JPH10509237A - 中和抗体の誘発のための防御抗原を同定する方法 - Google Patents

中和抗体の誘発のための防御抗原を同定する方法

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JPH10509237A JP8516332A JP51633296A JPH10509237A JP H10509237 A JPH10509237 A JP H10509237A JP 8516332 A JP8516332 A JP 8516332A JP 51633296 A JP51633296 A JP 51633296A JP H10509237 A JPH10509237 A JP H10509237A
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Abstract

(57)【要約】 本発明は、中和抗体を誘発するのに有用であり得る抗原の同定のための新規な方法を提供する。この方法は、自然感染期間中、感染と高い中和血清力価とを有する対象からの一群の抗体に結合する、固相捕獲試薬としての、抗原の利用に基づくものである。この方法は、クローン化した抗体のライブラリー、例えばファージ展示組み合わせ抗体をスクリーニングするのに特に適している。

Description

【発明の詳細な説明】 中和抗体の誘発のための防御抗原を同定する方法 本発明は、行政府の支援、即ち承認番号AI 33292として、ナショナルインステ ィチューツオブヘルス(National Institutes of Health)の支援により開発され た。該行政機関は本発明の権利の幾分かを所有する。 発明の背景 1.発明の分野 本発明は、一般的には抗原の中和および抗体の分野に関連し、より詳細には固 相捕獲試薬としての抗原の使用を通して、予備選択された抗原上のエピトープに 結合する、中和抗体を同定する方法並びに組み合わせ抗体ライブラリーのパンニ ング法に関わり、ここで該固相捕獲試薬は該抗体と結合する。予備選択された抗 原の、抗体ライブラリーから中和抗体を選択する能力は、候補ワクチンの迅速な 評価をもたらす。 2.関連技術の説明 一般に、抗体産生細胞のあらゆる処方を、抗体分子のクローニング用の源とし て利用できる。ファージミドと呼ばれるタンパク展示繊維状ファージベクターの 使用は、多様且つ新規な免疫特異性を有するモノクローナル抗体の大きなライブ ラリーの効率的な調製を可能とすることが、繰り返し示されている。該技術は、 繊維ファージコートタンパク膜アンカードメインを、繊維状ファージ複製を組み 立てる際に、遺伝子生成物を遺伝子と結合するための手段として使用し、また組 み合わせライブラリーからの抗体のクローニングおよび発現のために利用されて いる(カング(Kang)等,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,1991, 88, p.4363)。 抗体の組み合わせライブラリーは、cpVIII膜アンカーおよびcpIII 膜アンカーの 両者を使用して製造されていた(バーバス(Barbas)等,Proc.Natl.Acad.Sci. U.S.A.,1991, 88 p.7978)。 ファージミドライブラリーの多様性は、後に追加の、望ましいヒトモノクロー ナル抗体を生成し、かつ同定するために、該ライブラリーの該モノクローナル抗 体の免疫特異性を増大および/または変更するように操作することができる。例 えば、重(H)鎖および軽(L)鎖免疫グロブリン分子をコードする遺伝子を、ランダ ムに混合して(無造作に混ぜ)、組み立てられた免疫グロブリン分子内に新たな HL対を形成することができる。付随的に、H鎖およびL鎖の一方または両者をコ ードする遺伝子は、該免疫グロブリンポリペプチドの可変領域の相補性決定領域 (CDR)内で変異誘発することができ、またその後に所定の免疫反応性および中和 能力についてスクリーニングすることができる。 数年前に着想されるまで、この組み合わせ法が、無比のヒト抗体応答を可能と するものであった。ヒト免疫系の予備免疫、免疫および記憶コンパートメント(c ompartments)からの抗体のクローニングが立証されている。組み合わせ抗体は、 抗原との結合に関して、血清抗体と競合するクローン化抗体の能力によって立証 されるように、自然の応答の正確な機能の反映を与えることが示されている。 ウイルス疾患に対する予防は、伝統的にインビトロでウイルスを中和できる抗 体が血清中に予め存在することと関連していた。事実、ワクチンは、しばしは中 和抗体応答を誘発する能力に基づいて評価される。HIV-1 の場合には、与えられ たサブユニットワクチンの、もっともらしい有効性に関連する、幾つかの試みか ら得られた、ワクチン投与されたヒトの血清が、インビトロで、実験室で単離さ れたウイルスを中和し得るという、初期の楽観論が見られた(バーマン(Berman) 等,Nature,1990,345:622;コーエン(Cohen)等,Science,1993, 262:980)。 これらの楽観論の根拠は、該被ワクチン投与者の血清が、HIV-1 の主要な単離体 に対して殆ど無効であることが分かった際に、大いにぐらついた(コーエン(Coh en)等の上記文献)。過免疫によりプールしたヒト血漿処方物は、一次単離体の 幾つかを中和できる(ソイヤー(Sawyer)等,J.Virol.,1994, 68:1342; マスコ ラ(Mascola)等,J.Infect.Dis.,1994, 169:48;リン(Wrin)等,J.Acq.Imm. Def.Synd.,1994, 7:211)が、これらは、最も複雑なワクチンを除く全てによ って誘発することが困難であると考えられる、特異性の組み合わせを表している (レトビン(Letvin)等,N.Engl.J.Med.,1993,329:1400)。一次単離体の広 いスペクトルを効果的に中和することのできる単一の抗体は、ワクチン法を有効 にし、かつワクチン設計の鋳型を与えるであろう。更に、受動免疫療法用の、例 えば母体−胎児伝達の中断用の試薬を構成するであろう。 ワクチンは、しばしば中和抗体応答を誘発するその能力に基づいて評価されて いる。即ち、まず動物についてテストされ、次いでヒトについてテストされる。 従って、候補ワクチンの治療上の有効性を予想するためのインビトロ法に対する 需要があった。フォルゴリ(Folgori)等(EMBO J.,1994,13:2236)は、ワクチン のスクリーニング法のそのような変法の一つを記載している。この研究は、ファ ージの展示したペプチドライブラリーからの、ファゴトープ(phagotopes)と呼ば れる疾患−特異的エピトープを使用し、かつこれらをヒト血清と反応させて、ミ モトープ(mimotopes)と呼ばれる抗原模倣体を同定した。ヒト肝炎Bウイルスエ ンベロープタンパク(HbsAg)の2種のエピトープを表す2種のミモトープが、こ の方法により同定された。マウスに注射した場合、該反応性のファゴトープは、 HbsAg に対して特異的な免疫応答を誘発し、このことは、関連抗体を誘発するフ ァゴトープを同定できることを立証している。 かくしてフォルゴリ等のペプチド−ライブラリースクリーニング法は、動物ま たはヒトのインビボ接種を利用する必要なしに、ペプチドを主成分とする免疫原 を同定するための抗原を使用しない手順を記載している。フォルゴリ等のナイー ブな血清の使用とは対照的に、本発明は、ファージ−展示Fab ライブラリーを使 用して、候補ワクチンをスクリーニングするものであり、該ライブラリーは、特 定の疾患に対する高い中和力価を有する患者から単離した、中和抗体を含有する ヒト血清由来のものである。フォルゴリ等の方法は、疾患関連病原体上の強力な 免疫原性エピトープを同定するであろう。しかしながら、これらのミモトープは 必ずしも、中和抗体応答を誘発する、該エピトープを反映しないであろう。例え ば、HIV に対する天然抗体応答においては、誘発される抗体の大部分は非−中和 性である。その少量のみが、強力な中和型、例えば本発明のIgGI b12である。本 発明の方法は、この少数の中和抗体と優先的に結合できる抗体を同定するもので あり、またワクチンとして使用した場合には、免疫応答におけるこれらの強力な 中和抗体を誘発できる。本発明は、またファージ上に展示されない候補ワクチン のスクリーニング法をも提供し、一方でフォルゴリ等はランダムペプチドのファ ージ展示系を利用しており、これはインビボ抗原エピトープ提示構造を反映でき ない。最も重要なことは、本発明が、特異的反応性のファージにより展示された Fab の同定並びに選別法を提供し、該Fab はインビトロアッセイによる、中和能 の後のスクリーニングおよび測定のために有用である。 発明の概要 本発明は、候補の予備選択された抗原を、自然感染を通して高い中和血清力価 をもつ、ヒトドナーから調製されたライブラリー由来の中和抗体を選択するその 能力によって、防御抗体応答を誘発する能力について評価することに基づくもの である。本発明は、迅速にかつ動物テスト段階を経ることなしに、ヒト応答につ いてこのような抗原を評価するという利点を与える。本発明の方法は、防御免疫 応答を刺激する上で最も有効または強力なこれらの抗原を同定するのに有効であ るばかりか、受動免疫療法のために有用な、中和抗体を同定するためにも有用で ある。 かくして、第一の態様において、本発明は防御抗体に結合する、防御または中 和抗体を同定する方法であって、予備選択した候補防御抗原と抗体分子とを、該 抗原のエピトープを該抗体と結合し、かつ免疫錯体を形成することを可能とする 条件下で接触させ、該エピトープに結合した該抗体分子を取り出し、かつ該抗体 分子の防御能を測定し、それによって該抗原が防御免疫応答を誘発する能力を予 測する工程を含む。該抗原または抗体の該防御能力は、好ましくはインビトロで 評価される。 図面の簡単な説明 第1図は、IgG1b12 によるHIV-1 の一次単離体の中和のためのアッセイを示す 図である。ウイルスの中和は、指標細胞としてPHA-刺激PBMCを使用して評価し、 またリポータアッセイとしての細胞外p24 の測定は、本質的に以前に記載された ようにして実施した(E.S.ダール(Daar)等,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,19 90,87:6574; D.D.ホー(Ho)等,J.Virol.,1991, 65:489)。ウイルス (50TCID50)と抗体とを一緒に、PHA-刺激PBMCに添加する前に、種々の濃度におい て、30分間37℃にてインキュベートした。ウイルスの複製は、5-7 日後に、p24 ELISA 測定により評価した。該ウイルスドナーの名称、位置および疾患状態は以 下の通りであった。■: VS(N.Y.,急性);▼: N70-2(ニューオーリンズ,無症候性 );▲: AC(サンジエゴ,AIDS);●: LS(ロスアンジェルス,AIDS);□: NYC-A(N.Y. ,未知);▽: WM(ロスアンジェルス,AIDS);△: RA(N.Y.,急性);◇:JP(N.Y.,急性) 。分子クローニングHIV-1 ウイルスJR-CSF(◆)およびHIV-1 単離JR-FL(○)が 記載されている(W.A.オブライエン(O'Brien)等,Nature,1990,348:69;W.A. オブライエン(O'Brien)等,J.Virol.,1992, 66:3125;W.A.オブライエン(O'Br ien)等,J.Virol.,1994, 68:5264)。 第2図は、IgG1 b12と、一連のHIV-1 の国際単離体との反応性を示す。0.50ま たはそれ以上の結合比は、強力な抗体反応性を表すものと見做され、0.25-0.50 の範囲の比は、温和な反応性を表すものと考えられ、〈0.25 の値は、本質的に 負 の数値は調べられた各クレードのウイルス数を意味する。 第3図は、プラーク減少により測定された、Fab8の中和活性を示す図である。 第3A図は、HSV-1 に対する活性を示し、第3B図はHSV-2 に対する活性を示す。精 製Fab8は、約0.25μg/mlで50% 阻害および0.6 μg/mlにて80% 阻害となるように HSV-1 を中和し、一方でHSV-2 は、0.05μg/mlにて50% 阻害および0.1 μg/mlに て80% 阻害となるように、中和された。 第4図は、プラーク発生アッセイの阻害を示す。精製されたFab8は、HSV-1(第 4Aおよび4B図)で感染またはHSV-2(第4Cおよび4D図)で感染した単層上に、感染後 4時間(hpl)適用した場合に、プラークの発生を阻害した。第4A図は、プラーク サイズにおける統計的に有意な減少が、5および1μg/mlの濃度において観測さ れ(*=p〈0.01)、5μg/mlではプラークサイズにおけるおよそ50% の減少を示し た。また、該プラーク数はFab 濃度5および25μg/mlにおいて顕著に減少した( 第4Bおよび4D図)。25μg/mlおよび72時間 hpiにおいて、HSV-2 感染単層中のプ ラーク発生は、完全に阻害された(4Cおよび4D図)。第4E図は、幾つかの異なる Fab 濃度および86 hpiにおける、HSV-2 で感染された単層についてのプラーク 発生阻害アッセイを示す。 第5図は、付着後中和アッセイを示す。Fab8は、ビリオン付着後、HSV-1 感染 性を減じた。第5A図は、種々のFab 濃度における、付着前および付着後のプラー ク減少の割合を示す図である。第5B図は、種々のFab 濃度における、付着前およ び付着後の中和比を示す図である。 第6図は、Fab8によって認識されるタンパクの同定を示す図である。HSV-2 感 染ベロ細胞由来の全タンパク(レーン1)およびFab8による免疫沈降の生成物(レー ン2)のSDS-PAGEが示されている。並行して実施したウエスタンブロット法を、マ ウスモノクローナル抗−gD抗体(MABα-gD)により精査し、またコントロールとし てウサギポリクローナル抗−HSV-2(RABα-HSV2)を使用した。並行して実施した ゲルのクーマシー染色をも示す。Fab8は、gDに対して特異的なマウスモノクロー ナル抗体により認識されるが、他のHSV 糖タンパクに対するマウスモノクローナ ル抗体によっては認識されない、見掛けの分子量48-50 kDのバンドを免疫沈降し た。 発明の詳細な説明 本発明は、防御性中和抗原および予備選別された候補防御抗原と結合する中和 抗体の迅速同定法を提供する。抗体ライブラリーから、特異的に中和抗体を選別 する、予備選別抗原の能力を、ワクチンとしての効力値を評価するための予想手 段として利用する。中和抗体は、自然感染を通して高い中和血清力価を有するヒ トドナーから調製した、ライブラリーから得られる。本発明は、迅速かつ予備的 動物テスト段階を必要とせずに、このような抗原に対するヒトの抗体応答を評価 できるという利点をもたらす。 本発明は、防御抗体と結合する防御抗原を同定するための方法を提供し、該方 法は、a)予備選択した候補防御抗原と、抗体分子とを、該抗原のエピトープを、 該抗体と結合し、かつ免疫錯体を形成することを可能とする条件下で接触させ、 b)該エピトープに結合した該抗体分子を取り出し、かつc)該抗体分子の防御能を 測定し、それによって該抗原の防御能力を予測する工程を含む。 