JPH1042879A - 染色体特異性標識プローブ/その調製方法/その用途 - Google Patents

染色体特異性標識プローブ/その調製方法/その用途

Info

Publication number
JPH1042879A
JPH1042879A JP9116532A JP11653297A JPH1042879A JP H1042879 A JPH1042879 A JP H1042879A JP 9116532 A JP9116532 A JP 9116532A JP 11653297 A JP11653297 A JP 11653297A JP H1042879 A JPH1042879 A JP H1042879A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
dna
double
chromosome
stranded dna
primer
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP9116532A
Other languages
English (en)
Inventor
Daniel Henry Johnson
ヘンリー ジョンソン、ダニエル
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
University of Miami
Original Assignee
University of Miami
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by University of Miami filed Critical University of Miami
Publication of JPH1042879A publication Critical patent/JPH1042879A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N15/00Mutation or genetic engineering; DNA or RNA concerning genetic engineering, vectors, e.g. plasmids, or their isolation, preparation or purification; Use of hosts therefor
    • C12N15/09Recombinant DNA-technology
    • C12N15/10Processes for the isolation, preparation or purification of DNA or RNA

Landscapes

  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Biomedical Technology (AREA)
  • Wood Science & Technology (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Biotechnology (AREA)
  • General Engineering & Computer Science (AREA)
  • Zoology (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Plant Pathology (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Microbiology (AREA)
  • Crystallography & Structural Chemistry (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Biophysics (AREA)
  • Measuring Or Testing Involving Enzymes Or Micro-Organisms (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 染色体DNAを効率よく増幅し、遺伝子スク
リーニングに適した染色体特異性標識プローブを短時間
で多量に得る。 【構成】 染色体由来のDNAを制限酵素等で切断した
小断片の両端に、塩基配列が既知で、かつ一方の5'末端
のリン酸基が水酸基で置換された2本鎖DNAを連結し
たのち、前記2本鎖DNAに相補的な1本鎖DNAをプ
ライマーとして用いたポリメラーゼ反応、好ましくはP
CRにより所望の量が得られるまで増幅し、増幅したD
NAを直接あるいは間接的に標識する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、主としてポリメラーゼ
連鎖反応により調製される、遺伝子特異性標識プローブ
及びその調製方法、並びに前記プローブを用いた遺伝子
のスクリーニング方法に関する。
【0002】
【従来の技術】染色体は多数の遺伝子を担っているゲノ
ムの独立した単位である。染色体は、極めて長いDNA
の線状分子でできており、細胞周期の大部分の期間中蛋
白質との複合体を形成している。
【0003】体細胞周期は、細胞が通常の代謝活動を営
んでいる長い中間期と、細胞が2つの娘細胞に分裂する
有糸分裂期からなる。正常な体細胞は2倍体、すなわ
ち、各染色体の対をなしたコピー(相同な)を含んだ状
態で存在している。有糸分裂期には、染色体の対は分離
し各々が複製し、姉妹染色分体と呼ばれることもあるコ
ピーを形成する。各娘細胞は、それぞれの元の染色体の
対のうちの一方と各姉妹染色分体の対のうちの一方を受
け取る。
【0004】生殖細胞(卵子または精子)は減数分裂に
よって産生される。減数分裂では生殖細胞が2回分裂を
起こし4個の娘細胞を産生する。その各々は染色体の半
数体セットを受け取る。
【0005】ある生物、例えばドロソフィラ(Drosophi
la、ショウジョウバエ)の中間期の核は多糸性染色体と
呼ばれる巨大染色体を含んでいる。多糸性染色体は、接
合部を形成した倍数体対の連続的複製(約9回に及ぶ)
によって作られる。複製体は細胞分裂のようには分離せ
ず、会合したままでいる。多糸性の度合いは巨大染色体
中に含まれる半数体染色体の数である。
【0006】多糸性染色体には顕微鏡下で観察できる一
連の縞模様がある。この縞模様は染色体の細胞学的地図
を形成している。連鎖地図で見られるように遺伝子転位
を、細胞学的地図の構造的転位と関連づけることができ
る。問題の遺伝子のプロープが手に入るならば、遺伝子
は、その遺伝子を特定のバンドに位置づけることが可能
