【発明の詳細な説明】
グラム陽性菌およびマイコブラズマ感染症を治療するための新規抗生物質および
方法連邦で保証された研究に関する声明
この研究は、アメリカ合衆国政府の、ヘルスグランツ国立研究所(National In
stitute of Health Grants)GM21747 およびGM45330 により部分的に支援された
。政府は本発明に一定の権利を有する。本発明の背景
本発明はマイコプラズマおよびグラム陽性菌感染症に関する。
グラム陽性の真正細菌は三つの別々のDNA ポリメラーゼ- エキソヌクレアーゼ
(“pol-exo”):Pol I, Pol IIおよびPol IIIを含む。グラム陽性菌のPol IIIは
宿主染色体の環化重複を伴うDNA の複製合成に絶対必要な酵素である。グラム陽
性菌Pol III は抗生剤のグラム陽性菌選択性“HPUra”(6-(p-ヒドロキシフェニ
ルアゾ)- ウラシル)、すなわちHPUra 類似化合物クラスの唯一の標的である。
これらの薬剤は、プリン- デオキシリボヌクレオシド5- トリホスフェートのま
ねをし、物理的にDNA ポリメラーゼを阻害することによりこれらの作用を発揮す
る。
すべての公知のマイコプラズマは、ヒト、脊椎動物、植物および節足動物の寄
生虫である。ヒトの病原菌であることが知られているまたは疑われている種には
次のようなものが含まれる:M.pneumoniae,M.genitalium,M.penetrans およ
び特にエイズ患者におけるM.fermentans,インゴニタス株。ヒトおよび動物にお
けるマイコプラズマ感染症は、一般に慢性であり、そして宿主の免疫反応がこの
ような感染症の病因に重要な役割を果たすことが明らかである。特に重要なこと
は、マイコプラズマ感染により引き起こされる自己免疫反応である(たとえば、
リューマチ様関節炎、中枢神経系症候群および他のタイプの器官機能障害)。
マイコプラズマは自己複製しうる最も小く最も簡単な原核細胞である。これら
は通常のグラム陽性菌から迅速な退行的進化によって生じ、その結果代表的グラ
ム陽性菌ゲノムの著しい簡素化が生じる。マイコプラズマゲノムは600kb 程の小
ささでもよく(しかし1700kb程大きくてもよい)、500 未満の遺伝子(大腸菌にお
ける遺伝子の数の約1/5)を有する。この単純化された存在は多分寄生により可能
になる。
マイコプラズマ類のゲノム減少は酵素のDNA ポリメラーゼ群に影響し、グラム
陽性菌において見られる三つのexo-陽性酵素が一つのエキソ欠失種へと減少する
と思われる(ボクサーら(Boxer et al.)、Biochemistry,18:4742-49(1979);マウ
レルら(Maurel et al.)、Res.Microbiol.,140:191-205(1989);ミルズら(Mills
et al.)、J.Bacteriol.132:641-49(1977))。
これまでの調査ではマイコプラズマにおいて一つのDNA ポリメラーゼだけを確
認した。M.oraleからの酵素を精製し、そして103-116kDaの一本鎖ペプチドから
なることがわかった。そして、同じ大きさのポリメラーゼがM.hyorhinis にお
いて見られた。98kDa ポリメラーゼもまたM.mycoides において見られた。両方
とも少なくとも一つの exo(3'-5’および/または5'-3')活性を取り込んでいる
原形のグラム陽性菌- およびグラム陰性菌- 特異的polIおよびIIと対照的に、
既に記載したマイコプラズマ酵素はいずれも exo -陽性ではない。本発明の概略
我々は、グラム陽性菌およびマイコプラズマDNA ポリメラーゼIII を阻害し、
したがって細菌およびマイコプラズマの増殖を阻害する化合物を確認した。新規
化合物は、マイコプラズマおよびグラム陽性菌の両方の阻害に使用するために提
供される。さらに、我々は新規化合物および幾つかの既に知られた化合物の両方
を、マイコプラズマおよびグラム陽性菌細胞の阻害に使用するための方法を提供
する。
したがって、本発明はインビボおよびインビトロでマイコプラズマ細胞の複製
を阻害する方法を特徴とする。この方法は、阻害に対し効果的である十分量で、
本発明化合物または酵素DNA ポリメラーゼIII の活性を阻害する他の“HPUra‐
様”デオキシリボヌクレオチド類似物のいずれか(たとえば、ピリミジンまたは
プリン誘導体、2-置換 dATP およびN2-置換 dGTP 類似物、リボ-、2'- デオキシ
リボ- 、アラビノ- 、2',3'-ジデオキシ- または非脂環式- ヌクレオチド、N6-
置換 6- アミノピリミジンおよびN2-置換 2- アミノプリン)を投与して細胞
を縮小することからなる。
“阻害”とは、細胞増殖速度を少なくとも80%、より好ましくは90%、さらによ
り好ましくは95%、そして最も好ましくは99%以上低下させることを意味する。阻
害の程度はインビトロ増殖分析により確かめられる(たとえば、標準液体培養技
術により、ここでもMIC プレート(前出)における他のコロニー形成単位の相対的
数または投与- 反応実験)。好適な(最低阻害濃度)LDSOにおいてコロニー形成の
阻害を示す化合物が治療剤としてさらに別の実験に有用であろう。
化合物の“効果的量”とは、インビボまたはインビトロで投与した場合、阻害
の前記レベルを達成するであろう量を意味する。
他の特徴的な点は、以下の一般式で表される本発明化合物を、阻害に有効な十
分量で投与することによるインビボおよびインビトロでのグラム陽性菌の増殖を
阻害するための方法である:
(式中、R1は(CH2)nOH.CH2CBOHCH2OH,CH2CHOHCH3,(CH2)mCO2Hまたは(CH2)nN
H2であり、nは2,3,4または5 であり、そしてmは1,2,3または4 であり、そ
してR2はインダニル、
(式中、R3およびR4は、H、アルキル、ハロまたは他のいずれかの疎水性成分
である)である。)
両方の方法の好ましい実施態様において、治療は動物(たとえば、豚、ニワト
リまたは他の商品に関係する家畜)またはマイコプラズマまたはグラム陽性菌感
染症と診断された患者へ投与される。好ましい実施態様において、化合物は、特
にマイコプラズマまたはグラム陽性菌感染症に罹りやすい動物またはヒト(たと
えば、エイズ患者または最近医療処置を受けたヒト)において、このような感染
症を予防するために動物またはヒトへ投与されうる。他の好ましい実施態様にお
いて、治療は、培養された原核細胞、マイコプラズマまたはグラム陽性菌感染症
を有するいずれかのもの、またはこのような感染症を予防する(すなわち、予防
的治療)ために行われる。培養基を、本発明化合物を含むように商業的に調製し
てもよい。
本発明の好ましい実施態様において、この方法に使用される化合物は、以下の
化合物の一つ以上である:
A)3-(2-ヒドロキシエチル)-6-(5- インダニルアミノ)ウラシル、HE-TMAU(“
TMA”は5-インダニルアミノを意味し、これはまた3,4 トリメチレンアニリノと
もいう);
B)3-(2-ヒドロキシエチル)-6-(5- インダニルアミノ)イソシトシン、HE-TMAi
C;
C)3-(2-ヒドロキシエチル)-6-(3- エチル-4- メチルアニリノ)ウラシル、HE-
EMAU;
D)3-(2-ヒドロキシエチル)-6-(3- エチル-4- メチルアニリノ)イソシトシン
、HE-EMAiC;
E)3-(2-ヒドロキシエチル)-6-(3.4- ジクロロベンジルアミノ)ウラシル、HE-
DCAU;
F)3-(2-ヒドロキシエチル)-6-(3,4- ジクロロベンジルアミノ)イソシトシン
、HE-DCAiC;
G)3-(4-ヒドロキシブチル)-6-(5- インダニルアミノ)ウラシル、HB-TMAU;
H)3-(4-ヒドロキシブチル)-6-(5- インダニルアミノ)イソシトシン、HB-TMAi
C;
I)3-(カルボキシメチル)-6-(5- インダニルアミノ)ウラシル、CM-TMAU;
