JPH10287554A - 機能性リポソーム - Google Patents

機能性リポソーム

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JPH10287554A
JPH10287554A JP9098608A JP9860897A JPH10287554A JP H10287554 A JPH10287554 A JP H10287554A JP 9098608 A JP9098608 A JP 9098608A JP 9860897 A JP9860897 A JP 9860897A JP H10287554 A JPH10287554 A JP H10287554A
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JP
Japan
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liposome
modifying agent
liposomes
group
polyethylene glycol
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JP9098608A
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English (en)
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Yuji Kasuya
裕司 粕谷
Junichi Okada
純一 岡田
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Sankyo Co Ltd
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Sankyo Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】環境の相違に依存せず、経時的に性質が変化す
るリポソームを提供する。 【解決手段】水溶性高分子から成る修飾剤が経時的に離
脱することを特徴とする修飾リポソームに関する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、経時的に修飾剤が
離脱し、それに対応して表面の親疎水性が変化する新規
な機能性リポソームに関する。
【0002】
【従来の技術】リポソームは脂質の二重膜からなる小胞
体で、機能性微粒子として広く応用されている。医薬分
野においては、リポソーム内への薬物の封入によって該
薬物の体内動態を変化させることにより治療効果の向上
が図られている。
【0003】しかし、リポソームには病態組織に対する
特異性がなく貪食細胞などが存在する細網内皮組織( r
eticuloendothelial system :以下「RES」とい
う。)に非特異的に貪食されやすい。これを回避するた
め、粒子径を制御し、ポリエチレングリコール( polye
thylenegycol:以下「PEG」とする。)等の水溶性高
分子で被覆することによりRESを回避する手段が開発
されている( Proc. Natl.Acad. Sci. 88, 11460-1146
4, (1991) / Cancer Res. 52, 2431-2439, (1992)参
照)。
【0004】しかし、上記の修飾に基づきリポソームが
RESを回避するとの性質を得た場合、他方においてリ
ポソームと生体成分との相互作用が低下することが知ら
れている( Stealth Liposomes (CRC Press, D.Lasic,
F. Martin 編) pp.119-125,(1995) 参照)。これによ
り、病態組織における細胞によるリポソームの取り込み
の効率が低下しその結果該リポソームに封入された薬物
の細胞内への送達の効率が低下したり、酵素などの生体
成分との相互作用により引き起こされるリポソームの崩
壊が抑制されその結果該リポソームに封入された薬物の
放出速度が低下するとの弊害があった。
【0005】これらの問題点を解決するため、各種の環
境応答性リポソーム、すなわち、疾病に起因する環境変
化、または、正常組織と患部の環境の相違に応答して性
質が変化するリポソームが検討されている( Cancer Re
s., 40, 1388-1395, (1980)/ Strahlentherapie, 160,
732-740, (1980) / FEBS Letter, 388, 115-118,(199
6) 等参照)。原理的には、このような環境応答性リポ
ソームにより、循環時には安定な構造を維持しながらR
ESを回避し、病態組織に移行した後または病態組織を
通過する際には迅速な薬物放出及び/または細胞移行性
が得られることになる。しかし、実際には、これらの環
境の相違がこのようなリポソームの性質を変化させるの
に不十分であるか、または、より敏感に環境に応答する
リポソームについては使用前の保存安定性の確保が困難
である等の理由により、このような環境応答性リポソー
ムは現在まで実用化に至っていない。さらに、疾病由来
の環境相違には個体差があり、環境応答性にばらつきが
生じやすいことも実用化を困難にしている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】このように、従来の環
