JPH10324976A - 耐食性部材の製造方法及び耐食性コーティング材料 - Google Patents

耐食性部材の製造方法及び耐食性コーティング材料

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JPH10324976A
JPH10324976A JP9136735A JP13673597A JPH10324976A JP H10324976 A JPH10324976 A JP H10324976A JP 9136735 A JP9136735 A JP 9136735A JP 13673597 A JP13673597 A JP 13673597A JP H10324976 A JPH10324976 A JP H10324976A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 水蒸気酸化雰囲気あるいは硫酸腐食雰囲気下
で優れた耐食性を有し、緻密で基材との密着性が良好な
コーティング層を形成させた耐食性部材の製造方法、そ
のためのコーティング材料及びその原料粉末を提供する
こと。 【解決手段】 金属部材の表面に、耐食性合金相当の成
分に加えてBを含有する低融点のアモルファス粉末をバ
インダ及び有機溶剤と混合してスラリ化した耐食性コー
ティング材料の被覆層を形成させ、金属部材の融点以下
でアモルファス粉末の融点以上の温度に加熱して溶融処
理を行うことによって緻密な耐食性コーティング層を形
成させることを特徴とする耐食性部材の製造方法及びそ
のための原材料。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は事業用ボイラ、産業
用ボイラ、石炭ガス化炉などにおいて、耐水蒸気酸化性
及び耐硫酸腐食性などの耐食性が要求される部位に好適
に使用できる安価な耐食性部材の製造方法、部材表面に
耐食性を付与するコーティング材料及び該コーティング
材料の原料となるアモルファス粉末に関する。
【0002】
【従来の技術】事業用ボイラ、産業用ボイラ、石炭ガス
化炉などにおいては、水蒸気酸化及び露点による硫酸腐
食などに晒される部位が多く、従来は高Crのステンレ
ス鋼又はNi基の耐食合金が大量に用いられてきた。し
かしながら、これらの材料はCr、Ni、Moなどの稀
少金属を大量に含むため素材コストが高価であり、これ
らの材料を使用した装置自身の価格も必然的に高価なも
のになっていた。しかしながら近年、産業上及び環境上
の必要性から、より安価な電力の供給が要求されてお
り、これを実現するためには設備費の低減が要望される
ようになってきた。このような観点から前記のような高
級材料に代わり、より安価な材料の耐食用途への実用化
が要望されている。安価な材料の代表的なものとしては
炭素鋼などがあげられるが、これらの安価な材料の耐食
性は、前記のような耐水蒸気酸化性及び耐硫酸腐食性な
どの耐食性が要求される部位に使用するには不十分であ
り、そのままの状態で使用することはできない。そこ
で、最も現実的な対策としては前記のような安価な材料
を基材とし、耐食性が必要な表面(パイプの場合では外
面及び内面)にのみ耐食材料をコーティングする手法が
考えられる。この場合、必要な高級素材量は、従来のこ
れらの素材を用いて一体に形成されたものに比べはるか
に少なくなるため、原理的には素材コストは大幅に低減
することが期待できるが、これを実現するためのキー技
術は緻密なコーティング膜を形成するコーティング技術
とコーティング材料である。また、この場合コスト低減
が目的であるため、コーティング施工法としては高効率
で安価なものが必要である。
【0003】従来、耐食性を有する材料を基材の表面に
コーティングする技術としては、肉盛り溶接、溶射及び
クロマイズ処理などがあった。これらは、いずれも次に
示すような問題があり、局部的な小領域での使用はなさ
れてきたが、大面積の素材全体に耐食性を付与するとい
う前記のような要望に答えることはできなかった。 肉盛り溶接:コーティング速度が遅く、大面積のコー