本発明の方法における該抗体分子は、ファージ−表示組み合わせライブラリー 中にあり、かつ該工程a)で使用した接触段階は、該抗原を該ライブラリーでパン ニングすることを含む。結合した該抗体分子を取り出すまたは集める該工程b)は 抗原に結合した抗体分子を溶出するための、当業者には公知の一般的な方法の何 れかを利用して実施できる。該抗原上のエピトープに結合し、かつ中和抗体であ ることが決定された、表面上の抗体分子を発現する任意のファージをクローニン グにより単離することができ、またそのDNA は、当業者には周知の一般的な方法 に従って、配列決定できる。 該抗体分子の中和または防御能力を個々のクローンについて評価する必要はな い。抗体分子のプールした調製物についてテストし、次いでライブラリーにより パンニングすることができる。本明細書で使用する用語「中和(neutralizing)」 および「防御(protective)」とは、受動免疫の場合には抗体に言及し、あるいは ワクチンの場合には抗原に言及しており、該ワクチンは該抗体または抗原の投与 前の応答に比して、高い免疫応答を与える。従って、用語「防御抗原(protectiv e antigen)」とは、投与すべき抗原の量が、該抗原、例えばHIV に対する患者の 免疫応答を増大するのに十分な量を意味する。 本発明の方法の該段階c)は、同定された抗体分子の防御または中和能の測定を 含む。この段階は典型的にはインビトロで行われる。中和能は当業者には公知の 一般的に利用されている、例えばプラーク形成による感染力の抗体阻害(C.V.ハ ンソン(Hanson)等,J.Clin.Microbiol.,1990, 28:2030)またはシンシチウム (syncytial)形成(ナラ(Nara)等,AIDS Res.Human Retroviruses,1987,3:283) (これらに制限されない)により測定できる。抗体の中和能力の他の測定法につ いては、カレントプロトコールインイムノロジー(Current Protocols in Immuno logy),コリガン(Coligan)等,ウイリーインターサイエンス,1994(これを本発 明の参考文献とする)。 本発明で使用する用語「抗体(antibody)」および「抗体分子(antibody molecul e)」とは、完全な分子並びにそのフラグメント、例えばエピトープ決定基と結合 できるFab,F(ab')2,およびFvを包含する。これらの抗体フラグメントは、その 抗原またはレセプタと選択的に結合する幾分かの能力を維持しており、かつ以下 のように定義される。 (1)抗体分子の一価の抗原結合フラグメントを含有するFab は、全抗体を酵素パ パインで消化し、完全な軽鎖と1個の重鎖の一部を生成することにより製造でき る。 (2)抗体分子のフラグメントFab'は、全抗体をペプシンで処理し、次いで還元す ることにより、完全な軽鎖と1個の重鎖の一部を生成することにより製造でき、 抗体分子1個当たり2個のFab'フラグメントが得られる。 (3)(Fab')2は、全抗体をペプシンで処理し、次の還元は省略して得ることのでき る該抗体のフラグメントであり、F(ab')2は、2つのジスルフィド結合により一 緒に保持された2個のFab'フラグメントを含むダイマーである。 (4)Fvは、2つの鎖として発現される、該軽鎖の可変領域と該重鎖の可変領域と を含む遺伝子操作されたフラグメントである。 (5)一本鎖抗体(“SCA”)は、適当なポリペプチドリンカーにより結合されて、遺 伝子操作により融合された一本鎖分子としての、該軽鎖の可変領域と該重鎖の可 変領域とを含む、遺伝子操作された分子として定義される。 これらフラグメントの製法は当分野で公知である(例えば、ハーロー&レーン (Harlow and Lane),Antibodies: A Laboratory Manual,コールドスプリングハ ーバーラボラトリーズ(Cold Spring Harbor Laboratory),N.Y.(1988);にれを本 発明の参考文献とする)。従って、本明細書で使用する種々の形態での用語「抗 体分子」とは、完全な抗体(免疫グロブリン)分子および抗体(免疫グロブリン )分子の免疫学的に活性な部分の両者を意味するものとする。 用語「モノクローナル抗体(monoclonal antibody)」とは、決定された(既知) の抗原特異性をもつ1種の抗体分子の集団を意味する。モノクローナル抗体は、 特定の抗原と免疫反応可能なただ1種の抗体結合サイトを含み、従って典型的に 該抗原に対する単一の結合アフィニティーを示す。モノクローナル抗体は、従っ て各々が異なる抗原に対して免疫特異的である2つの抗体結合サイトをもつ2重 特異的抗体分子を含むこともできる。好ましくは、本発明の方法において個体担 体に固定された第一の抗体分子は、モノクローナル抗体である。更に、ファージ 展示組み合わせライブラリー中の該抗体分子も、モノクローナル抗体である。 本発明で使用する用語「エピトープ(epitope)」とは、抗体のパラトープが結合 する抗原上の任意の抗原決定基を意味する。エピトープ決定基は、通常化学的に 活性な表面基、例えばアミノ酸または糖側鎖からなり、また通常は特異的な3次 元構造特性並びに特異的な帯電特性を有する。 本明細書で使用する用語「錯体(complex)」とは、特異的結合試薬−リガンド反 応の生成物を意味する。錯体の一例は抗体−抗原反応により形成される免疫反応 生成物である。 用語「抗原(antigen)」とは、抗体と特異的に結合(抗体と免疫反応)すること ができ、かつ免疫反応生成物(免疫錯体)を形成できるポリペプチドまたはタン パクを意味する。該抗体が結合する該抗原のサイトは、抗原決定基またはエピト ープと呼ばれる。 本発明の抗原上の予備選別されたエピトープと結合する、防御または中和抗体 の検出法は、インビトロで、例えば該抗体を液層中で同定または固相担体に結合 できるイムノアッセイにおいて実施する。好ましくは、本発明の方法は、固体担 体に結合した予備選別抗原を使用して実施する。また、該予備選別抗原を、抗体 分子に結合することもできる。例えば、該抗体または抗体/抗原錯体を、先ず固 体担体に結合できる。 防御抗体を検出するのに利用できる型のイムノアッセイの例は、直接的および 間接的フォーマットの競合的および非−競合的イムノアッセイを包含する。この ようなイムノアッセイの例は、ラジオイムノアッセイ(RIA)およびサンドイッチ (免疫学的)アッセイである。該抗体の検出は、前進、逆または同時モードで行 われる、生理的サンプルについての競合イムノアッセイおよび免疫組織化学的ア ッセイを包含する、イムノアッセイを利用して実施できる。好ましくは、本発明 の方法は、前進イムノアッセイを利用する。当業者には、不当に実験を行うこと なく、他のイムノアッセイフォーマットを熟知しており、あるいは容易に認識で きる。 固相−結合抗原分子は、水性媒体からの吸着により結合されるが、他の固定化 のモード、例えば共有結合または他の周知の固体マトリックスへの固定化手段を 使用することも可能である。好ましくは、該抗原分子を、抗体との免疫錯体を形 成する前に、担体と結合するが、該免疫錯体は、該錯体を該固体担体に結合する 前に生成することもできる。 該固相担体の表面上の非−特異的タンパク結合サイトは、遮断しておくことが 好ましい。固相−結合抗原の吸着後に、該アッセイを妨害しないタンパク、例え ばウシ、ウマまたは他の血清アルブミン(これらも抗原または抗体により汚染さ れていない)の水性溶液を、該固相と混合して、該抗原分子により占有されてい ない表面上のタンパク結合サイトにおいて、該抗原−含有固体担体の表面上に混 合タンパクを吸着させる。 典型的な水性タンパク溶液は、約2〜10重量%のウシ血清アルブミンを、pH約 7〜8にてPBS 中に含む。この水性タンパク溶液−固体担体混合物は、典型的に は少なくとも1時間、約4〜37℃に維持され、かつその後に、得られる固体層を 濯いで、未結合タンパクを除去する。 該抗原は多くの異なる担体に結合でき、またサンプル中の中和抗体を検出する のに使用できる。周知の担体の例は、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、 ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミロース、天然および変性セルロー ス、ポリアクリルアミド、アガロースおよびマグネタイトを包含する。該担体の 特性は、本発明の目的にとっては可溶性または不溶性何れでもよい。当業者は抗 原を結合するための他の適当な担体を知っているであろうし、またルーチン実験 を利用してこれを確認することができるであろう。 更に、必要ならば、これらのイムノアッセイにおいて検出するための抗体は、 種々の方法で検出可能に標識することができる。当業者には周知の多くの異なる 標識および標識法がある。本発明において使用可能な型の標識の例は、酵素、放 射性同位元素、蛍光化合物、コロイド金属、化学発光性化合物および生物発光性 化合物を包含する。当業者には、本発明のモノクローナル抗体に結合するための 他の適当な標識は公知であろうし、またルーチン実験を利用してこれを確認する ことができるであろう。更に、これら標識の結合は、当業者にとっては一般的な 標準的方法を利用して実施できる。 本発明の目的にとって、抗原と結合する中和抗体は、検出可能量の抗原を含有 する任意のサンプルを使用して検出することができる。サンプルは液体、例えば 尿、唾液、髄液、血液、血清等であり得る。サンプルは、また細胞溶解物、ウイ ルス溶解物または他の粗製、半−精製または精製抗原処方物であってもよい。 好ましくは、該抗原は精製タンパク、例えばE.コリ、CHO 細胞またはバクロウ イルス等において発現される組み換えタンパクまたは融合タンパク、ワクシニア ウイルスの表面上で発現されるタンパク抗原、化学的に修飾されたタンパク抗原 または幾つかの技術によって精製されたタンパク抗原等である。本発明の方法で 使用する他の抗原処方物は、当業者には公知であろう。 上記予備選別抗原は、任意の抗原、例えばバクテリア、ウイルス、寄生体、真 菌、腫瘍および自己−抗原等であり得る。ウイルス抗原の例は、肝炎Bウイルス (HBV)、ヒト免疫不全症ウイルス(HIV)、インフルエンザAウイルス、エプシュタ インバール(Epstein Barr)ウイルス(EBV)、単純疱疹ウイルス(HSV)、呼吸器シン シチウム(RS)ウイルス(RSV)、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)、水痘帯状ヘル ペスウイルス(VZV)および麻疹ウイルスからなる群から選ばれるウイルス由来の 抗原を包含する。より具体的には、該予備選別抗原はHSV 糖タンパクDまたはHI V 糖タンパク120(gp120)であり得る。 該抗体および抗原の特異的濃度、インキュベーションの温度並びに時間および その他のアッセイ条件は、サンプル中の該抗原の濃度、該サンプルの特徴等に依 存して、変えることができる。当業者は、ルーチン実験を利用して、各測定に対 する有効かつ最適のアッセイ条件を決定することができるであろう。 例えば、本発明の方法は、4〜45℃、好ましくは約15〜37℃にて実施できる。 各インキュベーション段階は72時間程度であり得る。勿論、特定の情況に対して 望ましいもしくは必要であり得る、その他の段階、例えば洗浄、攪拌、振盪、濾 過または抗原のアッセイ−前抽出等を、このアッセイに加えることができる。 抗体または抗体分子の混合物を含有する任意の処方物を、該抗体の源として利 用できるが、好ましくは組み合わせライブラリーおよび最も好ましくはバルバス (Barbas)等(ファージ表面上の組み合わせ免疫グロブリンライブラリー(Combina torial immunoglobulin libraries on the surface of phage(Phabs): 抗原特異 的Fabsの迅速な選別(Rapid selection of antigen-specific Fabs.),Methods: A Companion to Methods in Enzymol.,レーナー&バートン編(Lerner and Burt on,eds),vol.2,pp.119-124,アカデミックプレス,オーランド,1991; バー バス(Barbas)等,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,1991, 88:7978、これを本発 明の参考文献とする)(また、参考の目的で、ビューズ(Huse)等,Science,1989 ,246:1275-1281をも参照のこと)に記載されたファージ展示ライブラリーを使用 する。 本発明の方法の有用性を例示するのに有効なモデルとして、実施例は、HIV-中 和ヒト抗体を同定するのに使用するものとしての本発明の方法を説明する。今や 当業者は、例示したモデルおよび本発明の方法を使用して、種々の中和抗体分子 を同定することができる。これらの方法は、一般的に種々の起源から製造でき、 かつナイーブライブラリー、修飾ライブラリーおよびドナーから直接製造したラ イブラリーを包含する、抗体分子の組み合わせライブラリーの使用に基づくもの である。好ましくは、ここに例示するように、感染の結果としての中和抗体の高 い力価をもつヒトドナー、例えばHIV-特異的免疫応答を示すドナーが、抗体の源 である。本発明の方法は、防御または中和抗体応答を誘発するためのワクチンと して有用であると思われる抗原を決定するための迅速なスクリーニング法を与え る。 この組み合わせライブラリー製造および操作法は、文献に詳細に記載されてお り、ここではその詳細を繰り返さないであろうが、但し本発明の固有の態様を工 夫しかつ利用するのに必要な特徴は説明する。しかしながら、これらの方法は、 一般的に該ライブラリーの抗体種をクローニングおよび発現するための、繊維フ ァージ(ファージミド)表面発現ベクター系の使用を包含する。組み合わせライ ブラリーを製造するための種々のファージミドクローニング系が他の著者により 記載されている。例えば、カング(Kang)等,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,1 991,88:4363-4366;バーバス(Barbas)等,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,1991,88:7 978-7982; ゼベディー(Zebedee)等,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,1992 ,89:3175-3179; カング(Kang)等,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,1991, 88: 11120-11123;バーバス(Barbas)等,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,1992,89:4 457-4461;グラム(Gram)等,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,1992,89:3576-358 0(これらを本発明の参考文献とする)に記載されたような、ファージミド上の組 み合わせ抗体ライブラリーの処方を参照のこと。 