【発明の詳細な説明】
マロン酸ベースのマトリックスメタロプロテイナーゼインヒビター
本発明は、(擬)マロン酸の構造に基づく新規のマトリックスメタロプロテイ
ナーゼインヒビターを含む。本発明は、更に、インヒビターの生産及びそれらの
使用、特に治療の分野におけるそれらの使用を含む。
マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMPs,Matrixins)は、間隙及び基底膜コ
ラーゲン、フィブロネクチン及びラミニンのような細胞外マトリックスの構成物
の全てでないならほとんどに対して蛋白質分解活性を示すCa含有Znエンドペプチ
ダーゼのファミリーを含む。それらは通常の組織再編成で中枢的役割を果たし、
特に排卵、胚成長及び分化のような他の過程に関連する。1,2,3,4
間隙繊維芽細胞コラゲナーゼ(MMP-1,HFC)、ニューロフィルコラゲナーゼ(
MMP-8,HNC)、2つのゼラチナーゼ、(HSL-1のような)ストロメリシン及び HP
UMPを含む少くとも11の異なる及びなお高度に相同な MMP種がキャラクタライズ
されている。(Birkedal-Hansen et al.2を参照のこと)。これらのプロテイナ
ーゼは、いくつかの構造的及び機能的特徴を分けあうが、それらの基質特異性は
いくらか異なる。 HNC及び HFCのみがネイティブ鎖長の3/4及び1/4フラグ
メントの生成を伴って、単結合でタイプI,II及びIIIネイティブ三重らせんコ
ラーゲンを開裂することができる。これはコラーゲンの融点を低くし、他のマト
リックス分解酵素による更なる攻撃にそれらをアクセス可能にする。
全ての MMPは、ほとんどの場合約 210残基ヘモペキシン様ドメインで終わる約
165残基触媒ドメインが続く約80残基活性化ペプチド
を有するマルチドメイン蛋白質分解で活性可能なプロ酵素として分泌される。触
媒ドメインは、“メトジンシン(metzincin)”スーパーファミリー5を特徴とする
保存的な HEXXHXXGXXH亜鉛結合配列を含み、ほとんどの小さなペプチド基質に対
して十分な活性を示す。6,7,8,20
MMPは通常の組織発達及び再編成に重要であり、腫瘍成長及び転移、リウマチ
及び変形性関節症、歯周炎、潰瘍化、動脈硬化症及び気腫のような種々の病気の
過程に関連している(報告1,2,3,4を参照のこと)。これにより、 MMPのインヒ
ビターは、これらの病気を治療するのに用いられ得るだろう。より多い又はより
少い特異的様式10,11,12で MMPの蛋白質分解活性をブロックする3つの内因性蛋
白質インヒビター(TIMP-I,II,III)が今日まで記載されている。ある程度デ
ザインされた実質的に全ての特異的合成コラゲナーゼインヒビターは、それらの
標的酵素の活性部位と相互作用する可逆的ペプチジルインヒビターである。それ
らは酵素の基質認識部位に結合するのに用いられるペプチド成分と結合するヒド
ロキサメート、チオール、カルボキシレート又はホスフィン酸基のような(それ
を除去することなく)触媒亜鉛と相互作用することができるキレート化基を含む
。13,14,15,16この方法において、インヒビターは、要求される亜鉛酵素に向け
て標的づけられ、それに特異的である。
本発明は、先に言及される合成インヒビターから完全に異なる方法で MMPに結
合する MMPインヒビターの新しいクラスを規定する。
新規のインヒビターは、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)の阻害のた
めの一般式I,II又はIII
(ここで、X1は酸素又は硫黄であり、
R1はOH,SH,CH2OH,CH2SH又はNHOHであり、
R2は、 HNCのアミノ酸 161に結合する2〜10の骨格原子の残基
であって、飽和又は不飽和の直鎖又は分枝鎖のものであり、好ましくは単素環式
又は複素環式構造であるものであり、
X2は酸素又は硫黄であり、水素結合アクセプターとして HNCのアミノ酸 160
上に結合し、
Yは HNCのS1′ポケットに結合する残基であり、少くとも4の骨格原子Z1
−Z2−Z3−Z4−R3からなり、
R3はn−プロピル、イソプロピル、イソブチル又は三環式システム以下であ
る少くとも4の骨格原子を有する残基であり、
R4は水素、アルキル又はアリール、好ましくはイソプロピル、n−ブチル、
ベンジルである)
により表される化合物及びそれらの塩である。
本発明に従う“阻害”という言葉は、試験管内及び生体内のコラゲナーゼ活性
の実質的還元を意味する。コラゲナーゼ活性は、例えばF.Grams(1993)51に従う
酵素アッセイで試験管内で測定され得る。“実質的な阻害”とは、好ましくは(
インヒビターなしでのコラゲナーゼ活性に基づいて)インヒビターのミリモーラ
ー濃度未満における少くとも約50%の阻害を意味する。一般に、約80%〜90%超
の阻害が見られる。
本発明の好ましい実施形態において、残基Yはペプチド又は擬似ペプチド基で
ある。
構造Z1−Z2−Z3−Z4−R3は、そのZ1とZ4との間の距離が 2.5〜3.0 Å
の間である約0°の二面角(Sp2又はSp3混成)を形成する4の骨格原子からな
る。Z1及びZ4は結合して環式構造を形成し得る。環式サブ構造についての好ま
しい基は、フェニレン、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジル、ピリダジニル、
ピペラジニル、インドリニル及びモルホリニルのような擬似環構造である。
好ましい残基R3はイソプロピル、アミノ酸、ピペリジニル、ピリジニル、フ
リルである。
式I,II又はIIIに従う化合物は異なる構造及び異なる特性を有する3つの部
分:キレート化基(C1R1X1、ホスフィノイル又はホスホノ)、尾基として後に言
及される一次結合部位(Y)及び二次結合部位(C2R2)からなる。
新規のインヒビターのキレート化基は二座の様式で(MMP中の活性部位クレフト
の底において置換され、3のヒスチジンにより、及びインヒビターのR1及びX
により5配位している)触媒亜鉛と相互作用する。本発明に従うインヒビターの
尾基は、曲がった構造をとり、S1′ポケット(サブ部位)内に入り、S2′及
びS3′サブ部位に結合しない。これと対照的に、ほとんどの周知のインヒビタ
ーの尾基は活性部位クレフトに沿って伸びた様式で結合する(結合部位の定義に
ついて39を参照のこと)。
本新規のインヒビターと当該技術のインヒビターとの間の結合における差の理
由は本発明に従うインヒビターのいくつかの本質的に新しい構造的特徴にある。
1.(擬)マロン酸基本構造
マロン酸構造はインヒビターの3つの結合位置を規定する。キレート化基は二
座としてR1及びX1を通して MMP中の亜鉛の活性部位に結合する。二座構造は、
好ましくは、ヒドロキサメート、チオール、カルボキシレート、ホスフィノイル
又はホスホノ基であり得る。
二次構造は、R2と HNCのアミノ酸 161との間の相互作用により規定される。
“アミノ酸 161への結合”とは、アミノ酸 161周囲の表面領域への結合を意味し
、それにより好ましくはアミノ酸 161への結合が含まれる。例えばファンデルワ
ールス又は親水性相互作用
からの結合誘導体も含まれる。最適な結合のために、2〜10骨格原子(C,N,
O,S)を有するアルキル、アルケニル、アルコキシ残基又は5〜10骨格原子(
C,N,O,S)を有するシクロ(ヘテロ)アルキル又は芳香残基であることが
好ましい。
MMPへのマロン酸基本構造の更なる結合は、尾基の酸素又は硫黄を通して達成
される。この酸素又は硫黄は HNCのロイシン 160のアミドプロトンに水素結合す
る。
2.尾基
マロン酸基本構造の二次カルボニル基(=C3X2)は本発明に従うインヒビター
の一次結合基(Y尾基、例えば式IVを参照のこと)。この構造は約0°の二面角
(Sp2又はSp3混成)を形成する4の骨格原子を含む。本発明の好ましい実施形
態において、ターンは5又は6原子を有する環の一部である。それゆえZ1とZ4
との間の距離は 2.5〜3.0 Åの間であることが好ましい。位置Z4において、n
−プロピル、イソプロピル、イソブチル又は少くとも4の骨格原子を有するが、
三環式システム以下である残基である更なる残基R3がある。
本発明に従うインヒビターは、Yを通してS1′ポケットに結合する。そのポ
ケットは:
1)ヒト中性コラゲナーゼ(HNC):
L193,V194,H197,E188,L214,Y216,P217,Y219,A220,R22アミノ酸
(Reinemer et al.(1994)17に従う番号)
2) HFC:
L181,A182,R214,V215,H218,E219,Y237,P238,S239,Y240アミノ酸
(Lovejoy et al.(1994)49に従う番号)
3)ストロメリシン:
L197,V198,H201,E202,L218,Y220,L220,L222,Y223,H224,S225,A226
アミノ酸
(Gooley et al.(1994)50に従う番号)
それゆえ、化合物の本質的特徴は、当該技術に従うコラゲナーゼインヒビター
と対照的に、尾基の構造が本発明に従う化合物の阻害活性に高度に関連している
ことである。当該技術に従うインヒビターの尾基は MMP中の本質的な結合部位に
結合しない。しかしながら、本発明に従う化合物の場合、尾基Yの MMPのS1′
ポケットへの結合はインヒビターとコラゲナーゼとの間の結合の本質的部分を構
成し、結果として阻害活性を示す。これにより尾基YはS1′ポケットに十分に
適合する構造を有することが本質的である。
これらの要求は、補助的結合部位を構成する置換基R2からの1つの炭素によ
り間隔をあけられた亜鉛キレート化基を含む合成化合物により実現される。それ
はファンデルワールス及び/又は親水相互作用で蛋白質の表面と相互作用する。
尾基Yは、十分に規定された幾何学及び表面特性の蛋白質のポケット内への挿入
のためにデザインされなければならない。上部において、その環境は疎水性相互
作用が活用され得る場合、主に疎水性であり、他方低部はいくつかの親水性部位
も含み、これにより水素結合を許容する。相応して、水素結合アクセプター及び
ドナーは、このインヒビター分子の部分内に組み入れられる。
