JPH10287413A - 多結晶シリコン製造装置 - Google Patents

多結晶シリコン製造装置

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JPH10287413A
JPH10287413A JP7187297A JP7187297A JPH10287413A JP H10287413 A JPH10287413 A JP H10287413A JP 7187297 A JP7187297 A JP 7187297A JP 7187297 A JP7187297 A JP 7187297A JP H10287413 A JPH10287413 A JP H10287413A
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JP
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silicon
chamber
hydrogen
polycrystalline silicon
gas
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Application number
JP7187297A
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Inventor
Hiroshi Komiyama
宏 小宮山
Mitsuru Sadamoto
満 貞本
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Mitsui Chemicals Inc
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Mitsui Chemicals Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ガス化された塩素化シリコンを原料としたC
VD等による多結晶シリコン製造方法において、排気さ
れた原料ガスを回収するとともに、有効な原料ガスのみ
を選別するとともに、消費された原料ガスを金属シリコ
ンの投入により再生することにより、地球環境に有害な
成分を廃棄することなく、ポリシリコンの製造を行うこ
と。 【解決手段】 本発明の装置は、多結晶シリコンの製造
を主体とするA室(1)と、塩素化シリコンを製造する
B室(2)とが、2つの管路により連結されている装
置。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、水素雰囲気下にお
いてシリコン原料として塩素化シリコンを用いた多結晶
シリコンの製造において、原料となる未消費の塩素化シ
リコンを回収するとともに、新規に投入した金属シリコ
ンと多結晶シリコンの製造において発生する塩化水素か
ら塩素化シリコンを形成するとともに、多結晶シリコン
製造の原料とするもので、低コストにて多結晶シリコン
の製造が行えるとともに、塩素系化合物の系外への排出
が抑制されたものである多結晶シリコンの製造装置であ
る。
【0002】
【従来の技術】太陽電池は、やっと近年になり、産業と
して自立する傾向を示してきた。これからの太陽電池の
主流となるのは、多結晶シリコン太陽電池であろうと予
測されている。しかし、現在の多結晶シリコンは、その
原料調達方法に限界が見えている。即ち、現状の変換効
率12〜13%を維持するための原料としての多結晶シ
リコンの供給を、LSIに代表される半導体産業に使用
される超高純度シリコンインゴットの余剰分であるいわ
ゆるトップとボトムに依存しており、現状では多結晶シ
リコン太陽電池に換算して、100MWであろうと予想
されている。
【0003】つまり、多結晶太陽電池の生産量80MW
に達した現在、原料となる多結晶シリコンの供給に制限
が加えられるのは間近である。しかも、ウェハーの大口
径化に伴い、ますます高純度シリコンインゴットの余剰
部分が相対的に減少していくことは確実であり、将来に
おいてたとえシリコンインゴットの生産が増加したとし
ても、太陽電池用の多結晶シリコンの増加を望めないこ
とは明らかである。
【0004】また、現在では薄膜太陽電池による変換効
率の向上および量産技術の進展が目ざましく、2010
年くらいの将来においては、薄膜太陽電池の生産量が多
結晶太陽電池の生産量に肩を並べるようになると予想さ
れているが、ともかく近い将来においては、多結晶シリ
コン太陽電池が太陽電池の主流になることは疑いがない
と考えられている。
【0005】従って、現状ではLSI用の残余シリコン
インゴットから、低価格にて多結晶シリコンを得ている
ために、現状の太陽電池生産を高品質に保ちながら生産
を行ってきているが、これを他の材料、主流的には金属
シリコンから確保するためには、太陽電池に適する品質
とするための低価格にて生産を行うための工業化技術が
十分ではないのが現状である。
【0006】多結晶シリコンは、一般に冶金法によって
高純度化を図る方法と、化学的に還元することにより第
3の化学物質を経由して高純度化を図る方法とがある。
冶金法によって高純度化を図る方法については、金属シ
リコンを溶融するとともに、プラズマ照射、ガス賦活な
どの方法により金属シリコン中に残溶している不純物を
除去する方法であり、大規模に生産を行う程、低価格が
進むという利点がある。
【0007】これに対して、化学的に還元することによ
り第3の化学物質を経て高純度化を図る方法について
は、いくつかの企業から多くの特許が出願されている。
塩素化シリコンの合成において、金属シリコンから多結
晶シリコンを製造する方法については、過去多くの方法
が開示されている。
【0008】トリクロルシランの合成に際して、広く公
知として知られている方法は、金属シリコンとHClを流
動床反応帯域において約 300℃で反応せしめることによ
り実施される方法であり、銅を触媒とする方法が一般的
である。しかし、この方法は、比較的大きな反応容器の
使用を必要とし、また過剰量の金属シリコンの消費を必
要とするものであった。また、発生する反応混合物が比
較的取扱いが困難であり、さらに廃棄処分問題と関連