境応答性リポソームには実用化を困難にする問題点が多
く、このようなリポソームとは異なる新しい様式のリポ
ソームが求められている。本発明者らは、環境の相違に
依存せず、緩和な条件下で徐々に切断され得る共有結合
を介して水溶性高分子で修飾され、経時的に性質を変化
させるリポソームを製造し、本発明を完成した。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、(1)水溶性
高分子からなる修飾剤が経時的に離脱することを特徴と
する修飾リポソーム、(2)リポソームと修飾剤との結
合が炭素原子と窒素原子との二重結合であることを特徴
とする(1)に記載の修飾リポソーム、(3)リポソー
ムと修飾剤との結合が下記の[式1]乃至[式11]の
いずれか一つで表される請求項1に記載の修飾リポソー
ム:
【0008】
【化4】
【0009】
【化5】
【0010】
【化6】
【0011】([式1]乃至[式11]において、L は
リポソームを表し、M は直鎖状または分枝状の修飾剤を
表し、M1およびM2は同種または異種の直鎖状または分枝
状の修飾剤を表す。) (4)修飾剤が以下の群から選択されるいずれか一つで
あり、直鎖状または分枝状であることを特徴とする
(1)乃至(3)のいずれか一つに記載の修飾リポソー
ム:ポリメチレングリコール、ポリエチレングリコー
ル、ポリn-プロピレングリコール、ポリiso-プロピレン
グリコール、ポリヒドロキシプロピレングリコール、
(5)修飾剤が直鎖状または分枝状のポリエチレングリ
コールである(1)乃至(4)のいずれか一つに記載の
修飾リポソーム、(6)修飾剤が直鎖状のポリエチレン
グリコールである(1)乃至(5)のいずれか一つに記
載の修飾リポソーム、に関する。
【0012】本発明において修飾剤とは、以下のa 乃至
k のいずれか一つの群から選択されるもの等を意味す
る: a)ビニル系高分子、 b)アクリル系高分子、 c)a 乃至b の群から選択されるポリマーを構成するモノ
マー2種以上を構成単位とする共重合体、 d)a 乃至b の群から選択されるポリマーを構成するモノ
マーを少なくとも一つの構成単位とし、次の群から少な
くとも1つ選択されるモノマーを他の構成単位とする水
溶性の共重合体:スチレン、クロロメチルスチレン、ブ
ロモメチルスチレン、酢酸ビニル、メチルメタクリレー
ト、ブチルアクリレート、メチルシアノアクリレート、
エチルシアノアクリレート、n-プロピルシアノアクリレ
ート、iso-プロピルシアノアクリレート、n-ブチルシア
ノアクリレート、iso-ブチルシアノアクリレート、tert
-ブチルシアノアクリレート、エチルビニルエーテ
ル、、n-プロピルビニルエーテル、iso-プロピルビニル
エーテルn-ブチルビニルエーテル、iso-ブチルビニルエ
ーテル、tert- ブチルビニルエーテル等、 e)ポリアルキレングリコール、 f)ポリヒドロキシプロピレングリコール、 g)ポリエチレンイミン、 h)ポリアミノ酸、 i)水溶性のポリペプチド、 j)多糖類、 k)a 乃至j の群のいずれかに記載の高分子を構成単位と
する水溶性のブロック共重合体またはグラフト共重合
体。
【0013】ここでビニル系高分子とは、ポリビニルア
ルコール、ポリメチルビニルエーテル、ポリビニルピロ
リドン、ポリビニルオキサゾリドン、ポリビニルメチル
オキサゾリドン、ポリビニルアミン、ポリ2-ビニルピリ
ジン、ポリ4-ビニルピリジン、ポリN-ビニルサクシンイ
ミド、ポリN-ビニルホルムアミド、ポリN-ビニル-N- メ
チルホルムアミド、ポリN-ビニルアセトアミド、ポリN-
ビニル-N- メチルアセトアミド、ポリマレイン酸、ポリ
フマル酸、ポリイタコン酸、ポリイタコン酸モノメチル
エステル、ポリクロトン酸、ポリケイ皮酸、ポリスチレ
ンスルホン酸等を意味し、アクリル系高分子とは、ポリ
アクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリ2-ヒドロキシエチ
ルメタクリレート、ポリ2-メタクリロイルオキシエチル
ホスホリルコリン、ポリN,N-ジメチルアミノエチルアク
リレート、ポリN,N-ジメチルアミノエチルメタクリレー
ト、ポリN,N-ジエチルアミノエチルアクリレート、ポリ
N,N-ジエチルアミノエチルメタクリレート、ポリN-tert
- ブチルアミノエチルアクリレート、ポリアクリルアミ
ド、ポリメタクリルアミド、ポリN,N-ジメチルアクリル
アミド、ポリN-イソプロピルアクリルアミド、ポリジア
セトンアクリルアミド、ポリメチロールアクリルアミ
ド、ポリアクリロイルモルホリン、ポリアクリロイルピ
ロリジン、ポリアクリロイルピペリジン、ポリ2-アクリ
ルアミド-2- メチルプロパンスルホン酸等を意味し、ポ
リアルキレングリコールとは、ポリメチレングリコー
ル、ポリエチレングリコール、ポリn-プロピレングリコ
ール、ポリiso-プロピレングリコール等を意味し、ポリ
アミノ酸とは、一種のアミノ酸がペプチド結合を介して
複数個連結しているポリマーを意味し、好適には、ポリ
グルタミン酸、ポリリジン等を意味し、水溶性のポリペ
プチドとは、複数種のアミノ酸がペプチド結合を介して
複数個連結しているポリマーを意味し、多糖類とは、デ
キストラン、デキストラン硫酸、アミノエチルデキスト
ラン硫酸、セルロース、メチルセルロース、カルボキシ
メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロ
ピルセルロース、アミロペクチン、アミロース、ヒアル
ロン酸、コンドロイチン硫酸、ヘパラン硫酸、カードラ
ン硫酸、ポリソルビトール、アルギン酸、ペクチン、ペ
クチン酸、キサンタン、ジェラン、プルラン等を意味す
る。
【0014】また、これらの高分子の官能基の一部が他
の官能基に変換されていてもよい。例えば、ポリエチレ
ングリコールの末端の水酸基はメトキシ化されていても
よい。
【0015】本発明の修飾リポソームは、緩和な条件下
において徐々に切断し得る共有結合を介して、リポソー
ム及び修飾剤が結合している。
【0016】この性質を満たす共有結合の例として、次
の二つを挙げることができる: (a)炭素原子と窒素原子との二重結合(以下、この結
合を「シッフ塩基」という。)、(b)アミノ基とマレ
イン酸類のカルボキシル基との間に形成されるアミド結
合(以下、このアミド結合を「マレイル基を介したアミ
ド結合」という。)。
【0017】該共有結合がシッフ塩基の場合、シッフ塩
基を構成する炭素原子及び窒素原子は、リポソーム表面
と修飾剤のどちらの側に存在していてもよい。すなわ
ち、シッフ塩基によって結合した修飾剤とリポソームの
位置関係は、下記の[式12]及び[式13]のいずれ
でもよい。
【0018】
【化7】
【0019】([式12]及び[式13]において、R1
は-CH2- 基を表し、R2は、-CH2- 、-NHCO-、及び -NH-C
H2- から選択されるいずれか一つを表し、R3は、-CH2-
、-CONH-、及び -CH2-NH- から選択されるいずれか一
つのを表し、m 及び n は、それぞれ0または1を表
す。)。
【0020】また、該共有結合がマレイル基を介したア
ミド結合の場合、修飾剤とリポソームはマレイル基の二
重結合に対して互いに反対側に位置する必要があるが、
リポソーム及び修飾剤の結合位置についてそれ以外の限
定は受けない。すなわち、マレイル基を介したアミド結
合によって結合したリポソームと修飾剤の位置関係は、
下記の[式1]乃至[式11]のいずれでもよい。
【0021】
【化8】
【0022】
【化9】
【0023】
【化10】
【0024】([式1]乃至[式11]において、 Lは
リポソームを表し、 Mは直鎖状又は分枝状の修飾剤を表
し、M1及びM2は同種または異種の直鎖状または分枝状の
修飾剤を表す。)
【0025】
【発明の実施の形態】リポソームの製造法は、(I) リ
ポソーム膜の構成成分となり得る化合物(以下、このよ
うな化合物を「アンカー」という。)を構成成分のひと
つとなるように出発材料として用いリポソームを製造
し、その後に修飾剤を一定条件下で化学結合させる方法
(特表平4−501117号参照)、(II) 上記のアン
カーと修飾剤とを化学結合させた複合体を予め製造し、
これを構成成分のひとつとなる様に出発材料として用い
リポソームを製造する方法(Biochim. Biophys. Acta.
1113, 171-1992, (1992)参照)、(III) 予め製造したリ
ポソームに上記の複合体を一定条件下で添加する方法
(Biochim. Biophys. Acta. 1113, 171-1992, (1992)参
照)、のように分類される。
【0026】アンカーとしては、炭素数11ないし30のア
ルキル基を有する化合物、または、下記の[式14]に
よって表されるリン脂質が用いられてきた。本発明で
は、これらを基本骨格とし、アミノ基、ヒドラジド基、
ヒドラジノ基、アルデヒド基及び無水のマレイル基から
選択される官能基を有する化合物をアンカーとして使用
する。
【0027】
【化11】
【0028】(式中、R1及びR2はそれぞれ炭素数12乃至
31のアシル基を表し、R3はアミノ基、ヒドラジド基、ヒ
ドラジノ基、アルデヒド基及び下記の[式15]によっ
て表される無水のマレイル基から選択される官能基を表
し、n は0乃至2の整数を表す:
【0029】
【化12】
【0030】(式中、R は炭素数 4以下のアルキル基ま
たは水素原子を表す。)。) これらの化合物は購入することができる。または、これ
らの化合物は当業者に周知の有機化合物の合成法(例え
ば、S.H.Pine、Organic Chemistry fifth edition (Mc
Graw-Hill International Editions)(1987)/バイオ
・高分子研究会(編)/バイオ・高分子機能デザインと
高分子化学(学会出版センター)(1989)参照)に従い
合成することができる。
【0031】たとえば、アルキルアミンおよびアルキル
ヒドラジンはアルキル基の炭素数が等しい直鎖状または
分枝状のハロアルカンとそれぞれアンモニアおよびヒド
ラジンによる求核置換反応により、アルキルヒドラジド
はアルキル基の炭素数が等しい直鎖状または分枝状の脂
肪酸とヒドラジンとの脱水縮合により、アルキルアルデ
ヒドはアルキル基の炭素数が等しい直鎖状または分枝状
のアルコールの酸化により、それぞれ製造することがで
きる(上記文献参照)。
【0032】無水マレイル基を有するアンカーは、特公
平8-2545339 号記載の方法に従い、アルキル基の炭素数
が等しい直鎖状または分枝状のアルコールを用い、無水
マレイン酸のブロモ化およびブロモ化無水マレイン酸の
アルコリシスを順次行うことにより、製造することがで
きる。
【0033】リポソームを構成する他の成分としては、
各種のリン脂質類、コレステロールなどが挙げられる
(参照:野島ら(編)リポソーム(南江堂)、pp.1-40