J)3-(2-アミノエチル)-6-(5- インダニルアミノ)ウラシル、AE-TMAU;
K)9-(2-ヒドロキシエチル)-N2-(5-インダニル)グアニン、HE-TMPG;
L)9-(2-ヒドロキシエチル)-2-(5- インダニルアミノ)アデニン、HE-TMAA;
M)9-(2-ヒドロキシエチル)-N2-(3-エチル-4- メチルフェニル)グアニン、HE-
EMPG;
N)9-(2-ヒドロキシエチル)-2-(3- エチル-4- メチルアニリノ)アデニン、HE-
EMAA;
O)9-(2-ヒドロキシエチル)-N2-(3,4- ジクロロベンジル)グアニン、HE-DCBG;
P)9-(2-ヒドロキシエチル)-2-(3,4- ジクロロベンジルアミノ)アデニン、HE-
DCBA;
Q)9-(4-ヒドロキシブチル)-N2-(3,4- ジクロロベンジル)グアニン、HB-DCBG;
R)9-(4-ヒドロキシブチル)-2-(3,4- ジクロロベンジルアミノ)アデニン、HB-
DCBA;
S)9-(2-カルボキシエチル)-N2-(3,4- ジクロロベンジル)グアニン、CE-DCBG
T)9-(2-アミノエチル)-N2-(3,4- ジクロロベンジル)グアニン、AE-DCBG
本発明はまた、以下の式を有する3-置換ウラシルおよびイソシトシン化合物ま
たはこれらの薬剤上許容されうる塩を特徴とするものである:
(式中、ウラシルおよびイソシトシンの両方におけるR1は、(CH2)nOH,CH2CHOH
CH2OH,CH2CHOHCH3,(CH2)mCO2Hまたは(CH2)nNH2であり、nは2,3,4または5 で
あり、そしてm は1,2,3または4 であり、そしてR2はインダニル、
(式中、R3およびR4はH、アルキル、ハロまたは他のいずれかの疎水性成分(
たとえば、CH3,C2H5,F,Cl,Brおよび(CH2)3)である)である)
本発明に使用される好ましい3-置換ウラシルおよびイソシトシン化合物は以下
のものである:
A)3-(2-ヒドロキシエチル)-6-(5- インダニルアミノ)ウラシル、HE-TMAU(TM
Aは5-インダニルアミノまたは3,4-トリメチレンアニリノを示す);
B)3-(2-ヒドロキシエチル)-6-(5- インダニルアミノ)イソシトシン、HE-TMAi
C;
C)3-(2-ヒドロキシエチル)-6-(3- エチル-4- メチルアニリノ)ウラシル、HE-
EMAU;
D)3-(2-ヒドロキシエチル)-6-(3- エチル4- メチルアニリノ)イソシトシン、
HE-EMAiC;
E)3-(2-ヒドロキシエチル)-6-(3,4- ジクロロベンジルアミノ)ウラシル、HE-
DCAU;
F)3-(2-ヒドロキシエチル)-6-(3,4- ジクロロベンジルアミノ)イソシトシン
、HE-DCAiC;
G)3-(4-ヒドロキシブチル)-6-(5- インダニルアミノ)ウラシル、HB TMAU;
H)3-(4-ヒドロキシブチル)-6-(5- インダニルアミノ)イソシトシン、HB-TMAi
C;
I)3-(カルボキシメチル)-6-(5- インダニルアミノ)ウラシル、CM-TMAU;
J)3-(アミノエチル)-6-(5- インダニルアミノ)ウラシル、AE-TMAU;
本発明の別の見地は、以下の一般式で表される9-置換グアニンおよびアデニン
化合物を特徴とするものである:
(式中、グアニンおよびアデニンの両方におけるR1は、(CH2)nOH,CH2CHOHCH2OH
,CH2CHOHCH3,(CH2)mCO2Hまたは(CH2)nNH2であり、nは2,3,4または5 であり
、そしてm は1,2,3または4 であり、そしてR2は、
(式中、R3およびR4はH、アルキル、ハロまたは他のいずれかの疎水性成分た
とえば、CH3,C2H5,F,Cl,Br および(CH2)3である)である)
本発明に使用される好ましい9-置換グアニンおよびアデニン化合物は以下のも
のである:
A)9-(2-ヒドロキシエチル)-N2-(5-インダニル)グアニン、HE-TMPG;
B)9-(2-ヒドロキシエチル)-2-(5- インダニルアミノ)アデニン、HE-TMAA;
C)9-(2-ヒドロキシエチル)-N2-(3-エチル-4- メチルフェニル)グアニン、HE-
EMPG;
D)9-(2-ヒドロキシエチル)-2-(3- エチル-4- メチルアニリノ)アデニン、HE-
EMAA;
E)9-(2-ヒドロキシエチル)-N2-(3,4- ジクロロベンジル)グアニン、HE-DCBG;
F)9-(2-ヒドロキシエチル)-2-(3,4- ジクロロベンジルアミノ)アデニン、HE-
DCBA;
G)9-(4-ヒドロキシブチル)-N2-(3,4- ジクロロベンジル)グアニン、HB-DCBG;
H)9-(4-ヒドロキシブチル)-2-(3,4- ジクロロベンジルアミノ)アデニン、HB
-DCBA;
I)9-(2-カルボキシエチル)-2-(3,4- ジクロロベンジル)グアニン、CE-DCBG
J)9-(2-アミノエチル)-2-(3,4- ジクロロベンジル)グアニン、AE-DCBG
本発明化合物は、マイコプラズマおよびグラム陽性菌感染症の治療における有
用性を有し、そして現在使用される治療に耐性を有する微生物の治療に特に有利
である。これらはまた感染を起こす微生物の基本的確認にも使用できる。50μM
以下の最低阻害濃度(MIC)が臨床上適切な抗菌剤またはマイコプラズマ剤に望ま
しい。MIC は標準的分析を用いて測定され、そして阻害の所望のレベルは前記の
ようである。
本発明の方法により最も好ましく処置されうる微生物は、ヒト、家畜または商
品として重要な動物、非限定的にたとえば豚、牛、山羊、ニワトリ、七面鳥、羊
および実験動物(たとえば、ラット、マウス、ウサギ)に寄生する自然に存在す
るマイコプラズマおよびグラム陽性菌である。本発明方法の標的であるマイコプ
ラズマ類および他の細菌は、また便宜的に真核細胞(たとえば、植物、動物およ
び昆虫)の実験または他の培養物にも影響を及ぼすこれらのマイコプラズマ類等
も含む。
化合物は予防的に投与してもよく、そして感染後に行ってもよい。予防措置は
免疫的に妥協した動物および患者に対しそして術後のおよび歯の治療後の動物お
よび患者に対し最も好適である。本発明方法の適用のための関連症状のこのリス
トは限定的ではなく、そして化合物に感応する妥当な感染のいずれも本発明の方
法および/または化合物を用いて治療されうる。図面の簡単な説明
図1 は精製工程V(バイオレックス(Bio-Rex)70クロマトグラフィー)の生成物
の分析を示すグラフである。上段パネル、200μM HPUra の存在(●)または不
存在(○)下のpol 活性。3H cpmは、示したフラクション5 μl に存在するポリ
メラーゼのレベルを示す。中段パネル、SDS-PAGE分析;カラムインプット(i)25
μl、フロースルー(FT)および示したフラクション(3-21)からの25μl を変性し
、電気泳動にかける。ゲルをコーマシー(Coomassie)ブリリアントブルーで染
色し、脱色し、そして乾燥すると図示した電気泳動図が得られる。下段パネル、
exo(◆)対pol(○)活性の表示;各フラクション5 μl を分析した。詳細な記載 グラム陽性病原菌
本発明の新規化合物を用いて処置を受けやすい3 つの代表的
グラム陽性菌がある。これらのStaphylococcus aureusおよび Enterococcus fec
alis/fecium のうちの二つは、主にノソコミナル(nosocomial)(院内感染性)病
原菌である;これらは合わせて、現在のノソコミナル疾患の大部分であると考え
られている。第三の微生物は地域獲得性病原菌、Strcptococcus pneumoniaeであ
る。
Staphylococcus aureus は現在、ノソコミナル菌血症および皮膚/傷口感染症
の最も多い原因であり、そしてノソコミナル下部呼吸器感染症の二番目に多い原
