【発明の詳細な説明】
複製欠陥ベクターを用いる、組織特異的処置、診断方法、および組成物
発明の背景
発明の分野
本発明は、組換えベクター送達系、特にアデノウイルスベクターを用いる遺伝
子治療に関する。本発明は特に複製欠陥ベクターに関する。このベクターは、特
定の組織中で特異的に複製し得、ベクター自身またはそのベクターによりコード
され、そして異常な組織全体に分布される異種遺伝子産物からの治療的な利益を
提供し得る。好ましくは、組織は腫瘍組織である。本発明はまた、遺伝子治療に
有用である組換え複製欠陥ベクターを産生する細胞に関する。本発明はまた、ベ
クター複製を可能にする機能または機能欠陥について、異常な組織、特に腫瘍を
スクリーニングする方法に関する。
従来技術
標的化ベクター
インビトロまたはインビボ、全身性、あるいはインサイチュでの外来遺伝子の
細胞への導入は、非標的細胞が外来遺伝子を取り込むことが不利益である混合物
について使用が制限されている。この問題を解消する1つのストラテジーは、特
定の細胞タイプを標的する投与手順またはベクターを開発することである。全身
投与を用いて、DNAの直接注入によるミオサイトおよび筋細胞に外来遺伝子を指
向させる試み、DNA-タンパク質複合体を用いて肝細胞に外来DNAを指向させる試
み、およびリポソームを用いて内皮細胞に指向させる試みがなされている。
インサイチュ投与を用いて、レトロウイルスの複製機能は、活発に複製してい
る細胞を標的するために利用されている。この様式で複製的に活性な細胞に標的
付けることは、ベクター中に「自殺」遺伝子を取り込ませることにより増大され
ている。このベクターは、ベクターを取り込む、活発に複製している非標的細胞
ならびに標的細胞を傷害させる。
しかしこれまで、細胞を標的付ける能力は、細胞タイプ特異性の欠損および低
い遺伝子導入効率により制限されている。外来遺伝子を生物中の疾患細胞に標的
付け、一方正常な非標的細胞による遺伝子の取り込みを回避(排除)する限定さ
れた能力は、特に、動物およびヒトにおける疾患の効果的な遺伝子導入に基づく
治療を開発することに対する障害になっている。
1つの特に困難な試みは腫瘍細胞を標的することである。なぜなら腫瘍細胞は
正常細胞の機能の多くを有しているためである。さらに、これらの細胞に関する
外見上望みのあるストラテジーの多くは、1種または数種の細胞タイプに限定さ
れる。従って、ベクター取り込みまたはベクター生存能を標的細胞に限定する方
法は、開発される余地がある。
本発明は、1つの局面では、腫瘍に外来遺伝子を送達する方法を提供する。
アデノウイルス全般
アデノウイルスはエンベロープを有さない規則的な正二十面体(icosohedron
)である。タンパク質コート(キャプシド)は252個のキャプソメアから構成さ
れる。このキャプソメアのうち240個はヘキソンであり、そして12個はペントン
である。アデノウイルスポリペプチドの詳細な構造研究のほとんどは、アデノウ
イルス2型および5型について行われている。ウイルスDNAは、アデノウイルス
2については23.85×106ダルトンであり、そして血清型に依存してサイズは僅か
に変化する。このDNAは逆方向末端反復を有し、そしてこれらの長さは血清型に
応じて変化する。
複製サイクルは、初期(E)および後期(L)に分けられる。後期は、ウイルス
DNA複製の開始を規定する。アデノウイルス構造タンパク質は、一般に後期の間
に合成される。アデノウイルス感染の後、宿主DNAおよびタンパク質合成は、ほ
とんどの血清型に感染した細胞において阻害される。アデノウイルス2およびア
デノウイルス5を用いるアデノウイルス溶菌サイクルは、非常に効率的であり、
そして過剰のウイルスタンパク質の合成およびビリオン中に取り込まれないDNA
とともに、感染細胞当たり約10,000ビリオンを生じる。初期のアデノウイルス転
写は、相互関係のある生化学的事象の複雑な連鎖であるが、それはウイルスDNA
複製の開始の前にウイルスRNAの合成を必須的に要する。
アデノウイルスゲノムの機構はアデノウイルス群の全てにおいて類似し、そし
て特定の機能は、一般的に研究された各血清型について同一の位置に位置づけら
れている。初期の細胞質メッセンジャーRNAは、ウイルスDNA上の4つの規定され
た隣接しない領域に相補的である。これらの領域は命名されている(E1〜E4)。
初期の転写物は、一連の即時型初期(E1a)領域、遅延型初期(E1b、E2a、E2b、
E3、およびE4)領域、および中期(IVa2.IX)領域に分類されている。
E1a領域は、ウイルス性および細胞性遺伝子の転写のトランス活性化ならびに
他の配列の転写抑制に関与する。E1a遺伝子は、他の全ての初期アデノウイルス
メッセンジャーRNAに対して重要な制御機能を発揮する。正常な組織では、E1b、
E2a、E2b、E3、またはE4領域を効率的に転写するために、活性なE1a産物が必要
とされる。しかし、以下に考察されるように、E1a機能はバイパスされ得る。細
胞は、E1a様機能を提供するように操作され得るか、またはそのような機能を天
然に含み得る。ウイルスはまた、以下に記載されるように、この機能をバイパス
するように操作され得る。
E1b領域は、感染の後期のウイルス事象の正常な進行に必要とされる。E1b産物
は宿主核中で作用する。E1b配列内で生成された変異は、減少した後期ウイルスm
RNAの蓄積、ならびにアデノウイルス感染の後期に通常観察される宿主の細胞輸
送の阻害に障害を示す(Berkner,K.L.,Biotechniques 6:616-629(1988))。E1
bは、プロセシングおよび輸送がウイルスの後期遺伝子産物に有利にシフトされ
るように、宿主細胞の機能を変化させるために必要とされる。次いでこれらの産
物は、ウイルスのパッケージングおよびビリオンの放出を生じる。E1bは、アポ
トーシスを防止する19kDタンパク質を産生する。E1bはまた、p53に結合する55kD
タンパク質を産生する。
アデノウイルスおよびそれらの複製に関する完全な総説については、Horwitz
,M.S.,Virology第2版、Fields,B.N.編、Raven Press Limited,NeW York(19
90),60章,pp.1679-1721を参照のこと。
組換え送達ベヒクルとしてのアデノウイルス
アデノウイルスは、以下の理由により、適切な遺伝子送達のためのベクターと
しての利点を提供する。アデノウイルスは、ヒト呼吸器系および消化管に向性を
有する2本鎖DNAの非エンベロープウイルスである。アデノウイルスは穏やかな
インフルエンザ様疾患を引き起こす。アデノウイルスベクターは、レセプター媒
介エンドサイトーシスにより細胞に侵入する。大きな(36キロ塩基)ゲノムは、
外来DNAが挿入され、そしてウイルスゲノムから発現されるように、複製に必須
な遺伝子および必須でない領域の除去を可能にする。アデノウイルスは、インビ
ボおよびインビトロにおいて広範な種々の細胞タイプに感染する。アデノウイル
スは、遺伝子治療および異種遺伝子の発現のためのベクターとして用いられてい
る。アデノウイルスゲノムからのウイルスの遺伝子または外来遺伝子の発現は、
複製している細胞を必要としない。アデノウイルスベクターは、宿主染色体中に
まれにしか組み込まれない;アデノウイルスゲノムは、細胞の核内に染色体外エ
レメントとして残る。アデノウイルス感染とヒト悪性腫瘍との関連はない;弱毒
化株が開発され、そして生ワクチンのためにヒトにおいて使用されている。
遺伝子治療のためのアデノウイルスベクターの使用に関するより詳細な考察に
ついては、Berkner,K.L.,Biotechniques 6:616-629(1988);Trapnell,B.C.,
Advanced Drug Delivery Reviews 12:185-199(1993)を参照のこと。
アデノウイルスベクターは、一般にこのウイルスのE1領域が欠失される。次い
で、E1領域は目的のDNA配列に置換され得る。しかし、ヒト遺伝子治療に関する
最近の論説において、「遺伝子導入ベクターとしてのアデノウイルスの使用にお
ける主要な不利な点は、このウイルスベクターが一般に、遺伝子副体(episomal)
として残り、そして複製せず、従って、細胞分裂が娘細胞からのこのベクターの
いずれ起こる喪失を導く」ことが指摘された(Morgan,R.A.ら、Annual Review
of Biochemistry 62:191-217(1993))(強調される)。
このベクターの非複製は、ほとんどまたは全ての標的細胞における発現を伴う
ことなくベクターのいずれ起こる喪失を導くだけでなく、ベクターを取り込む細
胞において不十分な発現をも導く。なぜなら、発現を所望される遺伝子のコピー
が最大効果には不十分であるためである。遺伝子発現の不十分さは、全ての非複
製送達ベクターの一般的な欠点である。この欠点のために、例えば、従来のチミ
ジンキナーゼ発現ベクターと組み合わせて用いられる有効量のガンシクロビルは
、望ましくない副作用を生じる。しかし、より多量のチミジンキナーゼが産生さ
れるように遺伝子用量が増大される場合、より少ないガンシクロビルが、所望の
処置を生じるのに必要とされ、かつ副作用が最小化される。従って、複数のコピ
ーの遺伝子を提供し、その結果としてより多量のその遺伝子産物を提供し得るベ
クターを導入することが望ましい。
公開されたPCT特許出願第WO 94/18992号は、p53-マイナスまたはRb-マイナス
腫瘍細胞における複製欠陥ウイルスの使用に基づく新生物性病的状態を処置する
ための方法および組成物を記載している。この刊行物は、新生物性細胞において
複製表現型を生じ得るが、正常なp53および/またはpRb機能を有する非複製非新
生物性細胞において複製表現型を生じ得ないウイルスを主張している。実験デー
タは、複製欠陥ウイルスの細胞変性効果を示すが、感染性ビリオンの産生を示さ
ない。この引用文献は、ベクター産生のため、そして特に野生型ウイルスを含ま
ない組換えウイルスのビリオン産生のためのプロデューサー細胞株を開示してい
ない。この引用文献は、複製欠陥ウイルスを複製する能力についてエキソビボで
組織タイプを診断することと、その後にインビボでその組織を処置するためにこ
のようなウイルスを使用することとの組み合わせを開示していない。この引用文
献は、p53および/またはRb以外の細胞性機能が欠陥している方法および組成物を
開示していない。この引用文献は、遺伝子機能を相補することによる複製欠陥ウ
イルスの複製を開示していない。プロデューサー細胞株または組織全体へのウイ
ルスの伝播を含む効果的な治療法を作製するために、感染性ウイルスの産生が必
要とされる。
本発明は、複製するベクター、複数のDNAコピー、および増大した量の遺伝子
産物(特に感染性ウイルス)を提供することにより、上記で考察された不利な点
のすべてを解消する。
アデノウイルスベクターの産生
組換え遺伝子発現のためのアデノウイルスベクターは、ヒト胎児腎細胞株293
において産生されている(Graham,F.L.ら、J.Gen.Virol.36:59-72(1977))。
この細胞株(初期には、ヒトアデノウイルス5で形質転換された)は、現在では
アデノウイルス5ゲノムの左の末端を含有し、そしてE1を発現する。それ故、こ
れらの細胞は、E1機能に欠陥を有するアデノウイルス2およびアデノウイルス5
の変異体の増殖を許容する。これらは、E1変異体の単離および伝播のために広範
に使用されている。それ故、293細胞は、哺乳動物細胞におけるアデノウイルス
ベクターのヘルパー非依存性のクローニングおよび発現のために使用されている
。293細胞の細胞性DNAに組み込まれたE1遺伝子は、ウイルスベクターゲノムから
のこれらの遺伝子の欠失を許容するレベルで発現される。この欠失は、DNAが挿
入され得る必須でない領域を提供する。総説については、Young,C.S.H.ら、The
Adenoviruses,Ginsberg,H.S.編、Plenum Press,New York and London(1984)
,pp.125-172を参照のこと。
しかし、293細胞は、アデノウイルスベクターのプロデューサー細胞として厳
しい制限に曝されている。増殖速度が低い。力価が限定される(特にベクターが
細胞に対して毒性を示す異種遺伝子産物(例えば、チミジンキナーゼ)を産生す
る場合)。ゲノムにおけるウイルスE1配列での組換えは、安全でない野生型ウイ
ルスでの組換え能欠陥ウイルスの汚染を導き得る。特定のウイルス調製物の質は
、プラーク形成単位に対するウイルス粒子の比に関して貧弱である。さらに、こ
の細胞株は、より高度に欠失した変異体の増殖を支持しない。なぜなら、細胞性
ゲノムにおける他のウイルス遺伝子(さらなる欠失を相補するために必要とされ
る)(例えば、E4)との組み合わせにおけるE1の発現は、この細胞に対して毒性
であるためである。それ故、ウイルスゲノム中に挿入され得る異種DNAの量は、
これらの細胞中で制限される。従って、野生型組換え体を産生し得ず、そして高
力価の質が高いウイルスを産生し得る細胞中で、遺伝子治療のためのアデノウイ
ルスベクターを産生することが望ましい。本発明はこれらの制限を解消する。
腫瘍サプレッサー遺伝子
体細胞遺伝学における実験により、1つ以上の遺伝的エレメントが腫瘍細胞の
増殖を阻害し得ることが示されている。これらの実験は、正常細胞に含有される
遺伝子が、正常細胞の腫瘍原性となる能力を抑制することを示唆した。
最初の実験が行われて以来、特に2つの遺伝子が、腫瘍サプレッサー遺伝子、
すなわち、腫瘍細胞において腫瘍原性の表現型を抑制し得る遺伝子として特徴付
けられた。網膜芽細胞腫感受性遺伝子(Rb)およびp53は、腫瘍サプレッサー遺
伝子のうち最も研究されている2つの遺伝子である。Rbの欠陥対立遺伝子の遺伝
は、眼の幼児期の腫瘍である網膜芽細胞脛に罹りやすくする。しかし、Rb遺伝子
はまた、乳ガン、肺ガン、および膀胱ガン、骨肉腫、ならびに柔組織肉腫の発達
において体細胞の変異を受けやすい(Weinberg,R.A.,Cancer Surveys 12:43-5
7(1992))。p53は、種々の散発性のヒトガンの発達の間に変異され、そしてp53
における生殖系列変異は、Li-Fraumeni症候群に関連する(Harris,C.C.ら、New
Engl.J.Med.329:1318-1327(1993); Malkin,D.,Cancer Genet.Cytogenet
.66:83-92(1993); Malkin,D.ら、Science 250: 1233-1238(1990))。多くのヒ
ト腫瘍は、p53およびRbの両方の高頻度の変異を示す。これらの遺伝子に関する
研究は、形質転換におけるp53およびRbの協同的な腫瘍原性効果が存在し得るこ
とを示唆している。これらの遺伝子およびそれらの機能の詳細な総説については
、Levine,A.J.,Ann.Rev.Biochem.62: 623-651(1993)を参照のこと。
プログラムされた細胞死は、多細胞生物の発生の調節において重要な役割を演
じる(Ellis,R.E.ら、Ann.Rev.Cell Biol.7:663-693(1991)およびCohen,J.J.