し、全体の操業コストに負担をかけた。
【0009】これに対して、ユニオン・カーバイド・コ
ーポレーション(UCC)や大阪チタニウム等が他の方
法によるトリクロルシランの製造方法を開発した。その
方法については、特開昭58-52817(出願人 ユニオン・
カーバイド・コーポレーション)や、特開昭56-73617
(出願人 大阪チタニウム)に開示されている。
【0010】特開昭58-52817においては、金属シリコン
からシランを製造する為の方法として、金属シリコンと
水素及び四塩化硅素とを 400℃〜 600℃の温度及び21.1
kg/cm2〜42.2kg/cm2の範囲において、トリクロルシラン
とジクロルシランを形成することを開示している。さら
に、特開昭56-73617においても同様に、金属シリコンと
塩化水素および四塩化硅素と水素の存在下、 350℃〜 6
00℃の温度条件範囲において、大気圧ないしは大気圧以
上の圧力条件のもとで、連続的に製造することを開示し
ている。
【0011】そしてこの第3のシリコンを含む化学物質
を経由して多結晶シリコンを製造する方法の多くは、第
3のシリコンを含む化学物質をガス状とした上で、常圧
もしくは真空下において、熱あるいはプラズマ、光、電
磁波等のエネルギーによって、該第3のシリコンを含む
化学物質を経て、シリコンに分解し、基板上に形成する
化学気相蒸着法によるものである。
【0012】現在では、多結晶シリコンを高い速度で形
成するためには、常圧下にて、あるいは低圧力状態下に
て、熱によって分解を生じせしめる方法が主体である。
この時、シリコンの原料となるのは、該第3のシリコン
を含むガス状の化学物質である。しかし、この時に供給
される該第3のシリコンを含むガス状の化学物質の何割
かは、未消費のまま系外に排出されるに至るものであ
る。
【0013】LSIのような高付加価値の半導体製品を
生産する場合には、これらの残余の化学物質はそのコス
トに占める割合が小さなことから返り見られることはな
いが、太陽電池のように低価格にて生産することを主眼
とした場合には、このようなシリコン原料ガスを回収す
ることが、重要な要素となってくる。またこの回収につ
いても、何も珍しいものではなく、過去多くの回収方法
が提案されている。
【0014】以下、多結晶シリコンおよび範囲を拡大し
て、アモルファスシリコンの製造において、シリコンを
含む原料ガスの回収方法について開示されている内容に
ついて説明を行う。まず、特開昭52-133022 (出願人
三菱金属)において、加熱金属シリコンと塩化水素ガス
との接触により発生したクロルシランの回収の可能性に
ついて開示している。特開昭55-149114 (出願人 シー
メンス)は、熱分解後のクロルシランの回収およびクロ
ルシランの補充を行うこと、および蒸留分離を使わない
塩化水素の分離方法について開示している。さらに、こ
の出願特許に先行技術として、西ドイツ国特許1223815,
1129937 を例示している。またアモルファスシリコンの
製造において用いるプラズマCVD装置の後に、SiH4
スの回収を冷却もしくはモレキュラーシーブスを用いる
方法を開示している。また、三洋電機も同様の方法を開
示している。
【0015】さらに、キクチは半導体製造の排ガスを金
属触媒にて回収する方法に開示を行っている。さらに、
ヘムロック セミコンダクター社(Hemlock semiconduc
tor)法多結晶シリコン製造工程図が、最新太陽光発電
技術「浜川圭弘編著 1984年発刊 槙書店発行」の38
頁に示してあり、出展が、Proc. 15th IEEE Photovolta
ic Specialists Conf. (1981) JPL 資料 JPL 5101-178
となっている。
【0016】この工程図を図7に示す。この方法におい
ては、SIEMENS-TYPE REACTORにおいて多結晶シリコンを
製造しているが、原料としてジクロルシラン(SiH2Cl
2 )を用いており、該SIEMENS-TYPE REACTORにおいて発
生するジクロルシラン、トリクロルシラン(SiHCl3)、
四塩化硅素(SiCl4 )を回収するとともに、ジクロルシ
ラン)を蒸留分離するとともに、再利用する方法となっ
ている。以上のように、過去に多くの塩素化シリコンの
製造方法およびシランガスなども含んでの塩素化シリコ
ンガスの回収方法が開示されている。しかし、これらの
方法が現状の多結晶シリコン製造プロセスに適用され
ず、その結果十分な実績を現在に至るまでにあげていな
いことも現実である。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】以上のように、過去に
多くの多結晶シリコン製造方法においても、原料となる
塩素化シリコンガスの回収についての検討があったと考
えて、差し支えないと思われるがそれが実用化されてい
ないのは、塩素化シリコンを中心とした多結晶シリコン
の製造とそれに伴って発生する塩化水素との間の反応速
度論の問題に立脚することなく、ただ単に、余剰の塩素
化シリコンのみを回収しようとする視点から逃れられな
かったからだと推察される。結果的に、総合的な立場に
たって平衡反応を捉えることがなかったために、本質的
な熱力学的考察がされることもなく、エネルギー投与に
おいて無駄の多いプロセスの構築を余犠なくされたもの
である。
【0018】本発明は、塩素化シリコンと水素により、
多結晶シリコンを製造するとともにそれに伴って発生す
る塩化水素が発生する問題と、かつこの反応と全く逆反
応である塩化水素と金属シリコンとの反応から、塩素化
シリコンと水素とが合成される平衡反応を総合的にとら
え、経済的に有利に未反応の塩素化シリコンを回収しよ
うとする課題に対して、その解決を与えんために鋭利考
察を重ねた結果、到達したものであり、太陽電池用途の
廉価な多結晶シリコン製造方法について、全く新規なプ
ロセスを発明するに至ったものである。
【0019】まず、塩素化シリコンとしてトリクロルシ
ランを例に上げて解説する。ガス状の塩素化シリコンと
してトリクロルシラン(TCS = SiHCl3)と水素(H2)か
ら、固体シリコン(Si)と塩化水素ガス(HCl )とが発
生する反応形態と、固体シリコン(Si)と塩化水素ガス
