JPH10502738A - 粘性ポリマー溶液中の温度勾配でのキャピラリー電気泳動による核酸の分離 - Google Patents
粘性ポリマー溶液中の温度勾配でのキャピラリー電気泳動による核酸の分離Info
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Abstract
(57)【要約】
本発明は、粘性ポリマー溶液の存在下のキャピラリーゾーン電気泳動により、PCRにより増幅した、正常および点変異を含有するもの両方の、DNA断片を分離するための経時的温度勾配の使用に関する。この系においてキャピラリー内の温度制御は、専用ソフトウェアにより行い、断片はこれらの254nmでの天然のUV吸光度またはレーザー誘起蛍光のいずれかにより顕在化させる。ポリアクリルアミド、特にN−置換モノマー(例えば、N−メチルアクリルアミドおよびN−アクリロイルアミノエトキシエタノール)を含有するポリアクリルアミドの粘性溶液により実施することもできる。各泳動後に置換することができる、低粘度の短鎖ポリアクリルアミドを製造する方法が記載される。
Description
【発明の詳細な説明】
粘性ポリマー溶液中の温度勾配でのキャピラリー電気泳動による核酸の分離
本発明は、粘性ポリマー溶液(線状または分枝状)の存在下のキャピラリーゾ
ーン電気泳動(capillary zone electrophoresis)による、正常または点変異を
含むものの両方のPCR−増幅したDNA断片の分離のための、(必要であれば
、化学変性剤と組合せた)経時的な温度勾配(空間的な温度勾配と対立するもの
として)の使用に関する。本発明はまた、>1℃の精度でキャピラリーの内側の
実際の温度を計算する専用のソフトウェアの使用による、内側から温度を制御す
るための手段を含む。本発明はまた、分離するDNAの型により異なる温度勾配
下で実施することができるように、必要であれば各キャピラリーの電位の個別の
制御が可能な、キャピラリーの束(battery)の使用を含む。本発明は更に、レ
ーザー誘起蛍光によるDNA検出を含む。本発明はまた、単独または混合物とし
て、DNA分画に典型的に使用されるような、種々のポリマー溶液(ポリアクリ
ルアミド、アガロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチ
ルセルロース、メチルセルロース、デキストラン、プルラン、ポリエチレングリ
コール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、グルコマンナンを含む
が、これらに限定されない)、および/または加水分解−抵抗性モノマー(典型
的には、N−メチルアクリルアミドおよびN−アクリロイルアミノエトキシエタ
ノールのようなN−置換のもの)から作られるポリアクリルアミドにより実施す
ることができる。更には本発明には、2つの異なる方法:a)超音波処理による
長鎖ポリアクリルアミドのキャビテーションおよびb)阻害剤(例えば、イソプ
ロパノール)の存在下の高温の重合による、(DNA断片分離に最適化された)
短鎖
ポリアクリルアミドの合成を記載する。後者の方法では、粘度および分子量が非
常に低下したポリアクリルアミドを得ることができ、100〜1,000bpの間
隔、即ち、遺伝子変異の解析および検出にとって最も重要な間隔で大いに性能を
発揮する。
キャピラリーゾーン電気泳動(CZE)のDNA解析に関する多くの特許が既
に公開されている。例えば、C.Fujimoto(日本特許第92208382号およ
び第9383747号)は、DNAおよびタンパク質の分離用の2つの同軸(co
-axial)キャピラリーの系を記載している。Demorest、Werner、Wiktorowicz、O
aksおよびWenz(米国特許第5015350号;第5181999号;第526
4101号)は、キャピラリーが、少量(0.01〜1%)の荷電した親水性ポ
リマーと混合した0.05〜30%の20〜50,000kDa の分子量を有する
架橋していない中性の親水性ポリマーを含む緩衝液で充填されている電気泳動系
を記載している。この系により、CZEによる生体高分子(例えば、タンパク質
、核酸およびオリゴ糖類)の分離が可能である。好適な(コ)ポリマーは、ポリ
アクリルアミド、ポリオキシド、ポリエーテル、ビニルポリマー、アクリル酸ポ
リマー、セルロースポリマー、多糖類および植物性ゴムである。Huang、Mathies
およびQuesada(米国特許第5274240号)は、適切な波長のレーザー光線
による励起による蛍光標識を有するDNA断片を含有する最少20個の試料の同