先に言及されるターン構造Yとの関連における亜鉛結合領域とX2との間の短
い距離のため、 MMPに結合した場合のインヒビターの“L−ベース”構造が得ら
れる。
当該技術に従うコラゲナーゼインヒビターのほとんどはスクシニル基本構造に
基づき、亜鉛結合領域とC3との間により長い距離を
示す。それゆえ、R2はS1′ポケットに結合し、尾基がこのポケットに結合す
る機会がない。それゆえ、当該技術に従うコラゲナーゼインヒビターは、本発明
と対照的に、基質様に結合し、それゆえ MMP結合状態において伸びた骨格を示す
。
このタイプのコラゲナーゼインヒビターは、例えば米国特許第 4,595,700号(
スペーサーがキラル中心bにより表される)、米国特許第4,599,361(b又はc
により表されるスペーサー)、EP-A 0 231 081(式Iの(CH2)nにより表されるス
ペーサー)、EP-A 0 236 872(式IのCHR3により表されるスペーサー)、EP-A 0
276 436(式IのCH2により表されるスペーサー)、WO 90/05719(a及びCONHOH
に連結するC原子により表されるスペーサー)、EP-A 0 489 577,EP-A 0 489 5
79及びWO 93/14096(CR2により表されるスペーサー)、EP-A 0 497 192(a及
びR1に連結するC原子により表されるスペーサー)、WO 92/16517(CO2H及びCO
に連結するC原子により表されるスペーサー)、EP-A 0 520 573(CHCO2H及びCH
R1に連結するNHにより表されるスペーサー)、WO 92/10464(スペーサーはROCO
及び CCOに連結するC原子の1つにより表される)並びにWO 93/09097(CONHOH
及び CR2に連結するC原子により表されるスペーサー)に記載される。
更なるコラゲナーゼインヒビターはEP-A 0 320 118及びWO 92/21360 に記載
される。この構造は特に他の本質的特徴により異なる。その分子は、C1Oのかわ
りに(CR2及び CR3の間に位置した)NH基を含む。このNH基は、 C1Oと対照的に、
電子供与体であり、それゆえ分子の特性を完全に変化させる。このことから、こ
の分子が本発明に従うインヒビターのそれに類似した様式でコラゲナーゼに結合
することができないことが明らかである。
更に、 WO 92/09563 のコラゲナーゼインヒビターは完全に異な
る構造を示し、それゆえ当該技術のインヒビターのそれから完全に異なる様式で
コラゲナーゼに結合する。
インヒビターの先に言及される結合特性は、X線結晶学技術を用いて決定され
得る。このような方法は、例えばこれらの技術のために及び HNCの触媒ドメイン
の結晶構造のために引用により本明細書に組み込まれるW.Bode et al.,EMBO J
.13(1994)1263〜1269に記載される。
MMPの触媒ドメインの本質的特性
MMP、例えば HNCはより小さな“低部”C末端ドメインからより大きな“上部
”N末端ドメインを分ける浅い活性部位クレフトを有する球形を示す。主な上部
ドメインは、二重のS形状のループ及びその凸状側上の2つの他の橋かけループ
に、及びその凹状側において活性部位ヘリックスを含む2つの長いα−ヘリック
スに隣接した(2,1,3,5,4の順番のβ−ストランド及び唯一逆平行スト
ランドを表すシートストランド5を有する)中央の高度にねじられた5本鎖β−
プリーツシートからなる。
重要な基質及びインヒビター結合領域は、活性部位ヘリックスの”頂上”に位
置し、活性部位クレフトの“北側の”リム及びS形状の二本鎖ループの一部であ
る以後“隆起セグメント”として言及されるその先の“隆起した”セグメントGl
y(155)〜Leu(160)を形成するβ−シートの“端の”鎖Leu(160)〜Phe(164)である
。“触媒”亜鉛イオン(Zn(999))は活性部位クレフトの底に位置し、His(197)-Gl
u(198)-X-X-His(201)-X-X-Gly(204)-X-X-His(207)の3つのヒスチジン残基の N
ε2 イミダゾール原子に、1又は2のインヒビター原子により配位される。更に
、触媒ドメインは第2の“構造的”亜鉛イオン(Zn(998))及びβシートの頂点に
対して充填された2つのカルシウムイオンを有する。
小さな下部ドメインは2つの鎖状につながれた広いループ及びC末端の3ター
ンのα−ヘリックスからなる。これらの広い右手系ループの最初のものは、Ala(
213)〜Tyr(216)に延伸する窮屈な1,4−ターンを含む。この“Met−ターン”
は触媒亜鉛に連結する3つの His残基のための疎水性塩基を供する“メトジソシ
ン”5中に保存性のトポロジー要素を表す。ペプチド鎖は次に、その鎖がもつれ
ているPro(217)における分子表面に移り、伸長した 鎖Pro(217)-Thr(224)に続く
。
S1′ポケットは、触媒亜鉛のすぐ“右側”にあり、(“壁形成性セグメント
”として言及されるその外側壁を形成するこのストランドPro(217)〜Tyr(219)の
最初の部分によりバルク水から分離された(活性部位クレフトに垂直に走る)長
い表面の裂け目により形成される。このポケットへの入口は、i)隆起セグメン
トGly(158)-Ile(159)-Leu(160)及びポケットの“上部”側を形成する端のストラ
ンド Leu(160)-Ala(161)の開始部分、ii)Tyr(219)側鎖(“右”側)、iii)Asn
(218)側鎖を含む壁形成性セグメント(“低部”側)、及びGlu(198)カルボキシ
レート基を一緒の触媒亜鉛(“左”側)。その特徴は、水素結合により結合した
ペプチド基質及びインヒビターをつなぎ留めるための一連の極性基を提供する(
以下を参照のこと)。極性の入口ボトルネックは、i)Leu(160)及びVal(194)の
側鎖、ii)Tyr(219)側鎖、iii)壁形成セグメントPro(217)〜Tyr(219)を形成す
るアミド基の偏平な表面、及びiv)His(197)のイミダゾール環の偏平側により主
に区切られたポケットのかなりより疎水性の内部に開いている。そのポケットの
内側部分は、そのポケットの入口の中に位置した3〜4の溶媒分子に加えて4つ
の交差して水素結合した“内部”水分子で満たされている。ポケット底は、Leu(
193)及びLeu(214)の側鎖に隣接したArg(222)の長い側鎖により部分的に
隔離され、 Metターンに向かって“後方”/“下方”に伸びる。末端のグアニジ
ル基はPro(211)O,Gly(212)O及び/又は Ala(213)Oに弱く水素結合する。いくつ
かの散在した極性基は囲まれた水分子のためのアンカー点を供し、ここでその1
つはArg(222)側鎖と壁形成セグメントとの間の左の穴を通して局在化したバルク
水分子に直接の水素結合で接触している。
当該技術のインヒビターの結合
当該技術のインヒビターと本発明によるインヒビターの結合の差を証明するた
めに、当該技術に従うインヒビターの基本構造を示す2つのモデルインヒビター
をデザインした。これらのインヒビターは、MBP-AG-NH2及びPLG-NHOHとして言及
される。
当該技術のインヒビターの主鎖相互作用
HNCとの複合体中のPLG-NHOH及びMBP-AG-NH2のインヒビター鎖はより広がった
又はよりせばまった構造において結合される。両方のインヒビター構造を含む基
質モデルは、通常のペプチド結合により亜鉛キレート化基の交換により作られ得
るだろう。P3からP3′への主鎖は、活性部位端への4つの水素結合及びS1
′ポケット壁形成セグメントへの2つの水素結合により安定化される。この主鎖
構造に従って、L配置のP1′残基との MMP結合ペプチド鎖のP1′Cα−Cβ
結合は、“後方、下方”に向いており、いずれかのよりかさばった(特に芳香族
)側鎖がS1′ポケット内に埋められることを許容する。
S1′サブ部位
基質とインヒビターとの間の主な相互作用は、P1′残基とS1′サブ部位と
の間におこる。MBP-AG-NH2(コラゲナーゼ複合体において、ベンジル側鎖はファ
ンデルワールス表面の間に約9Åの深さ及び5×7Åの幅を有するS1′サブ部
位内に適合する。 HNCが T
yr> Leu〜Met 〜Ile 〜Len 〜Phe >Trp > Val〜Glu > Ser〜Gln 〜Arg31 〜3 3
のP1′で比較的有利に基質を加水分解することは、疎水性相互作用が極性相
互作用より結合及び触媒により重要であることを示唆する。しかしながら、 Tyr
のヒドロキシル成分のような遠位極性側鎖基は、おそらく囲まれた水分子との水
素結合相互作用を通して結合に有利に作用するようである。“ポケット”の塩基
は、フラップとして作用し得るArg(222)側鎖の移動のため適合可能となり、壁形
成セグメントを安定化することによりポケットのはっきりした形状を維持する。
S1′ポケットはせまいボトルネックを有するが、天然のアミノ酸のいずれかに
要求されるよりかなり大きい。
興味あることに、関連する繊維芽細胞コラゲナーゼのS1′ポケットは、 Ser
による HNCのArg(222)の、並びに“上部”ポケット壁の活性部位ヘリックス形成
部位中のかなり長い極性の ArgによるLeu(193)の同時の置換のためその底におい
てかなり異なる。 HNC中のArg(222)と同様に、Arg(193)の側鎖はS1′ポケット
の深さをかなり減らす HFC中のポケットの底を貫通する18。これは HNCと比較し
てP1′における Trpのための HFCのかなり低い許容性を説明する31。位置 222
又は 193において Arg残基を有し得るが、同様の機能を有し得る位置 226及び/
又は 228において Arg残基を含む他のヒトMMP(HSL-3を除く)はないことは注目
すべきであろう。本文脈において、 HPUMPを除く全ての MMPにおいて、Val(194)
の側鎖がS1′ポケット壁の一部であることも興味がある。 HPUMPにおいて、 V
alは Tyrにより置換される。サーモリシン中の対応するS1′ポケットも、活性
部位ヘリックスにより“後方”において区切られ、蛋白質マトリックス中に十分
に埋もれているので、そのサイズがかなり小さいことも言及されるべきである。
他のサブ部位
疎水性クレフト様S3サブ部位へのPLG-NHOHのプロリンの隙間のない適合は、