ら、Ann.Rev.Immunol.10: 267-293(1992))。プログラムされた細胞死は、アポ
トーシス、核凝縮のプロセス、および小さなDNAフラグメントへの染色体の切断
により特徴的に生じる。p53は、アポトーシスに向かう経路における重要な構成
成分であるようである(Yonish-Rouach,C.D.ら、Nature 352:345-347(1991))
。p53は、ウイルスタンパク質および哺乳動物タンパク質と複合体化し得る。p53
はヘテロ二量体化し、そしてSV40 T-抗原、ヒトパピローマウイルスE6タンパク
質、およびアデノウイルスE1bとヘテロ二量体を形成し得る。ウイルスタンパク
質の野生型p53への結合は、p53の急速な分解または不活化形態での隔離のいず
れかを生じる。ウイルスタンパク質のp53を不活化する能力は、これらのウイル
スが細胞を形質転換する機序であり得る(Lee,J.M.ら、Mutation Res.307: 57
3-581(1994))。従って、プログラムされた細胞死のブロックは、ウイルスタン
パク質のp53への結合または細胞におけるp53の機能的不活化により生じ得る。
G0で静止しているか、またはG1にある細胞は、E2Fと呼ばれる細胞性転写因子
との複合体において見いだされるRbタンパク質を有する。E2Fは、DNA複製に関与
する酵素的活性に貢献するいくつかのウイルス遺伝子ならびにいくつかの細胞性
遺伝子の転写を媒介する。Rb/E2F複合体がアデノウイルスE1aタンパク質に曝さ
れる場合、E2Fタンパク質はこの複合体から放出され、そしてE2F応答性プロモー
ターエレメントの転写を促進するE2Fの能力が増大する。同様に、HPV16E7タンパ
ク質はRbと相互作用し、そしてE2Fを放出し、新たな活性を提供する。このよう
に、Rbは、転写因子E2Fが細胞周期のS期に進入するためにおそらく必要な遺伝
子のセットを転写しないように、細胞周期におけるG0またはG1の間に作用し、E2
Fを隔離する。Rbは、この様式で多数の細胞性タンパク質を調節し得る(Levine
,A.J.,Ann.Rev.Biochem.62: 623-652(1993))。
従って、所定の細胞、そして特に所定の腫瘍細胞が、p53またはRbにおいて機
能的に不活化されているか否かを確認する方法を有することが望ましい。
発明の要旨
上記で論議した制限を考慮して、本発明の一般的な目的は、組織塊において、
そして好ましくは腫瘍塊において、インビボでベクターを選択的に分配し、複製
しないベクターを用いて処理するより多くの細胞を処理し、そして正常または非
腫瘍組織において処理が回避されるかまたは顕著に減少する方法を提供する。
本発明の別の目的は、複製欠陥ベクターを複製させる因子を含むか、または複
製欠陥ベクターの複製を妨げる因子が欠陥している腫瘍細胞を同定する方法を提
供する。本発明の好適な目的は、機能的に活性なp53、またはp53かつRbを含まな
い腫瘍細胞を同定することである。
本発明の第3番目の目的は、ベクター産生、そして好ましくはアデノウイルス
ベクター産生のためのプロデューサー細胞株を提供することである。好ましくは
、
細胞株は、以下に記載する1つまたはそれ以上の特徴を有する:高力価ウイルス
産生、ベクター中で発現される異種遺伝子産物に起因する毒性効果への耐性、ウ
イルス調製物を汚染しそして細胞ウイルス配列とベクター配列との間の組換えを
生じる野生型ウイルス産生がないこと、高密度および懸濁液中の増殖、無制限の
継代能力、高増殖速度、およびウイルス機能が損なわれ大きな異種DNA断片を収
容し得る高度に欠失したウイルスの増殖を可能にすること。
従って、本発明は一般に、標的組織中でのみ選択的に複製するベクターを用い
る組織特異的遺伝子治療に関する。本発明は、インビボで組織中にポリヌクレオ
チドを分配する方法に関し、この方法は、組織中にポリヌクレオチドを含む複製
欠陥ベクターを導入する工程、組織の細胞中でベクターを複製させる工程を包含
し、そしてこの細胞において、複製欠陥がこの細胞における複製欠陥ベクターの
複製を可能にする1つまたはそれ以上の内因性の天然に存在する因子により相補
され、またはここで内因性の天然に存在するベクター複製のインヒビターがこの
細胞中で機能的に不活性であり、それによってベクター複製を可能にする。従っ
て、本発明はまた、標的組織中でベクターを分配する方法、および標的組織中で
ベクター上の遺伝子から産生される遺伝子産物を分配する方法に関する。
好適な実施態様では、上記組織は異常に増殖しており、そして特に腫瘍組織で
ある。しかし、本発明はまた、本明細書で記載されるように他の異常組織、なら
びに正常組織に関する。
好適な実施態様では、複製欠陥ベクターはDNA腫瘍ウイルスベクターである。
好適な実施態様では、DNA腫瘍ウイルスベクターは、ヘルペスウイルス、パポバ
ウイルス、パピローマウイルス、および肝炎ウイルスベクターからなる群から選
択されるベクターである。
最も好適な実施態様では、ベクターはアデノウイルスベクターである。
さらに好適な実施態様では、E1領域、そして好ましくはE1a領域がアデノウイ
ルスから欠失している。
本発明のさらに好適な実施態様では、細胞は腫瘍抑制遺伝子産物について、そ
して好ましくは、少なくともp53、そしてより好ましくはRbについてもまた機能
的に不活性である。
さらに好適な実施態様では、細胞は機能的に活性なp53およびRbを含むが、少
なくともp53を、そして好ましくはRbをもまた不活性化する内因性の細胞因子を
また含む。このような機能は、天然のウイルス感染から生じる内因性の細胞要素
(ウイルス複製を妨害または防ぐ機能を不活性化する細胞ゲノム由来のプロウイ
ルス機能を発現する組み込まれたプロウイルスなど)から生じ得る。
本発明のさらなる実施態様では、ベクターは異種遺伝子産物をコードし、そし
て標的組織の細胞中でこの遺伝子産物を発現する。
本発明のさらなる実施態様では、異種遺伝子産物は標的組織中で細胞に対して
毒性である。
本発明のさらなる実施態様では、異種遺伝子産物は、非毒性のプロドラッグに
対して作用し、非毒性のプロドラッグを標的組織中で細胞に対して毒性である形
態に変換する。好ましくは、この毒素は抗腫瘍活性を有する。
本発明のさらなる実施態様では、ベクターはウイルス感染により組織中に導入
される。好適な実施態様では、ウイルスはアデノウイルスである。
複製は、ベクター複製単独であり得るか、またはウイルス複製(即ちビリオン
産生)をまた含み得る。従って、DNAあるいはビリオンのいずれか、または両方が
、標的組織中に分配され得る。
本発明の別の実施態様では、腫瘍処置に対してベクターの有用性をアッセイす
る方法が提供され、この方法は、患者から腫瘍生検を取り出す工程、この生検を
組織培養中に外植する工程、複製欠陥ベクターを生検の細胞中に導入する工程、
および細胞中でベクター複製をアッセイする工程を包含する。本発明の好適な実
施態様では、ベクターはアデノウイルスベクターである。
本発明のさらなる実施態様では、腫瘍を同定する方法が提供されており、この
腫瘍の細胞は、腫瘍生検を外植すること、生検の細胞中に複製欠陥ベクターを導
入すること、および細胞中でベクターDNA複製を定量することによって、複製欠
陥ベクターの複製を可能にする因子を含むか、または複製欠陥ベクターの複製を
妨げる因子の欠陥を含む。従って、複製ベクターの複製を可能にする因子の存在
について、または複製欠陥ベクターの複製を妨げる因子の欠陥について腫瘍をス
クリーニングする方法が提供される。このようなスクリーニングはとりわけ、処
置前の腫瘍の同定に有用であり、腫瘍細胞において複製される特定のベクターを
用いて容易に処置できる。特定の実施態様では、試験されるまたはスクリーニン
グされる組織は、腫瘍抑制機能、ベクター複製を妨げる存在、およびベクター複
製を許容する非存在についてアッセイされる。詳細に開示される実施態様では、
腫瘍抑制機能は、p53およびRb機能である。
従って、本発明のさらなる実施態様では、機能的に不活性化された、p53、Rb
、またはp53およびRbの両方を用いて腫瘍を同定する方法が提供され、この方法
は、腫瘍生検を外植する工程、p53、Rb、またはp53およびRbの両方の存在下で複
製し得ないベクターをこの生検の細胞中に導入する工程、およびこの細胞中のベ
クターDNA複製を定量する工程を包含する。しかし、組織または腫瘍を試験する
ことまたはスクリーニングすることは、ウイルスDNA複製についてのアッセイに
制限されず、ウイルス複製についてのアッセイをまた包含し得る。可能的に、任
意の組織が、DNAまたはウイルス複製についてのアッセイにより、上記の機能に
ついてスクリーニングされ得る。
好適な実施態様では、複製欠陥ベクターは、DNA腫瘍ウイルスベクターである
。好適な実施態様では、DNA腫瘍ウイルスベクターは、ヘルペスウイルス、パポ
バウイルス、パピローマウイルス、および肝炎ウイルスベクターからなる群から
選択されるベクターであるが、これらに限定されない。最も好適な実施態様では
、ベクターはアデノウイルスベクターである。さらに好適な実施態様では、E1領
域、そして好適にはE1a領域がアデノウイルスから欠失している。
本発明の別の実施態様では、複製欠陥ベクターの細胞において複製により細胞
中に産生されるビリオンを含む細胞株が提供され、ここでこの複製欠陥は、内因
性の天然に存在する細胞機能により、またはベクター複製を阻害する内因性の天
然に存在する細胞機能の欠陥により相補される。好適な実施態様では、プロデュ
ーサー細胞株中で機能的に活性化されている内因性の天然に存在するベクター複
製のインヒビターは、腫瘍抑制遺伝子の産物である。好適な実施態様では、プロ
デューサー細胞株中で機能的に活性化されている内因性の天然に存在するベクタ
ー複製のインヒビターは、p53またはRbのいずれか、あるいはp53およびRbの両方
、あるいはp53および/またはRbの機能的等価物である。この内因性の天然に存在
す
るベクター複製のインヒビターは、プロデューサー細胞中に過剰に存在し得る。
あるいは、この機能は、導入または細胞中のベクター複製の前に、標準的な組換
え方法またはその他の方法により不活性化され得る。さらなる実施態様では、細
胞は多コピーのベクターまたはビリオンを含む。
好適な実施態様では、ベクターは、DNA腫瘍ウイルスベクターであり、そして
好ましくは、ヘルペスウイルス、パポバウイルス、パピローマウイルス、および
肝炎ウイルスからなる群から選択されるが、これらに限定されない。好適な実施
態様では、ビリオンは、アデノウイルスビリオンであり、そしてベクターはアデ
ノウイルスベクターである。
さらに、好適な実施態様では、E1領域、そして好ましくはE1a領域がアデノウ
イルスから欠失している。さらに好適な実施態様では、細胞は、少なくともp53
そして好ましくはRbもまた機能的に不活性化されている。
さらに好適な実施態様では、細胞株は、小細胞癌腫細胞株である。本発明のさ
らに好適な実施態様では、細胞株は肝癌細胞株である。最も好ましくは、肝癌細
胞株は、Hep3B細胞株である。
さらに好ましい実施態様では、ベクターは異種遺伝子産物をコードする。この
異種遺伝子産物は、まさに毒性である薬物であり得るか、またはプロドラッグを
まさに毒性である薬物に代謝する産物であり得る。あるいは、遺伝子産物は、さ
らなる治療用途のために大量に産生される有益な遺伝子産物であり得る。さらに
、プロデューサー細胞株は、遺伝子治療におけるさらなる使用のために、ベクタ
ー自身またはビリオンを産生するために用いられる。
本発明のさらなる実施態様では、複製欠陥ベクターまたはビリオンを産生する
方法が提供され、この方法は、上記の細胞株を培養する工程およびこの細胞から
ベクターまたはビリオンを回収する工程を包含する。好適な実施態様では、この
細胞は腫瘍細胞である。なおさらなる実施態様では、野生型ビリオンのない複製
欠陥DNA腫瘍ビリオン、または野生型腫瘍ウイルスベクターのないDNA腫瘍ウイル
スベクターを産生する方法が提供され、この方法は、上記のプロデューサー細胞
株を培養する工程およびこの細胞から複製欠陥ビリオンまたはベクターを回収す
る工程を包含する。
図面の簡単な説明
図1:AV.TK1(構築については実施例1を参照のこと)感染AV1複製許容HuH7細
胞におけるチミジンキナーゼ活性の発現。
図2:AV1ベクターの細胞株特異的なDNA複製を示す代表的なサザンブロット。
図3:AV1ベクターの複製を支持する細胞株が内因性のE1遺伝子を含まないこ
とを示すサザンブロット。
図4:AV1ベクターの細胞株特異的なウイルス複製を示す代表的なプラーク力
価。
図5:種々の腫瘍細胞株および正常細胞におけるウイルス細胞傷害性データ、
DNA複製、およびウイルス産生をまとめた完全な表。
図6:選択された細胞株のRb/p53の状況を示す表。
図7:HuH7の感染対細胞傷害の多様性。
図8:HuH7細胞におけるガンシクロビル介在性バイスタンダー(bystander)
効果。
図9:癌腫細胞株特異的傷害。
図10:AV1.TK1で処置したHep3B皮下肝癌を保持するヌードマウスの治癒率。
図11:HuH7細胞におけるAVIDNA複製のp53依存性除去(ablation)。
図12:種々のアデノウイルスベクターで処置したHep3B腫瘍保持動物につい
ての生存曲線。
好ましい実施態様の詳細な説明
定義
用語「分配する」は、ベクターおよびそれに付随する異種遺伝子(産物)(ベ
クター上に存在する場合)の、標的組織への分散であるが、特に、細胞塊(例え
ば、異常な増殖組織(良性または悪性組織)塊)へ分散することを意味すること
が意図される。この分配の目的は、遺伝子産物または遺伝子産物の効果(例えば
、バイスタンダー効果によるように)を、全ての標的組織を処置するように、実
質的に全ての標的組織細胞、または非常に多数の標的組織細胞に送達することで
ある。
用語「遺伝子産物」は、DNA、RNA、タンパク質、ペプチド、またはウイルス粒
子を意味することを意図する。従って、本発明の目的について、分配は、任意の
これらの成分の分配である。
用語「異種遺伝子産物」は、天然のウイルスゲノムに見出されない遺伝子によ