時解析を行うことができる、可動式プラットフォームにマウントしたキャピラリ
ーの束の特許を取得している。分離は、ポリアクリルアミドゲル中またはポリア
クリルアミドの粘性溶液中で起こり、主な応用としては、DNA配列決定がある
。Lux、McManigillおよびYoung(米国特許第5180475号)は、被検体分離
に利用される軸方向の電位勾配に垂直の第2の電位
勾配を放射方向に作ることよりなる、キャピラリー中の電気浸透流動(electros
motic flux)(EEO)を制御するための新規な方法を提案している。この放射
状勾配により、EEO流動を制御すること(および排除することさえ)ができ、
このため、タンパク質、DNAおよびRNAの分離を改善することができる。別
の出願において、Jamkbara(米国特許第5277780号)は、DNA分離およ
び蛍光検出のためのゲル−充填したキャピラリーの束を提案した。Chin(米国特
許第5110424号)は、キャピラリーを、EEO流動によりDNAの移動と
反対方向に移動する5,000Daポリマーで充填することよりなる、DNA分画
方法を提案した。選択性は、EEO流動の速度とDNA断片の速度との差を低下
させることにより、こうして調節することができた。
2つの特許出願は、特にCZE内の温度勾配による実施の可能性に言及してい
る。「緩衝液勾配および温度勾配キャピラリー電気泳動」という名称の1つ目の
出願(WeinbergerおよびGassmann、米国特許第5047134号)では、分離キ
ャピラリーへの混合チャンバーにより結合されている2つの緩衝液リザーバーに
より、緩衝液勾配の作成が可能であることが提案されている。更にキャピラリー
温度を制御するための方法も提案されている。「キャピラリー電気泳動装置のた
めの温度制御」という名称の2番目の特許において、WeinbergerおよびMills(
米国特許第5066382号)は、キャピラリーと接触させて外側に置いたサー
ミスターによる温度制御を提案している。所定の温度を得るための最終的な手段
は、キャピラリーの温度を下げるか上げるために、目的の温度で外側の空気を再
循環させることによるものである。温度制御のためのこのような手段は、更にペ
ルチエ素子を含む。更に、予め決めた電位でのキャピラリーチャンバーの電気抵
抗の測定によりキャピラリー内温度を決定するこ
とが提案されている。
先天性遺伝子疾患の解析において、および遺伝子変異の大量スクリーニングの
ためには、1回の電気泳動で、単一または複数のDNA点変異を分離できること
が基本的に重要である。現在までのところ、最も一般的な方法は、Fischer およ
びLerman(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80,1983,1579-1583)により報告され
た方法で、変性勾配ゲル電気泳動(denaturing gradient gel electrohoresis)
(DGGE)である。DGGEは、部分的に融解した二本鎖DNAの移動度が、
完全なds−DNAの移動度に比較して著しく低下しているという原理に基づく
。分離しやすい配列は、低い融点(Tm)と高い融点を有する2つのドメインか
らなる。これにより、変性剤(化学物質であろうと温度であろうと)の狭い濃度
範囲内で、一本鎖および二本鎖DNAを含有する融合中間体を得ることができる
。全て同じ長さを有するが点変異により異なっているこのような分子の混合物が
、変性勾配の存在下でゲル内を移動するとき、未変性、融解および部分融解種の
間の異なる平衡による電気泳動の経路に沿って分離が起こる。一般に、部分融解
種は、完全に未変性(二本鎖)型よりも移動が遅く、これは、前者のらせんの半
径が後者の半径よりも大きく、そのため、部分融解型では移動に対する摩擦抵抗
が大きくなるためである。この方法の変法では、変異したDNA鎖を正常な(野
生型)DNA鎖と混合し、この混合物を最も高い温度で融解するドメインのTm
以上で融解し、続いて冷却により再アニーリングすることによりヘテロ−二本鎖
を形成する。これらのヘテロ−二本鎖は一般に、変異領域の塩基がカップリング
しないため、ホモ−二本鎖のTmよりも低いTm値を有する。ヘテロ−およびホモ
−二本鎖の混合物を温度勾配で移動させるとき、異なるTm値により分離が起こ
る。実際、化学変性剤の勾配のみが使用される(典型的には
尿素およびホルムアミド)Fischer およびLerman法の古典的な変法は、温度勾配
中の電気泳動である。この方法(Riesner,Henco & Steger,Advan.Electr.4
,1991,171-250)では、電気泳動は、末端に、移動方向に対して垂直または平
