JPH102742A - 角速度検出装置 - Google Patents

角速度検出装置

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JPH102742A
JPH102742A JP8177451A JP17745196A JPH102742A JP H102742 A JPH102742 A JP H102742A JP 8177451 A JP8177451 A JP 8177451A JP 17745196 A JP17745196 A JP 17745196A JP H102742 A JPH102742 A JP H102742A
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angular velocity
semiconductor
axis
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carrier
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JP8177451A
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Seiya Sato
誠也 佐藤
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Toyota Motor Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 半導体を用いて角速度を検出する際の精度向
上を図る。 【解決手段】 正孔mhの移動方向が逆向きの第1半導
体42,第2半導体44では、角速度ωによるコリオリ
の力Fcを受けて、正孔mhは、y軸からずれた点線の
軌跡で移動する。そして、正孔mhが検出電極26a,
26bに到達して得られた電極電圧は、到達する検出電
極が逆であることから、その極性が異なるもののその大
きさが等しい値の電圧となる。この状態で横加速度αが
加わると、第1半導体42では正孔mhは速く検出電極
26aに到達し、第2半導体44では検出電極26bへ
の到達は遅れるので、その分、検出電圧V1out は大き
くなり検出電圧V2out は小さくなる。このため、両検
出電圧を減算演算に処すと、電圧の増加分・減少分は相
殺され、角速度ωのみが反映した出力が得られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半導体を用い、当
該半導体におけるキャリアの移動挙動に基づいて軸回り
の角速度を検出する角速度検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】半導体を用いた角速度検出装置は、特開
平4−242115等に提案されており、それまでの角
速度検出装置であるいわゆるガスレートジャイロや振動
式ジャイロに比べて小型・軽量となる等の利点がある。
【0003】半導体を用いた角速度検出装置(以下、半
導体式検出装置という)は、ガスレートジャイロと同様
に、以下の検出原理により軸回りの角速度を検出する。
【0004】図9に示すように、ある方向(以下、説明
の便宜上、この方向をy軸方向、詳しくは+y軸方向と
呼ぶ)に速度vで移動している質量体mに、このy軸方
向と直交するz軸回りの角速度ω(反時計回り)が作用
すると、質量体mには−x軸方向のコリオリの力Fcが
加わる。この結果、質量体mは+y軸方向から−x軸方
向にずれた図中点線で示す軌跡J1で移動することにな
り、コリオリの力Fcは角速度ωに比例するので、質量
体mの移動挙動に基づいてz軸回りの角速度ωを検出す
ることができる。この場合、半導体式検出装置では、質
量体mとして正孔若しくは電子を用いる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、半導体
式検出装置では、その検出原理は上記のようにガスレー
トジャイロと同様ではあるものの、用いる半導体のタイ
プ(p型,n型)によりそのキャリアたる電子或いは正
孔を上記の質量体mとする都合上、ガスレートジャイロ
では問題とされなかった以下のような問題点が指摘され
るに至った。
【0006】半導体式検出装置は、車両や航空機,産業
用ロボット等の移動体に加わる軸回りの角速度を検出す
るために搭載されており、これら移動体には、横加速度
や地磁気による磁力等の種々の外乱が作用する。このた
め、半導体式検出装置もこれら外乱の影響を受けて、以