インヒビター結合34,35への及び切断特異性31 〜33へのP3-Proの有利な効果を説
明し、いずれかのコラーゲン基質中の Proの厳密な出現(Birkedal-Hansen,199
32を参照のこと)。P1中のGly(I1)は、全てのコラーゲン切断部位中に存在す
るが、クレフトリムとの相互作用を全く利用しない;長い疎水性の及び極性側鎖
はおそらく結合を改善するだろう。これは Alaを除いて Gluは Pro,Met,His,
Tyr,Gly及び Pheより HNCのためにより有利なP1残基であることを示す切断活
性研究31 〜33と一致する。 Gluの優れた特性及びP1における Argの有害な効果
は、各々His(162)のプロトン化された Nδ1 原子との有利な及び有利でない水素
結合相互作用のためであり得るだろう。 HFCによる切断のための Gluの悪い効果
は、 HFC中で HNCのIle(159)と置きかわる近くのAsn(159)のブロッキング効果の
ためであり得るだろう。Leu(I2)側鎖の相互作用は、両方の構成物上の溶媒アク
セス可能な疎水性表面の相当な還元を許容する;しかしながらこの側鎖は浅いS
2サブ部位を完全に満たすのに十分に大きくない。 Leuは明らかにP2における
最適中性アミノ酸であるが、より厳密な結合は、この部位において人工的なアミ
ノ酸を導入することにより達成可能であるはずである。
MBP-AG-NH2のP2′位置中のAla(I2)側鎖は、主に“北側”上のGly(158)及びI
le(159)の側鎖により、並びに“南側”上のAsn(218)の側鎖により形成される隣
接する両方の HNCリムとの相互作用の欠如のため、結合に十分に確かに寄与しな
い。実際、これまでに示されている30,36より強力な MMPインヒビターのほとん
どは、この位置にかさばった主に疎水性の側鎖を含み、それらはおそらくHis(HS
L-2)又はAsn(HSL-1,HPUMP)によるGly(158)の、及びAsn(HFC),Se
r(HSL-2)又はThr(HPUMP)によるIle(159)の置換のため、異なる MMP間を識別する
のを助けることが示されている。モデルペプチド基質において、Phe,Trp又は L
euによるこの部分における Alaの置換は、 Trp置換の場合に観察される最も劇的
な効果と共に、 HNC及び HFCのための加水分解速度の増加と相関関係がある:興
味深いことに、特異性定数のこれらの増加は、より堅い相互作用を示す低いKM
値36,38から主として生ずる。
本発明のインヒビターの結合モデル
本発明によるインヒビターは、予期せぬことに、非基質様構造に結合する。こ
の構造は、より潜在的なコラゲナーゼインヒビターのデザインのための手本の構
造である。擬似ペプチド基又は非ペプチド基での構造の一部の置換及び溶媒アク
セス可能表面を充填することは、インヒビター能力の実質的な改善を導く。
いくつかの因子はこの奇妙な前例のない結合構造に一緒に影響を与えるようで
ある。重要なことに、偏平なヒドロキサム酸基の有利な亜鉛配位は、S1′ポケ
ット内の隣接するイソブチル基の正確な配置に適合しないようである。この結合
構造は、最適なヒドロキサメート−亜鉛相互作用がS1′ポケット内の“P1′
様側鎖”の有利な埋め込みより好ましいので、エネルギー的妥協を示す。R2と
して用いられるイソブチル基は、複合体形成に基づくその溶媒アクセス可能な表
面の適度の還元のみを示し、その修飾が結合の改善及び選択特性を導き得る適切
な点を明らかに示す。逆に、(BB-9437のような)ヒドロキサム酸化合物は、ヒド
ロキサメート基と“P1′様”炭素との間に更なる(置換された)メチレンリン
カーを有し、それらのP1′様側鎖をS1′ポケット内に挿入する。
本発明によるインヒビターの製造は、当該技術で周知である方法に従って行わ
れ得る。開始化合物として、適切なマロン酸エステル
が用いられる。より大きなアルキル又はアリール基でのR2位置中の酸性水素の
置換のために、1,3−ジカルボニル−CH酸性化合物(又はエノレートのアルキ
ル化)が用いられる。
ヒドロキサメートは、マロン酸誘導体、例えば混合無水物、DCC(ジシクロヘキ
シルカルボジイミド)又は活性エステルでヒドロキシルアミンをアシル化するこ
とにより合成される。
カルボニル基の酸素は、O→S交換試薬、例えばチオシアン酸カリウム40,41, 42
、チオウレア43,44、3−メチルベンゾチアゾール−2−チオン45及びトリフ
ェニルホスフィンスルフィド46又は Lowry試薬47を用いることにより硫黄により
置換され得る。
好ましい実施形態において、残基Yはペプチド又は擬似ペプチド基からなる。
ペプチドのY基の場合、これらは当該技術で周知である方法(Houben-Weyl)48に
従うマロン酸基本構造に、例えばペプチドカップリング法により結合する。擬似
ペプチド基の場合、当該技術に従う方法が適用される。
特異的に MMPを阻害する本発明の化合物は、慢性関節リウマチ、並びに例えば
角膜潰瘍化、骨粗しょう症、歯周炎、パジエット病、歯肉炎、腫瘍浸潤ジストロ
フィーの表皮剥離、水庖症、全身性潰瘍化、表皮潰瘍化及び胃の潰瘍等のような
コラーゲン分解活性が関与する因子である関連する病気の治療に薬理的に有用で
ある。これらの化合物は慢性関節リウマチ(一次性慢性多発性関節炎)、全身性
エリテマトーデス(SLE)、若年性関節リウマチ、シェーグレン症候群(RA+乾燥
症候群)、多発性関節炎及び関連する病気、例えばヴェーゲナー肉芽腫症、巨細
胞性動脈炎、グッドパスチャー症候群、過敏性血管炎、多発生筋炎及び皮膚筋炎
、転移、進行性全身性硬化症、M.ベーチェット、ライター症候群(関節炎+尿
道炎+結膜炎)、混合結合組織病(シャープ症候群)、強直性脊椎炎(M.Bechter
en)の治療に特に役立つ。
本発明の化合物は、好ましくはそのような経路に適合した医薬組成物の形態で
、及び意図された治療に効果的な投与量で、いずれかの適切な経路によって、投
与され得る。医療状態の進行を防止又は拘束するのに必要とされる本発明の化合
物の治療に効果的な投与量は、当業者により直ちに確かめられる。
従って、本発明は、(“担体材料”として本明細書に集合的に言及される)1
以上の非毒性の医薬として許容される担体及び/又は希釈剤及び/又は佐剤並び
に必要に応じて他の活性成物と関連して本発明の1以上の化合物を含む新規な医
薬組成物のクラスを提供する。本化合物及び本組成物は、例えば脈管内、腹腔内
、皮下、筋内又は局所的に投与され得る。
全ての投与のために、医薬組成物は例えば錠剤、カプセル、懸濁液又は液体の
形態であり得る。医薬組成物は、好ましくは、特定量の活性成分内に含まれる投
与単位の形態で作られる。このような投与単位の例は錠剤又はカプセルである。
哺乳動物のための適切な毎日の投与は患者及び他の因子の条件により広範囲で種
々であり得る。しかしながら、体重の約 0.1〜300 mg/kg特に体重の約1〜30mg
/kgの投与量が適切であり得る。活性成分は注入によっても投与され得る。
本発明の化合物及び/又は組成物で病状を治療するための投与管理は、患者の
タイプ、年齢、体重、性別及び医療条件、を含む感染の激しさ及び投与の役割並
びに用いられる特定の化合物種々の因子に従って選択され、これにより広範囲で
種々であり得る。
治療目的のために、本発明の化合物は、示される投与の経路に適した1以上の
佐剤と通常組み合わせられる。経口的であるなら、化合物は、ラクトース、スク
ロース、デンプン粉、アルカノイック酸
のセルロースエステル、セルロースアルキルエステル、タルク、ステアリン酸、
ステアリン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、リン酸及び硫酸のナトリウム及
びカルシウム塩、ゼラチン、アカシア、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロ
リドン及び/又はポリビニルアルコールと混合され得、これにより便利な投与の
ために錠剤化又はカプセル化される。あるいは、本化合物は水、ポリエチレング
リコール、プロピレングリコール、エタノール、コーン油、綿種子油、ピーナッ
ツ油、ゴマ油、ベンジルアルコール、塩化ナトリウム及び/又は種々の緩衝液中
に溶解され得る。他の佐剤及び投与のモードは医薬技術において十分かつ広く知
られている。いずれかの供される例における適切な投与量は、もちろん治療され
る状態の性質及び厳しさ、投与の経路並びにその大きさ及びいずれかの個々の特
異性を含む関連する哺乳動物の種による。
代表的な担体、希釈剤及び佐剤は、例えば水、ラクトース、ゼラチン、デンプ
ン、ステアリン酸マグネシウム、タルク、植物油、ゴム、ポリアルキレングリコ
ール、石油ゼリー等を含む。医薬組成物は、粒体、粉体又は坐剤のような固体形
態で、又は溶液、懸濁液又はエマルションのような液体形態で形成され得る。医
薬組成物は、滅菌のような慣用的な医薬操作に供され、及び/又は防腐剤、安定
剤、湿潤剤、乳化剤、緩衝液等のような慣用的な医薬用佐薬を含み得る。
関節リウマチの治療に用いるために、本発明の化合物は、好ましくはこのよう
な経路に適合され医薬組成物の形態で、及び意図された治療に効果的な投与量で
いずれかの慣用的経路により投与され得る。関節炎の治療において、経口経路に
より、又は影響を受けた点への関節内注入により便利に行われる。
示されるよう、投与量及び治療管理は例えば病気、その厳しさ、
治療される患者及び治療に対する応答により、それゆえ広範囲で種々であり得る
。
以下の実施例及び出版物は、本発明の理解を助けるために供される。その本当
の範囲は添付の請求の範囲に示される。本発明の要旨から離れることなく先の手
順に改良が行われ得ることが理解される。
略語
HNC.MMP-8=ヒト好中球コラゲナーゼ、HFC.MMP-1=ヒト繊維芽細胞コラゲナ
ーゼ、 HSL-1=ヒトストロメリシン(Stromelysin)2、 HSL-3=ヒトストロメリ
シン3、 HPUMP=ヒトPUMP、H72G=ヒト72kDゼラチナーゼ、H92G=ヒト92kDゼラ
チナーゼ、 rms=平均二乗根、HONHiBM-AG-NH2=HONH−2−イソ−ブチルマロニ