である。
【0007】特定の遺伝子を単離することが多くの生物
学的現象をの分子レベルで理解する第1歩である。興味
の対象となる遺伝子を単離する時の主な障害は遺伝子産
物についての知識がまったくないことである。すなわ
ち、遺伝子は遺伝され得る突然変異欠損(例えば、ヒト
におけるハンティングトン舞踏病)の遺伝的解析からの
み知られる。これらの場合においては、遺伝子単離のた
めの唯一の手だては、今までにクローニングされたDN
Aに近い連鎖を見いだすことを願って遺伝子地図を作成
することによって先ず突然変異体対立遺伝子の染色体上
の位置を明確に決定することであった。次にこのDNA
は興味の対象の突然変異体遺伝子座への染色体歩行を開
始するために使用されるであろう。
【0008】染色体歩行においては、興味の対象の遺伝
子の近くに存在すると考えられるDNAで始められ、こ
のDNAを使用して標的遺伝子の方向に広がっている相
同性のクローンを単離する。染色体歩行を百キロベース
を遙かに越えて続行しなければならないならば、標的遺
伝子に向かって続けることを妨げる反復DNA配列に殆
ど常に遭遇する。
【0009】塩基対の規模が100万を越えるような場
合には、開始クローンと標的遺伝子座の間にはかなりの
数の反復DNA配列があるものと予想されるので、染色
体歩行は行なうべきではないと大方の分子生物学者は考
えている。不幸なことに、臨床的興味があるいくつかの
ヒト遺伝子のうちのいずれについても、100万塩基以
内のマーカークローンなら十分近い方であろうと考えら
れるであろう。例えば、多くの研究室による数年の集中
的研究の後、ハンティングトン舞踏病の原因遺伝子は最
も近いDNAマーカーから未だ少なくとも0.75メガ塩基
対隔たっており、もっと近いDNAクローンが手あたり
次第に求められている。(F.S.Collins、シンポジウム
講演、第16回国際遺伝学会議、トロント 8月21
日、1988)。染色体歩行の問題点の多くを多少とも解消
すると考えられる特定の染色体領域からDNAクローン
を単離する方法の開発が、本発明の目的の1つである。
【0010】顕微解剖は、顕微鏡観察下でマイクロマニ
ピュレータを用いて染色体を断片に切断する技術をい
い、マイクロクローニングは、その結果生ずる断片を適
当なベクターにクローニングすることをいう。通常にお
いては、ベクターを使用して宿主細胞を形質転換し、染
色体DNAのライブラリーを作製する。この技術は染色
体の一部を単離してクローン化する上で優れている(Pi
rotta, Jackle and Edstrom, GeneticEng, Principles
& Methods, 5:1-17 (1983))。
【0011】例えば、過去数年において、2、3のグル
ープ(Johnson ら、1987;Dreesenら、1988)は、マイ
クロクローニングの戦略(Scalenghe ら、1977;Pirrot
taら、1983)を用いて、多糸染色体中の遺伝子の物理的
位置の知識に基づいて興味あるドロソフィラの遺伝子を
単離した。このプロトコルにおいては、顕微解剖された
染色体DNAからの制限エンドヌクレアーゼによる切断
断片(通常、6塩基対認識のエンドヌクレアーゼである
EccRI により生じさせる)がλ−バクテリオファージベ
クター中にクローニングされる。続いて、興味のある染
色体領域を網羅する重複クローンの系列を回収するため
に、マイクロクローニングを行なったバクテリオファー
ジライブラリ中のユニークなDNA断片をプロープとし
て用いて、遙かに大きな染色体のDNA断片を含むドロ
ソフィラゲノムの200キロベース領域からのDNAの
90%を回収することが可能であった(Johnson ら、19
87)。
【0012】このマイクロクローニング戦略はマウス
(Rhome ら、1984)やヒトのような多糸染色体を欠いて
いる生物において試みられたが結果ははかばかしくなか
った。この場合の主要な問題は、僅かな数のクローンを
回収するために多数の染色体を解剖する必要があること
であった。ヒトX染色体の脆弱な位置からのDNAをこ
の手順でクローニングするための多大な努力はこの技術
的理由から失敗した。
【0013】多糸染色体についてさえ、望む制限断片の
収率は低く、このため、マイクロクローニングの段階の
効率が下がり、クローニングベクターの選択が制限され
る。効率を最大にするため、ファージベクターが通常用
いられる。しかし、ファージの充填のシステムの都合に
より、通常、挿入断片については1〜20KBという制
限が課せられる。
【0014】一方、ヘテロDNA集団における特異的D
NA配列をポリメラーゼ連鎖反応(以下、PCRと略
す)によって増幅することが可能である(Mullis, U.S.
4,683,195; Mullis, U.S. 4,683,202)。従来のPCR
においては、増幅されるべき標的DNA配列の両側に隣
接するDNA配列を予め調べておき、標的配列の各3’
末端側の隣接部位にアニーリング可能なプライマーを、
それぞれ1つずつデザインしてアニーリングさせ、この
アニーリングされたプライマーから、DNAポリメラー
ゼを用いて標的配列に相補的なDNA鎖を合成する。こ
うして得られた2本鎖DNAを変性すると、変性により
得られる1本鎖DNAはプライマーに対して相補的であ
るため、再度プライマーと結合することができ、この1
本鎖DNAを鋳型として再びDNA合成が行なわれる。
このサイクルを繰り返すごとに、標的DNA量が2倍ず
つ増加していくことになり、短時間で、大幅な増幅を行
なうことが可能である。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
PCRにおいては、増幅すべき標的塩基配列の両側に隣
接する塩基配列に対して相補的な塩基配列を持つオリゴ
ヌクレオチドを合成し、これをプライマーとして用いる
ため、両側の隣接領域がわからない限り、プライマーを
調製することができない。
【0016】Frohman ら(PNAS, 85:8998-9002(1988))
は、相補的DNA(以下、cDNAと略す)を増幅する
方法として、改変PCR(アンカードPCR)について
記載している。ポリアデニル化メッセンジャーRNAか
ら逆転写されたDNAは一連のチミジンを含んでいる。
このため、cDNAを増幅する場合、標的部位の両隣接
領域のうち一方は既知のホモポリマー配列であり、もう
一方についてのみ隣接領域を調べればよい。
【0017】しかしながら、この方法においても、隣接
領域の一方については、やはり塩基配列を調べなければ
ならない。また、一般にゲノムDNAは、cDNAと異
なり既知のホモポリマー配列を含まないので、ゲノムD
