、竜骨より約1cm上に位置するまで、チューブ[5 Fr.、ア キュマーク(Accumark、登録商標)、プレマークフィーディングカテーテル、コン コルド/ポルテックス(Concord/Portex)、キーン(keene)、ニューハンプシ ャー州、アメリカ合衆国]を静かに気管を通過させた。次いで、HCl又は1/ 3正常食塩水(体重1kg当り4ml)を3分にわたり両方の肺に注入した。注入完 了後、チューブを取り出した。 注入の30分後と、その後の6時間又は24時間の実験期間中の1時間毎に、 血液をサンプリングした。 6時間又は24時間の実験終了時に、腹部を切開し、腹部の大動脈の切断によ り、ウサギの血を放血した。胸部切開法により両方の肺を取り出した。遠位気道 中のV形位置までカテーテルをゆっくりと気管内に通してサンプリングすること により、肺胞サンプルを吸い出した。次いで、脈管外肺水及びトレーサタンパク 質測定(以下を参照)において後ほど使用するために、主要な気管支において左 肺を締めつけた。次いで、12mMリドカイン(シグマ・バイオケミカルズ(Sigma Biochemicals)、セントルイス、ミズーリ州、アメリカ合衆国)を含む6ml等張 0.9%NaClを用いて、右肺を2回洗浄した。 サンプルの放射能を測定した。血液及び気管支肺胞の洗浄サンプルにおいて、 全セルカウント及び微分セルカウントを測定した。洗浄サンプル1ml当りのセル 数としてセルをカウントし、使用する洗浄カラム(12ml)を乗算した。血漿 サンプル及び肺胞サンプルにおいて、他の物質と結合しないフリーのIL−8の 濃度を測定した。 注入物及び各実験からの選択サンプルのトリクロロ酢酸(TCA)の沈殿によ り、脈管トレーサ131Iが98%より高い割合でタンパク質に結合したままであ ることが確証された。 特定の実験プロトコル 実験グループは6つであった。これらグループの3グルーブにはHClを注入 し、1つには1/3正常食塩水を注入した。 ポジティブコントロールグループ(n=10)では、HCl注入の5分前に、 0.9%NaCl(体重1kg当り2ml)か又は無関係なモノクローナル抗体(体 重1kg当り2mg)をウサギに静脈内投与した。無関係なモノクローナル抗体は、 ARIL8.2(IgG2a)と同じイソタイプからなり、ヒト免疫欠乏症ウイ ルスにおけるgp120エンベロープタンパク質に対するものであった。調査す るパラメータに差はなかったので、無関係なモノクローナル抗体を静脈内投与し たウサギとNaClを静脈内投与したウサギを1つのグループに入れた。 前処置グループ(n=6)においては、HCl注入の5分前に、ウサギにIL −8に対するモノクローナル抗体(ARIL8.2、体重1kg当り2mg)を静脈 内投与した。 処置グループ(n=6)においては、HCl注入後1時間経過時に、ウサギに ARIL8.2(体重1kg当り2mg)を静脈内投与した。 ネガティブコントロールグループ(n=4)においては、1/3正常食塩水注 入の5分前に、ウサギに0.9%NaCl(体重1kg当り2ml)を静脈内投与し た。 ポジティブコントロール(長期)グループ(n=3)においては、HCl注入 後1時間経過時に、ウサギに無関係なモノクローナル抗体anti−gp120 を静脈内投与した。実験は24時間行ったが、このグループ内の全てのウサギは HCl注入の12〜14時間後に死亡した。 処置(長期)グループ(n=3)においては、HCl注入後1時間経過時に、 ARIL8.2(体重1kg当り2mg)をウサギに静脈内投与した。次いでこれら ウサギを24時間調査した。 血行力学、気道圧力、及び動脈血液ガス 較正された圧力トランスデューサ(Pd23 ID)ゴウルドオクスナード( Gould Oxnard)、カリフォルニア州、アメリカ合衆国)を用いて心拍、全身血圧 、及び気道圧力を測定し、グラスポリグラフ(グラスモデル7ポリグラフ、グラ スインスツルメント(Grass Instruments)、クインシー(Quincy)、マサチュ ーセッツ州、アメリカ合衆国)で連続的に記録した。