ティングを行えば施工費用が高くなるため、高級素材の
一体材と大差なくなる。また、肉盛り溶接装置が大きい
ためパイプの内面などは施工困難である。 溶射:肉盛り溶接よりはコーティング速度は早いが、
まだ不十分である。また、溶射ままではコーティング層
はポーラスであるため、耐食性は不十分である。さら
に、肉盛り溶接と同様に装置が大きいため、パイプの内
面などは施工困難である。 クロマイズ:Crなどを含む粉末中に素材を埋め込ん
で、高温に加熱することによって基材表面にCrを拡散
させ、表面Cr濃度を増加させる手法である。パイプ内
面などにも施工可能であるが、大面積になると非常に多
量の粉末が必要になるため、コーティングのコストは増
加する。また、Crの増加だけでは硫酸腐食に対しては
耐食性が不十分であり、適用用途も限られている。この
ように、従来の技術では大面積の部材全体に適用可能
な、安価で種々の環境での耐食性が良好なコーティング
を施すことは困難であり、高価素材の一体材を使用せざ
るを得ず、このため各種ボイラ、石炭ガス化炉、発電機
などの設備費用の高騰を招いていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明はこのような従
来技術の問題を解決し、事業用ボイラ、産業用ボイラ、
石炭ガス化炉などにおける水蒸気酸化雰囲気あるいは硫
酸腐食雰囲気下でも使用可能な優れた耐食性を有し、緻
密で基材との密着性が良好で、しかも大面積部材やパイ
プ内面などの施工が難しい部位にも適用できるコーティ
ング層を形成させた耐食性部材の製造方法、該コーティ
ング層形成のためのコーティング材料及び該コーティン
グ材料の原料粉末を提供しようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、基材とし
て安価な鋼材(炭素鋼、低合金鋼など)を前提として鋭
意検討を進め、耐食性合金相当の成分に加えてBを含有
するコーティング材料を使用することにより前記課題を
解決できることを見出し、本発明を完成した。すなわ
ち、本発明は前記課題を解決する手段として次の(1)
〜(4)の構成を採るものである。
【0006】(1)金属部材の表面に、耐食性合金相当
の成分に加えてBを含有する低融点のアモルファス粉末
をバインダ及び有機溶剤と混合してスラリ化した耐食性
コーティング材料の被覆層を形成させ、金属部材の融点
以下でアモルファス粉末の融点以上の温度に加熱して溶
融処理を行うことによって緻密な耐食性コーティング層
を形成させることを特徴とする耐食性部材の製造方法。
【0007】(2)耐食性合金相当の成分に加えて2〜
4重量%のBを含有する低融点のアモルファス粉末をバ
インダ及び有機溶剤と混合してスラリ化してなることを
特徴とする耐食性コーティング材料。
【0008】(3)5〜30重量%のCrと2〜4重量
%のBを含有し、残部がFeと不可避的不純物からなる
ことを特徴とする耐水蒸気酸化性の耐食性コーティング
材料の原料となるアモルファス粉末。 (4)5〜20重量%のMoと2〜4重量%のBを含有
し、残部がNi及びCrと不可避的不純物からなること
を特徴とする耐硫酸腐食性の耐食性コーティング材料の
原料となるアモルファス粉末。
【0009】本発明においては、耐食性コーティング層
を形成させるコーティング材料として、用途に応じて必
要な耐食性が発現できる耐食性合金相当の成分をベース
とし、これにB(ホウ素)を含有させることによって低
融点化したアモルファス粉末を原料としたものを使用す
る。このアモルファス粉末を金属部材(基材)表面に固
着させた後、表面温度を基材の融点以下、かつアモルフ
ァス粉末の融点以上に加熱するとアモルファス粉末のみ
が溶融して基材表面に広がり、基材との密着性が良好で
しかも緻密なコーティング層が得られる。この場合、基
材表面にアモルファス粉末を保持させる手法が必要であ
る。対象部材の形状は多岐にわたり、コーティング層形
成面が垂直あるいは下向きの場合もあることから、単に
粉末を置いただけでは保持できず、何らかの方法で固着