下に説明するようにその検出精度が低下する。
【0007】図9に示すように、これら移動体に+x軸
方向の加速度αが作用すると、質量体mにはその慣性力
Faが−x軸方向に加わるため、質量体mは軌跡J1か
ら−x軸方向によりずれた軌跡J2で移動する。また、
上記の移動体は磁界に存在することから、半導体式検出
装置は磁気(例えば、地磁気)の影響を受け、電荷qを
有し速度vで移動する質量体mは磁気がもたらす磁界の
磁束によるローレンツ力FLを受ける。今、この磁束の
向きが−z軸方向であるとすると、その電荷が負の質量
体mにあっては、このローレンツ力FLを−x軸方向に
受け、図中点線の軌跡から−x軸方向によりずれた軌跡
で移動する。
【0008】つまり、質量体mの移動軌跡は、z軸回り
の角速度ω以外の外乱(加速度や磁束)の影響を受けて
曲げられるため、質量体mの移動挙動に基づいて検出す
るz軸回りの角速度の検出精度が低下する。
【0009】ところで、上記した特開平4−24211
5で提案された半導体式検出装置では、こうした検出精
度の低下を抑制するために、半導体における質量体m
(電子)の移動度を小さくすることが提案されている。
しかしながら、こうした方策を採っても、以下に記すよ
うに十分な検出精度を得られないという問題があった。
【0010】z軸回りの角速度ωにより電子eが受ける
コリオリの力Fcは、電子eの質量をme,半導体にお
けるキャリアの移動速度をvとすると、以下の数式1で
表わされる。
【0011】
【数1】
【0012】また、磁束に対して電子eが直角に移動し
ているときに、磁束密度Bの磁界により電子eが受ける
ローレンツ力FLは、電子eの電荷を−q(qは正の
数)とすると、以下の数式2で表わされる。
【0013】
【数2】
【0014】半導体の移動度を小さくすると、特開平4
−242115にも記されているように電子eの移動速
度vは小さくなるので、上記の数式2からローレンツ力
FLは小さくなり磁界の影響を抑制できるが、数式1か
ら判るように、コリオリの力Fcも小さくなる。従っ
て、コリオリの力Fcを受けて電子eが+y軸方向から
−x軸方向にずれるずれ量も小さくなり、半導体式検出
器における検出出力も小さくなる。このため、角速度ω
が小さな値の場合やその変化量が僅かな場合には、角速
度ωとその変化量を正確に検出することが困難であっ
た。
【0015】本発明は、上記問題点を解決するためにな
され、軸回りの角速度の検出精度の向上を図ることを目
的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】か
かる課題を解決するため、第1の発明の角速度検出装置
は、軸回りの角速度が発生する第1の軸と交差する第2
の軸に沿って、キャリアが移動可能な半導体を有し、該
半導体におけるキャリアの移動挙動に基づいて前記第1
の軸回りの角速度を検出する装置であって、前記半導体
のキャリアの移動方向に交差する方向の磁界を低減する
手段を有することを特徴とする。
【0017】上記構成を有する第1の発明の角速度検出
装置では、キャリアは、半導体において移動する際に、
その移動方向に交差する方向の磁界の低減を通してロー
レンツ力を受けず、第1の軸回りの角速度に伴うコリオ
リの力のみを受ける。よって、キャリアの半導体におけ
る移動挙動に基づいて第1の軸回りの角速度を検出した
際の検出精度を向上させることができる。
【0018】この場合、磁界を低減するに当たっては、
半導体そのものを或いは角速度検出装置自体を、磁気遮
蔽機能を有する材料で被覆したり、当該材料から形成し
たパッケージ中に配置したりして、半導体や角速度検出
装置を磁気シールドする手法を採れば良い。この際の材
料としては、磁性を有する金属若しくは合金、或いはこ
れらの粉体が含有された複合材(例えば、磁性金属粉体
含有のゴム,樹脂,塗料)を挙げることができ、その被
覆の形態としては、板状体,シート状体等を巻き付けた
り、塗布したりすること等を例示することができる。或
いは、磁性金属粉体含有の塗料が表面に塗布されたパッ
ケージ中に、半導体或いは角速度検出装置を配置しても
良い。
【0019】第2の発明の角速度検出装置は、軸回りの
角速度が発生する第1の軸と交差する第2の軸に沿っ
て、キャリアが移動可能な半導体を有し、該半導体にお
けるキャリアの移動挙動に基づいて前記第1の軸回りの
角速度を検出する装置であって、前記半導体におけるキ
ャリアが周囲の磁界から受ける力を、前記第1の軸回り
の角速度に伴い発生する力に影響を及ぼすことなく抑制
する手段を有することを特徴とする。
