【発明の詳細な説明】
免疫応答の調節
本発明は、免疫原の投与、及び免疫応答の調節、すなわち阻害又は増強に関す
る。
抗原との初期遭遇は、免疫応答の最とも異なった相である。感作されたT細胞
とは対照的に、感作されていないT細胞を活性化するための閾値は高く、そして
B細胞は突然変異誘発されていない、一般的に低い親和性抗原応答を発現する。
これは、興味ある免疫原に対する免疫応答を生ぜしめるための、たとえば治療目
的のための又は続く操作及び使用のための抗体を得るための必要性又は所望性が
存在する場合、問題がある。
補体系は、免疫応答の増強において主な役割を演じる。ほとんど20年前、Pepy
s は、C3の消耗マウスが、羊赤血球細胞に対するそれらの免疫応答を、この抗
原に対するそれらの抗体応答により測定される場合、低めたことを示した(1)
。C3又はC4及びC2、すなわちC3を活性化する酵素を形成するタンパク質
の遺伝的に決定された欠失に関するヒト、テンジクネズミ及びイヌの続く研究は
、C3の活性化が一次免疫応答を増強する結論を確かめた(2)。
C3は、他の生物学的分子への共有結合を仲介するチオエステルを含む血糖タ
ンパク質である(3)。従来の又は他の経路の“C3コンバーターゼ”によるC3
b へのC3の活性化は、弱求核基、たとえば−OH又は炭水化物によるチオエステ
ルの攻撃の接近性を可能にし、活性化反応のすぐ近くにおける標的のOH持持の分
子へのエステル結合を通してのC3b の結合を引き起こす。次に、抗原とのC3b(
又はタンパク質分解的に処理されたフラグメントiC3b及びC3dg)の複
合体が、レセプターCR1,CR2及びCR3を結合する。二次リンパ系器官の一次卵
胞及び胚中心における小胞樹状突起上のC3レセプターへの前記複合体の結合が
、記憶Bリンパ球の増殖及び維持を促進することができる。抗原特異的Bリンパ
球への前記複合体の結合は、抗原レセプター、すなわち膜免疫グロブリン(mIg
)へのCR2の架橋を引き起こす。CR2は、mIg に結合される場合、そのmIg を通
して著しく約 100倍、増幅するBリンパ球膜タンパク質に関連する。
全体の反応における制限段階は、C3b の結合である。それは、従来の又は他の
経路を通して補体系を活性化することができる抗原を必要とし、そしてそれはC3
b が共有結合することができる部位を有する。次に、興味ある免疫原が可溶性ペ
プチド及びタンパク質である場合、問題が生じる。なぜならば、それらは、C3b
を効果的に結合しないし、又は他の経路の活性化因子である傾向もないからであ
る。さらに、低い親和性の交差反応性IgM 抗体は、従来の経路を活性化するため
に十分な結合活性を有する一価タンパク質抗原を結合しない。
それらの困難性は、たとえばB又はT細胞のためのエピトープとして定義され
た小さなペプチドにより免疫化する場合、及びDNA 免疫化に関して、特に関連し
ている(4)。アジュバントが、実験動物、たとえばマウスを免疫化する場合、
ペプチド及び非凝集タンパク質の免疫原性を高めるために使用され得るが、一般
的に、それらのヒトへの投与は可能でもなく又は少なくとも、好ましくない。
本発明は、免疫原に対する免疫応答を高める手段を提供する。
さらに、免疫原性物質に対する免疫応答を阻害し、すなわち少なくとも減じる
ことが所望される場合の環境が存在する。たとえば、治療抗体の投与に多くの興
味が存在する。しかしながら、歴史的には、利用できる抗体は、ネズミモノクロ
ーナル抗体であった。人体
はそのようなネズミ抗体を外来性物質として認識するので、免疫応答はそれらに
対して高められ、血流からのそれらの急速なクリアランスをもたらす。非ヒト抗
体を“人体適合する”多くの技法、及びそれらの外来性特徴を減じるための他の
技法は、入手できるが、しかし、しばしばそれらを実施するために高度の作業者
を必要とする。さらに、“人体適合化”に続いてさえ、免疫システムは、抗体が
宿主イディオタイプと適合できない場合、抗−イディオタイプ応答を増強する。
さらに、多くの他の外来性物質、すなわち種々の目的、たとえば治療のために
及び“人体適合化”技法が利用できない個人に投与される非ヒト物質が存在する
。当業者に良く知られている多くの例の1つは、心臓発作の患者に投与される“
血餅−破壊性”薬物ストレプトキナーゼである。この酵素は細菌起源のものであ
り、そして免疫応答は受動体個人によりそれに対して増強される。
さらに、本発明は、免疫原に対する免疫応答を阻害する手段を提供する。
種々の観点において、本発明は、興味ある免疫原への補体C3フラグメントC3
d(CD21 のためのリガンド(CR2))のカップリングが免疫原に対する免疫応答
の調節を可能にする驚くべき発見に基づいて見出された。その調節は、免疫原投
与に対する抗体システムのレベルの上昇又は低下であり得る。完全に思いがけな
いことであるが、免疫応答が免疫原への多くのC3d 分子のカップリングにより増
強され得、そして免疫原への1つのC3d 分子のカップリングにより低められ得る
ことが見出された。この観点においては、種々の観点における本発明は、CD21の
ためのリガンド、又はCD21はB細胞の表面上のCD19と関連しているので、CD19の
ためのリガンドと抗原とを関連づけることによる免疫応答の調節に関する。
従って、本発明によれば、免疫原の免疫原性を変更するための方法が提供され
、ここで前記方法は、CD21(CR2)又はCD19のためのリガンドに関連する(又は
“カップリングされる”)免疫原を含んで成る組成物を形成することを含んで成
る。好ましい態様においては、前記方法は、免疫原に1又は複数のC3d 分子をカ
ップリングすることを含んで成る。カップリングされるC3d がモノマー性である
場合、免疫原の免疫原性は減じられる。カップリングされるC3d がマルチマー、
たとえばダイマーである場合、免疫原の免疫原性は高められる。高められた又は
低められた免疫原性により、免疫原を受ける個人の免疫応答はそれぞれ、増強さ
れ、又は低められるであろう。免疫応答のレベルは、たとえば抗体レベルにより
測定され得る。
抗原及びリガンドの結合は、B細胞上の2つのレセプター、すなわち抗原に対
して特異的な膜免疫グロブリン(mIg)及びCD21/CD19複合体を通してB細胞の応
答が調節されるように存在することができる。好ましくは、B細胞における応答
は刺激されるが、しかしたとえば論ぜられるように、一定の環境下で、B細胞に
おける応答は阻害され得る。mIg 及びCD21/CD19複合体を通してB細胞応答を調
節する能力を評価するための実験アッセイが本明細書に記載される。たとえば、
本発明を用いての抗原−特異的B細胞の刺激に基づいての(抗原のみによる刺激
に比較して)細胞内カルシウム濃度の上昇は、組成物がmIg 及びCD21/CD19を通
してB細胞を刺激するインジケーターとして使用され得る。
本明細書に記載される実験作業は、免疫応答におけるT−細胞関与の証拠を包
含する。タンパク質抗原に対するB−細胞応答は、T−細胞依存性である。さら
に、T−細胞依存性応答は、記憶を進展せず;記憶は本明細書に例示されている
。また、イソタイプ切替え
は、T−細胞依存性B−細胞応答の特徴である。
第2の観点において、本発明は、CD21(CR2)又はCD19のためのリガンドに関
連する(又はそれに“カップリングされる”)抗原/免疫原を含んで成る組成物
を提供する。そのような組成物は、1又は複数のC3d 分子に結合される、抗原又
は免疫原を含んで成る分子(接合体)を含むことができる。多くのC3d 分子が抗
原に連結される場合、本明細書に例示されるように、2又は3個の分子を用いる
ことが好ましい。下記に記載される実験証拠は、C3d 分子の数の上昇と共に効果
の上昇を示すので、環境に依存して、より多くの数、たとえば4又は5、もしく
はそれ以上の分子を用いることが好ましい。
C3d へのカップリングの好ましい手段はペプチド結合によるので、接合体は隣
接するポリペプチド、すなわち融合タンパク質であり得る。本発明の融合タンパ
ク質においては、異なったペプチド又はポリペプチドが隣接するポリペプチドを
形成するためにお互い整合して連結される。従って、融合タンパク質の第1の部
分は、抗原又は免疫原を含んで成り、そして融合タンパク質の第2の部分、すな
わち前記第1の部分側のN−末端又はC−末端はCD21又はCD19リガンドを含んで
成る。抗原はC3d 分子又は反復体のアミノ末端側に連結されることが好ましい。
CD21又はCD19リガンドが抗体フラグメント、たとえば一本鎖Fv分子(scFv)であ
る場合、融合はその結合能力の要求を回避するためにscFv分子のC−末端側で存
在することが好ましい。
柔軟リンカー配列(たとえば、ポリグリシン/ポリセリン−含有配列、たとえ