行に温度勾配(例えば30〜90℃)をつけたゲルスラブ内で行われる。
本発明において、本発明者らは、CZEにおいてDNA断片中のこのような点
変異を分離するための、経時的な温度勾配(Riesner らの、空間にのみ存在する
勾配とは対立するものとして)を作ることが可能であることを証明する。本発明
はまた、以下を包含する:
(a)未変性および部分融解DNA分子のらせんの半径の違いに基づいて核酸を
篩い分ける、粘性ポリマー溶液の使用;
(b)多重解析のため、キャピラリーの束の使用を可能にすること;
(c)レーザー誘起蛍光によるDNA断片の顕在化を可能にすること;
(d)次にCZEにより解析されるDNA断片のin situ 増幅のため、CZEユ
ニットに熱循環器を含めることを可能にすること;このような増幅は、必要であ
れば、マイクロタイタープレートまたはキャピラリーの内側の特定領域で直接行
われる;
(e)CZE法で通常使用されるような溶融シリカキャピラリーだけでなく、マ
イクロエッチングしたチャネル(microetched channels)を含有するチップでも
、このような解析の実施を可能にすること。
また本発明には、各キャピラリーの温度を調節するための電位勾配の個別の制
御を可能にすること、およびキャピラリーの内側の温度を測定するための専用コ
ンピュータプログラムの使用も含まれる。また本発明には、化学変性剤(例えば
尿素およびホルムアミドであるがこれらに限らない)と温度変性との同時使用の
ような、変性勾配の組合せ使用も含まれる。こ
の組合せ使用により、実際キャピラリーの内側の温度は、溶媒(一般に水である
が、これに限定されない)の沸点以下に到達する。
本発明は、幾つかの基本的な点において、WeinbergerおよびGassmann並びにWe
inbergerおよびMillsの上記特許に報告されるようなキャピラリーの温度制御と
は異なる:
(a)まず最初に、上記特許に報告される温度制御方法は、「外的方法」であり
、これは、キャピラリーの外側の温度を測定し、次に冷たいかまたは暖かい空気
を再循環させることによりその温度を調節することからなる。しかし、キャピラ
リーの内側の定常状態温度は、厚いシリカ壁とポリイミドコーティングからの散
逸熱の慣性により、外側の温度とは実質的に異なることは証明されている(M.S
.Bello,P.de Besi & P.G.Righetti,J.Chromatogr.652,1993,329-336)
。この差は、40〜50℃ほどに高いこともあり、電気泳動の間の温度制御が±
1℃より良くなければならない、核酸の点変異の再現性ある分離とは両立しない
。本発明においては、この温度制御は、粘性緩衝液の温度に対する電流の一次従
属性(linear dependence)を仮定することにより、そして緩衝液の比導電率、
その熱係数(α)、かける電位勾配、熱散逸の係数(ビオ数(Biot number))お
よび正確なキャピラリーの直径と長さが既知であれば、キャピラリーの内側の温
度を±1℃より正確に予測することができる専用コンピュータプログラムにより
、キャピラリー「内」に由来する。したがって、試験する変異体の融点によりキ
ャピラリーの内側を所望の温度に変化させるためには、バックグラウンド緩衝液
の導電率および/またはかける電位(および必要であれば、キャピラリーの直径
も)を変化させることで足りる。
(b)このような変異体(一般に、100〜500塩基対(bp)位の典型
的な長さの増幅DNA断片)の最適な分離のためには、この長さの領域における
最適な分離を与える液体ポリマーが必要である。上記特許では、極端な長さの線
状ポリマーが典型的には使用されている(例えば、数百万Da位の典型的なサイズ
を有する、ポリアクリルアミド、メチルセルロース)。本発明で本発明者らは、
最適な分離が大いに長さを縮めたポリマー、典型的にはMrが100,000〜
200,000Daのポリアクリルアミドによってのみか、あるいは異なるタイプ
のポリマー(例えば、35,000〜100,000Daの、短鎖ポリアクリルア
ミドおよびポリエチレングリコール)を混合することによっても、得られること
を証明する。更には、本明細書で、このような「短鎖」ポリアクリルアミドの合
成のための異なる方法を報告する。これらの1つは、ラジカルスカベンジャー(
radical scavenger)の存在下で、超音波処理により、長鎖ポリアクリルアミド
を目的の鎖長に砕くことよりなる。別の方法では、ポリアクリルアミドを「鎖転
移(chain-trasfer)」剤(例えば、イソプロパノール)の存在下高温(例えば
、70℃)で重合して、低粘度であると考えられる「短鎖」ポリマーを生成させ