NAの増幅にこの方法を用いることは適当でない。
【0018】したがって、本発明の目的は、ゲノムDN
Aを効率よく増幅して、遺伝子スクリーニングに用いる
ことのできる染色体特異性標識プローブを多量に得るこ
とにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】上記問題点を解決するた
め、本発明の染色体特異性標識プローブは、染色体DN
A由来のDNA断片の両端に、塩基配列が既知のDNA
断片が連結されてなるハイブリッド2本鎖DNAであ
り、かつ直接または間接的に標識されていることを特徴
とする。
【0020】また、本発明の染色体特異性標識プローブ
の調製方法は、染色体またはそのコピー、及び/または
染色体断片またはそのコピーに由来する1つ以上の2本
鎖DNAを原料として、以下の工程、すなわち、(a)
前記2本鎖DNAを切断して、両側に断端を持つ2本鎖
DNA断片を調製する工程と、(b)前記2本鎖DNA
断片の両断端に、5'末端の一方がリン酸基、他方が水酸
基であるプライマー2本鎖DNAを連結して、ハイブリ
ッド2本鎖DNAとする工程と、(c)前記ハイブリッ
ド2本鎖DNAを変性して、ハイブリッド1本鎖DNA
鎖とする工程と、(d)前記ハイブリッド1本鎖DNA
の3'末端に、前記(b)で連結したプライマー2本鎖D
NAの塩基配列部位に相補的なプライマー1本鎖DNA
をアニーリングする工程と、(e)前記アニーリングし
たプライマー1本鎖DNAを伸長することにより、ハイ
ブリッド2本鎖DNAを生成する工程と、(f)前記
(c)〜(e)を所望の増幅度を得るまで反復する工程
と、(g)増幅されたハイブリッド2本鎖DNA断片
を、直接または間接的に標識する工程、を含むことを特
徴とする。
【0021】また、本発明の遺伝子スクリーニング方法
は、上記染色体特異性標識プローブを1つ以上用いてin
situ ハイブリダイゼーションを行なうことを特徴とす
る。
【0022】以下、本発明について好ましい態様を挙げ
て詳細に説明する。本発明における染色体特異性標識プ
ローブの調製方法においては、まず、染色体及び/また
は、フローソーティング法(Grayら、Cold Spring Harb
or Symposia on Quantitative Biology 51: 141-157 (1
986))や、顕微解剖法などの方法で得た染色体断片を、
そのまま、あるいは1つ以上のコピーを生成した後、制
限酵素などにより切断して、両端に断端を持つ2本鎖D
NA断片を調製する。
【0023】本発明において、2本鎖DNAとは、2本
のDNA鎖が相補的塩基間(アデノシン(A)とチミン
(T);グアニン(G)とシトシン(C))の水素結合
により二重螺旋構造を形成しているものである。DNA
分子は、通常、5'リン酸基末端及び3'水酸基末端を有
し、これらの末端はin vitroにおける化学的または酵素
的手法により修飾することができる。
【0024】本発明においては、制限酵素を1種類以上
用いて、上記2本鎖DNAを多数の小断片に切断するこ
とが好ましい。一般に、DNA断片が短いほうがPCR
の基質として有効であり(Saiki ら、1988)、例えば、
100〜500塩基対程度の長さが好ましい。また、断
片数が多いほうが、以下に述べる2本鎖プライマーが断
片の両断端に連結しやすい。
【0025】本発明において、制限酵素とは、制限エン
ドヌクレアーゼとも呼ばれ、2本鎖DNAを特定の位置
で切断する酵素群である。制限酵素により切断された各
々の2本鎖DNA断片は制限酵素断片と呼ばれ、断片の
集合は消化物と呼ばれる。制限酵素として知られる酵素
の種類は多く、切断部位の認識様式や切断パターンも多
種多様である。例えば、両鎖を同じ部位で切断し、平滑
断端を残す酵素もあれば、両鎖を異なる部位で切断し、
オーバーハングス、プロトルーディング末端、付着末
端、粘着末端などと呼ばれる断端を残す酵素もある。
【0026】本発明に用いる制限酵素の種類に特に制限
はないが、平均して75から数千塩基対に1カ所の割合
で染色体を切断するものが好ましく、平均して256塩
基対に1カ所の割合で染色体を切断する、4塩基対認識
の酵素を用いることがより好ましい。このような酵素と
しては、例えば、MboI、AluI、HpaII 、FnuDII、DpnI、
SciNI 、HhaI、HaeII 、RasI、およびTaqIなどがある。
また、例えばMboIのように、付着末端を残すような制限
酵素を用いることが、更に好ましい。なお、既知の制限
酵素の認識部位に関する情報は、R. J. Roberts によっ
てNuclei AcidsResearchの毎年最初の号に発表され、ま
た、制限酵素の供給元としては、Bethesda Research La
bs、Boehringer Mannheim Biochemicals、及びNew Engl
and Biolabs などがある。
【0027】なお、本発明においては、制限酵素による
以外の方法、例えば、凍結と解凍を繰り返すなど、他の
酵素的、化学的または物理的手段を用いることもでき
る。しかしながら、この場合においては、後の工程で2
本鎖プライマーDNAを連結できるように、切断された
DNAの断端を修復する必要が生じる場合がある。
【0028】次に、上記の様にして得られた染色体DN
A断片、好ましくは制限酵素断片に、2本鎖プライマー
を連結する。プライマーとは、鋳型DNA鎖の一部に相
補的な塩基配列を持ち、鋳型DNAにアニーリングする
1本鎖DNAの小断片である。すなわち、DNAポリメ
ラーゼにより触媒されるDNA合成は、プライマーの3'
末端から開始され、鋳型DNA鎖に沿って、重合が停止
するまで末端を伸長する。あるDNAポリメラーゼが、
相補性DNA鎖の合成を連続して行ない得る能力のこと
を、前進性(processivity)という。また、本発明にお
いては、プライマーと、これに相補的な塩基配列を持つ
1本鎖DNAが結合して成る2本鎖DNAを、2本鎖プ
ライマーと呼ぶことにする。
【0029】また、連結とは、DNAリガーゼにより行
なわれ、制限酵素切断とは反対に、DNA鎖の切れ目を
つなぎ合わせることをいう。DNAリガーゼは、あるD
NA分子の5'リン酸基末端と、別のDNA分子の3'水酸
基末端を、リン酸ジエステル結合により連結する反応を
触媒し、水酸基末端どうしを連結することはない。ま
た、末端が付着末端、平滑末端のどちらも連結すること
ができる。
【0030】本発明の特に重要な特徴として、2本鎖プ
ライマーにおける2つの5'末端の内、一方だけがリン酸
基を有し、もう一方の5'末端は、3'末端と同様に水酸基
を有する。これによって、図2に示すように、2本鎖プ