ル−アラニル−グリシナミド、MBP-AG-NH2=2−ベンジル−3−メルカプトプロ
パノイル−L−アラニルグリシナミド、PLG-NHOH=L−プロリル−L−ロイシル
−グリシン−ヒドロキサメート。
実施例1
HNCの触媒ドメインの単離及び精製
ヒト HNCのMet(80)-Gly(242)触媒ドメインを大腸菌内で発現させ、先に記載21
されるように、100mM NaCl、5mM CaCl2、 0.5mM ZnCl2、 20mM Tris/HCl 、pH
7.5を含む緩衝液に対して、6M尿素及び 100mM β−メルカプトエタノール中
に溶解された封入体を透析することにより再生させた。次にその再生した酵素を
ヒドロキサメートアフィニティークロマトグラフィーによりSDS-PAGEにより判断
される時に明らかに均一となるまで精製した。
実施例2
インヒビターの合成
インヒビタ−HONH-iBM-AG-NH2(ER029)及びMBP-AG-NH2をCushma
n et al.(1977)22に従って合成した。PLG-NHOHをNishino et al.(1978)13に従っ
て合成した。
本発明のインヒビターは実施例 2.1〜2.4 に記載されるように合成され得る。
2.1 イソブチルマロノイル−L−アラニン−フルフリルアミドヒドロキサメ
ート(式V)
全体:用いた溶媒システム:2E:酢酸エチル:n−ブタノール:酢酸:水
5:3:1:1;6E:酢酸エチル:n−ブタノール:酢酸:水:ピリジン 55
:30:3:12:10;36:シクロヘキサン:CHCl3:酢酸 45:45:10
1)tert−ブチロキシカルボニル−L−アラニンフルフリルアミド(1)
250mlのCH2Cl2イソブチルクロロホルメート(6.3ml;53mmol)中のBoc-Ala-OH(
10g;53mmol)及びN−メチルモルホリン(5.8ml;53mmol)の溶液に激しく撹拌
しながら−10℃で滴下した。7分後に予め冷やされたフルフリルアミド(7ml;
74mmol)を加え、その反応混合物を室温で12時間、撹拌した。その溶媒をエバポ
レートして、その残物を酢酸エチルと水との間に分配した。その有機相を5% K
HSO4及び5%NaHCO3並びにブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、乾燥
するまでエバポレートした。その残物を酢酸エチル/ヘキサンから再結晶化した
。収率:12.1g(85%); tlc上で
計算値(C13H20N2O4(268.3)):C 58.19,H 7.51,N 10.44;観測値:C 57.83,
H 7.74,N 10.22
この方法を用いて、以下のアミンがtert−ブチロキシカルボニル−L−アラニ
ンと結合され得る:例えば、イソプロピルアミン、ブ
チルアミン、tert−ブチルアミン、イソペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプ
チルアミン、オクチルアミン、2−オクチルアミン、シクロヘキシルアミン、ア
ニリン、4−ニトロアニリン、4−クロロ−アニリン、ベンジルアミン、4−ク
ロロベンジルアミン、4−フルオロベンジルアミン、2−クロロベンジルアミン
、1−フェニルエチルアミン、2−フェニルエチルアミン、2−ピペラジン−1
−イル−エチルアミン、モルホリン;1−ナフチルアミン、フルオレニル−2−
アミン、デヒドロアビエチルアミン、N−(2−アミノエチル)−モルホリン、
(アミノメチル)ピリジン、3−(アミノメチル)ピリジン等。
2)L−アラニン−フルフリルアミドヒドロクロライド(2)
Boc-Ala-Fur(2g;7.5mmol)を 1.4M HCl/酢酸エチル中に溶かした。その溶
液を1時間、室温に維持し;次にその溶媒をエバポレートしてその残物をトルエ
ンから2回、再びエバポレートし、最後に KOHペレット上で乾燥させた。収率:
1.5g(100%); tlc上で均
=+12.3°(MeOH中c=1);FAB-MS: 169.1〔M+H〕+、1H-NMR:スペクト
ルはその構造と一致する。
分析値(C8H13N2O2Cl(204.66)):C46.95,H6.40,N13.69;観測値C46.20,H6.6
2,N13.29。
3)ジエチルイソブチルマロネート(3)
ジエチルマロネート(80g;0.5mol)を、新しく用意したエタノール(500ml)
中のナトリウム(11.5g)の溶液中に溶かした。次にイソブチルブロミド(71.5
g;0.52mol)を激しく撹拌しながら滴下して加えた。その反応混合物を、pHがほ
ぼ中性になるまで(5〜6時間)還流下に維持した。不溶性材料をろ過して除去
し、その反応混合物をエバポレートした。その残物を水とエーテルとの間に分配
し、その有機相を水で洗浄し、Na2SO4で乾燥させた。その溶媒をエバポレートし
て、その残物を真空下で蒸留して液体としてタイトル化合物を生成した。収率:
76g(70%); tlc上で均一(溶媒システム;2E,6E);EI-MS:217;計算
値(C11H20O4(216.3)):C 61.07 H 9.33;観測値:C 60.50 H 9.54。
市販のジエチルベンジルマロネート、ジエチルエトキシメチレンマロネート及
びジエチルフェニルマロネートの他に、この手順に従って、例えば1−ブロモブ
タン、2−ブロモブタン、1−ブロモヘキサン、2−ブロモヘキサン、1−ブロ
モヘプタン、3−(ブロモメチル)ヘプタン、1−ブロモノナン、ベンジルブロ
ミド、ブロモシクロヘキサン、3−ブロモ−1−プロパノール、2−ブロモ−4
′−メトキシアセトフェノン、2−エトキシエチルブロミド、2−ブロモアセト
フェノン、N−ブロモメチルフタリミドを用いて、他のマロン酸ジエチルエステ
ルが調製される。
4)エチルイソブチルマロン酸カリウム塩(4)
ジエチルイソブチルマロネート(1.2g;5.6mmol)を 5.6mmol KOHを含む5ml氷
冷エタノール中に溶かした。2時間後、その溶液を小さな容量になるまでエバポ
レートし、タイトル化合物をヘキサンで沈殿させた。収率: 1.2g(95%)、1H
-NMR(MeOD):スペクトルはタイトル化合物の構造と一致している。
計算値(C9H15O4K(226.31)):C 47.77 H 6.68;観測値:C45.89 H 7.93 。
5)イソブチルマロニル−L−アラニン−フルフリルアミド(5)
冷却した化合物4の溶液(0.53g;2.2mmol)に20ml CH2Cl2オキサリルクロライ
ド(0.38ml;4.4mmol)を加え、室温で2時間後に、その溶媒をエバポレートした
。その残物をCH2Cl2から再びエバポレ
ートし、最後にCH2Cl2中に溶かし、トリエチルアミン(0.61ml;4.4mmol)を含む
CH2Cl2中2(0.45g、2.2mmol)の溶液に加えた。その反応を室温で一晩行い、次
にその溶媒をエバポレートして、その残物を酢酸エチルと水との間に分配した。
その有機相を5% KHSO4及び5% NaHCO3、ブラインで洗浄した。その酢酸エチ
ル相をMgSO4上で乾燥させてエバポレートした。その残物を 2.2mmol KOHを含む
5mlエタノール中に溶かした。1時間後、その溶媒をエバポレートし、その残物
を酢酸エチルと5% KHSO4と分配した。有機相を中性で洗浄し、Na2SO4で乾燥さ
せ、エバポレートした。収率: 0.575g(84%); tlc上で均一(溶媒システム
:2E,36);FAB-MS:〔M+H〕+=311.2;1H-NMR(MeOD):構造と一致。
計算値(C15H22N2O5(310.2)):C 58.04;H 7.15;N 9.03;測定値C 57.77;H
7.32;N 8.89 。
6)イソブチルマロニル−L−アラニン−フルフリルアミドヒドロキサメート
(6)
化合物5(0.400g;1.3mmol)を5時間、氷浴中でテトラヒドロフラン中でN−
ヒドロキシスクシニミド(0.148g;1.3mmol)及びジシクロヘキシルカルボジイミ
ド(0.268g;1.3mmol)と反応させた。ジシクロヘキシルウレアをろ過して除去し
、ジオキサン/水中のトリエチルアミン(0.36ml;2.6mmol)と一緒のヒドロキシ
ルアミン・HCl(0.181g;2.6mmol)をそのろ液に加えた。その反応を室温で一晩
、行った。その触媒をエバポレートして、その残物を水と酢酸エチルとの間に分
配した。その有機相を5% KHSO4、水で洗浄し、乾燥させた。その溶液を濃縮し
て、その残物を石油エーテルで沈殿させた。収率: 0.302g(72%); tlc上で
均一(溶媒システム:2E;36)、FAB-MS:〔M+H+〕=326.1 。
計算値(C15H23N3O5(325.2):C 55.36,H 7.13,N 12.92;観測
値:C 55.87,H 7.32,N 12.67。
2.2 2−イソブチル−3−カルボニル−3′−(4−アセチルアニリン)プ
ロピオン酸(7)(式VI)
CH2Cl2オキサリルクロリド(0.72ml;10.6mmol)中の4(1.0g;5.3mmol)の冷
却された溶液に加え、室温で2時間後、その溶媒をエバポレートした。その残物
をCH2Cl2中に溶かし、エバポレートして過剰なオキサリルクロライドを除去した
。酸クロライドをCH2Cl2中に溶かし、塩化アルミニウムを含むCH2Cl2に撹拌しな
がら滴下して加えた。次にアセタニリドの溶液(0.72g;5.3mmol)を加え、その
反応混合物を冷却することにより20℃に維持した。その反応混合物を氷で処理し
、希 H2SO4で酸性化した後、CH2Cl2相を分離して水で洗浄し、乾燥させて少量に
なるよう濃縮した。その生成物を石油エーテルで沈殿させた。収率:0.92(57%
);FAB-MS:〔M+H〕+=306.2
モノエチルエステル(0.80g;2.6mmol)をKOH(1等量)を含むエタノール中にケ
ン化し、2時間後、その溶媒をエバポレートし、その残物を酢酸エチルと KHSO4
との間に分配した。有機相を水で洗浄し、 MgSO4で乾燥し、少量まで濃縮した。
石油エーテルを加えることによりタイトル化合物を単離した。収率:0.69g(95
%);FAB-MS:〔M+H〕+=278.3
分析値(C15H19O4N(277.1)):C 64.95,H 6.91,N 5.05 ;観測値:C 63.67 H 7.
