JPH10280050A - プレス成形性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法 - Google Patents

プレス成形性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法

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JPH10280050A
JPH10280050A JP8526797A JP8526797A JPH10280050A JP H10280050 A JPH10280050 A JP H10280050A JP 8526797 A JP8526797 A JP 8526797A JP 8526797 A JP8526797 A JP 8526797A JP H10280050 A JPH10280050 A JP H10280050A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】プレス成形性、とくに延性が良好な高強熱延鋼
板を安定してかつ低コストで製造する方法を提供する。 【解決手段】重量% で、C:0.03〜0.2%, Si≦2%, Mn≦2.
5%,P≦0.1%,S≦0.03%,sol.Al:0.01 〜0.1%,N≦0.01%, T
i:0.2%以下有効Ti量(Ti* )0.05% 以上, 残部が実質的
にFeよりなる鋼を連続鋳造によりスラブとした後、直ち
に粗圧延を開始しAr3 〜950 ℃の温度域で終了する。次
に、粗圧延された粗バーに対して下記(1) の再加熱処理
を施し、Ar3 変態点以上の温度で仕上げ圧延を行い、55
0 〜650℃で巻取る。但し、Ti* ={Ti-(47.9/14)N-(47.
9/32)S}、[7000/{2.75-log(Ti*)(C)}-258-t(保熱処理時
間:分)]℃≦T≦[7000/{2.75-log(Ti* )(C)}-223]℃で
かつ、T≧[7000/{2.75-log(Ti* )(C)}-273]℃の温度,
T(℃)まで再加熱した後、t分間の保熱処理を施す工
程…(1)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば自動車ある
いは産業機器の高強度部材などに使用されるプレス成形
性、特に延性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】高強度熱延鋼板は、構造用材料として自
動車をはじめ強度を必要とする各種産業機器に使用され
ている。そして、その多くの部材はプレス成形して使用
されるため、高強度熱延鋼板には優れたプレス成形性が
要求される。しかし、一般に熱延鋼板は高強度化にとも
ないプレス成形性が低下し、これは主として延性の低下
に起因することから、特に延性に優れた高強度熱延鋼板
が切望されている。
【0003】従来より、高強度熱延鋼板はフェライトお
よびパーライト組織をベースとして炭化物形成元素であ
るTi,NbあるいはVの添加により製造されている。
これは、微細な炭化物を析出させることで、粒成長の抑
制による細粒化強化と析出強化を複合させた高強度鋼板
である。ここで、Ti,Nb,V系炭化物の微細析出の
ためには、熱間圧延前はTi,Nb,Vを固溶状態と
し、熱間圧延中および熱間圧延後に炭化物を析出させる
ことが重要である。そこで、例えば第74,75回西山
記念技術講座,33頁(日本鉄鋼協会)に開示されてい
るように、スラブを高温で加熱することで析出物を熱間
圧延前に一旦固溶させる技術がある。
【0004】さらに近年、例えば特開昭59−1773
25号公報や特開昭61−19733号公報に開示され
ているように、熱間圧延終了後、ランナウトテーブル上
での急冷により、ベイナイト等の低温変態組織を有する
高強度熱延鋼板が製造されている。この技術は炭化物形
成元素を添加することなく組織強化により高強度化する
ものであり、延性低下の一因であるパーライトの生成を
抑制することからプレス成形性を向上させることができ
る。しかし、低温変態組織を利用した高強度熱延鋼板を
溶接して使用する場合、溶接時のHAZ部が焼き戻され
て軟質化するという問題を生じる。そこで、例えば鉄と
鋼,vol.68(1982),1211頁に開示され
ているように、Nbを添加した鋼を低温巻取してフェラ
イト+ベイナイト組織とすることで強度を確保しつつ、
溶接時のHAZ部の軟化をNbCの微細析出により防止
する技術もある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、Tiの
ような炭化物形成元素の添加による熱延鋼板の高強度化