ば〔Gly4Ser〕2(Hustonなど(1991)Meth.Enzymol.203:46-88))は、抗原とリ
ガンドとの間の融合タンパク質中に挿入され得る。また、融合タンパク質は“エ
ピトープ標識”を含む
ように構成され得、これは、たとえばラベリング又は精製目的のために抗体(た
とえばモノクローナル抗体)の融合タンパク質への結合を可能にする。エピトー
プ標識の例は、モノクローナル抗体YL1/2により認識されるGlu−Glu −Phe
トリペプチドである。
便利には、免疫原がペプチド又はポリペプチドである場合、免疫原をコードす
る核酸は、リガンド、たとえばC3d、すなわち単一のC3d 分子又は反復体をコー
ドする核酸に融合され得る。
従って、本発明のさらなる観点は、興味ある抗原/免疫原をコードするヌクレ
オチドの配列に融合される、CD21又はCD19(たとえばC3d)のリガンドをコード
するヌクレオチドの配列を含んで成る核酸構造体を提供する。好ましくは、その
核酸構造体は、融合の発現のための適切なプロモーターを含んで成る発現ベクタ
ーである。
種々の異なった宿主細胞におけるポリペプチドのクローニング及び発現のため
のシステムは良く知られている。適切な宿主細胞は、細菌、哺乳類細胞、酵母及
びバキュロウィルス系を包含する。非相同ポリペプチドの発現のための当業界に
おいて入手できる哺乳類細胞系は、チャイニーズハムスター卵巣細胞、HeLa細胞
、子供ハムスター腎臓細胞及び多くの他のものを包含する。通常の好ましい細菌
宿主は、E.コリである。
適切な調節配列、たとえばプロモーター配列、ターミネーターフラグメント、
ポリアデニル化配列、エンハンサー配列、マーカー遺伝子及び適切な場合、他の
配列を含む適切なベクターが選択され、又は構成され得る。さらなる詳細のため
には、たとえば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual:第2版、Sambrook
など.,1989,Cold Spring Harbor Laboratory Pressor Current Protocols in
Molecular Biology,eds.Ausubelなど.,John Wiley & Sons,1992を参照のこ
と。形質転換法は、使用される宿主に依存しており
、そして良く知られている。
本発明のさらなる観点は、上記に開示されるような核酸構造体を含んで成る宿
主細胞を提供する。さらに追加の観点は、CD21又はCD19のリガンド、好ましくは
1又は複数のC3d 分子、及び他の(非相同)ポリペプチド又はペプチドを含んで
成るポリペプチド融合体を製造するための方法を提供し、ここで前記方法は、ポ
リペプチド融合体をコードするヌクレオチドの配列を含んで成る核酸構造体を含
んで成る宿主細胞を、ポリペプチド融合体の発現のための条件下で培養すること
を含んで成る。発現に続いて、細胞からの、又は細胞により分泌される場合、培
養培地からのポリペプチド融合体の単離が行なわれ得る。
本発明に使用するための核酸は、DNA 又はRNA であり、そして一本鎖又は二本
鎖のcDNA、ゲノムDNA 又は完全に又は一部合成のものであり得る。二本鎖DNA が
好ましい。
マウスC3d のヌクレオチド配列及び予測されるアミノ酸配列は、Domdeyなど.
(1982)PNAS USA 79:7619-7623及びFey など.(1983)Ann.N.Y.Acad.Sci
.421:307-312)に開示される。ヒトC3d のためのヌクレオチド配列及び予測さ
れるアミノ酸配列は、de Bruijn and Fey(1985)PNAS USA 82:708-712に開示
される。他の種からのC3d をコードする核酸は、標準のハイブリダイゼーション
方法への使用のための1又は複数のプローブを調製するためにヒト又はマウス配
列情報を用いて単離され得る。C3d が本発明において使用され、そして対象に投
与される場合、そのC3d は免疫化される種に適合され得る(たとえばマウスにお
いて使用されるマウスC3d、ヒトにおいて使用されるヒトC3d、及び同様の通り)
。しかしながら、少なくともマウスとヒトとの間での種交差−反応性を例示する
実験的な証拠が本明細書に包含されており(たとえば、マウスC3
d はヒト細胞、たとえばヒトRaji Bリンパ幼若細胞上のCD21に結合する)、そ
の結果、C3d 及び対象の種適合は、好ましい場合でさえ、必須ではない。
融合タンパク質としての発現による抗原/免疫原及びCD21又はCD19リガンドの
カップリングに関するもう1つの態様においては、化学的な架橋が用いられ得る
。“化学的に架橋される”とは、化学的な架橋剤の使用を通しての共有結合を意
味する。抗原及びリガンド上の官能基(たとえばアミノ酸側鎖、又はペプチド鎖
のアミノ−又はカルボキシ末端)と反応する化学的架橋剤が選択され、そのよう
な結果、架橋剤との反応に基づいて、抗原及びリガンドは共有結合されるように
なる。さらに、架橋剤は、抗原及びリガンドがそれぞれmIg 及びCD21/CD19複合
体と相互作用することができるようにそれらを適切に配置するよう作用するスペ
ーサー分子を含むことができる。
広範囲の種類の二官能価又は多官能価架橋剤(ホモ−及びヘテロ官能価)は、
当業界において知られており、そして市販されている(たとえば、Pierce Chemic
al Co.,Rockford,IL)。そのような架橋剤は、標準の方法(たとえば製造業者
の指針に従って)により抗原及びリガンドと反応せしめられ得る。架橋に続いて
、抗原−リガンド複合体は、標準の方法(たとえばクロマトグラフィー、SDS−P
AGE及び同様のもの)により未反応抗原及びリガンドから精製され得る。B細胞
における細胞内シグナル(たとえば、高められた細胞内カルシウム濃度)を刺激
することにおける、及び/又は免疫応答を調節することにおける化学的に架橋さ
れた組成物の効能は、たとえば本明細書に記載されるようなアッセイを用いて評
価され得る。
化学的に架橋された組成物への使用のためのリガンドは、開示される通りであ
る。好ましいリガンドは、1又は複数のC3d 分子であ
る。化学的に架橋された組成物への使用のためのC3d は、組換えC3d(たとえば、
コードする核酸からの発現により調製された)、又は精製された天然のC3d であ
り得る。たとえば、C3は血漿(たとえばヒト血漿)から精製され得、そしてC3
d は、Lambris,J.D.など.(1980)J.Exp.Med.152:1625に記載されるよう
にして消化によりそれから調製され得る。
もう1つの態様においては、抗原及びリガンドが、キャリヤー構造体の表面上
で同時発現され得る(すなわち、両者が存在できる)。好ましくは、抗原及びリ
ガンドは、キャリヤー構造体の表面上で同時発現され、その結果、B細胞との接
触に基づいて、前記抗原はB細胞の表面上の抗原に対して特異的な膜免疫グロブ
リン(mIg)と相互反応することができ、そしてリガンドはB細胞の表面上のCD2
1/CD19複合体と相互反応することができる。
抗原及びリガンドの同時発現のために使用されるキャリヤー構造体は、リポソ
ーム(又はそれらの表面上に物質を担持することができる類似する小胞タイプの
構造体、たとえば微小球、ポリアクリルスターチ微粒子、微小カプセル及び同様
のもの)であり得る。抗原及びリガンドは、標準の方法によりリポソーム又は他
のキャリヤー小胞の表面に共有結合され得る。詳しくは、Jones,M.N.(1995
)Adv.Colloid.Interface Sci.54:93-128を参照のこと。また、たとえばHea
th,T.D.など.(1980)Biochim.Biophys.Acta.599:42-62;Heath,T.D.
and Martin,F.J.(1986)Chem.Phys.Lipids 40:347-358;Hutchinson,F
.J.,など.(1989)Biochim.Biophys.Acta.978:17-24;Therien,H.M.
など.(1991)Cell.Immunol.136:402-413;Freide,M.,など.,(1993)An
al.Biochem.211:117-122を参照のこと。抗原に対する免疫応答の刺激のため
には、抗原及びリガンドのためのキャリヤー構造体と
してのリポソーム又はポリアクリルスターチ微粒子の使用は、リポソーム又は微
粒子自体がアジュバント活性を有する(又は追加のアジュバント、たとえばモノ
ホスホリルアジュバント脂質Aを担持することができる)追加の利点を有するこ
とができる。詳細には、Alving,C.R.(1995)Immunol.Rev.145:5-31 を参
照のこと。また、たとえば、Raphael,L.and Tom,B.H.(1984)Clin.Exp.