【0020】上記構成を有する第2の発明の角速度検出
装置では、キャリアは、磁界からうける力(ローレンツ
力)を抑制されて受け、第1の軸回りの角速度に伴い発
生する力(コリオリの力)はそのまま受ける。よって、
キャリアの移動挙動はほぼコリオリの力によって定まる
ので、キャリアの半導体における移動挙動に基づいて第
1の軸回りの角速度を検出した際の検出精度を向上させ
ることができる。
【0021】この場合、コリオリの力に影響を及ぼすこ
となくローレンツ力を抑制するに当たっては、以下のよ
うな手法を採れば良い。
【0022】キャリアを移動させるためには半導体に電
圧を印加する必要があり、その駆動電圧を次の数式3で
表わすこととする。
【0023】
【数3】
【0024】ここで、E0 は実効値、fは周波数であ
る。
【0025】キャリアは、この印加電圧に基づく電場ε
の場所に置かれることになるので、このキャリアには数
式4で表わされるクーロン力Fがその移動方向(+y軸
方向)にかかる(図9参照)。
【0026】
【数4】
【0027】ここで、qはキャリアの電荷で、キャリア
が正孔であれば正の電荷である。
【0028】上記の駆動電圧を印加する電極間距離をL
とすると、ε=EIN/Lであることから数式4は以下の
数式5に変形できる。
【0029】
【数5】
【0030】そして、この電場からのクーロン力Fに基
づくキャリアのy軸方向の加速度αは、次の数式6で表
わされ、キャリアのy軸方向の速度vyは、次の数式7
で表わされる。
【0031】
【数6】
【0032】ここで、mはキャリアの有効質量である。
【0033】
【数7】
【0034】一方、キャリアに作用するコリオリの力F
cは、数式1に数式7の速度vyを代入して得られる数
式8で表わされる。
【0035】
【数8】
【0036】なお、このコリオリの力Fcが作用する方
向は、座標軸とz軸回りの角速度ωの方向(時計回り・
反時計回り)の関係により逆転する。
【0037】また、半導体のキャリアが磁束密度Bでそ
の向きが−z軸方向である磁界の影響を受けているとす
ると、キャリアが受けるローレンツ力FLは、数式2に
数式7の速度vyを代入して得られる数式9で表わされ
る。
【0038】
【数9】
【0039】従って、数式9で示されるローレンツ力F
Lのみの抑制を通して磁界の影響を抑制するには、ロー
レンツ力FLがキャリアの有効質量での除算を経ている
ことから、有効質量の大きいキャリアを含むよう組成調
整された半導体を用いれば良い。この場合、正孔をキャ
リアとするp型半導体であっても、その正孔の有効質量
は種々あることから、有効質量の大きい正孔をキャリア
とするp型半導体、例えばシリコンを用いた半導体とす
ることが好ましい。
【0040】そして、このように有効質量の大きなキャ
リアを有する半導体にあっては、数式8で示されるコリ
オリの力Fcはなんら変化することはないので、ローレ
ンツ力FLのみが抑制されたことになる。よって、こう
した半導体を用いた第2の発明の角速度検出装置によれ
ば、キャリアの移動挙動をほぼコリオリの力によって定
めることができ、キャリアの移動挙動に基づいて第1の
軸回りの角速度を検出した際の検出精度を向上すること
ができる。
【0041】上記の構成を有する第2の発明の角速度検
出装置において、前記半導体は正孔をキャリアとするp
型半導体であるものとすることが好ましい。
【0042】この構成の角速度検出装置では、キャリア
が正孔であることから、キャリアが電子である場合のキ
ャリアの有効質量を大きくすることができる。よって、
この構成の角速度検出装置によれば、ローレンツ力FL
の抑制を通した検出精度の向上を、その製造方法や物性
が周知のp型半導体を用いだけで容易に実現することが
できる。しかも、半導体製造に当たって特有の工程等を
なんら必要としないので、検出精度の高い角速度検出装
置を低コストで製造することができる。
【0043】また、第3の発明の角速度検出装置は、軸
回りの角速度を検出する装置であって、前記角速度が発
生する第1の軸と交差する第2の軸に沿って、キャリア
が移動可能な半導体と、該半導体におけるキャリアの移
動挙動に基づいた信号を出力する出力手段と、前記第1
の軸回りの角速度以外の外乱が加わって前記信号に重畳
した外乱成分を除去する除去手段とを備えることを特徴
とする。
【0044】上記構成を有する第3の発明の角速度検出
装置では、キャリアは、第1の軸回りの角速度に伴うコ
リオリの力と、この角速度以外の外乱により受ける力、
例えば磁界によるローレンツ力や加速度による慣性力と
が合成された力を受けて移動し、このキャリアの移動挙