因である。Enterococcus fecalis/fecium は、ノソコミナル敗血症、心内膜炎、
および傷口の感染、ならびに尿路感染の原因としてStaphylococcus aureus およ
び大腸菌に次いで三番目に位置する。Streptococcus pneumoniaeは、幾つかの重
篤なそして潜在的に生命を脅かす疾患を起こす。米国において、Streptococcus
pneumoniaeは毎年肺炎球菌性の髄膜炎6,000 例、肺炎50万例、菌血症55,000例、
および中耳炎600 万例を起こすと考えられている。Streptococcus pneumoniaeが
原因の疾患からの毎年の死亡数は米国において40,000人、世界的には3-500 万人
と推定される。
現在、グラム陽性病原菌、連鎖球菌、腸球菌、およびブドウ球菌の多剤耐性菌
株により引き起こされる生命を脅かす感染症の臨床的処理において、迅速に増大
する世界的危機がある。これらの標的を選択的に叩くことができる新しいグラム
陽性特異的抗生物質標的物を研究しそしてこの危機と上手に戦う努力の一部とし
て発展させなければならない。ここでは臨床的に使用されるpol III-選択的キセ
ノ抗生物質(xenobiotics)の新規クラスを提供する。マイコプラズマ病原菌
モデル系としてMycoplasma pulmonisを用いて、マイコプラズマの増殖がHPUra
型のグラム陽性菌選択的阻害剤に感受性があるかどうかを研究した。
6-(p- ヒドロキシフェニルアゾ)-ウラシル(HPUra)および様々な構造的関連誘
導体(全てデオキシリボヌクレオチド類似物)は、グラム陽性菌の複製の高度に
選択的な阻害剤である。これらの作用部位は複製DNA 合成であり、そしてこの部
位におけるこれらの特異的標的はPol III である。HPUra およびその誘導体の性
質により、これらが複製ポリメラーゼとしてPol III を使用する微生物を一時的
に確認するための便利で強力なプローブとなり、そしてマイコプラズマ感染症を
治療するためのこれまで知られていない方法を提供する。
HPUra 誘導体がマイコプラズマを阻害するという我々の発見に基づいて、我々
はマイコプラズマが少なくとも二つの別々のDNA ポリメラーゼを有することを提
案する;一つはPol III 酵素である。多分、全てのマイコプラズマはPol III 酵
素を有する。マイコプラズマにおけるDNA ポリメラーゼの第二のクラスは、-100
kDa酵素である。したがって、マイコプラズマ進化の間にゲノムが減少する結果
、全てではなく一つのDNA ポリメラーゼが排除されるというこれまでの提案は正
しくないように思われる。
多分、新規に発見されたMycoplasma pulmonis Pol III がMycoplasma pulmoni
s の主なDNA“レプリカーゼ”である。グラム陽性菌Pol III の高度に発展した
機能の分化および細胞生存に対する酵素の中心的重要性は、マイコプラズマ進化
の間にその複製機能を保護するように見える。その大きさおよび抗原性(-166 kD
a;図1)は、代表的グラム陽性菌Pol III と同じである。複製機能の維持はまた
、HPUra クラスの阻害剤に対するマイコプラズマ細胞の増殖および分裂の高い感
受性レベルにより示される。もしMycoplasma pulmonis Pol IIIがDNA 複製に必
須でなかった場合、その宿主は、HPUra およびその誘導体について記載されてい
る(ブラウン(Brown)、1970、前述)のと全く同じ程度のPol III 特異性で阻害
剤に対しかなりの感受性を保持するとは思われない。マイコプラズマを阻害するために使用されうる化合物
グラム陽性菌DNA ポリメラーゼに影響する様々な化合物が記載されている。一
般に、これらの化合物はDNA ポリメラーゼのデオキシリボヌクレオチド類似物阻
害剤および基質として機能する。グラム陽性菌およびマイコプラズマの複製を阻
害するために使用されうるこのような化合物の例は、ピリミジンまたはプリン誘
導体、2-置換 dATP およびN2- 置換dGTP 類似物、リボ-、2'-デオキシリボ-、ア
ラビノ-、2',3'-ジデオキシ- または非脂環式- ヌクレオチド、N6-置換 6- アミ
ノピリミジンおよびN2- 置換 2- アミノプリンである。これらの化合物の特性決
定については、たとえばライトおよびブラウン(Wright and Brown),(1990),Pha
rmac.Ther.47: 447-497(参考としてここに編入)を参照せよ。
広範囲の構造- 活性関係の研究により、3-位がPol III 阻害能力において著し
く低下することなく置換されうるウラシル環のただ一つの位置であることがわか
った(ブラウンおよびライト,Pharmacology Therapy 47: 447(1990))。この位置
における置換基は、実際にポリメラーゼ標的に対する阻害剤親和力を強化するこ
とができる。たとえば、3-アルキル TMAU 誘導体(アルキル = Me,Et,n-Pr,n-
Bu)は、親化合物よりわずかに強力なPol III 阻害剤である(トラントロら(Tran
tolo et al.)、Journal of Medical Chemistry)。第三に、以下の表に示すよう
に、これらのアルキルN3 置換基はまた関連するグラム陽性菌、特に抗生物質耐
性菌株に対するTMAUの抗生物質能力を向上することができる。
N3-アルキル TMAUs vs.Staphy lococcus aureus およびB.subtilisの
構造- 活性関連性
DNA Pol III を阻害するために有用な新規化合物
幾つかの新規化合物は、病原性マイコプラズマの予防、阻害または絶滅のため
にインビボおよびインビトロで抗生物質として有用である。これらの化合物は、
主に3- 置換ウラシルおよびイソシトシン、9-置換グアニンおよびアデニンであ
る。
本発明の3- 置換ウラシルおよびイソシトシンは、以下の式である:
(式中、ウラシルおよびイソシトシンの両方におけるR1は、(CH2)nOH,CH2CHOHC
H2OH,CH2CHOHCH3,(CH2)mCO2H または(CH2)nNH2であり、nは2,3,4または5 で
あり、そしm は1,2,3または4 であり、そしてR2は
(式中、R3およびR4はH、アルキル、ハロまたは他のいずれかの疎水性成分(
たとえば、CH3,C2H5,F,Cl,Br および(CH2)3)である)である。)
好ましい3-置換ウラシルおよびイソシトシン化合物は以下のようである:
A)3-(2-ヒドロキシエチル)-6-(5- インダニルアミノ)ウラシル、HE-TMAU
B)3-(2-ヒドロキシエチル)-6-(5- インダニルアミノ)イソシトシン、HE-TMAi
C;
C)3-(2-ヒドロキシエチル)-6-(3- エチル-4- メチルアニリノ)ウラシル、HE-
EMAU;
D)3-(2-ヒドロキシエチル)-6-(3- エチル-4- メチルアニリノ)イソシトシン
、HE-EMAiC;
E)3-(2-ヒドロキシエチル)-6-(3,4- ジクロロベンジルアミノ)ウラシル、HE-
DCAU;
F)3-(2-ヒドロキシエチル)-6-(3,4- ジクロロベンジルアミノ)イソシトシン
、HE-DCAiC;
G)3-(4-ヒドロキシブチル)-6-(5- インダニルアミノ)ウラシル、HB-TMAU;
H)3-(4-ヒドロキシブチル)-6-(5- インダニルアミノ)イソシトシン、HB-TMAi
C;
I)3-(カルボキシメチル)-6-(5- インダニルアミノ)ウラシル、CM-TMAU;およ
び
J)3-(2-アミノエチル)-6-(5- インダニルアミノ)ウラシル、AE-TMAU。
本発明の9- 置換グアニンおよびアデニンは以下の式のものである:
(式中、グアニンおよびアデニンの両方におけるR1は、(CH2)nOH,CH2CHOHCH2OH
,CH2CHOHCH3,(CH2)mCO2Hまたは(CH2)nNH2であり、nは2,3,4または5 であり
