JPH10307809A - 物理量の予測方法 - Google Patents

物理量の予測方法

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JPH10307809A
JPH10307809A JP11955797A JP11955797A JPH10307809A JP H10307809 A JPH10307809 A JP H10307809A JP 11955797 A JP11955797 A JP 11955797A JP 11955797 A JP11955797 A JP 11955797A JP H10307809 A JPH10307809 A JP H10307809A
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matrix
physical quantity
order
series
equation
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JP11955797A
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Mamoru Kondo
衛 近藤
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JFE Engineering Corp
Original Assignee
NKK Corp
Nippon Kokan Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 多変量級数を用いて装置に対する入力行列と
出力行列との関係を係数行列を用いて設定した場合にお
いて、この多変量級数の係数行列から出力を簡単に導き
出する。 【解決手段】 多変量級数の各係数行列を算出すること
によって、出力行列からなる物理量を求める物理量の予
測方法において、軸対称性を有する多変量級数の5次式
による各単位装置の特性を示す複数の変換行列を合成す
る処理工程で、多変量級数の係数行列から、3次部分及
び5次部分の小行列を作り、これらの小行列の行列積を
作って合成を行う。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、それぞれ伝達特性
を有した複数の単位装置からなる装置の一方側から物理
量を入力して、他方側から出力される物理量を求める物
理量の予測方法に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば、複数の光学素子が組込まれた光
学装置における光線追跡を計算したり、電磁気、流体、
構造解析等において、一方から入力され物理量に対して
他方から出力される物理量との関係を、該当物理量の形
状、空間位置、時間位置等の関係で効率的に求める必要
が生じる場合が多い。
【0003】すなわち、一つの装置の入力と出力が一定
の関係にある時、この一定の関係をその装置の「特性」
という。2つの装置にそれぞれ入力と出力がある時、第
1の装置の出力を第2の装置の入力とすると、2つの装
置を合成した一つの装置になる。第1の装置の入力が第
1と第2の装置を通って来る、第2の装置の出力が、合
成装置の出力である。
【0004】図4は光学装置の光線追跡の例を説明する
図である。
【0005】この光学装置においては、例えば軸対称性
を有する2枚のレンズLN1,LN2があり、それぞれのレ
ンズLN1,LN2の結像特性が既知の時、この2枚のレン
ズLN1,LN2を組合わせた時の結像特性を知りたいとす
る。単純な拡大・倍率は容易に得られるが、非線形特性
のあるレンズの収差を知るのは容易ではない。
【0006】このレンズの例では、入力は入射光線の位
置座標と方向(傾き)を表す4個の変数で表される。出
力も4個の変数で表される。結像特性が単純な拡大・縮
小や回転の場合には、入力と出力の関係は1次式で表さ
れる。この時の特性は線形であるという。一方、線形で
ない時は、非線形といい、線形から外れた差分を収差と
いう。入力と出力の関係が非線形の時、その特性は入力
変数の多変量級数で表すことができる。
【0007】多変量級数とは変数の加減乗算を用いて表
される級数である。上述した4個の変数の例は煩雑であ
るので3個の変数で示すと、x,y,zの3変数の多変
量級数は次に示される。
【0008】すなわち、入力変数をx,y,zとし出力
変数をx1 ,y1 ,z1 とすると、
【数1】
【0009】ここでa11,b11は定数係数である。上記
で記号aが付加された項は1次項、bが付加された項は
2次項である。2次項はx,y,zの合計次数が2次で
あることを意味する。以下3次項、4次項と続くが、こ
の例では省略されている。
【0010】この式(1) で示す多変量級数の項の数をN
で表わす。この例では3次以上を省略するので、式(1)
の各式の項数はN =9である。
【0011】この式(1) の多変量級数はベクトル及び行
列の記号で示すと下式になる。
【0012】
【数2】
【0013】X1a,X0a,X0b,X0cは次のようなベク
トルである。すなわち、X1aは出力ベクトル、X0aは入
力ベクトル、X0b,X0cは入力の2次部分および3次部
分ベクトルである。添字a,b,cはそれぞれ1次,2
次,3次部分を表わす。
【0014】2次部分ベクトルX0bはx,y.zの3個
から(重複を許して)2個を選ぶすべての組み合わせの
項からなる。3次部分ベクトルX0cは3個から3個を選
ぶ組み合わせの項からなる。よって、各ベクトルX1a
0a,X0b,X0cは下記のように表示できる。
【0015】
【数3】
【0016】また、式(2) における各係数行列L1aa
1ab ,L1ac は次のような行列である。すなわち、L
1aa は特性の1次部分であり、L1ab は収差の2次部分
であり、さらに、L1ac は収差の3次部分である。ま
た、添字a,bは1次部分のベクトルと2次部分のベク
トルとを関係付ける行列であることを示す。
【0017】以下本明細書では、スカラー量はa,b,c,i,
j,k,m,n 等の半角文字を使用して表示し、ベクトル量は
X,Y,q等の全角文字を使用して表示し、行列はL,
T等の全角文字を使用して表示する。
【0018】
【数4】
【0019】式(2) において右辺第1項[L1aa 0a
は出力の1次部分、すなわち線形部分であり、右辺第2
項以下は収差である。すなわち、右辺第2項[L1ab
0b]は2次収差で、左辺第3項[L1ac 0c]は3次収
差である。
【0020】すなわち、m 個の装置についての下記に示
す各係数行列 Lkaa ,Lkab ,Lkac ,… (k =1,2,…,m) が既知の場合、これらm 個の装置を合成して得られる装
置の各係数行列の特性を求めればよい。
【0021】次に、図4に示す2枚の軸対称のレンズL
N1,LN2からなる光学装置の任意の入射光に対する出射
光の関係、すなわち、前述した各係数行列の特性から光
学装置全体の特性を求める従来から公知の一般的手法を
説明する。
【0022】図4において、レンズLN1に光線ABが入
射しB、Cで屈折し、CDがレンズLN1の出力光線であ
る。この光線ABは次のレンズLN2の入力光線となり
E,F点で屈折する。そして、FGがこの光学装置全体
の出力光線となる。
【0023】前段のレンズLN1について、入力点Aの座
標を(x0 ,y0 ,z0 )とし、出力点Dの座標を(x
1 ,y1 ,z1 )とする。さらに、z=z0 の平面を入
力面とし、z=z1 の平面を出力面とすると、入力光線
ABの傾きu0 .v0 は下記のように示される。
【0024】u0 =dx/dz,v0 =dy/dz 同様に、出力光線CDの傾きu1 .v1 は下記のように
示される。
【0025】u1 =dx/dz,v1 =dy/dz 例えば、前段に位置する第1のレンズLN1が球面レンズ
とし、その形、寸法、ガラスの屈折率を既知量とすれ
ば、入力光線ABの位置x0 ,y0 及びその傾きu0
0 を与えると、出力光線CDの位置x1 ,y1 及びそ
の傾きu1 ,v1を計算して求めることができる。
【0026】後段に位置する第2のレンズLN2について
は、入力点はD点であるからその座標は(x1 ,y1
1 )である。また入力光線DEの傾きはu1 =dx/
dz,v1 =dy/dzである。これから第2のレンズ