において、TiCを微細に析出させるためスラブを高温
加熱して炭化物を一旦固溶させても、粗圧延に続いて仕
上げ圧延をおこなう通常の薄鋼板の製造過程では、粗圧
延終了から仕上げ圧延を開始するまでの搬送の間に、歪
み誘起によりTiCが析出、粗大化するため、仕上げ圧
延直前での固溶Ti量が著しく減少してしまう。そこ
で、粗圧延をTiCの析出開始温度以上で終了すれば、
TiCの析出は防止できるが、この温度を確保するため
にはスラブの加熱温度をさらに高温にする必要がある。
しかし、このような超高温加熱は、エネルギーコストの
増大を招くだけでなく、スラブ加熱中のスケールロス量
の増加による歩留まり低下も発生するため好ましくな
い。このように、粗圧延後に仕上げ圧延をおこなう薄鋼
板の製造プロセスでは、前記従来技術にあるように、T
iCを全固溶させるためのスラブ高温加熱をおこなうだ
けでは、仕上げ圧延の開始までに粗大なTiCが析出し
てしまい、仕上げ圧延から巻取までのプロセスにおいて
微細なTiCを十分に析出させることができない。そこ
で、所望の強度を得るには、Tiを過剰に添加せざるを
得なくなる。ところが、多量のTi添加は、コストが上
昇するだけでなく、同時に主として仕上げ圧延以前に生
成する粗大なTiCの増大を招き、この粗大析出物が加
工時にボイドの起点となり、ボイドの連結による破断を
助長して延性が低下するという問題が生じる。
【0006】また、前記従来技術にあるようにNbを添
加したフェライト+ベイナイト鋼についても、溶接部の
軟化防止のみのためにNbを添加しており、大半の母材
部分においてはNbは強度確保に寄与しておらずコスト
上の無駄が大きい。さらに、フェライト+ベイナイト組
織を得るためには、熱延終了後から巻取るまでのランナ
ウトテーブル上で、最初は徐冷して一部をフェライト組
織とした後、後半で急冷してベイナイト組織を得るとい
う2段冷却をおこなわねばならず、ベイナイト分率を一
定にすることは困難であることから、材質上のばらつき
が大きくなるという問題も生じる。
【0007】本発明の目的は上記のような問題点を解決
するために、プレス成形性、とくに延性が良好な高強熱
延鋼板を安定してかつ低コストで製造する方法を提供す
ることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決し目標を
達成するために、本発明は以下に示す手段を用いてい
る。 (1)本発明の製造方法は、重量%で、C:0.03〜
0.2%と、Si≦2%と、Mn≦2.5%と、P≦
0.1%と、S≦0.03%と、sol.Al:0.0
1〜0.1%と、N≦0.01%と、Ti:0.2%以
下,下記(1)式に示す有効Ti量(Ti* )0.05
%以上と、残部が実質的にFeよりなる鋼組成を有する
鋼板を製造する方法において、鋼を連続鋳造によりスラ
ブとした後、直ちに粗圧延を開始し、Ar3 〜950℃
の温度域で終了する工程と、粗圧延された粗バーに対し
て、再加熱処理を施す工程と、再加熱処理された粗バー
を、Ar3 変態点以上の温度で仕上げ圧延を行い、55
0〜650℃で巻取る工程とを備え、再加熱処理を施す
工程は、下記(2)の工程であることを特徴とする、プ
レス成形性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法である。
【0009】 Ti* ={Ti%−(47.9/14)×N%−(47.9/32)×S%} …(1) [7000/{2.75−log(Ti* %×C%)}−258−t(保熱処 理時間:分)]℃≦T≦[7000/{2.75−log(Ti* %×C%)} −223]℃でかつ、T≧[7000/{2.75−log(Ti* %×C%) }−273]℃の温度,T(℃)まで再加熱した後、t分間の保熱処理を施す工 程 …(2) (2)本発明の製造方法は、鋼を連続鋳造によりスラブ
とした後、[7000/{2.75−log(Ti*
×C%)}−273]℃以上の温度域に加熱した後、粗
圧延を開始することを特徴とする、上記(1)に記載の
プレス成形性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法であ
る。
【0010】(3)本発明の製造方法は、鋼が、重量%
で、さらに、Nb:0.005〜0.1%、V:0.0
1〜0.1%、B:0.0002〜0.005%、Cu
≦0.6%、Ni≦0.6%、Mo≦0.6%、及びC
r≦1%の群から選択された1種以上を含有しているこ
とを特徴とする、上記(1)または(2)に記載のプレ
ス成形性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法である。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明者は、プレス成形性、とく