、そしてm は1,2,3または 4であり、そしてR2は、
(式中、R3およびR4はH、アルキル、ハロまたは他のいずれかの疎水性成分た
とえば、CH3,C2H5,F,Cl,Brおよび(CH2)3)である)である。)
好ましい9- 置換グアニンおよびアデニン化合物は以下のものである:
A)9-(2-ヒドロキシエチル)-N2-(5-インダニル)グアニン、HE-TMPG;
B)9-(2-ヒドロキシエチル)-2-(5- インダニルアミノ)アデニン、HE-TMAA;
C)9-(2-ヒドロキシエチル)-N2-(3-エチル-4- メチルフェニル)グアニン、HE-
EMPG;
D)9-(2-ヒドロキシエチル)-2-(3- エチル-4- メチルアニリノ)アデニン、HE-
EMAA;
E)9-(2-ヒドロキシエチル)-N2-(3,4- ジクロロベンジル)グアニン、HE-DCBG;
F)9-(2-ヒドロキシエチル)-2-(3,4- ジクロロベンジルアミノ)アデニン、HE-
DCBA;
G)9-(4-ヒドロキシブチル)-N2-(3,4- ジクロロベンジル)グアニン、HB DCBG;
H)9-(4-ヒドロキシブチル)-2-(3,4- ジクロロベンジルアミノ)アデニン、HB-
DCBA;
I)9-(2-カルボキシエチル)- 2 -(3,4- ジクロロベンジル)グアニン、CE-DCBG
J)9-(2-アミノエチル)-2-(3,4- ジクロロベンジル)グアニン、AE-DCBG
化合物の治療投与
ここで先に述べた化合物は、通常の抗生物質に抵抗性を持つ菌株を含むグラム
陽性菌によって起きるヒトの細菌感染症の治療に有用である。上記の化合物は多
様な種のマイコプラズマ(Mycoplasma)属及びウレアプラズマ(Ureaplasma)属
によって起きるヒトのマイコプラズマ感染症の治療にも有用である。それらは、
動物における関連のグラム陽性菌感染症及びマイコプラズマ感染症の治療、並び
に真核生物細胞培養のマイコプラズマ感染を排除又は回避するためにも有用であ
る。
本発明の化合物は、許容しうる希釈剤、担体又は賦形剤と任意で合わせて、且
つ/又は単位投与形態として、医薬、獣医、及び組織培養に使用するために処方
することができる。本発明の化合物の使用に当たっては、通常の医薬、獣医、又
は培養における実際的方法で適当な処方物又は組成物を作ることができる。
そこで、本発明の処方物はヒト又は動物における使用では非経口投与、例えば
静脈内、経皮、筋肉内、眼窩内、眼科用、脳室内、頭蓋内、関節包内、髄腔内、
脳底内、腹腔内、局所、鼻腔内、エアゾール、乱切等;並びに経口;バッカル;
直腸内;膣内;又は局所投与によって投与することができる。
本発明の処方物は本発明の化合物を放出する外科的移植物の使用によって投与
することもできる。
非経口用処方としては液体溶液又は懸濁液の形態でもよい;経口投与用には、
錠剤又はカプセル剤の形態に処方してもよい;さらに鼻腔内処方としては粉末、
点鼻剤、又はエアゾールの形態でもよい。
上記処方物を作るための当技術分野で周知の方法は、例えば「レミントンの製
薬科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)」に見ることができる。非経口
投与用処方は、例えば、賦形剤として滅菌水若しくは滅菌食塩水、ポリエチレン
グリコールのようなポリアルキレングリコール、植物性オイルを含んでいてもよ
く、或いは水素化ナフタレン類、生体適合性で生物分解性のラクチドポリマー、
又はポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー類を本発明の要素の
放出を調節するのに使用することもできる。上記要素の非経口放出に有用と考え
られる他のシステムとしては、エチレン−酢酸ビニルコポリマー粒子、浸透圧ポ
ンプ、植え込み型注入システム、及びリポソームが挙げられる。吸入用処方は賦
形剤として、例えばラクトースを含んでもよいが、或いは、例えばポリオキシエ
チレン -9-ラウリルエーテル、グリココレート及びデオキシコレートを含む水溶
液でもよく、点鼻剤投与形態の油性溶液や鼻腔内に塗布するためのゲルでもよい
。非経口投与処方は、バッカル投与用にはグリココレート、直腸内投与用にはメ
トキシサリチレート、又は膣内投与用にはクエン酸を含んでいてもよい。
本発明の処方における化合物の濃度は投与される量及び投与経路を含む幾つか
の要因によって変化する。
大まかに言うと、本発明の化合物は非経口投与用として約 0.1ないし 10%w/v
の化合物を含む生理的バッファー水溶液として供給することができる。一般的な
用量範囲は1日当たり約0.01 mg/kgないし約 1g/kg 体重である:好ましい用量
範囲は1日当たり約0.01 mg/kgないし 100 mg/kg体重である。好ましい投薬量は
扱う感染症の進行のタイプ及び程度、患者の全体的健康状態、及び投与経路に依
存することになるであろう。局所及び経口投与については、他の抗生物質、例え
ばエリスロマイシンに用いられるものと同様の処方及び用法でもよい。マイコプラズマ感染の検出及び化合物の効力/毒性の評価
感染の検出
マイコプラズマ感染の検出には多くの標準的方法があり、これらは in vitro
及び in vivoの両方に使用することができる。ここに掲げる例はそれに限定する
ことを意図するものではない。グラム陽性細菌感染の検出はいずれの標準的方法
(例えば、グラム染色法)によって行ってもよい。
in vitro及び in vivoの両方においてマイコプラズマ感染を検出するための好
ましい方法はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の使用である。この方法は感染の質的
及び量的評価の両方に使用することができる。マイコプラズマ及びグラム陽性菌
の間で保存されていないゲノムのユニーク領域からプライマーを選択し、反応条
件は当技術分野で標準的なように決定する(例えばオチマンら(Ochman et al.),PCR Protocols; A Guide to Methods and Applications
,Academic Press: San
Diego(1990)を参照)。正確なサイズの増幅 cDNA の存在がマイコプラズマ感染
を示すものである。cDNAを配列決定してマイコプラズマの同一性を確認すること
もできる。このようなプライマーはより少ない増幅サイクルでの定量的 PCR(例
えば、化合物のマイコブラズマ複製を阻害する効力を測定すること)にも有用で
ある。適当なプロトコールは上記のオチマンら(0chman et al.)の文献に見るこ
とができる。増幅用のサンプルは培養細胞、又は動物若しくはヒトからの組織若
しくは血液サンプルから得ることができる。
抗生物質化合物の効力の評価
本発明の方法において有用な新規の化合物及び既知の化合物のマイコプラズマ
阻害作用を後述の実験手順の部に記載の単純なアッセイを用いて試験することが
できる。簡単に述べると、試験化合物を追加した又は追加していない寒天プレー
ト上で標準的マイコプラズマ生育条件を用いて、いずれの試験化合物についても
種々の濃度による生長阻害を評価することができる。或いは、試験化合物を液体
培養物に濃度を変えて加え、生長阻害をモニターしてもよい。生長阻害、すなわ
ち細胞複製の阻害は、プレートでは MICが 50 μm 以下;液体培地では 100μm
以下で 90%阻害が得られる。
試験化合物の DNA Pol III活性阻害能を直接アッセイする方法は先に述べられ
ているような DNAポリメラーゼアッセイを用いることによる(バーンズ及びブラ
ウン(Barnes and Brown)Nuc.Acids Res.,6:1203-19(1979);トラントロら(T
rantolo et al.)J .Med.Chem.29:676-681;ミルズら(Mills et al.),J.Bact eriol.