(HCl )から、ガス状の塩素化シリコン化合物としてト
リクロルシラン(TCS = SiHCl3)と水素(H2)とが発生
する反応形態とが存在する可逆な反応である化学式
(1)
【0020】
【化1】 TCS + H2 ←→ Si + 3HCl (1) に示すような、反応を有するとともに、数式(1)
【0021】
【数1】 Kp = [TCS] * [H2] / [HCl]3 (1) に示すような、平衡関係にあることに着目し、Kp にて
表される反応平衡係数を本発明の土台とした。
【0022】化学気相蒸着方法において、1100℃に近い
温度にてトリクロロシランと水素から、多結晶シリコン
を製造する工程から排出される塩化水素ガスと残余のト
リクロロシランと水素との平衡バランスを考慮して、多
結晶シリコンの生産によって失われるシリコンを適時、
金属シリコンとして供給することによって多結晶シリコ
ンを製造せんと欲したことにより、本発明に到達したも
のである。
【0023】
【課題を解決するための手段】本発明は、ガス化された
塩素化シリコンと水素を主体としたガスを供給し、多結
晶シリコンと塩化水素ガスとを反応平衡関係もしくはそ
れに近い状態にて発生せしめるA室(1)と、塩化水素
を主体としたガスと金属シリコンとを供給し、ガス化さ
れた塩素化シリコンと水素とを反応平衡関係もしくはそ
れに近い状態にて発生せしめるB室(2)とからなると
ともに、A室(1)にて発生および残余のガスを管路A
B(31)を介してB室(2)に供給する部分と、B室
(2)にて発生および残余のガスを管路BA(32)を
介してA室(1)に供給する部分とからなる装置であっ
て、B室(2)に金属シリコンを供給することによっ
て、A室(1)から多結晶シリコンを取り出すことを可
能にせしめたことを特徴とする多結晶シリコン製造装置
を提供するものである。
【0024】また、本発明は、該記載のA室(1)のガ
スおよび多結晶シリコンが、1020℃以上1250℃以下に保
持されており、かつA室(1)の雰囲気が常圧以下の圧
力であるとともに、A室(1)に供給せしめるガス化さ
れた塩素化シリコンに対して、同じく供給せしめる水素
のモル比が9モル倍以上 199モル倍以下であることを特
徴とする多結晶シリコン製造装置を提供するものであ
る。
【0025】また、本発明は、該記載のガス化された塩
素化シリコンが、四塩化珪素、トリクロロシラン、ジク
ロロシラン、ヘキサクロロジシラン、ペンタクロロジシ
ランのいずれかであることを特徴とする多結晶シリコン
製造装置を提供するものである。
【0026】また、本発明は、該記載のガス化された塩
素化シリコンと水素とが塩化水素とともに、A室(1)
においては多結晶シリコン、およびB室(2)において
は金属シリコンが存在する雰囲気において温度、圧力、
濃度において、平衡関係に存在することを特徴とする多
結晶シリコン製造装置を提供するものである。
【0027】また、本発明は、該記載のB室(2)が、
100℃以上 950℃以下となるように、B室(2)雰囲気
温度が制御可能であるような熱交換器(5)を有すると
ともに、管路BA(32)にガスを昇温せしめることを
目的とした熱交換器を介在せしめることを特徴とする請
求項1記載の多結晶シリコン製造装置を提供するもので
ある。
【0028】また、本発明は、該記載のB室(2)の圧
力を、1atm 以上、30atm 以下に保持する機能を有す
るとともに、管路AB(31)を通過するガスを昇圧す
ることを目的とした昇圧機(6)を介在せしめるととも
に、管路BA(32)にガスを減圧せしめることを目的
とした調圧器を介在せしめることを特徴とする多結晶シ
リコン製造装置を提供するものである。
【0029】また、本発明は、該記載のB室(2)に供
給する水素モル量が、B室(2)の入口においてA室
(1)に存在する水素モル量の1/2 以下1/1000以上に保
持するように、B室(2)内に水素分離装置を設置せし
めたことを特徴とする多結晶シリコン製造装置を提供す
るものである。
【0030】また、本発明は、該記載のB室(2)に供
給する金属シリコンを供給するためのホッパー(4)
が、 200℃以上 400℃以下に加熱されているとともに、
金属シリコン中に含まれる水の含有濃度が 100ppm 以下
であることを特徴とする多結晶シリコン製造装置を提供
するものである。
【0031】また、本発明は、該記載の塩素化シリコン
の純度を98%以上99.99 %以下の品質に維持せしめるた
めの蒸留塔(8)を設置したことを特徴とする多結晶シ
リコン製造装置を提供するものである。
【0032】
【発明の実施の形態】図1は、塩素化シリコンと水素と
から、多結晶シリコンと塩化水素ガスを形成するA室
(1)と、金属シリコンと塩化水素ガスから、塩素化シ
リコンガスと水素を製造するためのB室(2)とがそれ
ぞれ、管路AB(31)、管路BA(32)の介在によ
って接続されている。流れる流体は、塩素化シリコン、
水素、塩化水素ともにガスであり、A室(1) → 管
路AB(31) → B室(2)→ 管路BA(32)
→ A室(1) の順であり、この逆に流体が流れる
ことはない。
【0033】A室(1)に供給されるガスは、塩素化シ
リコンガスと水素が主体であるガスであり、これらのガ
スは互いに反応することにより、多結晶シリコンと塩化
水素ガスを形成する。A室(1)の雰囲気温度は1020℃
以上1250℃以下であり、好ましくは、1050℃以上1220℃
以下であり、より好ましくは、1070℃以上1200℃以下で
ある。
【0034】本発明において適用される塩素化シリコン
は、四塩化珪素(SiCl4 、略式記号STC)の他、トリ
クロロシラン(SiHCl3、略式記号TCS)、ジクロロシ
ラン(SiH2Cl2 、略式記号DCS)、さらに高次のヘキ
サクロロジシラン(Si2Cl6、略式記号HCDS)、ペン
タクロロジシラン(Si2HCl5 、略式記号PCDS)等が
ある。
【0035】これらの塩素化シリコンガスと水素が、上
記、雰囲気温度下のような高温度域において反応するこ
とによって、塩素化シリコンガスが熱分解され、珪素が
多結晶シリコンとして析出する他、塩化水素ガスが発生
する。
【0036】これらの反応を列挙すると、化学式