2 の出力点z2 における出力光線FGの位置x2 ,y
2 及びその傾きu2 .v2 を計算して求めることができ
る。
【0027】以上のようにして、この光学装置の入力光
線ABに対して出力光線FGが如何に得られるかを予測
できれば、各レンズLN1,LN2の配置等を調節して所望
の特性を持つ光学系を設計することができる。
【0028】次に具体的算出手法を説明する。
【0029】(第1の方法)第1の方法においては、数
十乃至数百の入力光線を選んで、その1本ずつを計算す
る。計算方法は周知の幾何学の法則と屈折の法則を用い
て、四則演算と平方根の計算だけでできることが知られ
ている。電子計算機の発達で高速の計算が可能になった
ので、実用的で標準的な方法である。
【0030】しかし、方法としては原始的で、設計者に
とって見通しが悪い欠点があった。例えば、先に述べた
2個の光学系を合成する場合において、一つずつの系の
特性が既知であってもこれらの系をそのまま接続するこ
とは困難であった。
【0031】(第2の方法)第2の方法は多変量級数を
使用する方法である。簡単のためにxz平面内の量につ
いて説明すると、第1の方法を用いて入力光線をいくつ
か計算すると、それから入力と出力の関係式を求めるこ
とができる。それを第1のレンズLN1について例えば次
のように得られたものとする。
【0032】
【数5】
【0033】2つの特性の合成は式(7) を式(8) に代入
することにより得られる。
【0034】ここで、特性が線形の時は、2次の項は無
いので、b,c,g,h の文字のつく係数はすべて0である。
この時は2つの特性の合成した結果は2つの式の係数行
列の積になることは広く知られている。
【0035】
【数6】
【0036】しかし、問題は非線形の場合である。非線
形の時はb,g のつく文字が0ではないので、計算が非常
に複雑になる。上記の例では2次までしか示してない
が、実際には5次〜7次が必要で、しかも位置x,y及
び傾きu,vは多変量級数なので、非常に複雑になる。
これを解決するには系統的な工夫が必要で、単純に代入
する方法においては、2〜3次が実用的な限界である。
【0037】(第3の方法)この第3の方法は上記の複
雑な第2の方法を、電子計算機を使って実行するもので
ある。これは電子計算機の強力な計算能力により可能
で、その一例は下記文献1に報告されており、きわめて
有力な方法で、12次以上まで計算される。
【0038】 G.W.Forbes,"Automation of the manipulation of multivariate power series," J. Comput.Appl.Math. Vol.15,37-58(1986) この第3の方法の原理自体は簡単で、前述した式(8) は
1 とu1 の加減乗算のみを使っているので、式(7) の
級数の加減乗算を順次実行するのである。例えば、[x
1 1 ]を計算するには、式(7) の第1式と第2式の積
を計算し、無限級数となる所を目的の次数までで打ち切
って結果を得る。これにさらにx1 の級数をかければ
[x1 2 1 ]の級数を得る。このような方法を組織的
に実行する。
【0039】しかし、この第3の方法はプログラム作成
の労力が大きく、また電子計算機として大きな記憶容量
を必要とする欠点があった。
【0040】(第4の方法)この第4の方法は、本発明
者が考案した行列理論によるものである。(特許公開公
報 特開平01-220074(平成1 年9 月1 日) 素子構成の評
価方法 参照)この第4の方法においては、線形の場合
に合成特性が前述した式(9) の係数行列の積になること
を拡張して、レンズの非線形特性を含めた項数Nの変換
行列を使う方法である。
【0041】この第4の方法の基本的な理論及び3次近
似の軸対称系について具体的な計算方法の詳細は前記公
開公報および次の文献2に記載されている。
【0042】 M.Kondo and Y.Takeuchi, Matrix method for nonlinear transformation and its application to an optical lens system 米国光学会雑誌 Journal of Optical Society of America, A Vol.13, No. 1, p.71-89. 次のこの第4の方法(行列理論)を図5の流れ図の各工
程に従って説明する。なお、実際はx,y,u,vの4
変数の量についての合成を行うが、簡単のために、初め
は光線が図4に示したように、z平面内にある、x,u
の2変数の場合の2次近似について説明する。ここで、
変数の数をMとするとM=2、近似次数n=2、項数N
=5である。
【0043】図4の光学装置における各レンズLN1,L
N2の特性、すなわち、各レンズLN1,LN2の出力位置x
1 ,x2 と出力位置における傾きu1 ,u2 は、前述し
た式(7)(8)における3次以上を省略した式(10),(11)で
示す多変量級数で与えられているものとする。
【0044】
【数7】
【0045】
【数8】
【0046】とする。
【0047】そして、図5に示す流れ図のステップS1
において、式(16)〜(21)で示す多変量級数を定義する。
【0048】
【数9】
【0049】次に、図5に示す流れ図のステップS2に
おいて、この多変量級数から変換行列を作る。式(10)か
らできる第1のレンズLN1に対する変換行列L1 は次の
ようになる。また、図6に図5に示す流れ図のステップ
S1,S2の詳細処理を示す流れ図を示す。
【0050】図5の流れ図のステップS1又は図6の流
れ図のステップS21にて、前提として下記に示すm個
の多変量級数を定義する。
【0051】
【数10】
【0052】次に、図5のステップS3において、変換
行列の積を計算し、合成した変換行列を作る。k=2 か
らk=mまで順次計算すると合成した変換行列Tm が得
られる。
【0053】以下、近似次数n=2の場合を例にして、
合成変換行列Tm を求める詳細手順を説明する。変換行
列L1 は下記のように示される。
【0054】
【数11】
【0055】
【数12】
【0056】それぞれ、多変量級数の基底の1次部分、
2次部分であり、変数x0 、u0 の1次および2次のす
べての組み合わせの項からなる。
【0057】なお、光学系ではa1122−a1221=1
という関係があり、(ラグランジュ- ヘルムホルツの関
係という)、以下の数値例もこれを満たす。
【0058】多変量級数の項を並べる順序について注意
が必要である。例えば式(10) において2次の部分には
110 2 ,b120 0 ,b130 2 の3個の項があ
る。これを並べる順序は、どのようにしても計算は可能
であるが、この順序を変更すると行列の行と列の順序が
変わるので、一定の順序にする必要がある。この明細書
では、次数の低い項を先にするが、同じ次数の項は前の
方の変数の指数が大きい順に並べる。式(10)において
は、変数はx0 とu0 を用いるが、2次の項はx0 の指
数が大きい項を先に書く。
【0059】次に、図6の流れ図のステップS22にお
いて、式(16)のX0a,X0b.の添え字0を1に変えて、
ベクトルX1a,X1bを作る。
【0060】
【数13】
【0061】次に、図6のステップS23にて、X1b
式(20)に、式(16)のx1 ,u1 を入れて計算する。この
時、近似次数の2次を越える3次以上の項は、すべて無
視して0とする。すると下式が得られる。
【0062】
【数14】
【0063】ここで、部分行列L1ba は要素がすべて0
である。この部分行列L1ba のように、二つの添字b,
aのうち、前の添字(bは2次部分を表わす)が後の添
字(aは1次部分を表わす)より高次になる時は、その
部分行列は零行列である。すなわち、その要素はすべて
0である。
【0064】この図6のステップS23の処理は図5の
ステップS2の処理の主要な計算部分で、この工程を拡
張という。
【0065】式(14) の数値を代入した式(10)では次の
ようになる。
【0066】
【数15】
【0067】この図6のステップS23における拡張処
理は、変数の数Mや近似次数nが大きい場合には複雑に
なるが、後に説明する漸化式を使って計算することがで
きる。
【0068】次に、図6のステップS24にて、変換行
列L1 はサブマトリクスを組合わせて次のように作る。
【0069】
【数16】
【0070】
【数17】