動脈血液ガス及びpH及び 全身動脈圧力を30分毎に測定した。肺胞−動脈酸素差を計算した。 脈管外肺水 我々の脈管外肺水の決定方法については詳細に前述した。ベルチアウム(Bert hiaume)らの(1987年)J.CLIN.INVEST.79巻335〜343ページ、ウィーナー−ク ロニシュ(Wiener-Kronish)らの(1991年)J.CLIN.INVEST.88巻864〜875ペー ジ。手短にいえば、左肺を均質化し、脈管外の湿潤重量対乾燥重量比(湿潤肺1 g/乾燥肺1g)を測定することにより、脈管外肺水を決定した。右肺はセルカ ウントのために洗浄したので、左肺のみに対して脈管外肺水を得た。右肺からの 気管支肺胞洗浄物と両肺からのホモジェネートを用いて、放射能(以下参照)を 測定した。 肺脈管透過性 タンパク質に対する肺内皮透過性の測定に関しては、肺の内皮を通して肺の脈 管外部分への脈管トレーサタンパク質131I−アルブミンの浸透性を測定した。 肺全体の131I−アルブミン(量)をとり、気管支スペースの131I−アルブミ ンを引くことにより、肺中の脈管外131I−アルブミンの総集積量を計算した。 前に行った通り、計算した肺内の血漿量を最終の血漿サンプル中のカウント数に 乗算することにより、脈管スペースにおける131I−アルブミンを計算した。ベ ルチアウム(Berthiaume)らの(1987年)J.CLIN.INVEST.79巻335〜343ページ 、及びウィーナー−クロニシュ(Wiener-Kronish)らの(1991年)J.CLIN.INVE ST.88巻864〜875ページ。肺内の131I−アルブミンの脈管外集積量を、血漿評 価、又は肺内の放射能を評価する血漿(ml)として表した。 フリーのIL−8濃度の測定 ブロードダス(Broaddus)らの(1994年)J.IMMUNL.152巻2960〜2967ページ で述べられるように、抗IL−8モノクローナル抗体が結合していないフリーな IL−8の濃度を、血漿中及び最終的な肺胞サンプル中でELISAにより測定 した。このアッセイにおいては、ARIL8.2に既に結合したIL−8が獲得 されないように、ARIL8.2を初期獲得mAbとして使用した。マイクロタ イタープレート[96−ウェル;イムノプレートマキシソルプ.(ImmunoPlateM axiSorp.)ナンク.(Nunc.)アラメダケミカルサイエンス(Alameda Chemica l Sciences)、オークランド、カリフォルニア州、アメリカ合衆国]をARIL 8.2(10μg/ml)でコーティングし、乾燥ブロットし、0.5%ウシ血清 アルブミン(シグマ)を含むホスフェート緩衝サリン(RBS)で1時間ブロッ クした。ARIL8.2と混合されたrrIL−8、いくつかの希釈度の血漿サ ンプル及び肺胞サンプルのスタンダードをウェルに加え、1時間培養した。洗浄 後、ロングアームビオチン[ビオチン−S−NHS、リサーチアーバニクス(Re seach Organics)、クリーブランド、オハイオ州、アメリカ合衆国]に抱合され た二次抗体(8C1.1.6)を2時間加え、その後ホースラディシューペルオ キシダーゼ抱合ストレプタビジン(horseradish-peroxidase-conjugated strept avidin)[1:5,000;ジムド(Zymed)研究室、サウスサンフランシスコ、 カリフォルニア州、アメリカ合衆国]を1時間加えた。次いでテトラメチルベン ジジン[TMB;2コンポーネントシステム、カークガード&ペリー((Kirkega ard & Perry)研究室]を加え、室温にて10分間発色させた。次いで、波長 405nmのELISAプレートリーダーにより、光学密度を測定した。2,00 0〜31pg/mlの範囲にわたって生成した標準曲線から4−パラメータプログラ ム(ジェネンテックインコーポレイテッド(Genentech Inc.)、サウスサンフラン シスコ、カリフォルニア州、アメリカ合衆国)を用いて内挿することにより、サ ンプル値を決定した。