ライマーどうしが3個以上直列に連結して2本鎖オリゴ
マーが生成され、このオリゴマーが、PCR時に加えら
れるプライマーとアニーリングを起こすことにより、P
CRを阻害することを防止することができる。図3に示
されるように、2本鎖プライマーが2個連結して生成さ
れる2本鎖ダイマー分子は自己相補性であるため、PC
R時にはヘアピン分子を形成する。このため、2本鎖プ
ライマーが2個連結しても、増幅反応が阻害される心配
はない。
【0031】また、上記のような2本鎖オリゴマー生成
をより効果的に防止するため、本発明の2本鎖プライマ
ーは、制限酵素によって形成された付着末端に相補的な
付着末端を有することが好ましが、アダプターDNAを
用いて、制限断片の付着末端とは相補的でない付着末端
を持つ2本鎖プライマーを連結したり、制限酵素断片と
2本鎖プライマーの平滑末端どうしを連結することもで
きる。このように、2本鎖プライマーとDNA断片の平
滑末端どうしを連結しようとするときは、2本鎖オリゴ
マーの生成を防ぐために、2本鎖プライマーには、5'水
酸基末端が付着末端であるものを用い、かつ、DNAリ
ガーゼには、例えばT4DNAリガーゼのように1本鎖
DNAの連結を起こさないリガーゼを用いることが好ま
しい。2本鎖プライマーは、異なる制限酵素についての
内部認識部位も提供することがある。これにより、増幅
されたDNAの後の操作が容易になる可能性がある。
【0032】本発明で用いる2本鎖プライマーの長さ
は、20〜30塩基対であることが好ましい。長さが2
0塩基対より短いと、2本鎖プライマー連結部位のハイ
ブリダイゼーションにおける特異性が小さくなり、増幅
時に用いる1本鎖プライマーとのアニーリング速度が低
下する。一方、長さが30塩基対を超えると、連結反応
時におけるプライマーのモル濃度が不足して、プライマ
ーが制限断片の両端に連結しにくくなる。但し、実験時
においては、150塩基対の長さに及ぶ2本鎖を使用で
きた例もある。また、2本鎖プライマーのGC含量は5
0%程度が好ましく、GC塩基対が2本鎖プライマー全
体に均一に分布することが好ましい。
【0033】上記の様に調製されたハイブリッド2本鎖
DNAは、変性され、各々5'末端と3'末端を持つ2本の
ハイブリッド1本鎖DNAに分離される。ここで、変性
とは、DNA複製の過程において、二重螺旋鎖DNAが
分離して1本鎖となる現象をいう。分離した各DNA鎖
は鋳型として、鋳型に相補的な新しいDNA鎖の合成に
供される。この反応は、DNAポリメラーゼにより触媒
される。
【0034】変性により1本鎖となった各ハイブリッド
DNA鎖の3'末端には、先に2本鎖プライマーを連結し
た部位の塩基配列に相補的な塩基配列を持つ1本鎖プラ
イマー分子がアニーリングされる。ここで、アニーリン
グとは、再生、またはハイブリダイゼーションとも呼ば
れ、変性の逆の過程、すなわち、相補的な2本の1本鎖
DNAを水素結合して、2本鎖DNAを生成することを
いう。
【0035】アニーリングされたプライマーがDNAポ
リメラーゼ反応で伸長されることにより、新たなハイブ
リッド2本鎖DNAが生成して、増幅が遂行される。本
発明においては、上記の変性、アニーリング、及びポリ
メラーゼ反応の過程を、所望の増幅度を得るまで反復す
るが、この増幅の方法としては、PCRを用いることが
好ましい。本発明におけるPCRは、制限断片の両端に
2本鎖プライマーが連結され、サンドウィッチ状になっ
たものを基質として行なわれる。すなわち、塩基配列が
既知の2本鎖プライマーが、あらかじめ染色体DNAの
制限断片に連結されており、この部位がPCR時におけ
るプライマーのアニーリング部位となる。本発明では、
制限断片と2本鎖プライマーを、たとえ平滑末端どうし
で連結した場合においても、2本鎖プライマーの有する
5'末端のうち一方だけにしかリン酸基が存在しないので
2本鎖プライマーが断片に連結される方向は常に同一で
ある。このため、従来のPCRと対照的に、PCR反応
混合物には、1種類の1本鎖プライマーだけを、すなわ
ち、2本鎖プライマーを形成する1本鎖DNAの内、5'
水酸基末端を持つ鎖と同一の塩基配列を持つ1本鎖DN
Aだけを加えればよい。また、増幅時に所望の2本鎖を
得るため、各DNA鎖は別々に合成されることが好まし
い。この時、一方のDNA鎖を適当なポリヌクレオチド
キナーゼで処理し、他方は処理しないで、アニーリング
を行なう(Maniatis、前述の文献396を参照)。なお、
DNA濃度と大きさが連結に及ぼす効果の理論的解析に
ついては、Dugaiczyk らJ. Mol. Biol. (1975) 96,1 に
詳しい。このようにしてPCR増幅された2本鎖DNA
断片はすべて、あらかじめ選択した細胞学的遺伝子座由
来のものである。
【0036】なお、PCR反応に続いて、増幅後の断片
をベクター中にマイクロクローニングし、このベクター
により宿主細胞を形質変換し、増殖させることにより、
更に増幅を行なうこともできる。通常、この工程は必要
ないが、例えば、増幅したDNAをクローニングして、
比較的ユニークで、プローブとして有効な個々のDNA
をスクリーニングする場合などに有効である。また、増
幅DNAの一部をクローニングし、残りはそのままプロ
ーブとして使用してもよい。
【0037】本発明の好ましい態様の1つとしては、ニ
ックトランスレーションにより、ゲノム全体を放射線標
識ヌクレオチドで標識した後、制限酵素で消化して染色
体断片化を調製し、この断片をプローブとして用いるこ
とにより、上記増幅されたDNAをスクリーニングす
る。反復配列はより強いシグナルを生ずる(Crampton
ら、1981)。この場合において、ゲノム全体を消化する
必要はなく、フローソーティングや顕微解剖などの手段
で特定の染色体部位を選択した後、適切な大きさの断片
に消化すればよい。
【0038】本発明の調製方法においては、最後に、上
記のように増幅されたDNAを、ハイブリダイゼーショ
ンプローブとして用いるために標識する。プローブの標
識方法に特に限定はなく、例えば、放射線同位体、発蛍
光団、クエンチャー、酵素または酵素基質などにより標
識することができる。標識のDNAに対する結合は、直
接または間接どちらでもよく、また、共有結合または非
共有結合どちらでもよい。例えば、アビジン結合酵素を
ビオジン化DNAに結合させる方法や、蛋白質と結合し
た配列特異性DNAを目的のDNAに連結させた後、そ
の蛋白質に特異性の、標識された抗体を結合させる方法
などがある。好ましくは、ハイブリダイゼーションプロ
ーブはランダムプライマーを用いて調製される(Feinbe
rgとVogelstein (1983), Anal., Biochem., 132, 6; I
