JPH10281087A - 真空ポンプ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 半導体製造設備等に用いられる真空ポンプに
おいて、小型で、クリーンでかつ低消費動力、低騒音の
真空ポンプを実現することを目的とする。 【解決手段】 回転軸１、２に配備されている歯車１
７、１８を吸気口１１に近いロータ６、７の上端部に取
り付けることにより回転軸１、２が互いに回転角を制御
しながら回転し始めると、ポンプ内部でも圧力分布が生
じはじめ、ケーシング１０の中でもロータ上端よりも吸
気口１１に近い空間は数百パスカル以下の真空となり、
ロータよりも排気口１２側の空間は大気圧に近い圧力と
なる。数百パスカルの雰囲気中でロータ６、７や歯車１
７、１８が回転する場合、気体分子の数が少ないため気
体と回転体との間で生じる摩擦が少なく、摩擦トルクお
よび摩擦により発生する音が格段に小さくなる上、さら
に、低トルクで低消費動力かつ低騒音になるという効果
が得られる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】この発明は半導体製造設備等
に用いられる真空ポンプに関するものである。

【０００２】

【従来の技術】近年は、オイルフリーという特徴を持つ
ドライポンプと呼ばれる真空ポンプが半導体等の製造装
置に多く用いられている。ドライポンプは一般に同期回
転する複数個のロータが互いに逆回転する２つの回転軸
に取り付けられた構造となっており、ロータ間およびロ
ータとハウジングの隙間を微小に保つことにより、オイ
ルのないドライな状態で閉込空間からの気体の漏洩を抑
え、排気を行う原理になっている。

【０００３】図３は従来の容積式真空ポンプの一種であ
るスクリュー型のドライ真空ポンプを示すものである。
図３においてこの真空ポンプは、ハウジング１１４と、
吸気および排気の作用を行う複数個のロータ１０４、１
０５と回転軸１０２、１０３、これらを支持する軸受１
１５、１１６、１１７、１１８と、動力源のモータ１０
８とその動力を伝達する複数個の歯車１０９、１１０、
１１１、１１２で構成される。

【０００４】スクリュー型のドライ真空ポンプは、各ロ
ータ１０４、１０５のそれぞれにネジ溝１０６、１０７
の凹凸が形成されていて、お互いの凹凸を組み合せるこ
とにより両ロータ１０４、１０５とハウジング１１４の
３者の間に密閉空間を作り出している。各ロータ１０
４、１０５およびこれらに形成されるネジ溝１０６、１
０７の噛み合い部分は、回転による両者の噛み込みを防
ぐため、凹部と凸部の間に微小な隙間をもたせるように
設計されており、ロータの回転中にもこの微細な隙間を
維持させる施策として、図３ではモータ１０８の動力を
伝達する歯車１１１，１１２を設け、各ロータ１０４、
１０５の回転数と回転角を一致させるための同期歯車と
しても用いている。前記両ロータ１０４と１０５が互い
に逆回転方向に、しかも同じタイミングで回転すると、
その回転に伴い、前記密閉空間の位置と容積が変化し
て、吸気と吐出が繰り返される。

【０００５】図３のスクリュー型真空ポンプでは、２個
のロータ１０４、１０５の同期回転はタイミング歯車１
１１、１１２の働きによっている。すなわち、モータ１
０８の回転は、駆動歯車１０９から中間歯車１１０に伝
達され、両ロータ１０４、１０５の回転軸に設けられて
互いに隙間なく噛み合っているタイミング歯車の一方１
１１に伝達される。両ロータ１０４、１０５の回転角の
位相はこれら２個のタイミング歯車１１１、１１２の噛
み合いにより調整されている。この種の真空ポンプで
は、このように、モータの動力伝達と同期回転に複数個
の歯車を用いているので、前記各歯車が納められている
機械作動室に満たされた潤滑油１１９が前記複数個の歯
車に供給される構成となっている。