ここに例示の目的で記載する実施例において、本発明の方法は、HSV-またはHI V-感染ドナー由来のドナー免疫細胞mRNAを使用することによる、ヒトモノクロー ナル抗体のファージミドライブラリーの調製を包含する。該ドナーは、感染の微 症候状態であり得るが、該ドナーはまた無症候性のものであってもよい。という のは、得られるライブラリーは実質上より多くの中和ヒトモノクローナル抗体数 を含む可能性があるからである。付随的に、HIV 感染はしばしば他の疾患を伴う ので、該患者は、場合によって微症候または無徴候性HIV 感染と典型的に関連し た1以上の他の疾患の実質的な症状を示す可能性がある。当業者は、これらの実 施例を、他の種々の所定の抗体分子を同定並びにアッセイするためのモードとし て利用することが可能であろう。 本発明の組み換えヒトモノクローナル抗体の製法は、一般的に(1)別々のHお よびL鎖−コード遺伝子ライブラリーを、該ライブラリーの源としてヒト免疫グ ロブリン遺伝子を使用して、クローニングベクター内で調製し、(2)該Hおよび L鎖コード遺伝子ライブラリーを結合して、ヘテロダイマー抗体分子を発現し、 かつ組み立てることのできる、単一のニシストロン性発現ベクターを組み立て、 (3)該組み立てられたヘテロダイマー性抗体分子を、繊維ファージ粒子の表面上 で発現させ、(4)イムノアフィニティー技術、例えば予備選別抗原に対するファ ージ粒子のパンニングを利用して該表面−発現ファージ粒子を単離して、特定の HおよびL鎖−コード遺伝子を含有する1種以上のファージミドおよび該予備性 別された抗原と免疫反応する抗体分子とを単離する諸工程を含む。 本発明の更なる特徴付けとして、抗体分子のHまたはL鎖をコードする遺伝子 のヌクレオチド配列および対応するアミノ酸残基配列を、核酸配列決定法により 決定する。 同定された免疫反応性モノクローナル抗体の可変鎖領域の配列同志の配列の比 較は、配列の相同性に基づいて整列され、関連する抗体分子の幾つかの群が、同 定され、そこにおいて重鎖または軽鎖遺伝子は、実質的な配列の相同性を有して いる。 対象とする抗体を発現できる特定のベクターの単離は、繊維状ファージ遺伝子 およびファージ粒子のアセンブリーの発現を許容する宿主細胞に、二シストロン 性発現ベクターを導入することを含む。この二ベクター系を使用した場合、両ベ クターが該宿主細胞中に導入される。典型的には、該宿主はE.コリである。その 後ヘルパーファージゲノムを、該免疫グロブリン発現ベクターを含有する宿主細 胞に導入して、ファージ粒子の組み立てを可能とするのに必要な遺伝的な相補性 を与える。得られる宿主細胞を培養して、該導入されたファージ遺伝子および免 疫グロブリン遺伝子の発現を可能とし、かつ該ファージ粒子の組み立ておよび該 宿主細胞からのその流出を可能とする。次いで、該流出するファージ粒子を、該 宿主細胞培養培地から収穫(回収)し、所定の免疫反応性および中和特性につい てスクリーニングする。 収穫した粒子は、予備選別した抗原との免疫反応のために「パンニング」され る。例えば、本発明の方法において、該予備選別した抗原、例えばウイルスまた は単離したウイルス抗原は、該粒子をパンニングする前に固相に結合させる。次 に、これらの強力に免疫反応する粒子を集め、粒子の個々の種をクローン的に単 離し、更に免疫反応性、あるいはここに例示するようにHSV またはHIV 中和につ いてスクリーニングする。例えば、中和抗体を生成するファージを選択し、かつ ヒトHIV 中和モノクローナル抗体の源として使用する。該抗原および該抗体の中 和能に依存して、抗体の単一のクローンまたはプールした中和抗体の反応混液が 患者の治療のために最も有効であり得る。 イムノアフィニティーにより単離した抗体組成物は表面抗体を含有するファー ジ粒子を含むので、一態様は、表面抗体をもつファージミドの生成ではなく、寧 ろ該免疫グロブリン−コード遺伝子を、可溶性Fab フラグメントが、該ファージ ミドベクターを含有する宿主E.コリにより分泌されるように、切頭処理するため の該生成クローン化遺伝子の操作を包含する。かくして、生成する操作されたク ローン化免疫グロブリン遺伝子は、可溶性Fab を生成し、該Fab はエピトープ結 合研究のためのELISA アッセイ、既知のエピトープ特異性をもつ抗体分子との競 合アッセイ、および官能性アッセイ、例えば中和アッセイにおいて容易に特徴付 けできる。この可溶性Fab は、比較および特徴付け研究のための再現性あるかつ 比較用の処方物を与える。 この可溶性Fab の調製は、一般的に免疫学的な文献に記載されており、かつ本 明細書の実施例に記載されているように、あるいはバートン(Burton)等(Proc.Na tl.Acad.Sci.U.S.A.,1991,88:10134-10137)により記載されたように調製で きる。本発明のヒトモノクローナル抗体の調製は、一態様においては、ここに記 載される組み合わせ抗体ライブラリーを調製するために使用した該クローニング および発現ベクターに依存する。該クローン化した免疫グロブリンの重鎖および 軽鎖遺伝子は、ここに記載する方法の種々の段階において、ラムダベクター、フ ァージミドベクターおよびプラスミドベクター間で伝達できる。 これらのファージミドベクターは、融合タンパクを生成し、該タンパクは組み 立てられた繊維ファージ粒子の表面上で発現される。本発明の好ましいファージ ミドベクターは、組み換えDNA(rDNA)分子であり、該分子は融合ポリペプチドを コードしかつこれを発現できるヌクレオチド配列を含み、該融合ポリペプチドは アミノ−からカルボキシ末端に向かう方向に、(1)原核細胞分泌シグナルドメイ ン、(2)免疫グロブリンの重鎖または軽鎖の可変領域を画成する異種ポリペプチ ドおよび(3)繊維状ファージ膜アンカードメインを含有する。このベクターは、 該融合ポリペプチド、好ましくは原核細胞制御配列を発現する、DNA 発現調節配 列を含む。 この繊維状ファージ膜アンカーは、好ましくは繊維状ファージ粒子のマトリッ クスと結合し、結果として融合ポリペプチドを、該ファージ表面に組み込むこと のできるcpIII またはcpVIIIコートタンパクのドメインである。該分泌シグナル は、タンパクのリーダーペプチドドメインであり、該タンパクをグラム陰性バク テリアの周縁細胞質膜に向かわせる。好ましい分泌シグナルは、pelB分泌シグナ ルである。エルウイニアカロトバ(Erwinia carotova)由来の2種のpelB遺伝子生 成物の変異体からの、該分泌シグナルドメインの該予想されたアミノ酸残基配列 は、レイ(Lei)等(Nature,1988, 331:543-546)に記載されている。 該pelBタンパクのリーダー配列は、以前に融合タンパク用の分泌シグナルとし て使用されていた。ベター(Better)等,Science,1988, 240:1041-1043; サスト リー(Sastry)等,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,1989,86:5728-5732;および ムリナックス(Mullinax)等,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,1990,87:8095-8 099。本発明において有用なE.コリ由来の他の分泌シグナルポリペプチドドメ インに対するアミノ酸残基配列は、オリバー(Oliver)(Escherichia coli and Sa lmonella typhimurium,ナイドハード(Neidhard)F.C.編、American Society fo r Microbiology,Washignton,D.C.,1987,1:56-69)に記載されている。 該ベクターに対する好ましい膜アンカーは、繊維状ファージM13,f1,fd および その等価な繊維状ファージから得ることができる。好ましい膜アンカードメイン は、遺伝子III および遺伝子VIIIによってコードされる該コートタンパク中に見 出される。繊維状ファージコートタンパクの該膜アンカードメインは、該コート タンパクのカルボキシ末端領域の一部であり、かつ脂質2層膜に及ぶ疎水性アミ ノ酸残基の領域および該膜の細胞質免疫原に通常見られ、かつ該膜から離れて広 がっている帯電したアミノ酸残基の領域を含む。 該ファージf1において、遺伝子VIIIコートタンパクの膜に広がる領域は、Trp- 26〜Lys-40の残基を含み、該細胞質領域は41〜52のカルボキシ末端II残基を含む (オオカワ(Ohkawa)等,J.Biol.Chem.,1981,256:9951-9958)。一例としての 膜アンカーはcpVIIIの26〜40に渡る残基からなるであろう。かくして、好ましい 膜アンカードメインのアミノ酸残基配列は、M13 繊維状ファージ遺伝子VIIIコー トタンパク(cpVIIIまたはCP 8とも呼ばれる)から誘導される。遺伝子VIIIコー トタンパクは、該ファージ粒子の大部分に渡って、成熟繊維状ファージ上に存在 し、典型的には該コートタンパクの約2500〜3000コピーである。 更に、もう一つの好ましい膜アンカードメインのアミノ酸残基配列は、M13 繊 維状ファージ遺伝子III コートタンパク(cpIIIとも呼ばれる)から誘導される。 遺伝子III コートタンパクは、該ファージ粒子の一端の成熟繊維状ファージ上に 存在し、典型的には該コートタンパクの約4〜6コピーである。 繊維状ファージ粒子の構造、そのコートタンパクおよび粒子組み立ての詳細な 説明については、ラチェッド(Rached)等,Microbiol.Rev.,1986,50:401-427 およびモデル(Model)等,“The Bacteriophages: Vol.2”,R.カレンダー(Cale ndar)編,プレナムパブリッシング社,1988,pp.375-456 を参照のこと。 DNA 発現調節配列は、構造遺伝子生成物を発現するための一組のDNA 発現シグ ナルを含み、かつ周知の如く、シストロンが構造遺伝子生成物を発現できるよう に、該シストロンと機能可能に結合している、5'および3'両者を含む。該5'調節 配列は、転写開始用のプロモータ、および上流の翻訳可能なDNA 配列の該5'末端 において機能可能に結合した、リボソーム結合サイトを画成している。 E.コリ中で高いレベルの遺伝子発現を達成するためには、大量のmRNAを発生す るための強力なプロモータだけでなく、該mRNAの効率的な翻訳を保証するリボソ ーム結合サイトをも使用する必要がある。E.コリにおいては、該リボソーム結合 サイトは、開始コドン(AUG)および該開始コドンの3-11ヌクレオチド上流側に位 置する、3-9ヌクレオチドの配列を含む(シン(Shine)等,Nature,1975,254:34) 。シン−ダルガルノ(Shine-Dalgarno: SD)配列と呼ばれている配列:AGGAGGUは 、E.コリ16S rRNAの3'末端に対して相補的である。該リボソームのmRNAへの結合 および該mRNAの該3'末端における配列は、幾つかのファクタによって影響される 可能性がある。 (i) 該SD配列と該16SrRNA の3'末端との間の相補性の程度。 (ii) 該SD配列と該AUG との間の間隔および多分これらの間にあるDNA 配列(ロ バーツ(Roberts)等,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,1979a,76:760; ロバー ツ(Roberts)等,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,1979b,76:5596;グァレント( Guarente)等,Science,1980, 209:1428;およびグァレント(Guarente)等,Cell, 1980,20:543)。該間隔が系統的に変えられる、プラスミド中の遺伝子の発現レ ベルを測定することにより、最適化が達成される。種々のmRNAの比較は、統計的 に好ましい配列が位置-20〜+13(該AUG のAの位置が0である)に存在することを 示している。ゴールド(Gold)等,Annu.Rev.Microbiol.,1981,35:365 。リー ダー配列は翻訳に著しい影響を与えることを示した。ロバーツ等の上記文献(197 9 a,b)。 (iii) リボソームの結合に影響を与える、該AUG に伴うヌクレオチド配列。タニ グチ(Taniguchi)等,J.Mol.Biol.,1978, 118:533。 該3'調節配列は、非相同融合タンパクと機能可能に結合した、これと組み合わ された少なくとも一つの終止(停止)コドンを画成する。 好ましい態様において、使用したベクターは、原核細胞起源の複製または複製 子、即ちDNA 配列を含み、該DNA 配列は自律性の複製を指向する能力および該組 み換えDNA で形質転換されたバクテリア宿主細胞等の原核生物宿主細胞中で、染 色体外的に、該組み換えDNA 分子を維持する能力を有する。このような複製の起 源は、当分野において周知である。好ましい複製の起源は、該宿主生物中で有効 なものである。好ましい一つの宿主細胞はE.コリである。E.コリ中でのベクター の使用のために、好ましい複製源はpBR322中に見られるColE1 および種々の他の 共通のプラスミドである。同様に好ましいものは、pACYC 上に見出されるp15A複 製源およびその誘導体である。該ColE1 およびp15A複製子は、分子生物学におい て広範に利用されており、種々のプラスミド上にえることができ、かつ少なくと もサムブロック(Sambrook)等,“モレキュラークローニング:アラボラトリーマ ニュアル(Molecular Cloning: a Laboratory Manual)”,第2版,コールドハー バースプリングラボラトリープレス刊(1989)に記載されている。 該ColE1 およびp15A複製子は、2種の「バイナリー」プラスミドを使用する、 本発明の一態様において使用することが特に好ましい。というのは、これらの各 々は、E.コリ中のプラスミドの複製を指向する能力を有し、一方で他方の複製子 は、同一のE.コリ細胞中の第二のプラスミド中に存在する。換言すれば、ColE1 およびp15Aは、非−妨害性の複製子であって、即ち該同一の宿主中の2種のプラ スミドの維持を可能とする(例えば、サムブロック(Sambrook)等の上記文献の1. 3-1.4 を参照のこと)。この特徴は、本発明の該バイナリーベクターを使用する 態様において特に重要である。というのは、ファージの複製を許容する単一の宿 主細胞が、2種の別々のベクター、即ち重鎖ポリペプチドを発現するための第一 のベクターおよび軽鎖ポリペプチドを発現するための第二のベクターの独立かつ 同時の複製を維持する必要があるからである。 更に、原核細胞の複製子を含むこれらの態様は、またある遺伝子を含み、該遺 伝子の発現は、該遺伝子によって形質転換されたバクテリア宿主に対して、選択 的な利点、例えば薬剤耐性を授与する。