Immunol.55:1-13;Artursson,P.,など.(1986)J.Pharm.Sci.75:697-70
1;Degling,L.and Stjaernkvist,P.(1995)Vaccine 13:629-636;Lachman
,L.B.,など(1995)AIDS Res.Hum.Retrovirus.11:921-932 を参照のこと
。免疫応答を刺激するための好ましいリポソーム配合物は、脂質Aを含み、そし
て抗原、及びリポソームの表面に結合されるCD21又はCD19リガンドを有するみょ
うばん−吸着性リポソームを含んで成る。
キャリヤー構造体は細胞であり得る。たとえば、細胞は、抗原及びリガンドの
膜結合形をコードする組換え発現ベクターによりトランスフェクトされ、その結
果、細胞中のベクターの発現が抗原及びリガンドの細胞表面発現を導びく。抗原
の表面発現は、たとえば標準の組換えDNA 技法を用いて、抗原をコードするDNA
の5’端にシグナル配列をコードするDNA フラグメントを連結し(抗原自体がシ
グナル配列を含まない場合)、そして抗原をコードするDNA の3’端にトランス
メンブランドメインをコードするDNA フラグメントを連結する(抗原自体がトラ
ンスメンブランドメインを含まない場合)ことにより達成され得る。リガンドは
、そのリガンドの細胞表面発現を達成するために同様にして変性され得る。抗原
及びリガンドの高レベルの発現は、B細胞上にmIg 及びCD21/CD19の両者の架橋
を達成するために必要である。従って、強い調節要素(たとえば1又は複数の強
いエンハンサー)を用いる組換え発現ベクターは、キ
ャリヤー細胞の表面上での抗原及びリガンドの発現のために好ましい。
キャリヤー構造体は、たとえばウィルスの膜において又は表面上で、HBsAg 粒
子上で及び同様のもの上で、投与のためのいづれかのワクチン又は生物学的粒子
であり得る。抗原/免疫原、及びCD21又はCD19のためのリガンドの同時発現は、
ウィルスゲノム中への適切な核酸の導入を従えることができる。
キャリヤー構造体は、固体支持体、たとえばビーズ(たとえば、アガロース、
セファロース、ポリスチレン及び同様のもの)、又はプレートであり得る。抗原
及びCD21又はCD19リガンドは、標準の技法により固体支持体に結合され得る。た
とえば、化学的架橋剤、たとえば本明細書に記載されるものは、固体支持体に抗
原及びリガンドを共有結合するために使用され得る。
本発明の組成物、たとえば(C3d)n−抗原接合体の投与は、受容体個人の免疫応
答を調節する。従って、本発明のさらなる観点は、興味ある抗原/免疫原に対す
る個人の免疫応答を調節するための方法を提供し、ここで前記方法は、CD21又は
CD19のリガンドに関連される抗原/免疫原を含んで成る組成物、たとえば、開示
されるように、1又は複数のC3d 分子に結合される抗原/免疫原を含んで成る分
子の投与を含んで成る。免疫応答の強化、増強又は増加は、免疫原に多くのC3d
分子をカップリングすることにより達成され得る。免疫応答の阻害、縮小又は低
下は、1つのC3d 分子のカップリングにより達成され得る。
その投与は、予防目的(“ワクチン接種”、たとえば抗微生物性)又はたとえ
ば免疫療法(たとえば抗微生物又は抗腫瘍性)における治療目的のためである。
ワクチン接種は、抗原に対して対象の保護免疫性を付与するために使用され得る
。
ペプチド又はポリペプチドの場合、接合体を投与する代わり、融合体をコード
するDNA が、既知の技法に従って投与され得る(4,5,6)。これは特に、CT
L 応答の刺激のために好都合である(下記を参照のこと)。なぜならば、CD8+T
細胞、たとえばCTL を刺激するMHC クラスI分子による抗原発現を促進すること
が知られている融合体が対象の細胞において細胞内に発現されるからである。DN
A は、たとえばDNA の直接的な筋肉内注入、又はDNA−カチオン性脂質配合物の
投与により投与され得る(たとえば、Cohen.J.(1993)Science 259:1691-16
92;Yenkauekas,M.A.,など.(1993)DNA Cell Biol.12:771-776;Boots,
A.M.,など.(1992)Vaccine 10:119-124;Conry,R.M.,など.(1994)Can
cer Res.54:1164-1168;Montgomery,D.L.,など.(1993)DNA Cell.Biol.12
:777-783;Wang.B.,など.(1993)DNA Cell Biol.12:799-805;San,H.
,など.(1993)Ham.Gene Ther.4:781-788;Felgner,J.H.,など.(1994
)J.Biol.Chem.269:2550-2561;Duzgunes,N.and Felgner,J.H.(1993
)Methods Enzymol.221:303-306;Jiao,S.,など.(1992)Exp.Neurol.11 5
:400-413を参照のこと)。
免疫原に対する抗体を生ぜしめることを包含する、そのような投与の適用は上
記で論じられる。さらなる観点において、本発明は、開示されるように、多くの
C3d 分子に結合される、CD21又はCD19のリガンドに関連する抗原/免疫原の哺乳
類への投与を包含する、興味ある抗原/免疫原に対する抗体応答(抗体を含む)
を生ぜしめる方法を提供する。一般的に、前記哺乳類は、ヒト、マウス、ラット
、ウサギ、ウマ、ヤギ、羊又はサルであり得る。投与の目的は、治療目的であり
、又はたとえば組換え技法、たとえばモノクローナル抗体技法及び/又はバクテ
リオファージ表示法(たとえば、WO92/0
1047を参照のこと)を用いて、後での使用/操作のために抗体を生ぜしめること
であり得る。哺乳類からの抗体及び/又は抗体産生細胞の単離は、動物の殺害の
段階を伴なう。
本発明によれば、インビトロ、たとえば培養物における抗体産生が刺激され得
る。たとえば、興味ある抗原に対して特異的なB細胞が、本発明の刺激性組成物
と共に培養され、興味ある抗原に対する抗体のB細胞による生成が刺激される。
生成される抗体は、たとえば抗原についてのそれらの結合能力により培養培地か
ら単離され得る。
投与は、たとえば抗−微生物(抗−ウィルスを包含する)及び抗−癌免疫療法
において、免疫原に対するT−細胞応答を調節するために実施され得る。本発明
の組成物の投与に対する免疫応答におけるT−細胞関与の証拠が上記で論じられ
る。B細胞活性化を助ける、T−ヘルパー細胞の刺激は、細胞毒性T細胞(CTL)
の増殖を促進することができる。従って、腫瘍マーカーのエピトープがCD21又は
CD19リガンド、たとえば多くのC3d 分子に結合され、そして前記エピトープを発
現する腫瘍を有する個人に投与される場合、その投与に起因するエピトープに対
する増強された免疫応答が腫瘍に対する治療的に有益な効果を有する。また、CT
LはIFN−γを分泌し、これがTH1バイアスを付与するので、その投与はアレルギ
ーのために使用され得る。
さらなる観点において、本発明は、開示されるように、CD21又はCD19のリガン
ドと関連する抗原/免疫原、たとえば(C3d)n−免疫原接合体を含んで成る医薬組
成物を供給する。
本発明の医薬組成物は、CD21又はCD19に関連する抗原/免疫原、たとえば(C3d
)n−免疫原接合体の他に、医薬的に許容できる賦形剤、キャリヤー、ビークル、
緩衝液、安定剤又は当業者に良く知ら
れている他の材料を含むことができる。そのような材料は、非毒性であるべきで
あり、そして活性成分の効能を妨げるべきではない。キャリヤー又は他の材料の
正確な性質は、投与路に依存し、この投与路は好ましくは、皮膚、皮下又は静脈
内注射、特に皮下注射であろう。
非経口、静脈内、皮膚又は皮下注射のためには、活性成分は発熱物質を含まず
、そして適切なpH、等張性及び安定性を有する非経口的に許容できる水溶液の形
で存在するであろう。当業者は、たとえば等張ビークル、たとえば塩化ナトリウ
ム注射剤、リンガー注射剤、乳酸化されたリンガー注射剤を用いて適切な溶液を
調製することができる。保存剤、安定剤、緩衝剤、酸化防止剤及び/又は他の添
加剤が、必要な場合、含まれ得る。皮下注射は、好ましい投与路であり得る。
本発明の医薬組成物は、1又は複数の追加の活性成分を含むことができる。た
とえば、前記組成物は、免疫調節性質を有する追加の剤、たとえばサイトキン又
は(追加の)アジュバントを含むことができる。
本発明のさらなる観点は、免疫原に対する個人の免疫応答を調節するために個
人への投与のための組成物又は医薬の製造への、CD21又はCD19リガンドに関連す
る抗原/免疫原、たとえば(C3D)n−免疫原(開示されるような)の使用を提供す