(1988)参照)。
【0034】リポソームの修飾剤としては、従来から、
ポリエチレングリコールやプルランなどの各種の水溶性
高分子が用いられている(WO95/06058号参照)。本発明
においても、次のa 乃至k の群に示す水溶性高分子を利
用することができる。
【0035】a)ビニル系高分子、 b)アクリル系高分子、 c)a 乃至b の群から選択されるポリマーを構成するモノ
マー2種以上を構成単位とする共重合体、 d)a 乃至b の群から選択されるポリマーを構成するモノ
マーを少なくとも一つの構成単位とし、次の群から少な
くとも1つ選択されるモノマーを他の構成単位とする水
溶性の共重合体、 e)ポリアルキレングリコール、 f)ポリヒドロキシプロピレングリコール、 g)ポリエチレンイミン、 h)ポリアミノ酸、 i)水溶性のポリペプチド、 j)多糖類、 k)a 乃至j の群のいずれかに記載の高分子を構成単位と
する水溶性のブロック共重合体またはグラフト共重合
体。
【0036】本発明においては、これらの水溶性高分子
にアルデヒド基、アミノ基、ヒドラジド基、およびヒド
ラジノ基、無水マレイル基の群から選択される官能基を
導入しリポソームの修飾に使用することができる。高分
子への官能基の導入は当業者周知の化合物合成法にした
がって行うことができる(高分子学会(編)、高分子実
験学6、高分子反応(共立出版)(1978)/新高分子実
験学4、高分子の合成・反応(3)、高分子の反応と分
解(共立出版)(1996)参照)。
【0037】従って、もともと上記の官能基が修飾剤に
存在しない場合でも各々の修飾剤が有する他の官能基を
上記の官能基に変換し使用することができる。このよう
な官能基の変換法としては、例えば以下の方法が挙げら
れる: (イ)ポリビニルアルコール、ポリアルキレングリコー
ル、および多糖類は水酸基を有する。また、ポリビニル
アルキルエーテルには、分子内のエーテル結合の部分加
酸分解(アシドリシス)により水酸基を導入することが
できる。
【0038】これらの水酸基は、ハロゲン化チオニルで
処理することによりハロゲン化され、さらにアンモニア
およびヒドラジンで処理すればそれぞれアミノ基および
ヒドラジノ基が導入される。また、酸化により水酸基は
アルデヒド基またはカルボキシル基に変換される。さら
に、このカルボキシル基にヒドラジンを脱水縮合させれ
ばヒドラジド基が導入される。
【0039】(ロ)ポリマレイン酸、ポリフマル酸、ポ
リイタコン酸、ポリイタコン酸モノメチルエステル、ポ
リクロトン酸、ポリ桂皮酸、ポリアミノ酸、ポリペプチ
ド、および多糖類の一部(カルボキシメチルセルロー
ス、ヒアルロン酸、アルギン酸、ペクチン酸など)はカ
ルボキシル基を有する。また、ポリN-ビニルピロリド
ン、ポリN-ビニルメチルピロリドン、ポリN-ビニルオキ
サゾリドン、ポリN-ビニルメチルオキサゾリドン、およ
びアクリル系高分子には、分子内のエステル結合または
アミド結合の部分加水分解によりカルボキシル基が導入
される。
【0040】(ハ)ポリビニルアミンおよびポリエチレ
ンイミンはアミノ基を有する。また、ポリN-ビニルホル
ムアミド、ポリN-ビニル-N- メチルホルムアミド、ポリ
N-ビニルアセトアミド、およびポリN-ビニル-N- メチル
アセトアミドには、分子内のアミド結合を部分加水分解
することによりアミノ基が導入される。さらにアミノ基
に無水コハク酸を結合させることによりカルボキシル基
が導入される。
【0041】(ニ)多糖類には、酸化によりカルボキシ
ル基が導入される。
【0042】(ロ)乃至(ニ)におけるカルボキシル基
にエチレンジアミンおよびヒドラジンを脱水縮合させれ
ばそれぞれアミノ基およびヒドラジド基が導入される。
また、カルボキシル基を還元して水酸基に変換すれば、
上記と同様にしてアルデヒド基、ヒドラジノ基が導入さ
れる。
【0043】(ホ)[式13]乃至[式15]に示され
る無水マレイル基を有する修飾剤は、特公平8-2545339
号記載の方法に従い、アルキル基の炭素数が等しい直鎖
状または分枝状のアルコールを用い、無水マレイン酸の
ブロモ化およびブロモ化無水マレイン酸のアルコリシス
を順次行うことにより、製造することができる。
【0044】
【化13】
【0045】[[式16]乃至[式18]において、M
は修飾剤を表し、M1およびM2は同種のまたは異なる修飾
剤を表す。また、R は炭素数4以下のアルキル基または
水素原子を表す。]すでに述べたように、修飾リポソー
ムの製造方法には、(I) アンカーを構成成分の一つと
なるように出発材料として用いリポソームを製造しその
後に修飾剤を化学結合させる方法、(II) アンカーと修
飾剤を化学結合させた複合体を予め製造しこれを構成成
分の一つとなるように出発材料として用いリポソームを
製造する方法、および、(III) 予め製造したリポソーム
の分散液に上記の複合体を添加する方法、という3種の
方法がある。
【0046】ここで、(I) および(II)の方法で修飾リポ
ソームを製造する場合には、アンカーと修飾剤との複合
体を予め製造する必要がある。
【0047】アンカーと修飾剤との複合体は、ポリエチ
レングリコールとリン脂質との複合体(D.Lasic とF.Ma
rtin(編)、Stealth Liposomes (CRC Press )、pp.9
3-102 (1995)参照)、及び多糖類とステアリン酸との
複合体(U.Haemmerling とO.Westphal、Eur.J.Biochem.