(2)、化学式(1)、化学式(3)、化学式(4)お
よび化学式(5)
【0037】
【化2】 STC + 2H2 ←→ Si + 4HCl (2)
【0038】
【化3】 TCS + H2 ←→ Si + 3HCl (1)
【0039】
【化4】 DCS ←→ Si + 2HCl (3)
【0040】
【化5】 HCDS + 3H2 ←→ 2Si + 6HCl (4)
【0041】
【化6】 PCDS + 2H2 ←→ 2Si + 5HCl (5) のようになる。
【0042】さらに、これらの反応において、多結晶シ
リコンを析出することにおいて、有効な温度範囲につい
ては、反応系の違いにより異なってくる。一般に、硅素
に結合している塩素原子の数が増大するにつれて、シリ
コン原子からの離脱により多くのエネルギーが必要とな
ることから、より高い反応温度が必要となってくる。従
って、STCを用いた場合に適する温度範囲は好ましく
は、1100℃以上1250℃以下であり、より好ましくは、11
20℃以上1220℃以下であり、更に好ましくは、1150℃以
上1200℃以下である。さらに、TCSを用いた場合に適
する温度範囲は好ましくは、1050℃以上1200℃以下であ
り、より好ましくは、1070℃以上1180℃以下であり、更
に好ましくは、1100℃以上1150℃以下である。DCSを
用いた場合に適する温度範囲は好ましくは、1020℃以上
1150℃以下であり、より好ましくは、1050℃以上1130℃
以下であり、更に好ましくは、1070℃以上1100℃以下で
ある。
【0043】これらに適する温度範囲に満たない場合に
おいては、塩素化シリコンの熱分解反応は進行しにくく
なってしまうために、十分な速度での多結晶シリコンの
製造が行い得なくなってしまう。一方、これらに適する
温度範囲よりも高い温度範囲にて熱分解を進行させた場
合においては、気相中での塩素化シリコンの熱分解が進
行し、その結果、気相中での成膜活性種としての形成シ
リコンラジカル同士の反応がより進行するようになり、
その結果、気相中での多シリコン結合の固まりが形成さ
れやすくなる結果、粗悪な品質の多結晶シリコンが形成
されることになってしまう。
【0044】また、A室(1)における水素の分圧は、
多結晶シリコンの直接的な原料としての塩素化シリコン
の9モル倍以上、 199モル倍以下であることが必要であ
る。水素の分圧が9モル倍を越える場合には、水素と塩
素化シリコンのみが存在している状態では、塩素化シリ
コンの濃度が10%を越える場合に相当し、上記の温度
範囲において、多結晶シリコンの形成は行われずに、逆
にエッチング領域に入ってしまうのである。これについ
ては、化学式(1)の逆方向(左方へ)に反応が進行す
ることになるためであり、詳しくはこの平衡について論
じる後において詳述する。
【0045】さらに水素の分圧が 199モル倍未満の場合
には、塩素化シリコンの濃度が0.2%という極めて低い状
態になってしまうために、もはや製造に用いるのに有効
な多結晶シリコン製造速度というものが確保できなくな
ってしまうためである。 水素の分圧は、より好ましく
は塩素化シリコンの14モル倍以上、99モル倍以下である
方が良い。更に好ましくは、16モル倍以上、49モル倍以
下である。ここで、注意しておかなくてはならないこと
は、この水素分圧の塩素化シリコンに対する比が、A室
(1)の雰囲気温度にも密接に関係していることであ
り、これらは化学式(1)に示す反応の平衡関係にある
ことと密接である。
【0046】ついで、本発明の根幹をなす、化学式
(1)の平衡論について説明する。これらの反応を十分
詳しく観察することにより、以下の知見を得るに至っ
た。それを、化学式(1)
【0047】
【化7】 TCS + H2 ←→ Si + 3HCl (1) のTCSの熱分解反応を例にとり、詳細に解説する。
【0048】この場合、化学式(1)のガス状の塩素化
シリコン化合物としてトリクロロシラン(TCS = SiHC
l3)と水素(H2)から、固体シリコン(Si)と塩化水素
ガス(HCl )とが発生するような反応形態と、固体シリ
コン(Si)と塩化水素ガス(HCl )から、ガス状の塩素
化シリコン化合物としてトリクロロシラン(TCS = SiHC
l3)と水素(H2)とが発生するような逆反応形態とが存
在する可逆な反応である。さらに、この平衡係数Kp
は、数式(1)
【0049】
【数2】 Kp = [TCS] * [H2] / [HCl]3 (1) で表され、これらの平衡係数Kp と温度の関係を表1に
示す。そして、これらを温度の逆数を横軸にしてプロッ
トしたものが図2であり、アルレニウスの関係に従って
いることが読み取れる。
【0050】さらに、これらの平衡関係の計算を行うた
めに、まず、その全圧をΠとし、TCSの相対組成比を
X 、水素の相対組成比をY 、そして塩化水素の相対組成
比をZ とする。この時、TCSの分圧PTCS は、数式
(2)
【0051】
【数3】 PTCS = Π * X /(X + Y + Z ) (2) で表され、水素H2の分圧PH2は、数式(3)
【0052】
【数4】 PH2 = Π * Y /(X + Y + Z ) (3) で表され、塩化水素ガスHCl の分圧PHClは、数式
(4)
【0053】
【数5】 PHCl = Π * Z /(X + Y + Z ) (4) で表される。したがって、これらを総括すると、平衡定
数Kp は、数式(5)
【0054】
【数6】 Kp = PTCS *PH2 /( PHCl 3) ={ X * Y * (X+Y+Z)}/{Π Z3 } (5) にて表すことができるようになる。従って、この数式
(5)に基づいて平衡係数Kp から所定の温度、圧力に
おいて、与えられた濃度から形成される物質の上下限を
見積もることができるようになり、反応が進行する方向
の目安がたてられることになる。
【0055】以上のようにして考察した結果、表1およ
び図2に示した温度と平衡係数Kpの関係から、各状態
における反応の進行を予測できるようになる。そのため
には、与えられた条件、すなわち反応系において想定し
た組成存在比、圧力を平衡係数Kp によって与えられて
いる計算式「数式(5)」に従って計算をすることによ