中和されていないサンプルに対して、それらの線形範囲に わたって希釈の結果を平均した。しかし、捕獲抗体に等しい溶解性抗体の存在下 で抗原を検出すると、希釈の増大においてELISAが非線形となるおそれがあ る。それはおそらく、溶解性の抗体から抗原が解離し、その後捕獲抗体により結 合されるためである。従って、中和されたサンプルに対して、フリーのIL−8 の存在の過大評価となる可能性があることを知った上で、フリーのIL−8の量 を計るために最低の希釈(1:10)を選択した。ARIL8.2と混合された rrIL−8のスタンダードを用いてELISAをテストしたところ、ARIL 8.2の濃度が増大するにつれてフリーのIL−8の減少が検出され、5:1及 びそれ以上のモル比ではIL−8がついに検出できなくなった。アッセイを個別 に実行することにより実験条件がわからないように全てのサンプルをコード化し た。 統計上の分析 繰り返しの測定分析による一方向ANOVAを用いて、いくつかの時点におけ る同一動物からのサンプルを比較した。他の単一グループを比較する際に一方向 ANOVA(部分的)を用いた。スチューデント−ニューマン−キュール(Stud ent-Newman-Keuls)テストは統計後テストとして使用した。値は、表及び図の凡 例中に示されるように、平均±SD又は平均±SEMのいずれかとして表した。 無関係なモノクローナル抗体anti−gp120か又は食塩水のいずれかによ り予め処理されたHCLを注入されたウサギから得られたデータは、グループ間 に大差がなかったので組み合わせた。 結果 酸素添加反応、通気及びpH 短期の実験では、ARIL8.2前処置グループ及び処置グループの肺胞−動 脈酸素圧の差は、酸点滴注入後2時間までにポジティブコントロールグループの 差よりも著しく小さく、6時間の実験でも小さいままであった(図1A及び表1 )。ARIL8.2前処置グループ及び処置グループの両方では、肺胞−動脈酸 素圧の差はネガティブコントロールグループの差とは著しく異なっていなかった (図1A及び表1)。 長期の実験では、肺胞−動脈酸素圧の差は、HCl点滴注入後2時間までにポ ジティブコントロール(長期)グループよりも処置(長期)グループで著しく小 さかった(図1B及び表2)。ポジティブコントロール(長期)グループでは、 ウサギは激しい低酸素血のために12〜14時間の間に死んだ。一方、処置(長 期)グループでは、ウサギは低酸素血を生じずに24時間生きた。 PaCO2及びpHの酸誘発異常を、6時間及び24時間の研究でのARIL 8.2による前処置又は処置、及び好中球の枯渇により、阻止した(表1及び表 2)。 脈管外肺水 短期の実験では、前処置グループ及び処置グループの脈管外肺水(水対乾燥重 量の割合)は、ポジティブコントロールグループよりも35%少なく、6時間の ネガティブコントロールグループとは著しく異なっていなかった(図2A)。長 期の実験では、24時間の処置(長期)グループの脈管外肺水は、12〜14時 間のポジティブコントロール(長期)グループよりも100%少なかった(図2 B)。 肺脈管外透過性 短期の実験では、血漿の脈管外集積量はネガティブコントロールグループより も著しく多かったが、前処置グループ及び処置グループの肺中の血漿等価物の脈 管外集積量は、6時間のポジティブコントロールグループよりも70%少なかっ た(図3A)。長期の実験では、肺中の血漿等価物の脈管外集積量は、12〜1 4時間のポジティブコントロール(長期)グループよりも24時間の処置(長期 )グループで75%少なかった(図3B)。 全身血圧、心拍数、及びピーク気道圧 実験グループの間では、いずれの時にも、血圧又は心拍数に差異は観察されな かった(表1)。全グループのピーク気道圧は、注入後5分以内に上昇した。ポ ジティブコントロールグループの気道圧は高いままであったが、ネガティブコン トロールグループの気道圧は、6時間のうちに減少した。