1 、46-50 (1967)参照)の製造例にみられるように、
当業者周知の有機合成法(S.H.Pine、Organic Chemistr
y fifth edition (McGraw-Hill International Editio
ns)(1987)参照)に従って製造することができる。
【0048】上記の複合体を予め製造し、これを構成成
分の一つとなるように出発材料として用いる修飾リポソ
ームの製造は、ポリエチレングリコールとリン脂質との
複合体を構成成分とした修飾リポソーム(T.M.Allen
ら、Biochim. Biophys. Acta 1066 、29-36 (1991)参
照)の製造例にみられるように当業者周知の通常のリポ
ソームの製造法に従って行うことができる。
【0049】リポソームの製造法としては、薄膜法、逆
相蒸発法、など、適用可能な脂質濃度、サイズ、ラメラ
数、内水相容積など種々の観点から特徴づけられる種々
の製造方法が挙げられる(野島ら(編)、リポソーム
(南江堂)、pp.1-40 (1988)参照)。本発明において
は、これら製造法のうちいずれをも選択でき、上記の複
合体を他のリポソーム構成成分と混合して使用すること
ができる。
【0050】予め製造したリポソームの分散液に修飾剤
とアンカーの複合体を添加すると、該複合体分子内のア
ンカーが高い疎水性を有するため、疎水性相互作用によ
り該複合体がリポソーム膜中に包埋され、結果として修
飾リポソームが得られる(M.Takada、J.Sunamotoら、Bi
ochim. Biophys. Acta 802、237-244 (1984)参照)。
本発明においても、この現象に基づき上記の複合体を使
用して修飾リポソームを得ることができる。
【0051】アンカーを構成成分の一つとするリポソー
ムに修飾剤を化学結合させることによる修飾リポソーム
の製造は、ジパルミトイルホスファチジルエタノールア
ミンを構成成分の一つとするリポソームに対し、該アミ
ノ基に対して反応性を有するポリエチレングリコールを
結合させたフィッシャーの方法(参照:特表平4-50111
7)に従い、修飾剤をリポソームの分散液に添加し振と
うすることによって行うことができる。
【0052】リポソームのサイズの調節法には、超音波
照射、エクストルージョン、フレンチプレス法、ホモジ
ナイズ法などが挙げられる(参照:野島ら(編)、リポ
ソーム(南江堂)、pp.1-40 (1988))。本発明におい
ても、これらのうちのいずれのサイズ調節法も適用する
ことができる。
【0053】
【実施例】以下実施例により本発明をさらに詳細に説明
する。ただし、これらは本発明を限定するものではな
い。
【0054】実施例1.ステアリン酸ヒドラジドリポソ
ームの調製 ジパルミトイルホスファチジルコリン(以下DPPCとす
る。)96mg(約132 μmol )、コレステロール(以下Ch
olとする。)45mg(約132 μmol )、ステアリン酸ヒド
ラジド(以下SHz とする。)14.3mg(約132 μmol )を
ナス型フラスコに入れ、クロロホルム5ml を加えて溶解
した。これをロータリーエバポレータにセットし、100r
pmの回転速度で50mmHgの圧力下クロロホルムを留去し、
ナス型フラスコ内壁に脂質の薄膜を形成させた。この薄
膜をデシケータ内で1 時間減圧乾燥した後、pH5 のリン
酸クエン酸緩衝生理食塩水液(11.1mMリン酸水素二ナト
リウム、2.37mMクエン酸、および135mM 塩化ナトリウム
を含有する緩衝液。以下同様とする。)を加えて全量を
3ml とし、ボルテックスミキサーにて振とうし、総脂質
濃度100mM の多重層リポソームの分散液を得た。このリ
ポソームを以下、SHzリポソームという。
【0055】実施例2.ポリエチレングリコール修飾ス
テアリン酸ヒドラジドリポソームの調製方法 孔径1 μm のポリカーボネート製メンブランフィルタを
装着したエクストルーダ(Liposofast-Basic、アベスチ
ン(AVESTIN )社製)を用いて、多重層SHz リポソーム
について該メンブランフィルタを通過させた(以下、所
定サイズの孔径のポリカーボネート製メンブランフィル
タを装着したエクストルーダを用いたリポソームのメン
ブランフィルタの通過を、「所定サイズのエクストルー
ジョン」という。)。
【0056】このリポソーム分散液500 μL に、末端に
アルデヒド基を有するポリエチレングリコール((株)
川原油化製。以下「PEG-ALD 」という。)45mgを加え25
℃で24時間振とうし、PEG-ALD で修飾した。得られたポ
リエチレングリコール修飾リポソームを以下、「PEG-SH
z リポソーム」という。PEG-ALD としては、ポリエチレ
ングリコール部分の分子量が約5000で片末端にアルデヒ
ド基を有するものとポリエチレングリコール部分の分子
量が約3400で両末端にアルデヒド基を有するもの(以
下、それぞれ「PEG5000-CHO 」および「PEG3400-(CH
O)2」という。)の2種類を使用した。
【0057】試験例1.リポソームのポリエチレングリ
コール修飾度の評価方法 リポソームの修飾度は、ポリエチレングリコールとデキ
ストランとからなる二相系へのリポソームの分配率に基
づき評価した(特表平4-501117号参照)。この二相系に
おいては、ポリエチレングリコール相への分配率が高い