【0071】
【数18】
【0072】この式(37)が第1のレンズLN1に対する多
変量級数の式(10)を変換行列L1 を使った形式に表わし
たものである。同様に、第2のレンズLN2に対する多変
量級数の式(11)を変換行列L2 を使った形式に表わすと
式(38)となる。
【0073】
【数19】
【0074】となる。T2 は変換行列L1 と変換行列L
2 とを合成した合成変換行列である。
【0075】 T2 =L2 1 …(40) すなわち、式(15) と式(27)の行列を掛ければ容易に合
成ができる。
【0076】同様にして光学装置を構成する多数のレン
ズの特性(変換行列)L1 .L2 ,…,Lm の合成は変
換行列の積により行われる。すなわち、レンズの数をm
個ととすると、合成変換行列Tm は式(41)となる。
【0077】 Tm =Lm …L2 1 …(41) なお、以上の説明においては、簡単のために近似次数n
が2の場合について述べてきたが、近似次数nが4の場
合は前述した式(32)は4行、4列になり、第1のレンズ
N1の変換行列L1 はサブマトリクスを組合わせて下式
のようになる。
【0078】
【数20】
【0079】添字a,b,c,dはそれぞれ1次、2
次、3次、4次部分を表わす。変換行列L1 はn次の部
分までの行と列を有する。
【0080】そして、図4に示す光学装置における光学
レンズの設計の場合には、5次収差まで計算を行うと仮
定すると近似次数 n=5である。そして、変数は、位置
0,y0 及び傾きu0 ,v0 の4個で変数の数 M=4
である。
【0081】近似次数 nと変数の数M を定めると、項数
N は N = M+1n-1 M+nn −1 …(43) となる。ここで M+1n-1 は(M +1)個のものからn
個のものを繰り返しを許して取り作る組合わせの数であ
り、 M+nn は(M + n)個からn 個を取って作る組合
わせの数である。これで計算すると、M =4、n =5の
時は項数N =125になる。
【0082】ここで、対称性がある時は項数Nを小さく
することができる。
【0083】図4の光学装置等のような軸対称のレンズ
系では、変数としてx,yを一つにまとめた複素数(x
+iy)を使う。
【0084】変数は X=x0 +iy0 , U=u0 +iv
0 の2個である。偶数次の項はすべて0となる等の関係
を使い、n =1の時 N=2、 n=3の時 N=8、 n=5
の時N=20、 n=7の時、項数 N=40となる。一般
的には下式にて求まる。
【0085】 N =(n +1)(n +3)(n +5)/24 …(44)
【0086】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述し
た第3及び第4に示す入力に対する出力を得る手法にお
いてもまだ解消すべき次のような課題があった、従来の
第3の方法と従来の第4の方法との違いは、前者では光
線軌道の計算手順を多変量級数の和、積、定数倍、平方
根の計算、逆数の計算の5つの演算に分解し、多変量級
数に関するこれらの演算を電子計算機により実行するも
のであり、後者は5つの演算の代わりに多変量級数の合
成のみを用いる点にある。
【0087】後者において、多変量級数の合成は行列の
積により行われる。工程は拡張と行列積の二つに分け、
拡張は一つの変換行列内の操作とし、行列積は一般的な
単純な演算の操作とした。演算の複雑性は拡張工程に含
ませられたので、一つの変換行列内の一定の操作となり
単純化された。また拡張は対称性により定まる一定の手
順で行うことができる。前者の方法は変換の種類ごとに
手順が異なるのに対し、後者の方法は外見上は行列の積
を行うのみであり、実質的な計算も、拡張工程のサブル
ーチンの利用を付け加えるのみである。
【0088】しかし、いずれにしても、項数 Nが100
以上になると計算量は非常に大きく、項数N =100の
時、行列積には N3 =100万回の掛け算が必要であ
る。その結果、計算処理量が膨大になり、最終的な装置
の特性を求めにために多大の処理時間が必要であった。
【0089】ここで、上述した第4の方法を3次元軸対
称光学系の3次近似に適用した計算方法を次に述べる。
レンズは通常、光軸の周りに回転対称に作られるので、
軸対称系の場合が実用的に重要である。
【0090】3次元光学系の場合は、z軸を光軸とし、
光線は4個の変数x,y,u,vで表されるが、軸対称
性の場合は複素座標を用いて前述した多変量級数を簡単
化できる。ここで座標(x,y)と光線の勾配u=dx
/dz,v=dy/dzから、複素座標を式(45)と定義
する。
【0091】
【数21】
【0092】と定義する。すると、物体面上の光線の出
発点の複素座標 X0 , U0 と像面上の光線の複素座標 X
1 , U1 との3次近似の関係は、次の多変量級数で表さ
れる。但し、右辺で添字0は省略する。また、先に述べ
たように、次数の低い項を先に書き、同じ次数の項は、
X0 の指数の大きい項から順に書き、 X0 の指数が同じ
時は、X0 * の指数の大きい項から順に書く。
【0093】
【数22】
【0094】
【数23】
【0095】
【数24】
【0096】これが前述した式(29)〜(33)に相当する拡
張手続きである。
【0097】球面レンズ系の特性は屈折球面を表す行列
K(ν,r)と、屈折面間の一様媒質を表す行列J
(s)を構成要素として、これらの行列の積で与えられ
る。
【0098】ここで、ν=n0 /n1 は屈折面の前後の
媒質の屈折率の比であり、rは屈折球面の半径であり、
sは屈折面間の距離である。
【0099】行列J(s)は、光線の方向が不変の進行
により、収差はないので式(51)により容易に得られる。
【0100】
【数25】
【0101】これを拡張して変換行列を求めれば、光学
特性を計算することができる。
【0102】しかし、文献1には、例えば5次近似の場
合に拡張を行う方法は、X1aからX1b,X1cを計算する
式を作り、近似次数nで打ち切り、部分行列Lbb
bc、Lbb,Lccを作ることは示されているが、これは
複雑で、5次近似の計算を行うことができなかった。
【0103】本発明はこのような事情に鑑みてなされた
ものであり、たとえ各単位装置の非線形特性を表す多変
量級数を構成する項の数が増えたとしても、変換行列の
演算を簡素化でき、複数の単位装置の非線形特性を表す
多変量級数が既知の時、合成した装置の特性を表す多変
量級数を効率的に求めることができ、かつ簡単に装置か
ら出力される5次以上の次数を含む任意の次数の物理量
の予測ができる物理量の予測方法を提供することを目的
とする。
【0104】
【課題を解決するための手段】本発明は、複数の単位装
置からなる装置から出力される物理量の変数を示す出力
行列と該当装置への複数次数の入力変数を示す各複数次
数の入力行列との関係を係数行列を用いて多変量級数と
して設定して、この多変量級数の各係数行列を算出する
ことによって、出力行列からなる物理量を求める物理量
の予測方法に適用される。
【0105】そして、上記課題を解消するために、請求
項1の物理量の予測方法においては、軸対称性を有する
多変量級数の5次式による各単位装置の特性を示す複数
の変換行列を合成する処理工程で、多変量級数の係数行
列から、3次部分及び5次部分の小行列を作り、これら
の小行列の行列積を作って合成を行う。
【0106】また、請求項2の物理量の予測方法におい
ては、多変量級数の係数行列から、拡張により各単位装
置の特性を示す変換行列の要素行列を求める処理工程
で、次数の1次低い要素行列と多変量級数の係数行列と
の積のうち、基底行列の積が要素行列の列と一致する項
を加え合わせてなる漸化式により計算し、これらから行
列積を作って合成を行う。
【0107】請求項3の物理量の予測方法においては、
3次元軸対称系の特性を表す多変量級数の係数行列か
ら、拡張により変換行列の要素行列を求める処理工程
で、特性を表す多変量級数の変換行列の要素行列とと回
転不変量の多変量級数の変換行列の要素行列とを組み合
わせて計算し、それぞれ次数の1次低い要素行列と多変
量級数の係数行列との積のうち、基底行列の積が要素行
列の列と一致する項を加え合わせてなる漸化式により計
算し、これから行列積を作って合成を行う。
【0108】また、請求項4の物理量の予測方法におい
ては、一変数関数のべき級数の係数行列から、拡張によ
り変換行列の要素行列を求める処理過程で、次数の1次