,132:641-49(1977);及びローら(Low et al.),J.Biol.Chem.,251、1311
-25(1976);これら全て参考文献としてここに組み入れる)。この迅速なスクリ
ーニング方法は標準的 DNAポリメラーゼ活性アッセイに天然又は組み換え DNA P
ol III酵素を用いることができる。そのようなアッセイを行うには多数の方法が
当技術分野において公知である(例えば、後述の参考文献を参照のこと)。対照
との並行(side-by-side)アッセイに試験化合物をかけることによって、ポリメ
ラーゼ活性に対する試験化合物の作用が評価できる。天然又は組み換えマイコプ
ラズマ DNAポリメラーゼ IIIに対して適当なレベルの阻害を示す試験化合物を治
療剤の候補としてその後の評価にかける。
毒性の評価
上記の新規化合物の毒性を当業者に公知の標準的方法によって評価する(グー
ツ(Gootz,T.D.)Clin.Microbiol.Rev.,3,13-31(1990)を参照)。毒性用
量(又は“LD50”)の測定は実験手順の部に記載されているように行うか、又は薬
理学の分野で周知の他のプロトコールを用いて行い、その後の治療的評価にかけ
るべきと考えられる化合物についての IC50値の適当な範囲は培養体における MI
C又は IC50のオーダーであり、すなわち治療指数が 10 よりも大きくなければな
らない。実験手順
マイコプラズマ生育及び薬物阻害
M.pulmonis 株 KD735-15(ブグラ及びディビグ(Bhugra and Dybvig),1992に
記載の構造)をマイコプラズマ用培地中で増殖させ、先に述べられているように
(ディビグ及びカッセル(Dybvig and Cassell),1987)寒天上でのコロニー形成
ユニット(cfu)を評価した。M.pulmonis は特性分析がよく成されている代表的
種である。公的に入手できる他の株も使用できる。例えば、Mycoplasma agalact
iae,ATCC 35890,Mycoplasma arthritidis,ATCC 13988,Mycoplasma bovigeni
talium,ATCC 14173,Mycoplasma bovirhinis,ATCC 27748,Mycoplasma bovis
,ATCC 25025,Mycoplasma felis,ATCC 23391,Mycoplasma gallinaceum,ATCC
33550,Mycoplasma gallinarum,ATCC 15319,Mycoplasma gallisepticum,ATC
C 15302,Mycoplasma genitalium,ATCC 33530,Mycoplasma hominis,ATCC 140
27,Mycoplasma hyorhinis,ATCC 17981,Mycoplasma hyosynoviae,ATCC 25591
,Mycoplasma meleagridis,ATCC 25294,Mycoplasma orale,ATCC 15539,Myco
plasma pneumoniae,ATCC 15293,Mycoplasma pullorum,ATCC 33553,Mycoplas
ma pulmonis,ATCC 14267,Mycoplasma putrefaciens,ATCC 15718,Mycoplasma
synoviae,ATCC 25204,も使用できる。ここで用いる阻害剤はライト及びブラ
ウン(Wright and Brown,Pharmac.Ther.47:447-497(1990))に記載されてい
るように製造され、ジメチルスルホキシド(DMSO)中に 20 mMのストック濃度に調
製された。生長阻害は寒天上で、抗生物質を加えない又は加えた培地上で得られ
る cfuを比較することによって調べた。DMSO単独では 1% と高い濃度でも M.pu
lmonisの生長又は cfu能力に影響を及ぼさなかった。
酵素精製
グラム陽性菌から DNAポリメラーゼIII を精製及び同定する一般的方法は当技
術分野において公知である。ここでは単離のプロトコールを示す。5 L のM.pul
monis培養液を対数期半ばまで生育させて、急激に 4℃まで冷やした。4℃で遠心
して細胞を採取し、氷冷リン酸緩衝食塩水(150 mM BaCl: 10 mMリン酸カリウム
,pH 7.6)で2回再遠心して洗浄した。圧縮細胞(〜3.5 g)を0.7 gペレットとし
てドライアイス−エタノールバス中で急速に凍結し、-80 ℃で保存した。表1に
要約されている以下の手順は0.7 gペレット1回分の精製に適用される。
フラクションI(粗抽出物):全工程は 4℃で行われ、フラクションの蛋白濃
度はウシ血清アルブミン標準体を用いてブラッドフォードの方法(Bradford,An
al.Biochem,72:248-54(1976))により測定した。細胞ペレット1個を1ml の
カラムバッファー(50 mM リン酸カリウム,pH 7.5;1mM PMSF)に再懸濁した。
細胞をおよそ 138,000 kPaのフレンチプレスで破裂させ、20,000× gで 60 分間
遠心して透明な上清を得た(フラクションI)。
フラクションII(硫酸アンモニウム沈殿):フラクションIを3倍容量の飽和
硫酸アンモニウム溶液(50 mM Tris-HCl,pH8.0,2 mM DDT)と混合した。得ら
れた濁った懸濁液を1時間攪拌し、20,000× gで 20 分間遠心した。ペレットを
1.5 M NaCl を含むカラムバッファー 3ml に溶解し、得られた溶液を遠心して透
明化し、フラクションIIを得た。
フラクションIII(フェニルセファロース溶出液):フラクションIIを 1.5 M
NaCl を含むカラムバッファーで平衡化した 1ml のフェニルセファロース(シ
グマ・ケミカル社)カラムに載せた。このカラムを 2vol.の同バッファーで洗
浄した後、1.1 vol.のカラムバッファーで洗浄した。このカラムを 1% Triton X
-100を含む 3 vol.のカラムバッファーで溶出し、フラクションIII を得た。
フラクションIV(マクロ−プレプ・ハイ・エコノQクロマトグラフィー):フ
ラクションIII を 1% Triton X-100を含むカラムバッファーで平衡化した 2 ml
のマクロ−プレプ高性能エコノQ(バイオラド)カラムに載せた。次いでカラム
を約 10 mlの同バッファーで洗浄し、40 ml の 0-0、2 M NaCl 濃度勾配(同バッ
ファーに基づく)で溶出した。DNAポリメラーゼ活性のブロードピークがおよそ0
.08 M NaClに溶出され、活性フラクションを合わせてフラクションIVが得られた
。
フラクションVa(バイオ−レックス 7 0クロマトグラフィー):フラクション
IVを 1% Triton X-100を含むカラムバッファーで希釈してNaCl濃度を 25 mMに下
げてから、1% Triton X-100+25 mM NaCl を含むカラムバッファーで平衡化した
2 ml のバイオ−レックス 70(バイオラド)カラムに載せた。カラムを 5 ml
の同バッファーで洗浄し、吸着された酵素はそれぞれおよそ 0.15 及び 0.30M N
aClの2つの別個のピーク(A及びBと呼ぶ)に溶出された。クロマトグラフィ
ー処理を図1に要約する。図の上パネルが示すように、ピークAは HPUra感受性
pol活性を表わす。ピークAを合わせてフラクションVaが得られた。
酵素アッセイ及び阻害剤 IC50値の測定
DNA pol 活性は先に述べられているように(バーンズら(Barnes et al.),Nuc. Acids Res.