に延性が良好な高強熱延鋼板を安定してかつ低コストで
製造する方法を得るために、鋭意研究を重ねた。その結
果、強度および延性を向上させるためTiを添加した鋼
を連続鋳造によりスラブとした後、直ちにあるいは一定
温度範囲内に加熱して粗圧延を行った後、粗バーに対し
て再加熱処理を施して、一旦歪み誘起析出したTiCを
再固溶させ、仕上げ圧延中あるいは終了後に微細にTi
Cを再析出させることで、添加したTiを有効に細粒化
および析出強化に作用させることができ、Tiを多量に
添加することなく、高強度かつ高延性が図れることを知
見した。
【0012】この知見に基づき、本発明者は、Ti添加
鋼の成分添加量及び粗圧延終了後の粗バー再加熱を含む
熱間圧延条件を一定範囲内に制御するようにして、プレ
ス成形性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法を見出し、
本発明を完成させた。
【0013】すなわち、本発明は、鋼組成及び製造条件
を下記範囲に限定することにより、プレス成形性、とく
に延性が良好な高強熱延鋼板を安定してかつ低コストで
製造する方法を提供することができる。
【0014】以下に本発明の成分添加理由、成分限定理
由及び製造条件の限定理由について説明する。 (1)成分組成範囲 C:0.03〜0.2% Cは高強度化に有効な元素であり、さらにTi,Nb,
V添加時には、炭化物を微細に析出し、粒成長を抑制す
ることで組織を細粒化するとともに析出強化により強度
上昇に寄与する。この効果を得るためC含有量の下限は
0.03%である。一方、多量のC添加は、巻き取り後
のパーライト量の増大を招き加工性が劣化するだけでな
く、溶接性にも悪影響をおよぼす。したがって、C含有
量の上限は0.2%である。 Si≦2% Siは加工性を劣化することなく、フェライトを固溶強
化し、強度と加工性のバランスを高くする作用を有す
る。固溶強化元素として利用する場合には、要求される
強度レベルに応じて添加すべきであり、下限は特に規定
しない。一方、多量のSi添加は、靭性および溶接性を
劣化させる。したがって、Si含有量の上限は2%であ
る。下限は特に規定しないが、製造コストの観点から
0.01%以上が望ましい。
【0015】Mn≦2.5% Mnは高強度化に有効な元素である。固溶強化元素とし
て利用する場合には、要求される強度レベルに応じて添
加すべきであるが、その含有量が2.5%を超えると溶
接性が劣化する。したがって、Mn含有量の上限は2.
5%である。下限は特に規定しないが、製造コストの観
点から0.1%以上が望ましい。
【0016】P≦0.1% Pは高強度化に有効な元素である。しかし、0.1%を
超えて添加すると粒界に偏析し、2次加工性が劣化す
る。したがって、P含有量の上限は0.1%である。下
限は特に規定しないが、固溶強化元素として利用する場
合には、要求される強度レベルに応じて添加すべきであ
る。製造コストの観点からは0.01%以上が望まし
い。
【0017】S≦0.03% Sが過剰に添加された場合、多量のTi系硫化物が析出
するが、この析出物は粗大で強度上昇に寄与しないだけ
でなく、加工時のボイドの起点となるため延性および伸
びフランジ性が低下する。このように、Sは不純物元素
であるため極力低減することが望ましい。したがって、
S含有量の上限は0.03%である。下限は特に規定し
ない。含有量が小さいほど加工性が向上する。
【0018】sol.Al:0.01〜0.1% sol.Alは脱酸元素として鋼中の介在物を減少させ
る作用を有しており、sol.Alの含有量が0.01
%を下回る場合には、この効果が得られないためso
l.Al含有量の下限は0.01%である。また、so
l.Alを0.1%を超えて過剰に添加した場合には、
アルミナ系介在物が増加し、延性が低下するので、上限
は0.1%である。 N≦0.01% N含有量が0.01%を超えると、熱間圧延中にスラブ
割れをともない、表面疵が発生する恐れがあることか
ら、N含有量の上限は0.01%である。下限は特に規
定しないが、製造コストの観点から0.001%以上が
望ましい。 Ti:0.2%以下,有効Ti量(Ti* )0.05%
以上 但し、Ti* ={Ti%−(47.9/14)×N%−
(47.9/32)×S%} Tiは微細なTi系炭窒化物を形成し、組織を細粒化す
るとともに、析出強化により強度を上昇させる。この効
果を得るため、Ti添加量の下限は有効Ti量,Ti*
{=Ti%−(47.9/14)×N%−(47.9/
32)×S%}で0.05%である。また、Tiを0.
