JPH104888A - ゲル状家畜用補助飼料とその製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 熱帯および亜熱帯の雨季と乾季が存在する地
域における畜産業に好適に使用できるように、嗜好性を
向上させ、かつ高温湿潤な環境下での保存性を改善した
家畜用補助飼料並びにその製造方法を提供すること。 【解決手段】 ミネラルと糖蜜を含有する補助飼料成分
に、パームカーネルケーキ、ビール粕、ゼオライト、酵
母もしくは酵母エキスおよび椰子油を含む成分を配合し
たことを特徴とするゲル状家畜用補助飼料並びにパーム
カーネルケーキ、ビール粕、ゼオライト、酵母もしくは
酵母エキス、ミネラル、尿素、糠および酸化カルシウム
を含む固形成分を粉砕しつつ混合した後、該混合物に糖
蜜と椰子油よりなる液状成分を添加し、攪拌混合し、得
られた混合物を溶着可能な合成樹脂容器に充填し、開口
部を真空密封することを特徴とするゲル状家畜用補助飼
料の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、ゲル状家畜用補助
飼料とその製造方法に関し、詳しくは反芻動物、特に熱
帯および亜熱帯の雨季と乾季が存在する地域で飼育され
る牛、緬羊、山羊等の家畜に対し、不足する炭水化物
源、タンパク質源およびミネラルを補充することのでき
るゲル状の補助飼料とその製造方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】熱帯および亜熱帯の雨季と乾季が存在す
る地域において飼育される反芻動物の多くは、乾季に炭
水化物源、タンパク質源およびミネラルの不足に陥いる
傾向にあり、これら家畜の生産性が低下する。これらの
地域において牧畜業を営む業者の多くは、生草、穀物粕
および農業副産物を主に飼料として用いているが、これ
らはタンパク質含量に乏しく、炭水化物含量が低く、消
化性も低い上に、ミネラルやビタミン類をほとんど含ん
でいない。タンパク質およびミネラル等の深刻な不足に
陥った家畜は、体重減少、成長率低下、繁殖力低下、非
伝染性流産、跛行、食欲低下、異嗜症(pica)および骨粗
鬆症(osteophagia) 等の病的徴候を示す。

【０００３】このような炭水化物源、タンパク質源およ
びミネラルの不足を克服する手段として、従来から固形
補助飼料が用いられてきた。この固形補助飼料は、単に
塩とミネラルを混合し圧縮させたもの、あるいはこれら
ミネラル類に酸化カルシウム、尿素、糖蜜を混ぜたもの
である。熱帯および亜熱帯地域において飼育されている
反芻動物の栄養不足を補うために必要な、これら固形補
助飼料は輸入に頼っているのが実情である。しかしなが
ら、輸入された該補助飼料は温暖な国々で製造されてい
るため、その成分は温帯産の家畜の栄養条件に適合する
ように調製されている。そのため、温帯産の家畜よりも
深刻な栄養不足状態にあり、飼育環境の異なる熱帯産の
家畜は、上記固形補助飼料によって十分な栄養を摂取す
ることはできない。また、高温湿潤な環境下では、固形
補助飼料はカビの発生等による被害を受けやすく、保存
性に問題があった。さらに、この補助飼料は硬いため、
家畜の嗜好性が低いという欠点があった。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、これ
ら従来の欠点を解消し、熱帯および亜熱帯の雨季と乾季
が存在する地域における畜産業に好適に使用できるよう
に、嗜好性を向上させ、かつ高温湿潤な環境下での保存
性を改善した家畜用補助飼料並びにその製造方法を提供
することである。

【０００５】

【課題を解決するための手段】請求項１に記載の本発明
は、ミネラルと糖蜜を含有する補助飼料成分に、パーム
カーネルケーキ、ビール粕、ゼオライト、酵母もしくは
酵母エキスおよび椰子油を含む成分を配合したことを特
徴とするゲル状家畜用補助飼料である。請求項５に記載
の本発明は、パームカーネルケーキ、ビール粕、ゼオラ
イト、酵母もしくは酵母エキス、ミネラル、尿素、糠お
よび酸化カルシウムを含む固形成分を粉砕しつつ混合し
た後、該混合物に糖蜜と椰子油よりなる液状成分を添加
し、攪拌混合し、得られた混合物を溶着可能な合成樹脂
容器に充填し、開口部を真空密封することを特徴とする
ゲル状家畜用補助飼料の製造方法である。