【０００６】このような構成からなる２つのロータを持
つスクリュー型真空ポンプには、歯車を用いた接触型
の同期回転であるため回転数の高速化ができずポンプ作
用を行うロータ部が大型化する、動力伝達と同期回転
のために多数の歯車を必要とし部品点数が多く装置が大
きくかつ複雑になる、複数個の歯車は全て接触によっ
て動力を伝達するので磨耗や焼き付き防止のため歯車の
接触部分には潤滑油を供給する必要があり、この潤滑油
が真空排気経路に漏洩しないようにオイルシールの部品
が必要となる、複数個の歯車は全て潤滑油を含んだ大
気圧に近い圧力の雰囲気中で回転させるため、歯車の歯
部での風損が生じモータの動力の損失が多くなる、複
数個の歯車が機械的接触および雰囲気中の風切り音によ
って振動および騒音の原因となっている 等の問題点が
あった。

【０００７】そこで上記した課題を解決するために、本
出願の発明者らは２つのスクリューロータの組合せから
なる容積式真空ポンプのロータの２つの軸を電子制御に
より同期運転することにより、小型で高速回転する広帯
域用複合型真空ポンプを特開平４−１７５４９１号によ
り既に提案している。

【０００８】

【発明が解決しようとする課題】本出願の発明者らが既
に提案した電子制御により同期運転を行う上記複合型真
空ポンプでは、従来のような動力伝達およびロータの回
転角のタイミングを取るための複数個の歯車をなくすこ
とにより、上記課題の〜を解決することを前記特開
平４−１７５４９１号公報に開示している。

【０００９】そこで、本発明では残された、歯車の歯
部での動力損失の問題および歯車の歯部が原因となる
振動、騒音の問題を解決することを目的とする。

【００１０】

【課題を解決するための手段】この課題を解決するため
に本発明は、ハウジング内で圧力差を作り出す同期回転
する複数個のロータよりも吸気口に近い側に作り出され
る圧力の低い空間内に、ロータ同士の接触を防止するた
めの複数個の歯車が配置されるように構成したものであ
る。これにより、消費動力が少なく、低騒音低振動の真
空ポンプが得られる。

【００１１】

【発明の実施の形態】本発明の請求項１に記載した発明
は、複数個のロータとそれを独立して回転させるための
複数個のモータおよび検出手段と、ロータ同士の接触を
防止するための複数個の歯車からなる容積式真空ポンプ
において、これを運転したときロータよりも吸気口に近
い側に作り出される圧力の低い空間内に前記複数個の接
触防止用歯車が配置されるように構成したものである。
両ロータが互いに逆方向にしかも同期して回転すると、
その回転に伴い、両ロータとケーシングに囲まれて形成
される密閉空間の位置と容積が変化して、吸気と排気が
繰り返される。これによって、ポンプ内部で圧力分布が
生じ、ロータよりも吸気口側の空間は数百パスカル以下
の真空となり、ロータよりも排気口側の空間は大気圧に
近い圧力となる。本発明の真空ポンプに設けられた接触
防止用歯車は、ポンプの運転中に作り出される真空雰囲
気中で回転するような位置に配置されている。数百パス
カルの雰囲気中では、気体分子の数が少なく気体と回転
体との間で生じる摩擦が少なく、摩擦トルクおよび摩擦
により発生する音が格段に小さくなる上、さらに、低ト
ルクで低消費動力かつ低騒音になるという作用を有す
る。