させる必要がある。この固着は溶射などによっても可能
であるが、前述のように溶射ではコーティング速度が遅
く、また、パイプ内面などへの適用は困難である。
【0010】したがって、従来にない全く新しい手法が
必要であり、本発明ではアモルファス粉末をバインダ及
び有機溶剤でスラリ化したコーティング材料を使用して
基材表面に被覆する手法を採用した。スラリは液体状で
あるため基材表面への被覆層の形成は容易であり、例え
ば、刷毛あるいはスプレーなどにより塗布することがで
きる。また、スラリを満たした容器中に対象部材を浸漬
することによってパイプ内面などにも容易に、しかも高
効率に塗布することができる。スラリ被覆層には必要な
アモルファス粉末原料以外にも、スラリ化するために用
いたバインダ、及び有機溶剤が残留しているため、これ
らを取り除く必要があるが、これは以下のように行えば
よい。
【0011】有機溶剤の蒸発温度は通常、室温以下であ
るため、一晩程度放置するなどの方法により乾燥させる
と有機溶剤が蒸発して消失する。その後、アモルファス
粉末の融点以下でバインダの蒸発温度以上の高温(60
0〜900℃)に保持するとバインダが蒸発し、アモル
ファス粉末のみが基材表面に残ることとなる。なお、単
にアモルファス粉末を基材表面に載せた場合と異なり、
この場合はアモルファス粉末にとって融点以下とはいえ
比較的高温に保持されているため、アモルファス粉末間
及び粉末と基材の間には緩い固着が生じることになり、
垂直あるいは下向き面でもアモルファス粉末は落下せず
保持されることとなる。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の態様を作用
とともに詳述する。本発明(1)及び(2)に係る安価
な耐食性部材及び耐食性コーティング材料は以下のよう
にして得ることができる。先ず用途に応じ必要な耐食性
を有する合金組成に加えて、必要量のBを含有するアモ
ルファス粉末を作製する。アモルファス粉末の作製方法
としては、例えば、前記合金組成の原料に必要量のBを
添加し、高周波溶解などによって母合金を作製し、次に
ガスアトマイズ装置を用いて母合金を溶解後、粉末に急
冷することによって、Bが均質に固溶したアモルファス
粉末を得ることができる。
【0013】Bはコーティング材料の融点を低下させ、
原料製造時にアモルファス化を可能とすると同時に、コ
ーティング時においては基材は固相のままでコーティン
グ層のみの溶融を可能とする元素である。Bの添加量は
耐食性を有する合金組成などにより異なるが、通常はア
モルファス粉末中でのBの割合が2〜4重量%程度が好
ましい。B濃度が4重量%を超える量では融点が上昇す
るため、アモルファス粉末の製造が困難となると同時
に、コーティング時の加熱温度が高くなり、基材の特性
劣化のおそれがあるため望ましくない。また、B濃度が
2重量%未満では、Bの添加効果が認められず、同様に
融点が上昇するため望ましくない。
【0014】作製したアモルファス粉末に対しバインダ
及び有機溶剤を加え、混合することによってスラリ化
し、コーティング材料とする。バインダとしてはエチレ
ンビニルアセテート樹脂(EVA樹脂)、ポリスチレ
ン、ポリブチルメタクリレートなどの高分子系バイン
ダ、メタクリル酸エステルなどのアクリル酸系バインダ
などが例示できるが、真空中やArなどの不活性ガス雰
囲気中などでの加熱蒸発処理の際に蒸発しやすいことか
らメタクリル酸ブチルなどのメタクリル酸エステル系バ
インダが特に好適である。また、有機溶剤としてはメタ
ノール、エタノール、ブタノールなどのアルコール系溶
剤、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤などが例示
できるが、バインダとの相性などからトルエン又はブタ
ノールが特に好適である。
【0015】なお、これらの配合比はコーティングを施
す基材の形状やサイズ、アモルファス粉末の種類、施工
条件などによって適宜定めればよいが、一般的には、バ
インダの使用量はアモルファス粉末1重量部に対し0.