,6:1203-19(1979))、鋳型プライマーとして活性化ウシ胸腺 DNA、
ラベル化 dNTP 基質として 10 pM[3H- メチル]-dTTP、さらに dATP、dCTP、及び
dGTP をそれぞれ 25 μM ずつ用いてアッセイした。TMAU及び4種のアリールア
ゾピリミジン(表2に要約)の IC50値を測定するために、dGTPの濃度は 25から
10 μM に下げた。TMAUは酵素アッセイに直接使用し、アリールアゾピリミジン
類はアッセイ前にライト及びブラウン(Wright and Brown,J.Med.Chem.20:118
1-1185(1977))が述べているように亜ジチオン酸ナトリウムを用いて活性のヒド
ラジノ型に還元した。
Exo 活性をローら(Low et al.,前述)が述べているように、変性ウシ胸腺 DNA
の 3'-OH末端における[3H]-dTMP残基の取り込みを用いてアッセイした。
バイオ−レックスフラクションの SDS-PAGE 及び免疫プロット分析
SDS-PAGEはラムリ(Laemmli,1970)の方法を利用し、7.5%ポリアクリルアミド
(バイオラド)及び 0.2% ビス−アクリルアミド(バイオラド)を含む 1.5 mm
×83 mm×102 mm,15 ウェルゲルを使用した。免疫ブロット分析には、選択され
たバイオ−レックスクロマトグラフィーフラクション又は他の関心を寄せる対照
フラクションのサンプル 25 μを変性させて(ラムリ(Laemmli),1970)、SDS-PAG
Eにかけた。ゲルをナイロン補強ニトロセルロースメンプレン(ニトロプラス 20
00、マイクロン・セパレイションズ社)にブロットし、その後のトウビンらの方
法(Towbin et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,76:4350-54(1979))を基本
とするその後の免疫ブロット分析にかけた。ブロットは 2.5μg ml-1の濃度の一
次抗体(ウサギ・ポリクローナル抗-Pol III IgG: バーンズら(Barnes et al.)
,1979,前述)にさらした。二次抗体(ビオチニル化ヤギ抗ウサギ IgG; シグマ
)は 5μg ml-1の濃度で使用した。二次抗体で処理した後、ブロットをストレブ
タビジン結合ホースラディッシュペルオキシダーゼ(シグマ;5μg ml-1)で染
色し、すすいでから H2O2/o-ジアニジジンで顕色させた。
以下の実施例は本発明を説明するためのものであって、限定する意図はない。
実施例 実施例1:
HPUra 型抗菌剤によるマイコプラズマ生長阻害
HPUra 及び、構造的に関連性を持つ化合物の多数のコレクションから選択した
25 個の他の薬剤(ライト及びブラウン(Wright and Brown),Pharmac.Ther.47
:447-497(1990))を実験手順の部に記載したように 200μM の濃度で M.pulmon
isに対して試験した。HPUra 及び他の 15 個の薬剤はコロニー形成を完全に阻害
した。これらのうち、HPUra 並びに他の 3個の薬剤(6-(フェニルアゾ)ウラシル
(PUra)、6-(p- クロロフェニルアゾ)ウラシル(PCPUra)、及び 6-(m-クロロ
フェニルアゾ)ウラシル(MCPUra)を濃度を減少させて(100、50、25、12.5及び
6.25 μM)、強度について比較した。コロニー形成を 99%阻害するのに必要な各
薬剤の濃度は以下のようになった:PCPUra<6.25μM; PUra,6.25-12.5μM; MCP
Ura,12.5 μM;及び HPUra 12.5-2.5 μM。よってこれらの薬剤は、B.sub
tilis,Enterococcus faccalis,及び Staphylococcus aureusのような低-GC グ
ラム陽性菌に対して示すものと完全に同等の強度レベルをM.pulmonisに対して
示した(バーンズら(Barnes et al.),(1979)),前述)。実施例2:
グラム陽性 Pol IIIの活性に類似した DNAポリメラーゼ活性の M.
pulmonisからの単離
M.pulmonis の生育の HPUra及びその近縁誘導体に対する感受性によって、こ
の微生物が適当な酵素標的を持つことが示された。この示唆を探究するために、
本発明者らは M.pulmonisの粗抽出物(実験手順の部で定義されるフラクション
I)を調製し、HPUra及び類似薬剤に対して感受性を持つポリメラーゼ活性の存
在を調べた。この抽出物は低-GC グラム陽性微生物において予想されるレベルの
pol 活性を示し、この活性の重要な部分(〜50%)は HPUra感受性であった(デー
タ表示なし)。
HPUra-感受性 pol活性をさらに特性決定するために、本発明者らは表1に要約
され実験手順の部に述べられいる5段階処理を用いてこれを精製した。図1は上
記手順の最終段階であるステップ5で発現した pol活性のバイオレックス 70 ク
ロマトグラフィー分析を表している。上パネルの活性曲線(白丸)が示すように
バイオレックス・クロマトグラフィーにより pol活性の2ピーク、A及びBが分
離された。200 μM HPUra の存在下でのフラクションの再アッセイ(黒丸)から
ピークAが表わす pol活性は薬剤感受性であるが、ピークBの pol活性は感受性
を持たないことが示された。
ビークAの pol活性がグラム陽性−特異的 Pol IIIと同様のものであるかどう
かを調べるために、本発明者らは a)この活性が代表的なグラム陽性 Pol III-
特異的阻害剤に対して適当なレベルの感受性を示すかどうか;b)この活性が同等
のサイズ(すなわち、〜160 kDa)のポリペプチドに関連付けられたかどうか;及
び c)この活性が exo活性に物理的に関連付けられたかどうか、を評価した。こ
れら疑問に対する結果を以下に述べる。
a)ピークA pol活性の HPUra- 型阻害剤に対する感受性
5個の化合物を HPUra- 型阻害剤に対するビークA pol活性の感受性を評価す
るために使用した。これらは上記の生育実験で用いた4個の化合物(HPUra,PUra
,PCPUra,及び MCPUra)並びに、メカニズム及び標的特異性が等しい HPUra基本
形の‘第二世代の’誘導体である TMAU(6(3',4'-トリメチルアニリノ)ウラシ
ル(ライト及びブラウン(Wright and Brown),1990)であった。これらの各薬剤
のIC50値(50% 阻害に必要な濃度)をピークA pol活性について、及び阻害剤感
受性対照酵素として B.subtilis pol IIIについて測定した。表2に要約した結
果から、ビークAポリメラーゼは阻害剤感受性に関してグラム陽性特異的 Pol I
IIの特徴を示していることがわかった。
b)ピークA pol活性に関連付けられる〜166 kDa ポリベブチドの同定
〜160 kDa のPol III特異的ポリペプチドがピークAと関連付けられるかどう
かを調べるために SDS-PAGE を用いた。図1の中パネルは、上パネル中に示され
るクロマトグラフィー中の関連フラクションサンプルの SDS-PAGE 分析を表して
いる。これはフラクション 6-9においてピークAの触媒活性と〜166 kDa(Y軸
上に矢印で示す)のポリペプチドの溶出が一致していることを示しており、この
ポリペプチドのサイズは典型的なグラム陽性特異的 Pol IIIに考えられているも
のである。
後者のペプチドが実際に Pol IIIであるかどうかを調べるために、本発明者ら
はピークAのピークフラクション(no.7)及び、対照としてピークBのピークフ
ラクション(no.15)を SDS-PAGE/免疫ブロット分析にかけた。この分析では 162.