低い要素行列とべき級数の係数との積のなかから、基底
行列の積が要素行列の列と一致する項を加え合わせてな
る漸化式により計算し、これから行列積を作って合成を
行う。
【0109】さらに、請求項5の物理量の予測方法にお
いては、各係数行列を求めるために各単位装置の特性を
示す二つ以上の多変量級数を合成する処理過程で、1次
部分行列の部分積を計算し、これを用いて要素行列を規
準化し、この規準化行列の積を分解した収差行列の和か
ら合成変換行列を求めた後、この合成変換行列の規準化
を元に戻す。
【0110】このように構成された各請求項の物理量の
予測方法においては、3次部分や5次部分の小行列を作
成したり(請求項1)、各次数の要素行列を求める場合
に直接求めるのではなくて隣接する次数間における漸化
式を用いて各次数の要素行列を順次求めたり(請求項
2,3,4)、各次数の要素行列を規準化して合成した
のち規準化を元に戻したり(請求項5)することによっ
て、複雑な行列演算処理が大幅に軽減される。
【0111】
【発明の実施の形態】以下本発明の実施形態を図面を用
いて説明する。
【0112】(第1実施形態 3次元軸対称系の5次近
似)図1は本発明の第1実施形態に係わる物理量予測方
法における処理手順を示す流れ図である。なお、この実
施形態においては、図2で示すレンズで構成された光学
装置の特性を求める場合を想定して説明する。
【0113】以下、3次元軸対称系の5次近似の多変量
級数を合成する各工程における各処理を順番に説明して
いく。
【0114】[前提工程] 多変量級数の定義 この前提工程においては、図2の光学装置における変数
の数M,近似次数n,項数Nを定めて多変量級数を定義
する。
【0115】[工程1] 部分行列と基底ベクトルの算
出 この工程1においては、多変量級数をベクトル行列式に
書き、部分行列Laa,Lab,Lacと基底ベクトルX0a
0b,X0cを求める。
【0116】3次元軸対称光学系の5次近似の場合の光
学特性は、X1 ,U1 を像面上の複素座標(出力)のベ
クトルとすると、式(101) に示す多変量級数で表され
る。(ただし、右辺で添字0は省略する。)
【数26】
【0117】式(101) における係数a ,b , c1
d1 ,…・・.A ,B , C1 , D1 等はレンズ要素Lに特
有の定数である。
【0118】この式は行列を使って次のように表され
る。
【0119】
【数27】
【0120】となる。添字a ,b ,c はそれぞれ1次、
3次、5次を示すものとする。
【0121】[工程3] 部分行列の作成 この工程3においては、行列Laa,Lab,Lacから部分
行列Lba,Lbb,Lbc,Lca,Lcb,Lccを作成する。
すなわち、レンズ要素Lの変換行列Lは 20 ×20行列で
【数28】
【0122】
【数29】
【0123】
【数30】
【0124】
【数31】
【0125】
【数32】
【0126】以上の拡張手続きにより5次近似の変換行
列を求めることができる。
【0127】[工程4] 行列の合成 球面レンズ系の特性は屈折球面を表す行列K(ν,r)
と、屈折面間の一様媒質を表す行列J(s)を構成要素
として、これらの行列の積で与えられる。
【0128】5次近似の行列J(s)は
【数33】
【0129】
【数34】
【0130】これから拡張して変換行列を求めれば、光
学特性を計算することができる。
【0131】例えば図2に示す示す二つのレンズLN1
N2が組込まれた光学装置において、物面の位置z0
0、物面からレンズLN1までの距離s1 =z1 −z2
6、レンズLN1の半径r2 =1、屈折率比ν2 =2/
3、レンズの厚さs3 =z3 −z1 =0.1、レンズL
N2の半径r4 =−2、屈折率比ν4 =3/2、レンズL
N2から像面までの距離s5 =z4 −z3 =22/13,物面か
ら入射瞳( 絞り) までの距離d=zp −z0 =5(距離
はすべてz軸への投影で測る) とすると、この系の特性
は、次の行列の積を計算すれば得られる。
【0132】
【数35】
【0133】である。計算結果は表1,表2に示す。表
1,表2には行列の最初の2行から得られる多変量級数
の係数を示す。なお、表1,表2においては有効数字6
桁で計算しているので、7桁目は信頼度が低い。
【0134】このように、第1実施形態に示す物理量の
予測方法においては、多変量級数の係数行列から式(10
2) を用いて3次部分及び5次部分の各小行列を作成し
て、この各小行列から式(105) 〜(108) を用いてレンズ
要素の変換行列を、算出している。したがって、簡単に
5次の近似計算を実施できる。
【0135】
【表1】
【0136】
【表2】
【0137】(第2実施形態 任意次数近似のための漸
化式による拡張)次に本発明の第2実施形態に係わる物
理量の予測方法を説明する。
【0138】第1実施形態においては5次近似(n=
5)の場合の拡張の工程のための係数行列Lbb、Lbc
ccの計算式を示したが、近似次数nがさらに大きい場
合には漸化式により計算する必要がある。この方法を、
まず面内光線の系を例に取って、以下に順次説明する。
【0139】従来の第4の方法の例では、面内光線の系
の2次近似(n=2)の場合の拡張の工程ための係数行
列Lbbの計算式を示したが、漸化式によれば任意の近似
次数nの計算ができる。次に各工程の処理を順番に説明
する。
【0140】[工程1] 多変量級数の基底の構造のベ
クトル表示 面内光線の系はM =2で、一般的には対称性がない場
合、多変量級数を構成する基底ベクトルX0a,X0bは、
第1実施形態に示したように、
【数36】
【0141】これらの項を番号により指定するベクトル
として、指数ベクトルqを次のように定義する。
【0142】 q=(i,j) …(118) iは項の次数、すなわち、xの指数とuの指数の合計、
jはxの指数である。式(117) の各項の一般形はxj
i-j である。
【0143】[工程2] ベクトル表示qを用いた多変
量級数の係数 a(ja .q) と基底b1 (q)の定義 この系の多変量級数は第1実施形態の式(101) で表され
るがこれを次式のように書く。
【0144】
【数37】
【0145】この各項の係数は a( ja ,i ,j ) …(120) である。i , jは指数ベクトルqの成分であるから、こ
の係数はa ( ja ,q)と書くこともできる。
【0146】ja は式(119) の左辺の x1 の指数であ
る。式(119) の各項の基底を b0 (q)とする。
【0147】 b0 (q)= xj ui-j …(121) 近似次数をnmax とすると、 i, jの存在する範囲を示
す不等式は 1≦i ≦ nmax 0≦ j≦ i …(122) 次に変換結果 x1 , u1 から作る基底 b1 (q)を次式
により定義する。
【0148】 b1 (q)= x1 j u1 i-j …(123) これは式(120) の添字0を1に置換えたものである。す
ると式(117) は次式のように書ける。
【0149】
【数38】
【0150】ここで q1 =(1,1) …(127) q2 =(1.0) …(128) である。また qc =( ic , jc ) …(129) は不等式(128) の範囲を動く整数変数である。
【0151】[工程3] 漸化式のもとになる性質とベ
クトル表示の変換行列c(q, qA) の作成 基底 b1 (q)は次式の性質を持つことは、容易に確か
められる。
【0152】 b1 (q)= b1 (i,j) = x1 j u1 i-j = b1 (q−q1 ) b 1 ( q1 ) = b1 ( q−q1 ) x1 …(130) = b1 (q−q2 ) b1 ( q2 ) = b1 ( q−q2 ) u1 …(131) これが漸化式のもとになる性質である。この式を使え
ば、次数 iの時の b1 (q)を使って次数i+1 の時の b
1 (q)を計算できるので、 i=1から漸次に、大きい次
数n まで計算できる。
【0153】次に b1 (q)の式(123) の右辺の x1
u1 の中に式(119) を代入すると右辺は x0 , u0 の多
変量級数に展開される。展開係数を c(q,qA )と仮
定すると展開式は次のようになる。
【0154】 b1 (q)=Σ c( q,qA )b 0 (qA ) …(132) これにより定義される c(q,qA )は、以下[工程
6]のスカラー番号への変換の項目において説明するよ