1〜0.3重量部程度とするのが好ましい。使用量が
0.1重量部未満ではスラリの流動性が不十分であり、
0.3重量部を超えると加熱時においても蒸発が遅くな
る傾向がある。また、有機溶剤の使用量はアモルファス
粉末1重量部に対し0.05〜0.2重量部程度とする
のが好ましい。使用量が0.05重量部未満ではスラリ
の流動性が不十分であり、0.2重量部を超えるとスラ
リ中の原料密度が小さくなり、緻密なコーティング層を
形成しにくくなるので好ましくない。
【0016】このようにして得たスラリ(コーティング
材料)を用いて基材表面に被覆層を形成させる。被覆層
の形成方法としては、例えば刷毛、スプレーなどで基材
表面に塗布する方法が一般的である。なお、管の内面に
施工する場合、大径管ではこれらの手法も適用可能であ
るが、小径管の場合、これらの手法を適用するためには
特別の小型装置が必要となる。したがって、小径管の内
面や複雑な形状の部材に施工する場合には、塗布でなく
スラリを満たした容器の中に漬ける方法の方がコーティ
ング法としてより容易である。被覆層の厚みは100〜
1000μm(最終的な耐食性コーティング層の段階で
50〜600μm)とする。被覆層の厚みが100μm
未満ではコーティング層の厚みが薄くなり、耐食性を維
持できる時間が短くなるため望ましくない。また、10
00μmを超えると原料費が高くなるため望ましくな
い。
【0017】スラリ塗布後、一晩程度大気中で放置する
などの方法によって、被覆層中の有機溶剤成分を蒸発さ
せ、被覆層をアモルファス粉末とバインダのみとする。
次に600〜900℃で5〜15分間程度加熱すること
によってバインダを蒸発させる。加熱温度が600℃未
満ではバインダの蒸発が遅く、900℃を超えると原料
粉末とバインダ成分との反応が生じたり、酸化、炭化等
の劣化が生じる恐れがあるので好ましくない。なお、こ
のバインダ成分の加熱蒸発処理は真空中あるいはArな
どの不活性ガス雰囲気中で行うのが好ましい。バインダ
蒸発後はアモルファス原料粉末のみが残るが、このバイ
ンダ蒸発のための加熱によって粉末どうし及び基材と粉
末との間でわずかな固着が生じるため、アモルファス粉
末は落下することなく、基材に固着した状態になる。
【0018】次に、基材表面を基材の融点以下、アモル
ファス粉末の融点以上の温度に加熱することによって、
アモルファス粉末のみを溶融させる溶融処理を行う。こ
こで加熱温度、所要加熱時間は使用したアモルファス粉
末原料の種類により異なるが、通常は1100〜130
0℃の温度で1〜10分間程度の処理で十分である。こ
の場合、あまり温度を上げすぎると、基材の性質が劣化
するため、加熱は必要最小限の温度に止める必要があ
る。また、加熱の際の酸化を防止するために、局所的に
Arガスなどの不活性ガス雰囲気として加熱することが
望ましい。加熱温度の例としては、例えば本発明(3)
のアモルファス粉末を使用する場合は1250℃以上
に、また、本発明(4)のアモルファス粉末を使用する
場合は1200℃以上に加熱すれば粉末は溶融する。
【0019】加熱溶融処理の工程において、アモルファ
ス粉末の融点以上で基材の融点以下の温度に保持すると
アモルファス粉末のみが溶融し、コーティング材料の被
覆層を形成させた基材の表面は全て液相で覆われること
になる。その後、等温で保持するとBが固液拡散によっ
て基材の表面から基材内部に拡散していく。そして最後
に室温まで冷却するとすべて固相の部材(本発明に係る
耐食性部材)が得られる。
【0020】このプロセスではいったん液相を経るた
め、最終的に固相となるコーティング層は隙間がなく緻
密である。また、基材とコーティング層とはBの拡散に
よって原子レベルでの融合が生じるため密着性は非常に
良好となる。他の合金成分の拡散速度はBに比べると圧
倒的に遅いため、基材へはほとんど拡散しない。したが
って、加熱溶融処理後のコーティング層の組成は原料組