る。この投与の目的は、論じられたように、抗体を得るためである。
本発明は広範囲の種類の抗原に適用できる。好ましい態様においては、抗原は
、タンパク質株物質、タンパク質、ポリペプチド又はペプチドである。もう1つ
の態様において、抗原はDNA である。抗原は脂質でもあり得る。それは炭水化物
でもあり得る。好ましい抗原は、病原体(たとえば、ウィルス、細菌、寄生体)
及び腫瘍(特
に、腫瘍関連抗原又は“腫瘍マーカー”)からのものを包含する。他の好ましい
抗原は自己抗原である。腫瘍関連抗原の例は、癌胎児性抗原(CEA)、前立腺特
異的抗原(PSA),muc−1(Agrawallなど.(1995)Cancer Res.55:2257-226
1),MART-1(Kawakamiなど(1994)J.Exp.Med.180:347-352)、及びgp100
(Ademaなど(1994)J.Biol.Chem.269:20126-20133)を包含する。ウィルス
抗原の例は、ヘルペス単純ウィルス−1タンパク質、たとえばgB,gC,gD,gEW
,gG,gH,gI,gK,gL,Vmw65,ICPO及びIcp4、ミクソウィルスの赤血球凝集素
(たとえばインフルエンザ、おたふくかぜ又は麻疹)及びヒト免疫欠損ウィルス
のgp120 を包含する。
本明細書に言及されるような“C3d”は、変異体、誘導体又はそのフラグメン
ト(たとえば1又は複数のアミノ酸の付加、挿入、置換又は欠失による)であり
得るが、但し、免疫原性/免疫応答を増強し、又は減じる能力が保持されるべき
であることを注目すること。たとえば、CD21を結合する能力を保持し、そしてCD
21/CD19複合体を通してB細胞を刺激するC3d の一部が使用され得る。C3上の
CD21結合部位は、C3配列のアミノ酸残基1205−1214に地図により示されており
(Lambrisなど.(1985)PNAS USA 82:4235)、そしてアミノ酸残基1201−1214又
は1187−1214を含んで成る合成C3ペプチドはCD21を結合することが示されてい
る(Servis and Lambris(1989)J.Immunol.142:2207)。類似するペプチド
又は他のCD21−結合C3ペプチドが、本発明において使用され得る。
C3d は、それが内部チオエステルを含まないように変性され得る。たとえば、
チオエステルの形成に関与される、C3d のCys1029が標準の方法によりSer に変
異誘発され得る。
C3d の代わりに、他のCD21又はCD19リガンド、たとえば1又は複数のiC3b分子
、1又は複数のC3dg分子、抗体又は抗原−結合フラグ
メント又はその一部(CD21又はCD19に対して特異的に結合する)が使用され得る
。C3d に比較して、iC3b及びC3dgサブフラグメントはトリプシン消化に対してよ
り敏感であり、その結果、C3d が、iC3d又はC3dgに比較して、インビボでの使用
のために好ましい。しかしながら、トリプシン消化部位が変異誘発され、その結
果、iC3d又はC3dgのフラグメントがタンパク質分解性消化に対してより耐性であ
る、iC3d又はC3dgの変性された形が、インビボでの使用のためにより好ましい。
抗体又はそのフラグメント又は誘導体が使用される場合、それは、CD21又はCD
19を結合する能力を保持する態様で抗原又は免疫原に結合され得る(たとえば融
合され得る)。これは、抗体のH又はL鎖の不変領域との融合によるものである
。一本鎖Fv(scFv)抗体フラグメントのC−末端での融合は、scFvの結合能力を
妨害しないことが示されている。抗体は多くの手段で変性され得るので、用語“
抗体”とは、必要とされる特異性を含む結合ドメインを有するいづれの特異的結
合物質でも包含するように構成されるべきである。従って、この用語は、抗体フ
ラグメント、誘導体、機能的同等物及び抗体の相同体、たとえば免疫グロブリン
結合ドメインを含んで成るいづれかのポリペプチド(天然又は合成)を包含する
。従って、他のポリペプチドに融合される、免疫グロブリン結合ドメイン又は同
等物を含んで成るキメラ性分子が包含される。キメラ性抗体のクローニング及び
発現は、EP−A−0120694 及びEP−A−0125023 に記載される。
完全な抗体のフラグメントが結合抗原の機能を実施できることが示されている
。結合フラグメントの例は、(i)VL,VH,CL及びCH1ドメインから成るFab フ
ラグメント;(ii)VH及びCH1ドメインから成るFdフラグメント;(iii)単一
抗体のVL及びVHドメインから
成るFvフラグメント;(iv)VHドメインから成るdAB フラグメント(Ward,E.S
.など.,Nature 341,544-546(1989);(v)単離されたCDR 領域;(vi)F
(ab')2フラグメント、すなわち2種の連結されたFab フラグメントを含んで成る
二価フラグメント;(vii)一本鎖Fv分子(scFv)、ここでVHドメイン及びVLド
メインが、抗原結合部位を形成するために2種のドメインの会合を可能にするペ
プチドリンカーにより連結されている(Birdなど.,Science,242,423-426,19
88;Hustonなど.,PNAS USA,85,5879-5883,1988);(viii)二特異的一本鎖
Fvダイマー(PCT/US92/09965);及び(ix)“ジアボディーズ(diabodies)”
、すなわち遺伝子融合により構成された多価又は多特異的フラグメント(WO94/1
3604;P.Holligerなど.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90,6444-6448,1993)
である。
CD21に対する抗体は、記載されており、そして当業界において入手できる(た
とえば、OKB7,Ortho Pharmaceuticals,Raritan,NJ,USA;及びHB-5,Americ
an Type Culture Collection,Rockville,MD,USA,No HB135)。CD19に対する
抗体した当業界において入手できる(たとえば、Certerなど(1991)J.Immunol
.147:3663-3671;及びHolderなど(1992)Eur.J.Immunol.22:2725-2728)
。
興味ある標的に対して特異的である抗体が、当業界において標準である技術を
用いて得られる。抗体を生成する方法は、タンパク質又はそのフラグメント、又
は前記タンパク質又はフラグメントを発現する細胞又はウィルスにより哺乳類(
たとえば、マウス、ラット、ウサギ、ウマ、ヤギ、羊又はサル)を免疫化するこ
とを包含する。標的ポリペプチドをコードするDNA による免疫化もまた可能であ
る。抗体は当業界において知られている種々の技法のいづれかを用
いて、免疫化された動物から得られ、そして好ましくは、興味ある抗原に対する
抗体の結合性を用いてスクリーンされ得る。たとえば、ウェスターンブロット技
法又は免疫沈殿法が使用され得る(Armitageなど.,1992,Nature 357:80-82)。
哺乳類を免疫化する他の方法又は補足として、抗体が、たとえばそれらの表面
上に機能的免疫グロブリン結合ドメインを示すλバクテリオファージ又は繊維状
バクテリオファージを用いて、発現された免疫グロブリン可変ドメインの組換え
的に生成されたライブラリーから得られる;たとえばWO92/01047を参照のこと。
ライブラリーは、純粋であり、すなわち標的により免疫化されていない生物から
得られた配列から構成され得、又は興味ある抗原(又はそのフラグメント)に暴
露された生物から得られる配列を用いて構成されたものであり得る。
元の抗体の特異性を保持する他の抗体又はキメラ性分子を生成するために、抗
体を採取し、そして組換えDNA 技術の技法を用いることが可能である。そのよう
な技法は、異なった免疫グロブリンの不変領域、又は不変領域+骨格領域に、抗
体の免疫グロブリン可変領域又は相補的決定領域(CDRs)をコードするDNA を導
入することを包含する。たとえば、EP−A−184187,GB2188638A又はEP−A−23
9400を参照のこと。モノクローナル抗体を生成するハイブリドーマは、生成され
る抗体の結合特異性を変更することができても又はできなくても良い遺伝子突然
変異又は他の変化を受けやすい。抗体がヒト治療に使用される場合、それらの抗
体の免疫原性応答を最少にしながら、非ヒト抗体の抗原結合性質を有する抗体を
供給するために非ヒト(たとえばネズミ)抗体を“ヒト適合化する”ことが所望
される。従って、ヒト適合化された抗体は、ヒト適合化された抗体は、ヒト免疫
グロブリンに由来する骨格領域(受容体抗体)を含ん
で成り、ここで1又は複数の相補的決定領域(CDR's)からの残基が所望する性質