02,N 4.99。
2.3 N−ベンジロキシカルボニル−α−ホスホノグリシル−L−アラニンフ
ルフリルアミド(8)(式VII)
N−(ベンジロキシカルボニル)−α−ホスホノグリシントリメチルエステル
(1.46g;4.4mmol)を Balsiger et al.〔(1959)J-Org.Chem.24,434〕に従って
濃 HClで完全に脱保護化し、遊離アミ
ノ官能基をショッテン−バウマン条件下でベンジロキシカルボニルクロライドで
再び保護した。
Balsiger et al.(1959)J.Org.Chem.24,434に従ってクロリデートをチオ
ニルクロライドで調製し、トリエチルアミン(4等量)の存在下で化合物2(0.9
g;4.4mmol)とジオキサン(20ml)中で反応させた。室温で4時間後、その溶媒
を除去して、その残物を酢酸エチルと KHSO4との間に分配した。その有機相を水
で洗浄し、 MgSO4上で乾燥させてエバポレートした。その残物をエーテル/石油
エーテルと共に粉砕し、ろ過して除いた。収率0.735(38%);FAB-MS:〔M+H
〕=439.1
計算値(C18H22N3O8P(439.4)):C 49.21 H 5.05 N 9.56 ;観測値:C 48.95 H
5.31 N 9.43 。
2.4 式IIIに従うホスホン酸及びホスフィン酸誘導体のためのシントン
シントン(式VIII)は、 Houben-Weyl Methoden der Organischen Chemie,Vo
l.1211及びE2に報告される周知文献の方法により得られうる。Y基、例えば化
合物2へのその結合した、ペプチド合成の古典的方法により達成され、メチルエ
ステルのケン化は、エタノール中の KOHで行われる。
実施例3
結晶化
22℃におけるハンギングドロップ蒸気拡散法により結晶化を行った。pH 6.0に
おける3mM Mes/NaOH、100mM NaCl、5mM CaCl2、及び0.02% NaN3中の10mg/m
l HNC溶液 1.8μlを2μlの約90mM MBP-AG-NH2又はHONHiBM-AG-NH2溶液及び6
μlの PEG6000溶液(pH 6.0の 0.2M Mes/NaOH中10%m/v)に混合すること
によりドロップレットを作った。そのドロップレットを(MBP-AG-NH2について
)0.8Mリン酸カリウム緩衝液、(HONHiBM-AG-NH2について)1.0Mのリン酸カリウ
ム緩衝液、0.02% NaN3、pH 6.0からなるリザーバー緩衝液に対して濃縮した。
大きさ0.66×0.10×0.03mm(MBP-AG-NH2とのHNC)及び0.90×0.12×0.02mm(HONHiB
M-AG-NH2とのHNC)の結晶を3日以内に得て、10mMの対応するインヒビターを含む
20%(m/v)PEG6000、0.5M NaCl 、 0.1M CaCl2、0.1M Mes/NaOH、0.02%
NaN3、 pH 6.0内に収集した。その結晶は斜方晶系の空間群 P2.2.2.に属し、格
子定数a= 33.24/33.13, b= 69.20/69.37, c= 72.33/72.31 Å,α=
β=γ=90°(MBP-AG-NH2での HNC/HONHiBM-AG-NH2とのHNC)を示し、もとのPLG
-NHOHを含むMet(80)-Gly(242)コラゲナーゼ結晶に極めて類似する9。非対称単位
には1分子を含む。
実施例4
構造解析
Rigaku回転式アノードX線発生機(λ=1.5418Å、 5.4kWの出力)上に備えつ
けられた MARイメージプレートエリアディテクターでX線データを収集した。X
線強度をMOSFLMプログラムパッケージ23で計算し、全てのX線データを PROTEIN24
にロードした。その2つの複合体のデータ収集統計値を表1に示し、PLG-NHOH
との HNC複合体について先に得られたデータと比較する。2Fo-Fc電子密度図を全
ての反射データ(表1)及び位相決定のための HNCのMet(80)-Gly(242)形態の 2
.0Åモデル9を用いて計算した。インヒビターの非ペプチド部分をプログラムENI
GMA(ICI Wilmingtonにより供される分子グラフィクスプログラム)を構築し、
完全なインヒビターモデルを相互作用グラフィクスプログラムFRODO25を用いて
電子密度マップに適合した。その複合体をEngh及び Huber27により得られたフォ
ースフィールドパラメータを用いてX-PLOR25で供されるエネルギー
拘束での相互空間最小二乗精密化にかけた。これらの精密化されたモデルそれら
の改善された密度と比較し、再構築して収束するまで精密化した。0に近い結合
及び角度エネルギーを有し、(HONHiBM-AG-NH2複合体の場合に)両方のヒドロキ
サメート酸素と一緒に中心の亜鉛及びそれを囲う3つのHisNε2 を含むパッチ残
基を活性部位亜鉛のために規定した。他の3つの金属をPLG-NHOH構造で先に記載
されるように処理した。適切な密度が、これらの分子なしで1σで等高線をつけ
られた図中に存在するなら、PLG-NHOH構造内で先に観察された水分子は部分的に
保持され、更なる水が立体化学的に無理のない位置に導入された。最後の精密化
ステップにおいて、個々の温度因子をいずれの束縛もなしに精密化した。最終的
なR因子は0.17/0.16である。その2つの HNC複合体の最終的な精密化統計値を
表2に示し、PLG-NHOH複合体で得られた先のデータと比較する。
実施例5
Pro-Leu-Gly-NHOH(PLG-NHOH)の結合
PLG-NHOHのペプチド鎖は、Leu(12)及びAla(163)との2つの内部主鎖水素結合
を形成する少しねじれた逆平行の様式で HNCの端鎖に結合する。N末端Pro(11)
は、Phe(164)のベンジン環にほぼ平行でHis(162)イミダゾール基にほぼ垂直であ
るPro環と共にHis(162),Phe(164)及びSer(151)の側鎖により形成される疎水性ポ
ケット内に適合する。イミノ窒素はバルク水及びP4残基の部位に向く。Leu(12
)側鎖は横になっているが、His(210),Ala(206)及びHis(207)により結ばれる浅
い溝を満たさない。
ヒドロキサム酸基(RCONHOH)はシス配置であり、蛋白質群との水素結合内のNH
及びOHの明白な関連のためプロトン化される。ヒドロキサメートヒドロキシル酸
素は亜鉛に結合し、Glu(198)カルボキシレート基の酸素の1つ(0ε1)との有利な
水素結合(2.6Å)を形成す
る。N−Hは端のストランドの残基Ala(161)のカルボニル基との水素結合(3.0Å
)を形成する。
触媒亜鉛はほとんど正方晶の平面を形成するヒトロキサメート酸素、 His(197
)Nε2 、及び His(207)Nε2 とその先端における他のヒスチジン His(201)Nε2
の両方と共にキャップされた八面体を形成する。酸素及び窒素−亜鉛間の距離は
1.9〜2.2 Åの間であり、理想のキャップ八面体からの平均角度偏差は10°だけ
である(表3を参照のこと)。亜鉛イオンはヒドロキサム酸の4つの非水素原子
により規定される平面内に正確にあるわけではなく、その 0.7Å後方にある。こ
れは、おそらくインヒビターのペプチド部分内の立体的束縛が原因である非最適
軌道の相互作用を示唆する。
遊離インヒビターの溶媒アクセス可能表面の3分の2は、ペプチド鎖の不完全
な適合にかかわらず複合体形成に基づき除去される。これは一見して驚くべきこ
とであり、小さすぎて溶媒プローブの浸透を許容しない蛋白質表面とインヒビタ
ーとの間の空隙のためであろう。酵素とインヒビターとの低い相補性はコラゲナ
ーゼのためのPLG-NHOHの比較的弱いアフィニティーを説明し得、その構造を改良
するための医療化学者のための方法を示唆する。
実施例6
HS-CH2-S,R-CH(Bzl)CO-L-Ala-Gly-NH2(“MBP-AG-NH2”)の結合
コラゲナーゼ活性部位を有するMBP-AG-NH2の複合体において、硫黄原子は触媒
亜鉛の第4のリガンドであり、His(197),His(201)及びHis(207)の3つのイミダ
ゾール窒素と共に 6.2°だけの偏差でほとんど正確な四面体を形成する(表3)
。精密化された硫黄−金属間距離は蛋白質内のZn−S距離についての平均 2.1Å29
より少し長い 2.3Åである。 Nε2 −亜鉛間距離(1.9〜2.3 Å、表4)はPLG-N
HOH構造と比較して少ししか変化しない。チオール基は、正電荷の
触媒亜鉛への配位がpKをより低い値にシフトさせるので、そのアニオン形態にお
いて亜鉛に配位すると予想される。
インヒビターのペプチド鎖は伸長した幾何構造において酵素クレフトの“右側
”に向かって結合する(“ΦI1=− 179°”,“ΨI1= 109°”,Φ12=−89°
,ΨI2=+ 147°,ΦI3=−93°)。インヒビター鎖はバルジセグメントGly(158
)-Ile(159)-Leu(160)にほぼ逆平行であり、交差してS1′壁を形成するセグメ
ントPro(217)-Asn(218)-Tyr(219)に平行であり、前者のセグメント(Phe(I1)O…
Leu(160)N: 2.8 Å,Gly(13)N…Gly(158)O : 3.0Å)及び後者のセグメント(
Ala(I2)N…Pro(217)O : 3.0Å,Ala(I2)O…Tyr(219)N : 2.8Å)との2つの段
はしごの下にある。
インヒビターと酵素との間のほとんどの主要な相互作用は、His(197)イミダゾ
ール及びGlu(198)カルボキシレート基(左へ)、 Val(194)(後ろへ)、Tyr(219)
のフェノール側鎖(右へ)並びに主鎖セグメントPro(217)-Asn(218)-Tyr(219)に
隣接するS1′ポケットのフェニル側鎖及び中心の疎水性部分により形成される
疎水性様式のものである。
精密化された電子密度は、L−アミノ酸アナログに相当するS−立体異性体が
インヒビタージアステレオマー混合物から有利に結合されることを疑う余地なく
示す。Cα−Cβ結合は(X1=− 152°に従って)Cγに対してトランスのア
ミノ基を有する本質的にトランスの幾何構造である。
S1′ポケットは、いずれかの中性のアミノ酸側鎖に適合するのに要求される
より広々としており、三環式化合物に実際結合し得る(以下を参照すること)。
これにより、インヒビターのフェニル基は遊離酵素に観察されるものに類似した
部位にある3つの整列した溶媒分子のために空間を残すS1′の内部容量の1/
2〜1/3だ
けを占める。これらの“内部”水分子はフェニル基と部分的に接触し、それら自
体又は周囲の蛋白質基(Ala(220)N,Leu(214)O,Leu(193)O)により供される水素
結合アクセプターもしくはドナーとの水素結合により相互に連結される。
Ala(I2)の側鎖はコラゲナーゼ表面から離れた方向を指し、より側鎖はおそら
く、Gly(158)とIle(159)とバルジセグメントを横切って走る浅い表面の溝に沿っ
て横たわるだろう。 MMP内で保存されていないこの後者の残基(Ile(159))はお
そらく、 MMP間の特異性の差の原因であり、選択的インヒビターのデザインのた
めの興味ある標的を供するだろう。Gly(13)残基はクロスオーバーセグメントPro
(217)-Tyr(219)及びGly(158)-Leu(160)の両方の間に位置する。より大きい側鎖
は酵素と衝突し、インヒビター鎖の再配置を必要とするだろう。更なる残基は、
それらが極性相互作用のための種々の結合点を見い出すであろう平らな分子表面
上にあり得る。
要約すると、チオール基及び“最初の残基”は、結合に基づいて溶媒アクセス