る。これらのポリアクリルアミドは、粘度が非常に低いため、キャピラリーから
の押し出しの容易さと共に優れた篩い分ける特性を合わせ持つという利点を有す
る。また本発明には、新規なモノマーのN−アクリロイルアミノエトキシエタノ
ール(M.Chiari,C.Micheletti,M.Nesi,M.Fazio & P.G.Righetti,Elect
rophoresis 15,1994,177-186)のような、加水分解−安定性モノマーから作ら
れるポリアクリルアミドマトリックスの使用が含まれる。
現在利用可能な系と比較した、変性勾配および上記で引用した新規な篩い分け
液体ポリマーの利点は、以下に説明される。
混合した物理−化学変性剤中のDNA点変異の分離
図1は、温度変性勾配の非存在下(下の記録計トレース)および存在下(上の
プロフィール)の、増幅DNA断片(健常人からの嚢胞性繊維症(CF)遺伝子
)の分離を示す。下のトレースでは、分離は一定温度(45℃)で化学変性剤(
6M尿素)の存在下で起こる。27〜35分の間に溶出するピークはオリゴヌク
レオチドプライマーを表す。正常な増幅DNAは、単一ピーク(Wt/Wtと標識
した)として58〜60分の間に溶出する。上のトレースでは、6M尿素の存在
下(DNAの部分変性剤)ではあるが更に0.15℃/分の傾きの温度勾配(そ
の結果電気泳動の30分後には最高49.5℃に達する)の存在下で同じ分離を
行う。温度勾配の形は、基線の湾曲(base-line ramp)から可視化され、これは
恐らく温度傾斜により誘導される屈折率の変動によるものである。オリゴヌクレ
オチド鎖に変異が存在しないため、増幅DNA断片(Wt/Wt)は非常に早期(
わずか24分)に溶出し、単一ピークのままであると理解することができる。
図2は、嚢胞性繊維症に罹患している患者から増幅した、正常な鎖とエクソン
14aに2つの多形(V868VおよびT854T)を含有する鎖よりなる、「
ヘテローポリマー」の分離を示す。下のトレースでは再度、一定温度(T=45
℃)で6M 尿素の存在下で分離が行われる。25〜35分の間に溶出するピーク
は、オリゴヌクレオチドプライマーを表す。38分で出現するピークも、長鎖プ
ライマー(55bp)を表すが、一方47分に中心のある移動時間のピークは、正
常および変異鎖よりなるヘテローポリマー(Wt/M)を表す。再度6M 尿素中
ではあるが、0.15℃/分の傾きを有する温度勾配(その結果電気泳動の30
分後には最高49.5℃に達する)の存在下で同じ分離を行うとき、試料中に存
在する異なるホモ−およびヘテロ−ポリマーの部分融解が起こる。この結果とし
て、図2の上のトレースでは、一定温度の測定で得られた単一ピークが4つのピ
ーク(これらは、1:変異したホモ−ポリマー(M/M);2:正常なホモ−ポ
リマー(Wt/Wt);3:正常/変異体型のヘテロ−ポリマー(Wt/M)およ
び4:変異体/正常型のヘテロ−ポリマー(Wt/M)を表す)に分離されてい
ることに気付く。4つのピークの面積の和は、下のトレースの単一ピークの面積
に相当する。
本方法は、45℃の温度プラトーで開始する低温融解物(図1および2のよう
な)を分離するのみでなく、中間温および高温融解物も分離することができる。
図3は、CFTR遺伝子のエクソン11の異なる変異(1717−1G→A(
パネルA);G542X(1756のG→T;パネルC)および1784de1
G(パネルD)、並びに各々の正常コントロール(パネルE))についてヘテロ
接合であるCF患者から増幅した、1セットの中間温融解断片の解析を示す。全
ての変異体は、コントロールの単一バンドに対して、特徴的な4ピークのプロフ
ィールを示す。パネルBの温度プロフィールに示されるように、これらの変異体
は、56.5〜57.8℃の範囲にTmのある中間温融解物である。
図4は、MIV変異(CFTR遺伝子のエクソン1の133位のA→Gトラン
スバージョン)に関してホモ接合であるCF患者から増幅した、高温融解断片の
ために設定された最適条件を示す。このパネルは、一定温度プラトー(65℃)
、一定の変性緩衝液であるが、温度勾配の非存在下で注入された試料の電気泳動
図を示す。ホモ−およびヘテロ−二本鎖の間の分離は観察されるが、それぞれの
中では分離は見られない。35〜48分に溶出する一群のピークは、GC−クラ
ンプ有りおよび無しの未精製プライマーに相当する。挿入図は、0.1℃/分の
傾きの65〜67℃勾
配の最適分離を示す:ここで4つのバンドの正確なスペクトルが得られる。
この温度は、真にキャピラリーの内側の温度であり、本発明者らが開発したコ
ンピュータプログラムにより正確に決定される(M.S.Bello、E.I.Levine & P.