りコードされる遺伝子産物を意味することを意図する。
用語「複製欠陥(deficient)」、「複製マイナス」、または「複製欠陥(def
ective)」は、置換可能に用いられる。これらの用語は、正常な宿主細胞内でウ
イルスが複製し得ない、遺伝的欠陥を有するベクターまたはウイルスを意味する
ことを意図する。
用語「異常な増殖」は、このような細胞が異常に蓄積するような、通常に機能
する対応物よりも高い有糸分裂指数を有する細胞を意味することを意図する。
用語「抗腫瘍活性」は、腫瘍の増殖を阻害、妨害、または破壊する、任意の活
性を意味することを意味することを意図する。
用語「機能的不活性」は、遺伝子産物の正常な活性を妨げる遺伝的な障害を意
味することを意図する。従って、機能的不活性は、遺伝子産物をコードする遺伝
子における変異により得られ得る。このような障害としては、挿入、欠失、およ
び塩基変化が挙げられる。あるいは、機能的不活性は、正常な遺伝子産物と、1
またはそれ以上の他の細胞遺伝子産物(この細胞遺伝子産物は、上記の遺伝子産
物に結合するか、またはそうでなければ機能的活性を妨げる)との異常な相互作
用により起こり得る。従って、遺伝子産物は、通常の遺伝子から生産されるタン
パク質であり得るが、第2の因子との相互作用により、その正常な機能および通
常の機能を行い得ない。
用語「相補された」は、ウイルスゲノム上の不活性化された遺伝子産物の機能
を提供する遺伝子産物の供給を意味することを意図する。
用語「内因性の天然に存在する因子」または「内因性の天然に存在する機能」
は、細胞ゲノム中の天然の配列によりコードされる遺伝子産物を意味することを
意図する。このような因子は、組換え方法または実験室的方法により(例えば、
実験室での、細胞へのウイルス配列の導入または組み込みにより)操作される因
子とは区別されるべきである。すなわち、このような配列は、天然の事象の結果
であり、細胞の人為的操作の結果ではない。
用語「機能的等価物」は、異なる遺伝子から生じるが、同一の生物学的機能を
有する遺伝子産物を意味することを意図する;例えば、p53に関しては、このよ
うな機能的等価物はウイルス遺伝子産物と相互作用し、細胞およびウイルスの複
製に対して、E1aとの相互作用が行うのと同じ効果を達成する。
本明細書に言及される全ての特許、刊行物(公開特許出願を包む)、およびデ
ータベース登録の開示が、それぞれのこのような個々の特許、刊行物、およびデ
ータベース登録が、具体的かつ個々に、参考としてその全てが援用されることが
示されるのと同じ程度に、その全てが本明細書中に具体的に参考として援用され
る。
処置
本発明は、まず、与えられたインビボ組織において、特に、非腫瘍組織におい
て、ポリヌクレオチドを選択的に分配し、非標的組織における分配を顕著に減少
または防止するための方法を提供する。このポリヌクレオチドは、与えられた組
織、特に腫瘍細胞に選択的に分配される、非腫瘍組織における分配を減少または
防止するベクターに提供される。
本発明はまた、与えられた組織において、特に非腫瘍組織において、遺伝子産
物を選択的に発現し、非標的組織または非腫瘍組織中の発現を防止または顕著に
減少させるための方法を提供する。本発明は、非複製ベクターを用いて到達し得
る数よりも多くの標的細胞に上記のものを分配するための方法を提供する。従っ
て、この方法により、ポリヌクレオチド、ベクター、または遺伝子産物に最初に
曝露した細胞に加えて、細胞に到達することが可能となる。
本方法は、特に、標的組織の細胞中で複製する正常な複製欠陥ベクターの標的
組織への導入に関する。標的組織において、複製は、複製欠陥が、ウイルス複製
を可能にする細胞機能により相補されるか、またはベクター複製を正常に妨害ま
たは阻害する細胞機能に欠陥が存在するかのいずれかによって生じる。このよう
な機能の存在または非存在は、周囲の組織(1つまたは複数)に対する影響を最
小限にしながら、特定の組織の処置を可能にする選択性を提供する。
標的組織において、DNA複製のみが生じ得る。ビリオンへのベクターDNAのパッ
ケージングをもたらす後期ウイルス機能もまた生じ得る。
このベクターは、裸のDNAまたは包膜(感染性ウイルス粒子またはビリオンと
して)により標的組織に導入され得る。後者の場合、分配は、実質上全ての細胞
、または非常に多くの娘細胞が感染されるように、ウイルスによる組織中の細胞
の継続的な感染によって、達成される。
本発明のさらなる実施態様において、ベクターは、組織細胞中のベクターから
発現される異種遺伝子産物をコードする。異種遺伝子産物は、標的組織中の細胞
に毒性であり得るか、または別の所望する性質を与えられ得る。
ベクター自身が全組織中に分配されるので、ベクターにより産生された遺伝子
産物は、全組織中に分配され得る。あるいは、遺伝子産物の発現は、局在化され
得るが、バイスタンダー効果またはケモカインのような長期間の効果を有する分
子の産生のために、その効果はさらに遠くまで及ぼし得る。この遺伝子産物は、
RNA(例えば、アンチセンスRNAもしくはリボザイム)、またはタンパク質であり
得る。有毒な産物の例には、ガンシクロビルに関連するチミジンキナーゼが含ま
れるが、これに限らない。
広範な毒性効果が可能である。毒性効果は、直接的または間接的であり得る。
間接的効果は、プロドラッグを直接的に有毒な薬物に変換することから得られ得
る。例えば、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼは、ガンシクロビルをリン
酸化し、ヌクレオチドトキシンリン酸ガンシクロビルを産生する。この化合物は
、鎖ターミネーターおよびDNAポリメラーゼインヒビターとして機能し、従って
、細胞毒性がある。別の例は、5'-フルオロシトシンを抗ガン剤5'-フルオロウ
ラシルに変換するシトシンデアミナーゼの使用である。このような「自殺」遺伝
子の議論は、Blaese,R.M.ら、Eur.J.Cancer 30A:1190-1193(1994)を参照のこと
。
直接的な毒素は、ジフテリア毒(Brietmanら、Mol.Cell Biol.10:474-479(1
990))、シュードモナス毒、サイトカイン(Blankenstein,T.ら、J.Exp.Med.173
:1047-1052(1991)、Colombo,M.P.ら、J.Exp.Med.173:889-897(1991)、Leone,
A.ら、Cell 65:25-35(1991))、アンチセンスRNAおよびリボザイム(Zaia,J.A.
ら、Ann.N.Y.Acad.Sci.660:95-106(1992))、腫瘍予防接種遺伝子、お
よびリボザイムをコードするDNAを含むが、この限りではない。
本発明に従って、因子(このような因子の発現によって標的組織または腫瘍細
胞の増殖の阻害、妨害、または破壊を提供し得る)は、ネガティブ選択性マーカ
ー;すなわち、化学療法剤または相互作用因子と組み合わせて、標的細胞の増殖
を阻害、妨害、または破壊する物質であり得る。
従って、ネガティブ選択性マーカーの細胞の導入によって、相互作用因子は、
宿主に投与される。この相互作用因子は、ネガティブ選択性マーカーと相互作用
し、標的細胞の増殖を妨害、阻害、または破壊する。
使用され得るネガティブ選択性マーカーは、チミジンキナーゼおよびシトシン
デアミナーゼを含むが、これらに限定されない。1つの実施態様において、ネガ
ティブ選択性マーカーは、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ、サイトメガ
ロウイルスチミジンキナーゼ、および水痘帯状疱疹ウイルスチミジンキナーゼか
らなる群より選択されたウイルス性チミジンキナーゼである。ウイルス性チミジ
ンキナーゼを使用する場合、相互作用因子または化学療法剤は、好ましくは、ヌ
クレオシドアナログであり、例えば、ガンシクロビル、アシクロビル、および1
-2-デオキシ-2-フルオロ-β-D-アラビノフラノシル-5-ヨウドウラシル(FIAU)
からなる群より選択された因子である。このような相互作用因子は、基質として
、ウイルス性チミジンキナーゼにより効果的に利用され、そしてこのような相互
作用因子は、従って、ウイルス性チミジンキナーゼを発現する腫瘍細胞のDNA中
へ致命的に組み込まれ、その結果、標的細胞の死を招く。
シトシンデアミナーゼがネガティブ選択性マーカーである場合、好ましい相互
作用因子は、5-フルオロシトシンである。シトシンデアミナーゼは、5-フルオ
ロシトシンを高い細胞毒性を持つ5-フルオロウラシルに変換する。従って、シ
トシンデアミナーゼ遺伝子を発現する標的細胞は、5-フルオロシトシンを5-フ
ルオロウラシルに変換し、そして傷害する。
相互作用因子は、標的細胞の増殖を阻害、妨害、または破壊するのに効果的な
量で投与される。例えば、相互作用因子は、体重および患者に対する全毒性に基
づいた量で投与される。好ましくは、この相互作用因子は、例えば、静脈内投与
、非経口投与、腹膜内投与、または筋肉内投与のように、全身に投与される。
本発明のベクターがネガティブ選択性マーカーを誘導し、そしてインビボで組
織または腫瘍に投与される場合、「バイスタンダー効果」は、すなわち、ネガテ
ィブ選択性マーカーをコードする核酸配列を本来形質導入しなかった細胞が、相
互作用因子の投与によって傷害し得るという結果が得られ得る。本発明の範囲が
いかなる理論的な理由によって制限されることを意図しないが、形質導入された
細胞は、相互作用因子によって細胞外で作用するか、または隣接する非標的細胞
によって取り込まれるかのいずれかのネガティブ選択性マーカーの拡散可能な形
態を産生し得る。そして非標的細胞は、次いで相互作用因子の作用に感受可能に
なる。また、ネガティブ選択性マーカーおよび相互作用因子のうち1つまたは両
方が、標的細胞間に感染されることが可能である。
1つの実施態様において、腫瘍細胞の増殖の阻害、妨害、または破壊を提供す
る因子は、サイトカインである。1つの実施態様において、このサイトカインは
、インターロイキンである。用い得る他のサイトカインは、インターフェロンお
よびコロニー刺激因子(例えば、NM-CSF)を含む。インターロイキンは、インター
ロイキン-1、インターロイキン-1β、インターロイキン-2、インターロイキ
ン-3、インターロイキン-4、インターロイキン-5、インターロイキン-6、イ
ンターロイキン-7、インターロイキン-8、インターロイキン-9、インターロ
イキン-10、インターロイキン-11,およびインターロイキン-12を含むが、これ
らに限定されない。1つの実施態様において、インターロイキンは、インターロ
イキン-2である。
本発明の好ましい実施態様において、標的組織は、異常に増殖し、そして好ま
しくは、非腫瘍組織である。ベクターまたはウイルスは、全組織または全腫瘍塊
中に分配される。
全ての腫瘍は、本発明の方法による処置に適し得る。腫瘍のタイプは、造血系
、膵臓、神経系、肝臓、胃腸管、内分泌系、胆管、洞肺系、頭および首、軟組織
肉腫およびガン腫、皮膚、および生殖系などを含むが、これらに限定されない。
処置に好ましい腫瘍は、正常組織に比べて、比較的に高い分裂指数を有する腫瘍
である。好ましい腫瘍は、固形腫瘍であり、そして特に、脳の腫瘍であり、最も
好ましくは、神経膠腫である。
本方法はまた、他の異常な細胞(例えば、サイトメガロウイルス感染細胞、エ
プスタイン-バーウイルス感染細胞、およびヒトパピローマウイルス感染細胞)
を標的とするために使用され得る。サイトメガロウイルスは、種々の細胞に感染
し、多数の異なった型の疾病を引き起こす(Virology、第二版、Fields B.N.ら
編、Raven Press Ltd.(1990))。サイトメガロウイルスは、p53遺伝子を不活性
化し(Ohno,T.、Science 265:781-784(1994);Speirら、Science 265:391-394
(1994))、細胞の増殖の促進およびある場合有害な影響を導く。再狭窄は、本発
明の方法により処置可能な異常細胞病の1つの実施例である。血管形成の後、平
滑筋細胞は、サイトメガロウイルスに感染されやすくなるか、または再活性化さ
れやすくなる(Ohno,T.、Science 265:781-784(1994);Speirら、Science 265
:391-394(1994))。従って、細胞は増殖し、そして血管が形成された動脈の深
刻な遮断を引き起こす。p53がこれらの細胞内で不活性化されるので、これらの
細胞は、本発明の方法により選択的に傷害される。さらに、サイトメガロウイル
ス感染または不活性化の結果として、他の眼内の損傷に発展する。これらの細胞
は、本明細書中に記載の方法により選択的に除去され得る。最後に、エプスタイ
ン-バーウイルスは、バーキットリンパ腫を含む様々な疾病を引き起こす。この
ウイルスを含む細胞、またはこのウイルスがp53遺伝子を不活性化した細胞は、
標的となり得る。ヒトパピローマウイルスを含む細胞(全子宮頸ガン腫の85%、
頭および首のいくつかの他の腫瘍、ならびに多くのパピローマ)はまた、p53を
除去することが公知であり、そして本明細書中に記載の方法で処置され得る。
本発明のさらなる実施態様において、本発明のベクターは、正常細胞の特定の
サブセットにおける複製に使用され得る。例えば、胚形成のある段階で、複製欠
損を示す因子の存在は公知である。ベクター複製は、これらの細胞型における、
指示した遺伝子発現の目的のためにこのような細胞型で利用され得る。治療上の
介入は、DNA複製に有利な類似する条件が薬理的手法によって産生される場合、
正常な組織において達成可能である。
さらに、処置は、エクスビボであり得る。腫瘍細胞のエクスビボでの形質導入
は、現行のウイルス送達系の持つ多くの問題を克服する。組織は無菌的な条件で
採集し、機械的および/または酵素的に分離し、適切な培地において無菌的な条
件で培養する。エンドトキシンおよび細菌の汚染を有しないことが証明されたベ
クター調製物を、標準的なプロトコルを用いて無菌的条件下でインビトロで細胞
を形質導入するために用いる。培養中の細胞に対するウイルスの接近能力は、目
下インビボでの注入より優れ、そして本質的に全ての細胞中へのベクターウイル