【００１２】次に、本発明の一実施の形態における真空
ポンプについて、図１を用いて説明する。

【００１３】（実施の形態１）図１は本発明の一実施形
態としての真空ポンプを示す。第１回転軸１、第２回転
軸２はハウジング３内に収納された軸受４、５によって
支持されている。第１回転軸１および第２回転軸２には
筒型ロータ６、７が嵌合されている。ケーシング１０の
上部には吸気口１１が、ケーシング１０の下部には排気
口１２が設けられている。前記第１回転軸１と第２回転
軸２の下部には、第１、第２回転軸１、２を駆動するた
めのモータ１３、１４と回転位置センサー１５、１６が
配備されている。各ロータ６、７の外周面には互いに噛
み合うようにしてネジ溝８、９が形成されており、ロー
タ６、７の各上端面には、ネジ溝８、９同士の接触を防
止する歯車１７、１８が設けられている。回転軸１、２
が互いに回転角を制御しながら回転し始めると、これら
の両ネジ溝８、９の噛み合い部分の凹部とケーシング１
０および互いに対向するロータ６、７のネジ溝８、９の
凸部に囲まれて形成された密封空間が、周期的に容積変
化を起こし、この容積変化により吸入、排気の作用を繰
り返すようになっている。この作用によって、毎分数千
回転以上の回転数になるとポンプ内部でも圧力分布が生
じはじめ、ケーシング１０の中でもロータ６、７上端よ
りも吸気口１１に近い空間は数百パスカル以下の真空と
なり、ロータ６、７よりも排気口１２側の空間は大気圧
に近い圧力となる。本実施形態においては接触防止歯車
１７、１８はともに吸気口１１に近いロータ６、７の上
端部に取り付けられているため、ポンプ運転中に作り出
される真空雰囲気中で回転している。数百パスカルの雰
囲気中では、気体分子の数が少なく気体と回転体との間
で生じる摩擦が少なく、摩擦トルクおよび摩擦により発
生する音が格段に小さくなる上、さらに、低トルクで低
消費動力かつ低騒音になるという作用を有する。

【００１４】なお、一対の接触防止用歯車１７、１８は
定常運転時は互いに非接触であるため、従来の機械式同
期制御で用いられるタイミング歯車と異なり油潤滑は不
要である。

【００１５】また、接触防止用歯車１７、１８を例えば
図１のように吸気口１１側に設けると、歯車１７、１８
の外周部とハウジング３間のギャップが小さくなるため
に流路面積が小さくなってしまう。従って、ロータ６、
７が収納される部分のハウジング３の内径Ｒ１、歯車１
７、１８が収納されている部分のハウジング３の内径Ｒ
２としたとき、Ｒ２＞Ｒ１となるように、例えばハウジ
ングに流通溝を形成すれば、流路抵抗の増大による効率
ロスを回避できる。

【００１６】（実施の形態２）図２は本発明の第２の実
施形態を示している。ここでは、接触防止用歯車１７、
１８は必ずしもロータ１９、２０の上端面でなくてもよ
く、ポンプＡのロータ６、７とポンプＢのロータ１９、
２０の中間部に配置してもよいことを示している。要す
るに、接触防止用歯車１７、１８は排気側の圧力よりも
低い圧力の空間内に配置すれば前述した効果を得ること
ができる。

【００１７】

【発明の効果】本発明の真空ポンプは既提案の電子制御
による同期運転方式に加えて、同期制御だけでは保持で
きない非常時の同期ずれによるロータ同士の噛み込みや
接触を防止するための接触防止歯車を真空中で回転する
ように構成することによって、低消費電力、低騒音の真
空ポンプが実現できる。

【００１８】本発明はスクリュー式ロータを用いた真空
ポンプ以外の例えばルーツ式、クロー式等の容積式真空
ポンプにも幅広く適用することができ、その効果は大で
ある。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の真空ポンプの第１実施形態を示す正面
断面図

【図２】本発明の真空ポンプの第２実施形態を示す正面
断面図

【図３】従来の真空ポンプの断面図

【符号の説明】

１、２ 回転軸 ３ ハウジング ４、５ 軸受 ６、７ ロータ １０ ケーシング １１ 吸気口 １２ 排気口 １３、１４ モータ １５、１６ 回転位置センサー １７、１８ 歯車 １９、２０ ロータ

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ハウジングの内部に収納された複数個の
   ロータと、これらのロータの回転軸を支持する軸受と、
   前記ハウジングに形成された気体の吸気口および吐出口
   と、前記複数個のロータをそれぞれ独立して回転させる
   複数個のモータと、前記モータの回転角または回転数を
   検知する検出手段と、前記ロータ同士の接触を防止する
   ために前記回転軸上に設けられた複数個の歯車からな
   り、前記検出手段からの信号を用いて前記ロータを同期
   して回転させることによって前記複数個のロータおよび
   前記ハウジングで形成される密閉空間の容積変化を利用
   して気体の吸気および排気を行う容積式の真空ポンプに
   おいて、運転時、前記ハウジングの吐出口側の吐出圧力
   よりも低い圧力で保たれている前記ハウジングの内部空
   間に前記複数個の歯車が配置されていることを特徴とす
   る真空ポンプ。