G.Righetti,「キャピラリーゾーン電気泳動のための内部温度およびピークの
修正のコンピュータ支援測定(Computer assisteddetermination of the inner
temperature and peak correction for capillary zone electrophoresis)」,J
.Chromatogr.652,1993,329-336)。
砕いた「鎖−転移」ポリアクリルアミドの使用
砕いたポリアクリルアミドの製造により、ポリアクリルアミドポリマーの平均
の鎖のサイズの著しい減少(>2百万Daから約550,000Daに低下する)の
ため、劇的に粘度の低下した鎖の合成が可能になる。
図5は、超音波処理で砕く過程のポリアクリルアミドの粘度および平均分子量
の漸進的減少を示す。粘度は、ボーリン(Bohlin)VORレオメーター(Bohlin
Rheology,Lund,Sweden)により測定し、一方Mrは、ゲル濾過[2つのウォー
ターズウルトラヒドロゲルカラム(Waters Ultrahydrogel columns)および示差
屈折検出器R401を取付けた、HPLCウォーターズ590溶媒送達システム
(HPLC Waters’590 Solvent Delivery System)]により、ポリエチレングリコ
ール標準物質に対して測定した。
このように低下した粘度により、ポリアクリルアミドの更に濃縮した(10%
まで)溶液をキャピラリーに注入することが可能になり、また、増幅DNA断片
の解析による遺伝子変異のスクリーニングについて最も興味深いDNAサイズの
間隔(典型的には100〜500bp)で分離が最適
化される。高温と組合せた鎖−転移剤(例えば、3%イソプロパノール)の存在
下の重合により(この工程で、更に短くて粘度の低下した鎖が生成する)、更に
良好な分離さえ達成することができる。
図6は、35℃および70℃で「鎖転移」剤の存在下の重合により得られるポ
リマー濃度の関数としての粘度測定を示す。粘度は、ボーリン(Bohlin)VOR
レオメーター(BohlinRheology,Lund,Sweden)で測定した。高温での劇的な粘
度低下は、短鎖の形成による(35℃で重合するときの450,000DaのMr
とは対照的に、70℃ではわずか180,000DaのMr)。
図6に示されるように、35℃または70℃で重合したポリアクリルアミドの
粘度は著しく異なる。後者の場合、粘度は大きく減衰する(例えば、8%ポリマ
ー溶液で、粘度は450mPa.s からわずか120mPa.s に減少する)。粘度のこ
の大きな減少は、平均鎖長の著しい低下によるが、これは、430,000Da(
35℃の重合のとき)から70℃ではわずか180,000Daに減少する。
図7Aは、Waters’Quanta 4000-E における筋ジストロフィー遺伝子の異なる
エクソンのスクリーニングのための一連の増幅DNA断片の多重鎖(multiplex
)の分離を示す。試料注入る:6kVで10s。電気泳動緩衝液:89mMトリス−
ホウ酸、2mMEDTA、pH8.3。254nmで検出。A;6%Tで線状ポリアク
リルアミド中の分離(平均Mr:>2百万Da);B:70℃の「鎖転移」合成に
より得られた10%T線状ポリアクリルアミド中の分離(平均Mr:180,0
00Da)。分離の著しい増進に注意されたい:Aの11ピークからBの18ピー
ク(この混合物は18の異なる増幅断片を含有する)。Bの上のトレースは、改
変された欠失したチェンバレン(Chamberlains')およびベッグ(Beggs')の混
合多重鎖の
14のエクソンの分離を表す。Bの下の電気泳動図は、改変された欠失していな
いチェンバレンおよびベッグの多重鎖の18のエクソンの分離を示す。
標準的マトリックス(架橋剤の非存在下、6%ポリアクリルアミドを含有する
)では、11個のDNAピークより多くを分離することはできない(多重鎖が、
全部で18個の異なる断片を含有していても)。高濃度では粘度が高くてキャピ
ラリー内への注入がもはや実行可能ではないため、液体ポリマーの濃度を上昇さ
せることにより解析を改善することさえできない。分離の性能が非常に悪いため
、このように種々のピークを同定することは不可能であった。これに反して、砕
いた鎖、または更に良好には「鎖−転移」ポリアクリルアミド(70℃で3%イ
ソプロパノールの存在下で得られるような)をキャピラリーに充填するとき、1