ス配列の導入を可能にする。ウイルス含有培地の除去の後、細胞は直ちに患者に
戻すか、または機能または無菌性を試験する間に、培養において数日間維持され
る。
例えば、高コレステロール血症を有する患者の治療は、肝臓の一部を取り出し
、肝細胞を培養基に外植し、それらをレトロウイルスに曝露することによって、
遺伝的に改変し、そして肝臓へ直した細胞を再注入することにより、成功してい
る(Grossmanら、1994)。
ウイルスの形質導入はまた、実験医学の領域で潜在的な用途を有する。免疫系
機能の生物学的修飾因子(例えば、IL-2、Ifn-γ、GM-CSF、またはB7共刺激タン
パク質)の一過性の発現は、ガン患者の抗腫瘍応答を誘発する可能な手段として
提案されている。
さらに好ましい実施態様において、ウイルス複製を妨害し、その機能が存在し
ないの場合ウイルス複製が生じるという細胞機能は、腫瘍サプレッサー遺伝子機
能である。
本発明のさらに好ましい実施態様において、ベクター産物または遺伝子産物が
分配されている腫瘍細胞は、少なくとも機能的に活性なp53を欠き、そして好ま
しくは、Rbもまた欠く。しかし、本発明はまた、p107、p130、およびp300のよう
な他の腫瘍サプレッサー機能を欠く細胞を含む。公知の腫瘍サプレッサー遺伝子
について、Levine,A.J.、Ann.Rev.Biochem.62:623-651(1993)を参照のこと。
プロデューサー細胞
本発明のさらなる実施態様において、複製欠陥ベクターの細胞中での複製によ
り、その細胞中で産生されるビリオンを含有する細胞が提供される。ここで複製
欠陥は、ベクターの複製を阻害する機能における欠陥であるため、内因性の、天
然に存在する細胞機能によって相補されるか、または複製が起こる。従って、本
発明は、インビボにおける遺伝子治療用のさらなる使用のための複製欠陥組換え
ベクターの効果的かつ安全な産生のための「プロデューサー細胞」を提供する。
現在入手可能なプロデューサー細胞に対する主要な問題の1つは、そのような
細胞が、ゲノム中に、複製するベクターのために相補する機能を提供するウイル
ス配列を含むことである。その細胞がこのような配列を含むため、ゲノムのウイ
ルス配列とウイルスベクター配列との間に相同組換えが起こり得る。このような
組換えは、そのベクターまたはそのプロデューサー細胞中で産生されるウイルス
調製物に混入する野生型組換えウイルスを生じ得る。このような混入は、野生型
ウイルスまたは野生型ベクターが次に非標的組織中で複製し得、そしてそれによ
り非標的細胞を障害あるいは殺傷するため、望ましくはない。従って、本発明の
プロデューサー細胞の主要な利点の1つは、プロデューサー細胞が、細胞中で複
製されるベクターにおいて見出される配列に相同の、内因性のウイルス配列を含
まないことである。このような配列の欠如は、相同組換え、および非標的組織に
作用し得る野生型ウイルス組換え体の産生を回避する。
従って、本発明は、複製欠陥ベクターを細胞に導入する工程(ここでこの細胞
のゲノムは、ベクター配列を欠いている)、この細胞中でベクターを複製する工
程(ここで複製欠陥は天然に存在する内因性細胞機能または機能における欠陥)
、ビリオンを形成する工程、およびこの細胞からビリオンを精製する工程を包含
する、細胞中で複製欠陥ビリオンを構築、および産生するための方法を包含する
。本発明の好ましい実施態様において、内因性細胞機能は、腫瘍抑制遺伝子によ
り提供される。より好適な実施態様において、その腫瘍抑制機能は、p53およびR
b腫瘍抑制機能である。好ましいベクターは、DNAウイルスベクターであり、ヘル
ペスウイルスベクター、パピローマウイルスベクター、肝炎ウイルスベクター、
およびパポバウイルスベクターを含むが、これらに限定されない。本発明の好ま
しい実施態様において、ビリオンはアデノウイルスビリオンであり、そしてベク
ターはアデノウイルスベクターである。本発明のさらなる実施態様において、そ
の細胞は、少なくともp53、好ましくはまたRbについて機能的に不活性である腫
瘍細胞である。特定の開示された実施態様において、その腫瘍細胞はHep3bであ
る。
さらに好ましい実施態様においては、ベクターは、そのビリオンがまた遺伝子
産物をコードし、そしてベクターまたはビリオンが遺伝子治療に使用される場合
、その治療が異種遺伝子産物の発現により容易になるように、異種遺伝子産物を
コードする。あるいは、プロデューサー細胞は、ベクターにより自らコードされ
る異種遺伝子産物の産生のために使用され得る。ベクターがプロデューサー細胞
中で複製する場合、その遺伝子産物は、その遺伝子産物をコードする遺伝子の多
数のコピーから発現される。発現に続いて、その遺伝子産物は、従来の溶解手順
によりプロデューサー細胞から精製され得るか、あるいは公知の方法により異種
遺伝子に連結された適切な分泌シグナルによりプロデューサー細胞から分泌され
得る。アデノウイルスベクターによる細胞の形質導入が記載されている。リン酸
カルシウムによるプラスミドDNAの細胞へのトランスフェクション(Hanahan,D.
,J.Mol.Blol.166:577(1983))、リポフェクション(Feignerら、PNAS 84:74
13(1987))、またはエレクトロポレーション(Seed,B.,Nature 329:840())が
記載されている。DNA、RNAおよびウイルス精製手順は記載される(Grahamら、J
.Gen.Virol.36:59-72(1977))。
好ましいプロデューサー細胞は少なくともp53マイナスおよび好ましくはまたR
bマイナスである。細胞株が誘導され得る原発腫瘍または存在する細胞株が、こ
の表現型に対して試験され得る。あるいは、Rbおよびp53変異を含むことが以前
に示された任意の細胞株が使用され得る。外植され得、そして本発明のベクター
のためのプロデューサー細胞へと発展し得る原発腫瘍の例として、小細胞肺癌腫
、頸管癌腫、多くの脳の腫瘍、前立腺腫瘍、結腸腫瘍、肺腫瘍、肉腫、および膵
臓腫瘍が挙げられる。これらの変異を有する細胞株はまた、文献において公知で
あり、そしてプロデューサー細胞のための候補を提供する。
あるいは、その表現型がp53および/またはRbマイナスであろうがなかろうが、
任意の細胞が選択され得る。他の所望の性質に基づいて選択される細胞は、内因
性のp53および/またはRb機能が減少または消去されるように、操作され得る。例
えば、これらの遺伝子のいずれかまたは両方における変異は、外来の変異DNAを
用いる相同組換えにより導入され得る。あるいは、アンチセンスRNAが、p53/Rb
発現を阻止するために使用され得る。さらに機能的なタンパク質アンタゴニスト
(そのタンパク質のいずれかまたは両方に結合し、それにより不活性化する)が、
そのようなプロデューサー細胞中に付加的な外来発現ベクターによって導入され
得る。遺伝子の機能を不活性化するためのそのような組換え操作は、当業者には
周知である。
プロデューサー細胞株、特にアデノウイルスプロデューサー株に対する最終的
な目的は、野生型ベクターによる混入の可能性が最も少なく、最も高い産生量で
ベクターを産生することである。産生量は、感染された細胞の数に依存する。従
って、増殖および感染する可能性のある細胞が多いほど、発生する可能性のある
ウイルスが多くなる。従って、候補の細胞は、高い増殖速度を有し、そして高密
度まで増殖する。その細胞はまた、ウイルスが容易にその細胞を感染できるよう
に大量のウイルスレセプターを有すべきである。別の性質は、産生されたベクタ
ーの質である(すなわち、調製物は大量の非感染性ウイルス粒子を含有すべきで
ない)。従って、候補のプロデューサー細胞は、低い粒子−プラーク形成単位比
を有するであろう。例えば、小細胞肺癌腫は一般的に、懸濁培養において良好に
増殖することは公知であり、最も速く増殖する公知の癌の1つである(Gazden,A.
F.ら、Cancer Res.40:3502(1980))。さらに、肺細胞は、一般に、アデノウイル
ス感染の高い傾向を有し(Rosenfeld,A.F.ら、Cell 68:143(1992))、および今日
までの大多数の研究(Horowitzら、PNAS 87:2775(1990))が、Rbおよびp53変異を
有する。従って、これらの細胞はプロデューサー細胞株を誘導するための好まし
い細胞型である。一次外植片または公知の細胞株が使用され得る。
さらに、任意の細胞においてp53および/またはRbは、変異した遺伝子での相同
組換えにより(Williams,B.D.ら、Nature:Genetics 7:440(1994))、またはこれら
の遺伝子産物を不活化する遺伝子での細胞株の形質導入により(Yeiら、Nature 3
57:82-85(1992)、Crookら、Cell 67:547(1991)、およびDeCaprioら、Cell 54:27
5(1988))、変異されるかまたは機能的に不活化され得る。従って、このような得
られ得る細胞は複製欠陥組換えベクター、ウイルス、および遺伝子産物のための
プロデューサー細胞として作用し得る。
診断
腫瘍抑制遺伝子の機能の損失を決定するための方法を有することは、腫瘍を有
する患者の段階、予後、および可能な処置を決定するために重要である。特に、
腫瘍抑制遺伝子p53およびRbの機能の損失を決定するための方法が最も望まれる
。p53およびRbの状態は腫瘍の進行において主要な役割を果たすことが公知であ
る。さらに、目下のベクターが所与の患者の腫瘍において複製するかどうかを知
ることは重要である。治療において複製が有益であることが見出されれば、次に
、この治療に最も良好に応答し得るそれらの患者に対するスクリーニングが提供
される。複製が有害であることが見出されれば、そのとき処置に対して有害な応
答を有する患者の処置の防止のためのスクリーニングがある。現在、一般的に使
用される非生物学的アッセイは、発現スクリーニング、PCR、および配列決定の
みである。これらは、しばしば、偽陰性の結果をもたらし、時間を浪費し、費用
がかかり、そして最良の場合に遺伝子の状態についての情報を与えるのみで、そ
れらの生物学的機能についての情報は与えない。
従って、本発明のさらなる実施態様において、患者由来の腫瘍生検を取り出す
こと、組織培養へその生検を外植すること、その生検へ複製欠陥ベクターを導入
すること、および生検の細胞中でのベクター複製をアッセイすることにより、腫
瘍処置におけるベクターの有用性をアッセイするための方法が提供される。本発
明の好ましい実施態様において、ベクターはアデノウイルスベクターである。し
かし、他のベクターが、本明細書中に開示されるように、本発明において使用さ
れ得る。
従って、本発明は、腫瘍抑制遺伝子ならびに特にp53およびRbの存在下でのベ
クターの複製を可能とする相補機能に対して、あるいはウイルスベクターの複製
を妨害する機能の欠如および特に腫瘍抑制機能の欠如に対して、原発腫瘍をスク
リーニングするための方法を提供する。従って、その測定は、その腫瘍から腫瘍
生検を取り出す工程、その生検を外植する工程、その生検の細胞中に複製欠陥ベ
クターを導入する工程、およびその細胞内でのベクターの複製をアッセイする工
程により行われる。特に、外植した腫瘍生検中での複製をアッセイすることによ
り、機能的に不活化したp53およびRbに対して、腫瘍をスクリーニングするため
の方法が提供される。しかし、このような診断方法は、腫瘍のスクリーニングの
ためだけでなく、そのような相補機能が存在し得るか、または抑制機能が欠如し
得るあらゆる異常組織または正常組織をスクリーニングするために、有用である
ことが理解されるべきである。
細胞へのベクターの導入
培養物中の細胞、ならびに動物またはヒト患者の細胞および組織へベクターを
導入するための、種々の方法が開発されている。ベクターを哺乳動物細胞および
他の動物細胞に導入する方法には、リン酸カルシウムトランスフェクション、DE
AE−デキストラン技術、マイクロインジェクション、リポソーム媒介技術、カチ
オン性脂質ベース技術、ポリブレンを使用するトランスフェクション、プロトプ
ラスト融合技術、エレクトロポレーションなどが挙げられる。これらの技術は、
当業者に周知であり、多くの容易に入手可能な刊行物に記載され、そして広範に
概説されている。その技術のいくつかは、Transcription and Translation、A P
ractical Approach、Hames,B.D.およびHiggins,S.J.編、IRL Press,Oxford
(1984)(本明細書中に、その全体が参考として援用される)およびMolecular Cl
oning、第2版、Maniatisら、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spr
ing Harbor、New York(1989)(本明細書中に、その全体が参考として援用される
)に概説されている。
これらの技術のいくつかは、動物およびヒト患者における組織および細胞にベ
クターを導入するために使用されている。これらの中で主要なものは、全身投与
およびインサイチュでの部位への直接注射である。投与の経路およびベクターに
依存して、その技術は、裸のDNA、カチオン性脂質と複合体化されたDNA、ウイル
スベクター、およびベクタープロデューサー細胞株を、正常および異常な細胞お
よび組織に、一般的に標的部位への直接注射により導入するために使用されてい
る。
ポリヌクレオチドベクター、ウイルスベクター、および他のベクターを培養物
中の、動物内の、および患者内の細胞に導入するための前述の技術は、開発、試
験、および産生、ならびに本発明に従うベクターの使用のために使用され得る。
例えば、これらの方法により導入されるベクターを含有する細胞は、ベクターを
産生するために使用され得る。さらに、ベクターを含有する細胞は、プロデュー
サー細胞として使用され得、そしてインサイチュにおいてベクターを産生するた
めに、動物の細胞または組織に導入され得る。
DNAおよびウイルス複製のアッセイ
ポリヌクレオチドベクター、ウイルスベクター、または他のベクターの複製は