ほどリポソーム表面の親水性が高く、ポリエチレングリ
コール修飾度が高いと判断される。
【0058】操作法および分配率の算出法は次の通りで
ある。5w/v% のPEG6000 と5w/v% のデキストランT-500
(ファルマシア社)を含む150mM 塩化ナトリウム水溶液
4mLに、脂質濃度100mM のリポソーム分散液10
0 μL を加えて混和した。
【0059】はじめに、分離前に該混和液 500 μL を
採取し、150mM 塩化ナトリウム水溶液で6 倍希釈した
後、波長550nm における系の平均濁度を測定した。残り
の試料(約3.5mL )は室温で30分間静置することにより
二層(上層がポリエチレングリコール相、下層がデキス
トラン相)に分離させた。この二相系から上層および下
層それぞれ500 μL を採取し、150mM 塩化ナトリウム水
溶液で6 倍希釈した後各相の濁度を分離前の試料と同様
に測定した(分離前、上層および下層各試料の濁度をそ
れぞれa 、b およびc とする。)。分離後の上層および
下層の体積比はそれぞれ2.8 :1.2 であったことを考慮
し、上層および下層への分配率をそれぞれ次の計算式よ
り求めた。さらに、これらの値から下層に対する上層の
分配比(以下、略して分配比とする。)を求めた。
【0060】 上層への分配率=b / a ×2.8 / (2.8+1.2) 下層への分配率=c / a ×1.2 / (2.8+1.2) 分配比=(上層への分配率)/(下層への分配率) ポリエチレングリコール修飾度と分配比との関係を調べ
るために、様々な修飾度の修飾リポソームの分配比を調
べた。ここで使用したポリエチレングリコール修飾リポ
ソームは、ポリエチレングリコールとアンカーが安定に
結合したジステアロイル-N- (モノメトキシポリエチレ
ングリコールサクシニル)ホスファチジルエタノールア
ミン(ポリエチレングリコール部分の分子量約2000、
(株)川原油化製、以下「PEG2000-DSPE」という。)を
ジパルミトイルホスファチジルコリンなどの他のリポソ
ーム構成成分と混合することにより製造した。製造法は
多重層SHz リポソームと同様であり、1000nmのエクスト
ルージョンによりサイズの調節を行った。リポソーム構
成成分の組成および用いた150mM 塩化ナトリウム水溶液
の量は以下の表1の通りである:
【0061】
【表1】 ジパルミトイルホスファチジルコリン (60-x)μmol (ただし、x は0 乃至10の値を示す。) PEG2000-DSPE x μmol コレステロール 40 μmol ──────────────────────────────────── 150mM 塩化ナトリウム水溶液で1mL とした。
【0062】PEG2000-DSPEの導入率は、バイオラッド社
のプロテインアッセイキットを用い、T.M.Allen らBioc
him. Biophys. Acta 1066,29-36 (1991)記載の方法に
準じて次のように決定した。
【0063】まず、所定の各濃度(0 乃至5mg/mL)のPE
G2000-DSPEの150mM 塩化ナトリウム水溶液それぞれ500
μL に、蒸留水で5 倍希釈したプロテインアッセイ液 5
mLを加え、混和して30分間静置後、595nm の吸光度を測
定し検量線を作成した。次に、超遠心分離機(Centriko
n T-2070型、コントロン・インストラメント(Kontron
Instruments )社製)を用い、上記で調製したリポソー
ムの分散液1ml を超遠心分離(150000G ×30min )し
た。この上清画分500 μL に、蒸留水で5 倍希釈したプ
ロテインアッセイ液5 mLを加え、混和して30分間静置
後、595nm の吸光度を測定した。この吸光度および作成
した検量線を用いてPEG2000-DSPE濃度を算出した。リポ
ソームに対するPEG2000-DSPEの導入率は、次式より算出
した。
【0064】(PEG2000-DSPEの導入率)(%)=(1−
(上清画分のPEG2000-DSPE量))/(製造時のPEG2000-
DSPE量)×100 その結果、図1に示すように、PEG2000-DSPE製造時の量
が総脂質量に対して 5mol% 以下の場合には、90% 以上
の割合でリポソームに付加されることがわかった。ま
た、これらのポリエチレングリコール修飾リポソームに
おける調製時のPEG2000-DSPEの量とPEG-デキストラン二
相系における分配比との関係を図2に示す。この結果、
ポリエチレングリコール修飾量と分配比の対数との間に
は直線関係が成立することが判明した。
【0065】実施例3.ステアリン酸ヒドラジドリポソ
ームのポリエチレングリコール修飾の条件検討 試験例1に記載の修飾後のリポソームの分配比を指標に
して、SHz リポソームに対するPEG-ALD 修飾の条件検討
を行った。修飾リポソームの分配比に対する時間および
温度の影響を調べた結果をそれぞれ図3および図4に示
す。反応時間を20時間に固定し温度変化の影響を調べた
場合、25℃乃至40℃においていずれのリポソームも高い
分配比を示した(図3)。また、反応温度を40℃に固定
し時間変化の影響を調べた場合、分配比は1 日までは増
加し4 日以降は低下することが判明した(図4)。以上
より、修飾反応の条件としては、25乃至40℃において1
乃至2 日が好適であると判断した。図2との比較より、