8断片全てを分離することができた(図7B)。
【手続補正書】
【提出日】1997年7月16日
【補正内容】
請求の範囲
1.電気泳動分離媒体中で非ミセル電気泳動により二本鎖核酸断片を分離する
方法であって、分離媒体に経時的に変化する温度をかけて、異なる融点および移
動速度に及ぼす融解の作用により該二本鎖核酸断片の分離を引き起こすことを特
徴とする方法。
2.緩衝液の比導電率の、粘性ポリマー溶液の熱係数の、熱伝達係数の、キャ
ピラリーの長さおよび直径の、関数として電位勾配をかけることによりキャピラ
リーの内側の温度を経時的に変化させること、並びに単独または他のポリマーと
混合した、100,000〜200,000DaのMr 値を有するポリアクリルア
ミド(N−置換および非置換の両方)の低粘度溶液を使用することを特徴とする
、請求項1記載の経時的温度勾配中でCZEによりDNA断片を分離する方法。
3.前記ポリアクリルアミドが、N−アクリロイルアミノエトキシエタノール
型または他のN−置換アクリルアミドのモノマーにより構成されることを特徴と
する、請求項1および2記載の方法。
4.粘性の篩い分けポリマー溶液が、更にDNA変性剤を含有することを特徴
とする、請求項1、2および3記載の方法。
5.DNA分離のための粘性の篩い分けポリマー溶液が、DNA分画に典型的
に使用されるような、種々のポリマー溶液(アガロース、ヒドロキシエチルセル
ロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、デキストラ
ン、プルラン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピ
ロリドン、グルコマンナンを含むが、これらに限定されない)を単独または混合
物として含むことを特徴とする、請求項1および2記載の方法。
6.DNA断片の多様なスクリーニングのためのキャピラリーの束の使用を特
徴とする、請求項2または4記載の方法。
7.個々のキャピラリー内の温度が、専用ソフトウェアおよびかける電位の個
別の制御により制御されて、異なる傾きの経時的温度勾配を生成する、請求項6
記載の方法。
8.温度制御のための専用ソフトウェアが、緩衝液の比導電率に、その熱係数
に、かける電位勾配に、熱散逸の係数に、正確なキャピラリーの直径および長さ
に基づき、そして±1℃よりも良好に正確な内部温度を予測できることを特徴と
する、請求項2および5記載の方法。
9.DNAの点変異の分離のための、上記請求項のいずれか1項記載の方法。
10.DNAが、蛍光標識、並びにUV/可視および/またはレーザー光線に
よる励起で顕在化される、上記請求項のいずれか1項記載の方法。
11.キャピラリーの束で組み立て、温度勾配を展開することができ、UV/
可視および/またはレーザーで励起される蛍光検出を装備している、キャピラリ
ー電気泳動装置が、更に、続いてキャピラリー電気泳動により解析されるDNA
断片のin situ 増幅(このような増幅は、必要であれば、分離キャピラリーの内
側の特定のゾーンで直接起こる)のために、熱循環器を含むように作られている
、請求項1、2、6および10記載の方法。
12.温度勾配中での分離が、マイクロエッチングしたチャネルを含有するチ
ップ(再使用可能または使い捨て)で行われる、請求項1および2記載の方法。
13.分離を、例えば、分離の最適化に応じて、加熱傾斜に続いて冷却周期、
必要であれば、続いて新規な温度傾斜および別の温度周期のある、不連続または
周期的な温度勾配で行うことができる、請求項1および2記載の方法。
14.所定の温度プラトーに達するための「外部」温度制御、および電位、ま
たは導電率傾斜によるオーム熱により生成するような「内部」温度変化の組合せ
による経時的な温度勾配を達成するための手段および方法を含むことを特徴とす
る、上記請求項のいずれか1項記載の方法。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF,CG
,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,SN,
TD,TG),AP(KE,MW,SD,SZ,UG),
AM,AT,AU,BB,BG,BR,BY,CA,C
H,CN,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,GB
,GE,HU,IS,JP,KG,KP,KR,KZ,