動に基づいた信号を出力する。しかし、この出力信号か
らは外乱(ローレンツ力や慣性力)が加わったことに起
因する外乱成分を除去しているので、第1の軸回りの角
速度に応じた信号成分からこの角速度を検出できる。よ
って、第3の発明の角速度検出装置によれば、第1の軸
回りの角速度を検出した際の検出精度を向上することが
できる。
【0045】この場合、出力信号から外乱成分を除去す
るに当たっては、以下の態様を採ることができる。
【0046】即ち、上記の構成を有する第3の発明の角
速度検出装置において、前記除去手段は、前記キャリア
の移動挙動を変化させる加速度が加わることで前記信号
に重畳した加速度起因外乱成分を遮蔽するフィルタ手段
を有するものとした。
【0047】この構成の第1の態様の角速度検出装置
は、キャリアには、キャリアを移動させるために半導体
に印加する駆動電圧の印加の様子と無関係に加速度が加
わることを利用している。つまり、上記した駆動電圧
(数式3)を印加した場合、出力信号に重畳した加速度
起因外乱成分は、この駆動電圧の周波数とは無関係な信
号成分となるので、フィルタ手段よりこの加速度起因外
乱成分を遮蔽することができる。よって、加速度起因外
乱成分が除去された出力信号から第1の軸回りの角速度
を検出できるので、検出精度を向上することができる。
【0048】例えば、このフィルタ手段を駆動電圧の周
波数に依存した信号は通過させ当該周波数以外の信号を
遮蔽するものとすれば、駆動電圧の周波数と異なる周波
数でキャリアに加わった加速度起因外乱成分を遮蔽する
ことができる。また、フィルタ手段を、駆動電圧の周波
数に依存するがその位相がずれた信号を遮蔽するものと
すれば、駆動電圧の周波数と位相がずれた周波数でキャ
リアに加わった加速度起因外乱成分を遮蔽することがで
きる。
【0049】また、上記の構成を有する第3の発明の角
速度検出装置において、前記半導体は、前記第2の軸に
沿ったキャリアの移動方向が互いに逆向きとされた第1
の半導体と第2の半導体とからなり、前記出力手段は、
前記第1,第2の半導体におけるキャリアの移動挙動に
基づいて前記第1の軸回りの角速度に応じた信号をそれ
ぞれ出力する第1の出力手段と第2の出力手段とからな
り、前記除去手段は、前記第1の出力手段から出力され
た第1の信号と前記第2の出力手段から出力された第2
の信号とに共通して重畳した外乱成分を、前記第1と第
2の信号の演算処理を通して相殺する手段を有するもの
とした。
【0050】この構成の第2の態様の角速度検出装置で
は、第1の半導体と第2の半導体におけるキャリアの移
動方向が逆向きなので、それぞれのキャリアは以下のよ
うな移動挙動を採る。
【0051】図1に示すように、一方のキャリアmc1が
+y軸方向に移動しているとすると、他方のキャリアm
c2は−y軸方向に移動することになる。このような状況
下で、z軸回りに角速度ωが時計回りに生じると、両キ
ャリアには、数式1で表わされるコリオリの力Fcが加
わる。この場合、キャリアmc1の速度をvと表記すれば
キャリアmc2の速度は−vとなるので、キャリアmc1で
はコリオリの力Fcは2・m(mc1)・ω・vで、キャ
リアmc2では−2・m(mc2)・ω・vとなり(m(m
c1),m(mc2)はキャリアmc1,mc2の質量)、コリ
オリの力の方向は逆となる。しかし、両キャリアはy軸
方向の移動の向きが逆なので、コリオリの力Fcはキャ
リアの移動方向(+y軸,−y軸)に対しては同じ向き
に加わる。よって、キャリアmc1は、+y軸方向から+
x軸方向にずれた図中点線で示す軌跡A1で移動し、キ
ャリアmc2は、−y軸方向から−x軸方向にずれた図中
点線で示す軌跡A2で移動する。
【0052】今、この両キャリアmc1,mc2を有する半
導体に+x軸方向の加速度αが作用すると、両キャリア
mc1,mc2にはその慣性力Faが共に−x軸方向に加わ
る。このため、キャリアmc1の軌跡は軌跡A1から−x
軸方向にずれた軌跡A11となり、キャリアmc2の軌跡
も軌跡A2から−x軸方向にずれた軌跡A21となる。
そして、第1の出力手段からはキャリアmc1の軌跡A1
1に基づき第1の信号が出力され、第2の出力手段から
はキャリアmc2の軌跡A21に基づき第2の信号が出力
される。
【0053】つまり、加速度が加わったことによる外乱
は、両キャリアの移動軌跡に共通して影響を与え、この
外乱による成分は、第1の信号についてはこれを減じる
よう、第2の信号についてはこれを増加するよう、両信
号に共通して重畳する。そして、この重畳した外乱成分