2%を超えて添加してもTi系炭窒化物の粗大化により
強度上昇に寄与しないだけでなく、延性の低下をもたら
すためTi添加量の上限は0.2%である。
【0019】本発明では、さらに、鋼板の強度及び延性
の目標に応じて選択元素として、Nb,V,B,Cu,
Ni,Mo,及びCrの群から選択された1種以上を含
有させてもよい。それぞれの元素を添加する場合の添加
範囲及びその限定理由は以下のとおりである。 Nb:0.005〜0.1% Nbは組織の微細化に有効な元素である。加工性を損な
わずに高い強度を得るためには、組織の微細化が有効で
ある。さらに、Nb系炭窒化物の形成により、強度上昇
に寄与する。このような効果を発揮するためには、その
含有量を0.005%以上とする必要がある。一方、
0.1%を超えて多量に添加しても、組織微細化の効果
は飽和し、さらに、Nb系炭窒化物は粗大化するため強
度上昇に寄与しないだけでなく延性の低下をもたらす。
したがって、Nb添加量の上限は0.1%である。 V:0.01〜0.1% Vは微細なV系炭窒化物を形成し、組織を細粒化すると
ともに、析出強化により強度を上昇させる。この効果を
得るため、V添加量の下限は0.01%である。また、
Vを0.1%を超えて添加してもV系炭窒化物の粗大化
により強度上昇に寄与しないだけでなく、延性の低下を
もたらすためV添加量の上限は0.1%である。 B:0.0002〜0.005% Bは熱間加工時の歪みの解放を抑制する作用を有するこ
とから、組織を微細化し、強度上昇に寄与する。この効
果を得るため、B添加量の下限は0.0002%であ
る。また、Bを0.005%を超えて添加しても、Bに
よる細粒化効果は飽和するだけでなく、熱間圧延時に、
歪みの累積によるロール荷重の増大を招き、圧延を極め
て困難にすることから、B添加量の上限は0.005%
である。
【0020】 Cu≦0.6%,Ni≦0.6%,Cr≦1% これらの元素は、固溶強化により強度上昇に寄与する。
しかし、過剰のCu,Ni,Crは、強度上昇効果が飽
和し不経済であるため、Cu添加量の上限は0.6%、
Ni添加量の上限は0.6%、Cr添加量の上限は1%
である。
【0021】Mo≦0.6% Moは炭窒化物の形成により強度上昇に寄与する。しか
し、過剰のMo添加は、強度上昇効果が飽和し不経済で
あるため、Mo添加量の上限は0.6%である。
【0022】上記の成分組成範囲に調整することによ
り、プレス成形性、特に延性が良好な高強度熱延鋼板を
安定してかつ低コストで得ることが可能となる。このよ
うな特性の鋼板は以下の製造方法により製造することが
できる。
【0023】(2)鋼板製造工程 (2−1)態様1の製造条件 (製造方法)上記の成分組成範囲に調整した鋼を溶製
し、連続鋳造によりスラブとした後、直ちに粗圧延を開
始し、Ar3 〜950℃の温度域で終了する。
【0024】次に、粗圧延された粗バーに対して再加熱
処理を施し、Ar3 変態点以上の温度で仕上げ圧延を行
い、550〜650℃で巻取る。但し、粗バーに対して
施す再加熱処理は、下記(1)の工程である。
【0025】 [7000/{2.75−log(Ti* %×C%)}−258−t(保熱処 理時間:分)]℃≦T≦[7000/{2.75−log(Ti* %×C%)} −223]℃でかつ、T≧[7000/{2.75−log(Ti* %×C%) }−273]℃の温度,T(℃)まで再加熱した後、t分間の保熱処理を施す工 程 …(1) a.粗圧延前のスラブ熱履歴:溶製した鋼を連続鋳造に
よりスラブとした後、直ちに粗圧延を開始する。Ti添
加により熱延鋼板を高強度化するには、仕上げ圧延前に
Tiを固溶状態とし、仕上げ圧延中および圧延後にTi
Cを微細に析出させることで、粒成長の抑制による細粒
化強化と析出強化を有効に作用させる必要がある。しか
し、粗圧延直前のスラブ段階において、粗大なTiCが