うに、変換行列になるものである。ここでqA =(iA,
A )は不等式(122) の範囲を動く整数変数である。
【0155】[工程4] 初期化処理 式(132) を式(125)(126)と比較すると c( q1 ,qA )= a(1,qA ) …(133) c( q2 ,qA )= a(2,qA ) …(134) [工程5] 漸化式の作成 式(130) の左辺に式(132) を入れ、右辺に式(132) のq
A をqB と書換えたものと式(125) を入れると Σ c(q,qA ) b0 (qA )=Σ c(q−q1 ,qB ) b0 (qB ) ×Σa(1,qC ) b0 (qC ) =Σ c(q−q1 ,qB )a (1.qc )b 0 (qB +qC ) …(135) よって、 c (q,qA )=Σ c(q−q1 ,qB )a ( 1.qc ) …(136) 但し、 qc =qA −qB …(137) であり、qA ,qB は不等式(122) を満足しなければな
らない。
【0156】同様に式(131) の左辺に式(132) を入れ、
右辺に式(132) のqA をqB と書換えたものと式(126)
を入れると c(q,qA )=Σ c(q−q2 ,qB )a (0.qc ) …(138) 但、 qc =qA −qB …(139) で指数ベクトルqA ,qB は不等式(122) を満足しなけ
ればならない。
【0157】拡張は初期化の式(133)(134)により次数i=
1 の時の c(q,qA )を求め、漸化式(138)(139)によ
り次数 iの時のc (q,qA )を使って次数i+1 の時の
c (q,qA )を求めることができる。式(138) は1≦
j ≦ iの時に使う。 j=0の時は(q−q1 )が前述し
た不等式(122) を満足しない。
【0158】また、式(139) は0≦ j≦ i−1の時に使
う。 j=i の時は(q−q2 )が不等式(122) を満足し
ない。
【0159】[工程6] ベクトルのスカラー番号 Qへ
の変換 行列c(q,qA )の行番号を指定するベクトルq=
( i, j)から、実際の順番につけた行番号 Qを求める
と、行番号は Q=i (i+3)/2− j …(140) の式で与えられる。同様に、列番号を指定するベクトル
q=( iA , jA )から、実際の列番号 QA を求めると QA =iA (iA +3)/2−jA … (141) 行列c(q,qA )はベクトルを添字としているが、行
番号 Qと列番号 QA を使うと、行列c(L,LA )とい
う普通の形(スカラーの添字)の行列になる。するとc
( Q, Q)が変換行列である。
【0160】初期化の式(133)(134)の a(1,qA )=a(1,LA ) a(0,qA )=a(0,LA ) は多変量級数の係数であるから、漸化式(136)(137)を使
って拡張を行うことができる。
【0161】(第3実施形態 3次元軸対称光学系の場
合の漸化式)次に本発明の第3実施形態に係わる物理量
の予測方法を説明する。
【0162】3次元光学系の場合は、光線は4個の変数
x,y,u,vで表される。レンズは通常、光軸の周り
に回転対称に作られるので、軸対称系の場合が実用的に
重要である。第2実施形態の時と同じ順序で、以下に軸
対称系の場合の漸化式による任意次数nの計算法を示
す。
【0163】[工程1] 多変量級数の基底の構造のベ
クトル表示 軸対称系では、複素座標 X=x+jy, U=u+jvを
使って表すと簡単化される。X ,U の共役複素数を
X* , U* とすると、多変量級数の基底はX ,U ,X*
U* の積から構成され、奇数次のみが存在する。1次お
よび3次の基底ベクトルX0a,X0bを示すと
【数39】
【0164】ここで基底ベクトルX0a,X0b,X0cにお
いて、添字a,bは1次および3次を示す。これらの基
底ベクトルの各項はi ,j ,k の3つの整数を使って指
定され、指数ベクトルqを次のように定義する。
【0165】 q=(i , j,k ) …(152) 但し、 j,k はそれぞれ基底のX ,X * の指数を示し、
i はX とU との指数の和である。 X* と U* との指数の
和はi-1 である。各指数の合計はn=2i-1である。
【0166】[工程2] ベクトル表示qを用いた係数
a( ja ,q)と基底 b1 (q),d1 (q)の定義 多変量級数の基底の一般項は、
【数40】
【0167】近似次数を nmax とし、 imax =( nmax
+1)/2とすると、nmax =2inmax −1で、 i,j
,k の存在する範囲を示す不等式は 1≦ i≦ imax ,0≦ j≦ i,0≦k ≦ i−1 …(155) で、式(154) のΣは、この範囲のすべての整数について
和をとる。
【0168】そして、軸対称系の漸化式を導くために
は、さらにアイコナールを表す多変量級数の基底を用い
る必要がある。アイコナールの多変量級数の基底の一般
項 d0(q)は、 d0 (q)= d0 ( i,j ,k ) = Xj X *k Ui-j U*i-k …(156) d0 (q)に対しては、i ,j ,k の存在する範囲を示
す不等式は 1≦i ≦ imax , 0≦j ≦i ,0≦k ≦i …(157) 同じ nmax に対して d0 (q)の合計指数は b0 (q)
より1だけ大きい。
【0169】次に、式(153),(156) の添字0を1に置き
換えて b1 (q)と d1 (q)を次式のように定義す
る。
【0170】 b1 (q)= b1 ( i, j,k ) = X1 j X1 *k U1 i-j U1 *i-1-k …(158) d1 (q)= d1 ( i, j,k ) = X1 j X1 *k U1 i-j U1 *i-k …(159) 式(158) を式(154) の左辺に使うと、次式のように書け
る。
【0171】 X1 = b1 (q1 )=Σ a(1,qc ) b0 (qc ) …(160) u1 = b1 (q2 )=Σ a(0,qc ) b0 (qc ) …(161) ここでΣはqc が不等式(155) を満たす範囲で和を取
る。また q1 =(1,1,0) …(162) q2 =(1,0,0) …(163) である。
【0172】[工程3] 漸化式のもとになる性質とベ
クトル表示の変換行列c(q,qA),e(q,qB ) 基底 b1 (q)と d1 (q)は次式の性質を持つこと
は、容易に確かめられる。
【0173】 b1 (q)= d1 (q−q1 ) x1 …(164) b1 (q)= d1 (q−q2 ) u1 …(165) d1 (q)= b1 (q−q3 ) X1 * …(166) d1 (q)= d1 (q)U 1 * …(167) 但、q3 =(0,0,1) …(168) これが漸化式のもとになる性質である。
【0174】次に b1 (q)の式(158) の右辺の X1
U1 の中に式(154) を代入すると右辺は X0 , U0 の多
変量級数に展開される。展開係数を e(q,qA )と仮
定すると展開式は次のようになる。
【0175】 b1 (q)=Σ c(q,qA ) b0 (qA ) …(169) これが変換行列c(q,qA )の定義式である。ここで
A =( iA . jA , kA )は不等式(155) の範囲を動
く整数変数である。
【0176】同様にd1 (q)の式(159) の右辺の
X1 , U1 の中に式(154) を代入すると右辺は X0 , U
0 の多変量級数に展開される。展開係数を e(q,
B )と仮定すると展開式は次のようになる。
【0177】 d1 (q)=Σ e(q,qB ) d0 (qB ) …(170) d1 (q)は回転に対して不変量であるので、回転に対
する不変量である d0 (q)による展開が可能であるた
め式(170) が成立する。これが e(q,qB )の定義式
である。
【0178】ここでqとqB =( iB , jB , kB )は
不等式(157) の範囲を動く整数変数である。
【0179】[工程4] 初期化処理 式(169) を式(160)(161)と比較すると c(q1 ,qA )= a(1,qA ) …(171) c(q2 ,qA )= a(0,qA ) …(172) [工程5] 軸対称系の漸化式 以上のように定義すると下記の漸化式が成立ち、展開係
数 c(q,qA )から展開係数 e(q,qB )を計算す