、周知の技術によりアッセイされ得る。細胞中のベクターの複製についてのアッ
セイは、一般的に、ポリヌクレオチド、ビリオンまたは感染性ウイルスを検出す
る工程を含む。この目的のために使用され得る種々の周知の方法は、細胞におけ
る所与の期間、ポリヌクレオチドに挿入された、標識基質の量を決定する工程を
含む。
複製がDNAポリヌクレオチドに関与する場合には、3H-チミジンが、しばしば、
標識基質として使用される。この場合、複製の量は、大量の細胞性DNAからベク
ターのDNAを分離する工程、およびベクターDNAに特異的に取り込まれたトリチウ
ムの量を測定する工程により決定される。
ポリヌクレオチドベクターの複製はまた、ポリヌクレオチドを放出するために
、細胞を溶解または透過性にする工程、次いでそのポリヌクレオチドを単離する
工程、および回収されるDNAまたはRNAを直接定量する工程により検出され得る。
ポリヌクレオチドの複製はまた、そのアッセイポリヌクレオチドに特異的なプラ
イマーを用いる定量的PCRにより検出され得る。
ビリオンは、当該分野に周知のEM計測技術、そのビリオンを単離する工程なら
びにタンパク質および核酸含量を決定する工程、ならびに、ウイルスゲノムポリ
ヌクレオチドまたはビリオンタンパク質を標識する工程、ならびにポリヌクレオ
チド量またはタンパク質量からビリオンの量を決定する工程によりアッセイされ
得る。
ビリオン全てが生育可能ではない場合があること、および感染力が重要である
場合、感染力価は細胞変性効果またはプラークアッセイにより決定され得ること
は周知である。
これらの任意の周知技術は、とりわけ、本発明に従い、細胞または組織におけ
るベクターの複製をアッセイするために使用され得る。それ以外のいくつかのベ
クターおよびそれ以外のいくつかの細胞または組織に対しては異なった技術がよ
り適していることが認識される。
ベクター
本発明の好ましいベクターは、アデノウイルスベクターである。アデノウイル
スは、宿主ゲノムに組み込まれることはまれであり、従って有益な異種遺伝子を
発現させるために使用される場合、宿主遺伝子変異を引き起こさないので、特に
好ましい。本発明の好ましい実施態様において、アデノウイルスベクターは、E1
領域において欠失される。
アデノウイルスE1b 55kDaタンパク質は、p53媒介アポトーシスの崩壊(総説に
ついてはMoran,E.,FASEB J.7:880-885(1933))および後期ウイルスmRNAの蓄積を
促進するAd E4 34kDaタンパク質との協同的相互作用の両方において機能する(Om
ellesおよびShenk,J.Virol.65:425-439(1991)。p53ネガティブ(機能傷害(例え
ば、他の細胞機能による不活化)またはp53の欠失)細胞を生じるE1欠失アデノ
ウイルスDNA複製は、まれに感染性ウイルスの産生を伴う(図5)。この現象は
、E1b 55kDa-E4 34kDaの相互作用が存在しないことに関連し得る。
Add1312(JonesおよびShenk,Cell 17:683-689(1979)はE1aについて欠失される
が、機能的なE1b転写単位ならびに野生型E4領域を保持する。Add1312におけるE1
b領域の変異誘発、それに続く、p53をコードする遺伝子について欠失または機能
傷害にされたことが知られる細胞(例えば、C-33、子宮頸(cervica)腫瘍細胞株
)における選択は、E4 34kDaとの必須の相互作用を保持するが、p53相互作用能を
欠失するウイルスE1b 55kD変異体の選択を可能にするはずである。
従って、さらに好ましい実施態様において、本発明の方法は、p53欠陥細胞に
おけるDNAを複製する能力を保持し、そして後期ウイルスRNAのさらに効率的なプ
ロセッシングおよび輸送により増加したビリオン産生を示すベクターを使用する
。p53ネガティブ細胞におけるE1a-E1b欠失ベクタービリオン産生の工程はブロッ
クされるようである。このクラスのベクターは、ベクターウイルスDNAまたはビ
リ
オンのいずれかの複製によるビリオンの複製が、正常p53機能を有する細胞にお
いて不可能なままであるか、または著しく低下した場合であっても、複製するビ
リオンとしてp53ネガティブ(欠失および/または機能傷害)細胞間に伝播し得る
。
1つの実施態様において、E1aおよびE1bの両方が欠失される。別の実施態様に
おいて、E1a領域のみがE1領域から欠失され:E1b領域は完全なままである。後者
の場合において、細胞の相補機能は、E1aの欠陥を代償する因子によりウイルス
複製を続行させ得、そしてウイルスE1b領域は、後期ウイルス産物ならびにウイ
ルスパッケージングおよび放出のために使用される細胞のプロセッシングおよび
輸送機能を可能にし得る。このE1b機能は、p53マイナス(すなわち、機能的に活
性なp53を含まない)である細胞において特に望ましい。さらにE1b機能の1つま
たは両方のいずれかは、E1aベクターに含まれ得るか、または欠失され得る。
明確に開示された実施態様において、本発明の方法において用いるベクターは
、AV1.TK1ベクターである。ベクター構築の詳細な記載については、本明細書中
の実施例1を参照のこと。AV1.TK1の生成は、チミジンキナーゼ遺伝子がLacZ遺
伝子の代わりに挿入されることを除いて、AV1.LacZ4の生成と同一である。この
(ならびに、AV1.LacZ4)ベクターは、Herpes simplexウイルス1型チミジンキナ
ーゼ遺伝子(または核局在化シグナル(GenBank J01636)を含むβ-gal遺伝子)を
Ad5の左ITRおよびAd5に相同な別の領域を含むアデノウイルスシャトルプラスミ
ドpAVS6上のラウス肉腫ウイルスプロモーターに作動可能に連結することにより
構築される(Trapnell,B.ら、Adv.Drug Deliv.Rev 12:185-189(1994))。プラスミ
ドの線状化の後、欠失されたE3領域を有するAd5の複製不全サブゲノムフラグメ
ント(AddI327)(Yei,S.ら、Human Gene Therapy 5:731-744(1994))とともに、293
細胞に同時トランスフェクトされる。相同的組換えにおいて組換えウイルスが生
成される。次いで、ウイルスは293細胞でプラーク精製され、そして以前に記載
されたように精製される(Graham,F.L.ら、J.Gen.Virol.36:59-72(1977))。AddI3
12は、以前に記載されたように生成されたE1a欠失変異体である(Shenkら、Cold
Spring Harbor Symp.Quant.Biol.44:367-375())。
別の実施態様において、E2〜E4のような複製に必須な任意の他の遺伝子におい
て欠失を有するアデノウイルスベクターが提供される。
別の実施態様において、ベクターは別のDNA腫瘍ウイルスに由来する。このよ
うなウイルスは、一般的に、ヘルペスウイルス(例えば、Epstein-Barrウイルス
、サイトメガロウイルス、Herpes zoster、およびHerpes simplex)、パピローマ
ウイルス、パポバウイルス(例えば、ポリオーマおよびSV40)ならびに肝炎ウイル
スを含むが、これらに限定されない。別のウイルスは、好ましくは、Rbまたはp5
3を不活化するウイルスの群より選択される。全ての血清型が含まれる。共通の
特性は、DNA複製を妨害するか、またはアポトーシスを促進する細胞性機能を不
活化するウイルス遺伝子である。最も好ましくは、ウイルス遺伝子は、アデノウ
イルスおよびその血清型で見出されたE1aおよびE1b遺伝子と実質的に同一の機能
を果たす。遺伝子の例には、ヒトパピローマウイルスのE6およびE7領域、SV40の
16および18T抗原、ならびにCMV即時型初期遺伝子を含むが、これらに限定されな
い。細胞、特にヒト細胞に感染するウイルスはいずれも、欠失された特定の部分
または完全なE1領域対応物のいずれかを有し得、従って本明細書中に記載された
全ての方法において使用され得た。この方法において、アデノウイルス欠失変異
体が使用され得た。
本発明はさらに、E1a,E1b 19kDa遺伝子、またはE1b 55kDa遺伝子のいずれか
、あるいはそれらのいくつかの組合せが欠失した、複製に必要とされるアデノウ
イルスの必須の領域のみを有するプラスミドおよびベクターの使用に関する。任
意の構造遺伝子を欠損したこのようなプラスミドは、E1欠失アデノウイルスベク
ターが受けるようなDNA複製を受け得る。
本明細書中に記載されたベクターは、標準的な分子生物学的技術を用いて構築
され得る。このようなベクターの構築のための標準的な技術は、当業者には周知
であり、そしてSambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spr
ing Harbor,New York(1989)または広く入手可能な組換えDNA技術に関する任意の
無数の研究マニュアルのような参考文献において見出され得る。種々のストラテ
ジーが、DNAフラグメントの連結のために利用可能であり、その選択はDNAフラグ
メントの末端特性に依存し、そして当業者により容易に決定され得る。
アデノウイルスベクターは、改変アデノウイルスベクターであり得る。ここで
、このアデノウイルスゲノムの少なくとも一部は、機能的なウイルス産物が産生
さ
れないように欠失されるか、または変異されている(Shenkら、Curr.Top.Microbi
ol.Immunol.111(3):1-39(1984))。
1つの実施態様において、ベクターはアデノウイルス5’ITR;アデノウイル
ス3’ITR;アデノウイルスキャプシド形成シグナル;異種遺伝子を含むDNA配列
を含む。ベクターは、少なくともアデノウイルスE1およびE3 DNA配列の大部分を
含まないが、E2およびE4 DNA配列、ならびにアデノウイルス主要後期プロモータ
ーによりプロモートされるアデノウイルスタンパク質をコードするDNA配列を必
ずしも含まないわけではない。
さらに別の実施態様において、72キロダルトン結合タンパク質をコードするE2
a領域における遺伝子は、温度感受性タンパク質を産生するように変異させられ
る。このタンパク質は、ウイルス粒子が産生される温度である32℃では活性であ
るが、動物またはヒト宿主の温度である37℃では不活性である。この温度感受性
変異体は、Ensingerら、J.Virology 10:328-339(1972);Van der Vlietら、J.Vir
ology 15:348-354(1975);およびFriefeldら、Virology 124:380-389(1983);Engl
ehardtら、Proc.Nat.Acad.Sci.91:6196-6200(1994);Yangら、Nature:Genetics 7
:362-369(1994)に記載されている。
好ましい実施態様において、このようなベクターは、標準技術に従って5’末
端で始まる「臨界左末端因子」を含むシャトルプラスミドの構築により最初に構
築される。これは、アデノウイルス5'ITR、アデノウイルスキャプシド形成シグ
ナル、およびE1aエンハンサー配列;プロモーター(アデノウイルスプロモータ
ーまたは外来プロモーターであり得る);3部からなるリーダー配列、マルチク
ローニング部位(これは本明細書中に記載されたようなものであり得る);ポリ
Aシグナル;ならびにアデノウイルスゲノムのセグメントに対応するDNAセグメ
ントを含む。このようなDNAセグメントは、改変または変異アデノウイルスを用
いる相同的組換えのための基質として働く。プラスミドはまた、選択可能なマー
カーおよび複製起点を含み得る。複製起点は、細菌の複製起点であり得る。この
ようなシャトルプラスミドの代表的な例は、本明細書中で考察されているような
pAVS6を含む。Trapnell,Bら、Adv.Drug Deliv.Rev 12:185-189(1994)を参照の
こと。次いで、異種の遺伝子を含む所望のDNA配列は、プラスミドベクターを生
成するためにマルチクローニング部位に挿入され得る。
次いで、この構築物を用いてアデノウイルスベクターを生成し得る。次いで、
相同的組換えは、改変または変異アデノウイルスを用いて達成され得る。このよ
うなウイルスでは、少なくともE1およびE3アデノウイルスDNA配列の大部分は、
欠失されている。このような相同的組換えは、CaPO4沈澱によるヘルパー細胞株
へのプラスミドベクターおよび改変アデノウイルスの同時トランスフェクション
により達成され得る。
このような相同的組換えにより、アデノウイルス5'ITR、アデノウイルスキャ
プシド形成シグナル;E1aエンハンサー配列;プロモーター;3部からなるリー
ダー配列;異種遺伝子を含むDNA配列;ポリAシグナル;少なくともE1およびE3
アデノウイルスDNAの大部分を含まないアデノウイルスDNA;およびアデノウイル
ス3’ITRを含むベクターが形成される。次いで、このベクターは、ウイルス複
製のためのヘルパー細胞株にトランスフェクトされ、そして感染性ウイルス粒子
が産生され得る。トランスフェクションは、エレクトロポレーション、リン酸カ
ルシウム沈澱、マイクロインジェクションにより、またはプロテオリポソームを
通して行われ得る。
ベクターは、異質遺伝子を含むDNA配列のクローニングベクターへの挿入を容
易にするためのマルチクローニング部位を含み得る。一般に、マルチクローニン
グ部位は、「まれな」制限酵素部位;すなわち10,000塩基対毎に約1つから100,
000塩基対毎に約1つまでの頻度で真核生物遺伝子に見出される部位を含む。従
って、適切なベクターは、マルチクローニング部位中の適切な制限部位で、標準
的な技術によりクローニングベクターを切断し、次いで、異種遺伝子を含むDNA
配列をクローニングベクター中に連結することにより形成される。
異種遺伝子産物をコードするDNA配列は、適切なプロモーターの制御下に位置
される。使用され得る適切なプロモーターは、アデノウイルスプロモーター(例
えば、アデノウイルス主要後期プロモーター)、または異種プロモーター(例え
ば、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター);ラウス肉腫ウイルスプロモー