この条件にて調製されたPEG-SHz リポソームの親水性
は、PEG2000-DSPEを総脂質量に対して3 乃至5mol%程度
含むリポソームの親水性に相当する。
【0066】試験例2.ポリエチレングリコール修飾ス
テアリン酸ヒドラジドリポソームの保存安定性の検討 実施例2で製造したPEG-SHz リポソームを脂質濃度50mM
で4 ℃にて保存した場合の分配比の経時変化を調べた結
果、該分配比は徐々に低下するものの25日間の保存後に
おいてもPEG2000-DSPE 4mol%程度の修飾度に相当する親
水性を維持することがわかった(図5)。
【0067】試験例3.ポリエチレングリコール修飾ス
テアリン酸ヒドラジドリポソームの分散安定性の評価 多重層SHz リポソームの分散液に対し、50nmのエクスト
ルージョンを行った。実施例2と同様にPEG-ALD を加
え、25乃至40℃で20乃至30時間振とうした。さらに、再
度50nmのエクストルージョンを行い、25乃至40℃で20乃
至30時間振とうしPEG-ALD 修飾リポソームを得た。
【0068】こうして得られたPEG-SHz リポソームの分
散液10μL に対し、1mL のリン酸緩衝生理食塩液(20mM
NaH2PO4および135mM 塩化ナトリウムからなり、1N NaO
H でpH7.4 に調整したもの。以下、「PBS 」という。)
を加えた場合の体積平均粒子径を、粒子径測定機(Nico
mp Submicron Particle Sizer Model 370 、Nicomp Par
ticle Sizing Systems社)を用いて測定した。
【0069】その結果を表2に示す。この結果は、いず
れのPEG-ALD で修飾した場合でも安定に分散したリポソ
ームが得られたことを示している。
【0070】
【表2】ポリエチレングリコール修飾ステアリン酸ヒド
ラジドリポソームのPBS 中での粒子径。
【0071】 ──────────────────────────────────── 修飾剤 体積平均粒径* (nm) ──────────────────────────────────── PEG5000-CHO 96.3±38.1 PEG3400-(CHO)2 92.5±32.0 ──────────────────────────────────── * 平均±標準偏差試験例4.37℃、PBS 中におけるポリエチレングリコー
ル修飾ステアリン酸ヒドラジドリポソームのポリエチレ
ングリコール修飾度の経時変化の評価 1 μm のエクストルージョンを行ったPEG-SHz リポソー
ムの37℃、PBS 中での親水性変化を以下のように調べ
た。実施例2記載のPEG-SHz リポソームの分散液10mLを
37℃に加温したPBS1mLに加え、そのまま37℃で振とうし
た。所定時間振とう後、ただちに25℃に冷却し、6.7 %
のPEG6000 と6.7%のデキストランT-500 とを含む150mM
塩化ナトリウム水溶液3mL を加え、試験例1と同様にし
て分配比を調べた。保温時間と分配比との関係を図6に
示す。保温開始から分配比が経時的に低下し、6 時間以
降0.2 乃至0.3 前後の値となることが判明した。この分
配比から推測されるリポソームの親水性は、PEG2000-DS
PEによる修飾度1mol% 未満に相当する値であった。
【0072】PEG2000-DSPEによる修飾度が0 乃至3mol%
の領域においては、修飾リポソームの血中滞留性は修飾
度の増加にともなって上昇する(Maruyamaら、Biochim.
Biophys. Acta 1128 、44-49 (1992)参照)。リポソ
ームの血中滞留性は主として血漿タンパクや貪食細胞な
どの生体成分との相互作用によって決定される(D.D.La
sic 、Liposomes: from basic to applications 、pp.2
65-321(1993)参照)ことから、PEG2000-DSPEによる修
飾度が0 乃至3mol% の領域においてリポソームと生体成
分との相互作用が著しく変化すると推測される。従っ
て、上記において認められたPEG-SHz リポソームの親疎
水性の経時変化量は、リポソームと生体成分との相互作
用を変化させるのに十分であった。
【0073】試験例4.37℃、PBS 中におけるポリエチ
レングリコール修飾ステアリン酸ヒドラジドリポソーム
の粒子径の経時変化の評価 50nmのエクストルージョンを行ったPEG-SHz リポソーム
の37℃、PBS 中での粒子径変化を次のように調べた。試
験例3で調製方法を示したPEG-SHz リポソームの分散液
10 μL を37℃にしたPBS1mLに加え、そのまま37℃で振
とうした。所定時間振とう後、ただちに室温に冷却し、
粒子径を測定した。その結果、平均粒子径は6 時間後ま
で経時的に減少しその後一定値となることがわかった
(図7)。最終的な粒径の減少量は、20nm程度であり、
分子量3400または5000の溶解性高分子のサイズの推定値
(D.H.Napper、Polymeric stabilization of colloidal
dispersions (Academic Press, 1983), p.125参照)の
2 倍に近い値をとることがわかった。このことから、修
飾剤が経時的に離脱することが示唆された。
【0074】比較例1.ポリエチレングリコールが安定