典型的なバクテリアの薬剤耐性遺伝子は アンピシリン、テトラサイクリン、ネオマイシン/カナマイシンまたはクロラム フェニコールに対する抵抗性である。ベクターは、また典型的に翻訳可能なDNA 配列を挿入するのに有利な制限サイトをも含む。ベクターのそのような例は、バ イオラドラボラトリーズ(BioRad Laboratories)(CA州,リッチモンド)から入手 できるプラスミドpUC8、pUC9、pBR322およびpBR329およびファルマーシア社 (Pharmacia)(NJ州,ピスカタウエイ)から入手できるpPL およびpKK223である。 繊維状ファージ粒子の表面上での本発明のモノクローナル抗体の発現用のベク ターは、第一および第二のポリペプチドとしての、翻訳可能な第一および第二の DNA 配列を受取りかつ発現するのに適した、組み換えDNA(rDNA)分子であり、こ こで該ポリペプチドの一方は繊維状ファージコートタンパク膜アンカーに融合さ れている。即ち、該ポリペプチドの少なくとも一方は、融合ポリペプチドであっ て、繊維状ファージ膜アンカードメイン、原核生物分泌シグナルドメインおよび 免疫グロブリンの重鎖または軽鎖の可変ドメインを含む。 ヘテロダイマー抗体分子を発現するためのDNA 発現ベクターは、2つの翻訳可 能なDNA 配列を、該ベクター中に存在する2つの別々のカセットに、独立にクロ ーニング(挿入)して、該抗体分子の該第一および第二のポリペプチドを発現す るための、あるいは該抗体分子を含有する該ポリペプチドのリガンド結合部分を 発現するための2つの異なる別々のシストロン(即ち、免疫グロブリン分子の該 HおよびL鎖可変領域)を形成する。2つのシストロンを発現するためのDNA 発 現ベクターは二シストロン性発現ベクターと呼ばれる。 このベクターは、挿入DNA に特異的な連結に適しているヌクレオチド配列を介 して、機能可能に結合した、上流および下流の翻訳可能なDNA 配列を含む第一の カセットを含有する。該上流の翻訳可能な配列は、本明細書に規定するような分 泌シグナルをコードする。該下流の翻訳可能な配列は、本明細書に規定するよう な、該繊維状ファージ膜アンカーをコードする。該カセットは、好ましくはレセ プタポリペプチドを発現するためのDNA 発現調節配列を含み、該レセプタポリペ プチドは、挿入翻訳可能なDNA 配列(挿入DNA)が、特異的連結に適したヌクレオ チド配列を介して、該カセット内に特異的に挿入された場合に生成される。この 繊維状ファージ膜アンカーは、好ましくは繊維状ファージ粒子のマトリックスと 結合して、該ファージ表面に該融合ポリペプチドを組み込むことを可能とする、 該cpIII またはcpVIIIコートタンパクのドメインである。 このレセプタ発現ベクターは、また第二のレセプタポリペプチドを発現するた めの第二のカセットを含む。この第二のカセットは第二の翻訳可能なDNA 配列を 含み、該DNA 配列は、本明細書で定義するように、該ベクターの下流側のDNA 配 列に特異的に連結するのに適したヌクレオチド配列を介して、3'末端において、 機能可能に結合した分泌シグナルをコードし、該下流側のDNA 配列は、該カセッ トの読み取り枠中の少なくとも一つの停止コドンを定義する。該第二の翻訳可能 なDNA 配列はその5'末端において、該5'エレメントを形成するDNA 発現調節配列 に、機能可能に結合している。該第二のカセットは、翻訳可能なDNA 配列(挿入D NA)の挿入の際に、該第二の融合ポリペプチドの発現を可能とする。該融合ポリ ペプチドは、該挿入DNA によってコードされるポリペプチドを有する、該分泌シ グナルのレセプタを含有する。 上流側の翻訳可能なDNA 配列は、前に記載したように、原核生物の分泌シグナ ルをコードする。該pelB分泌シグナルをコードする該上流側の翻訳可能なDNA 配 列が、レセプタ発現ベクターに組み込むのに好ましいDNA 配列である。下流側の 翻訳可能なDNA 配列は、前に記載したように、繊維状ファージ膜アンカーをコー ドする。かくして、下流側の翻訳可能なDNA 配列は、ある一つのアミノ酸配列を コードし、該アミノ酸配列は繊維状ファージ遺伝子III または遺伝子VIIIコート ポリペプチドの該膜アンカードメインに対応し、かつ好ましくは該ドメインと同 一である。 本発明のDNA 発現ベクター中のカセットは、翻訳可能なDNA 配列(挿入DNA)の 挿入の際に、適当な宿主中で融合ポリペプチドを発現することのできるヌクレオ チド配列を形成する、該ベクターの領域である。ヌクレオチドの該発現適格配列 はシストロンと呼ばれる。従って、このカセットは、該上流並びに下流側の翻訳 可能なDNA 配列に機能可能に結合したDNA 発現調節エレメントを含む。シストロ ンは、翻訳可能なDNA 配列が、目的にとって相応しいヌクレオチド配列を介して 該上流および下流配列間に特異的に挿入(特異的に連結)された場合に形成され る。得られる3種の翻訳可能なDNA 配列、即ち該上流、挿入および下流配列は、 全て同一の読み取り枠中に機能可能に結合されている。 かくして、抗体分子を発現するDNA 発現ベクターは、翻訳可能なDNA 配列を、 該ベクターのカセット部分にクローニングして、該第一および第二のポリペプチ ド、即ちモノクローナル抗体の重鎖および軽鎖を発現できるシストロンを生成す るための系を与える。 本明細書で使用する用語「ベクター(vector)」とは、機能可能に結合されてい るもう一つの核酸の、異なる遺伝子環境同志の間での伝達を可能とする核酸分子 を意味する。好ましいベクターは、機能可能に結合しているDNA セグメント中に 存在する構造遺伝子生成物の自律性複製および発現を可能とするものである。従 って、ベクターは、好ましくは前に記載した複製子および選別可能なマーカーを 含む。 ここで、DNA 配列またはセグメントに関連して使用する表現「機能可能に結合 した(operatively linked)」とは、該配列またはセグメントが共有結合的に、好 ましくは公知のホスホジエステル結合により結合されて、一本鎖であれ、二本鎖 であれ、一つのDNA となっていることを意味する。本発明の転写単位またはカセ ットが機能可能に結合しているベクターの選択は、当分野で周知の如く、所定の 機能上の特性、例えばベクターの複製およびタンパクの発現並びに形質転換され た宿主細胞に直接依存している。これらファクタは組み換えDNA 分子の構築に係 わる分野に固有の制限である。 選択的連結に適したヌクレオチド配列、即ちポリリンカーは、(1)上流および 下流の翻訳可能なDNA 配列を複製並びに輸送すべく機能可能に結合している、お よび(2)DNA 配列を該ベクターに選択的に連結するためのサイトまたは手段を与 える、該DNA 発現ベクターの一領域である。典型的には、選択的ポリリンカーは ヌクレオチド配列の一つであり、これは2またはそれ以上の制限エンドヌクレア ーゼ認識配列または制限サイトを画成する。制限開裂の際に、これら2つのサイ トは、付着末端を生じ、そこで翻訳可能なDNA 配列は該DNA 発現ベクターに連結 し得る。好ましくは、これら2つの制限サイトは、制限開裂の際に、非−相補性 であって、翻訳可能なDNA 配列の該カセットへの特異的挿入を可能とする、付着 末端を与える。一態様において、この特異的連結手段は、該上流側の翻訳可能な DNA 配列、下流側の翻訳可能なDNA 配列またはその両者中に存在するヌクレオチ ドによって与えられる。もう一つの態様において、特異的連結に適した該ヌクレ オチド配列は、多方向性クローニング手段を画成するヌクレオチド配列を含む。 特異的連結に適したヌクレオチド配列が多数の制限サイトを画成する場合、多重 クローニングサイトと呼ばれる。 好ましい態様において、DNA 発現ベクターは、本発明の教示に従って、ゲノム を包含する繊維状ファージ粒子として有利に操作できるように工夫されている。 この態様において、DNA 発現ベクターは、更にヌクレオチド配列を含み、これは 繊維状ファージの複製オリジンを画成し、結果として適当な遺伝的相補性の表示 の際に、該ベクターは一本鎖複製型の繊維状ファージとして複製でき、かつ繊維 状ファージ粒子内に収容され得る。この特徴は、該粒子、およびそこに含まれる ベクターの、一群のファージ粒子を含有する他の粒子からの後の分離のために、 該DNA 発現ベクターがファージ粒子中に収容される能力を与える。 繊維状ファージの複製オリジンは、周知のように、複製開始サイト、複製終端 および複製により生成される複製型の容器を画成する該ファージゲノムの一領域 である(例えば、ラシェッド(Rasched)等,Microbiol.Rev.,1986, 50:401-427; およびホリウチ(Horiuchi),J.Mol.Biol.,1986,188:215-223を参照)。 本発明で使用する、繊維状ファージの好ましい複製オリジンは、M13,f1 また はfdファージ複製オリジンである(ショート(Short)等,Nucl.Acids Res.,198 8,16:7583-7600)。本発明のヒトモノクローナル抗体をクローニングしかつ発 現するための好ましいDNA 発現ベクターは、ここに記載する二シストロン性発現 ベクターpCOMB8、pCOMB2-8、pCOMB3、pCOMB2-3およびpCOMB2-3' である。 遺伝子コードおよびそれに付随する重複性のために、多数のヌクレオチド配列 は、意図した重鎖または軽鎖免疫グロブリン可変領域のアミノ酸残基配列をコー ドするように設計できる。 かくして、本発明は、該遺伝子コードの重複性という特徴を組み込んだかかる 交互ポリペプチドを目的とする。 本発明の方法によって同定される抗原および抗体は、非経口的に、注射または 経時的な段階的注入により投与できる。例えば、該組成物は、静脈内、腹腔内、 筋肉内、皮下、口腔内または経皮経路で投与できる。 非−経口投与用の処方物は、「製薬上許容される担体」中に含められる。この ような担体は、滅菌した水性または非−水性溶液、懸濁液および乳化液を包含す る。非−水性溶剤の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、代 謝性のオイル、例えばオリーブ油、スクアレンまたはスクアラン、および注射可 能な有機エステル類、例えばエチルオレエートを包含する。水性担体は、水、ア ルコール性/水性溶液、乳化液または懸濁液等であり、塩水および緩衝媒体を包 含する。非−経口性賦形剤は、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、 デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸処理リンゲル液、脂肪油等を包含す る。静脈内投与用の賦形剤は、流体および栄養補充物、電解質補充物、例えばリ ンゲル液デキストロースを主体とするもの等を包含する。保存剤およびその他の 添加剤、例えば殺微生物剤、酸化防止剤、キレート化剤および不活性ガス等を、 含めることも可能である。 本発明の方法によって同定された抗体は、受動免疫化のために有効である。例 えば、ウイルスによる負荷が、完全な感染状態におけるよりも軽い場合において は、受動免疫化が、治療の好ましい方法であり得る。HIV の場合、このような情 況は、注射針の穿刺による偶然の感染または母体−胎児伝達による胎児の防御を 包含する。 治療上有効な量の抗原または抗体を、予防または抗原の排除用のワクチンとし て投与する。該用語「治療上有効な(therapeutically effective)」とは、投与し た抗原または抗体の量が、該抗原、例えばHIV に対する患者の免疫応答を高める のに十分な量であることを意味する。該ウイルス組成物の該投与のための投薬量 範囲は、該免疫応答を高めるという所定の効果を発生するのに十分に高い服用量 である。 抗原(または受動免疫のために使用する抗体)の服用量は、有害な副作用、例 えば望ましからぬ交叉−反応、アナフィラキシー反応等を生ずる程に高い量であ ってはならない。一般的に、該服用量は年齢、状態、性別および該患者の疾患の 程度によって変動し、また当業者により決定できるものである。この服用量は、 あらゆる忌避事象において、個々の医師により調節できるものである。何れにし ろ、治療の有効性は、例えばHIV 感染の場合には、患者中のCD4+T−細胞の濃度 を追跡することにより測定できる。CD4+細胞の増加は、該患者の免疫系の回復率 と相関している。 本発明の方法において同定される抗原または抗体は、ウイルスまたはバクテリ アに感染する前に、例えばHIV に感染する前に(即ち、予防的に)患者に投与す ることができる。HIV の場合、感染初期後の以下に記載する任意の段階において 該抗原または抗体を投与することができる。HIV 感染は以下の経路の何れかを経 る可能性がある:1)感染した個体の約15% は、発熱、発疹、およびリンパ節肥大 およびHIV との接触の6週間以内の髄膜炎により特徴付けられる急性疾患を有す る。この急性感染に引き続き、これらの個体は無症候状態となる。2)HIV に感染 した残りの個体は数年間症候を示さない。3)幾人かの個体は首部、鼠径および腋 窩におけるリンパ節の膨張により特徴付けられる、永続的な全身的なリンパ節障 害(PGL)をもつ。PGL をもつ個体の5〜10% は無症候状態を回復する。4)これら 個体の何れもAIDS−関連症候群(ARC)を起こしている可能性があり、ARC に罹っ た患者は無症候状態には復帰しない。5)ARCおよびPGL に罹った個体並びに無症 候状態の個体は、場合によって(数カ月乃至数年後に)、確実に死に導かれるAI DSを発症する。 抗原による免疫付与をもくろむ場合、該抗原は無害な、予防的または治療的な 量のアジュバント、例えば水酸化アルミニウムまたはフロインドのアジュバント との組み合わせで投与することが好ましい。 本発明の方法によって同定された抗原に関する、目標とする放出系は、コロイ ド分散系である、天然のポリペプチドを含有する。コロイド分散系は、水中油型 エマルション、ミセル、混合ミセルおよびリポソームを包含する脂質を主体とす る系、巨大分子複合体、ナノカプセル、微小球、ビーズを含む。本発明の好まし いコロイド系は、リポソームである。リポソームは、インビトロおよびインビボ での放出用ビヒクルとして有用な人工膜ビヒクルである。サイズが0.2-4.0 μm の範囲にある大きな単層ビヒクル(LUV)が、大きな巨大分子を含有する水性バッ ファーの実質的な割合を封入できることが示されている。RNA 、DNA および完全 なビリオンを水性の内部層内に封入し、かつ生物学的に活性な形状で細胞に放出 できる(フレーリー(Fraley)等,Trends Biochem.Sci.,1981,6:77)。哺乳動 物細胞以外に、リポソームが、植物、酵母およびバクテリア細胞にポリヌクレオ チドを分配するのに利用されている。リポソームが効果的な遺伝子伝達ビヒクル であるためには、以下の特徴がなければならない。