d., 137, 266 )。この方法では、プローブは32Pで標
識される。
【0039】次に、本発明の遺伝子スクリーニング方法
について述べる。本発明においては、上記のように調製
された1種類以上の染色体特異性標識プローブをハイブ
リダイゼーションプローブとして用いて、in situ ハイ
ブリダイゼーションを行ない、ゲノムDNAまたはcD
NAライブラリーをスクリーニングする。cDNA転写
体は発現遺伝子に関連しているので、cDNAライブラ
リーをスクリーニングすることがより好ましい。すなわ
ち、遺伝子が発現されるときには、遺伝情報が先ずmR
NAに転写され、このmRNAがポリペプチドに翻訳さ
れる。このmRNAを細胞から単離して、1本鎖cDN
Aを調製する鋳型として使用することができる。この1
本鎖cDNAを、今度は鋳型として使用して、2本鎖c
DNAを調製し、ベクターにクローニングする。すなわ
ち、cDNAライブラリーとは、それぞれが興味ある細
胞によって産生されたmRNAから転写された、このよ
うなcDNA挿入部を持っているベクターで形質転換さ
れた細胞の培養物である。それらの調製に使用された逆
転写酵素の前進性の限度のためにcDNAは完全な遺伝
子に対応しないかも知れないが、一度同定されれば、興
味ある遺伝子に関連したcDNAがゲノムDNAライブ
ラリーにおける全遺伝子を同定するためのプローブとし
て使用される。なお、ハイブリッドダイゼーションプロ
ーブを用いて所望のクローンを同定する方法は、後述す
るManiatisらの文献309 ページに記載されている。
【0040】
【作用】本発明では、塩基配列が既知の2本鎖プライマ
ーを、あらかじめ染色体DNA断片の両断端に連結し、
増幅時にはこの部位にプライマーをアニーリングするの
で、標的部位に隣接する部位の塩基配列に制限されるこ
となくポリメラーゼ反応を行なうことができる。
【0041】本発明で用いる2本鎖プライマーは、両5'
末端のうち一方だけがリン酸基であり、もう一方の5'末
端は、3'末端と同様に水酸基である。このため、染色体
断片と常に同一方向に連結される。従って、PCRを行
なう際に、従来と異なり、PCR反応混合物には、1種
類の1本鎖プライマー、すなわち、2本鎖プライマーを
形成する1本鎖DNAの内、5'水酸基末端を有する方の
鎖と同一の塩基配列を持つ1本鎖DNAを加えるだけで
よく、プライマー調製の手間が少なくて済む。また、上
記の構造により、染色体断片と2本鎖プライマーの付着
末端どうしを連結する際に、2本鎖プライマーが3個以
上連結して、PCRを妨害するオリゴマーが生成するの
を防止でき、PCRを効率よく行なうことができる。
【0042】本発明によれば、理論上、脊椎動物の10
個の中期染色体を顕微解剖して得られた10フェムトグ
ラムのDNA断片を、10ナノグラムまで増幅すること
ができる。すなわち、試料DNA中に100キロベース
の塩基配列が存在するとすると、増幅産物中には、塩基
配列1キロベース当たり1ナノグラムのDNAが含まれ
る計算になる。このため、クローニングを行なわなくて
も多量のDNAを得ることができ、クローニングを行な
う場合でも、比較的増幅率の低いベクターを使用できる
ため、広範囲のベクターを選択できる。
【0043】
【実施例】
実施例1 図1には、本発明の一実施例が示されている。ドロソフ
ィラ・メラノガスタ(Drosophila melanogaster )の第
3染色体の右腕の基部の83D-F 領域を本発明の方法の標
的として選んだ。この領域は、Tpl の重複か、異型接合
性欠失が致死的である(Lindsleyら、1972)という点で
ドロソフィラゲノムに特有のTpl 遺伝子座を含んでい
る。染色体断片を、唾液腺染色体から83D-F 領域は1つ
の単位として、そして83E-84E に渡って広がる3つの断
片の一続きとして切断した。染色体の断片を、各々、プ
ロティナーゼK−SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)緩
衝液の1nLの小滴中に加えて処理し、フェノール抽出
によって除タンパクして(Pirrottaら、1983)。DNA
の部分量を高濃度(40単位/μL)のMboIで消化し
た。
【0044】細いガラスの針を装着したミクロマニュピ
レーターを用いてガラスのカバースリップに固定した染
色体を切断した。切断したDNA断片を、蒸発を防ぐた
めにパラフィンオイルを満たしたチャンバー中のシラン
化処理したカバースリップから懸滴している10mMト
リス塩酸pH8.0 、10mMNaCl、0.1 %SDS、
500g/mLプロテナーゼKからなる1nLの小滴中
に入れる。小滴をフェノールで3回抽出し、続いてクロ
ロフォルムで抽出して残存フェノールを除去する。20
単位/LのMboI(特別注文でBethesda Research Lab.か
ら得た)を含む250mMトリス塩酸pH8.0 、50m
MMgCl2 、250mMNaClからなる溶液を1/
5容量加え、そしてオイルチャンバを37℃でインキュ
ベートすることによりDNAを消化する。この酵素は4
塩基対認識配列を持っており、その結果、DNAを4塩
基5'付着端を担っている多数の小片に切断する。この小
滴に、化1に示されるような、リン酸化されたMboI付着
端を持った20量体の二本鎖オリゴヌクレオチドの等容
量を加える。
【0045】
【化1】
【0046】化1において、二本鎖オリゴヌクレオチド
の5'付着端だけがリン酸基であり、もう一方は水酸基で
あることが重要である。
【0047】続いて250mMトリス塩酸 pH8.0、50
mMMgCl2 、5mMATP、5mMジチオトレイト
ール、25%ポリエチレングリコール4.5単位/Lの
T4リガーゼの混液を1/5容量を加え、オイルチャン
バを20℃で16時間インキュベートする。リンカー二
本鎖の濃度は、約5nL連結反応液中100ng/Lで
あると見積もられる。
【0048】それぞれの末端において構造が定まってい
る20量体のオリゴヌクレオチドを持ったDNAを含む
該小滴は、10mMトリス塩基pH8.0 、1mMEDT
Aの混液3Lで希釈することによってオイルチャンバか
ら回収される。その容積を500mMトリス塩基pH8.
3 、500mMKCl、25mMMgCl2 の混液を1
0L、各デオキシヌクレオチドトリホスフェート(dA
TP,dCTP,dGTPとdTTP、超高純度試薬ス
トック溶液、ファルマシア)の10mM混液を2L、2
本鎖プライマーの24量体のDNA鎖に対して相補的で
ある、適切な20量体のオリゴヌクレオチド200ng
/Lを1L、TaqDNAポリメラーゼ(5単位、Perk