【０００６】

【発明の実施の形態】本発明のゲル状家畜用補助飼料
は、ミネラルと糖蜜を含有する基本の補助飼料成分と物
性を改善する第２の成分から成っている。基本の補助飼
料成分は、ミネラル類と糖蜜の他に炭水化物源、窒素
源、バインダーなどを含んでいる。具体的には、例えば
０．４〜１％のリン酸カルシウム、３〜５％の塩化ナト
リウム、０．４〜１％の市販のミネラルミックス（例え
ば、Euro Pharma Sdn. Bhd. 製、商品名: Pumino-mix E
U 871 、リン、カルシウム、食塩、マグネシウムを含
む）、３〜４％の尿素、３〜８％の糠、３〜７％の酸化
カルシウムおよび５５〜８０％の糖蜜を含むものであ
る。リン酸カルシウムおよび塩化ナトリウムは、それぞ
れリン、ナトリウムを補充するための成分である。ま
た、ミネラルミックスを加えることにより、各種ミネラ
ル類の補充が可能である。尿素および糠は、窒素源およ
び炭水化物源である。酸化カルシウムは、飼料成分のバ
インダーの役割を果たすものであり、糖蜜は炭水化物源
となる成分である。

【０００７】次に、物性の改善を図るための成分として
は、パームカーネルケーキ、ビール粕、ゼオライト、酵
母もしくは酵母エキスおよび椰子油等があり、例えば３
〜８％のパームカーネルケーキ、３〜８％のビール粕、
０．１〜１％のゼオライト、０．１〜１％の酵母もしく
は酵母エキスおよび１％以上の椰子油を含む成分を挙げ
ることができる。パームカーネルケーキは低級脂肪酸を
多量に含んでおり、脂肪の補給の他、適度の固形性を保
持する目的で使用される。本発明には、パームの果実の
核から溶媒抽出したものが好適に用いられる。また、ビ
ール粕は粗タンパク質と可溶性無窒素物を主成分とする
もので、タンパク質源の補給や適度の固形性を保持する
目的で使用される。酵母もしくは酵母エキスは、タンパ
ク質、ビタミン等の栄養分を補給する成分であり、各種
の酵母が使用されるが、パン酵母、ビール酵母などの食
品分野で用いられ、安価、かつ安定的に入手できるもの
が好ましく、特にサッカロミセス属酵母の他にトルラ
属、キャンディダ属の酵母が用いられる。ゼオライトに
は、消化促進効果がある。また、各種の脂肪酸を含んで
いる椰子油の添加は、製品の耐水性改善および脂肪の補
給の効果がある。

【０００８】本発明の対象とされる家畜は、主に反芻動
物であり、例えば牛、緬羊および山羊である。

【０００９】次に、本発明のゲル状家畜用補助飼料の製
造方法について説明する。補助飼料の製造は、固形成分
を粉砕しつつ混合する操作、該混合物に液体成分を加
え、攪拌混合する操作および得られた補助飼料を容器に
充填、密封する操作の３段階により行なわれる。まず、
飼料を構成する固形成分を粉砕しつつ混合する。その１
例を示すと、重量基準で３〜８％のパームカーネルケー
キ、３〜８％のビール粕、０．１〜１％のゼオライト、
０．１〜１％の酵母もしくは酵母エキス、０．４〜１％
のリン酸カルシウム、３〜５％の塩化ナトリウム、０．
４〜１％のミネラルミックス、３〜４％の尿素、３〜８
％の糠および３〜７％の酸化カルシウムを計量した後、
粉砕しつつ混合する。好ましくはカッターミキサーによ
り毎分３０００回転以上で１分間以上、通常１〜５分間
粉砕しつつ混合する。この操作によって粒度が所定範囲
の混合物が得られ、この混合物は、粒子径が１７００μ
以下、通常５００μ〜１７００μのものが望ましい。な
お、尿素等のように固形成分の粒径が特に大きい場合
は、この粉砕混合操作に先立って、該固形成分を予めカ
ッターミキサーにより毎分３０００回転以上で１分間以
上粉砕した後、他の成分と混ぜることが好ましい。

【００１０】次に、このようにして得られた固形成分の
混合物に液体成分を加えて、攪拌混合する。液体成分と
しては、例えば重量基準で５５〜８０％の糖蜜および１
％以上のパームオイルを含むものがあり、この成分を加
えたのち２軸のパドル型ミキサーなどを用いて５〜１０
分間攪拌混合する。この操作により、糖蜜中の水分と酸
化カルシウムの間で反応が開始し、温度が４５℃程度ま
で上昇する。この操作によって、ゲル状の飼料組成物が
得られる。