即ち、(1)遺伝子の生物学的 な活性を低下することのない、高い効率での興味ある遺伝子の封入、(2)非−タ ーゲット細胞と比較して、ターゲット細胞に対する選択的かつ実質的な結合性、 (3)高い効率での、該小胞の水性内容物の、該ターゲット細胞の細胞質への分配 および(4)遺伝情報の正確且つ効果的な発現(マニノ(Mannino)等,Biotechnique s,1988, 6:682)。 従って、単一の脂質二重層を含む単層体を包含するリポソームは、ウイルスタ ンパク、例えばマクロファージ屈性の測定に特異的なポリペプチドを放出して、 HIV ウイルスに対して免疫付与するベクターとして使用可能である。このような 方法は、アルメイダ(Almeida)等の米国特許第4,148,876号およびマニノ(Mannino )等の米国特許第4,663,161 号に教示されている。これら全体を本発明の参考文 献とする。 リポソームのターゲット化は、解剖学的および機械的ファクタに基づいて分類 されている。解剖学的分類は選択性、例えば器官−特異性、細胞特異性およびオ ルガネラ特異性等の程度に基づいている。機械的ターゲット化は、受動的である か能動的であるかに依存して区別できる。受動的ターゲット化は、正弦型キャピ ラリーを含む器官における細網皮系(RES)の細胞に分布するリポソームの自然の 傾向を利用する。他方能動的ターゲット化は、該リポソームを特定のリガンド、 例えばモノクローナル抗体、糖、糖脂質またはタンパクに結合することにより、 あるいは該リポソームの組成およびサイズを変えることにより、該リポソームを 変更して、天然の局在化サイト以外の型の、器官または細胞に対するターゲット 化することを含む。 上記のようにして調製されたウイルスタンパクおよびその一部も、公知の技術 により調製される、サブユニットワクチンの調製において使用できる。防御免疫 応答を誘発できるポリペプチド−展示抗原領域が選別され、適当な担体中に組み 込まれる。また、ウイルスタンパクの抗原性部分は、融合タンパクの発現により 大きなタンパクに組み込むことができる。他のウイルスに関連するサブユニット ワクチンの調製は、レーナー(Lerner)等,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,198 1,78:3403;およびバタナガー(Bhatanagar)等,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. ,1982, 79:4400を包含する様々な文献に記載されている。また、米国特許第4,5 65,697 号(ここでは、天然由来のウイルスタンパクがワクチン組成物中 に組み込まれている)および同第4,528,217 号および同第4,575,495 号(ここで は、ウイルスタンパクの一部を構成する合成ペプチドがワクチン組成物中に組み 込まれている)をも参照のこと。該ウイルスタンパクの一部のみを使用するワク チンを生成するための他の方法は米国特許第4,552,757 号、同第4,552,758 号お よび同第4,593,002 号に記載されている。これら特許の関連する部分を本発明の 参考とする。 このようなワクチンは、HIV に対して感受性のヒトにおける、HIV に対する免 疫応答、例えば防御抗体力価を高めるのに有効である。上記の如く調製したワク チンは、任意の公知の方法で、経鼻、皮下または筋肉内経路で投与できるが、経 鼻投与は、通常は部分的に不活性化されたウイルスワクチンと共に使用されるこ とはないであろう。完全に不活性化されたワクチンを、皮下または筋肉内注射で 投与して、免疫応答を高めるためのアジュバントの用途が見出されている。 抗原、例えば弱毒化ウイルスまたはウイルス抗原も、当分野で周知の方法を使 用して、ワクチンとして使用するために、免疫刺激複合体(ISCOM)を組み込むこ とも可能である。組み換えHIV 抗原は、例えばISCOM 粒子中に組み込むことがで き、該粒子はHIV 感染に対する予防または治療上の免疫性付与のために有用であ る。ISCOM 粒子中のウイルスタンパク抗原の存在は、以下の3つの主な利点をも つ:即ち1)複製ウイルス核酸が全く宿主に導入されない、2)高濃度の中和抗体が 生成され、また3)MHC クラスIIの制限の下で誘発された細胞毒性T-細胞を含む細 胞免疫が誘発される。ISCOM ワクチンの製造法は当分野で周知である(B.モレイ ン(Morein)等,Nature,1984,308:457-60)。 本発明の方法によって同定された中和エピトープを含有する抗原を含む薬理組 成物は、抗原ペプチドまたは該ポリペプチド自体、例えば合成ペプチド、DNA ワ クチン、天然ウイルス生成物および組み換えDNA 生成物をコードするヌクレオチ ド配列を、製薬上許容される担体中に放出するためのビヒクルを含む。このよう なビヒクルはRNA およびDNA ウイルスベクターおよびリポソームを包含するが、 これらに制限されない。 以下の実施例は本発明を例示するためのものであり、本発明を限定するもので はない。これら実施例は利用可能なものの典型であるが、当業者には周知の他の 手順を利用することも可能である。 実施例1:組み換え抗−HIV-1 抗体の製造 組み合わせファージ展示ライブラリーからの抗体Fab フラグメントb12 の生成 は既に記載されている(D.R.バートン(Burton)等,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S .A.,1991,88:10134、これを本発明の参考文献とする)。Fab b12はgp120のCD4 結合サイトに特異的であり、またHIV-1 ラボラトリー株IIIBおよびMNの強力な中 和剤である(C.F.バーバス(Barbas)等,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,1992 89:9 339; P.ローベン(Roben),J.Virol.,1994, 68:4821、これらを本発明の 参考文献とする)。Fab b12は本発明の実施例における更なる研究のために選択 されたが、幾つかの他のFab フラグメントも、HIV-1 に対する中和剤として同定 された(バーバス(Barbas)等の上記文献およびバートン(Burton)等の上記文献参 照)。効力および株の交叉反応性の選択は、実験的な設計により達成される。ラ イブラリードナーは、HIV-1 のクレードB株に感染したと思われる、長期にわた り無症候性の男性であり、一方アフィニティー選別用の抗原は、該IIIB株由来の gp120 であり、従って交叉反応性の抗体の選別が容易となった。低い初期濃度に おける、多数のバクテリア抗-gp120 Fabスーパーネート(supernates)を、中和能 について直接スクリーニングして、最も強力なFab を見出した。Fab b12は幾つ かの一次単離体を中和できる(C.F.バーバス(Barbas)等,J.Mol.Biol.,1993, 230 :812)が、対応する全抗体分子はより効果的であると考えられる。それ故に 、Fab b12は、高濃度での哺乳動物での発現のために生成したベクター中に、可 変重鎖(VH)および軽鎖遺伝子をカセット化することにより、全IgG1分子に転化し た。該全抗体IgG1 b12は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞内で発現させ 、次いでアフィニティークロマトグラフィーによって精製した。 採用された方法は、ファージ由来の Fabで始まる全抗体の精製について以前に 記載された(E.ベンダー(Bender)等,Hum.Antibod.Hybridomas,1992,4:74) 方法と類似していた。先ず、b12 重鎖VH領域をpGS5発現ベクター(S.グリーン(G reen)等,Nucl.Acids Res.,1988,16:369)にクローン化して、該重鎖一定ド メインと融合した。このクローン化は重なりPCR を含み、(i)バクテリアリー ダー配列と共通マウス配列、次いで固有のコザック(Kozak)配列とを置換し、(ii )かつHVのNH2-末端を修飾してヒト共通配列(QVQLVQ)とした。マウスリーダー配 列および修飾されたヒト共通NH2-末端(EIVLTQSP)をもつ該軽鎖をも、pSG5発現ベ クターにクローン化した。このpSG5ベクターは、M13 遺伝子間領域を含んでいる ので、完全な重鎖および軽鎖配列が容易にチェックできた。これらのベクターは 、またSV40の複製オリジンを含み、その結果重鎖および軽鎖ベクターの、COS-7 細胞への同時トランスフェクションの際に、機能性タンパクの製造が確認できた 。引き続き、重鎖および軽鎖を、それぞれpEE6およびpEE12ベクターにクローン 化した(ベビングトン(Bebbington)等,Bio/Technology,1992,10:169)。これ らのベクターは組み込まれたHCMVプロモータおよびグルタミン合成(GS)増幅性、 選別性マーカーを含む。HCMVプロモータ、エンハンサーエレメントおよびポリA シグナルを含む該重鎖を、次に軽鎖をもつpEE12 ベクターにサブクローン化して 、組み合わせプラスミドを生成した。これを、CHO のトランスフェクションのた めに使用し、安定なクローンを、メチルスルホキサミン増幅の下で選別した。gp 120IIIBを使用したELISA により判定した、最大濃度のIgG1 b12を生産するクロ ーンをスケールアップのために選択した。この抗体を、プロテインAを使用した アフィニティークロマトグラフィーによって精製した。表面プラスモン共鳴によ り測定したgp120 IIIBに対するIgG1 b12のアフィニティーは1.3x109M-1である。 この抗体はELISA フォーマットにおいて、補体C1q と結合する。フローサイトメ トリーは、50μg/mlにおけるIgG1 b12の正常なヒト末梢血単核細胞(PBMC)に対す る結合の証拠を与えない。 実施例2:IgG1 b12およびヒト血漿によるHIV-1 の中和 IgG1 b12を、先ず実験室での2種の中和実験において、ラボラトリー株MNおよ びIIIBに対してテストしたが、該実験室では最近NIAID/WHO アンチボディーセロ ロジカルプロジェクト(Antibody Serological Project)の一環として、一群のモ ノクローナル抗体をテストした(M.P.ドスーザ(D'Souza)等,AIDS,1994,8:169) 。IgG1 b12は、感染力の抗体阻害を示す(第1表)、標準的なプラーク形成アッ セイ(C.V.ハンソン(Hanson)等,J.Clin.Microbiol.,1990, 28:2030)を 使用した場合には、MNについては3ng/ml のおよびIIIBについては7ng/ml の50 % 中和力価を示し、またシンシチウム形成を利用した場合には、MNおよびIIIB両 株に対して20 ng/mlなる力価を示した。シンシチウム形成に基づく定量的感染力 アッセイは、P.L.ナラ(Nara)等,AIDS Res.Human Retroviruses,1987,3:283 に記載のように実施した。ウイルスはH9細胞中で育成させた。感染力の測定のた めに、CEM-SSターゲット細胞の単層を、抗体の存在下または不在下で、ウイルス の100-200シンシチウム単位(SFU)にて培養し、かつシンシチウムの数を、3〜5 日後に測定した。これらのアッセイは、ウイルス−生存部分範囲1〜0.001 に渡 り、抗体濃度の差異4-倍までの範囲内で繰り返すことができた(P〈0.001)。 第1表は、HIV-1 のラボラトリー用に適した株および一次単離体の、IgG1 b12 およびプールしたヒト血漿処方物による中和を示す。マイクロプラークアッセイ を、僅かな改良を行って、記載(C.V.ハンソン(Hanson)等,J.Clin.Microbiol., 1990,28:2030)のように実施した。簡単に言えば、抗体を3倍に連続的に希釈し 、かつ96−ウエルのマイクロタイタープレート中で18時間、37℃にて、ウエル当 たり20プラーク形成単位(pfu)のウイルスを使用し、各4回予備インキュベート し、次いでプロピジウムアイオダイドで染色した。24〜48時間後に、トランスイ ルミネータ(304 nm)上で、蛍光性プラークを計数した。この中和力価は、抗体を 含まないコントロールと比較して、プラーク数における50% 減少を与えるのに必 要とされる抗体の濃度として定義した。該希釈率をデータ点間で内挿した。VL13 4 、VL648 およびVL025 は1992年にニューヨークで、感染した母親から単離した ウイルスであり、UG266 およびUG274はクレーバD単離体であり、ディビジョン オブレトロバイロロジー,ウォルターリードアーミーインスティチュートオブリ サーチ(Division of Retrovirology,Walter Reed Army Institute of Research )のジョンマスコラ(John Mascola)から贈与されたものであり、残りのウイルス は1992年にカリフォルニアの、男性同性愛者から単離した。プールしたヒト血漿 処方物は、MN単離体に対する高い中和力価をもつように選択された、13HIV-1 正 の個体由来のものであった。 これらの力価は、該抗体が、当プロジェクトの他のCD4 サイト抗体よりも、ほ ぼ2桁大きく、かつV3ループに特異的な最良の抗体に匹敵する力価をもつことを 示唆している。しかしながら、後者が強力な株特異性をもつ一方で、IgG1 b12は MNおよびIIIBに対してほぼ等しい効果を示す。該抗体は、これら実験において、 効力においてはCD4-IgG 分子に匹敵する。 p24 生産が感染力の尺度である別のアッセイにおいて(E.S.ダール(Daar)等, Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,1990, 87:6574; D.D.ホー(Ho)等,J.Virol. ,1991, 65:489)は、40ng/mlなる50% 中和力価が、門およびIIIB両株について見 られた。 第1図は、IgG1 b12によるHIV-1 の一次単離体の中和のためのアッセイを示す 図である。ウイルスの中和は、指標細胞としてPHA-刺激PBMCを使用して評価し、 またリポータアッセイとしての細胞外p24 の測定は、本質的に以前に記載された ようにして実施した(E.S.ダール(Daar)等,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,19 90,87:6574; D.D.ホー(Ho)等,J.Virol.,1991, 65:489)。ウイルス(50TCID5 0 )と抗体とを一緒に、PHA-刺激PBMCに添加する前に、種々の濃度において、30分 間37℃にてインキュベートした。ウイルスの複製は、5-7 日後に、p24 ELISA 測 定により評価した。該ウイルスドナーの名称、位置および疾患状態は以下の通り であった。■: VS(N.Y.,急性);▼: N70-2(ニューオーリンズ,無症候性);▲: AC (サンジエゴ,AIDS);●: LS(ロスアンジェルス,AIDS);□: NYC-A(N.Y.,未知); ▽: WM(ロスアンジェルス,AIDS);△: RA(N.Y.,急性);◇: JP(N.Y.,急性)。分子 クローニングHIV-1 ウイルスJR-CSF(◆)およびHIV-1 単離JR-FL(○)が記載さ れている(W.A.