可能表面の相当な還元を引きおこす多数の親密な接触に関連する。Ala(12)及びG
ly(13)はバルク溶媒に向かって広がるそれらの側鎖と共に活性部位クレフトに沿
って走っている。MBP-AG-NH2のペプチド結合幾何構造及び構造は、いくつかの他
のコラゲナーゼ18,19への結合で示される他の“開始部位インヒビター”に類似
する。
実施例7
HONHC(O)-R,S-CH(iButyl)CO-L-Ala-Gly-NH2(HONHiBM-AG-NH2)の結合
インヒビターHONHiBM-AG-NH2は予期せぬことに、そのデザイン及びサーモリシ
ンにおける結合様式から予想されるのと異なる様式で結合する。そのヒドロキサ
メート基は明らかに、触媒亜鉛との三方
両錐体配位球を形成するその2つの酸素原子及び3つのリガンドヒスチジンとの
有利な二座の様式で触媒亜鉛と相互作用するが、対照的に、そのイソブチル“側
鎖”は、おそらく隣接する平面のヒドロキサメート基により課される厳しい束縛
のため、S1′ポケットの外側に残る。かわりに、C末端Ala-Gly-アミド尾は曲
がった構造に適合し、おそらく非最適にこのS1′ポケット内に入り込む。イソ
ブチル側鎖及びC末端ペプチド尾は他のより適合する基により置換され得る。こ
のインヒビター MMPをほとんど阻害しないが、この構造に基づく本発明に従うイ
ンヒビターは予期せぬことに高い能力を有する MMPインヒビターである。HONHiB
M-AG-NH2は本発明に従うインヒビターの結合の研究のためのモデル基質として本
実施例に用いられる。
亜鉛の周りの中心三方晶面からのヒドロキシル酸素、 His(197)Nε2 及び His
(207)Nε2 並びにカルボニル酸素及び His(201)Nε2 は両方の頂点を占有する。
理想の幾何構造からの平均角度偏差は13.0°(表3を参照のこと)である。ヒド
ロキサム酸成分のN−O及びカルボニル基の両方は触媒亜鉛と共通の平面を形成
する。PLG-NHOH複合体として、ヒドロキサメート窒素はAla(161)O に近く(2.9Å
)、有利には水素結合を形成し、結果としてこのヒドロキサム酸はそのプロトン
化形態においてもモデル化された。
ヒドロキサメート基及び亜鉛“側鎖”の相互作用のため、R2(例えばイソブチ
ル)はS1′ポケット内に入ることができず、溶媒に露出されたコラゲナーゼク
レフトの外側表面上にある。この側鎖を説明する電子密度はいくらかの増加され
た移動度を示す表面に向かって不鮮明になり、バルジセグメント及びその隣接す
る端のストランドにより形成される裂け目内に粗く配置される。S−立体異性体
は、それに続くカルボニル基の反対側のCβ−Cγとのゴーシュ構
造に配置されたその“側鎖”と極めてよく適合する。
慣用的な“開始部位インヒビター”18,19と対照的に、 L-Ala(12)-Gly(13)-NH2
ペプチドセグメントは伸長した幾何構造よりむしろ曲がった幾何構造で結合す
る。カルボニルに続くCH(iブチル)基及びAla(12)カルボニル基水素結合は各
々バルジセグメントのLeu(160)N 及び壁形成性セグメントのTyr(219)N と結合す
る。トランス構造以外のCH(iBut)(12)-Ala(12)アミド基の少しの回転にかかわら
ず、MBP-AG-NH2中のAla(12)のNHに沿ったAla(12)NH はPro(217)Oとも水素結合す
ることができる。しかしながら、Ala(12)は310−らせん構造(Φ=−78°,Ψ
=−4°)に適合し、その次のペプチド基は慣用的“開始部位インヒビター”の
12〜13アミド結合に対してほとんど反対に向く。この曲がった構造の結果と
して、R3のアミノ基及び最初の原子は、そのアミノ基はいずれの水素結合アク
セプターも欠くが、 Glu(198)Oε1,His(197)イミダゾール、及びVal(194)側鎖
とのファンデルワールス接触内のS1′ポケットのボトルネック内に位置する。
当該技術のインヒビターの全体の結合と対照的に−R2(例えばiブチル(11))
及びZ1〜Z3(例えばAla(12))の側鎖は本質的に水に露出し、C−尾残基はそれ
との接触からほぼ完全に除外される。
実施例8
更なるインヒビターの合成
略語
OSu :N−ヒドロキシスクシニミドエステル
ONp :p−ニトロフェニルエステル
iBM :2−イソブチル−マロン酸
Bn:ベンジル
Z:ベンジルカルボキシ
Boc :t−ブチルカルボキシ
homophe :ホモフェニルアラニン
(+−)BnONH-iBM-OEt(8.1)
O−ベンジルヒドロキシルアミンヒドロクロライド(4.79g;30mmol)を50ml
THF中に懸濁し、撹拌しながらメチル化ナトリウム(1.62g 30mmol)を加える
。10分後、その溶媒を完全にエバポレートしてメタノールを除去する。その残物
及びEt-O-iBM-O- K +(6.78g;30mmol)を50ml THF中に懸濁する。その懸濁液
を0℃まで冷やし、1−エチル−N′−(3−ジメチルアミノプロピル)−カル
ボジイミドヒドロクロライド(EDCI)(6.34g:33mmol)を加える。その反応混合物
を室温まで加熱しながら12時間、撹拌する。その溶媒をエバポレートし、その残
物を 150ml酢酸エチル中に溶かす。その有機相を30mlの5% KHSO4で3回、30ml
の5%NaHCO3で3回、そして30mlの水で洗浄し、 MgSO4で乾燥させ、エバポレー
トする。その油状の粗産物を、 100gシリカゲル(0.040〜0.063mm粒径)、溶出液
(酢酸エチル:n−ヘキサン/1:2)でのカラムクロマトグラフィーにより精
製し、無色の油である TLCで純粋な生成物7.45g(84.6%)を供した。Rf:0.26
、酢酸エチル:n−ヘキサン/1:2。1H-NMR(d6-DMSO):スペクトルは構造と
一致する。
(+−)BnONH-iBM-OH(8.2)
8.1(3.53g;12mmol)を10ml THF及び10mlメタノールの混合物中に溶かす。水
2ml中の水酸化ナトリウム(1.44g;36mmol)の溶液を撹拌しながら加え、その
反応混合物を1時間、50℃まで加熱する。その反応混合物を50mlメタノールで希
釈する。10gのAmberlyst 15(強酸性カチオン交換体、H+形態 4.6mmol/g)
を氷冷下で加え、その混合物を15分間、撹拌する。そのカチオン交換体をろ過し
て除去し、メタノールで洗浄してそのろ液を乾燥するまでエバポレ
ートする。 TLCで純粋な細かい針として3.20g(100%)生成物、Rf:0.61、アセ
トニトリル:水/4:1。1H-NMR(d6-DMSO):スペクトルは構造と一致。
Z-Ala-NHBn(8.3)
2-Ala-OSu(6.40g;20mmol)を酢酸エチル 300ml中に溶かし、ベンジルアミン
(2.75ml;25mmol)を加え、1時間撹拌する。その溶液を30mlの5% KHSO4で3
回、30mlの5% NaHCO3で3回、そして30mlの水で洗浄し、 MgSO4上で乾燥させ
て、乾燥するまでエバポレートする。 TLCで純粋な無色の粉末としての5.59g(
90%)生成物。Rf:0.17、酢酸エチル:n−ヘキサン/1:2。 mp: 140℃。1
H-NMR(d6-DMSO):スペクトルは構造と一致する。
H-Ala-NHBn(8.4)
8.3(0.63g:2.0mmol)を20mlメタノール中に溶かし、 100mgの10% Pd/c触
媒を加え、その溶液を通して20分間、H2のゆっくりとした流れを誘導する。そ
の触媒をろ過により除去し、洗浄する。そのろ液をエバポレートし、その残物を
精製しないで次の結合反応に用いる。
BnONH-iBM-Ala-NHBn 2ジアステレオマー(8.5)
8.4、(+−)BnONH-iBM-OH(8.2)(0.27g;1.0mmol)及びヒドロキシベンゾト
リアゾール(136mg;1.0mmol)を10ml THFに溶かす。その懸濁液を0℃まで冷やし
、1−エチル−N′−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミドヒドロ
クロライド(EDCI)(0.20g;1.05mmol)を加える。その反応混合物を、室温まで加
熱しながら12時間、撹拌する。その溶媒をエバポレートし、その残物を 100ml酢
酸エチル中に溶かす。その有機相を15mlの5% KHSO4で3回、15mlの5% NaHCO3
で3回、15mlの水で洗浄し、 MgSO4で乾燥させ、エバポレートする。その生成
物をエーテル/酢酸エチルで沈殿させ
る。 TLCで純粋な無色の粉末としての0.26g(61%)生成物。Rf:0.65、クロロ
ホルム:メタノール/9:1。1H-NMR(d6-DMSO):スペクトルは構造と一致し、
2つのジアステレオマーが観察される。
HONH-iBM-Ala-NHBn(ERO14)2ジアステレオマー(8.6)
8.5(110mg;0.26mmol)を10mlメタノール中に溶かし、50mgの10% Pd/c触
媒を加え、20分間、その溶液を通してH2のゆっくりとした流れを誘導する。そ
の触媒をろ過により除去して、洗浄し、そのろ液をエバポレートして、その生成
物をエーテルで沈殿させる。 TLCで純粋な無色の粉末としての80mg(92%)の生
成物。Rf:0.37 クロロホルム:メタノール/9:1。1H-NMR(d6-DMSO):スペ
クトルはその構造と一致し、2つのジアステレオマーは比率(40:60)を有する
。
Z-Asn-NHBn(8.7)
Z-Asn-ONp(7.75g:20mmol)を 100ml THF中に溶かし、ベンジルアミン(2.25m
l;20.5mmol)を加え、2時間、撹拌する。その沈殿した生成物を50mlの THF、
100mlのジエチルエーテル、 300mlの5% NaHCO3、 100mlの水及び 100mlの THF
で洗浄する。その生成物を真空下で乾燥する。 TLCで純粋な無色の粉体としての
3.94g(55%)生成物。Rf:0.57、クロロホルム:メタノール/9:1、mp: 2
05〜208 ℃。1H-NMR(d6-DMSO):スペクトルはその構造と一致する。
H-Asn-NHBn(8.8)
Z-Asn-NHBn(0.36g;1.0mmol)を 8.4に記載されるように脱保護する。
BnONH-iBM-Asn-NHBn 2ジアステレオマー(8.9)
8.8、(+−)BnONH-iBM(8.2)(0.27g;1.0mmol)及びヒドロキシベンゾトリア
ゾール(135mg;1.0mmol)を10ml THF中に溶かす。そ
の懸濁液を0℃まで冷やし、1−エチル−N′−(3−ジメチルアミノプロピル
)−カルボジイミドヒドロクロライド(EDCI)(0.20g;1.05mmol)を加える。反
応混合物を、室温まで加熱しながら12時間、撹拌する。その溶媒をエバポレート
して、その固体残物を 150mlの5% KHSO4、 150mlの5%NaHCO3で、及び 150ml
の水でガラスフリット上で洗浄する。その生成物をエーテルで粉砕する。 TLCに
純粋な無色の粉体としての0.29g(62%)生成物。Rf:0.27、クロロホルム:メ
タノール/9:1。1H-NMR(d6-DMSO):そのスペクトルはその構造と一致してお
り、2つのジアステレオマーが観察され得る。
HONH-iBM-Asn-NHBn(ERO17)2ジアステレオマー(8.10)
8.9(0.20g;0.43mmol)を10mlメタノール中に溶かし、50mgの10% Pd/c触
媒を加え、その溶液を通して20分間、H2のゆっくりした流れを導く。触媒をろ
過により除き、洗浄する。そのろ液をエバポレートして、その生成物をエーテル
で沈殿させる。 TLCに純粋な無色の粉末としての80mg(92%)の生成物。Rf:0.