前処置及び処置した両 グループで、気道圧は、減少する傾向があったが、これは、統計的有意性に達し なかった(表1)。長期研究においても同様の所見が成された(表2)。 気管支肺胞洗浄液及び末梢血中の細胞カウント 短期の実験では、前処置グループ及び処置グループの気室から洗浄した多形核 球(PMN)の数は、ポジティブコントロールグループのものよりも50%以上 少なく、またネガティブコントロールグループものとは差異が無かった(図4A )。長期の実験では、24時間の処置(長期)グループ中の洗浄好中球の数は、 12〜14時間のポジティブコントロール(長期)グループよりも75%以上少 なかった(図4B)。異なるグループ間の肺胞マクロファージの数に、有意な差 異は見られなかった(データは示さず)。末梢血では、好中球が枯渇されたグル ープを除く全てのグループの好中球カウントに於いて、等しい小量の増加があっ た。この場合、実験中のどの時にも、循環好中球は観察されなかった。 フリーインターロイキン−8血漿、肺胞液、及び気管支肺胞洗浄液の濃度 短期の実験において、前処置及び処置グループの最終的な肺胞液サンプル中の フリーのIL−8の濃度は、6時間のポジティブコントロールグループのものよ り10倍以上低かった(表3)。また、ネガティブコントロールグループの希釈 していない肺胞液が吸引できなかったので、フリーのIL−8を気管支肺胞液中 では測定しなかった。肺胞液中の場合と同様に、処置及び前処置グループの洗浄 液中のフリーのIL−8濃度は、ポジティブコントロールグループのものより1 0倍以上低かった(表3)。興味深いことには、処置グループの洗浄液中のフリ ーのIL−8は、ネガティブコントロールグループのものと同じであった(表3 )。長期の実験では、肺胞液を、処置(長期)グループから吸引することができ なかった。しかし、洗浄液中では処置(長期)グループのフリーのIL−8濃度 は、ポジティブコントロール(長期)グループのものよりも著しく低かった(表 3)。血漿中では、免疫フリーのIL−8(抗IL−8モノクロナール抗体、A RIL8.2に結合していない)の濃度は、常に低く、全グループの場合と同様 であった(330±28pg/ml)。 考察 この研究の結果、酸吸引誘発肺損傷は、IL−8によって肺に補充される好中 球が主に仲介することが確認された。最初に、酸を注入したウサギでは、多数の 好中球が、著しく増大した量のIL−8と関係して気室から回収された。全グル ープの血漿中で殆ど検出できないIL−8の濃度は、IL−8が酸吸引後に肺の 中で局所的に生成されるという前提を支持する。酸吸引後6時間の気室中のIL −8の濃度(41±18ng/ml)は、生物学的に関連があり、走化性及び好 中球プライミングのインビトロアッセイ中のIL−8は10倍低い濃度で生物学 的に活性である。二番目に、肺を損傷する際の好中球の役割は、好中球枯渇後の 肺損傷の著しい整復(reduction)によって支持された。三番目に、好中球の補充 、及びその結果の酸吸引後の肺損傷を仲介する際のIL−8の役割は、IL−8 を中和することにより確立された。抗IL−8抗体は、フリーのIL−8の濃度 をポジティブコントロール(酸注入)ウサギ中で10%未満の濃度で、インピト ロ及びインビボの双方の研究のIL−8の生物学的活性の下限のレベルまで、効 果的に減少した。気管支肺胞洗浄液中の同様のIL−8濃度から判断して、この IL−8濃度は、ネガティブコントロール(食塩水注入)ウサギ中の濃度と近似 した。抗IL−8モノクロナール抗体の使用により、好中球注入が50%以上減 少し、更に重要なことには、酸吸引による厳しい急性肺損傷を著しく整復する。 IL−8の中和に従って、ガス交換、脈管外肺水及び肺脈管透過性における酸誘 発異常をほぼ完全に防止した。 肺損傷の三つの別個の指標は短期(6時間)及び長期(24時間)の研究の首 尾一貫した信頼性のある結果を示した。第1に、肺胞−動脈酸素圧力差は、肺胞 水腫がなく、抗IL−8モノクローナル抗体を投与したウサギではほぼ標準であ った。