存在すると、粗圧延後に粗バーの再加熱をおこなっても
TiCを全量固溶させることは困難である。したがっ
て、粗圧延直前のスラブ段階から、Tiを固溶させてお
く必要がある。そのため、溶製した鋼はスラブにした
後、直ちに粗圧延を開始することでTiCの析出を抑制
する必要がある。 b.粗圧延の最終温度:Ar3 〜950℃ 薄鋼板の製造プロセスにおける粗圧延過程において、通
常、粗圧延終了から仕上げ圧延を開始するまでの搬送の
間に、圧延時の歪み誘起によりTiCが析出してしま
う。ここで、粗圧延終了温度が950℃を超える場合、
C,Tiの拡散速度が大きいため、析出したTiは粗大
化する。したがって、その後の粗バー再加熱過程で加熱
をおこなっても、粗大な析出物は溶解し難く、TiCを
全量固溶させることは困難である。一方、粗圧延終了を
950℃以下とした場合には、C,Tiの拡散速度が小
さいため、析出するTiCのサイズも小さく、その後の
粗バー再加熱過程において容易にTiCを再固溶させる
ことが可能である。しかし、粗圧延終了温度がAr3
態点未満の場合には、フェライト変態がおこり、オース
テナイト中に比べてTiおよびCの固溶量が極端に小さ
くなるため、TiCが多量に析出してしまい、粗バー再
加熱で多量のTiCを全固溶させるのは困難となる。し
たがって、粗圧延の最終温度はAr3 〜950℃であ
る。 c.粗バー再加熱処理:粗バーに対して施す再加熱処理
は、下記(1)の工程である。
【0026】 [7000/{2.75−log(Ti* %×C%)}−258−t(保熱処 理時間:分)]℃≦T≦[7000/{2.75−log(Ti* %×C%)} −223]℃でかつ、T≧[7000/{2.75−log(Ti* %×C%) }−273]℃の温度,T(℃)まで再加熱した後、t分間の保熱処理を施す工 程 …(1) Ti添加により高強度化を図る場合、TiCを微細に分
散させる必要がある。しかし、添加したTiの一部は、
粗圧延後に歪み誘起によりTiCとして粗大に析出して
しまう。したがって、粗圧延終了後に粗バー再加熱及び
t分間の保熱処理を行い、仕上げ圧延直前においてTi
を固溶状態で存在させることで、仕上げ圧延中および圧
延後にTiCを微細に析出させる必要がある。
【0027】この効果を得るため、粗バー再加熱温度の
下限は、[7000/{2.75−log(Ti* %×
C%)}−258−t(保熱処理時間:分)]℃でか
つ、[7000/{2.75−log(Ti* %×C
%)}−273]℃である。
【0028】粗バー再加熱後の保熱処理時間は特に規定
しないが、粗バー再加熱後、仕上げ圧延開始までの間に
保熱処理を行うことで、TiCの固溶を促進することが
でき、粗バー再加熱温度の下限を[7000/{2.7
5−log(Ti* %×C%)}−258−t(保熱処
理時間:分)]℃と低下させることができる。しかし、
再加熱後の粗バーを15分を超えて保熱しても、TiC
の固溶が促進しないため、粗バー再加熱後の保熱処理時
間は15分以内が好ましい。
【0029】一方、[7000/{2.75−log
(Ti* %×C%)}−223]℃を超えて粗バーを再
加熱すると、オーステナイト粒が粗大化するため、その
後の仕上げ圧延、巻取り後のフェライト粒径も大きくな
り、高強度化に対し不利に作用するだけでなく、粗バー
のスケール生成量の増加による歩留まり低下や粗バー再
加熱温度の上昇にともなう熱コストの増加をともなう。
したがって、粗バー再加熱温度の上限は[7000/
{2.75−log(Ti* %×C%)}−223]℃
である。 d.仕上げ温度:Ar3 変態点以上 組織を微細化するためには低温で熱間圧延を終了するこ
とが望ましい。しかし、仕上げ温度がAr3 変態点を下
回ると粗大な加工フェライトの再結晶組織が発生するた
め、加工性が著しく劣化する。したがって、仕上げ温度