【００１１】この飼料組成物を、ビニール袋などの溶着
可能な合成樹脂製容器に収納する。この場合、攪拌混合
操作より得られたゲル状の混合物を容器の約８〜９割の
高さまで注入する。注入した後、速やかに真空包装す
る。すなわち、容器の開口部である容器の上端から約２
ｃｍの水平線を、真空ポンプのノズルが挿入できるだけ
の隙間を残して、ヒートシーラーで溶着する。次いで、
容器内部の空気を、容器全体にシワがよるまで真空ポン
プを用いて吸い出す。真空ポンプを作動させたままノズ
ルを容器から引き抜き、容器の開口部のまだ溶着されて
いない部分をヒートシーラーで溶着する。この密封操作
によって、補助飼料にカビ等が発生することおよび酸化
を防ぐことができ、保存性に優れた製品が得られる。な
お、本発明の補助飼料をゲル状とするため、第２の攪拌
混合操作から第３の充填、密封操作までの操作を１２０
分以内に完了させることが望ましい。操作時間が長くな
ると、製品の硬化が避けられなくなるので、速やかに作
業を行なうべきである。

【００１２】

【実施例】次に、本発明を実施例により詳しく説明す
る。 実施例１ 重量基準で７．６％のパームカーネルケーキ、７．６％
のビール粕、０．４％のゼオライト、０．４％のトルラ
属酵母、０．８％のリン酸２水素カルシウム、３．８％
の塩化ナトリウム、０．８％のミネラルミックス、３．
８％の尿素、７．６％の米糠および６．１％の酸化カル
シウムを容器に収容し、粉砕しつつ混合した。すなわ
ち、カッターミキサーにより毎分３０００回転で５分間
粉砕しつつ混合した。得られた混合物は粒子径が１７０
０μ以下であった。この混合物に重量基準で６０％の糖
蜜および１％のパームオイルを加え、２軸のパドル型ミ
キサーにて１０分間攪拌混合した。次に、得られた飼料
組成物２５ｋｇを、ポリ塩化ビニル樹脂製容器に充填し
た後、速やかに真空包装した。すなわち、容器の上端か
ら約２ｃｍの水平線を、真空ポンプのノズルが挿入でき
るだけの隙間を残して、ヒートシーラーで溶着した後、
容器内部の空気を、容器全体にシワがよるまで真空ポン
プを用いて吸い出した。次いで、真空ポンプを作動させ
たままノズルを容器から引き抜き、容器の開口部のまだ
溶着されていない部分をヒートシーラーで溶着した。こ
のようにしてゲル状の補助飼料を製造した。

【００１３】実施例２ ドーセット・マリン雑種緬羊１６頭を８頭ずつ２群に分
け、室内で群飼した。基礎飼料として麦藁を１日あたり
３２ｋｇずつ各群に給与した。各群について、実施例１
に示す方法によって得たゲル状補助飼料および従来製品
（OLSSON社製、商品名：WORMOLAS；OLSSON Industries
Pty. Ltd., NSW, Australia ）を同一の木製フォルダー
上に並べておき、５週間、自由摂取（フリーチョイス）
させた。本発明の補助飼料および従来製品のそれぞれの
摂取量を計測した。すなわち、本発明の補助飼料および
従来製品を、上記の方法で緬羊に給与し、本発明の補助
飼料および従来製品の給与前の重量および１週間間隔で
給与後５週間の残存重量を測定し、給与前の重量と給与
後の残存重量の差を求めて摂取量を計測した。第１群お
よび第２群の摂取量を図１および図２に示した。図中、
■─■は本発明の補助飼料の摂取量を、▲─▲は従来製
品の摂取量を示す。図から明らかなように、いずれの群
においても、本発明の補助飼料の摂取量の方が従来製品
の摂取量を上回ったことから、本発明の補助飼料の嗜好
性は、従来製品よりも高いと判定された。

【００１４】実施例３ 実施例１の方法によって製造した本発明の補助飼料およ
び従来製品（OLSSON社製、商品名：WORMOLAS；OLSSON I
ndustries Pty. Ltd., NSW, Australia ）各９個をいず
れの製品も包装を取り除かない状態で、空調設備のない
室内の床面より１ｍの木製棚上に３個ずつ積み上げ、３
ヶ月間放置した。保存室には光が入らず、床、壁および
天井の材質はコンクリートであった。また、室温１９〜
３４℃、湿度８５〜９５％であった。放置後、各製品の
包装の表面と裏面、並びにその内容物を肉眼で観察し
た。その結果、従来製品は包装の表面、裏面および内容
物の表面の約４分の３が白色あるいは緑色のカビ様のも
ので覆われていた。一方、本発明の補助飼料は、包装の
表面に埃が付着しているだけで、包装の裏面および内容
物には顕著な変化は見られなかった。このことから、本
発明の補助飼料は保存性に優れていることが明らかとな
った。