第2に、IL−8を中和した場合、酸注入したウサギの脈管外肺水は食塩 水のみを注入したウサギと変わらなかった。前処置及び処置グループ及び食塩水 注入コントロールグループの水:乾燥の重量比4.2〜4.4g水/gの乾燥肺 は、間質水腫に最も適合する。一方ポジティブコントロールグループでは、水: 乾燥の重量比が6時間で7.0g水/gの乾燥肺及び12〜14時間で8.0水 /gの乾燥肺は、かなりの肺胞水腫を示した。これらの差は、肺水が標準的なウ サギの肺(3.2g水/乾燥肺g)の肺水を越える、肺に蓄積する水のミリリッ トルとして表されるとより明らかになる。6時間のポジティブコントロールグル ープでは、両肺の余分な水は約9.2mlか又はネガティブコントロール前処置 及び処置グループの量(1.6〜2.6ml)よりも3倍高い。最後に、内皮関 門は抗IL−8モノクローナル抗体を投与した酸注入ウサギでかなり保護される 。IL−8に対するモノクローナル抗体の前処置又は処置によって妨げられない 肺内皮透過性の僅かな増加があった。しかし、この増加は脈管外肺水の正味の蓄 積を起こすほど十分ではない。肺水の付随増加を伴わない肺内皮透過性の僅かの 増加は、エンドトキシンを注入したヒツジで既に述べた。全体として、IL−8 が一旦中和すると、肺に対する酸の効果は食塩水のみの効果と変わらない。 抗IL−8モノクローナル抗体が、酸注入後1時間して投与した場合と損傷の 5分前に投与した場合において同様に効果的であるという事実は、肺損傷の進行 が酸注入によって遅延することを確証している。このような時間経過はIL−8 発現に予測される速度論に一致する。IL−8濃縮物はインビボで連続的に測定 されるという研究によって、生物学的に適切なIL−8濃縮物はエンドトキシン による刺激後2時間ではじめて見いだされることが証明された。さらに時間が経 過すると、IL−8濃縮物は上皮細胞のような近隣傍観細胞に対するTNF−α 又はIL−1のような近位マクロファージ誘導サイトカインの作用によってさら に増幅される。酸誘発肺損傷の近位サイトカインの重要な役割は、TNF−αの 中和によって酸吸引による損傷を著しく減少するという前の研究によって、示唆 されている。TNF−αは、多くの細胞によるIL−8の生成を導く主な近位サ イトカインであり、TNF−αの中和は炎症性カスケードのIL−8よりも早く 現れるため、抗TNF−αは酸注入を伴う抗IL−8ほど遅くては効果がない。 抗IL−8の比較的広い治療の窓口(少なくとも1時間)に起因する別の因子は 、生成後にIL−8は内皮に拡散し好中球と相互作用するに違いないことである 。IL−8の生成及び拡散に必要な時間が与えられると、酸吸引後1時間より遅 く投与する抗IL−8治療も効果的であることが想像できる。 この研究のデータは、酸吸引後の急性損傷の進行に対してIL−8が必須であ ることを示すが、IL−8は他の前炎症性(proinflammatory)分子に関連する損 傷を仲介するようである。単独で使用した場合、IL−8は比較的弱い好中球活 性化因子であるが、インピトロ研究では他のメカニズムによる活性化の有効的な プライマーであることが示された。IL−8のみを標準的なヒトの皮膚に注射し たインビボ研究では、好中球はじんましん又は発赤を表さずに補充された。同様 に、IL−8のみをイヌの通常の気管部に注入した場合、好中球はエラスターゼ 又はリゾチームを放出せずに補充された。IL−8を単独で使用したこれらの研 究とは対照的に、酸吸引肺損傷において、IL−8は他のサイトカイン、例えば TNF−α及びIL−1ならびに他の炎症性媒介物、例えばリューコトリエンス 、補足フラグメント(complement fragment)及び血小板活性化因子に関連して生 成する。しかし、肺への酸吸引後生成された様々なサイトカイン及び炎症性媒介 物にも関わらず、IL−8のみが存在することによって酸吸引によって起こるウ サギの実験的な肺損傷を防ぐことができる。 胃の内容物を吸引することは、罹病率及び死亡率の主な臨床原因であり、この 状態に対する有効な療法は現在得られない。