り、反応の進行予測を行わせることができる。そこで、
この予測のために用いる計算式を下記のように定め、組
成状態値Kとする。
【0056】
【数7】 K ={ x * y * (x+y+z)}/{Π z3 } (6) なお、組成状態値は、与えられた仮想の組成比(TCS
の場合はx 、水素の場合はy 、塩化水素の場合はz )に
おいて、計算される値であって、現実の系においてこの
ような値がそのまま存在する訳ではなく、反応の進行を
見積もるための目安である。
【0057】まず、雰囲気温度においては、 100℃温度
が低下するごとに、約10倍、反応平衡定数Kp が増大
する。すなわち、TCSおよび水素が形成されやすくな
るとともに、多結晶シリコンの析出および塩化水素ガス
の発生が抑制される方向に働く。また、圧力の増加が生
じるごとに、塩化水素ガスの発生が抑制される方向に働
くことになり、その結果、TCSと水素がより形成され
やすくなる傾向にあることがわかる。また、水素ガス濃
度の増加は、結果的に反応平衡係数Kp が一定のもと
で、TCSの発生を抑制する結果となり、逆に多結晶シ
リコンの析出を促進させる結果として働く。
【0058】以上の結果から、温度、圧力、それぞれの
ガスの組成の変化により、数式(1)に示す平衡関係の
束縛状態のもとで、化学式(1)に示すような反応の進
行がどの方向にあるかを設計することができるようにな
り、その結果、A室(1)において多結晶シリコンの製
造の目的のために消費されるシリコンを、B室(2)に
おいて補うことにより、結果として多結晶シリコンの製
造を連続して行わさせしめることができるものである。
【0059】まず、温度の変化により平衡関係をずらす
ことにより、A室(1)とB室(2)の平衡関係を著し
く異ならしめることによって、A室(1)において多結
晶シリコンを製造し、かつB室(2)において金属シリ
コンを投入することにより、塩素化シリコンガスを製造
することが可能であることを示す。これは、反応平衡関
係にある反応系の温度を振り子のように操作することに
よって、2つの状態を行き来することによって反応を促
進もしくは制御するものであって、吸着による温度スイ
ング方式と良く似た方法であることがわかる。
【0060】このことを図3に基づいて説明を行う。図
3においては、B室(2)を冷却するための熱交換器
(5)が設置されている。A室(1)の雰囲気温度を11
00℃とする時、平衡係数Kp は2.82である。これに対し
て、B室(2)の雰囲気温度を 723℃とすると、この時
の平衡係数Kp は1.21*103 である。これを、数式
(6)に示した組成状態値の計算式にあてはめて計算を
行うと下記のようになる。すなわち、全圧力を1atm と
する時、A室(1)の雰囲気温度1100℃の時において、
TCSの初期相対比を0.049 、水素の初期相対比を0.94
9 、塩化水素ガスの初期相対比を0.03とした時、組成状
態値は下記のようになる。
【0061】
【数8】 K = x * y * (x+y+z)/(Π z3 ) = 0.049 * 0.949 * (0.049+0.949+0.003)/(1 *0.0033 ) = 1.723 *107 (7) この時、1100℃の時の反応平衡係数Kp =2.82 に比較し
て極めて大きな値となっており、TCSの熱分解が促進
される範囲になっていることが分かる。従って、1100℃
という温度条件のもとにおいて、TCSの分解が促進さ
れる結果となることは明らかである。
【0062】ここで、温度を 723℃に低下させた場合に
ついて、同じく全圧力を1atm の条件のもとで考える。
723℃のB室(2)の雰囲気温度において、TCSの相
対比を0.02、水素相対比を0.92、塩化水素ガス相対比を
0.09とした時、組成状態値Kは下記のようになる。
【0063】
【数9】 K = x * y * (x+y+z)/Π z3 = 0.020 * 0.920 * (0.020+0.920+0.090)/(1 *0.0903 ) = 2.600 *101 (8) となる。 723℃の時の反応平衡係数Kp = 1.21*103
比較して十分に小さな値となっており、TCSの熱分解
は抑制される一方で、逆に金属シリコンの存在条件下に
おいて、塩化水素と金属シリコンが反応することによっ
て、TCSが合成される方向に平衡反応が進行すること
がわかる。
【0064】次に圧力制御による、温度の場合と同様に
圧力スイング方式に擬せられる方法について解説する。
すなわち、1100℃の温度条件にあって、全圧力を1atm
とする時に、反応後のA室(1)出口ガスの相対存在比
を、それぞれTCSにおいて0.02、水素存在比を0.92、
そして塩化水素ガスの相対比を0.09とした時、組成状態
値Kは下記のようになる。すなわち、
【0065】
【数10】 K = x * y * (x+y+z)/(Π z3 ) = 0.020 * 0.920 * (0.020+0.920+0.090)/(1 *0.0903 ) = 25.997 (9) この温度条件においては、平衡係数Kp が2.82であるが
ために、よりTCSが減少する方向に反応が進行するこ
とになる。なお、この場合が、圧力スイング状態による
方法の初期状態となる。
【0066】続いて、これらのガスを同温度条件、即
ち、1100℃の温度条件にあって、全圧力を昇圧すること
によって20atm とする時に、平衡がどの方向に進むか
についての計算を行うと以下のようになる。まず、反応
後のA室(1)出口の相対比を、それぞれTCSにおい
て0.02、水素の存在組成比を0.92、そして塩化水素ガス
の存在組成比を0.09として同じであるとする。ここで、
B室(2)にこれらのガスが流入した後に、圧力を20
atm に上昇させた場合、反応に結果生じる組成状態値K
は下記のようになる。
【0067】
【数11】 K = x * y * (x+y+z)/(Π z3 ) = 0.020 * 0.920 * (0.020+0.920+0.090)/(20*0.0903 ) = 1.2998 (10) この結果、圧力を20atm に昇圧することにより1100℃
における平衡係数Kp2.82を組成状態値Kが下回る結果