成からBのみが減少した組成となる。なお、コーティン
グ層内のBの残存量は加熱温度と加熱保持する時間によ
ってきまり、1100℃においても約5分間以上保持す
ると、Bのほとんどは基材中に拡散し、コーティング層
には残らないこととなる。
【0021】本発明(3)及び(4)に係るアモルファ
ス粉末は、前記発明(1)で使用するコーティング材料
あるいは発明(2)のコーティング材料の原料として好
適なものである。本発明(3)のアモルファス粉末は、
事業用ボイラなどのパイプ内面などで耐水蒸気酸化性が
要求される部材に適用するのに特に適している。このア
モルファス粉末は5〜30重量%のCrと2〜4重量%
のBを含有し、残部がFeと不可避的不純物からなるこ
とを特徴とする。このアモルファス粉末において、Cr
は耐水蒸気酸化性を向上させる元素である。Crの含有
量が5重量%未満では添加効果が認められず、また、3
0重量%を超えると高温で長時間使用時にσ相と呼ばれ
る脆化相が生成し、コーティング層自身が脆化するおそ
れがある。この場合、用途によっては使用中に熱応力な
どが負荷されるため、コーティング層に割れなどが発生
し、耐食性の低い母材が直接耐食雰囲気に晒されるよう
になるので好ましくない。なお、Bの含有量範囲の設定
理由については前記のとおりである。
【0022】本発明(4)のアモルファス粉末は、産業
用ボイラ、石炭ガス化炉などの熱交換器、脱硫装置など
で露点による耐硫酸腐食性が要求される部材に適用する
のに特に適している。このアモルファス粉末は5〜20
重量%のMoと2〜4重量%のBを含有し、残部がNi
及びCrと不可避的不純物からなることを特徴とする。
このアモルファス粉末において、Moは耐硫酸腐食性を
向上させる元素である。Moの含有量が5重量%未満で
は添加効果がない。また、20重量%を超えると高温で
長時間使用時にラーベス相と呼ばれる脆化相が生成し、
コーティング層自身が脆化するため、前記σ相が生成す
る場合と同じ理由で耐食性が低下するため望ましくな
い。なお、Bの含有量範囲の設定理由については前記の
とおりである。
【0023】
【実施例】以下、実施例により本発明をさらに具体的に
説明する。 (実施例1)実施例1は耐水蒸気酸化性の良好な、安価
な耐食性部材の製造方法に関する例である。種々の組成
のFe、Cr及びBを含有する合金を高周波溶解によっ
て溶解し、母合金を作製した。次にガスアトマイズ装置
を用い、溶融状態から急冷することによってアモルファ
ス合金粉末を作製した。このアモルファス粉末の平均粒
径を100μm程度に分級した後、アモルファス粉末1
000g、バインダとしてのメタクリル酸ブチル200
g、トルエン200g、ブタノール20gを混合するこ
とによってスラリ状のコーティング材料を作製した。
【0024】次にこのコーティング材料を満たした槽中
に外径50.8mm、板厚6.8mm、長さ300mm
のSTB410チューブを漬けることによってチューブ
内面に被覆層を形成させた。なお、チューブは酸洗処理
によって内表面を洗浄したものを使用した。一晩放置し
て有機溶剤を蒸発させた後、均熱帯幅50mmの高周波
加熱装置によってチューブの内面の温度を800℃に上
げ、10分間保持することによってバインダを蒸発させ
た。次に引き続き同じ装置で1250℃に加熱後6分間
保持することによって、アモルファス粉末の溶融処理を
行った。その後、室温まで冷却し、STB410チュー
ブの内面に厚さ200μmの耐食性コーティング層を形
成させた本発明の耐食性部材を得た。得られた耐食性部
材を試験材として耐食性評価試験を行った。
【0025】耐食性コーティング層の耐食性評価試験と
して、チューブの内部に水蒸気を循環させる水蒸気酸化
試験を行った。酸化条件は625℃で200時間保持し
た後、室温に冷却する工程の10サイクル繰り返しであ
り、内面コーティング部(約50mm幅)における減肉
深さの測定によって、耐水蒸気酸化性の比較を行った。