、たとえば特異性、親和性又は能力を有する、非ヒト種(ドナー抗体)、たとえ
ばマウス、ラット又はウサギ抗体のCDR'sからの残基により置換されている。ヒ
ト抗体の骨格残基のいくつかがまた、対応する非ヒト残基により、又はドナー又
は受容体抗体のいづれにも存在しない残基により置換され得る。それらの変性は
、追加の精製に向けられ、そして抗体の性質を最適化する。
いわゆる“ファージ表示”はまた、抗体のヒト適合化にも使用され得る;たと
えばWO93/06213を参照のこと。
本発明は、天然に存在する抗原/免疫原の複合体及び補体の他の経路が活性化
される場合に生成されるC3フラグメントをカバーすることを意図せず、そして
C3フラグメントは、C3の内部チオエステル結合を通しての反応により抗原上
に付着される。従って、本発明の組成物において、CD21(CR2)又はCD19のため
のリガンドと抗原/免疫原との会合は、前記抗原/免疫原が補体C3フラグメン
トの内部チオエステルに由来するエステル結合を通してその補体C3フラグメン
トにより会合されない条件を有する。(チオエステル残基を形成するシステイン
残基がジスルフィド架橋を通して化学的架橋に使用され得るが、これはエステル
結合ではない。)
本発明のさらなる観点及び態様が、当業者に明らかになるであろう。
本発明の態様は、例により例示されるであろう。本明細書に言及されるすべて
の文書は引用により本明細書に組込まれる。
図1は、鶏卵リゾチーム−C3d 組換えタンパク質の構造の図による表示である
。HEL,HEL−C3d,HEL−C3d2及び HEL−C3d3タンパク質のモデルは、カセットの
ドメイン間に連結配列を示す。アミノ酸残基のための略語は次の通りである:C
,Cys;E,Gly;F,Ph
e;G,Gly;及びS,Ser。BamHI及びBglII制限部位の連結は、HEL,C3d及び〔
Gly4Ser〕2配列を端に有するGly Ser リンカー(14)を生成する。また、Ser へ
のCys1028の突然変異が示される。個々の構造体は、モノクローナル抗体YL 1/2
により認識されるGlu Glu Phe トリペプチドで終結する。
図2は、精製された鶏卵リゾチーム−C3d 組換えタンパク質の還元条件下で行
なわれた5〜20% SDS−ポリアクリルアミドゲルを示す。分子サイズの標準は、
キロドルトンで左側に示される。
図3は、Raji細胞の〔125I〕HEL-C3d2結合の阻害を示す。(□−HEL.C3d;
○−HEL.C3d2;△−HEL.C3d3;■IgGl;●インヒビターなし;▲CR2)。
図4は、CFA における組換え抗原に対するIgGl応答を示す。HEL(正方形)、HEL
−C3d(丸)及び HEL−C3d2(三角)の組換え抗原を希釈し、0.05mlのPBS 中、500
pモル(パネルA)、50pモル(パネルB)又は5pモル(パネルC)の最終濃
度にした。抗原を同体積の完全フロイントアジュバントにより乳化し、そしてそ
のエマルジョン 0.1mlを、生後4〜6週の雄の CBA/caマウス(Harlan U.K.)
のグループの腹腔内に注射した。対照のマウスは、PBS のみにより乳化されたCF
A を受けた(ひし形)。マウスから、7日間隔で連続的に採血した。すべてのグ
ループの動物は、同体積の不完全フロイントアジュバントにより56日目(矢印)
に乳化された、PBS 0.5ml 中、50pモルのHEL を受けた。HEL 特異的応答を、記
載のようにして、ELISA により決定した。結果は、5匹の動物のグループの平均
±1s.d.を示す。
図5は、塩溶液における皮下組換え抗原に対するIgGl応答を示す。HE(正方形
)、HEL-C3d(丸)及び HEL−C3d2(三角)の抗原をPBS に希釈し、0.1mlのPBS 中
、7000pモル(パネルA)、700p
モル(パルB)又は70pモル(パネルC)の最終濃度にした。抗原を、生後4〜
6週の雄の CBA/cマウスの右後部の側腹部に皮下注射した。対照のマウスは、
PBS のみを受けた(ひし形)。マウスから、7日の間隔で連続的に採血した。す
べてのグループは、77日目(矢印)、同体積の不完全フロイントアジュバントに
より乳化された、PBS 0.05ml中、50pモルのHEL を受けた。HEL 特異的応答を制
限希釈ELISA により決定し、それにより、最後の2倍の一連の希釈溶液はA570
>2s.d.を有し、これは比力価として取られる場合、非免疫血清の吸光度より
も高かった。
結果は、4匹(700 pモルのHEL−C3d)又は5匹(すべての他のグループ)の
動物の平均±1s.d.を示す。
図6は、HEL−C3D2に対する応答の7G6 抗−CR2による抑制を示す。生後4〜
6週の雄の CBA/cマウスに、0.2mgの7g6(黒丸)又は対照のIgG2b(正方形及び丸
)を静脈内注射した。24時間後、マウスは0.1mlのPBS(丸)中、又は0.05mlのPBS(
正方形)中、7pモルの HEL−C3d2を左後部の側腹部に皮下注射した。マウスか
ら、7日めの間隔で連続的に採血し、そしてHEL 特異的応答を、記載のようにし
てELISA により決定し、結果は3匹のマウスのグループの平均を示す。
図7は、HEL−特異的B細胞における〔Ca2+〕iの上昇の組換えHEL 及び HEL
−C3dl−3による刺激を示す。HEL に対して特異的なmIgM及びmIgDを発現するB
細胞を有するトランスジェニックマウスからの脾臓リンパ球を、indo−1により
負荷し、そしてそれぞれ、上昇する濃度のHEL,HEL−C3d,HEL−C3d2及び HEL−
C3d3と共にインキュベートした:70nM(□),7nM(○),0.7nM(△),70pM
(■),7pM(●),0.7pM(▲)及び緩衝液のみ(◇)。B細胞中の〔Ca2+〕
iの変化を流動細胞計測法によりモニターした。
図8は、PBS 中、組換えHEL 抗原により皮下免疫化されたマウスにおけるIgGl
抗−HEL 応答を示す。ゼロ日目、4匹のマウスのグループに、緩衝液のみ(ぬり
つぶされていない記号)又はPBS 中、上昇する量のHEL,HEL−C3d2、又はHEL−C
3d3(ぬりつぶされた記号)を皮下注射した。マウスは、矢印により示されるよ
うに、IFA 中、50pモルのHEL による腹腔内注射により35日目に追加免疫された
。血清を、HEL−特異的IgGlについてELISA により分析し、そして力価を相対的
単位(RU)として表わした。
図9は、HEL の免疫原性に対するCFA 及びC3d の効果の比較を示す。ゼロ日目
、5匹のマウスのグループは、CFA における、500pモル(□),50pモル(○
),5pモル(△),500fモル(■),50fモル(●)又は5fモル(▲)のH
EL により皮下注射された。5匹のマウスの他のグループは、PBS における、5
pモル(△),500fモル(■),50fモル(●)又は5fモル(▲)のHEL−C3
d3、又は緩衝液のみにより皮下注射された。すべての動物は、矢印により示され
るように、IFA 中、50pモルのHEL により28日目に追加免疫化された。HEL−特
異的IgGlの血清力価を、RUとして表わす。
図10は、種々の投与路により、PBS 中、HEL 又はHEL−C3d2により免疫化され
たマウスにおけるIgGl抗−HEL 応答の比較を示す。ゼロ日目、5匹のマウスのグ
ループは、1pモル又は50pモルのタンパク質を、皮下(◇)、筋肉内(○)又
は腹腔内(△)投与された。マウスは、矢印により示されるように、IFA 中、50
pモルのHEL による35日目での腹腔内注射により追加免疫化された。血清をHEL
−特異的IgGlについてアッセイし、そして力価を相対単位(RU)として表わす。
C3d/抗原キメラの構成及び発現
C3d をコードするDNA(7,8)のために、鋳型として、EcoRIにより線状化
されたpMLC3−7 cDNA クローンを用いてのPCR、及び2分間の変性、アニーリ
ング及び拡張の25回のサイクルにより、C3d を増幅した。使用されるプライマー
は次の通りであった:
この及びすべての続くPCR 生成物は、Sequonceキット(U.S.Biochemical Co
rp.)を用いて、ジデオキシヌクレオチド鎖終結方法により配列決定した。XbaI
及びBglII部位は、5’プライマーに及びBamHI部位は3’プライマーに含まれ
た。プライマーは、完全なネズミC3配列の塩基対3070〜3960間の配列を含むよ
うに企画された。5’マライマーにおけるG〜C置換を含むことによって、本発
明者は、アミノ酸位置1028でのCys コドンを、Ser をコードするコドンに変える
ことができ、それにより、チオールエステル結合形成に包含される決定的なCys
を変異誘発した。増幅の後、フラグメントをXbaI及びBamHIにより消化し、そ