となり、反応がTCSの合成方向に進行していくことが
予想できることになる。
【0068】このように、B室(2)の圧力を増加させ
るための昇圧機(6)をとりつけた多結晶シリコン製造
装置を図4に示す。なお、本昇圧機(6)の能力は30
atmにまで圧力を増加させることのできる能力があるも
のとする。しかし、圧力変化による反応の移行によるT
CSの合成は、その推進力が弱く反応を有効に行わしめ
るだけの有効な推進力を持たない。従って、温度の変化
と併用した方法を用いることが望ましいと考えられる。
また、濃度を変化させることにより、反応平衡関係を利
用した、金属シリコンから多結晶シリコンを製造する方
法も可能である。A室(1)においては、シリコンの析
出の結果、多結晶シリコンを製造する方法において、多
量の水素にて希釈することが必須の条件となることは、
簡単な平衡計算によって確認することができる。
【0069】一方、B室(2)においては、多量の水素
が存在していることによって、反応がTCSの形成方向
に進行することが妨げられる結果となってしまう。従っ
て、水素を反応系から除去することによって、反応をT
CSの製造方向に進行せしめることがより容易になる。
このことから、B室(2)に存在する水素ガスを除去す
ることは、TCSを製造することにおいてより有利な操
作を加えたことになるわけである。
【0070】そこで、B室(2)において水素のみを除
去するような分離機能を持たせることにより、B室
(2)における反応をより多くのTCSを製造する方向
に進行せしめることができるようになる。この場合を仮
に組成スイングと名付けておく。723 ℃のB室(2)の
雰囲気温度において、TCSの組成比を0.02、水素の組
成比を0.92、塩化水素ガスの組成比を0.09とした時、組
成状態値Kは該述したように、 K = 2.60
0 *101となる。そしてこの状態が、組成スイングにおけ
る初期状態であると見なすことにする。
【0071】この温度条件においては、平衡係数Kp が
2.82であるがために、よりTCSが減少する方向に反応
が進行することになる。しかし、この状態のもとで水素
だけの分離を行い、同圧力条件を維持しながら、水素を
10分の1にすると、つまりTCSの相対比を0.02、水
素の相対比0.092 塩化水素ガスの相対比を0.09とした場
合、
【0072】
【数12】 K = x * y * (x+y+z)/(Π z3 ) = 0.020*0.092 * (0.020+0.092+0.090)/(1 *0.0903 ) = 0.5098 (11) 従って、このように水素を反応系から分離することによ
って反応平衡係数Kpが2.82であるために、この値より
も小さい組成状態値Kを有する系はにおいては、TCS
の合成反応を促進させることができるようになる。
【0073】水素ガスの分離については、B室(2)の
内部において行わせることが望ましい。水素を分離をよ
り効果的に行うためには、分離膜を水素を通過させるた
めに圧力をかけることがより必要になってくる。そし
て、この圧力をかけるということが、系内のバランスを
TCSの製造に有利な方向に進行する結果となり、TC
Sの製造上、有利である。さらに、分離膜の保護のため
には、温度を300 ℃以下に低減させることが必要となっ
てくる。そこで、323 ℃にするとともに、全圧力を20
atm に保持した場合の平衡係数を計算すると、下記のよ
うになる。323 ℃の時の平衡係数Kp は、4.50*109
ある。
【0074】水素を分離するための機構を備えた本開示
の多結晶シリコン製造装置の概念図を図5に示す。水素
ガス分離器としては、分離膜として用いられるのは、ポ
リイミド、ポリアミド等の高耐熱性樹脂であり、水素と
ヘリウムを除く他のガスとの透過係数が10倍以上の差
を有しているものを特徴としていることにより、水素ガ
スの分離をより迅速に行わせることができる。
【0075】この水素分離器(7)により、B室(2)
における水素モル量は、A室(1)に存在する水素モル
量の1/2 から1/1000の広い範囲に渡って制御なさしめる
ことができる。さらに、図5に示す装置を用いて、B室
(2)にてTCSの製造を行った系について検討を行
う。
【0076】TCSの相対比を0.02、水素相対比を0.9
2、そして塩化水素ガス相対比を0.09の場合、反応の結
果生じる組成状態値Kは下記のようになる。
【0077】
【数13】 K = x * y * (x+y+z)/(Π z3 ) = 0.020 * 0.920 * (0.020+0.920+0.090)/(20*0.0903 ) = 1.2998 (12) であるから、323 ℃における平衡係数4.50*109 に比較
して極めて小さく、TCSの合成が促進される結果とな
る。さらに、水素を低減させることにより、水素相対比
を0.092 にまで低下させると、
【0078】
【数14】 K = x * y * (x+y+z)/(Π z3 ) = 0.020 * 0.092 * (0.020+0.092+0.090)/(20*0.0903 ) = 0.0255 (13) となるので、より反応が促進される結果となる。このよ
うに水素ガスの分離を行わせることにより、水素ガス分
圧の低下により反応が、TCSの製造方向に傾き、どの
地点においてTCSの製造を行うかは設計により異な
る。
【0079】以上、これまでの組成状態値の結果をまと
めた結果を表2に示す。この表においては、温度スイン
グの場合、圧力スイングの場合、組成スイングの場合、
そしてそれらを統合しての複合スイングの場合について
まとめている。
【0080】さらに、確認のために、1100℃という条件
のもとで、多結晶シリコン製造において、水素の分圧が
低い場合にどのように反応系が進むのかということにつ
いて検討をしておく。A室(1)に与えられる原料ガス
の組成比の本願の特許請求の範囲である、TCSの相対
比を0.049 、水素相対比を0.949 、そして塩化水素ガス
相対比を0.003 の場合の組成状態値Kは、K = 1.72 *
107 であり、系はTCSの減少方向に進行することが
わかる。
【0081】次いで、室Aに与えられる原料ガスの組成
比の本願の特許請求の範囲に外れたTCSの相対比を0.