なお、この場合、コーティング部以外(基材が露出して
いるところ)の減肉深さの平均は420μmであった。
検討したアモルファス粉末の組成及び耐水蒸気酸化性評
価結果をまとめて表1に示す。
【0026】
【表1】
【0027】試験材1はB添加量が1.5重量%と本発
明範囲以下のものである。B量が少ないためアモルファ
ス粉末の融点が高くなり、1250℃加熱では完全に液
相にならず、加熱処理後もコーティング層に欠陥が残っ
た。その結果、耐食性の低い母材が水蒸気に晒されるこ
ととなり、減肉深さが大きくなった。試験材2〜4は本
発明のアモルファス粉末を使用したものである。アモル
ファス粉末の融点は十分低くなったため、1250℃加
熱で完全に液相になった。その結果、緻密なコーティン
グ層が得られた。また、Cr量は適当なためコーティン
グ層の耐水蒸気酸化性は良好で、減肉深さは小さくなっ
た。
【0028】試験材5はB添加量が4.3重量%と本発
明範囲を超えるものである。B量が多いため1250℃
加熱では完全に液相にならず、加熱処理後もコーティン
グ層に欠陥が残った。その結果、耐食性の低い母材が水
蒸気に晒されることとなり、減肉深さが大きくなった。
試験材6はCr添加量が3重量%と本発明範囲以下のも
のである。Cr量が少ないためコーティング層自身の耐
水蒸気酸化性が低くなり、減肉深さが大きくなった。
【0029】試験材7〜9は本発明のアモルファス粉末
を使用したものである。耐水蒸気酸化性の良好な緻密な
コーティング層が得られたため、減肉深さは小さくなっ
た。試験材10はCr添加量が33重量%と本発明範囲
を超えるものである。Cr量が多いため水蒸気酸化試験
中に脆いσ相が生成し、コーティング相を脆化させた。
水蒸気酸化試験は高温と室温を繰り返すサイクル試験で
行ったため、その過程での熱応力によってσ相の生成に
よって脆くなったコーティング層が破壊し、耐食性の低
い母材が水蒸気に晒されることとなり、減肉深さが大き
くなった。
【0030】(実施例2)実施例2は耐硫酸腐食性の良
好な、安価な耐食性部材の製造方法に関する例である。
Ni−Crをベースに種々の組成のMo及びBを含有す
る合金を高周波溶解によって溶解し、母合金を作製し
た。次にガスアトマイズ装置を用い、溶融状態から急冷
することによってアモルファス合金粉末を作製した。こ
のアモルファス粉末の平均粒径を100μm程度に分級
した後、アモルファス粉末120g、バインダとしての
メタクリル酸ブチル25g、トルエン9g、ブタノール
1gを混合することによってスラリ状のコーティング材
料を作製した。
【0031】基材は外径50.8mm、板厚6.8m
m、長さ300mmのSTB410チューブであり、酸
洗によって外表面を洗浄した後、外面に刷毛塗りでスラ
リ状のコーティング材料を塗布した。一晩放置して有機
溶剤を蒸発させた後、均熱帯幅50mmの高周波加熱装
置によってチューブ外面の温度を800℃に上げ、10
分間保持することによってバインダを蒸発させた。次に
引き続き同じ装置で1200℃に加熱後6分間保持する
ことによって、アモルファス粉末の溶融処理を行った。
その後、室温まで冷却し、STB410チューブの外面
に厚さ200μmの耐食性コーティング層を形成させた
本発明の耐食性部材を得た。さらに実機での長時間使用
状況を模擬するため、700℃で100時間保持した
後、室温に冷却する工程を10サイクル繰り返す時効処
理を施した後、耐食性評価試験を行った。
【0032】耐食性コーティング層の耐食性評価試験と
して、コーティング部から試験片を切り出し、硫酸中に
浸漬する硫酸腐食試験を行った。硫酸濃度は50重量%
であり、50℃で24時間浸漬後の重量減によって耐食
性を比較した。なお、試験片のコーティング面以外は樹
脂でマスキングすることによって腐食を完全に防止し
た。検討したアモルファス粉末の組成及び耐硫酸腐食性
評価結果をまとめて表2に示す。