61、アセトニトリル:水/4:1。1H-NMR(d6-DMSO):スペクトルはその構造と
一致し、その2つのジアステレオマーは比率(34:66)を有する。
Z-Ser-NHBn(8.11)
Z-Ser-OH(4.78g:20.0mmol)、ベンジルアミン(2.75ml;25mmol)及びヒドロ
キシベンゾトリアゾール(2.70g;20.0mmol)を50mlの THF中に溶かす。その懸
濁液を0℃に冷やし、1−エチル−N′−(3−ジメチルアミノプロピル)−カ
ルボジイミドヒドロクロライド(EDCI)(4.23g;22.0mmol)を加える。その反応混
合物を室温まで加熱しながら12時間、撹拌する。その溶液をエバポレートして、
その残物を 150mlの酢酸エチルに溶かす。その有機相を30mlの5% KHSO4で3回
、30mlの5% NaHCO3で3回、そして30mlの水で
洗浄し、 MgSO4で乾燥させ、乾燥するまでエバポレートする。 TLC−純粋無色粉
末としての 510g(71%)生成物。Rf:0.44、クロロホルム:メタノール/9:
1;mp= 153℃
H-Ser-NHBn(8.12)
8.11(0.66g;2.0mmol)を 8.4に記載されるように脱保護する。
BnONH-iBM-Ser-NHBn 2ジアステレオマー(8.13)
8.12,8.2(0.53g;2.0mmol)及びヒドロキシベンゾトリアゾール(0.27g;2.0
mmol)を10ml THF中に溶かす。その懸濁液を0℃まで冷やし、1−エチル−N′
−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミドヒドロクロライド(EDCI)(0
.40g;2.1mmol)を加える。その反応混合物を、室温まで加熱しながら12時間、
撹拌する。 8.5に記載される通り作業手順を行う。その生成物をエーテル/酢酸
エチルで沈殿させる。 TLC−純粋無色粉末としての0.72g(82%)生成物。Rf:
0.48、クロロホルム:メタノール/9:1
HONH-iBM-Ser-NHBn(ER028)2ジアステオレマー(8.14)
8.13(0.25mg;0.57mmol)を6に記載されるように脱保護する。 TLC−純粋無
色粉末としての 190mg(95%)生成物。Rf:0.16、クロロホルム:メタノール/
9:1。1H-NMR(d6-DMSO):スペクトルはその構造と一致し、その2つのジアス
テレオマーは比率(28:72)を有する。
Boc-Asn-NHBn(m-NO2)(8.15)
3−ニトロベンジルアミンヒドロクロライド(0.943g;5mmol)及びトリエチ
ルアミン(0.84ml;6mmol)を50ml THF中に溶かし、Boc-Asn-ONp(1.77g;5mm
ol)を加えて2時間、撹拌する。その溶媒をエバポレートして、 200ml酢酸エチ
ル中に溶かす。その溶液を30mlの5% KHSO4で3回、30mlの5%NaHCO3で3回、
そして30mlの水で洗浄し、 MgSO4で乾燥させ、乾燥するまでエバポレートする
。 TLC−純粋無色粉末としての1.15g(63%)生成物。Rf:0.34、クロロホルム
:メタノール/9:1、mp: 190〜191 ℃。1H-NMR(d6-DMSO):スペクトルはそ
の構造と一致。
H-Asn-NHBn(m-NO2)・HCl(8.16)
8.15(0.73g;2.0mmol)をジオキサン中の塩酸の4M溶液10ml中に懸濁し、室
温で12時間、撹拌する。その沈殿した脱保護された生成物をフィルター上で収集
し、ジエチルエーテルで洗浄する。
BnONH-iBM-Asn-NHBn(m-NO2)(8.17)
8.16,8.2(0.54g;2.0mmol)及びヒドロキシベンゾトリアゾール(0.30g;2.0
mmol)を20ml THFに溶かす。その懸濁液を0℃まで冷やし、1−エチル−N′−
(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジアミドヒドロクロライド(EDCI)(0.4
g;2.1mmol)を加える。N−メチルモルホリン(0.22ml;2mmol)でその溶液を
pH6〜7にする。その反応混合物を室温まで加熱しながら12時間、撹拌する。 8
.5に記載されるように作業手順を行う。 TLC−純粋無色粉末としての0.48g(40
%)生成物。Rf:0.32 クロロホルム:メタノール/9:1。
HONH-iBM-Asn-NHBn(m-NH2)(ER031)2ジアステレオマー(8.18)
8.17(0.26g;0.50mmol)及び 0.5mlの1N塩酸を10mlメタノール中に溶かす
。 200mgの10% Pd/c触媒を加え、その溶液を通して10時間、H2のゆっくり
した流れを導く。触媒をろ過により除去し、洗浄する。そのろ液をエバポレート
して、その生成物をエーテルで沈殿させる。 TLC−純粋無色粉末としての 200mg
(92℃)生成物。Rf:0.13、クロロホルム:メタノール/4:1。1H-NMR(d6-DM
SO):スペクトルはその構造と一致しており、その2つのジアステレオマーは比
率(44:56)を有する。
Z-Gly-NHBn(8.19)
Z-Gly-OSu(6.13g:20.0mmol)及びベンジルアミン(2.30ml;21.0mmol)を 8.
3に記載されるように変換する。5.34g(90%)の無色 TLC純粋生成物。Rf:0.4
6、クロロホルム:メタノール/9:1、mp= 117℃
Z-Ser-Gly-NHBn(8.20)
8.19(1.49g;5.0mol)を 8.4に記載されるように脱保護する。その残物、Z-
Ser-OH(1.20g;5.0mmol)及びヒドロキシベンゾトリアゾール(0.6g;5.0mmol)
を10ml THF中に溶かす。懸濁液を0℃まで冷やし、1−エチル−N′−(3−ジ
メチルアミノプロピル)−カルボジイミドヒドロクロライド(EDCI)(1.0g;5.3m
mol)を加える。その反応混合物を室温まで加熱しながら12時間、撹拌する。 8.5
に記載されるように作業手順を行う。その生成物を酢酸エチルで沈殿させる。 T
LC−純粋無色粉体としての1.28g(66%)生成物。Rf:0.38 クロロホルム:メ
タノール/9:1、mp= 170℃。
BnONH-iBM-Ser-Gly-NHBn 2ジアステレオマー(8.21)
8.20(193mg;0.5mmol)を 8.4に記載されるように脱保護する。その残物2(133
mg;0.5mmol)及びヒドロキシベンゾトリアゾール(70mg;5.0mmol)を10ml THF中
に溶かす。その懸濁液を0℃まで冷やし、1−エチル−N′−(3−ジメチルア
ミノプロピル)−カルボジイミドヒドロクロライド(EDCI)(100mg;0.6mmol)を加
える。その反応混合物を、室温まで加熱しながら12時間、撹拌する。 8.5に記載
されるように作業手順を行う。 TLC純粋無色粉体としての190mg(76%)。Rf:0.2
7 クロロホルム:メタノール/9:1。
HONH-iBM-Ser-Gly-NHBn(ER059)2ジアステレオマー(8.22)
8.21(190mg;0.38mmol)を 8.6に記載される通り脱保護する。その生成物をジ
エチルエーテルで沈殿させる。 TLC−純粋無色粉末としての120mg(77%)生成物
。Rf:0.57;アセトニトリル:水/4:
1。1H-NMR(d6-DMSO):スペクトルはその構造と一致し、その2つのジアステレ
オマーは比率(42:58)を有する。
Z-Homophe-NHCH2CH2Ph(p-Me)(8.23)
Z-Homophe-OH(157mg;0.5mmol);2−(p−トリル)エチルアミン(68mg;0.5
mmol)及びヒドロキシベンゾトリアゾール(70mg;0.5mmol)を3ml THF中に溶かす
。その懸濁液を0℃に冷やし、1−エチル−N′−(3−ジメチルアミノプロピ
ル)−カルボジイミドヒドロクロライド(EDCI)(100mg;0.53mmol)を加える。そ
の反応混合物を、室温まで加熱しながら12時間、撹拌する。 8.5に記載されるよ
うに作業手順を行う。 TLC純粋無色粉末としての200mg(93%)。Rf:0.23、n−
ヘキサン:酢酸エチル/2:1
BnONH-iBM-Homophe-NHCH2CH2Ph(p-Me)2ジアステレオマー(8.24)
Z-Homophe-NHCH2CH2Ph(p-Me)(200mg;0.46mmol)を 8.4に記載される通り脱プ
ロトン化する。その残物、8.2(132mg;0.5mmol)及びヒドロキシベンゾトリアゾ
ール(70mg;5.0mmol)を6ml THF中に溶かす。その懸濁液を0℃まで冷やして、
1−エチル−N′−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミドヒドロク
ロライド(EDCI)(100mg;0.6mmol)を加える。その反応混合物を室温まで加熱しな
がら12時間、撹拌する。 8.5に記載される通り作業手順を行う。 TLC−純粋無色
粉末としての200mg(80%)生成物。Rf:0.3823、n−ヘキサン:酢酸エチル/1
:2。
HONH-iBM-Homophe-NHCH2CH2Ph(p-Me)(ER070)2ジアステレオマー(8.25)
8.24(190mg;0.35mmol)を 8.6に記載されるように脱保護する。その生成物を
n−ヘキサンで沈殿させる。 TLC−純粋無色粉末としての140mg(88%)生成物。R
f:0.38 クロロホルム:メタノール/9:1。1H-NMR(d6-DMSO):スペクトルは
その構造と一致し、その
2つのジアステレオマーは比率(23:77)を有する。
Z-Phe-NHBn(8.26)
Z-Phe-OSu(1.98g;5.0mmol)及びベンジルアミン(0.60ml;5.5mmol)を3に記
載されるように転化する。 1.6g(95%)無色 TLC-純粋生成物。Rf:0.59、酢
酸エチル:n−ヘキサン/2:1
H-Pro-NHBn(8.27)
8.26(155mg;0.40mmol)を 8.4に記載されるように脱保護する。
HONH-iBM-Phe-NHBn(ER074)2ジアステレオマー(8.28)
8.27,8.2(100mg;0.37mmol)及びヒドロキシベンゾトリアゾール(60g;0.