149 、水素相対比を0.849 、そして塩化水素ガス相対比
が、0.003 の場合、つまりTCSの濃度が15%に達し
た場合の組成状態値Kは下記のようになる。
【0082】
【数15】 K = x * y * (x+y+z)/(Π z3 ) = 0.149 * 0.849 * (0.149+0.849+0.003)/( 1*0.0033 ) = 4.6899*106 (14) であり、この場合においてはTCSの減少が生じるよう
に判断される。しかし、この場合においては、容易にT
CSの減少が生じ、逆にHCl の増加が生じる結果、それ
らの組成は容易に逆転するものと考えられる。
【0083】例えば、供給されたTCSの半分が消費さ
れた場合においては、それらの相対組成比は、TCSの
相対比は0.075 、水素相対比を0.825 、そして塩化水素
ガス相対比が、0.225 となり、組成状態値Kは下記のよ
うになる。
【0084】
【数16】 K = x * y * (x+y+z)/(Π z3 ) = 0.075 * 0.825 * (0.075+0.825+0.225)/( 1*0.2253 ) = 6.1111*100 (15) この結果からは、組成状態値Kはいまだ、反応平衡係数
Kp を越えており、反応はTCS減少の方向に進むと判
断されるが、逆に多結晶シリコンの形成における極めて
多結晶シリコンが近い領域においては、塩化水素が過剰
になることが予想され、エッチングの現象が進行するこ
とが予想される。
【0085】さらに、B室(2)に供給される金属シリ
コンは、十分に水分を除去した乾燥されたものである必
要がある。これは、本発明による反応系が塩化水素ガス
や塩素化シリコンを主体としたものであるために、金属
シリコン中に含まれる水分によって腐食性のガスが発生
し、反応器や配管を損傷せしめる恐れがあるためであ
る。
【0086】そのために、B室(2)に供給する金属シ
リコンを供給するためのホッパー(4)が、 200℃以上
400℃以下に加熱されていることが必要である。より好
ましくは、 250℃以上 400℃以下に加熱されていること
であり、更に好ましくは、300 ℃以上 400℃以下に加熱
されていることである。金属シリコン中に含まれる水の
含有濃度が 100ppm 以下にまで、低減することができれ
ば、腐食の問題は大幅に軽減することができるのであ
る。
【0087】さらに、A室(1)に供給するシリコン原
料としてのTCSを高純度化するための蒸留塔(8)を
備えた装置を図6に示す。図6では、蒸留により除去し
た不純物を一時的にストックするための廃棄タンク
(9)も示されている。
【0088】このように蒸留塔(8)を設置することに
より、系内に存在する不純物を除去するための廃棄タン
ク(9)を設置することにより、より高品質の多結晶シ
リコンを製造することができる。但し、この廃棄タンク
(9)は、図6においては、塔頂側に配置しているが、
塔底側に配置してもかまわない。また両方に設置する場
合もある。
【0089】このようにして、蒸留塔(8)を備えた設
備を設けることにより、不純物を含む場合においても塩
素化シリコンの純度を98%以上99.99 %以下の範囲に維
持できることが可能であり、高品質の多結晶シリコンを
製造することが可能である。以上の点をふまえて、過剰
の水素の存在下における平衡状態を数式(5)に従って
計算を行うものとする。
【0090】今、室温における初期のTCSの供給モル
数を1.34kgmol/Hとし、さらに水素がその2
0倍モル量、すなわち、26.8kgmol/Hとす
る。これは、全圧力が1atmに保たれたまま、温度の
変化により数式(5)に従い、反応平衡係数Kpに達し
た時のそれぞれの濃度を以下のように計算できる。 [TCS]=x , [H2]=26.8−(1.34−x)=25.46+
x , [HCl]=y また、[TCS]+1/3[HCl]=1.34より、
x+y/3=1.34 よって、y=−3x+4.02 従って、
【0091】
【数17】 Kp=x*(25.46+x)/(4.02−3x)3 (16) 数式(16)に、与えられた温度において反応平衡係数
Kpが成立するように、xを求めれば、上記前提条件の
もとでの濃度が計算できる。
【0092】数式(16)に基づき、設定された温度条
件における反応平衡が成り立つTCSのモル数xを求め
ると、表3のようになる。この表3をもとに、TCSの
濃度xとその値に対応する反応平衡係数Kp(温度に対
応)との関係をプロットしたものが図8である。グラフ
上、描かれた曲線の右側はTCSの濃度が過剰な状態を
示し、TCSは減少の方向に進み、描かれた曲線の左側
においてはTCS濃度が不足のため増加の方向へ進むこ
とを示している。
【0093】以上の反応は、B室(2)において生じる
ものであり、その温度範囲は、100℃以上、950℃
以下であり、より好ましくは200℃以上、823℃以
下である。平衡関係から言えば、温度がより低い方が好
ましいが、あまり温度が低すぎると(100℃未満)、
反応速度が低下し、実用的でなくなってしまう。 さら
に、B室(2)の圧力を、1atm 以上に保持することに
より、平衡状態をTCSの形成に、有利に運ぶことがで
きる。しかし、30atm 以上にまで圧力を高める必要は
ない。
【0094】以上の事から、圧力については、A室
(1)の圧力は通常1atm であるため、1atm 以上、3
0atm 以下に保持する機能を有することにより、B室
(2)の反応を有利に運ぶことができるのである。その
ための機能として、管路AB(31)を通過するガスを
昇圧することを目的とした昇圧機を設置することが望ま
しく、と同時に管路BA(32)にガスを減圧せしめる
ことを特徴する機能を有する調圧器を設置することが望
ましい。
【0095】圧力については、好ましくは1atm 以上、
20atm 以下である。20atm までの圧力においては圧
力の上昇が平衡関係をTCSの合成に有利になることに
極めて有効であるためであり、逆に30atm 以上の範囲
においては、圧力の上昇がプロセスサイドの観点から見
て、必ずしも有利であるとは言えないためである。
【0096】本発明における不純物として最も留意しな
ければならないものは、水である。水の存在は、塩化水
素と反応を生じ、その結果、通常のSUS等の金属にお
いて構成された反応器の内壁を腐食せしめるためであ
る。また、たとえ耐腐食性のある金属であるジルコニウ