オブライエン(O'Brien)等,Nature,1990,348:69;W.A.オブライ エン(O'Brien)等,J.Virol.,1992, 66:3125;W.A.オブライエン(O'Brien)等, J.Virol.,1994, 68:5264)。JR-CSFのストックを、初めにDNA トランスフェク ションにより得た上澄によりPBMCを感染させることにより調製した。ラボラトリ ー株HIV-1 IIIBおよびHIV-1 MNに対する力価(50%中和)は〈4 ng/mlであった〔注 :HIV-1 IIIBおよびHIV-1 MNは、形質転換されたT-細胞系における継代の多数の 履歴を有するウイルスである(M.ロバート−グロフ(Robert-Guroff)等,Nature ,1985,316:72)。H9細胞内で育成したこれら株のストックをマイトジェン−刺 激PBMC内で継代培養し、同一の細胞中で成育するウイルスを調製し、ウイルス中 和に及ぼす、任意の宿主細胞依存性発生機構学的因子の影響を排除した(T.リン( Wrin)等,J.Acq.Imm.Def.Synd.,1994, 7:211)]。実施例3p24 ELISA およびマイクロプラークアッセイにおけるIgG1 b12によ るHIV 単離体の中和 IgG1 b12を次に、該p24 リポータアッセイにおいて単離した1群の10種のウイ ルスに対してテストした(E.S.ダール(Daar)等,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A., 1990,87:6574; D.D.ホー(Ho)等,J.Virol.,1991, 65:489)。ウイルスを米国 の様々な地域出身であり、また種々の疾患状態にある個体から単離した(第1図) 。これらを一回または2回のみ、末梢血単核細胞(PBMC)中で培養した。ウイルス ストックをPBMC中で育成し、これら細胞を使用して該アッセイを実施した。第1 図に示したように、IgG1 b12は5μg/mlにて10種の単離体中7種を本質的に完全 に中和し、該単離体全体は≦1μg/mlにて50% 中和された。 IgG1 b12の、追加の組の14種の一次単離体を中和する能力を、次いでマイクロ プラークアッセイで検討した(C.V.ハンソン(Hanson)等,J.Clin.Microbiol. ,1990, 28:2030)。該組は、他のHIV-1 感染個体由来の血清による抗体中和に 対して比較的無反応性である単離体を高い割合で含有するように選択した(T.リ ン(Wrin)等,J.Acq.Imm.Def.Synd.,1994, 7:211)。ウイルスはPBMC中で育 成し、該アッセイはMT2 細胞中で実施した。これは、この細胞系内で成育するウ イルスに関する研究を制限するが、中和のもう一つの尺度を与える。第1表は14 種の一次単離体中の10種が、該p24 アッセイにおいて観測された値よりも幾分高 い力価で中和されたことを示している(第1図)。プールしたヒト血漿の1:10希 釈によっても中和されなかった4種の単離体はIgG1 b12により中和された。第1 表に報告されたウイルスの多くは、米国のドナーから単離したものであったが、 IgG1 b12により中和される2種のものは、ウガンダのドナー由来のものであり、 クレードDと命名された。実施例4幼児単離体のIgG1 b12による中和 抗体による受動免疫療法の最も有望な役割の一つは、最近の報告により支持さ れているように、ウイルスの母体−胎児伝達の遮断であり(G.スカルラッティ(Sc arlatti)等,J.Infect.Dis.,1993, 168:207; Y.J.ブリソン(Bryson)等,J.C ell Biochem.,1993,17E:95(suppl))、このことは伝達が、伝達されたウイ ルスに対する母体中和抗体の欠如と相関性をもつことを示唆している。従って、 IgG1 b12の、12種の一次幼児単離体群を中和する能力を測定した。ウイルスは誕 生時点または誕生後2週間の幼児から直接採取し、かつPBMC中で1回継代培養し 、ウイルスのストックを製造した。これらストックからのウイルスは、PBMC中で 育成し、PBMCを使用したp24-を主体とするアッセイにおいて中和能を評価した(A IDSクリニカルトライアルズグループバイロロジーマニュアルフォーHIV ラボラ トリーズデパートメントオブAIDSリサーチ(AIDS Clinical Trials Group Virolo gy Manual for HIV Laboratories,Department of AIDS Research),NIAID,NIH ,バージョン2.0,1993)。IgG1 b12は、濃度≦20μg/mlにおいて、12種の単離体 中の8種について90% 中和を達成した(第2表)。 第2表は、IgG1 b12による、一次幼児単離体の中和を示す。中和は、PHA-刺激 PBMCを指標細胞として使用し、および本質的に記載されたように、リポータアッ セイとして細胞外p24 の測定を利用して評価した(AIDSクリニカルトライアルズ グループバイロロジーマニュアルフォーHIV ラボラトリーズデパートメントオブ AIDSリサーチ,NIAID,NIH,バージョン2.0,1993)。IgG1 b12の連続的希釈物(0 .3〜20μg/ml)を、PHA-刺激PBMCに添加する前に、2時間37℃にて、20TCID50ま たは100TCID50と共にインキュベートした。ウイルスの複製は、p24 ELISA 測定 によって、5日後に評価した。中和は、抗体の不在下において観測された値と比 較して、p24 抗原における50% または90% 減少として表した。ウイルス単離体は 正のHIV-1 血清反応性をもつ母親から誕生した12名の幼児から採取し、そのうち の7名は誕生時点で、また5名は誕生時点と誕生後14日との間で採取した。全て の幼児はカリフォルニア出身であった。ウイルスは、健康な血清反応負のドナー からのPBMCと共に同時に培養することにより、患者のPBMCから単離した。ウイル スストックは、一度PBMC中に希釈した、最後の正の培養物を継代処理することに より調製した。1種(単離体7)を除く全ての該単離体は、MT2 細胞中で誘発さ れた非−シンシチウムであった。 12個の全単離体は、0.3 〜20μg/mlの範囲で50% 中和され、その大部分は〈5 μg/mlで中和された。これとは対照的に、プールした過免疫グロブリン生成物HI VIG は、12例のうち僅かに3例のみの90% 中和を、濃度範囲100 μg/mlの範囲で 達成したに過ぎなかった。(HIVIG は、以下の基準を満足した、選択されたHIV-1 無症候の血清反応正のドナーのプールした血漿から得た、過免疫IgG 処方物で ある:p24 血清抗体力価〉128を示す;CD4 リンパ球計数値≧400 細胞/μlお よび酵素免疫アッセイにより、p24 および肝炎B表面抗原を含まない(L.H.クミ ンス(Cummins)等,Blood,1991, 77:1111))。ここで使用したこのHIVIGは、ロッ ト番号IHV-50-101のものであった(ノースアメリカンバイオロジカルズ(North A merican Biologicals))。実施例5国際的単離体の中和 汎流行HIV-1 中のb12 エピトープの出現を調べるために、6個のクレードに属 する69国際単離体由来のgp120 に対する該抗体の結合を検討した。ウイルス単離 体を、3つの機関:ザワールドヘルスオーガニゼーション(the World Health Or ganization: WHO)、ザヘンリーM.ジャクソンファウンデーションフォーザアドバ ンスメントオブミリタリーメディシン(the Henry M.Jackson Foundation forth e Advancement of Military Medicine: HMJFAMM)およびナショナルインスティチ ュートオブアレルギー&インフェクシャスディジィーズ(the National Institut e of Allergy and Infectious Diseases: NIAID)により、世界の種々の地域から 集めた。HIV-1 単離並びに特徴付けに関するWHO ネットワークからの単離体はAI DSリサーチ&リファランスリエージェントプログラム(AIDS Research and Refer ence Reagent Program)のAIDS、NIAID 、NIH 部門を通して入手した。HMJFAMM からの単離体は、親切なことにウォルターリードアーミーインスティチュートオ ブリサーチ(Walter Reed Army Institute of Reseach),ロックビルMDのDr.ジョ ンマスコラ(John Mascola)およびヘンリーM.ジャクソンリサーチラボラトリー(H enry M.Jackson Reseach Laboratory),ロックビルMDのDr.フランシーヌマッカ ッチャン(Francine McCutchan)から提供を受けた。NIAID からの単離体は、AIDS 、NIAID 、NIH 部門のDr.ジムブラダック(Jim Bradac)により、親切にも御提供 頂いた。 第2図は、IgG1 b12と、一連のHIV-1 の国際単離体との反応性を示す。ウイル スは、マイトジェン−刺激末梢血単核細胞(PBMC)中で増殖した、世界の種々の地 域から集め(J.R.マスコラ(Mascola)等,J.Infect.Dis.,1994, 169:48)、また 感染性のウイルスを含有する培養上澄を、70℃にて中央貯蔵所において保存した 。クレードにおけるウイルスの命名は、gag 遺伝子またはgp120 のV2-C5 領域に 基づく配列情報を基にして行い、また幾つかの場合においてはヘテロ二本鎖移動 度分析(J.ルワジー(Louwagie)等,AIDS,1993,7:769;E.L.デルウォート(Delwar t)等,Science,1993,262:1257)後に実施した。培養上澄由来のgp120を、マウ ス抗-gp120抗体を使用して捕獲し、IgG1 b12との反応性をELISA により検討した 。ウイルスおよび遊離gp120 を含有する、感染性培養上澄を、1%ノニデ ット(Nonidet)-P40 ノニオン性界面活性剤で処理し、gp120 源を得た(J.P.ムー ア(Moore)等,AIDS,1989,3:155)。適当な体積の不活性化上澄を、TBS/1%NP40/ 10%FCS 含有バッファーで希釈し、かつ100 μlのアリコートを室温にて2時間 に渡り、ヒツジポリクローナル抗体D7324(アールトバイオリエージェンツ(Aalto Bio Reagents),ダブリン,アイルランド)で被覆したマイクロプレートウエル に添加した。この抗体は、クレードBIIIB単離体のCOOH−末端15アミノ酸から誘 導したペプチドAPTKAKRRVVQREKR まで高めた。未結合gp120 をTBS で洗浄するこ とによって除去し、結合したgp120 を、本質的に以前に記載されたように(J.P. ムーア(Moore)等,J.Virol,1994,68:496)、CD4-IgG(1μg/ml)およびMabで 検出し、かつTMTSS バッファーで希釈した。次いで、結合リガンドを適当なアル カリホスファターゼ複合抗-IgG、次いでAMPAK(ダコダイアグノスティックス(Dak o Diagnostics)により検出した。吸光度を492 nmにて読み取った(OD492)。各ウ イルスをCD4-IgG に対して3回およびIgG1 b12に対して2回テストした。全OD49 2 値を、添加gp120 を含まない(バッファーブランク)における非−特異的抗体 結合について補正した。次に、CD4-IgG およびIgG1 b12に対するブランク−補正 OD492値を算出し、IgG1 b12:CD4-IgGのOD492比を決定した。この規格化処理は、 一群のウイルスとの抗体反応性を比較する場合に、D7324 を介して該固相上に捕 獲されたgp120 の種々の量に対して行うことを可能とする。0.50またはそれ以上 の結合比は、強力な抗体反応性を表すものと見做され、0.25-0.50 なる範囲の比 は、温和な反応性を表すものと考えられ、〈0.25の値は、本質的に負のMab は調べられた各クレードのウイルス数を意味する。 第2図に示されたように、IgG1 b12はクレードA-D の≧50と反応するか、クレ ードE由来の12種の単離体のうち僅かに1種のみと反応したに過ぎない。米国か らのクレードB単離体との反応性は約75% であった。 抗体によるHIV-1 の中和は、使用したアッセイおよび正確な実験条件、例えば 接種物のサイズおよびウイルスと抗体とのインキュベーション時間に依存してか なりの変動を示す(M.P.ドスーザ(D'Souza)等,AIDS,1994,8:169)。しかしなが ら、一研究室範囲および異なる研究室における多数のアッセイにおける一次単 離体について中和を実施することにより、本発明は、IgG1 b12が広範囲の単離体 に対して有効な高効力の中和抗体であることが分かる。これらの結果は、一次単 離体はラボラトリー株よりも、抗体による中和は一層困難であるが、これらは本 質的に抵抗性である訳ではないことを明らかに立証している。更に、A.J.コンレ イ(Conley)等(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,1994, 91:3348)は、最近抗− gp41抗体がテストした6種の一次単離体のうち5種を中和したことを報告してい る。IgG1 b12の、大多数の米国の単離体に対する効力は、インビボで達成できる 濃度範囲内(≦5μg/ml)にある。更に、ファージ上に表示された組み換え抗体 のアフィニティーは、変異形成およびインビトロでの選別により高めることがで き、この方法はFab b12 の効力および反応性の幅を大幅に改善するのに利用され ている(C.F.バーバス(Barbas)等,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,1994, 91: 3809)。受動免疫化に対する最適の効力および株交叉反応性に対しては、インビ トロで改良した抗体の反応混液が最も適している。 これらの結果は、ワクチン設計と密接な関係をもつ。IgG1 b12の、一連の一次 単離体を中和する能力は、抗体にとって利用可能であり、かつ中和にとって重要 であるgp120 のCD4 結合サイトに関連する構造上の特徴が保存されている可能性 を示唆する。ワクチンでは、該免疫系がこの特徴を示すことが求められる。明ら かに、b12 は該分子によってライブラリーからアフィニティー選別されるので、 この特徴は組み換えgp120 上に存在する。しかしながら、b12 および関連抗体は 組み換えgp120 によるこのライブラリーから選択された該レパートリーアフィニ ティーの僅かな部分のみを形成するに過ぎなかった。得られた抗体の殆どは、該 CD4 結合サイトをも指向するが、中和においてはそれ程高効力ではなく、組み換 えgp120 に対する結合についてはb12 と交叉−競合性であり、かつb12 と類似す るアフィニティーを有していた(C.F.