40mmol)を5ml THF中に溶かす。その溶液を0℃に冷やし、1−エチル−N′−
(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミドヒドロクロライド(EDCI)(0.2
0g;1.0mmol)を加える。その反応混合物を室温まで加熱しながら12時間、撹拌
する。 8.5に記載されるように作業を行う。 TLC−純粋なBnONH-iBM-Phe-NHBn(
Rf:0.27、酢酸エチル:n−ヘキサン/1:1)を 8.6に記載されるように脱保
護する。 TLC−純粋無色粉末としての161mg(98%)。
Rf:0.41、クロロホルム:メタノール/9:1。
実施例9
阻害効果の測定(酵素アッセイ)
MMP、例えば HNCの阻害を測定するために、その触媒ドメイン(単離及び精製
、実施例1を参照のこと)を種々の濃度を有するインヒビターとインキュベート
する。次の標準的な基質の転化における開始反応速度をF.Grams et al.(1953)51
と同様に測定する。
その結果を、インヒビターの濃度に対して相互反応速度をプロットすることに
より評価する。M.Dixon(1958)28に従うグラフ化法により横軸の負のセクション
として阻害定数(Ki)を得る。
合成コラゲナーゼ基質はDNP(ジニトロフェノール)とそのC末端
で結合しているヘプタペプチドである。前記 DNP残基は立体障害によりヘプタの
隣接するトリプトファンの蛍光を消光する。 DNP基を含むトリペプチドの切断の
後、トリプトファン蛍光は増加する。それゆえ基質の蛋白質分解性切断は蛍光値
により測定され得る。
a)第1の方法
少量の重金属を除去するためジチオゾンで処理した新しく調製した50mM Tris
緩衝液(pH 8.0)中で25℃でアッセイを行った。4mM CaCl2を加え、その緩衝液
をアルゴンで飽和した。アダマリシンIIの保存液を、硫酸アンモニウム懸濁液か
らの蛋白質の遠心により調製し、次にアッセイ緩衝液中に溶かす。コラゲナーゼ
の保存液をアッセイ緩衝液で希釈した。酵素濃度をUV測定(ε280= 2.8×104M-1
・cm-1、ε288: 2.2×104M-1・cm-1)により測定し、保存液を冷やして保存
した。その溶液を、16nMの最終アッセイ濃度を得るために1:100 に希釈した。
52μMのKmを有する蛍光基質DNP-ProLeu-Gly-Leu-Trp-Ala-D-Arg-NH2を21.4μ
Mの濃度で用い;Ki測定のために、12.8μM濃度も用いた。基質蛍光を恒温に
保たれたセルホルダーを備えた分光蛍光計(Perkin Elmer,Model 650-40)で各
々λ=320 及び 420nmの励起及び放射波長で測定した。酵素を加えた直後10分間
、基質加水分解をモニターした。全ての反応を少くとも3回重複して行った。イ
ンヒビターのKi値をv0/v1対〔インヒビターの濃度〕のプロットにより得ら
れた直線の交点から計算し、他方IC50値を、単純ロバスト荷重での非線形回帰に
よりv1/v0対〔インヒビターの濃度〕から計算した。
b)第2の方法
アッセイ緩衝液:
50mM・Tris/HCl pH 7.6(Tris=トリス−(ヒドロキシメチル)−アミノメタ
ン)
100mM NaCl
10mM CaCl2
5% MeOH(必要に応じて)
酵素:
8nMヒト好中球コラゲナーゼの触媒ドメイン(Met80-Gly242)
基質:
10μM DNP-Pro-Leu-Gly-Leu-Trp-Ala-D-Arg-NH2
全アッセイ容量:1ml
アッセイ緩衝液(25℃)中の酵素及びインヒビターの溶液を調製した。その反
応を、その基質を溶液内に入れることにより直接、開始した。フルオロジェニッ
ク基質の切断の後、各々 280及び 350nmの励起及び放射波長で蛍光分光法を行っ
た。インヒビターなしでの反応と比較して反応の速度を半分に減少させるのに必
要であるインヒビター濃度としてIC50値を計算した。
表IVは観測されたIC50値を示す。
【手続補正書】特許法第184条の8第1項
【提出日】1996年12月2日
【補正内容】
請求の範囲
1.マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)に結合し、それを阻害する一般
式I,II又はIII:
(ここで、X1は酸素又は硫黄であり、
R1はOH,SH,CH2OH,CH2SH又はNHOHであり、
R2は、 HNCのアミノ酸 161に結合する2〜10骨格原子の残基であって、該残
基が飽和又は不飽和の直鎖又は分枝鎖のものであり、好ましくは単素環式又は複
素環式構造を含む残基であり、
X2は、酸素又は硫黄であり、 HNCのアミノ酸 160に水素結合アクセプターと
して結合し、
Yは、 HNCのS1′ポケットに結合し、少くとも4の骨格原子Z1−Z2−Z3
−Z4−R3(式IV)からなる残基であり、
R3は、n−プロピル、イソプロピル、イソブチル又は三環式システム以下で
ある少くとも4の骨格原子を有する残基であり、
R4は水素、アルキル又はアリールである)
により表される化合物(但し、該化合物はNONH-DL-CO-CH-(CH2C6H5)-CO-L-Ala-G
ly-NHC6H4NO2でない)又はその塩。
2.R2が2〜10の骨格原子(C,N,O,S)のアルキル、アルケニル、ア
ルコキシ残基又は5〜10の骨格原子(C,N,O,S)のシクロ(ヘテロ)アル
キルもしくは芳香族残基を含むことを特徴とする請求項1に記載の化合物。
3.前記式IVの構造Z1−Z2−Z3−Z4が約0°の二面角(Sp2又はSp3混成
)を形成する4の骨格原子からなり、Z1とZ4との距離が 2.5〜3.0 Åの間であ
ることを特徴とする請求項1又は2に記載の化合物。
4.Z1−Z2−Z3−Z4が擬似ペプチド環構造、例えばフェニレン、ピリジニ
ル、ピラジニル、ピリミジル、ピリダジニル、ピペラジニル、インドリニル又は
モルホリニルからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の化合物
。
5.Yがペプチド又は擬似ペプチド基からなることを特徴とする請求項1〜4
のいずれかに記載の化合物。
6.Yが次の残基:
の1つであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の化合物。
7.R4が水素、イソプロピル、n−ブチル又はベンジルであることを特徴と
する請求項1〜6のいずれかに記載の化合物。
8.マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)の阻害のための、一般式I,II
又はIII:
(ここで、X1は酸素又は硫黄であり、
R1はOH,SH,CH2OH,CH2SH又はNHOHであり、
R2は、 HNCのアミノ酸 161に結合する2〜10骨格原子の残基であって、該残
基が飽和又は不飽和の直鎖又は分枝鎖のものであり、好ましくは単素環式又は複
素環式構造を含む残基であり、
X2は、酸素又は硫黄であり、 HNCのアミノ酸 160に水素結合アクセプターと
して結合し、
Yは、 HNCのS1′ポケットに結合し、少くとも4の骨格原子Z1−Z2−Z3
−Z4−R3(式IV)からなる残基であり、
R3は、n−プロピル、イソプロピル、イソブチル又は三環式システム以下で
ある少くとも4の骨格原子を有する残基であり、
R4は水素、アルキル又はアリールである)
により表される化合物(但し、該化合物はNONH-DL-CO-CH-(CH2C6H5
)-CO-L-Ala-Gly-NHC6H4NO2でない)又はその塩の使用。
9.R2が2〜10の骨格原子(C,N,O,S)のアルキル、アルケニル、ア
ルコキシ残基又は5〜10の骨格原子(C,N,O,S)のシクロ(ヘテロ)アル
キルもしくは芳香族残基を含むことを特徴とする請求項8に記載の使用。
10.前記式IVの構造Z1−Z2−Z3−Z4−R3が約0°の二面角(Sp2又はSp
3混成)を形成する4の骨格原子からなり、Z1とZ4との距離が 2.5〜3.0 Åの
間であることを特徴とする請求項8又は9に記載の使用。
11.Z1−Z2−Z3−Z4が擬似ペプチド環構造、例えばフェニレン、ピリジニ
ル、ピラジニル、ピリミジル、ピリダジニル、ピペラジニル、インドリニル又は
モルホリニルからなることを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の使用。
12.Yがペプチド又は擬似ペプチド基からなることを特徴とする請求項8〜11
のいずれかに記載の使用。
13.Yが次の残基:
の1つであることを特徴とする請求項8〜12のいずれかに記載の使用。
14.R4が水素、イソプロピル、n−ブチル又はベンジルであることを特徴と
する請求項8〜13のいずれかに記載の使用。
15.請求項1〜7に記載の化合物の治療用組成物。
16.1以上の非毒性の医薬として許容される担体及び/又は希釈
剤及び/又は佐剤と共同した請求項15に記載の治療用組成物。
17.慢性関節リウマチ、及びコラーゲン分解活性が関与する因子である関連す
る病気のための治療剤を製造するための請求項1〜7のいずれかに記載の化合物
の使用。
18.前記治療剤の投与量が体重の 0.1〜300 mg/kgであることを特徴とする請
求項17に記載の使用。
19.前記治療剤が脈管内、腹腔内、皮下、筋内又は局所的に投与されることを
特徴とする請求項17又は18に記載の使用。
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(51)Int.Cl.6 識別記号 FI
A61K 31/66 ACL A61K 31/66 ACL
38/00 ADS C07D 307/52
C07D 307/52 C07F 9/38 D
C07F 9/38 A61K 37/02 ADS
(31)優先権主張番号 95101672.4
(32)優先日 1995年2月8日
(33)優先権主張国 欧州特許機構(EP)
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF,CG
,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,SN,
TD,TG),AP(KE,LS,MW,SD,SZ,U
G),AL,AM,AT,AU,BB,BG,BR,B
Y,CA,CH,CN,CZ,DE,DK,EE,ES
,FI,GB,GE,HU,IS,JP,KE,KG,
KP,KR,KZ,LK,LR,LT,LU,LV,M
D,MG,MK,MN,MW,MX,NO,NZ,PL
,PT,RO,RU,SD,SE,SG,SI,SK,
TJ,TM,TT,UA,UG,US,UZ,VN
(72)発明者 ボーデ,ヴォルフラム
ドイツ連邦共和国,デー−82131 ガウテ
ィング,トゥルペンシュトラーセ 5
(72)発明者 グラムス,フランク
ドイツ連邦共和国,デー−80686 ミュン
ヘン,ベヘルシュトラーセ 3
(72)発明者 ヒユーベル,ロベルト
ドイツ連邦共和国,デー−82110 ゲルメ
リング,シュレシエールシュトラーセ 13