ター、誘導性プロモーター(例えば、MMTVプロモーター、メタロチオネインプロ
モーター);熱ショックプロモーター;アルブミンプロモーター;ApoEプロモー
ター;およびApoAIプロモーターを含むが、これらに限定されない。しかし、本
発明の範囲は、特定の外来遺伝子またはプロモーターに制限されないことを理解
されるべきである。
1つの実施態様において、アデノウイルスは、本明細書中に含まれる教示とと
もに、Ketnerら、Proc.Nat.Acad.Sci.91:6186-6190(1994)に記載された方法に従
って、アデノウイルスゲノムを含む酵母人工染色体(または、YAC)を用いるこ
とにより構築され得る。この実施態様において、アデノウイルス酵母人工染色体
は、アデノウイルスDNAとアデノウイルス左および右ゲノム末端セグメントを保
有する酵母人工染色体プラスミドベクターとの間のインビボ相同的組換えにより
産生される。次いで、異種遺伝子を含むDNA配列は、アデノウイルスDNA中にクロ
ーン化され得る。次いで、改変アデノウイルスゲノムは、感染性アデノウイルス
粒子を産生するのに用いられるためにアデノウイルス酵母人工染色体から切り出
される。
次いで、感染性ウイルス粒子は、宿主にインビボで投与され得る。宿主は、哺
乳動物、非ヒト霊長類、およびヒト宿主を含む動物宿主であり得る。
ウイルス粒子は、患者への投与に適切な薬学的に受容可能なキャリアーと組み
合わせて投与され得る。キャリアーは、液体キャリアー(例えば、生理的食塩水
)、または固体キャリアー(例えば、マイクロキャリアービーズ)であり得る。
従って、一般的な用語で本発明を本明細書中で記載した。以下の実施例は、本
発明を例示するために示される。
実施例1
pAVS6の構築
ポリメラーゼ連鎖反応に基づいたクローニング技術を含む標準的なクローニン
グ技術を使用して、いくつかの工程で、アデノウイルス構築物シャトルプラスミ
ドpAVS6を構築した。まず、2913bpのBglII、HindIIIフラグメントをAdd1327から
取り出し、平滑フラグメントとして、pBluescript II KS(Stratagene,La Joll
a,CA)のXhoI部位中に挿入した。Add1327(Thimmappayaら、Cell 31:543-551(
1983)本明細書中に参考として援用される)は、アデノウイルス5ゲノムの塩
基、28591〜30474(またはマップ単位78.5〜84.7)を含むXbaIフラグメント(そ
れはE3領域に位置する)が欠失していることを除いて、アデノウイルス5と同一
である。完全なアデノウイルス5ゲノムは、Genbankに登録番号#M73260として登
録されている(本明細書中に参考として援用される)。そして、このウイルスは
、American Type Culture Collection,Rockville,Maryland,U.S.A.から、登
録番号VR-5として入手可能である。
Add1327 をアデノウイルス5(Ad5)から通常の方法で構築した。この方法は
既に、JonesおよびShenk,Cell 13:181-188(1978)に記載されているように、
以下に簡単にまとめる。Ad5 DNAをビリオンのタンパク質加水分解消化によって
単離し、そしてXbaI制限エンドヌクレアーゼで部分的に切断する。XbaIフラグメ
ントを次いで、フラグメントの混合物として連結して、再度組み立てる。これは
、配列28591bp〜30474bpを削除していることを除いて、Ad5と類似した配列を有
するいくつかの連結されたゲノムを生じる。このDNAを、次いで適切な細胞(例え
ば、KB細胞、HeLa細胞、293細胞)中にトランスフェクトし、そしてソフトアガー
で覆い、プラークを形成させる。次いで、個々のプラークを単離し、増幅し、そ
して、1878bpのE3領域のXbaIフラグメント欠如についてスクリーニングする。
このフラグメントの方向性において、BglII部位はpKSIIのT7RNAポリメラーゼ
部位の最も近くにあり、そしてHindIII部位はPbluescript II KSのT3 RNAポリメ
ラーゼ部位の最も近くにあった。このプラスミドをpHRと命名した。
第2に、ITR、キャプシド化シグナル、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、ア
デノウイルス三部分(tripartite)リーダー(TPL)配列および連結配列をブロッ
クとして、PCR増幅法を使用して組み立てた。ITRおよびキャプシド化シグナル(A
dd1327の配列1-392[Ad5由来の配列と同一、GenBank 登録番号 #M73260)、本明
細書中に参考として援用される)を、NotIまたはAscI制限酵素部位を含むプライ
マーを使用して、Add1327から一緒に増幅した(増幅1)。AscI部位およびSfiI部
位を含むプライマーを使用して、ラウス肉腫ウイルスLTRプロモーターをプラス
ミドpRC/ラウス肉腫ウイルス(配列209〜605、Invitrogen,San Diego,CA)から
増幅した(増幅2)。NotIプライマーおよびSfiIプライマーのみを有する「重複
」PCR法(増幅3)(Hortonら、Biotechniques 8:528-535(1990))を使用して、
増幅1および2からのDNA産物を結合した。反応1および2からの各初期DNA増幅
産物のAscIを含む末端の間で相補的に、これらの2つの断片を増幅中に結合させ
た。次いで、SfiIおよびXbaI部位をそれぞれ含むプライマーを使用して、Add132
7で、16時間、感染した293細胞(ATCC登録番号CRL 1573)から単離したmRNAから作
成したcDNAから、TPLを増幅した(増幅4)(Add1327の配列6049〜9730)〔Ad5由
来の類似した配列と同一、Genbank登録番号#M73260〕)。次いで、増幅反応3お
よび4からのDNAフラグメントを、NotIおよびXbaIプライマーを使用したPCR(増
幅5)を使用して結合し、従って完全な遺伝子ブロックを作出した。
第3に、次いで、ITR−キャプシド化シグナル−TPLフラグメントを精製し、No
tIおよびXbaIで切断し、そしてNotI、XbaIで切断したPHRプラスミド中に挿入し
た。このプラスミドをpAvS6Aと命名し、そしてその方向性において、このフラグ
メントのNotI部位はT7 RNAポリメラーゼ部位に隣接していた。
第4に、HpaI-BamHIフラグメントとして、SV40 DNAからSV40初期ポリAシグナ
ルを取り出し、T4 DNAポリメラーゼで処理し、そしてプラスミドpAVS6aのSalI部
位中へ挿入して、pAVS6を作出した。
Av1LacZ4の構築
核を標的とするB-ガラクトシダーゼ酵素を発現する、組換え複製欠陥アデノウ
イルスベクターAv1LacZ4を2工程で構築した。まず、SV40 T抗原のアミノ酸1〜
4をコードするDNA、次いで、SV40 T抗原のアミノ酸127〜147(核標的ペプチド、
Pro-Lys-Lys-Lys-Arg-Lys-Valを含む)をコードするDNA、次いで、E.coli B-ガラ
クトシダーゼのアミノ酸6〜1021をコードするDNAからなる転写単位を、通常のク
ローニング技術およびPCR技術を用いて構築し、そしてpAVS6のEcoRV部位中へ配
置させて、pAVS6-nlacZを生じた。
感染性の複製欠陥Av1LacZ4を相同組換えにより、293細胞中で組み立てた。こ
れを完成するために、プラスミドpAVS6-NlaczをKpnIで切断して、線状化(lincar
ize)した。アデノウイルスゲノムDNAを、精製したAdd1327ウイルスからHirt抽出
により単離し、ClaIで切断し、そしてアガロース電気泳動により大きな(約35kb)
フラグメントを単離し、そして精製した。全第1世代アデノウイルスベクター
の骨格として、ClaIフラグメントを使用した。それ由来のベクターは、AVIとし
て公知である。
線状化プラスミドDNA(pAVS6n-LacZ)5μgおよびAdd1327の大きなClaIフラグ
メント2.5μgを混合し、そしてリン酸カルシウム沈澱法により、293細胞のディ
ッシュ中へコトランスフェクトした。16時間後、この細胞を 2% Sea Plaqueア
ガーと2×培地との1:1混合物で覆い、そしてプラークが現れるまで(約1〜2
週間)、加湿した37℃、5%CO2/空気環境下でインキュベートした。プラークを
選択し、そして凍結および融解を3回繰り返すことにより、細胞内ベクターを培
地中へ放出した。溶解物から遠心分離によって細胞性残渣を取り除いた。第1回
目の293細胞の感染、ベクターの放出および清澄化のために、プラーク(300μl中
)を下記のように使用した。
100μlのプラーク溶解物プラス400μlのIMEM-2(IMEM+2%FBS、2mMグルタ
ミン(Bio Whittaker 046764))+1.5mlのIMEM-10(2×グルタミン+10%容量/容
量のウシ胎児血清+2mMグルタミンプラス(Bio Whittaker 08063A)を含む、改良
された最小必須培地(Eagle's))を用いて、35mmディッシュの293細胞を感染し
、そして細胞変性効果、丸い形態および「葡萄状」クラスターが見られるまで、
約3日間、37℃でインキュベートした。細胞および上清を集め、そしてCVL-Aと
命名した。CVL-Aの凍結および融解を3回繰り返して、Av1LacZ4ベクター(図10に
示される構築図)を放出した。次いで、CVL-A 0.5ml+IMEM-10 3mlを用いて、60m
mディッシュの293細胞を感染し、そして上記のように、約3日間インキュベート
した。次いでこの感染物からの細胞および上清を同じ様式で、凍結/融解を3回
繰り返すことによりプロセスした。Av1LacZ4もまた、Yeiら、Human Gene Therap
y 5:731-744(1994)、Trapnell、Advanced Drug Delivery Rev.12:185-199(1993
)およびSmithら、Nature:Genetics 5:397-402(1993)に記載されている。これ
らは参考として、本明細書中に援用される。
実施例2
E1細胞株中でのE1欠失アデノウイルスの細胞変性効果
ガンシクロビルとともにアデノウイルスチミジンキナーゼ構築物を使用して、
腫瘍傷害のインビトロおよびインビボモデルの潜在的候補を同定するために、腫
瘍細胞株の調査に着手した。ヒト神経膠腫細胞株U87、U373、およびU118、肝細
胞性ガン細胞株Hep 3B およびY79、ヒト網膜芽腫細胞株を含む、多くの細胞株を
試験した。最も顕著な効果はHep 3Bで生じた。この細胞株は、アデノウイルス曝
露(exposure)に対して、極めて感受性であることを示し、低濃度のインプットウ
イルスでさえ、顕著な細胞変性効果を示した。
ウイルス複製が細胞変性効果を生じているとの仮説を試験するために、細胞を
種々の量のウイルスに曝露し、そして細胞変性効果の発生を観察した。
10%ウシ胎児血清を含むRPMI 1640培地中で、6ウェルディッシュの1ウェル
当たり、100万個の細胞で、Hep3B 細胞をプレーティングした。AV.lacZ4 ウイル
ス(6×1010プラーク形成単位(pfu)/ml)を5000、1600、530、175、55、18、6、
2、0.2、および0.06pfu/細胞の割合で添加して、Hep3B細胞の形質導入を実施し
た。非感染細胞をコントロールとして使用した。15日の期間、細胞変性効果につ
いて、細胞を観察した。8日目で細胞変性効果を示さない細胞をトリプシン処理
し、そして1ウェル当たり、5×105個の細胞を再度プレーティングし、そしてさ
らに7日間、観察した。細胞変性効果とは、核の転置、核密度、細胞膜の鈍鋸歯
形成(crenulation)、ならびに付着性および/または細胞−細胞接触の消失を伴
なう細胞球状化へと進行する、細胞質における液胞形成である。その結果を表1
に示す。
結果は、ウイルス複製と一致した形態学的変化を示す。そのような変化は野性
型アデノウイルスで感染した細胞、あるいは特にトランスに相補する(trans-com
plement)変異アデノウイルス(293)に構築された細胞中で生じることが既に知
られていたに過ぎない。
変異体AV.lacZ中にE1領域遺伝子がなければ、このウイルスは複製不能になっ
たはずである。それにも関わらず、複製の証拠が存在していた。この結果は、腫
瘍細胞がE1欠陥を相補するウイルスDNA配列を含むか、あるいはこの細胞がE1遺
伝子またはE1ホモログ(例えば、HPV16 または18 E6/E7、CMV即時型初期遺伝子、
SV40 T抗原)の非存在下で、ウイルス複製を可能にする環境を作成するに十分な
変異を蓄積したことのいずれかを示している。
アデノウイルスE1遺伝子の機能は、細胞性p53およびRb遺伝子産物の特異的不
活性化を含むので、この結果はこれらの細胞遺伝子の機能における欠陥が複製を
可能とすることを示唆している。
実施例3
AV.TK1に感染したAV1複製の可能なHuH7細胞における
チミジンキナーゼ活性の発現
AV1ベクターの複製を維持する細胞中で、AV1ベクターから発現した遺伝子産物
の活性を定量するために、ヒト肝ガン細胞株HuH7をAV1.TK1で感染した。このベ
クターは、ベクター中のラウス肉腫ウイルスプロモーターからチミジンキナーゼ
活性を発現する。先の研究(Culverら、Science 256:1550-1557)が、チミジンキ
ナーゼ活性がガンシクロビルおよびバイスタンダー効果(ガンシクロビルの存在
下で、チミジンキナーゼを発現し、チミジンキナーゼを発現しない隣接細胞を傷
害する細胞の能力)による細胞傷害と明確に相関していることを証明しているの
で、このベクターを選択した。本明細書中に示されたように、HuH7細胞はAV1ベ
クターの複製を維持するので、この細胞を選択した。
各チミジンキナーゼ活性測定のために、チミジンキナーゼ活性のネガティブコ
ントロールとしてMOI 100 でAV1.LacZ4を用いて、またはMOI 10および100でAV1.