【0033】
【表2】
【0034】試験材11はB添加量が1.5重量%と本
発明範囲以下のものである。B量が少ないためコーティ
ング材料の融点が高くなり、1200℃加熱では完全に
液相にならず、加熱処理後もコーティング層に欠陥が残
った。その結果、耐食性の低い母材が硫酸に晒されるこ
ととなり、重量減が大きくなった。試験材12、13は
本発明のアモルファス粉末を使用したものである。B量
が適当なためアモルファス粉末の融点は十分低くなり、
1200℃加熱で完全に液相になった。その結果、緻密
なコーティング層が得られた。また、Mo量も適当であ
るためコーティング層の耐硫酸腐食性は良好で、重量減
は小さくなった。
【0035】試験材14はB添加量が4.4重量%と本
発明範囲を超えるものである。B量が多いため1200
℃の加熱では完全に液相にならず、加熱処理後もコーテ
ィング層に欠陥が残った。その結果、耐食性の低い母材
が硫酸に晒されることとなり、重量減が大きくなった。
試験材15はMo添加量が3重量%と本発明範囲以下の
ものである。Mo量が少ないためコーティング層自身の
耐硫酸腐食性が低くなり、重量減は大きくなった。
【0036】試験材16、17は本発明のアモルファス
粉末を使用したものである。耐硫酸腐食性の良好な緻密
なコーティング層が得られたため、重量減は小さくなっ
た。試験材18はMo添加量が23重量%と本発明範囲
を超えるものである。Mo量が多いため700℃の時効
処理中に脆いラーベス相が生成し、コーティング層を脆
化させた。時効処理は高温と室温を繰り返すサイクルで
行ったため、その過程での熱応力によってラーベス相の
生成によって脆くなったコーティング層が破壊し、耐食
性の低い母材が硫酸に晒されることとなり、重量減が大
きくなった。
【0037】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明の方法によ
れば事業用ボイラ、産業用ボイラ、石炭ガス化炉などに
おける水蒸気酸化雰囲気あるいは硫酸腐食雰囲気下で使
用可能な優れた耐食性を有し、緻密で基材との密着性が
良好で、しかも大面積部材やパイプ内面などの施工が難
しい部位にも適用できるコーティング層を形成させた耐
食性部材を製造することができる。また、本発明のコー
ティング材料は前記耐食性部材の製造に好適なものであ
り、さらに本発明のアモルファス粉末は前記コーティン
グ材料の原料粉末として優れた特性を有するものであ
る。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属部材の表面に、耐食性合金相当の成
    分に加えてBを含有する低融点のアモルファス粉末をバ
    インダ及び有機溶剤と混合してスラリ化した耐食性コー
    ティング材料の被覆層を形成させ、金属部材の融点以下
    でアモルファス粉末の融点以上の温度に加熱して溶融処
    理を行うことによって緻密な耐食性コーティング層を形
    成させることを特徴とする耐食性部材の製造方法。
  2. 【請求項2】 耐食性合金相当の成分に加えて2〜4重
    量%のBを含有する低融点のアモルファス粉末をバイン
    ダ及び有機溶剤と混合してスラリ化してなることを特徴
    とする耐食性コーティング材料。
  3. 【請求項3】 5〜30重量%のCrと2〜4重量%の
    Bを含有し、残部がFeと不可避的不純物からなること
    を特徴とする耐水蒸気酸化性の耐食性コーティング材料
    の原料となるアモルファス粉末。
  4. 【請求項4】 5〜20重量%のMoと2〜4重量%の
    Bを含有し、残部がNi及びCrと不可避的不純物から
    なることを特徴とする耐硫酸腐食性の耐食性コーティン
    グ材料の原料となるアモルファス粉末。
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