はAr3 変態点以上である。上限は特に規定しないが、
900℃を上回る場合は組織が粗粒化するため、高強度
化には不利となる。よって、900℃以下が好ましい。
【0030】e.巻取温度:550〜650℃ 巻取温度が650℃を上回る場合、TiCが粗大に析出
するため、強度上昇に有効に作用しないだけでなく、プ
レス加工時には、粗大析出物がボイドの起点となり割れ
が発生するため、巻取温度の上限は650℃である。一
方、巻取温度が550℃を下回る場合には、Tiおよび
Cの拡散速度が低下し、TiCが析出し難くなるため、
析出しない固溶Tiが残存することになり、強度が上昇
しない。したがって、巻取温度の下限は550℃であ
る。 (2−2)態様2の製造条件 (製造方法)上記の成分組成範囲に調整した鋼を溶製
し、連続鋳造によりスラブとした後、[7000/
{2.75−log(Ti* %×C%)}−273]℃
以上の温度域に加熱した後、粗圧延を開始し、Ar3
950℃の温度域で終了する。
【0031】次に、粗圧延された粗バーに対して再加熱
処理を施し、Ar3 変態点以上の温度で仕上げ圧延を行
い、550〜650℃で巻取る。但し、粗バーに対して
施す再加熱処理は、下記(1)の工程である。
【0032】 [7000/{2.75−log(Ti* %×C%)}−258−t(保熱処 理時間:分)]℃≦T≦[7000/{2.75−log(Ti* %×C%)} −223]℃でかつ、T≧[7000/{2.75−log(Ti* %×C%) }−273]℃の温度,T(℃)まで再加熱した後、t分間の保熱処理を施す工 程 …(1) a.粗圧延前のスラブ熱履歴:溶製した鋼を連続鋳造に
よりスラブとした後、[7000/{2.75−log
(Ti* %×C%)}−273]℃以上の温度域に加熱
して粗圧延を開始する。溶製した鋼はスラブにした後、
一旦室温まで冷却もしくは冷却途中でスラブを加熱する
場合には、スラブの冷却途中に粗大に析出するTiCを
スラブ加熱時に全量再固溶させるため加熱温度を高温と
する必要がある。ここで、スラブ加熱時の温度が、[7
000/{2.75−log(Ti* %×C%)}−2
73]℃を下回る場合には、粗大に析出したTiCが再
固溶せず、粗圧延終了後に粗バーの再加熱をおこなって
もTiCを固溶させるのは困難である。したがって、溶
製した鋼を連続鋳造によりスラブにした後、[7000
/{2.75−log(Ti* %×C%)}−273]
℃以上でスラブを加熱して粗大TiCを再固溶させたの
ち粗圧延を開始する。スラブ加熱温度の上限は好ましく
は[7000/{2.75−log(Ti*%×C
%)}−123]℃である。これを超えて加熱してもエ
ネルギーコスト上無駄があるからである。
【0033】b.粗圧延の最終温度 態様1の製造条件と同様。 c.粗バー再加熱処理 態様1の製造条件と同様。 d.仕上げ温度 態様1の製造条件と同様。 e.巻取温度 態様1の製造条件と同様。以下に本発明の実施例を挙
げ、本発明の効果を立証する。なお、本発明はこれらの
実施例により何等限定されるものではない。
【0034】
【実施例】供試鋼には、表1に示す化学組成を有する鋼
(本発明鋼:No.1〜29,31,32、比較鋼:N
o.30)を実験室で溶製した熱延スラブを用い、表2
に示す条件でスラブ加熱、粗圧延に続いて粗バー加熱を
おこない、直ちに、あるいは、粗バー加熱後保熱処理を
おこなった後、仕上げ圧延および巻取処理をおこない、
板厚2.5mmを有する鋼を調製した(本発明例:N
o.1〜5,9〜11,17〜22,27〜29および
比較例:No.6〜8,12〜16,23〜26,30
〜32)。表2には、JIS Z 2241に基づく引
張試験の結果(YP,TS,El,TS×El)も合わ
せて示す。
【0035】図1に同一の組成を有する本発明鋼No.