ることができ、展開係数 e(q,qB )から次数が2次
上の展開係数 c(q,qA )を計算することができるの
で、漸次に、高次の展開係数を求めることができる。
【0180】 ここで、 j=1〜 iに対し c(q,qA )=Σ e(q−q1 ,qB ) a(1,qc ) …(173) j=0〜 i−1に対し c(q,qA )=Σ e(q−q2 ,qB ) a(0,qc ) …(174) ここで qc =qA −qB …(175) q,qA ,qc は不等式(155) を満足し、qB は不等式
(157) を満足するので 1≦ i ≦ imax , 0≦ j ≦ i, 0≦ k ≦ i −1 1 ≦ iA ≦ imax , 0≦ jA ≦ iA ,0≦ kA ≦ iA −1 1 ≦ iB ≦ imax , 0≦ jB ≦ iB ,0≦ kB ≦ iB 1 ≦ iC ≦ imax , 0≦ jC ≦ iC ,0≦ kC ≦ iC −1 …(176) k=1〜 iに対し e(q,qB )=Σ c(q−q3 ,qA ) a(1,qc ) …(177) k=0〜 i−1に対し e(q,qB )=Σ c(q,qA ) a(0,qc ) …(178) ここで qc =(qB −qA +q1 )´ …(179) ただし、ベクトルの右肩の´は成分 jと成分 iを交換す
ることを示す。式(179)を成分で書けば iC = iB − iA +1, jC = kB − kA 、 kC = jB − jA …(180) q,qB は不等式(157) を満足し、qA ,qC は不等式
(155) を満足するので 1≦ i ≦ imax , 0≦ j ≦ i, 0≦ k ≦ i 1 ≦ iB ≦ imax , 0≦ jB ≦ iB ,0≦ kB ≦ iB 1 ≦ iA ≦ imax , 0≦ iA ≦ iA ,0≦ kA ≦ iA −1 1 ≦ iC ≦ imax , 0≦ jC ≦ iC ,0≦ kC ≦ iC −1 …(181) これらの漸化式は以下のようにして導かれる。式(164)
の左辺に式(169) を入れ、右辺に式(170) と式(160) を
入れると Σ c(q,qA )b0 (qA ) =Σ e(q−q1 ,qB ) d0 (qB )Σ a(1,qC ) b0 (qC ) =Σ e(q−q1 ,qB ) a(1,qC ) b0 (qB +qC ) …(182) ここで次の関係を使った。
【0181】 d0 (qB ) b0 (qC )= b0 (qB +qC ) …(183) よって c(q,qA )=Σ e(q−q1 ,qB ) a(1,qC ) …(184) 但し、 qC =qA −qB …(185) ここでqB は不等式(157) を、qC は不等式(155) を満
足しなければならない。
【0182】次に式(165) の左辺に式(169) を入れ、右
辺に式(170) と式(161) を入れると Σ c(q,qA ) b0 (qA ) =Σ e(q−q2 ,qB ) d0 (qB )Σ a(0,qC ) b0 (qC ) =Σ e(q−q2 ,qB ) a(0,qC ) b0 (qB +qC ) …(186) ここで式(174) の関係を使った。よって c(q,qA )=Σ e(q−q2 ,qB ) a(0,qC ) …(187) 但し、 qC =qA −qB …(188) ここでqB は不等式(157) を、qC は不等式(155) を満
足しなければならない。次に式(166) の左辺に式(170)
を入れ、右辺に式(169) と式(170) の共役複素数を入れ
ると Σ e(q,qB ) d0 (qB ) =Σ c(q−q3 ,qA ) b0 (qA )Σ a(1,qC ) b0 (qC * =Σ c(q−q3 ,qA ) a(1,qC ) d0 (qA +qC ´−q2 ) …(189) ここで次の関係を使った。
【0183】 b0 (qA ) b0 (qC * = d0 (qA +qC ´−q2 ) …(190) ここでqC ´はqC と kc を交換したベクトルである。
よって e(q,qB )=Σ c(q−q3 ,qA ) a(1,qC ) …(191) 但し、 qC =(qB −qA +q2 )´ …(192) ここで、qB は不等式(157) を、qC は不等式(155) を
満足しなければならない。
【0184】次に式(167) の左辺に式(170) を入れ、右
辺に式(169) と式(161) の共役複素数を入れると Σ e(q,qB ) d0 (qB ) =Σ c(q,qA ) b0 (qA )Σ a(0,qC ) b0 (qC * =Σ c(q,qA ) a(0,qC ) d0 (qA +qC ´−q2 ) …(193) ここで式(190) の関係を使った。よって e(q,qB )=Σ c(q,qA ) a(0,qC ) …(194) 但し、 qC =(qB −qA +q2 )´ …(195) ここで、qB は不等式(157) を、qC は不等式(155) を
満足しなければならない。
【0185】[工程6] ベクトルqA ,qB のスカラ
ー番号 QA , QB への変換 行列c(q,qA )の行と列を指定するベクトルq,qA の実際の番号は Q= i( i+1)( i+2)/3−2 j−k …(196) 行列e(q,qB )の行と列を指定するベクトルq,qB の実際の番号は Q= i{( 2 i+9) i+13}/6−3j −k …(197) 行列c(q,qA )はq,qA から式(196) により求め
た行番号 Qと列番号 QA を使うと、c( Q, QA )とい
うスカラーの添字の行列になる。行列e(q,qB )は
q,qB から式(197) により求めた行番号 Qと列番号 Q
B を使うと、e( Q, QB )というスカラーの添字の行
列になる。
【0186】[工程7] 拡張の計算手順 軸対称系について、以上の方法により、任意次数の拡張
の計算を行うことができる。
【0187】(第4実施形態 一変数関数の場合の漸化
式)次に本発明の第4実施形態に係わる物理量の予測方
法を説明する。
【0188】一変数関数y=f(x )の任意次数の近似
の場合について漸化式による計算法を示す。以下に近似
次数3次( N=3)の例を示し、任意次数Nの場合を述
べる。
【0189】多変量級数は、べき級数 y=Σ a( i) b0 (i )=Σ a(i ) xi …(241) と表される。 b1 (q)を次式のように定義する。
【0190】 b1 (q)= b1 ( i)= yi …(242) 式(242) を式(241) の左辺に使うと、次式のように書け
る。
【0191】 y= b1 (1)=Σ a(qC ) b0 (qC ) …(243) 次に b1 (q)の式(242) の右辺の yの中に式(241) を
代入すると右辺はxのべき級数に展開される。展開係数
を c(q,qA ) と仮定すると展開式は次のようにな
る。
【0192】 b1 (q)=Σ c(q,qA ) b0 (qA ) …(244) [工程4] 初期化処理 c(1,qA )= a(qA ) …(245) [工程5] 漸化式 上述した第4実施形態と同様の考察により、次式が得ら
れる。
【0193】 c(q,qA )=Σ c(q−1,qB ) a(qC ) …(246) 但し、 qC =qA −qB …(247) ここでqB は下記不等式満足しなければならない。
【0194】1≦q≦N [工程6] 拡張の計算手順 汎用漸化式を使って、以上の方法により、任意次数の拡
張の計算を行うことができる。
【0195】このように、第2〜第4実施形態の物量量
の予測方法においては、漸化式を用いることによつて、
各次数における行列演算を個別に実施する必要がなくな
り、演算処理効率が大幅に向上する。
【0196】(第5実施形態 規準化による計算の簡略
化)次に本発明の第5実施形態に係わる物理量の予測方
法を図3の流れ図を用いて説明する。なお、この実施形
態においては、図2で示した複数のレンズで構成された
光学装置の特性を求める場合を想定して説明する。
【0197】これまでの各実施形態では多変量級数を拡
張して変換行列を作った後、行列の積を計算することに
より、合成を行う方法であった。しかし、行列の積の計
算は行列の大きさN が100以上になると計算量は非常
に大きく、N =100の時、行列積には N3 =100万
回の掛算が必要である。これを減らす方法として、簡略
化した方法を次に述べる。
【0198】一般的方法を示すために例として、第4実