TK1を用いて、1×107個の細胞を感染した。感染は、以前に記載(Graham,F.L.ら
、
J.Gen.Virol.36:56-72(1977))されたように実施した。NIH 3T3チミジンキ
ナーゼ細胞もまた回収し、そしてネガティブコントロールとして使用した。PA31
7/G1TK1SvNa#7は、多量のチミジンキナーゼを産生する細胞株である。この株は
、レトロウイルスのチミジンキナーゼ遺伝子の多数の内在性コピーからチミジン
キナーゼを発現するように、既に最適化された。チミジンキナーゼ活性のポジテ
ィブコントロールとして、この株を使用した。先に記載したように、チミジンキ
ナーゼ活性について、試料からの等量のタンパク質を分析した。チミジンキナー
ゼ活性を、感染後2日目に測定した。
結果を図1に示す。NIH 3T3チミジンキナーゼ細胞のみ、またはMOI 100でAV1.
LacZ4を用いて感染したHuH7細胞では、チミジンキナーゼ活性は見出されなかっ
た。PA317/G1TK1SVNa#7細胞には、高レベルのチミジンキナーゼ活性が存在した
。MOI 10でAV1.TK1を用いて感染したHuH7細胞は、有意な量のチミジンキナーゼ
活性を示した。しかし、MOI 100でAV1.TK1を用いて感染したHuH7細胞は、最適化
されたプロデューサー細胞株PA317/G1TK1SVNa#7よりも約3倍高いチミジンキナ
ーゼ活性、そしてAV1.TK1を用いて感染したHuH7細胞よりも、30倍高い活性を示
した。この結果は、AV1.TK1感染細胞中の高いチミジンキナーゼ活性は、AV1の複
製からのより高い遺伝子用量によることを示唆する。この結論は、HuH7細胞中の
チミジンキナーゼ活性がMOIの増加に伴い、指数関数的であるらしいとの観察に
基づく。つまり、30倍より高い活性は、MOI 10よりもMOI 100で感染した細胞に
見出された。もし、チミジンキナーゼ活性がMOIの増加に伴って一次的に(lincar
ly)増加したのであれば、AV1ベクターの複製を維持しないかもしれない他の細胞
株で示されたように(Cancer Gene Therapy 1:107-112(1994))、10倍の増加が
予想されたであろう。
チミジンキナーゼ活性のレベルは、また、チミジンキナーゼに特異的なモノク
ローナル抗体を使用した定量的なウエスタン分析によるタンパク質量に相関しす
ることを示した。アデノウイルスのDNA複製が、劇的な遺伝子用量の増強を導く
ことは、既にルシフェラーゼレポーター遺伝子を利用して証明されている(Mitta
l,S.K.ら、Virus Res.28(1):67-90(1994))。
AV1ベクターの細胞株特異的DNA 複製を示す代表的サザンブロット
E1欠失アデノウイルスベクターが、種々の腫瘍細胞株中で複製し得る可能性を
検討した。AV1.LacZ4ベクターで細胞株を感染した。時間経過にともなうアデノ
ウイルスDNA蓄積は、DNA複製を示す。
種々の細胞株の各々1×105個の細胞を6ウェルのディッシュ中にプレーティン
グした。セミコンフルエントな単層が24時間以内に形成された。24時間後、細胞
をAV1.LacZ4 E1欠失ベクター、または複製についてのポジティブコントロールと
しての野性型ウイルスおよびAdd1327のいずれかで、両者ともMOI 10で感染した
。感染を、図1に記載されるように実施した。単層をPBS 2mlで洗浄し、続いて
直ちに付着した細胞を標準的なトリプシン処理することにより、感染後4時間、
2日間および6日間で試料を回収した。細胞を3000×gでの遠心分離により集め
、残存する細胞ペレットを回収した。この細胞ペレットを一度、PBS 1mlに再懸
濁し、そして再度スピンした。ペレットをドライアイス上で凍結し、そしてDNA
を単離するまで-70℃で貯蔵した。DNAを以前に記載されたように(Molecular Clo
ning: A Laboratory Manual、第2版、Sambrook,J.ら編、Cold Spring Harbor
Laboratory Press(1989))、凍結細胞ペレットから単離した。各ウェルから単
離した全DNAの3分の1を、HindIIIで完全に消化し、そして1%アガロースゲル
上で電気泳動した。ゲルを、以前に記載されたように(Molecular Cloning: A La
boratory Manual、第2版、Sambrook,J.ら編、Cold Spring Harbor Laboratory
Press(1989))、Nytran上に移し、プレハイブリダイズし、そしてハイブリダ
イズした。プローブは、アデノウイルスのE2b領域に対して特異的である、PCRで
生成し、かつ精製された400bpのプローブ(これは、アデノウイルスの特定のHind
III制限フラグメントにハイブリダイズするはずである)、およびE1a領域に対し
て特異的である、PCRで生成し、かつ精製された200bpのプローブ(これは、アデ
ノウイルスの特定のHindIIIフラグメントにハイブリダイズするはずである)であ
った。E1aプローブはAV1ベクター中でこの領域が欠失しているので、AV1 DNAの
みにハイブリダイズするはずであるが、E2bプローブはAV1 DNAおよびAdd1327 DN
Aの両方へハイブリダイズするはずである。
結果を図2に示す。この結果は、野性型ウイルスDNAが、実質的に試験した全
ての細胞株中で増加したことを示す。AV1.LacZ4ベクターは293細胞中で複製した
。293細胞は現在最も使用されているアデノウイルスベクター(本明細書中のAV1
ベクターを含む)中で欠失したE1領域を有し、かつ発現するので、この結果は予
期されない。しかし、AV1ベクターのDNA複製は、293細胞中で見出されたレベル
と等しい程度で、Hep3B細胞中で観察された。DNA複製はまた、HuH7細胞中および
より長い曝露では、A549細胞中で観察された。SW480 細胞では、MOI 10のAV1.La
cZ4ベクターで明らかな複製はなかったが、SW480細胞中ではMOIが30より僅かに
高いと、AV1 DNAの複製が生じるという予備的実験による証拠が得られている。
E2bプローブで観察されたものは、AV1 DNAの複製であり、そして少量の混入し
た野性型ウイルスの複製でないとさらに結論するために、0.1M EDTA中で2回沸
騰させることによりブロットをはがし(Molecular Cloning:A Laboratory Manua
l、第2版、Sambrook,J.ら編、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)
)、そしてE1aプローブで再度プローブした。このE1aプローブは予期されたHindI
II制限フラグメントにのみ、かつ野性型ウイルスで感染した細胞中でのみハイブ
リダイズした。これにより、AV1.DNAが腫瘍細胞株中で複製されることが確認さ
れた。これらの結果は、E1遺伝子を有することが知られていない細胞株中で、AV
1の複製が生じることを示す。
AV1ベクターの複製を支持しない細胞株が内在性E1遺伝子を含まないことの実証
ヒト細胞株が組込まれたアデノウイルス配列を有することは非常にありそうに
なかったが(Virology,第2版、Fields,B.N.ら編集、Raven Press Ltd.(1990
))、Hep3BおよびSW480中には組込まれたE1配列がないことを明確に決定するた
めに、これらの細胞株由来のDNAをサザンブロットにより分析した。
各細胞株由来の活発に増殖する培養物由来の1×107個の細胞を、3000×gで遠
心分離することにより回収した。DNAを製造者の説明書に従い、自動化システム
によって回収した(Genepure Extractor Model 341,Perkin Elmer/Applied Bios
ystems Division,Foster City,CA)。HindIIIで消化した10μgのDNAを1%ゲル
で電気泳動し、そしてニトロセルロースへ移した。ハイブリダイゼーション条件
およびE1プローブの調製は、図2に記載したとおりであった。Add1327のアデ
ノウイルス全体に対する別のプローブ(これは、E3領域が欠失されたことを除い
て、Ad 5と同一である)を、精製ウイルス性DNAのランダムプライミングによって
作製した。その結果を図3に示す。両方のプローブは予期したように293 DNAに
ハイブリダイズしたが、いずれのプローブもHep 3BまたはSW480細胞のいずれか
ら単離されたDNAにもハイブリダイズしなかった。このことは、AV1ベクター中の
E1欠陥を相補する因子が、アデノウイルス骨格上に存在する遺伝子に関連してい
ないことを示す。
AV1ベクターの細胞株特異的ウイルス複製を示す代表的プラーク力価
高レベルのAV1ベクターのDNA複製が、種々の腫瘍細胞株において観察されたの
で、本発明者らは、感染性ウイルスもまた、DNA複製を支持する腫瘍細胞株から
産生され得るかどうかを決定した。各細胞株を6ウェルプレート中に、1×105個
の細胞の密度でプレーティングし、そして感染前に24時間接着させた。293細胞(
ポジティブコントロール)、Hep3B、SW480、およびA549由来の細胞を、MOI 10でA
V1.LacZ4で感染させた。プレートをPBSで4時間洗浄し、そして記載のように(Gra
ham,F.L.ら、J.Gen.Virol.36:56-72(1977))、CVLを調製する前に、感染を
6日間進行させた。293細胞上のプラーク力価(Graham,F.L.ら、J.Gen.Virol.
36:56-72(1977))を各CLV上について実施して、細胞から産生された感染性ウイ
ルスの量を6日間にわたって測定した。
その結果を図4に示す。検出可能なウイルスはいずれの細胞株についても、4
時間の時点では見出されなかった。この結果は予想された。なぜなら、このウイ
ルスはこの短い時間内に複製し得ないからである。293細胞は、予想したように
、約4500pfu/出発細胞を産生した。A549およびSW480は、検出可能なウイルスを
産生しなかったが(それらは低レベルのDNA複製を支持していたが)、多量のウイ
ルスがHep3B細胞中で産生された。これらの細胞は、条件を最適化することなし
に、293細胞とほとんど同じ量の感染性ウイルスを産生した(1500pfu/出発細胞)
。この結果は、Hep3B細胞、および潜在的に他の腫瘍細胞が、AV1ベクター中でE1
欠失を完全に相補し得ることを示す。
AV1ベクターは、E1b 55kDaポリペプチド(これは、翻訳のために、細胞質中へ
ウイルス性MRNAを輸送する機能を有する)(Omelles,D.A.およびShenk,T.,J.Vi
rology 65:424-439(1991))を発現する遺伝子を含まないので、このタンパク
の存在が、ウイルスがコードするタンパクのより高い翻訳ゆえに、ウイルス生産
を増強し得るかどうかとの疑問が生じた。Add1312(Shenk,T.ら、Cold Spring H
arbor Symp.Quant.Biol.44:367-375)(これは、E1aが欠失しているが、E1b
を含む)を利用した。Hep3B細胞を、MOI 10でAdd1312で感染させた場合、AV1.La
cZ4で産生されたウイルスに比較し、約6倍多いウイルスが産生された。
種々の腫瘍細胞株および正常細胞におけるウイルス性細胞傷害性データ、DNA複
製およびウイルス産生をまとめた完全な表
他の細胞株を、AV1感染細胞の3つの性質(細胞傷害性、DNA複製およびウイル
ス産生)のそれぞれについて検討して、AV1ベクターの複製を可能にする腫瘍細胞
株の範囲を決定した。正常細胞もまた検討した。
各アッセイを上記のように実施した。その結果を図5に示す。+は単純化のた
めの恣意的な等級付け系をいう;DNA複製について、++++=最大の観察された効
果(Hep3B細胞について観察された効果に比較して);+++=50〜75%;++=25〜50
%;+=10〜25%;-=検出可能なし。細胞傷害性(Cyto)についてのみ、++++、++
+、および++を使用した。++未満は、このアッセイにおいては-である。NT=試験
せず。IP=進行中。pub=発表済み(published)。
このデータは、AV1感染が多くの腫瘍細胞株において低下された増殖(細胞傷害
性)に導くが、正常線維芽細胞、肝細胞または肺細胞においてそうではないこと
を示す。DNA複製を測定したところ、DNA複製が有意なCPEを示す全細胞において(
およびいくつかの他の細胞において)生じたことが見出された。しかし、正常線
維芽細胞(図 5)、正常肺株(Yei,S.ら、Hum.Gene Ther.5:731-744(1994))また
は初代肝細胞(Kozarsky,K,ら、Somat.Cell Mol.Genet.19(5):449-58(1993))
においては、このMOIではDNA複製が観察されなかった。試験した細胞株のうち、
Hep3B細胞のみが、検討した感度で感染性ウイルスを産生し得た。
細胞株のp53/Rb遺伝子型を示す表
アデノウイルス中のE1aおよびE1b領域の機能は、それぞれ、細胞性Rbおよびp5
3遺伝子産物を不活性化することである。E1欠失アデノウイルスベクターは種々
の腫瘍細胞中で複製するので、その中でDNA複製が観察された腫瘍細胞株は機能
的に不活性化されたRbおよびp53を有し、したがってE1欠陥を相補し得ることが
可能であった。
DNA複製を支持する全ての腫瘍細胞株(図6中に太字で示す)が、変異されたま
たはヌル(null)p53遺伝子または機能的に不活性化されたp53タンパク質(SIHA/He
la)のいずれかを含むことが文献中で見出された。DNA複製を支持しなかった全て
の株は、野性型p53遺伝子を有していた。従って、腫瘍細胞株において複製するA
V1ベクターの能力は、この株のp53状態と相関する。Rb変異単独ではAV1ベクター
(DU-145)のDNA複製を可能にしないが、機能的に不活性化された、または変異
されたp53遺伝子を有する細胞株の多くはまた、機能的に不活性化された、また
は変異されたRb遺伝子を含むことが示された。
MOI 対 HuH7の細胞傷害
複製が自殺遺伝子を有するベクターの能力を増強し得るかどうかを検討するた
めに実験を行った。この遺伝子は、1型単純ヘルペスチミジンキナーゼ遺伝子で
ある。この遺伝子産物は、腫瘍細胞をガンシクロビルのヌクレオチドアナログに