4 kDa B.subtilis Pol IIIに対して作られたポリクローナル抗体を利用した。
この試薬はブロットされた B.subtilis Pol IIIだけでなく、Staphylococcus及
び Streptococcusのような他の幾つかのグラム陽性微生物とも強く且つ特異的に
反応する(バーンズら(Barnes et al.),1979,前述)。分析の結果は、ここには
示していないが、ピークAの〜166 kDa ポリペブチドバンドが上記抗体に対して
強い反応性を示し、且つどちらのピークでも抗体ブローブに特異的に反応したた
だ一つのゲルバンドであったことを明らかに示した。
c)ピークA pol活性の exo活性との物理的関連性
図1の上バネルに示されているクロマトグラフィーのフラクションを exo活性
について分析した。これらの結果と先の pol アッセイの結果をプロットして、
図1の下パネルの複合活性プロフィールを描いた。このプロフィールは HPUra-
感受性 pol活性のピーク(白丸;ピークA)と完全に一致する exo活性の単一の
鋭いピーク(黒菱形)を示した。pol-exo の一致は典型的なグラム陽性特異的 P
ol IIIポリペプチドに予想されるものと一致したが、それでもなお exo活性が H
PUra- 感受性 pol活性と偶然にも同じクロマトグラフィー挙動を示す無関係の蛋
白に関連する可能性もあった。
pol-exo 作用が別々のものなのか又は物理的に結合したものなのかを調べるた
めに、本発明者らはグラム陽性 Pol III類と HPUraクラスの薬剤の相互作用メカ
ニズムについての2つの基本的性質を利用した。その1つは一本鎖(ss)DNA 基質
の存在下での exo活性の固有の阻害剤抵抗性であり、もう1つが二本鎖(ds)DNA
存在下での薬剤に誘導される pol阻害の基本となる酵素の物理的封鎖である。こ
れらの2つの性質及びそれらを利用した実験を以下に簡単に説明する。
封鎖:
HPUra クラスの阻害剤であるピリミジン類に、ブリン dNTP である dGTP を特
異的に模倣しその鋳型シトシンへの結合を拮抗する能力をそれらに賦与する新規
の塩基対合ドメインを形式的に組み込むとしても、これらの薬剤がその標的の p
ol活性を阻害する能力、すなわち dGTP によって特異的且つ拮抗的に打ち消すこ
とができる能力、は pol反応における特異的プライマー鋳型構造の供給に厳密に
依存する。この鋳型は 3'-OH- 末端プライマーに H- 結合されなければならず、
阻害剤の相補体であるシトシンを含みプライマー末端に隣接する最初の非対合残
基としてシトシンを提供しなければならない。この dsDNA構造が供給されると、
阻害剤はそのアリール置換基を酵素の dNTP-結合部位に挿入し同時に3個の H-
結合を妨害されていない鋳型シトシンとの間に形成する。その結果、酵素は触媒
として不活性の蛋白−阻害剤−鋳型プライマー複合体として DNAに対して堅固に
封鎖されることになる。予期される通りに、dGTPは阻害剤と特異的に拮抗してこ
の複合体の形成を打ち消す。
ssDNA における阻害剤抵抗性の exo活性:
グラム陽性特異的 Pol IIIはプライマーにより動かされる酵素であるために、
その pol部位は dNTP 重合を触媒する際に ssDNAを利用することができない。対
照的に、この酵素の exo部位は ssDNAを好み、dsDNAよりも少なくとも 100倍は
効率的に結合及び切断する。ボリメラーゼ分子を HPUra型阻害剤にさらした場合
その exo部位は ssDNAを切断しているが、実質的に阻害は観察されない。しかし
ながら、同じ反応に最初に適当な ds 鋳型ブライマーを補うと、薬物を加えた場
合にその反応は強く阻害される。dsDNA の感作作用の基本原理は単に、阻害剤が
誘導する酵素封鎖、すなわち物理的に酵素蛋白を捕らえてその exo部位が ssDNA
上で作用するのを妨げるプロセスを促進する能力である。メカニズムを考えると
予想されるように、dGTPはこの封鎖により誘導される阻害を特異的に打ち消す。実施例3:
exo活性に対する HPUra及び構造的に関連する化合物の作用
結果はここに示していないが予備実験により、ssDNA に対するビークA exo活
性は、B.subtilis Pol III におけるその‘pol’K1濃度の少なくとも 50 倍に
当たる濃度である 50 μM の TMAU に対して抵抗性を持つことが示された(ライ
ト及びブラウン(Wrigh and Brown),1977)。この結果を基に、本発明者らはさら
に ssDNAにおけるピークA酵素の exo活性が反応に二本鎖プライマー鋳型を加え
た場合に TMAU によって誘導される封鎖を受けるようになるかどうか、またそ
うなる場合に、その感受性は阻害剤によって誘導される封鎖の特異的拮抗物質で
ある dGTP によって選択的に打ち消されるかどうかを調べた。
実験結果を表3に要約する。50μM の TMAU は dsDNAの存在下で ssDNA切断を
約 70%阻害した。最後の混合液に 500μM の dGTP を加えると、TMAUによって誘
導される封鎖阻害の特異的拮抗物質は<3%のレベルまで低下した。対照的に、同
じ濃度の、TMAUによって誘導される封鎖に対する効果を持たない‘対照’dNTPで
ある dATP は阻害レベルに有意の効果を示さなかった。合わせると、これらの結
果は exo及び pol活性はグラム陽性特異的 Pol IIIと同様の阻害剤が封鎖するユ
ニットにおいて強く連合していることを示唆していた。
実施例4: 本発明の化合物の有機合成
以下は、3位置換ウラシル及びイソシトシン化合物の合成法の実施例である。
本実施例は限定することを意図したものではない。
【実施例4a】
好適な化合物は、HE−TMAU及びHE−TMAiCである。
合成は一般的にNogimori等の方法、J.Med.Chem.(1985
)28:1692−1694に従う。
6−(5−インダニルアミノ)−2−チオウラシル(a)。6−アミノ−2−チ
オウラシルを5−アミノインダン及び5−アミノインダン塩酸塩の等モル混合物
と4時間160℃で加熱する。生成物をエタノール/水から結晶化し、66%の
収率で分離する(融点269−272℃)。
2−メチルメルカプト−6−(5−インダニルアミノ)−4−ピリミドン(b)
。化合物aを水酸化カリウムエタノール溶液に溶解し、そして溶液を室温でヨー
ドメチルで処理する。1時間攪拌後、溶液を蒸発させそして残査をエタノールか
ら結晶化する。生成物を89%の収率で分離する(融点235−238℃)。
1−及び3−(2−アセトキシエチル)−2−メチルメルカプト−6−(5−イ
ンダニルアミノ)−4−ピリミドン(c及びd)。化合物bを水酸化カリウムエ
タノール溶液に溶解し、そして溶媒を蒸発させる。乾燥N,N−ジメチルホルム
アミドを加え、そして溶液を4℃に冷却する。2−アセトキシエチルブロミドを
加え、そして混合物を4℃で3日間攪拌する。溶媒の蒸発及び残査のシリカゲル
でのクロマトグラフィーにより、cおよびdが約3:1の比に分離する。異性体
は固有の1H−NMRシグナルより同定する(Nogimori等.,1985
)。
3−(2−ヒドロキシエチル)−6−(5−インダニルアミノ)ウラシル、HE
−TMAU(e)。化合物dを濃塩酸及びメタノール混合物中で1時間加熱還流
する。溶媒蒸発後の残査をエタノール水溶液から結晶化する。
3−(2−ヒドロキシエチル)−6−(5−インダニルアミノ)イソシトシン、
HE−TMAiC(f)。化合物dを密閉ボンベ中でアンモニアを飽和させたメ
タノールとともに120℃で2時間加熱する。溶媒蒸発後の残査を水から結晶化
する。
【実施例4b】
以下は、9位置換グアニン及びアデニン化合物の合成法の実施例である。本実
施例は限定することを意図したものではない。
好適な化合物はHB−DCBG及びHB−DCBAである。合成は一般的にX
u等の方法(原稿提出中)に従う。
9位置換グアニンの一般的な合成法は以下の通りである:
a)Wright及びDudycz,J.Med.Chem.,27:175
(1984)で説明されるように、2−ブロモヒポキサンチン及び3,4−ジク
ロロベンジルアミンを2−メトキシエタノール中で加熱還流する。N3−(3,
4−ジクロロベンジル)グアニン(DCBG)を83%の収率で得る。
b)DCBGをジメチルホルムアミド中で塩化チオニルと1時間加熱する。エ
タノールからの結晶化により84%の2−(3,4−ジクロロベンジルアミノ)
−6−クロロプリンを得る。
c)水素化ナトリウム(60%鉱油懸濁液)を、2−(3,4−ジクロロベン