して XbaI−及びBamHI−消化されたpBS 中に連結し、pBS.C3dを生成した。
モノマー構造体のアセンブリーのために、モノクローナル抗体YL 1/2 により
認識されるエピトープ標識(9,10)及び停止コドンを、オリゴヌクレオチドを
用いてC3d の3’端上に連結した。pBS.C3dをBamHI及びEcoRIにより消化し、
そしてYL 1/2 エピトープをコードするオリゴヌクレオチドと共に連結し、pBS
.C3d.YLを生成した。前記オリゴヌクレオチドは次の通りであった:
オリゴマーC3d 構造体のアセンブリーのために、〔(Gly)4Ser〕2リンカーを、
PstIにより線状化されたpSVG−spcHEL鋳型を用いてのPCR、及び30秒の変性、ア
ニーリング及び拡張の25回のサイクルにより、鶏卵白リゾチームとの融合配列の
一部として増幅したプライマーは、次の通りであった:
フラグメントを pCRII(InVitrogon)中にクローン化し、そして34b.p.の〔
(Gly)4Ser〕2を、BamHI消化されたpBS.C3d中に、BamHI及びBglIIによる消化
によりサブクローン化し、pBS.C3d.GSを生成した。BamHI消化されたpBS.C3d
.GS中へのpBS.C3d.YLからのBamHI−BglII C3d.YL フラグメントの連結が
、pBS.C3d2 YLを生成した。pBS.C3d3の生成は、1回のpBS.C3d.GSのBamHI
及び BglII消化及びBamHI消化されたpBS.C3d.GS中への 937b.p.のC3d.GS
フラグメントのサブクローン化を反復することによって達成された。続いて、pB
S.C3d3構造体を、pBS.C3d.YLのBamHI及び BglII消化及びBamHI消化されたp
BS.C3d2中への919b.p.のC3d.YL フラグメントの消化により完結した。
イヌのプレ−プロ−インスリンシグナル配列(DPPISS)(11)を、30秒の変性
、アニーリング及び拡張の25回のサイクルを用いて、PvuIIにより線状化されたp
GIR−477(K.Drickamer により供給される)から増幅した。それらのプライマ
ーは次の通りであった:
フラグメントをBamHI及びEcoRIにより消化し、そしてBamHI−EcoRIにより
消化されたpBS(“BLUESCRIPT”)中に連結し、pBS.DPPISS を生成した。真核性
発現ベクターpSG5(Stratagene)を、EcoRI−及び BglII−消化及びpBS.DPPIS
S 生成されたpSG.SSからのEcoRI−BglII DPPISS フラグメントのサブクローン
化により調製した。C3d 含有フラグメントを、pBS.C3dを消化することによって
pBS ベクターからサブクローン化した。BamHI及び BglIIによるYL.pBS.C3d2
.YL 及びpBS.C3d3.YLの消化及び BglIIにより調製されたpSG.SS 中への連結
は、pSG.C3d.YL,pSG.C3d2.YL 及びpSG.C3d3.YLを生成した。
抗原性鶏卵白リゾチーム(HEL)(12)(C.Goodnow)を、30秒の変性、アニ
ーリング及び拡張の25回のサイクルを用いて、PstIにより線状化された鋳型pDa
mian から増幅した。使用されるプライマーは次の通りであった:
フラグメントを、pCRII中にクローン化した。HEL フラグメントを、BamHI及
びBglIIによる pCRII.HEL の消化及び404bpのHEL フラグメントのBglII−及びB
amHI−消化されたpSG.C3d.YL,pSG.C3d2.YL 及びpSG.C3d3.YL プラスミ
ド中への連結によりサブクローン化した。pCRII.HEL プラスミドをまた、YL 1
/2 エピトープを含むように上記のようにして変性し、そしてこの 420bpの Bgl
II−BamHI消化されたHEL.YLフラグメントをBamHI−及びBglII−調製されたpS
G.SSベクター中に連結し、pSG.HEL.YLを付与した。続いて、pSGSベクターを
、pSG5の BglII部位中にYL 1/2 エピトープを直接的に連結することによって、
YL 1/2 エピトープを含むように変性した。使用されるオリゴヌクレオチドは次
の通りで
あった:
過渡的な発現のために、pSG.HEL.C3d3.YLをEcoRI及びXbalにより消化した
。3468bpのHEL.C3d3.YL フラグメントをDNA ポリメラーゼIのクレノウフラグ
メントを用いてブラント末端化し、そしてA71dベクター中に連結した。A71d(A
.Venkitaraman の贈り物)、すなわち真核性発現ベクターを、BamHIにより消
化し、そしてこの部位をブラント末端化することにより連結のために調製した。
SmaIによる続く消化は、ポリアデニル化シグナルの切り出しをもたらした。
プラスミドpSG.HEL.YL,pSG.HEL.C3d.YL及びpSG.HEL.C3d3.YLを、リ
ン酸カルシウム方法を用いて、L細胞中に、pSV2−neoにより同時トランスフェ
クトした。細胞を 0.8mg/mlのG418により選択した。G418耐性を示す細胞はクロ
ーン化された単一の細胞であり、そして多量の融合タンパク質を分泌するものを
ELISA により同定した。抗−HEL 抗体 HyHEL−8及びビオチニル化された HyHEL
−9(13)を捕獲ELISA に用い、そしてアビジン−ホースラディシュペルオキシ
ダーゼ(BioRad)により検出した。それらのトランスフェクタントを懸濁液にお
いて、又は Cytodex−1マイクロキャリヤービーズ上で多量培養し、そして融合
抗原を培養上清液から、10mg/mlで5mlのSepharose 4Bに結合されるYL 1/2 抗
体に基づく親和性クロマトグラフィーにより精製した。培養上清液を、親和性樹
脂上に通し、そしてそれぞれ10のカラム体積の緩衝液1(50mMの トリス、pH8.0
,150mMのNaCl,0.1mM のEDTA)及び0.2%のND40により消化された緩衝液1によ
り洗浄した。カラムをさらに、20カラム体積の緩衝液1により洗浄し、そして次
に、融合抗原を50mMのTEA,
pH11.5,150mMのNaCl,0.1mM のEDTAにより溶離した。抗原を中和し、プールし
、そしてPBS に対して透析した。プラスミドA71d.HEL.C3d3.YL をDEAE−doxt
ram 方法を用いてCOS 細胞に過渡的に発現し、そして融合タンパク質を上記のよ
うにして精製した。続いて、精製されたHEL.C3d3.YL 及びHEL.C3d2.YLタン
パク質を高分解能Sephacryl S−200カラム(Pharmacia)上でサイズ分別し、ト
ランスフェクトされた細胞により生成されるタンパク質の汚染組換え形を除去し
た。
HEL −特異的B細胞における〔Ca2+〕iの上昇の組換えHEL 及び HEL−C3dl−
3による刺激
HEL に対して特異的なmIgM及びmIgDを発現する8種の細胞を有するトランスジ
ェニックマウスからの脾臓リンパ球を、indo−1により負荷した。脾臓細胞を、
フィコエリトリン接合のラット抗−CD43により染色した。CD43陽性細胞を取り出
し、そしてその細胞を、それぞれ上昇する濃度のHEL,HEL−C3d、HEL−C3d2及び
HEL−C3d3と共にインキュベートした。B細胞における〔Ca2-〕iの変化を流動
細胞計測法によりモニターした。結果は図7に示される。
レセプター特異的モノクローナル抗体によるmIg へのCD21又はCD19の同時連結
は、mIgが細胞内遊離Ca2+濃度(〔Ca2+〕i)の上昇を刺激する閾値を低める。H
EL のための2nMのKdを有するmIgM及びmIgDをコードするトランスジーンを発現
するマウスからのBリンパ球をindo−1により負荷し、上昇する濃度の組換えHE
L タンパク質と共にインキュベートし、そして流動細胞計測法により〔Ca2+〕i
の変化についてアッセイした(図7)。
HELは〔Ca2+〕iの用量関連上昇を引き起こし、そしてその閾値は7nMであっ
た。HEL 上でのC3d の1,2及び3のコピーの存在は、その閾値をそれぞれ 0.7
nM,0.07nM及び 0.007nMに低め、これは
個々のC3d がこの細胞の応答を誘発するためにHEL の能力を10倍、高めたことを
示唆する。飽和濃度の7G6 抗−CP21(17)は、HEL−C3d2の応答のための閾値のH
ELの閾値への戻りを引き起こした。非トランスジェニックマウスからのB細胞は
、HEL 又は HEL−C3dl−3に対して応答しなかった。mIgMに対する抗体により非
トランスジェニックB細胞において誘発された〔Ca2+〕iの変化は、7nMのHEL