1〜8のTS(引張強度)におよぼす粗圧延終了温度の
影響を示す。本発明鋼No.1〜8のAr3 変態点は7
90℃である。粗圧延の最終温度が本発明の範囲のAr
3 変態点(790℃)〜950℃である本発明例(N
o.1〜5)のTSは63.2〜65.2kgf/mm
2 のレベルに対し、本発明の範囲外である950℃を上
回る比較例(No.7,8)の場合やAr3 変態点を下
回る比較例(No.6)の場合には、TSが57.9k
gf/mm2 以下と大きく低下する。また、図2に示す
ように、粗圧延の最終温度が本発明の範囲である本発明
例(No.1〜5)のEl(伸び)は、26.0〜2
6.8%であり、強度と伸びのバランス指標であるTS
×El値が1659〜1711となるのに対し、本発明
の範囲を外れる比較例(No.6〜8)のTS×El値
は1559〜1604であり、強度と伸びのバランスが
大きく低下する。つぎに、図3に同一の組成を有する本
発明鋼No.9〜16のTSにおよぼす粗バー再加熱温
度の影響を示す。本発明鋼No.9〜16に施す粗バー
再加熱後の保熱時間は0分であり、本発明の範囲の粗バ
ー再加熱温度の範囲は、[7000/{2.75−lo
g(Ti* %×C%)}−258]℃〜[7000/
{2.75−log(Ti* %×C%)}−223]℃
より、1155〜1190℃である。
【0036】粗バー再加熱温度が本発明の範囲である本
発明例(No.9〜11)のTSは62.3〜62.5
kgf/mm2 のレベルに対し、本発明の範囲外である
1155℃を下回る比較例(No.12〜14)の場合
や1190℃を上回る比較例(No.15,16)の場
合には、TSは61.5kgf/mm2 以下と大きく低
下する。また、図4に示すように、粗バー再加熱温度が
本発明の範囲である本発明例(No.9〜11)のEl
は、27.4〜27.8%であり、TS×El値が17
13〜1732であるのに対し、本発明の範囲を外れる
比較例(No.12〜16)のTS×El値は1601
〜1641となり強度と伸びのバランスが大きく低下す
る。
【0037】さらに、図5には同一の組成を有する本発
明鋼No.17〜26のTSにおよぼす巻取温度の影響
を示す。巻取温度が本発明の範囲である550〜650
℃の範囲にある本発明例(No.17〜22)のTSは
68.4〜69.5kgf/mm2 のレベルに対し、本
発明の範囲外である550℃を下回る比較例(No.2
5,26)の場合や650℃を上回る比較例(No.2
3,24)の場合には、TSは66.5kgf/mm2
以下となり本発明例(No.17〜22)のレベルを下
回る。また、図6に示すように、巻取温度が本発明の範
囲である本発明例(No.17〜22)のElが24.