ジルアミノ)−6−クロロプリンの無水アセトニトリル懸濁液(0.35g/1
00ml)に室温で等モル量で加える。1時間攪拌後、適量の4−アセトキシブ
チルブロミド(1等量)を加え、そして懸濁液を48時間室温で攪拌する。等体
積のクロロホルムを加え、そしてセライトを通して濾過後、濾液を蒸発乾固する
。残査をシリカゲル(230−400メッシュ)でのクロマトグラフにかけ、そ
して生成物をクロロホルムで展開し、主生成物2−(3,4−ジクロロベンジル
−アミノ−6−クロロ−9−(4−アセトキシブチル)プリン及び副生成物の7
位異性体を得る。
d)上記で得られる9位異性体の0.5N水酸化ナトリウム水溶液中の懸濁物
を2時間加熱還流する。0.5N塩酸水溶液で中和後、溶液を終夜冷蔵庫に置く
。色のない固体を集めてそしてジメチルホルムアミドから結晶化する(HB−D
CBG)。
e)ステップc)からの9位異性体の混合物を密閉ボンベ中でアンモニアを飽
和させたメタノールとともに120℃で5時間加熱する。粗生成物のメタノール
からの結晶化がHB−DCBAをもたらす。
上記の実施例は本発明における代表的な化合物の集合の合成及びキャラクタリ
ゼーションを説明することを意図している。本発明の他の化合物の合成及びキャ
ラクタリゼーションには当業者に知られる類似の方法を用いることができる(”
Advanced Organic Chemistry,”J.March,
3rd.ed.,NY:John Wiley,1985;”The Chem
istry of Functional Groups,”S.Patai,
Ed.,NY:John Wiley,multiple volumes,1
960ff;Heterocyclic and nucleoside sy
nthesis−”Purines,”J.H.Lister,NY:Wile
y−Interscience,1971;”Chemistry of Nu
cleosides and Nucleotides,”Vols 1 an
d 2,L.B.Townsend,Ed.,NY:Plenum Press
,1988;Medicinal chemistry−”The Basis
of Medicinal Chemistry,”4th ed.,3 v
ols.,M.E.Wolff,Ed.,NY:Wiley−Intersci
ence,1980参照。全てを参照として本明細書中に包含する)。実施例5:in vivo および in vitro におけるマイコプラズマ類の検出
ヒトまたは動物に由来する培養細胞または初代培養細胞中のマイコプラズマ感
染を同定するために有用な手法は、DNA標識法であり、これは以下のように行
うことができる。
in situ DNA蛍光法は、細胞培養中のマイコプラスマ汚染をスクリーニング
するための非常に有効な方法である。ビスベンズイミド(Hoechst332
58)およびDAPI(4',6−ジアミジノ−2−フェニルインドール)は、
DNAのアデニン−チミジン(A−T)領域に特異的に結合するDNA蛍光色素
である。マイコプラズマに汚染された培養物は、核外及び細胞内の空間に明白な
小さな均一な形の蛍光体を有するであろう。培養細胞の核もまた蛍光を発するで
あろう。
人為的な要因もまた蛍光を発し、解釈を妨げる可能性がある。それらはマイコ
プラズマよりも大きく、形が不規則なものが生じるであろう。健常で対数増殖期
の指標細胞と試験細胞とを用いることにより、人為要因によってもたらされる妨
げが減少されるであろう。材料
指標細胞、Vero(ATCCCCL81)または3T6−Swiss al
bino(ATCC CCL 96)
Leighton試験管またはカバーガラス/培養皿
細胞培養培地(増殖培地)
メタノール
氷酢酸
ビスベンズイミド又はDAPI
マウント用溶液 McIlvaine緩衝液:グリセロール[1:1]
蛍光顕微鏡手法
試料および指標細胞を培養する
1.組織培養培地を含むLeighton試験管または培養皿中のカバーガラ
ス中に指標細胞を低密度で接種する。培養培地に応じた適当な条件下で(典型的
には、37℃、5%または2%CO2)24時間インキュベートする。対照およ
び試験試料と共に接種するのに十分な培養物を準備する。
2.指標細胞培養物を分離するために、0.1mlの試験試料を加える。陰性
対照:指標細胞培養物を0.1mlの培養培地と共に接種したもの。陽性対照:
陽性対照が必要な場合、指標細胞の培養物をマイコプラズマ種の生存培養物0.
1mlと共に感染させる。
3.さらに4日間全ての培養物をインキュベートする。
注釈
培養物がコンフルエントな状態に達する前に染色および検査を行うことが重要
である。試験細胞および指標細胞の増殖特性に応じて、インキュベーション時間
および接種密度を調整する。
細胞を固定する
1.使用する日に新鮮なCarnoyの固定液を調製する。溶液は、3部のメ
タノールと1部の氷酢酸からなる。全ての培養物を固定するのに十分な量の溶液
を準備する。各培養物あたり約15mlの固定液が必要である。
2.培養培地をデカントすることなく、約5mlのCarnoyの固定液を各
培養物に加え、2分間静置する。
3.デカントし、5mlの固定液を培養物に加え、5分間静置する。
4.固定液をデカントし、5mlの新鮮な固定液を加え、5分間静置する。
5.最後に、固定液をデカントし、増殖表面を約5分間空気乾燥させる。
細胞を染色しマウントする
1.使用濃度の蛍光色素染料(ビスベンズイミド)を、0.25−0.5mg/
mlで滅菌水に溶解することによって調製する。貯蔵溶液の濃度は50mg/m
lで暗所に貯蔵されるべきである。貯蔵溶液は無菌的で、性能が低下してきた場
合には廃棄すべきである。注釈:DAPIでビスベンズイミドを置換することも
できる。DAPIをリン酸緩衝溶液(PBS)に0.1mg/mlの濃度で溶解
させる。細胞を15−30分間染色する。
2.増殖表面を染色溶液に完全に浸漬し、30分間静置する。
3.蒸留水で2回洗浄する。
4.増殖表面を細胞側を下にして、1滴のマウント用溶液と共に顕微鏡スライ
ド上にマウントする。透明なマニュキュアでカバーガラスの端とスライドを密閉
することによって、スライドを保存することもできる。スライドは光と熱から保
護されなければならない。正しく保存されれば、駄目になるまで数週間はもつで
あろう。
培養物を測定する
染色調製物を可視化するために、エピ蛍光の可能な蛍光顕微鏡を用いる。典型
的なシステムは、53/44バリヤーフィルターおよびBG−3励起フィルター
を有する蛍光顕微鏡を含む。全倍率500X(40X12.5)は通常マイコプ
ラズマを可視化するの十分であるが、より高い倍率を使用することもできる。こ
れらの方法は、Chen(Exp.Cell Res.,104:255−62
(1977));Hayら(Nature,339:387−88(1989))お
よびMcGarrityら(In:Methods in mycoplasm ology,Tully and Razin(eds).
,2:487−88
(1983)等に由来する。本発明の使用/効果
本発明の化合物は、グラム陽性細菌(特に、病原性腸球菌、連鎖球菌、ブドウ
球菌、並びに現在使用されている抗生物質に耐性なこれらの菌株)に由来するD
NAポリメラーゼIII酵素の抑制剤であり、また、マイコプラズマ属、スピラ
プラズマ属およびユリアプラズマ属等のマイコプラズマ類の抑制剤である。生物
のゲノムの複製に関与する酵素、DNAポリメラーゼIIIの抑制は、生物の増
殖の抑制を引き起こす。本発明の誘導体は、ヒドロキシアルキル、アミノアルキ
ルまたはカルボキシアルキル基を含み、これらにより化合物の水溶性が増加して
、グラム陽性細菌およびマイコプラスマ種の増殖に対する抑制作用に影響するこ
となく、ヒトおよび動物への吸収および分配が促進される。
本発明の化合物は、生物のDNA複製酵素「表現型」を暫定的に同定するため
のスクリーニング用の道具として、そしてそれよりも、マイコプラズマDNA代
謝の機構を詳細に分析するための精製された遺伝的なそして天然の精製されたプ
ローブとして使用することができる。
HPUraおよびその近似する誘導体の哺乳類細胞に対する毒性の低さは(B
rownら、1986、上述)また、グラム陽性のマイコプラズマ特異的な治療
用抗菌剤に要求される性質をこのクラスの薬剤に付与する。例えば、慣用されて
いる抗菌剤に対して病原性マイコプラズマが天然にまたは後天的に獲得した耐性
を回避させることのできる化学治療剤として、これらの化合物を臨床において適
用することが可能である。
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