施形態と同様にx,uの2変数の場合の2次近似につい
て説明する。変数の数 M=2、近似次数 n=2、項数 N
=5である。
【0199】[前提工程] 多変量級数の定義 この前提工程においては、従来の図5に示す従来の手法
と同様に、前提として下記に示すm個の多変量級数を定
義する。
【0200】
【数41】
【0201】[工程1] 1次部分の部分積の計算 この工程1においては、変換行列の1次部分行列の部分
積分の計算を行う。まず、部分積と1次部分行列の定義
を行う。
【0202】それぞれ変換行列L1 .L2 ,…,Lm
示される特性を有してm個のレンズからなる光学装置に
おける合成変換行列Tm は、式(46)に示すように、各レ
ンズの変換行列L1 .L2 ,…,Lm の積で表される。
【0203】 Tm =Lm …L2 1 …(201) そして、変換行列の部分積Tk とは、m個の変換行列L
1 〜Lm のうち最初のk個だけの積を計算したもので、
式(202) で示される。
【0204】 Tk =Lk …L2 1 …(202) また、変換行列の1次部分行列とは、一次部分以外の要
素をすべて0とした行列である。例えば、第1のレンズ
N1の変換行列L1 の一次部分行列は、記号0をつけて
L0 1 と表わす。この第1のレンズLN1の変換行列L1
は前述したように式(24)で示されるので、この式(24)の
一次部分を示す[a]以外の要素、すなわち二次部分を
示す[b]が関係する要素をすべて[0]に置換したも
のである。その結果、第1のレンズLN1の1次部分行列
L0 1 は式(203) で示される。
【0205】
【数42】
【0206】同様に、第2のレンズLN2の1次部分行列
L0 2 は式(33)の[g]が関係する要素をすべて[0]
に置換したものである。その結果、第1のレンズLN2
1次部分行列L0 2 は式(204) で示される。
【0207】
【数43】
【0208】そして、部分行列の部分積T0 k は、式(2
05) となる。
【0209】 T0 k =L0 k …L0 2 L0 1 …(205) しかし、この式(205) を実際に計算するのは多くの労力
または計算量を必要とするので、実際には式(206) に示
すように一次部分の部分行列のみを計算する。
【0210】 Tkaa =Lkaa …L2aa 1aa …(206) この式(206) の計算は式(205) の計算に比べて遥かに容
易である。
【0211】例えば、前述した項数N=40の場合、各
1次部分行列L0 2 ,L0 1 の積に対して64000 回の掛
け算が必要なのに、一次部分の部分行列のみの計算にお
けるL2aa 1aa の積は8回の積だけが必要である。式
(34)に示すL2aa 及び式(31)に示す数値例1を用いて実
際に計算すると式(207) となる。
【0212】
【数44】
【0213】このように、一次部分の部分行列のみの計
算することによって、式(203)(204)に示す5行5列のL
0 2 L0 1 の積(125回の積を要する)よりはるかに
簡単である。
【0214】[工程2] 拡張1 この工程2においては、部分行列T1aa から拡張により
1bb を求める。部分行列T1aa
【数45】
【0215】
【数46】
【0216】[工程3] 要素行列の規準化 この工程3においては要素行列の規準化を行う。まず、
規準化の定義を行う。
【0217】すなわち、光学装置を構成するレンズ等の
m個の非線形変換の合成を行うことは、前述したように
各構成要素(レンズ)の変換行列L1 .L2 ,…,Lm
の積で示される合成変換行列Tm を計算することであ
る。
【0218】 Tm =Lm …L2 1 …(212) この計算を簡略化するために行う規準化は、Lk (k=1,
2,…,k)を LNk=T0 k -1k T0 k-1 …(213) に変えることである。添字Nは規準化の記号である。た
だし、k=1の時、T0 k-1 は単位行列とする。すると
合成変換行列Tm は Tm =T0 m Nm …(214) から計算される。ここで規準化された合成変換行列行列
Nmは、規準化された各変換行列LNm,…,LN2,LN1
から式(215) で求まる。
【0219】 TNm=LNm…LN2N1 …(215) から求められる。
【0220】この式(215) が正しいことは式(212)(213)
を式(214) に代入するにより容易に確かめられる。
【0221】式(34)に示すL2aa 及び式(31)に示す数値
例1を用いて実際に標準化の計算を行うと、
【数47】
【0222】
【数48】
【0223】このように、式(46)に示す変換行例L1
2 ,…,Lm の積を直接計算する代わりに、規準化さ
れた各変換行列LNm,…,LN2,LN1を用いて式(56)を
計算する方が格段に容易である。それは以下に説明する
収差の分解定理があるからである。
【0224】ここで、収差の分解定理を説明する。
【0225】規準化した変換行列は、次のように各収差
部分に分解できる。
【0226】 LNk=L0 Nk+L1 Nk+L2 Nk+…+L(n-1) Nk …(222) ここで規準化した変換行列L0 Nkは単位行列であり、変
換行列L1 Nkは1位収差部分であり、L2 Nkは2位収差
部分であり、…、L(n-1) Nkは(n−1)位収差部分で
ある。
【0227】例えは、近似次数n=4の場合の例を部分
行列を要素とする行列で示せば
【数49】
【0228】但し、右辺では添字kを書くのが省略され
ている。L0 Nkは、いわば0位収差で、線形部分から発
生し、単位行列であるから対角線上の要素はすべて1で
ある。また、Eのつく部分行列はすべて単位行列であ
る。
【0229】L1 Nkは1位の収差で、対角線の一つ右側
のみに0でない要素を持ち、2次式の項から発生する。
【0230】L2 Nkは2位収差で、対角線の2つ右側の
みに0でない要素を持つ。
【0231】L3 Nkは3位収差で、対角線の3つ右側の
みに0でない要素を持つ。
【0232】例えばLN3N2N1を計算する時、各要素
行列を式(65)に示すように各収差部分に分解する。
【0233】
【数50】
【0234】すると、この積は次式のように計算され、
掛け算の括弧をはずせば、下記の各項に分解される。こ
れが収差の分解定理である。
【0235】
【数51】
【0236】上式の最右辺で、Eは単位行列である。次
の行は1位収差を表わし、それは要素行列の1位収差の
和である。次の2行は2位収差を表わす。その1行目は
要素行列の2位収差の和であり、その2行目は2つの1
位収差の相互作用から生じる2位収差である。
【0237】次の4行は3位収差を表わす。その1行目
は要素行列の3位収差の和であり、2行目と3行目は、
1位収差と2位収差の相互作用によって生じる3位収差
を表わす。最後の行は3個の1位収差の3重相互作用か
ら生じる3位収差である。式(221) で、これ以外の項は
すべて0となる。
【0238】項数 Nが少し大きい数になると、(225) 式
を一挙に計算するのは困難なので、2個の組合わせを計
算する方法が便利である。2個の規準化行列の積は
【数52】
【0239】さらに、この式(226) の計算においても、
行列を実際に全部計算すると計算量が多くなるので、第
1行の部分行列だけを計算する。すると式(222) は下式
のようになる。
【0240】
【数53】
【0241】この方法によれば記憶する必要のある行列
要素は、常に、第1行のサブマトリクスだけである。
【0242】[工程4] 拡張2 この工程4においては、2回目の拡張処理を行う、すな
わち、上述した式(227) を計算するには第1行の部分行
列の他に、規準化された行列LN1bcを計算する必要があ
る。この計算も拡張の一部であり、第1実施形態乃至第
3実施形態で述べた方法を使うことができる。項数 M=
2で次数 N=2の場合は、上記規準化された行列LN1bc
は、行列LN1abから次式により求める。
【0243】
【数54】
【0244】ここで、行列LN1bbと行列LN1ccとは単位
行列になるので、計算の必要はない。その結果、計算量
を大きく減少する。
【0245】[工程5] 収差の合成 この工程5においては、収差の合成を行う。すなわち、
例えば前述した式(220) ,式(222) の数値例1を用いて
規準化された各変換行列LN2ab,LN1abから、式(227)
の規準化された第2項[LN2N1abを計算する。