ムやチタン合金等を用いた場合においても、長期の使用
にあたっては腐食される恐れがあり、好ましいとは言え
ない。水の混入の最大の要因は、原料となる金属シリコ
ンであり、従って金属シリコン中の水分を極力低減せし
めることが重要である。そのためには、金属シリコン中
の水分を10ppm 以下にする必要があり、その結果、金
属シリコンを投入前に200℃以上400℃以下の温度
条件にて、より好ましくは300℃以上400℃以下の
温度条件にて加熱し、水分を除去しておく必要がある。
【0097】この加熱は、B室に金属シリコンを投入す
るホッパー(4)においてなされるのが好ましい。ホッ
パー(4)は、B室(2)の上部に取り付けられるのは
好ましく、加熱された金属シリコンが連続的に投与でき
る構造になっていることが望ましい。
【0098】
【表1】
【0099】
【表2】
【0100】
【表3】
【0101】
【発明の効果】本開示の多結晶シリコン製造装置によ
り、これまで使い捨てられていた廃棄ガスの有効再利用
を行うとともに、多結晶シリコンの製造によって消費さ
れたシリコンを、金属シリコンの供給により容易に回復
させることができるようになり、極めて安価に多結晶シ
リコンの製造が行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明において開示している製造装置の基本概
念図である。
【図2】表1より得られた係数を片対数グラフにプロッ
トしたものである。
【図3】B室(2)を冷却するための熱交換器(5)を
設置せしめた概念図である。
【図4】昇圧機(6)を管路AB(31)の末端に設置
せしめた様子を図示したものである。
【図5】水素分離膜をB室(2)に設置せしめた様子を
図示したものである。
【図6】A室(1)に供給する塩素化シリコンを蒸留分
離する装置を備えた本開示の製造装置の概念図である。
【図7】ヘムロック セミコンダクター社(Hemlock se
miconductor)法多結晶シリコン製造工程図である。
【図8】数式(16)を基に求めたTCSの濃度とその
値に対応する反応平衡係数Kpの関係をプロットしたも
のである。
【符号の説明】
1 A室 2 B室 31 管路AB 32 管路BA 4 ホッパー 5 熱交換器 6 昇圧機 7 水素分離器 8 蒸留塔 9 廃棄タンク

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ガス化された塩素化シリコンと水素を主
    体としたガスを供給し、多結晶シリコンと塩化水素ガス
    とを反応平衡関係もしくはそれに近い状態にて発生せし
    めるA室(1)と、塩化水素を主体としたガスと金属シ
    リコンとを供給し、ガス化された塩素化シリコンと水素
    とを反応平衡関係もしくはそれに近い状態にて発生せし
    めるB室(2)とからなるとともに、A室(1)にて発
    生および残余のガスを管路AB(31)を介してB室
    (2)に供給する部分と、B室(2)にて発生および残
    余のガスを管路BA(32)を介してA室(1)に供給
    する部分とからなる装置であって、B室(2)に金属シ
    リコンを供給することによって、A室(1)から多結晶
    シリコンを取り出すことを可能にせしめたことを特徴と
    する多結晶シリコン製造装置。
  2. 【請求項2】 請求項1記載のA室(1)のガスおよび
    多結晶シリコンが、1020℃以上1250℃以下に保持されて
    おり、かつA室(1)の雰囲気が常圧以下の圧力である
    とともに、A室(1)に供給せしめるガス化された塩素
    化シリコンに対して、同じく供給せしめる水素のモル比
    が9モル倍以上 199モル倍以下であることを特徴とする
    請求項1記載の多結晶シリコン製造装置。
  3. 【請求項3】 ガス化された塩素化シリコンが、四塩化
    珪素、トリクロロシラン、ジクロロシラン、ヘキサクロ
    ロジシラン、ペンタクロロジシランのいずれかであるこ
    とを特徴とする請求項1記載の多結晶シリコン製造装
    置。
  4. 【請求項4】 ガス化された塩素化シリコンと水素とが
    塩化水素とともに、A室(1)においては多結晶シリコ
    ン、およびB室(2)においては金属シリコンが存在す
    る雰囲気において温度、圧力、濃度において、平衡関係
    に存在することを特徴とする請求項1記載の多結晶シリ
    コン製造装置。
  5. 【請求項5】 請求項1記載のB室(2)が、100℃以
    上 950℃以下となるように、B室(2)雰囲気温度が制
    御可能であるような熱交換器(5)を有するとともに、
    管路BA(32)にガスを昇温せしめることを目的とし
    た熱交換器を介在せしめることを特徴とする請求項1記
    載の多結晶シリコン製造装置。
  6. 【請求項6】 請求項5記載のB室(2)の圧力を、1
    atm 以上、30atm以下に保持する機能を有するととも
    に、管路AB(31)を通過するガスを昇圧することを
    目的とした昇圧機(6)を介在せしめるとともに、管路
    BA(32)にガスを減圧せしめることを目的とした調
    圧器を介在せしめることを特徴とする請求項5記載の多
    結晶シリコン製造装置。
  7. 【請求項7】 請求項5記載のB室(2)に供給する水
    素モル量が、B室(2)の入口においてA室(1)に存
    在する水素モル量の1/2 以下1/1000以上に保持するよう
    に、B室(2)内に水素分離装置を設置せしめたことを
    特徴とする請求項5記載の多結晶シリコン製造装置。
  8. 【請求項8】 請求項5記載のB室(2)に供給する金
    属シリコンを供給するためのホッパー(4)が、 200℃
    以上 400℃以下に加熱されているとともに、金属シリコ
    ン中に含まれる水の含有濃度が 100ppm 以下であること
    を特徴とする請求項5記載の多結晶シリコン製造装置。
  9. 【請求項9】 請求項1記載の塩素化シリコンの純度を
    98%以上99.99 %以下の品質に維持せしめるための蒸留
    塔(8)を設置したことを特徴とする請求項1記載の多
    結晶シリコン製造装置。
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