−C3d3の存在により変更されなかった。3nMのHEL 及び HEL−C3d3と共にトラン
スジェニックB細胞の10分間のインキュベーションは、フルオレセイン−接合の
HEL の続く結合により評価される場合、抗−HEL 部位の51%及び47%飽和をもた
らし、これは、HEL へのC3d の結合が、たぶんHEL のためのそれらの抗原レセプ
ターの高い親和性のために、トランスジェニックB細胞への結合を改良しなかっ
たことを示唆する。従って、増強された〔Ca2+〕i応答は、CD21−CD19複合体の
C3d−依存性補充を通して、増強された表示に影響を及ぼした。
融合タンパク質のC3d 成分のCD21を結合する能力
融合タンパク質のC3d 成分のCD21を結合する能力を、CD21を発現するRaji B
リンパ幼芽細胞を用いての競争結合アッセイにより決定した。3〜4×107個の
細胞/mlのRaji細胞を、1nMの〔125I〕HEL−C3d2(比活性9.1×105cpm/mg)及
び上昇する濃度のHEL−C3d 融合タンパク質、500nMの(CR2)2−IgGl〔T.Heb
el,J.M.Ahearn,D.T.Fearon,Science 254,102(1991)〕、又は0.1%ウ
シ血清アルブミンを含むPBS 中、IgGlと共に4℃で45分間インキュベートした。
細胞をジブチル/ジイソ−オクチルフタレートクッションを通して遠心分離し、
そして細胞ペレットに結合される125Iの量を測定した。2種の実験において、
〔125I〕HEL−C3d2の特異的結合の50%阻害が、それぞれ 185〜225nM のEEL−C
3d
,8〜20nMの HEL−C3d2、及び1.5〜2.2nM の HEL−C3d3により生じた。結合反
応の結合活性とC3d の数との間の相互関係は、融合タンパク質における個々のC3
d がCD21と相互作用することができることを示唆する。
(C3d)n−免疫原融合体に対するインビボ抗体応答
生後4〜6週の雄の CBA/cマウスをHarlan U.K.から得た。組換え抗原をPB
S に希釈し、そして完全フロイントアジュバントに乳化した。0.1mlを腹腔内注
射した。他方、組換え抗原をPBS に希釈し、そして 0.1mlを腹腔内注射した。さ
らに、組換え抗原をPBS に希釈し、そして 0.1mlを、示されるようにして、左後
部の側腹部に皮下又は筋肉内注射した。続く投与は、0.1mg/mlのネズミアルブ
ミン(Sigma A−3559)を含むPBS に組換え抗原を希釈することによって行なわ
れた。
抗体応答を、処理されたマウスの尾の静脈から一定の間隔で採血し、そしてEL
ISA によりHEL 特異的血清Igを評価することによってモニターした。Nunc−Immu
noプレートを、炭酸塩緩衝液(pH10.0)において4℃で一晩、HEL(0.5mg/ml)
(Sigma)により被覆し、そしてPBS中、1% BSAによりブロックした。ブロック
及びすべての続く段階は、室温で1時間、行なわれた。段階の間、プレートを、
0.05%のTween,20を含むPBS により3度洗浄した。血清を0.1% BSA/PBS に希
釈し、そしてHEL 特異的IgGlの存在を、ホースラディシュペルオキシターゼ結合
のヤギ抗−マウスIgGl(Southern Biotechnology Associates Inc.)を用いて決
定した。
それぞれCFA 及びIFA における 0.1mgのHEL により免疫化され、そして追加免
疫化されたマウスからのプールされた血清を用いての標準曲線が、個々のプレー
ト上に含まれた。ELISA をo−フェニレンジアミン二塩酸塩(Sigma P−9187)
により展開し、そして光学
密度を 570nmでMolecular Devices マイクロプレートリーダーにより決定した。
免疫化に対する用量応答
HEL の相対的免疫原性を、PBS中、増加する量の組換えタンパク質によりマウ
スを皮下免疫化することによって、HEL−C3d2及びHEL−C3d3の免疫原性と比較し
た。最高の用量、すなわち500pモルのHEL は、変性されていない抗原が一次免
疫化の後、IgGl応答を誘発した閾値であった(図8)。対照的に、わずか500f
モルの HEL−C3d2及び50fモルの HEL−C3d3が、比較できる初期IgGl応答を誘発
するために必要とされた。3種の組換えタンパク質のそれらの用量はまた、不完
全フロイントアジュバント(IFA)における50pモルのHEL による感作されたマウ
スの挑戦の後に生じる促進され、そして増強されたIgGl応答により示されるよう
に、免疫学的記憶を誘発するために必要な限界量であった。さらに、すべての組
換えタンパク質によるHEL に対する免疫学的記憶の生成は、それらの応答がT細
胞−依存性であることを示唆する。
完全フロイントアジュバントとの比較
C3d の免疫増強機能を、完全フロイントアジュバント((FA)のその機能とマ
ウスにおいて比較した。初期IgGl応答を誘発するための限界用量は、それぞれ、
CFA 中、HEL に関しては、50pモル及びPBS 中、HEL−C3d3に関しては 500fモ
ルであった(図9)。記憶を誘発するために必要とされる量は、それぞれ、CFA
中、HEL に関しては、5pモル及びPBS 中、HEL−C3d3に関しては50fモルであ
った。従って、抗原へのC3d の3種の分子の結合は、強力なアジュバントCFA よ
りも、獲得された免疫認識のための閾値を低めることにおいて 100倍以上、効果
的である。
インビボでのCD21の関与
HEL−C3d3に対するIgGl応答におけるCD21の関与を決定した。PBS 中、500fモ
ルのHEL−C3d3により皮下免疫化する24時間前、300mgの7G6 抗−CD21又はイソタ
イプ−適合の対照抗体をマウスに腹腔内注射した。29日目でのIgGl抗−HEL の力
価は、7G6−処理されたマウスの25RU及び対照のマウスの4610RUよりも低かった
。それぞれ7G6 抗−CD21及び1D3 抗−CD19により染色された脾臓リンパ球の流動
細胞計測法による29日目での分析は、7G6 による処理が、CD19のそれらの発現を
減じないでB細胞上の検出できるCD21を排除したことを示した。(FACS分析のた
めに、脾臓細胞を、5μg/mlの7G6,1D3又は対照抗体、続いてPE−接合された
ヤギ抗−ラットF(ab)2(CalTag)により染色した。
応答の特異性
マウスを、PBS 中、25μgのカサガイ(keyhole limpet)ヘモシアニン(KLH)
のみにより、又は0.5pモルの HEL−C3d3の存在下で、皮下同時免疫化した。14
日目でのKLH に対するIgGl応答は、HEL−C3d3により変更されず、これは、C3d
が結合される抗原に対してのみ応答を調節することを示す。
ネズミSmB/SmB −C3d3の構成及び発現
pGEM 72f+におけるSmB cDNAは、J.Craft(Yale University)により供給さ
れた。SmB は、RNA スプライシングに関与する小さなリボ核タンパク質粒子のタ
ンパク質成分であり、そして通常、細胞質においてのみ発現される。本発明者は
、これを、COS 細胞を過渡的にトランスフェクトすることにより、C3d との分泌
された可溶性ポリペプチド融合体として発現することができる。この自己−抗原
に関する興味は、C3d の調節効果を用いての免疫システムの耐性の克服である。
完全なSmB 配列を、EcoRIを用いてベクターから切断し、そして
そのコード配列を、その配列の5’端に BglII制限部位を、及びその配列の3’
端にBamHI部位を付加するプライマーを用いて、PCRにより増幅した。
PCR 増幅は、1分間の変性、アニーリング(55℃)及び拡張の35回のサイクル
から構成された。PCR 生成物を、フェノール/クロロホルム抽出し、そしてBamH
I及びBglIIにより消化し、そしてBamHI/BglII消化されたpBS.C3d(上記参照
のこと)中にサブクローン化し、pBS.SmBを生成した。コロニーを、PvuII制限
消化により正しい配向性についてスクリーンし、そしてSmB 配列を、Sequenase
キット(U.S.Biochemical Corp.)を用いてのジデオキシ−仲介の配列決定によ
り確かめた。
次に、SmB を、BamHI及びBglIIを用いてpBS.SmBから切断し、そしてBamHI
及びBglIIにより開環されたpSG5.YL(上記参照のこと)及びpSG.C3d3.YL(上
記参照のこと)中にサブクローン化した。コロニーを、PvuII消化により正しい配
向性についてスクリーンした。正しい挿入は、pSG5ベクターにおけるBamHI部位
へのSmB 上の BglII部位の連結を必要とした。それらの部位は結果的には、失な