6〜25.2%であり、TS×El値が1709〜17
24であるのに対し、本発明の範囲を外れる比較例(N
o.23〜26)のTS×El値は1633〜1656
となり強度と伸びのバランスが低下する。さらに、表2
に示すとおり、鋼組成及び製造条件が本発明の範囲であ
る本発明例No.27〜29は、TSが63.1〜6
8.3kgf/mm2 、Elは25.1〜27.1%、
TS×El値は1704〜1714のレベルにある。こ
れに対して、比較例No.30(比較鋼No.30)の
ようにTi添加量が0.25%と、本発明のTi添加量
の上限値である0.2%を超える場合には、TSが7
6.8kgf/mm2 と高強度化するものの、Elが1
9.2%まで低下し、TS×El値は1475まで低下
してしまう。また、比較例No.31のように、仕上げ
温度が783℃と本発明鋼No.31の仕上げ温度の下
限値であるAr3 変態点(800℃)を下回る場合に
は、TSは54.2kgf/mm2 、Elは26.7%
であり、TS×Elは1447と小さい。さらに、比較
例No.32のように、本発明のスラブの加熱温度の下
限が[7000/{2.75−log(Ti* %×C
%)}−273]℃=1144℃である鋼(本発明鋼N
o.32)において、加熱温度が1130℃と本発明の
範囲を下回る場合にも、TSが62.5kgf/mm
2 、Elは25.1%であり、TS×El値は1569
と小さい。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば通常の熱
延鋼板における化学組成にTiを添加し、粗圧延終了後
の粗バー再加熱により、プレス加工性、特に延性に優れ
た高強度熱延鋼板を安定してかつ低コストで得る製造方
法が提供され、工業上有用な効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係る粗圧延終了温度とTSの
関係を示す図。
【図2】本発明の実施例に係るTSとElの関係を示す
図。
【図3】本発明の実施例に係る粗バー再加熱温度とTS
の関係を示す図。
【図4】本発明の実施例に係るTSとElの関係を示す
図。
【図5】本発明の実施例に係る巻取温度とTSの関係を
示す図。
【図6】本発明の実施例に係るTSとElの関係を示す
図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 中原 健 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 谷合 潤 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 山本 雅明 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、C:0.03〜0.2%と、
    Si≦2%と、Mn≦2.5%と、P≦0.1%と、S
    ≦0.03%と、sol.Al:0.01〜0.1%
    と、N≦0.01%と、Ti:0.2%以下,下記
    (1)式に示す有効Ti量(Ti* )0.05%以上
    と、残部が実質的にFeよりなる鋼組成を有する鋼板を
    製造する方法において、 鋼を連続鋳造によりスラブとした後、直ちに粗圧延を開
    始し、Ar3 〜950℃の温度域で終了する工程と、 粗圧延された粗バーに対して、再加熱処理を施す工程
    と、 再加熱処理された粗バーを、Ar3 変態点以上の温度で
    仕上げ圧延を行い、550〜650℃で巻取る工程とを
    備え、 再加熱処理を施す工程は、下記(2)の工程であること
    を特徴とする、プレス成形性に優れた高強度熱延鋼板の
    製造方法。 Ti* ={Ti%−(47.9/14)×N%−(47.9/32)×S%} …(1) [7000/{2.75−log(Ti* %×C%)}−258−t(保熱処 理時間:分)]℃≦T≦[7000/{2.75−log(Ti* %×C%)} −223]℃でかつ、T≧[7000/{2.75−log(Ti* %×C%) }−273]℃の温度,T(℃)まで再加熱した後、t分間の保熱処理を施す工 程 …(2)
  2. 【請求項2】 鋼を連続鋳造によりスラブとした後、
    [7000/{2.75−log(Ti* %×C%)}
    −273]℃以上の温度域に加熱した後、粗圧延を開始
    することを特徴とする、請求項1に記載のプレス成形性
    に優れた高強度熱延鋼板の製造方法。
  3. 【請求項3】 鋼は、重量%で、さらに、Nb:0.0
    05〜0.1%、V:0.01〜0.1%、B:0.0
    002〜0.005%、Cu≦0.6%、Ni≦0.6
    %、Mo≦0.6%、及びCr≦1%の群から選択され
    た1種以上を含有していることを特徴とする、請求項1
    または2に記載のプレス成形性に優れた高強度熱延鋼板
    の製造方法。
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