バーバス(Barbas)等,Proc.Natl.Acad. Sci.U.S.A.,1992, 89:9339; C.F.バーバス(Barbas)等,J.Mol.Biol.,1993, 230 :812; P.ローベン(Roben)等,J.Virol.,1994,68:4821)。従って、組み 換えgp120 は、幾つかの他の弱い中和および重なりエピトープと関連したb12 エ ピトープを提示するように思われそのワクチンとしての有効性は低下する可能性 がある。しかも、抗体は組み換えgp120 を使用した場合、少量でのみ回収され、 従って本来のgp120 を表さない可能性がある。このことは、効果的なワクチンを 得るために考察すべき重要なことである。感染細胞に対する抗体結合の証拠は、 他のCD4 結合サイト抗体よりも一層効果的であるgp120 の本来の形状を、b12 が 識別できることを示唆している(P.ローベン(Roben)等,J.Virol.,1994,68:4 821)。何れにしろ、IgG1 b12およびそのライブラリーによる方法は、ワクチン の評価において有用であろう。候補ワクチンの、選択的にb12 に結合するもしく は該ライブラリーからの選択的に有効な中和抗体の選別する能力は、ワクチン開 発の正の指標であろう。実施例6マルチマー形状にある組み換えHIV エンベロープに対する、抗体組 み合わせライブラリーの選別 モノマー状組み換えgp120 は、HIV-1 に対する余り効果のないワクチンである ことが立証された。gp120 はマルチマー錯体として該ウイルスの表面に存在し、 かつこのマルチマーの組み換えバージョンが調製された。このマルチマーはより 効果的なワクチンである得ることが示唆された。というのは、マルチマー形状に おいてより効果的にgp120 と結合する抗体を生成する、免疫応答が誘発される可 能性があるからである。ライブラリーは、IIIBgp140 テトラマーに対してパンニ ングされ、これはマウス中に、モノマー状IIIBgp120 により誘発されたものと幾 つかの主な差異をもつ免疫応答を誘発することが示された(イール(Earl)等,J .Virol.,1994, 68:3015、これを本発明の参考文献とする)。該抗体群は回復 されるが、モノマー状のgp120 に対してパンニングすることにより得られるもの と類似する抗体を含んでいた(第3表,A)。gp120 上のCD4-結合サイトの遮断後 には、gp140 マルチマー上のgp41サブユニットと結合する抗体が回復される(第 3表,B)。しかしながら、モノマー状のgp41サブユニットに対するパンニングに よって、同等の抗体が既に回復されていた。これら抗体の全ては、公知の非−ま たは弱い中和剤である。このことは、該ライブラリー中に提示されていることが 公知である高効力の中和抗体のこれ以上の回復がないことを示す。このことは、 この形状にある該マルチマーが、該モノマー状gp120 サブユニットに対してより 改善されたワクチンであるという可能性に対する証拠である。 実験A-B の実施法は以下の通りであった。 Aにおいては、ライブラリーは正味4回パンニングした。他のエピトープに対 して富化するために、実験Bのパンニングにおいては、抗体HIV-b3の添加により CD4-サイトを遮断した。 Bにおいては、ライブラリーMを4回パンニングしたが、今回は該テトラマー をFab HIV-b3(S2/S7と同一の群に属する体細胞性変異体)およびFab p7(gp120 N -末端に結合する非−中和性抗体である)と共に予備インキュベートした。 実施例7:HSV 中和Fab フラグメントの同定 本発明の方法を更に説明するために、ヘルペスウイルスに対する力価の高い血 清をもつ個体由来のライブラリーを調製した。これらのライブラリーを、全ウイ ルス溶解物に対してパンニングし、中和抗体を、20中約1の頻度で誘導した。こ こに記載する表面糖タンパクD(gD)に対してパンニングした場合には、選別され た全ての抗体は中和性のものであった。 a. ライブラリーの構築、スクリーニングおよび Fab生成 M13 ファージ表面上に展示されるヒト抗体Fab ライブラリーの調製は、ウイリ アムソン(Williamson)等,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,1993,90:4141; バ ーバス(Barbas)等,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,1991,58:7978; マッカフ ァティー(McCafferty)等,Nature,1990,348:552 に記載されている。このライ ブラリーは、長期にわたり無症候状態のHIV-1 正の個体の骨髄リンパ球を使用し て、IgG1xFabライブラリーとして構築した。抗原結合ファージは、HIV-1 および -2ウイルス溶解物(感染36時間後のサル腎臓表皮細胞(VERO)をペレット化し、1% のナトリウムデオキシコレート、1%のNP40(シグマ社(SIGMA))、0.1mM のDIFPお よび2mg/mlのアプロチニンを含有する燐酸緩衝塩水を使用して溶解した)に対し て選別し、バートン(Burton)等,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,1991, 88:10 134-10137;バーバス(barbas)等,Methods,1991, 2:119-124に記載の手順による パンニングによって、ELISA ウエル(シグマ(Sigma))に結合した。最終のパンニ ングから得たファージを、可溶性Fab 発現ファージミド系に転化し、ELISA にお ける、パンニングを行った該抗原との反応性についてこれらのクローンを選別し た。特異的抗体は、ウイリアムソン(Williamson)等,Proc.Natl.Acad.Sci.U .S.A.,1993,90:4141-4145 に記載されているように、タンパクA/G マトリック ス(シュライヒャー&シュエル(Shleicher & Schuell))上で、バクテリア上澄か らアフィニティー精製した。 b. ウイルスおよび細胞 ベロ細胞を、5%子牛血清(FCS)を補充したRPMO1640中で成育させた。HSV-1 お よびHSV-2(それぞれ株FおよびG;MD州、ロックビルのATCC)で該ベロ細胞を感 染させ、ウイルス力価を、プラークアッセイにより測定し、pfu ml-1として表し た。 c. 中和活性 該ライブラリーをパンニングしたものと同一の抗原処方物を使用した、ELISA スクリーニングにおいて正であった粗製E.コリ抽出物を、以下に記載する手順に 従って、1:5-1:10の希釈率においてHSV-1 およびHSV-2を中和する能力につきテ ストした。中和活性を表示する該Fab をアフィニティー精製し、その中和力価を 以下のようにして測定した。HSV-1 およびHSV-2の約250pfuを、Fab の連続的希 釈物と共に37℃にて1時間インキュベートし、次いで6ウエルプレート中で育成 したベロ細胞単層上で37℃にて1時間吸着させた。吸着後、該接種物を取り出し かつ該細胞を0.5%のアガロースおよび2%の FCSを含有する MEMで洗浄し、かつそ の上に載せた。72時間後に、該プレートを、30分間燐酸緩衝塩水(PBS)中の10% ホルムアルデヒドで固定し、重層栄養寒天培地を取り出し、該細胞を70% メタノ ール中のクリスタルバイオレットの1%溶液で30分間染色した。次に、この染色し た単層を洗浄し、かつ形成したプラークを計数した。 d. プラーク発生阻害アッセイ ベロ細胞の単層を、37℃にて3時間、50-100 pfuのHSV-1 で感染させた。次い で、これらを洗浄し、該培地を、組み換えFab 25、5または1μg/ml含有する栄 養寒天培地で置換した。72または86時間後にこれらを固定し、かつ前と同様に染 色した。プラークの径をデジタルキャリパー(ミツトヨ,ジャパン(Mitutoyo,J apan))で測定した。少なくとも10プラークがウエル当たり測定された。径0.2 m m以下のプラークは、発育不全であると考え、従って計数しなかった。統計的計 算は、変異体の分析により実施した(シェフ(Sheffe)F-テスト)。 e. 付着後中和アッセイ 約250pfuのHSV-1 を、予め4℃にて15分間冷却したベロ単層上に、4℃にて90 分間吸着させた。次いで、この接種物を取り出し、該細胞を洗浄し、かつ組み換 えFab(5、1、0.2、0.04g/ml)の連続的希釈物を含有する培地に4℃にて重層し て、ウイルスの侵入を防止した。90分後に、該Fab-含有培地を取り出し、かつ洗 浄した後に栄養寒天培地で置換した。コントロールとして、等量のウイルスを4 ℃にて同一のFab(付着前中和)の連続的希釈率(5、1、0.2、0.04g/ml)と共に 予備インキュベートした。90分後に、これらのウイルス/抗体希釈物をベロ単層 (4℃にて1時間または45分間予備冷却した)上に、90分間吸着させた。次に、 この接種物を取り出し、細胞を洗浄し、栄養寒天培地と重層した。72時間後に、 該単層を固定し、該中和アッセイについて上記したように染色した。 f. 核酸の配列決定 核酸の配列決定を、Taq 蛍光ジデオキシヌクレオチドターミネータサイクル配 列決定キット(アプライドバイオシステムズ(Applied Biosystems))を使用して 373A自動化DNA シーケンサー(アプライドバイオシステムズ)により実施した。 軽鎖および重鎖配列の推定用に使用したプライマーは以前にウイリアムソン(Wil liamson)等(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,1993, 90:4141-4145)によって記 載されている。 g. 免疫沈降による抗体結合タンパクの同定 HSV-2 感染細胞を収穫し、1%のナトリウムデオキシコレート、1%のNP40(シグ マ(Sigma))、0.1 mMのジ−イソプロピルフルオロホスフェート(DIFP)および2mg/ mlのアプロチニンを含有するPBS 中で超音波照射した。次いで、溶解物(50 μl) を7.5 μgの組み換えFab と共に4℃にて1時間インキュベートした。免疫錯体 を、10% SDS-PAGE上で解像したアガロース−結合山羊抗−ヒト(20 μl)により沈 殿させ、1xトウビン(Towbin)バッファー中でナイロン膜(バイオラド(BioRad))上 にエレクトロブロッティングした。標準的プロトコールに従って、ウエスタンブ ロットを実施した。簡単に説明すれば、ブロットをトリス(Tris)緩衝塩水(TBS) 中で5%脱脂乾燥ミルクにより遮断し、かつ0.05% のツイーン(Tween)20含有TBS 中に1%の脱脂乾燥ミルクを含有する溶液中の、確立された一群のマウスモノクロ ーナル抗−HSV抗体(グッドウインインスティチュート(Goodwin Institute))を使 用して、精査した。検出は、アルカリ性ホスファターゼおよび化学発光物質(バ イオラド)と複合化した山羊抗−マウス抗体を使用して実施した。ブロットは、 またコントロールとして、ウサギポリクローナル抗−HSV と免疫反応させ、かつ アルカリ性ホスファターゼ(バイオラド)と複合化した山羊抗−ウサギ抗体によ り検出した。 h. Fab の精製 50μg/mlのカルベニシリンおよび20mMのMgCl2を含有するスーパーブロスの1 l培養液に、適当なクローンを接種し、7時間後に2mMのIPTGで誘発し、30℃に て一夜育成した。この細胞ペレットを超音波処理し、上澄を50mlまで濃縮した。 濾過した上澄を25mlのプロテインG-Fab カラムに流し込み、12mlのバッファーで 3ml/分にて洗浄し、クエン酸(pH2.3)で溶出した。次いで、中和した画分を濃 縮し、50mMのMES(pH 6.0)で交換し、かつ2mlのモノ(Mono)-Sカラムに、1ml/分 にて流し込んだ。NaClの0-500mM なる勾配で、1ml/分にて溶出し、該Fab は200- 250 mMNaClなる範囲にて溶出した。濃縮後、該Fab はFGに対してELISA で力価測 定したところ正であり、また10-15%SDS-PAGEにより、50kDにおける単一のバンド を与えた。濃度は、1.35なる吸光係数(1mg/ml)を用いて、280 nmにおける吸光度 を測定することにより決定した。 実施例8:HSV に対するFab の中和活性 HSV-1 および-2に対して特異的なヒトの組み合わせ抗体Fab フラグメントを、 これら2種のウイルスの全溶解物に対して、IgG1k Fab ライブラリーの2x106の 構成員を独立にパンニングすることにより、大量に単離した。 HSV で被覆したELISA ウエルから溶出された幾つかのファージによって決定さ れた、抗原特異的ファージの濃厚化物を、ライブラリーパンニングの4回に渡り 測定した。HSV-2のウイルス溶解物によるパンニングの場合には25倍の増幅が観 測され、一方でHSV-1のウイルス溶解物を使用した場合には、20倍の増幅が観測 された。 次いで、可溶性Fab を、バーバス(Barbas)等の文献Proc.Natl.Acad.Sci.U .S.A.,1991,88:7978-7982に記載のように製造した。簡単に言えば、ファージ コートタンパクIII を、該ファージ表示ベクターから切取り、該DNA を自己連結 して、可溶性Fab を生産するベクターを得た。引き続き、タンパク合成をIPTGを 使用して一夜誘発させ、該バクテリアペレットを超音波処理して、その周辺細胞 質空間からFab を放出させた。このFab 上澄を、パンニング処理を行った抗原に 対するELISA およびウイルス感染細胞を使用した免疫蛍光による研究両者におい てテストした。HSV-1 ウイルス溶解物によるパンニングの最終回において採取し た20クローンのうちの10クローンがこれら両アッセイにおいて正であり、一方で 20クローンのうちの15クローンがHSV-2 溶解物に対するパンニングにおいて正で あった。1つのウイルス型について正の反応性が立証された全てのクローンは、 更に免疫蛍光法およびELISA アッセイ両者において、他のものに対して交叉反応 性であることが示された。これは、恐らくHSV-1 および-2の多くのタンパク間の 既知の類似性を反映している。 DNA 配列を上記のように決定し、該重鎖可変ドメインの推定アミノ酸配列を、 該ウイルス特異的クローンの幾つかについて決定した。該HSV-2パンニングから 得られた重鎖配列の18中9例は、全て相互に全く異なっていた。同様に、HSV-1 パンニングから得た8つの重鎖中5例はかなり関連性の低いものであった。これ らの異なる抗体を指向するターゲットと、ドナーの血清抗体反応性との比較は、 このライブラリー法がどれほど正確に該ドナーのウイルスに対する体液性応答を 表すかを示している。 ここに記載する全てのFab が、ELISA におけるウイルス型の交叉反応性を示し ており、ただひとつの重鎖配列のみが両パンニングに共通であった。かくして、 HSV-1 およびHSV-2 のビリオン間の報告された類似性および該単離されたFab の 観測された結合特性にも拘らず、各ウイルスは該ライブラリーから別々の抗体分 子を選択した。