【００１５】実施例４ ドーセット・マリン雑種緬羊１５頭を５頭ずつ３群に分
けて室内で群飼した。基礎飼料としてオイルパーム葉サ
イレージを各群に飽食給与した。第１群には実施例１で
得た本発明の補助飼料を、第２群には従来製品（OLSSON
社製、商品名：WORMOLAS；OLSSON Industries Pty. Lt
d., NSW, Australia ）を５週間、自由摂取させた。第
３群は基礎飼料のみを給与し、対照とした。１週間おき
に緬羊の体重測定を行ない、各群の平均体重を算出し
た。各群の平均体重の変化を図３に示した。図中、■─
■は本発明の補助飼料を給与した第１群を、▲─▲は従
来製品を給与した第２群を、〇─〇は基礎飼料を給与し
た第３群を示す。各時点の平均体重の差について、Stud
ent's T testを行なって有意性を判定したところ、本発
明の補助飼料を給与した第１群の平均体重は、従来製品
を給与した第２群のものよりも有意に大きかった（Ｐ＜
０．０５）。したがって、本発明の補助飼料の給与効果
は、従来製品と比較して優れていると判断された。

【００１６】

【発明の効果】本発明の補助飼料は、ミネラル類、炭水
化物源やタンパク質源を豊富に含んでいるため、反芻動
物に必要な栄養を適量供給することができる。しかも、
本発明の補助飼料は、ゲル状で嗜好性に優れているお
り、反芻動物に不足する炭水化物、タンパク質およびミ
ネラルを確実に補給することができる。また、本発明の
補助飼料は、保存性に優れており、熱帯および亜熱帯の
ような雨季と乾季の存在する地域で長期間保存しても、
硬化、変色およびカビ等の繁殖がない。本発明の補助飼
料は、簡便な方法で効率よく製造することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】 実施例２における第１群の飼料摂取量を示し
たものである。

【図２】 実施例２における第２群の飼料摂取量を示し
たものである。

【図３】 実施例４における飼料給与効果を示したもの
である。

Claims (8)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ミネラルと糖蜜を含有する補助飼料成分
   に、パームカーネルケーキ、ビール粕、ゼオライト、酵
   母もしくは酵母エキスおよび椰子油を含む成分を配合し
   たことを特徴とするゲル状家畜用補助飼料。
2. 【請求項２】 ミネラルと糖蜜を含有する補助飼料成分
   が、０．４〜１％のリン酸カルシウム、３〜５％の塩化
   ナトリウム、０．４〜１％のミネラルミックス、３〜４
   ％の尿素、３〜８％の糠、３〜７％の酸化カルシウムお
   よび５５〜８０％の糖蜜を含むものである請求項１記載
   の家畜用補助飼料。
3. 【請求項３】 ミネラルと糖蜜を含有する補助飼料成分
   に、３〜８％のパームカーネルケーキ、３〜８％のビー
   ル粕、０．１〜１％のゼオライトおよび０．１〜１％の
   酵母もしくは酵母エキスおよび１％以上の椰子油を含む
   成分を配合する請求項１記載の家畜用補助飼料。
4. 【請求項４】 家畜が牛、緬羊および山羊のいずれかで
   ある請求項１記載の家畜用補助飼料。
5. 【請求項５】 パームカーネルケーキ、ビール粕、ゼオ
   ライト、酵母もしくは酵母エキス、ミネラル、尿素、糠
   および酸化カルシウムを含む固形成分を粉砕しつつ混合
   した後、該混合物に糖蜜と椰子油よりなる液状成分を添
   加し、攪拌混合し、得られた混合物を溶着可能な合成樹
   脂容器に充填し、開口部を真空密封することを特徴とす
   るゲル状家畜用補助飼料の製造方法。
6. 【請求項６】 固形成分と液状成分の混合から密封まで
   の操作を、１２０分以内に行なう請求項５記載の製造方
   法。
7. 【請求項７】 固形成分が、３〜８％のパームカーネル
   ケーキ、３〜８％のビール粕、０．１〜１％のゼオライ
   ト、０．１〜１％の酵母もしくは酵母エキス０．４〜１
   ％のリン酸カルシウム、３〜５％の塩化ナトリウム、
   ０．４〜１％のミネラルミックス、３〜４％の尿素、３
   〜８％の糠および３〜７％の酸化カルシウムを含むもの
   である請求項５記載の製造方法。
8. 【請求項８】 液状成分が、１％以上の椰子油および５
   ５〜８０％の糖蜜を含むものである請求項５記載の製造
   方法。