われ、これはBamHI及びBglII消化により確かめられた。得られる構造体は、pSG
5.SmB.YL 及びpSG5.SmB.C3d9.YL である。
次に、個々の完全なカセットを、EcoRI及び XbaIによる消化によりpSG5ベク
ターから切断し、ゲル精製し、抽出し、そして1159bpのSmaI−Bst 1107Iフラ
グメントの除去により前もって変性されている pcDNA3(Invitrogen)中にサブ
クローン化し、そして次に
、閉環した。得られるプラスミドを、PvuII制限消化によりスクリーンし、そし
てpCMV.SmB.YL 及びpCMV.SmB.C3d3.YLと命名した。
pCMVベクターによる可溶性組換えタンパク質の発現は、DEAE Dextran方法によ
るCOS 細胞の過渡的トランスフェクションにより確かめられた。35S−メチオニ
ンによるインビトロラベリングを用いて、rSmB及びrSmB.C3d3についての適切に
分別されたタンパク質を、COS 細胞上清液から、組換えタンパク質上のYLエピト
ープを認識するYL 1/2 抗体により免疫沈殿せしめる。
本明細書に記載される結果は、抗原に対して高められた免疫応答が抗原の個別
な分子変性、すなわちC3d の結合により調節され得ることを示す。その応答は10
,000倍の程度、増強され得、これは、完全フロイントアジュバント(CFA)を用
いての増強よりも、かなりの程度高い。
【手続補正書】特許法第184条の8第1項
【提出日】1996年7月8日
【補正内容】
請求の範囲
1.CD21(CR2)又はCD19のためのリガンドと会合する抗原を含んで成る組成
物。但し、そのリガンドは、CD21又はCD19に特異的な抗体ではなく、そして又の
抗原は、補体C3フラグメントの内部チオエステルに由来するエステル結合を通
しては補体C3フラグメントと会合しない。
2.請求項1に記載の組成物であって、その抗原がペプチド又はポリペプチド
であるもの。
3.前記抗原及び前記リガンドを含んで成る融合タンパク質を含んで成る、請
求項2に記載の組成物。
4.前記リガンドがC3d 分子を含んで成る、請求項1〜3のいずれか1に記載
の組成物。
5.前記リガンドが2以上のC3d 分子を含んで成る、請求項4に記載の組成物
。
6.C3d 分子に結合する抗原を含んで成る接合体。但し、その抗原は、補体C
3フラグメントの内部チオエステルに由来するエステル結合を通しては補体C3
フラグメントに会合しない。
7.2以上のC3d 分子を含んで成る、請求項6に記載の接合体。
8.前記免疫原がペプチド又はポリペプチドである、請求項6又は7に記載の
接合体。
9.融合タンパク質である、請求項8に記載の接合体。
10.CD21(CR2)又はCD19のためのリガンドに連結される、ペプチド又はポリ
ペプチド抗原を含んで成る、融合タンパク質。
11.前記リガンドがC3d分子を含んで成る、請求項10に記載の融合タンパク質
。
12.2以上のC3d 分子を含んで成る、請求項11に記載の融合タン
パク質。
13.請求項9〜12のいずれか1項に記載の融合タンパク質をコードする核酸。
14.請求項13に記載の核酸、及び前記コードされた融合タンパク質の発現のた
めの調節配列を含んで成る発現ベクター。
15.請求項13に記載の核酸、又は請求項14に記載の発現ベクターを含んで成る
宿主細胞。
16.ペプチド又はポリペプチド、及びCD21又はCD19のリガンドを含んで成る融
合タンパク質の製法であって、前記融合タンパク質をコードする核酸からの発現
を含む方法。
17.ペプチド又はポリペプチド、及び1以上のC3d 分子を含んで成る融合タン
パク質の製法であって、前記融合タンパク質をコードする核酸からの発現を含む
方法。
18.前記融合タンパク質の発現のための条件下で、前記核酸を含んで成る宿主
細胞を培養することを含んで成る、請求項16又は17に記載の方法。
19.請求項16〜18のいずれか1項に記載の方法に従っての融合タンパク質の製
造に続いて、その融合タンパク質を単離することを含む方法。
20.請求項19に記載の方法に従っての融合タンパク質の単離に続いて、(i)
請求項9〜12のいずれか1項に記載の融合タンパク質、及び(ii)医薬的に許容
できる賦形剤又は担体を含んで成る組成物を配合することを含む方法。
21.抗原の免疫原性を変更するための方法であって、接合体分子を形成するた
めに前記抗原に1以上のC3d 分子をインビトロでカップリングすることを含む方
法。
22.前記抗原の免疫原生が高められる、請求項21に記載の方法。
23.多くのC3d 分子が前記抗原にカップリングされる、請求項22に記載の方法
。
24.個々のC3d 分子が、ペプチド結合を通じて前記抗原にカップリングされる
請求項21〜23のいずれかに1項に記載の方法。
25.前記接合体分子がコーディング核酸からの発現により製造される、請求項
24に記載の方法。
26.請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物、及び医薬的に許容できる賦
形剤又は担体を含んで成る、固体への投与のための組成物。
27.C3d 分子にカップリングされる抗原及び医薬的に許容できる賦形剤又は担
体を含んで成る接合体を含んで成る、固体への投与のための組成物。
28.前記接合体が2以上のC3d 分子を含んで成る、請求項27に記載の組成物。
29.前記抗原がペプチド又はポリペプチドである、請求項27又は28に記載の組
成物。
30.前記接合体が融合タンパク質である、請求項29に記載の組成物。
31.請求項10〜12のいずれか1項に記載の融合タンパク質及び医薬的に許容で
きる賦形剤又は担体を含んで成る、固体への投与のための組成物。
32.免疫原に対する個体の免疫応答を調節するために個体への投与のための、
請求項26〜31のいずれか1項に記載の組成物。
33.抗原に対する哺乳類の免疫応答を調節するための医薬の製造における、CD
21(CR2)又はCD19のためのリガンドに会合する抗原を含んで成る組成物の使用
。但し、その抗原は、補体C3フラグメントの内部チオエステルに由来するエス
テル結合を通じて補体C3
フラグメントと会合しない。
34.免疫原に対する個体の免疫応答を調節するための医薬の製造における、C3
d 分子にカップリングされる抗原を含んで成る接合体の使用。
35.前記接合体が2以上のC3d 分子を含んで成る、請求項34に記載の使用。
36.前記抗原がペプチド又はポリペプチドである、請求項34又は35に記載の使
用。
37.前記接合体が融合タンパク質である、請求項36に記載の使用。
38.免疫原に対する個体の免疫応答を調節するための医薬の製造における、請
求項10〜12のいずれか1項記載の融合タンパク質の使用。
39.前記免疫応答が抗体応答を含んで成る、請求項33〜38のいずれか1項に記
載の使用。
40.前記免疫応答がT−細胞応答を含んで成る、請求項33〜39のいずれか1項
に記載の使用。
41.着目の抗原に対する個体の免疫応答を調節するための方法であって、請求
項1〜5のいずれか1項記載の組成物を個体に投与することを含む方法。
42.着目の抗原に対する個体の免疫応答を調節するための方法であって、C3d
分子にカップリングされる抗原を含んで成る接合体を個体に投与することを含む
方法。
43.前記接合体が2以上のC3d 分子を含んで成る、請求項42に記載の方法。
44.前記抗原がペプチド又はポリペプチドである、請求項42又は43に記載の方
法。
45.前記接合体が融合タンパク質である、請求項44に記載の方法。
46.着目の抗原に対する個体の免疫応答を調節するための方法であって、請求
項10〜12のいずれか1項に記載の融合タンパク質を個体に投与することを含む方
法。
47.前記免疫応答が抗体応答を含んで成る、請求項41〜46のいずれか1項に記
載の方法。
48.前記免疫応答がT−細胞応答を含んで成る、請求項41〜47のいずれか1項
に記載の方法。
49.着目の抗原に対する抗体応答を高めるための方法であって、CD21又はCD19
のためのリガンドに会合する抗原を含んで成る組成物を哺乳類に投与することを
含む方法。但し、そのリガンドは、CD21又はCD19のための抗体ではない。
50.着目の抗原に対する抗体応答を高めるための方法であって、複数のC3d 分
子にカップリングされる抗原を含んで成る接合体を哺乳類に投与することを含む
方法。
51.請求項49に記載の組成物又は請求項50に記載の接合体の哺乳類への投与に
続いて、その哺乳類から抗体を単離することを含む方法。
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フロントページの続き
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