in Elmer Cetus, Norwalk, CT )を1L、及びdH2 O
84Lを加えて容積を100Lに調節する。ここでプ
ライマーとして用いられる、20量体のオリゴヌクレオ
チドの組成を、化2に示す。
【0049】
【化2】
【0050】上記ポリメラーゼ連鎖反応液にパラフィン
オイルを重層し、95℃で1.5 分間加熱し、DNA二本
鎖を変性する。次に反応混合物を52℃で2分間インキ
ュベートし、プライマーを、染色体DNA分子の付着端
に対してアニーリングし、72℃に温度を上げてTaq
DNAポリメラーゼによるDNA分子の半保存的複製が
行なわれるようにする。このサイクルを25〜40回繰
り返した結果、染色体DNA断片の0.1 〜1pgの出発
質量から100ng以上が合成された。
【0051】増幅した染色体DNA(PCRプローブ)
は、アガロースゲル中で、数百から数千の塩基対の範囲
にある大きさのDNA断片のスミアーとして認められ
る。ドロソフィラ・メラノガスタの第3齢の幼虫の唾液
腺染色体の切断した83D-F 領域からのDNAを増幅し
た。そして次にビオチン−16−duTP(Enzo)とともに
ニックトランスレーションを行なうことによって標識し
た。ビオチン化したDNAを染色体とハイブリッド形成
させ、ハイブリッドを形成した位置を3,3−ジアミノ
ベンチジンテトラハイドロクロライドを基質として使用
してストレプトアバアジン西洋ワサビ−ペルオキシダー
ゼ複合体で染色することによって現像した。
【0052】PCRプローブの唾液腺染色体に対するin
situ ハイブリダイゼーションにより切断した区間にわ
たる主要シグナルを生じ、その他の部分でははるかにシ
グナルが弱かった。この結果からPCRプローブは切断
したゲノム領域に相補的なユニークなDNA配列から主
として成り立っていることが示された。完全な83D-FP
CRプローブに対する相補性によって単離されたいくつ
かのコスミドクローンもin situ ハイブリダイゼーショ
ンによって試験された。これらの実験は、83D-F 区間か
らのコスミドDNAクローン中に反復配列の存在を明ら
かにしている。コスミドDNAと対照的にPCRプロー
ブがハイブリダイゼーションの強い二次的部位を明らか
にすることができなかったことは、おそらく増幅DNA
に配列のより大きい複雑性が存在することの表れであろ
う。PCRプローブはたぶん200ないし300キロベ
ースのゲノムDNA配列を代表しているが(Bossy ら、
1984)コスミドクローンは約400キロベースのゲノム
配列を含む。
【0053】増幅したDNAが切断した染色体領域を代
表している程度をさらに試験するために制限酵素分解し
たコスミドDNAのサザンブロットをPCRプローブと
ハイブリダイゼーションさせた。ドロソフィラ・メラノ
ガスタのゲノムDNAの約105 のcospneo クローンを
3000Ci/mM[32P]dATPでニックトランス
レーションによって認識した83D-F PCRプローブでス
クリーニングした。約100の陽性クローンから、8個
を拾いあげた。1つのプレートからのコスミドのうち4
つは同一であった。コスミドからのDNAをEcoRl とXb
a-I で消化し、1%アガロース上で分画しエチジウムブ
ロミドで染色した。DNAはニトロセルローズにブロッ
ト転移させ、83D-F プローブでハイブリッドを形成させ
た。その結果から、これらの制限酵素分解を受けたコス
ミドクローンにおけるより大きなゲノムDNA断片の大
部分がPCRプローブによって検出されることが示され
た。それゆえ、このプローブは、in situ ハイブリダイ
ゼーションの結果によって示唆されるように切断された
染色体断片中に存在するDNA配列の多くを含んでいる
ように思われる。
【0054】染色体の領域が豊富な反復DNA配列を含
んでいる場合には、プローブとして使用するためにユニ
ークな増幅DNA断片の相当する収集を同定することが
望ましいであろう。83D-F 区間から得られたPCRプロ
ーブをMboIで消化し、ホスファターゼで処理したBam-HI
で開いたプラスミド中にショットガン方式でクローニン
グした。これらの組換え体プラスミドを持っている数百
個のバクテリアのコロニーをニトロセルローズフィルタ
ーに固定し、そして反復DNA配列(Cramptonら、198
1)を含むクローンを同定するために全ゲノムDNAと
ハイブリダイゼーションを行なった。これらのコロニー
をプレート上から取り除いた。残ったコロニーをとって
おき、多量に生育させ、ゲノムの挿入部を多量に単離
し、コスミドクローンのライブラリーのプローブとして
使用した。完全PCRプローブと同様に、このプローブ
も、83D-F 領域から由来するDNAクローンを同定する
ことができた。この手順を用いての遺伝子同定のための
別の戦略は、個別のクローン、または増幅したDNAラ
イブラリーからのいくつかのクローンのプールを適当な
変異体中の制限断片の長さの多型性を同定するためのプ
ローブとして使用することであろう。
【0055】特異的な染色体領域からの増幅されたDN
Aプローブも全ゲノムの物理的地図作成とこれらプロジ
ェクトについてのクローンの収集におけるギャップを満
たすために使用することができる。
【0056】実施例2 実施例1では、本発明の方法により、ドロソフィラ・メ
ラノガスタの多糸性染色体からDNAを得たが、本発明
は、他の生物の非多糸性染色体の特異的領域からDNA
を単離するためにも有効なはずである。以下はヒト(非
多糸性)染色体からDNAを増幅するためのプロトコル
である。
【0057】1.フローソーティングによって単離され
た特異的な型(染色体22)の中期のヒト染色体約4
0,000を10mMトリス塩酸pH7.5 、1mMNa
−EDTA,10mMNACl、0.1 %SDS、0.25m
g/mLプロティナーゼKの混液100μL中に懸濁さ
せ、55℃で1時間インキュベートした。 2.DNA溶液を等量のフェノール/クロロフォルムで
1回抽出した。 3.DNA溶液を等量のクロロフォルムで1回抽出し
た。 4.1/10容量の3M酢酸ナトリウムを2.5 容量のエ
タノールとともに加え、この混液を20℃で16時間イ
ンキュベートした。 5.DNAの沈殿をミクロ遠心分離機中で14,000
xgで30分間遠心分離することによって集め、精製染
色体DNAのペレットを回収した。 6.DNAのペレットを、1μLのReact 2緩衝液(Bet
hesda Research Labs)、1μLのMboI酵素(20単位/
μL)を加えた8μLの蒸留水に溶解した。そして混合
物を37℃で1時間インキュベートした。 7.(6)における10μLのDNA消化物に、2μL