このことは、該ライブラリーに与えられた該抗原におけるまたは これら2種のウイルスに対する抗体応答性における、HSV-1 とHSV-2 との間の差 異を示している。 正のクローン全てについての中和活性を、上記のように、HSV-1 およびHSV-2 のプラーク減少アッセイおよびプラーク発生阻害アッセイで評価した。HSV-2パ ンニングから得られた該Fab の3種は、両アッセイにおいて顕著な中和活性を示 し、インビトロで粗製バクテリア上澄としてテストした場合には、両ウイルス型 について中和活性が見られた。これらのクローンは同一の重鎖および軽鎖配列を もつことが示された。従って、これらのFab クローンの一つ(Fab8)を、大量に育 成し、アフィニティー精製し、更に特徴付けした。 Fab8抗体はこれら両型のウイルスを認識できた。この抗体はHSV-1(約0.25μg/ mlにて50% を阻害、および0.6 μg/mlにて80% を阻害)よりも幾分効率よく、HSV -2(約0.05μg/mlにて50% を阻害)を中和した(第3図)。第3図は、プラーク減 少により測定された、Fab8の中和活性を示す図である。第3A図は、HSV-1 に対す る活性を示し、第3B図はHSV-2 に対する活性を示す。精製Fab8は、約0.25μg/ml で50% 阻害および0.6 μg/mlにて80% 阻害となるようにHSV-1 を中和し、 一方でHSV-2 は、0.05μg/mlにて50% 阻害および0.1 μg/mlにて80% 阻害となる ように、中和された。 これらの図は、Fab8が、以前に記載された多くのマウス中和抗体(ナバロ(Nav arro)等,Virology,1992,186:99-112; フラー(Fuller)等,J.Virol.,1985 55:4 75-482)よりも凡そ一桁高い効力をもつことを示唆しているが、最近の報告 では、抗−gBおよび抗−gDのヒトに適合させたマウス抗体が、同様に高効力であ り得ることが示された(デシャンプス(Deschamps)等,Proc.Natl.Acad.Sci.U .S.A.,1991,88:2869-2873)。しかしながら、該マウスおよびヒトに適合させた 抗体は、ヒト由来のFab フラグメントというよりも、寧ろ二価の全IgG 分子であ る。また、完全なIgG 分子としての、本発明の組み換えFab の真核生物による発 現は、そのウイルス中和効力を有意に増強する可能性がある。 該Fab8抗体は、またウイルス感染単層に適用した場合には、プラーク形成を阻 害した(第4図)。第4図は、プラークの発生阻害アッセイの結果を示す。精製 されたFab8は、HSV-1(第4Aおよび4B図)で感染またはHSV-2(第4Cおよび4D図)で感 染した単層上に、感染後4時間(hpi)の時点で適用した場合に、プラークの発生 を阻害した。第4A図は、プラークサイズにおける統計的に有意な減少が、5およ び1μg/mlの濃度において観測され(*=p〈0.01)、5μg/mlではプラークサイズ におけるおよそ50% の減少を示した。また、該プラーク数はFab 濃度5および25 μg/mlにおいて顕著に減少した(第4Bおよび4D図)。25μg/mlおよび72時間 hpi において、HSV-2感染単層中のプラーク発生は、完全に阻害された(第4Cおよび4 D図)。第4E図は、幾つかの異なるFab 濃度および86 hpiにおける、HSV-2 で感 染された単層についてのプラーク発生阻害アッセイを示す。 濃度25μg/mlにおいて、Fab8は72 hpiにおいてHSV-2 プラーク発生を完全に阻 止し、一方でプラークサイズにおける統計的に有意な減少(〉50%)が、HSV-1 お よびHSV-2 両者について、5μg/mlおよび1μg/mlの濃度にて観測された。プラ ークはウイルスの隣接細胞までの広がりにより発生すると考えられるので、この プラーク発生阻害アッセイは、抗体の細胞から細胞への広がりを防止する能力を 測定する。 更に、この抗体は、HSV-1 の付着後に感染力を大幅に減じた(第5図)。第5 図は、付着後中和アッセイを示す。Fab8は、ビリオン付着後の、HSV-1 感染力を 減じた。第5A図は、種々のFab 濃度における、付着前および付着後のプラーク減 少の割合を示す図である。第5B図は、種々のFab 濃度における、付着前および付 着後の中和比を示す図である。 この付着前および付着後の中和比は、抗体濃度5μg/mlでは87% を越え、1μ g/ml以下では55-60%に降下した。このことは、該抗体の阻害作用が膜の溶融レベ ルまたはウイルスの侵入またはアンコーティング中の何れかに起こることを示唆 している。 Fab8により認識されるタンパクを、HSV-2 感染細胞の全溶解物からの免疫沈降 を介して同定した。該沈殿したタンパクは、SDS-PAGEによる解像に従ってブロッ ディングし、かつマウスモノクローナル抗−gDおよびウサギポリクローナル抗− HSV-2 によって精査した(第6図)。第6図は、Fab8によって認識されるタンパ クの同定を示す図である。HSV-2 感染ベロ細胞由来の全タンパク(レーン1)およ びFab8による免疫沈降の生成物(レーン2)のSDS-PAGEの結果が示されている。並 行して実施したウエスタンブロット法を、マウスモノクローナル抗−gD抗体(MAB α-gD)により精査し、またコントロールとしてウサギポリクローナル抗−HSV-2 (RABα-HSV2)を使用した。並行して実施したゲルのクーマシー染色をも示す。Fa b8は、gDに対して特異的なマウスモノクローナル抗体により認識されるが、他の HSV 糖タンパクに対するマウスモノクローナル抗体によっては認識されない、見 掛けの分子量48-50 kDのバンドを免疫沈降した。 第6図に示された結果は、該組み換えFab が、同様にマウスモノクローナル抗 −gDとも反応性である、約48-50 kDの分子量をもつタンパクを識別することを示 している。これ以上のタンパクは、ウサギ抗-HSV-2ポリクローナル抗体処方物に よって、該ブロットウエスタンブロットには検出されず、かくしてこのことはヒ トFab の特異性を立証している。 Fab8は、極めて効率的にウイルスを中和し、かつウイルスの細胞から細胞への 広がりを阻止することが示されている。Fab によるこのような抗ウイルス活性の 立証は、幾つかのインビボ用途に対して、全IgG を越える大きな利点を提供して くれる。Fab の血清中での半減期は全IgG よりも大幅に短いが、より小さな分子 であることは、より一層高い組織侵入性をもつことになる(ヨコタ(Yokota)等,C ancer Research,1992, 52:3401-3408)。Fab の高い侵入性は、これを著しく局 所適用性のものとする。ヘルペスの場合、このことは皮膚の病巣を治療するため の抗体クリームの形状をとらせることが可能であり、あるいは角膜感染に対する 点眼剤として利用することを可能とする。更に、Fab の利用はエフェクタメカニ ズムの活性化に起因する炎症の発生を回避することを可能とする。 実施例9:直接的抗体捕獲 単純疱疹糖タンパクD(Mab 1103)を結合する特異的マウスモノクローナル抗体 は、固体担体に結合された捕獲抗体として利用された(グッドウインインスティ チュートフォーキャンサーリサーチ(Goodwin Institute for Cancer Research), プランテーション,FLから得た)。この捕獲抗体を0.1M重炭酸ナトリウムバッフ ァー(pH8.6)中に1:1000に希釈し、これをウエル当たり25μl使用して、ELISAプ レートを被覆した。 ウイルスタンパク抽出物を、PBS 中に1%のNP-40 および1%のナトリウムデオキ シコレートを溶解した溶液(I.P.バッファー)中で、HSV-2 感染ベロ細胞をホモ ジネートすることにより得た。感染多重度(m.o.i.)5にて、HSV-2 株G(ATCC VR -734,ロックビル,MD)で感染した細胞107個を、攪乱することにより、5mlのI. P.バッファー中でホモジネートした。次いで、この細胞抽出物に超音波を照射し 、3000xgにて5分間遠心分離処理して、デブリスを除去した。次に、細胞抽出物 をアリコートに分け、必要となるまで-80℃にて凍結した。 抗体で被覆したプレートを、水で繰り返し洗浄し、PBS 中の3%ウシ血清アルブ ミン(BSA)により、37℃にて2時間ブロックした。このBSA 溶液を次に捨て、20 μlの該HSV-2 感染細胞抽出物で置換し、室温にて20分間インキュベートした。 次いで、これらのプレートを、0.05% ツイーン(Tween)20 を含有するPBS で10回 洗浄した。この時点において、抗体ライブラリー(上記の患者AC)の約1011C.F. U./ウエルを添加し、前に記載されたように(バーバス(Barbas)等,Proc.Nat1 .Acad.Sci.U.S.A.,1991, 88:7978; ウイリアムソン(Williamson)等,Proc.N atl.Acad.Sci.U.S.A.,1993, 90:4141)、37℃にて1時間インキュベートし た。次に、このライブラリーの懸濁液を取り出し、プレートをPBS 0.05ツイーン 20で洗浄した。結合したファージを、固体グリシンを使用して、pH 2.2に調節し た0.1のHCl 50μlを使用して溶出した。 溶出したファージ懸濁液を、3μlの2Mトリス(Tris)塩基で即座に中和し、2 mlのX-L1ブルー(Blue)E.コリ細胞に接種するのに使用した(0.D.600=0.5)。室温 にて15分後に、20μg/mlのカルベニシリンおよび10μg/mlのテトラサイクリンを 含有するSBブロス10mlを添加し、この培養物を37℃にて1時間振盪した。次に、 50μg/mlのカルベニシリンおよび10μg/mlのテトラサイクリンを含有するSBブロ ス100 mlを添加し、更に1時間、ヘルパーファージVCS-M13 1012p.f.u.を添加す るまでこの培養物を振盪した。更に2時間の振盪後、最終濃度70μg/mlでカナマ イシンを添加した。次いで、この培養物を30℃にて一夜振盪した。翌日、NheI-S peI 制限酵素を使用した切断による、4〜5回のパンニング後にファージを調製 し、前と同様にして、該ベクターを自己連結させた。これは、ファージコートタ ンパクIII の部分を除去し、該コートタンパクは、該Fab を、その重鎖配列のC- 末端から、該ファージ粒子に係留する。 得られたクローンは以前に記載されたように(ブリオニ(Burioni)等,Proc.Na tl.Acad.Scl.U.S.A.,1994, 91:355)免疫沈降、中和およびDNA 配列決定によ り特徴付けした。該クローンの幾つかを、以前に同定された、糖タンパクgDに対 して特異的な中和抗体である、AC8(ATCC 69522)として同定した(ブリオニ(Buri oni)等の上記文献)。 以上の記載は本発明を例示するものであって、本発明の範囲を限定するもので はない。事実、当業者は、多大な実験を実施することなしに、ここに記載の教示 に基づいて、上記記載以外の態様を容易に想像し、かつ作成できる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C07K 16/30 C07K 16/30 G01N 33/569 G01N 33/569 L // C12N 15/09 C12P 21/08 C12P 21/08 G01N 33/15 Z G01N 33/15 C12N 15/00 A (81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE, DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M C,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF,CG ,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,SN, TD,TG),AP(KE,LS,MW,SD,SZ,U G),AL,AM,AT,AU,BB,BG,BR,B Y,CA,CH,CN,CZ,DE,DK,EE,ES ,FI,GB,GE,HU,IS,JP,KE,KG, KP,KR,KZ,LK,LR,LS,LT,LU,L V,MD,MG,MK,MN,MW,MX,NO,NZ ,PL,PT,RO,RU,SD,SE,SG,SI, SK,TJ,TM,TT,UA,UG,UZ,VN (72)発明者 パーレン ポール ダブリュー エイチ アイ アメリカ合衆国 カリフォルニア州 92037 ラ ジョラ ヴィア マローカ 8548 シー (72)発明者 ウィリアムソン アントニー アール アメリカ合衆国 カリフォルニア州 92130 サン ディエゴ カーメル カン トリー ロード ナンバー87−12624 (72)発明者 バーバス カーロス エフ ザ サード アメリカ合衆国 カリフォルニア州 92122 サン ディエゴ ウェラー スト リート 7081

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1.防御抗体と結合する防御抗原を同定するための方法であって、 a)予備選択した候補防御抗原と抗体分子とを、該抗原のエピトープを該抗体分 子と結合し、免疫錯体を形成することを可能とする条件下で接触させ、 b)該エピトープに結合した該抗体分子を取り出し、かつ c)該抗体分子の防御能を測定し、かくして該抗原の防御能力を予測する、 工程を含むことを特徴とする、上記方法。 2.該抗原が固体担体に結合されている、請求の範囲第1項に記載の方法。 3.該抗体が、FvまたはFab フラグメントである、請求の範囲第1項に記載の方 法。 4.該抗体分子が、モノクローナル抗体分子である、請求の範囲第1項に記載の 方法。 5.該予備選別抗体がバクテリア、ウイルス、寄生体、真菌、腫瘍および自己− 抗原からなる群から選ばれる、請求の範囲第1項に記載の方法。 6.該ウイルス抗原が肝炎Bウイルス(HBV)、ヒト免疫不全症ウイルス(HIV)、イ ンフルエンザAウイルス、エプスタインバールウイルス(EBV)、単純疱疹ウイル ス(HSV)、RSウイルス(RSV)、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)、水痘帯状ヘルペ スウイルス(VZV)および麻疹ウイルスからなるウイルス群から選ばれる、請求の 範囲第5項に記載の方法。 7.該ウイルス抗原が、HSV 糖タンパクDである、請求の範囲第6項に記載の方 法。 8.該ウイルス抗原が、HIV 糖タンパク120 である、請求の範囲第6項に記載の 方法。 9.該エピトープが中和エピトープである、請求の範囲第1項に記載の方法。 10.該抗体分子が組み合わせライブラリー内にある、請求の範囲第1項に記載の 方法。 11.該抗体分子の防御能の測定をインビトロで実施する、請求の範囲第1項に記 載の方法。 12.更に、該抗体分子をコードする核酸の配列決定段階を含む、請求の範囲第1 項に記載の方法。 13.請求の範囲第1項に記載の方法によって同定された抗体分子。
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