現在の管理は正の圧力通気及び流体 療法の注意深い管理に制限される。この研究のデータは、この状態に対する抗I L−8療法の治療の可能性を示す。この方法には幾つかの可能な利点がある。I L−8は遠位サイトカインであるため、その中和はTNF−αのようなより近位 の多能性サイトカインの中和よりもより限定された効果を有する。また、中和療 法はIL−8が生成される時間という短時間でのみ要求され得る。エンドトキシ ン剌激を伴うインビボ研究では、IL−8濃度は12時間より短い時間で標準に 戻る。酸吸引を伴う12〜14時間の長期の研究では、未処置のウサギの肺胞流 体IL−8濃度は6時間の場合よりも低く、単一の酸吸引後の長期抗IL−8療 法の必要性がなくなることを示す。胃吸引は敗血症のような他の臨床状態でも頻 繁に見られ、発病の時間が特定しにくいため、吸引の発病の時間は多くの場合の 確率によって知られている。さらに重要なことは、酸吸引損傷の発病の遅延によ って医学的に実行可能な治療の窓口が少なくとも1時間は広がったことである。 抗IL−8療法の潜在的な限界は、抗炎症性療法と同様に、多くの免疫を抑制し 、感染の危険性を高めることである。実際、二次細菌肺炎は吸引後2〜10日で 起こる酸吸引の合併症として知られている。 上述は本発明の好適な実施形態の完全な記述であるが、さまざまな変更、修飾 及び均等物を使用することができる。したがって、上述は請求の範囲によって定 められる本発明の範囲を制限するものではない。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE, DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M C,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF,CG ,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,SN, TD,TG),AP(KE,LS,MW,SD,SZ,U G),UA(AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM ),AL,AM,AT,AU,AZ,BB,BG,BR ,BY,CA,CH,CN,CZ,DE,DK,EE, ES,FI,GB,GE,HU,IS,JP,KE,K G,KP,KR,KZ,LK,LR,LS,LT,LU ,LV,MD,MG,MK,MN,MW,MX,NO, NZ,PL,PT,RO,RU,SD,SE,SG,S I,SK,TJ,TM,TR,TT,UA,UG,UZ ,VN (72)発明者 マッセイ、マイケル エー. アメリカ合衆国 94116 カリフォルニア 州 サンフランシスコ スィックスティー ンス アベニュ 1998 (72)発明者 フォルケッソン、ハンス ジー. アメリカ合衆国 94122 カリフォルニア 州 サンフランシスコ ナンバー 14 パ ーナスサス アベニュ 700

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1.酸媒体に暴露した肺を有するホストの治療方法であって、暴露による肺への 損傷を阻害するのに有効な量の抗IL−8結合物質をホストに投与することを含 む、上記治療方法。 2.抗IL−8結合物質が、IL−8のIL−8受容体結合領域と結合する請求 項1記載の方法。 3.抗IL−8結合物質か、IL−8のIL−8受容体結合領域と結合する抗I L−8抗体である請求項1記載の方法。 4.抗IL−8結合物質を、脈管内又は肺配送により投与する請求項1記載の方 法。 5.抗IL−8結合物質が、酸媒体の暴露から1時間以内に投与される請求項1 記載の方法。 6.抗IL−8結合物質の量が、IL−8の好中球への結合を中和するのに十分 な量である請求項1記載の方法。
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