のT4DNAリガーゼ緩衝液(BRL)、1μLのT4
DNAリガーゼ(9単位/μL,Bohringer/Mannhei
m)、1μLのオリゴヌクレオチドリンカー/アダプタ
ー(0.5 μgの前述のリン酸化MboIの4量体付着端を持
った20量体オリゴヌクレオチド二本鎖)と6μLの蒸
留水を加え、混合物を19℃で16時間インキュベート
した。 8.2μLの連結産物(7)を実施例1で示したように
100μLのポリメラーゼ連鎖反応カクテルの中にいれ
て薄め、20サイクルの増幅を行なった。
【0058】本操作手順の結果、出発染色体DNAから
in vitroでDNAを多量に合成し、収集できる。本実施
例は、単数の多糸性染色体を消化する代わりに非多糸性
染色体の複数を望ましい断片に切断するという点で、実
施例1と異なっている。好ましくは、所望の染色体の少
なくとも約1,000のコピー(即ち多糸性染色体中の
多糸性の程と同じ位の数)が提供される。染色体のコピ
ーの数が多いほど、そして染色体上の増幅されるべき興
味ある遺伝子、または他の遺伝子的要素のコピーの数が
多い程、少ないPCRサイクルで所望のレベルの増幅を
達成することができる。増幅した非多糸性染色体断片を
in situ ハイブリダイゼーション実験におけるプローブ
として使用した(Pinkelらによって記述された「染色体
ペインティング」、PNA(USA), 85:9138-42(1988))。こ
れによって各断片がそれが由来した染色体とハイブリッ
ドダイゼーションしたことを確かめた。この増幅DNA
分子の収集は、引き続き材料をプラスミドまたはバクテ
リオファージベクターの中にクローニングするか、もっ
と容易にはさらに複数ラウンドのin vitro増幅によって
続行することができる。
【0059】適切に標識された、増幅染色体DNAを遺
伝子スクリーニングに使用することができる。例えば、
ダウン症候群と結びついたヒト染色体21を、フローソ
ーティングを使用して単離することができ、そして本発
明を使用してこの染色体の断片を増幅することができ
る。ダウン症候群についての検定においては、胚のDN
Aがこのように得られた標識断片を使用してスクリーニ
ングされる。正常なヒトでは染色体21が2つだけであ
る。3本のこのような染色体の存在は、ダウン症候群の
遺伝子マーカーである。
【0060】慢性骨髄性白血病は異常なフィラデルフィ
ア染色体がマーカーとなっている。これは染色体9と2
2の転座を通じて起こる。染色体9と22を別々に単離
子、そしてそれらの断片を増幅し、最初の染色体9とハ
イブリッド形成を形成するプローブと2番目の染色体2
2とハイブリッドを形成するプローブを作るのに使用す
る。これらのプローブは異なる方法で標識される(例え
ば、異なる放射波長の発蛍光団)。フィラデルフィア染
色体は両方のプローブによって検出される。正常な染色
体9と22は一方のプローブまたは他方のプローブとだ
け強くハイブリッドを形成する。
【0061】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
ポリメラーゼ反応によりDNA増幅を行なう際に、標的
部位に隣接する部位の塩基配列が既知である必要がな
く、また、プライマーとして加える1本鎖DNAは1種
類だけでよい。このため、ポリメラーゼ反応を効果的に
利用して、目的のプローブを短時間で多量に合成するこ
とができる。
【0062】本発明のプローブをもちいることにより、
染色体の数や構成などに関する遺伝学的分析が容易とな
る。例えば、cDNAに対するショットガンプローブと
して用いて、cDNAクローンを収集し、次にこれらの
クローンをプローブとしてゲノムのクローンの重複シリ
ーズを単離したり、また、これらのcDNAクローンを
用いて、ゲノムのサザンブロットにおいてはっきりと識
別できる制限酵素断片長多型(RELPs)を探索し、遺
伝子特異性の欠陥を確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における染色体特異性標識プローブの調
製方法の一実施例を示す連続図である。
【図2】両5'末端を処理しない2本鎖プライマーを用い
た場合における、PCR反応の様子を示す連続図であ
る。
【図3】5'末端の一方を水酸基で置換した、本発明にお
ける2本鎖プライマーを用いた場合における、PCR反
応の様子を示す連続図である。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 染色体またはそのコピー、及び/または
    染色体断片またはそのコピーに由来する1つ以上の2本
    鎖DNAを原料として、以下の工程、すなわち、 (a)前記2本鎖DNAを切断して、両側に断端を持つ
    2本鎖DNA断片を調製する工程と、 (b)前記2本鎖DNA断片の両断端に、5'末端の一方
    がリン酸基、他方が水酸基であるプライマー2本鎖DN
    Aを連結して、ハイブリッド2本鎖DNAとする工程
    と、 (c)前記ハイブリッド2本鎖DNAを変性して、ハイ
    ブリッド1本鎖DNA鎖とする工程と、 (d)前記ハイブリッド1本鎖DNAの3'末端に、前記
    (b)で連結したプライマー2本鎖DNAの塩基配列部
    位に相補的なプライマー1本鎖DNAをアニーリングす
    る工程と、 (e)前記アニーリングしたプライマー1本鎖DNAを
    伸長することにより、ハイブリッド2本鎖DNAを生成
    する工程と、 (f)前記(c)〜(e)を所望の増幅度を得るまで反
    復する工程と、 (g)増幅されたハイブリッド2本鎖DNA断片を、直
    接または間接的に標識する工程、を含むことを特徴とす
    る染色体特異性標識プローブの調製方法。
  2. 【請求項2】 染色体DNA由来のDNA断片の両端
    に、塩基配列が既知のDNA断片が連結されてなるハイ
    ブリッド2本鎖DNAであり、かつ直接または間接的に
    標識されていることを特徴とする染色体特異性標識プロ
    ーブ。
  3. 【請求項3】 請求項2記載の染色体特異性標識プロー
    ブを1つ以上用いてin situ ハイブリダイゼーションを
    行なうことを特徴とする遺伝子スクリーニング方法。
JP9116532A 1989-01-31 1997-04-18 染色体特異性標識プローブ/その調製方法/その用途 Pending JPH1042879A (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
US30442389A 1989-01-31 1989-01-31
US07/304,423 1989-01-31