対して感受性にすることが知られている。ヒト肝ガン細胞株HuH7を感染させた。
その結果を図7に示す。この細胞株(これは、ベクターのDNA複製を支持する)
は50μmのガンシクロビルの存在で相対的にMOI 5により、90%より高い傷害率を
示した。さらに、MOI 50を使用した場合、80%の細胞より多くがガンシクロビル
の非存在下で2日間のうちに傷害され、そして100%の細胞がガンシクロビルの存
在下で傷害された。DNA複製を支持しないかもしれない他の細胞を利用した同様
な研究において、ずっと高いMOIがガンシクロビルによる同様な程度の腫瘍細胞
傷害を達成するためには必要であり、そしてガンシクロビルの非存在下では腫瘍
細胞傷害が観察されなかった(Smythe,W.R.ら、Cancer Res.54(8):2055-2059(19
94))。
HuH7細胞におけるガンシクロビル媒介性バイスタンダー効果
ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ発現遺伝子ベクターを有する細胞は、チミ
ジンキナーゼを発現しない隣接する細胞を、「バイスタンダー効果」によってガ
ンシクロビルに対して感受性となるようにすることが知られている。本発明者ら
は、少なくともインビトロで(おそらく、インビボで)、腫瘍細胞におけるチミジ
ンキナーゼ発現が多ければ多いほど、より多くの隣接する腫瘍細胞が傷害され得
ることを示唆するデータを得た。それゆえ、複製を支持する細胞株が高いバイス
タンダー効果を生じるかどうかの疑問を検討した。
MOI 50で感染されたHuH7細胞を、漸増量の非感染細胞と混合し(全細胞数を一
定に保って)、そして50μMのガンシクロビルで処理した。その結果を図8に示す
。もしバイスタンダー効果が生じないなら、100%感染細胞(全て傷害)と0%感染
細胞(全て生存)との間の直線的応答が期待される。しかし、細胞の1%のみが感
染された場合、細胞のほぼ80%が傷害されたことが観察された。この劇的なバイ
スタンダー効果は、ベクターのDNA複製から期待された増強された遺伝子量に起
因し得る。バイスタンダー効果は腫瘍細胞傷害に顕著に寄与するはずである。な
ぜなら、任意のベクターでのインサイチュでの腫瘍の高い形質導入率の達成は困
難であるからである(Blaese,R.M.ら、Eur.J.Cancer 30A:1191-1193(1994))。上
記した結果とともに、これらの結果は、複製が、腫瘍細胞を特異的に傷害するE1
欠失ベクターの能力を顕著に増強することを示唆する。
ガン腫細胞株特異的傷害
AV1ベクターの感染が、特定の感染腫瘍細胞中で細胞傷害性効果を生じたかど
うかを決定するために、クリスタルバイオレット染色アッセイを利用した(Yamam
otoら、Practical Methods in Chemical Immunology,第9巻: Investigation of
Cell Mediated Immunity、Yoshida,T.編、Churchill Livingstone,Edinburgh
,New York(1985)、pp.127-134)。ここで、クリスタルバイオレット取り込み
のレベルが接着した生存細胞量に比例する。各腫瘍細胞株の1×104個の細胞を96
ウェルプレート中の3つのウェルのそれぞれにプレーティングした。プレーティ
ング24時間後に、細胞を希釈液、Add1327またはAV1.LacZ4のいずれかにより、両
者ともにMOI 10で感染させた。試料を、感染後2日目、6日目および9日目に、
3連で、クリスタルバイオレット取り込みについてアッセイした。
その結果を図9に示す。予期した通り、試験した4つの細胞株のそれぞれにお
いて、希釈液で処理した細胞は、経時的にクリスタルバイオレット染色における
増加を示し、このことは細胞増殖を示す。293細胞は急速に野性型またはAV1ベク
ターのいずれもによって、予期した通り傷害された。なぜなら、この細胞株がこ
のウイルスの複製を支持するからである。Add1327はA549、Hep3B細胞またはHuH7
細胞のいずれもを、6日間以内に傷害した。しかし、AV1ベクターは、Hep3Bまた
はHuH7細胞のいずれもの90%より多くを、6日間以内に傷害した。この結果は予
期されなかった。なぜならE1欠失アデノウイルスベクターは、広範囲の正常組織
において(Kozarsky,K.ら、Somat.Cell Mol.Genet.19(5):449-458(1993)、
Yei,S.ら、Hum.Gene Ther.5:731-744(1994))および他の細胞株において(Sm
ythe,W.R.ら、Cancer Res.54(8):2055-2059(1994))このMOIでは細胞傷害性を
生じなかったからである。このAV1ベクターは同様に、A549細胞の細胞増殖に再
現性のある効果を有した。
これらの結果は、(1)細胞傷害性および細胞変性効果が複製の示標であるので
、AV1ベクターの複製が細胞特異的な様式で生じ、そして(2)複製はこれらのMOI
で腫瘍細胞株特異的であったことを示唆する。MOI 100まででさえも、初代ヒト
肝細胞におけるこのベクターの細胞傷害性効果の非存在が、本発明者らおよび他
の研究者らによっても実証されている。さらに、多数の腫瘍細胞株および正常細
胞がスクリーニングされ、細胞傷害性が変異されたまたは不活化されたのいずれ
かのp53を有する細胞においてのみに見出されたという結果が得られた(図5およ
び6を参照のこと)。
AV1.TK1で処置されたHep 3B皮下肝ガンを有するヌードマウスの治療率
Hep3B細胞がビリオンおよびDNA複製の両方を支持することが示されたので、ヌ
ードマウスにおいて予め樹立されたHep 3B腫瘍の傷害または低成長のいずれかに
ついて、AV1.TK1ベクターの能力を試験した。Hep 3B腫瘍は、ヌードマウスの側
腹部に1×107個の細胞を皮下注射することによって、樹立した。腫瘍を、それら
が平均サイズ50mm3に達するまで成長させた。次いで、腫瘍に、AV1.null、また
はAV1.TK1または希釈液単独のいずれかを2×109pfusで注射した。ウイルスを、
外皮を通しての2回の注射で、全量100ulで注射した。各群の半分を、300mg/kg/
日でガンシクロビル(gancyclovir(ganciclovir))で処置した。
その結果を図10に示す。AV1.TK1およびガンシクロビルで処置した全ての動物
が、30日後に、50%残存腫瘍なしで、腫瘍の完全な退縮を示した。この方法で処
置されたマウスにおいては、有害な影響は観察されなかった。これらの結果は、
腫瘍細胞において特異的に複製するベクターが、ガン治療のために使用され得る
ことを示す。
HuH7細胞におけるAV1 DNA複製のp53依存性除去
野性型p53を欠き、そしてAV1ベクターの複製を支持する細胞における、野性型
p53の再導入を直接的に実証するために、p53をHuH7細胞へ導入し、そして細胞を
複製についてアッセイした。AV1.p53ベクターを、本明細書中に記載のように、
構築し、そして293細胞中で産生した。このベクターは、野性型p53を発現するの
で、このウイルスで感染された細胞は、それらがAV1.LacZ4を複製され得るよう
には、このベクターを複製させ得ない。
その結果を図11に示す。Add1327またはAV1.LacZ4で感染された細胞は、経時的
にウイルス性DNAにおける増加を示し、このことは複製を示す。しかし、AV1.p53
で感染された細胞は、経時的なDNAの増加を示さなかった。これらの結果は、p53
の再導入が複製を妨げることを実証する。
種々のアデノウイルスベクターで処置されたHep3B腫瘍保有動物についての生存
曲線
平均95mm3のHep3B腫瘍を有する無胸腺ヌードマウスを、AV1.lacZ4(無関係のト
ランスジーンを発現するE1a/E1b欠失ウイルス)、AV1.TK1(ガンシクロビル(GCV)
を毒性代謝物へ変換するトランスジーンを発現するE1a/E1b欠失ウイルス)、また
はd1327(野性型の様式で、ヒト細胞においては、インビトロで複製するE1a/E1
b含有アデノウイルス)の直接的腫瘍内注射によって処置した。生存曲線は、腫瘍
体積が2,000mm3を越えるか、または動物が死亡したと見出されたときの動物の犠
牲数に基づいた。
インビボにおいて腫瘍を除去するE1a/E1b欠失アデノウイルスの能力を、図12
に示す。Hep3B細胞(これは、野性型複製と同様のレベルでE1a/E1b欠失アデノウ
イルスの複製を支持する)においては、腫瘍除去が、d1327(野性型)での感染の
直接的結果として生じ得る。重要なことに、AV1.lacZ4は、d1327と同様に腫瘍を
除去し、そして自殺遺伝子(AV1.TK1 +ガンシクロビル)を含むE1欠失ウイルスと
同様に有効に除去する。
腫瘍細胞におけるウイルス複製の相補
Hep3B細胞およびAV1ベクターを使用して本明細書中で得られた結果は、このベ
クターにおける欠陥した複製機能のための相補機能についての証拠を示す。本明
細書中の例示において記載される実験において、スクリーニングされた腫瘍細胞
株の全てのうち、多くがp53-および/またはRb-であり、Hep3B細胞のみが感染性
ウイルス粒子を作製し得たということが示される。Rb-および/またはp53-腫瘍
細胞のほとんどが、アデノウイルスゲノムのDNAを複製させたが、Hep3B細胞のみ
が、感染性ウイルスを産生した。例えば、図5を参照のこと。
従って、このデータは、完全な感染性ウイルス産生のための相補因子の関与を
支持する。このデータはまた、CPEおよび細胞傷害性が、いかなる感染性ウイル
ス産生の完全な非存在下においても生じ得ることを示す。
E1a/E1b欠失アデノウイルスの複製欠損を相補する細胞は、いくつかの生化学
的事象を進行させなければならない。これらの事象は、アポトーシスのブロック
および転写因子E2F(E2Fは、E4およびE2プロモーターの活性に、次いで、DNA合成
期からキャプシド産生および組み立て期へのアデノウイルス複製の進行に、正の
転写制御の多くを発揮する)の蓄積を含む。E1a欠失ウイルスベクターによる感染
性ウイルス産生に対するブロックを完全に克服する、天然に存在する細胞性因子
は、nfIL-6を含む(Spergelら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)88(15):6472-6476(199
1))。E1aによる遺伝子産物のpRbファミリー(および同様におそらくp53)の変異、
または不活化の必要は、単に活性なE2Fの濃度を増加する手段である。さらに、
この因子の活性形態は、全ての有糸分裂的に活性な細胞(腫瘍細胞を含む)におい
て、細胞周期進行の一部として見出される。アポトーシスのE1b媒介性ブロック
はまた、必ずしも必要ではない。なぜなら、他の天然に存在する細胞性ペプチド
(例えば、bcl-2遺伝子座由来のタンパク質)が同様にアポトーシスをブロックし
得るからである。
しかし、E1a/E1b欠失ベクターによるビリオン産生について許容性の細胞はま
た、さらなる因子を有さなければならない。これらの因子は、E1a/E1b遺伝子産
物と他のウイルス性調節タンパク質との間の相互作用(例えば、E4遺伝子産物と
E1bとの相互作用、ウイルス後期遺伝子産物をコードするmRNAの優先的プロセッ
シングおよび輸送にとっても必要である(Ornellesら、J.Virol.65(1):425-439(
1991)))によって明白に産生される機能をトランス相補する(transcomplement)
必要がある。p53またはpRbのいずれかの機能を欠くほとんどの細胞は、感染性ビ
リオンを効率的に産生しない(図5および6を参照のこと)。E1a/E1bにコードさ
れるタンパク質と他のアデノウイルス遺伝子の産物との間のタンパク質相互作用
についての必要性に取って代わるトランス相補活性の非存在下では、細胞は、ウ
イルス性DNA複製を支持し得るが、感染性ビリオン産生を効率的に支持し得ない(
図5)。Hep3B細胞(これは活発なウイルス複製を支持する)は、他のウイルス遺
伝子産物とE1a/E1bとの相互作用の非存在から生じる欠陥をトランス相補する1
つ以上の因子を有していなければならない。ヘルペスウイルスにおけるチミジン
キナーゼの欠陥は、腫瘍細胞(これは、正常細胞が産生するよりも顕著に多くの
TKを産生する)中で克服され得ることが示されている(Martuzaら、Science 252:
854-856(1991))。この相補は、ウイルスが腫瘍細胞中で複製することを可能と
する。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF,CG
,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,SN,
TD,TG),AP(KE,LS,MW,SD,SZ,U
G),AL,AM,AT,AU,BB,BG,BR,B
Y,CA,CH,CN,CZ,DE,DK,EE,ES
,FI,GB,GE,HU,IS,JP,KE,KG,
KP,KR,KZ,LK,LR,LS,LT,LU,L
V,MD,MG,MK,MN,MW,MX,NO,NZ
,PL,PT,RO,RU,SD,SE,SG,SI,
SK,TJ,TM,TT,UA,UG,US,UZ,V
N
(71)出願人 ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメ
リカ,アズ リプレゼンテッド バイ ザ
セクレタリー,デパートメント オブ
ヘルス アンド ヒューマン サービシー
ズ
アメリカ合衆国 メリーランド 20852―
3804,ロックビル,スイート325,エグゼ
クティブ ブルーバード 6011,エヌアイ
エイチ オフィス オブ テクノロジー
トランスファー気付
(72)発明者 ハレンベック, ポール エル.
アメリカ合衆国 メリーランド 20866,
バートンズビル,リーガルウッド テラ
ス 4371
(72)発明者 ラムゼイ, ウィリアム ジェイ.
アメリカ合衆国 メリーランド 20874,
ジャーマンタウン,ニアーウィンダー
コート 18
(72)発明者 チャン, ヤウェン エル.
アメリカ合衆国 メリーランド 20854,
ポトマック,ベッドフォードシャー ア
ベニュー 11423
(72)発明者 ハンマー, マーレン
アメリカ合衆国 メリーランド 20853,
ロックビル,チェリー バレー ドライ
ブ 4609