に結合した修飾リポソーム、および無修飾リポソームの
37℃、PBS 中における経時変化の評価 ポリエチレングリコールとリポソームが安定に結合した
修飾リポソームとして試験例1記載のPEG2000-DSPEを5m
ol% 含むリポソームを、また無修飾リポソームとして試
験例1記載のPEG2000-DSPEを含まないリポソームを製造
し、これらのリポソームのPBS 中37℃における分配比の
経時変化をPEG-SHz リポソームと同様に調べた。その結
果、図8に示す通りPEG2000-DSPEリポソームでは高い分
配比を24時間にわたって維持し、無修飾リポソームでは
初期から低い分配比であり、いずれもその経時変化は著
しく小さいことがわかった。
【0075】さらに、脂質組成をDPPC /ステアリルアミ
ン(以下、SAとする。) /コレステロール=44 / 16 /
40(モル比)としてSHz リポソームと同様に調製したSA
リポソームに対し、200mM のNa(CN)BH3 を共存させるこ
とによりPEG5000-CHO を安定に共有結合させたPEG-SAリ
ポソームについても同様の検討を行った。その結果はPE
G2000-DSPEリポソームと同様であり、分配比の経時変化
は著しく小さいことがわかった(図8)。
【0076】PEG-SHz リポソームにおける経時的な分配
比の低下はリポソームのポリエチレングリコール修飾量
の減少に対応している。さらに、そのリポソーム表面か
らのポリエチレングリコールの離脱は可逆的なシッフ塩
基の切断によるものであり、修飾反応の結果生じたPEG-
ALD とSHz の複合体がリポソーム膜から遊離したためで
はないことが示された。
【0077】比較例2.37℃、PBS 中における各種リポ
ソームの粒径の経時変化の評価 分配比評価時と同様に比較用のリポソームを調製し50nm
のエクストルージョンを行った。これらのリポソームの
37℃、PBS 中における粒径をPEG-SHz リポソームと同様
に調べたところ、いずれのリポソームについても平均粒
子径の経時変化は著しく小さいことがわかった(図
9)。
【0078】以上のことから、PEG-SHz リポソームにお
いて認められた粒子径の経時的な減少は、リポソーム表
面の離脱の結果生じたものであると考えられた。
【0079】
【発明の効果】本発明により、水溶性高分子からなる修
飾剤が経時的に離脱するリポソームが得られた。本発明
のリポソームは、環境の相違に依存せず、経時的に性質
が変化することより、機能性微粒子としての汎用性が広
い。
【図面の簡単な説明】
【図1】全脂質に対するPEG2000-DSPEの構成比とリポソ
ームへの導入率との関係図。
【図2】全脂質に対するPEG2000-DSPEの構成比とリポソ
ームの分配比との関係図。
【図3】SHz リポソームのPEG-ALD 修飾時の反応温度と
分配比との関係図。
【図4】SHz リポソームのPEG-ALD 修飾時の反応時間と
分配比との関係図。
【図5】PEG5000-SHz リポソームを4 ℃で保存した場合
の分配比の経時変化図。
【図6】37℃、PBS 中における、PEG-SHz リポソームの
分配比の経時変化図。
【図7】37℃、PBS 中における、PEG-SHz リポソームの
粒子径の経時変化図。
【図8】37℃、PBS 中における、PEG2000-DSPEを5mol%
含むリポソーム、含まないリポソーム、およびPEG5000-
CHO を不可逆修飾したSAリポソームの分配比の経時変化
図。
【図9】37℃、PBS 中における、PEG2000-DSPEを5mol%
含むリポソーム、含まないリポソーム、およびPEG5000-
CHO を不可逆修飾したSAリポソームの粒子径の経時変化
図。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】水溶性高分子からなる修飾剤が経時的に離
    脱することを特徴とする修飾リポソーム。
  2. 【請求項2】リポソームと修飾剤との結合が炭素原子と
    窒素原子との二重結合であることを特徴とする請求項1
    に記載の修飾リポソーム。
  3. 【請求項3】リポソームと修飾剤との結合が[式1]乃
    至[式11]のいずれか一つで表される請求項1に記載
    の修飾リポソーム。 【化1】 【化2】 【化3】 ([式1]乃至[式11]において、L はリポソームを
    表し、M は直鎖状または分枝状の修飾剤を表し、M1およ
    びM2は同種または異種の直鎖状または分枝状の修飾剤を
    表す。)
  4. 【請求項4】修飾剤が以下の群から選択されるいずれか
    一つであり、直鎖状または分枝状であることを特徴とす
    る請求項1乃至3のいずれか一つに記載の修飾リポソー
    ム:ポリメチレングリコール、ポリエチレングリコー
    ル、ポリn-プロピレングリコール、ポリiso-プロピレン
    グリコール、ポリヒドロキシプロピレングリコール。
  5. 【請求項5】修飾剤が直鎖状または分枝状のポリエチレ
    ングリコールである請求項1乃至4のいずれか一つに記
    載の修飾リポソーム。
  6. 【請求項6】修飾剤が直鎖状のポリエチレングリコール
    である請求項1乃至5のいずれか一つに記載の修飾リポ
    ソーム。
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