【0246】
【数55】
【0247】なお、式(230) の規準化された第3項[L
N2N1ac以降も同様の手法で求める。
【0248】[工程6] 規準化を元に戻す この工程6においては、各単位行列T0 、規準化された
各変換行列TN を用いて式(201) で最終の合成変換行列
m を求める。
【0249】具体的には、先ず、式(231) を用いて各次
数の項を算出した後、合成変換行列Tm を求める。
【0250】
【数56】
【0251】例えば、前述した式(207) ,式(225) の数
値例1を用いて、式(231) の第2項を計算する。
【0252】
【数57】
【0253】このように構成された第5実施形態の物理
量の予測方法においては、光学装置を構成する各レンス
の特性を示す変換行列Lm ,Lm-1 ,…,L2 ,L1
そのままの状態で直接掛算を実施して光学装置の全体特
性を示す最終の合成変換行列Tm をするのではなくて、
各変換行列Lm 〜L1 の一次部分以外を0とした部分行
列L0 m ,L0 m-1 ,…,L0 2 ,L0 1 を用いること
によって、行列の掛け算処理における積算回数を大幅に
減少でき、最終の合成変換行列Tm の算出処理能率を大
幅に向上できる。
【0254】さらに、各変換行列Lm 〜L1 の規準化を
実施して、この規準化された各変換行列LNm
N(m-1),…,LN2,LN1を用いて、この規準化された
各変換行列LNm〜LN1を掛算することによって、規準化
された最終の合成変換行列TNmを求めている。その後、
この規準化された合成変換行列TNmを元の光学装置の全
体特性を示す最終の合成変換行列Tm へ戻している。
【0255】このように、規準化された変換行列で行列
相互間の掛算演算を実施することによって、前述と同様
に行列の掛け算処理における積算回数を大幅に減少で
き、最終の合成変換行列Tm の算出処理能率を大幅に向
上できる。
【0256】なお、本発明は上述した各実施形態に限定
されるものではない。本発明の方法は、光学系の計算の
ほかに、電子光学系、力学系の計算に適用できる。また
変換行列の逆行列を計算することにより逆変換を行うこ
とが可能なため、非線形連立方程式を解くのに利用でき
る。
【0257】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の物理量の
予測方法においては、たとえ各単位装置の非線形特性を
表す多変量級数を構成する項の数が増えたとしても、変
換行列の演算を簡素化でき、複数の単位装置の非線形特
性を表す多変量級数が既知の時、合成した装置の特性を
表す多変量級数を効率的に求めることができ、かつ簡単
に装置から出力される5次以上の次数を含む任意の次数
の物理量の予測ができる。
【0258】その結果、単数または複数の変数による因
果関係の明確な法則による物理量予測計算において、非
線形効果を計算する時の合成計算を可能にし、効率化す
る効果があるので、その適用対象はきわめて広い。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態の物理量の予測方法におけ
る各工程を示す流れ図
【図2】 同実施形態の物理量の予測方法が適用される
光学装置の各レンズの配列を示す模式図
【図3】 本発明の他の実施形態の物理量の予測方法に
おける各工程を示す流れ図
【図4】 一般的な軸対称の複数のレンズからなる光学
装置の各レンズの配列を示す模式図
【図5】 従来の多変量級数を用いた物理量の予測方法
における各工程を示す流れ図
【図6】 図5における変換行列作成の詳細工程を示す
流れ図

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 軸対称性を有する複数の単位装置からな
    る装置から出力される物理量の変数を示す出力行列と該
    当装置への複数次数の入力変数を示す各複数次数の入力
    行列との関係を係数行列を用いて多変量級数として設定
    して、この多変量級数の各係数行列を算出することによ
    って、前記出力行列からなる物理量を求める物理量の予
    測方法において、 前記軸対称性を有する多変量級数の5次式による前記各
    単位装置の特性を示す複数の変換行列を合成する処理工
    程で、前記多変量級数の係数行列から、3次部分及び5
    次部分の小行列を作り、これらの小行列の行列積を作っ
    て合成を行うことを特徴とする物理量の予測方法。
  2. 【請求項2】 複数の単位装置からなる装置から出力さ
    れる物理量の変数を示す出力行列と該当装置への複数次
    数の入力変数を示す各複数次数の入力行列との関係を係
    数行列を用いて多変量級数として設定して、この多変量
    級数の各係数行列を算出することによって、前記出力行
    列からなる物理量を求める物理量の予測方法において、 前記多変量級数の係数行列から、拡張により前記各単位
    装置の特性を示す変換行列の要素行列を求める処理工程
    で、次数の1次低い要素行列と多変量級数の係数行列と
    の積のうち、基底行列の積が要素行列の列と一致する項
    を加え合わせてなる漸化式により計算し、これらから行
    列積を作って合成を行うことを特徴とする物理量の予測
    方法。
  3. 【請求項3】 3次元軸対称性質を有する複数の単位装
    置からなる装置から出力される物理量の変数を示す出力
    行列と該当装置への複数次数の入力変数を示す各複数次
    数の入力行列との関係を係数行列を用いて多変量級数と
    して設定して、この多変量級数の各係数行列を算出する
    ことによって、前記出力行列からなる物理量を求める物
    理量の予測方法において、 前記3次元軸対称系の特性を表す多変量級数の係数行列
    から、拡張により変換行列の要素行列を求める処理工程
    で、特性を表す多変量級数の変換行列の要素行列とと回
    転不変量の多変量級数の変換行列の要素行列とを組み合
    わせて計算し、それぞれ次数の1次低い要素行列と多変
    量級数の係数行列との積のうち、基底行列の積が要素行
    列の列と一致する項を加え合わせてなる漸化式により計
    算し、これから行列積を作って合成を行うことを特徴と
    する物理量の予測方法。
  4. 【請求項4】 複数の単位装置からなる装置から出力さ
    れる物理量の変数を示す出力行列と該当装置への複数次
    数の入力変数を示す各複数次数の入力行列との関係を係
    数行列を用いて多変量級数として設定して、この多変量
    級数の各係数行列を算出することによって、前記出力行
    列からなる物理量を求める物理量の予測方法において、 一変数関数のべき級数の係数行列から、拡張により変換
    行列の要素行列を求める処理過程で、次数の1次低い要
    素行列とべき級数の係数との積のなかから、基底行列の
    積が要素行列の列と一致する項を加え合わせてなる漸化
    式により計算し、これから行列積を作って合成を行うこ
    とを特徴とする物理量の予測方法。
  5. 【請求項5】 複数の単位装置からなる装置から出力さ
    れる物理量の変数を示す出力行列と該当装置への複数次
    数の入力変数を示す各複数次数の入力行列との関係を係
    数行列を用いて多変量級数として設定して、この多変量
    級数の各係数行列を算出することによって、前記出力行
    列からなる物理量を求める物理量の予測方法において、 前記各係数行列を求めるために前記各単位装置の特性を
    示す二つ以上の多変量級数を合成する処理過程で、1次
    部分行列の部分積を計算し、これを用いて要素行列を規
    準化し、この規準化行列の積を分解した収差行列の和か
    ら合成変換行列を求めた後、この合成変換行列の規準化
    を元に戻すことを特徴とする物理量の予測方法。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2013085514A1 (en) * 2011-12-07 2013-06-13 Intel Corporation Sample culling based on linearized 5d edge equations

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