LK,LR,LT,LU,LV,MD,MG,MK,M
N,MX,NO,NZ,PL,PT,RO,RU,SE
,SG,SI,SK,TJ,TM,TT,UA,US,
UZ,VN
Claims (1)
- 【特許請求の範囲】 1.電気泳動分離媒体中で非ミセル電気泳動により二本鎖核酸断片を分離する 方法であって、分離媒体に経時的に変化する温度をかけて、異なる融点および移 動速度に及ぼす融解の作用により該二本鎖核酸断片の分離を引き起こすことを特 徴とする方法。 2.緩衝液の比導電率の、粘性ポリマー溶液の熱係数の、熱伝達係数の、キャ ピラリーの長さおよび直径の、関数として電位勾配をかけることによりキャピラ リーの内側の温度を経時的に変化させること、並びに単独または他のポリマーと 混合した、ポリアクリルアミド(N−置換および非置換の両方)の低粘度溶液を 使用することおよび100,000〜200,000DaのMr値を有することを 特徴とする、請求項1記載の経時的温度勾配中でCZEによりDNA断片を分離 する方法。 3.前記ポリアクリルアミドが、N−アクリロイルアミノエトキシエタノール 型または他のN−置換アクリルアミドのモノマーにより構成されることを特徴と する、請求項1および2記載の方法。 4.粘性の篩い分けポリマー溶液が、更にDNA変性剤を含有することを特徴 とする、請求項1、2および3記載の方法。 5.DNA分離のための粘性の篩い分けポリマー溶液が、DNA分画に典型的 に使用されるような、種々のポリマー溶液(アガロース、ヒドロキシエチルセル ロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、デキストラ ン、プルラン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピ ロリドン、グルコマンナンを含むが、これらに限定されない)を単独または混合 物として含むことを特徴とする、請求項1および2記載の方法。 6.DNA断片の多様なスクリーニングのためのキャピラリーの束の使 用を特徴とする、請求項2または4記載の方法。 7.個々のキャピラリー内の温度が、専用ソフトウェアおよびかける電位の個 別の制御により制御されて、異なる傾きの経時的温度勾配を生成する、請求項6 記載の方法。 8.温度制御のための専用ソフトウェアが、緩衝液の比導電率に、その熱係数 に、かける電位勾配に、熱散逸の係数に、正確なキャピラリーの直径および長さ に基づき、そして±1℃よりも良好に正確な内部温度を予測できることを特徴と する、請求項2および5記載の方法。 9.DNAの点変異の分離のための、上記請求項のいずれか1項記載の方法。 10.DNAが、蛍光標識、並びにUV/可視および/またはレーザー光線に よる励起で顕在化される、上記請求項のいずれか1項記載の方法。 11.キャピラリーの束で組み立て、温度勾配を展開することができ、UV/ 可視および/またはレーザーで励起される蛍光検出を装備している、キャピラリ ー電気泳動装置が、更に、続いてキャピラリー電気泳動により解析されるDNA 断片のin situ 増幅(このような増幅は、必要であれば、分離キャピラリーの内 側の特定のゾーンで直接起こる)のために、熱循環器を含むように作られている 、請求項1、2、6および10記載の方法。 12.温度勾配中での分離が、マイクロエッチングしたチャネルを含有するチ ップ(再使用可能または使い捨て)で行われる、請求項1および2記載の方法。 13.分離を、例えば、分離の最適化に応じて、加熱傾斜に続いて冷却周期、 必要であれば、続いて新規な温度傾斜および別の温度周期のある、 不連続または周期的な温度勾配で行うことができる、請求項1および2記載の方 法。 14.所定の温度プラトーに達するための「外部」温度制御、および電位、ま たは導電率傾斜によるオーム熱により生成するような「内部」温度変化の組合せ による経時的な温度勾配を達成するための手段および方法を含むことを特徴とす る、上記請求項のいずれか1項記載の方法。
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- 1995-09-11 JP JP8509892A patent/JP3015106B2/ja not_active Expired - Lifetime
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