Related Parent Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP50341990A Division JPH04504356A (ja) 1989-01-31 1990-01-31 染色体dnaの顕微解剖と増幅

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH1042879A true JPH1042879A (ja) 1998-02-17

Family

ID=23176453

Family Applications (2)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP50341990A Pending JPH04504356A (ja) 1989-01-31 1990-01-31 染色体dnaの顕微解剖と増幅
JP9116532A Pending JPH1042879A (ja) 1989-01-31 1997-04-18 染色体特異性標識プローブ/その調製方法/その用途

Family Applications Before (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP50341990A Pending JPH04504356A (ja) 1989-01-31 1990-01-31 染色体dnaの顕微解剖と増幅

Country Status (3)

Country Link
EP (1) EP0456721A4 (ja)
JP (2) JPH04504356A (ja)
WO (1) WO1990008821A1 (ja)

Families Citing this family (26)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US5217889A (en) * 1990-10-19 1993-06-08 Roninson Igor B Methods and applications for efficient genetic suppressor elements
JP3122821B2 (ja) * 1990-11-21 2001-01-09 ピカー インターナショナル インコーポレイテッド 垂直格納コリメーターを備えた核医学カメラ用ガントリ装置
US5427932A (en) * 1991-04-09 1995-06-27 Reagents Of The University Of California Repeat sequence chromosome specific nucleic acid probes and methods of preparing and using
NZ242560A (en) * 1991-05-03 1994-01-26 Mycogen Corp Toxin effective against nematodes and its use in controlling them.
EP0558732B1 (en) * 1991-09-19 1999-03-03 Amoco Corporation Production of chromosome region specific dna sequences and transamination
US20100267023A1 (en) 1992-09-24 2010-10-21 Keygene N.V. Selective restriction fragment amplification: fingerprinting
ES2299229T3 (es) * 1991-09-24 2008-05-16 Keygene N.V. Creadores, kits y series de fragmentos de restriccion usados en la amplificcion selectiva de fragmentos de restriccion.
US7026115B1 (en) 1991-09-24 2006-04-11 Keygene N.V. Selective restriction fragment amplification: fingerprinting
US5545524A (en) * 1991-12-04 1996-08-13 The Regents Of The University Of Michigan Compositions and methods for chromosome region-specific probes
US5597694A (en) * 1993-10-07 1997-01-28 Massachusetts Institute Of Technology Interspersed repetitive element-bubble amplification of nucleic acids
US5710000A (en) 1994-09-16 1998-01-20 Affymetrix, Inc. Capturing sequences adjacent to Type-IIs restriction sites for genomic library mapping
GB2295228A (en) * 1994-11-10 1996-05-22 Unilever Plc Selective amplification of DNA having a plurality of sites for a specific endonuclease
US5814444A (en) * 1995-06-07 1998-09-29 University Of Washington Methods for making and using single-chromosome amplfication libraries
US6361947B1 (en) 1998-10-27 2002-03-26 Affymetrix, Inc. Complexity management and analysis of genomic DNA
US6808633B1 (en) 1999-06-23 2004-10-26 Hitachi, Ltd. Centrifugal separator and sample preparation device using the separator
US6872529B2 (en) 2001-07-25 2005-03-29 Affymetrix, Inc. Complexity management of genomic DNA
US7297778B2 (en) 2001-07-25 2007-11-20 Affymetrix, Inc. Complexity management of genomic DNA
US9388459B2 (en) 2002-06-17 2016-07-12 Affymetrix, Inc. Methods for genotyping
ES2387878T3 (es) 2005-06-23 2012-10-03 Keygene N.V. Estrategias para la identificación de alto rendimiento y la detección de polimorfismos
WO2007037678A2 (en) 2005-09-29 2007-04-05 Keygene N.V. High throughput screening of mutagenized populations
US10316364B2 (en) 2005-09-29 2019-06-11 Keygene N.V. Method for identifying the source of an amplicon
US11306351B2 (en) 2005-12-21 2022-04-19 Affymetrix, Inc. Methods for genotyping
EP2789696B1 (en) 2005-12-22 2015-12-16 Keygene N.V. Method for high-throughput AFLP-based polymorphism detection
JP5389638B2 (ja) 2006-04-04 2014-01-15 キージーン ナムローゼ フェンノートシャップ 制限断片に基づく分子マーカーのハイスループットな検出
US9388457B2 (en) 2007-09-14 2016-07-12 Affymetrix, Inc. Locus specific amplification using array probes
US9074244B2 (en) 2008-03-11 2015-07-07 Affymetrix, Inc. Array-based translocation and rearrangement assays

Family Cites Families (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US4683202A (en) * 1985-03-28 1987-07-28 Cetus Corporation Process for amplifying nucleic acid sequences
AU5404890A (en) * 1989-02-14 1990-09-05 Biogen, Inc. Oligonucleotide primer pairs for sequence independent gene amplification and methods which employ them

Also Published As

Publication number Publication date
EP0456721A1 (en) 1991-11-21
JPH04504356A (ja) 1992-08-06
WO1990008821A1 (en) 1990-08-09
EP0456721A4 (en) 1992-06-03

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JPH1042879A (ja) 染色体特異性標識プローブ/その調製方法/その用途
Peterson et al. Characterization of two Xenopus somatic 5S DNAs and one minor oocyte-specific 5S DNA
Saunders et al. PCR amplification of DNA microdissected from a single polytene chromosome band: a comparison with conventional microcloning
EP0738779B1 (en) Direct cloning of PCR amplified nucleic acids
US6159713A (en) Methods for producing probes capable of distinguishing DNA from related sources
JP3251291B2 (ja) ヌクレオチド配列集団の分類方法
EP0593095B1 (en) Genomic cloning and mapping
US20190106738A1 (en) Dna amplification method
US20100184152A1 (en) Target-oriented whole genome amplification of nucleic acids
JPH09511149A (ja) Pcrの過程でdna断片の増幅を抑制する方法
HUT53944A (en) Process serving for the amplification of nucleotide sequences and diagnostic set
JP2002525078A (ja) 人工的長末端反復配列
US11041192B2 (en) Method for amplifying DNA
WO1989001526A1 (en) Coincidence cloning method and library
Gratias et al. Processing of double-strand breaks is involved in the precise excision of paramecium internal eliminated sequences
US6461814B1 (en) Method of identifying gene transcription patterns
JPH0527400B2 (ja)
KR20230051508A (ko) 핵산의 서열-특이적 표적화된 전위 및 선택과 분류
JP4446746B2 (ja) ポリヌクレオチドの並行配列決定のための一定長シグネチャー
Hirota et al. Microdissection of human chromosomal regions 8q23. 3–q24. 11 and 2q33-qter: construction of DNA libraries and isolation of their clones
WO1990001064A1 (en) Sequence-specific amplification techniques
Kandpal et al. Selective enrichment of a large size genomic DNA fragment by affinity capture: an approach for genome mapping
JPH08228796A (ja) 染色体特異性標識プローブ/その調製方法/その用途
US20030180775A1 (en) Filtered shotgun sequencing of complex eukaryotic genomes
EP0545459A1 (en) Amplification of flow-sorted chromosomal DNA