は第1と第2の信号の演算処理を通して相殺されるの
で、加速度に起因する外乱成分が除去された出力信号か
ら第1の軸回りの角速度を検出できる。よって、この第
3の発明の第2の態様の角速度検出装置によっても、第
1の軸回りの角速度の検出精度を向上することができ
る。
【0054】この場合、コリオリの力Fcはキャリアの
電荷の影響を受けないので、キャリアmc1,mc2の極性
は異極であっても同極であってもよい。しかし、コリオ
リの力Fcはキャリアの質量と速度を変数とするので、
第1の半導体と第2の半導体を同じものとすることが好
ましい。例えば、両半導体を共にp型半導体とする又は
n型半導体とすればよい。もっとも、両半導体を製造す
る上での不純物濃度や組成等を、両半導体におけるキャ
リアの質量と速度が同程度となるよう設定して両半導体
を製造すれば、一方がp型半導体で他方がn型半導体で
あってもよいことは勿論である。
【0055】また、第3の発明における上記の第2の態
様の角速度検出装置において、前記第1と第2の半導体
は、それぞれが有するキャリアの電荷の極性が異なるも
のとされている。
【0056】この構成の第3の態様の角速度検出装置で
は、第1の半導体と第2の半導体におけるキャリアの移
動方向が逆向きで電荷の極性が異なるので、それぞれの
キャリアは以下のような移動挙動を採る。
【0057】コリオリの力Fcの力が加わったことによ
るキャリアmc1,mc2の移動の様子は、図1を用いて説
明した通りであり、図2に示すように、z軸回りに角速
度ωが時計回りに生じると、キャリアmc1は軌跡A1で
移動し、キャリアmc2は、軌跡A2で移動する。
【0058】今、この両キャリアmc1,mc2が磁束密度
Bでその向きが−z軸方向である磁界の影響を受ける
と、両キャリアには、数式2で表わされるローレンツ力
FLが加わる。この場合、キャリアmc1はその速度がv
でキャリアmc2はその速度が−vである。そして、キャ
リアmc1を正の電荷(q)を有するキャリアとし、キャ
リアmc2を負の電荷(−q)を有するキャリアとする
と、ローレンツ力FLは、キャリアmc1ではB・q・
v,キャリアmc2ではB・(−q)・(−v)となり、
両キャリアで共にB・q・vとなる。よって、両キャリ
アmc1,mc2にはローレンツ力FLが共に+x軸方向に
加わる。このため、キャリアmc1の軌跡は軌跡A1から
+x軸方向にずれた実線の軌跡A12となり、キャリア
mc2の軌跡は軌跡A2から+x軸方向にずれた実線の軌
跡A22となる。そして、第1の出力手段からはキャリ
アmc1の軌跡A12に基づき第1の信号が出力され、第
2の出力手段からはキャリアmc2の軌跡A22に基づき
第2の信号が出力される。
【0059】つまり、磁界による外乱は、両キャリアの
移動軌跡に共通して影響を与え、この外乱による成分
は、第1の信号についてはこれを増加するよう、第2の
信号についてはこれを減じるよう、両信号に共通して重
畳する。そして、この重畳した外乱成分は第1と第2の
信号の演算処理を通して相殺されるので、磁界に起因す
る外乱成分が除去された出力信号から第1の軸回りの角
速度を検出できる。よって、この第3の発明の第3の態
様の角速度検出装置によっても、第1の軸回りの角速度
の検出精度を向上することができる。なお、上記の演算
処理としては、外乱成分の重畳の仕方を考慮して定めら
れ、単純な加減演算や差動増幅演算などを採ることがで
きる。
【0060】また、この図2に示すように、キャリアが
磁界の影響を受けている状況下でこの両キャリアmc1,
mc2に−x軸方向の加速度αが作用すると、両キャリア
mc1,mc2は、上記のローレンツ力FLに加えてこの加
速度により慣性力Faを+x軸方向に受ける。よって、
両キャリアmc1,mc2は、ローレンツ力FLと慣性力F
aとを合成した力によりその軌跡が曲げられて移動し、
キャリアmc1の軌跡は一点鎖線の軌跡A13となり、キ
ャリアmc2の軌跡も一点鎖線の軌跡A23となる。
【0061】従って、磁界と加速度による外乱は、両キ
ャリアの移動軌跡に共通して影響を与え、これら外乱に
よる成分は、第1の信号についてはこれを増加するよ
う、第2の信号についてはこれを減じるよう、両信号に
共通して重畳する。そして、この重畳した外乱成分は第
1と第2の信号の演算処理を通して相殺されるので、加
速度並びに磁界に起因する外乱成分が除去された出力信
号から第1の軸回りの角速度を検出できる。よって、こ
の第3の発明の第3の態様の角速度検出装置によれば、
キャリアに作用する磁界と加速度とによる外乱成分の相
殺を通して、第1の軸回りの角速度の検出精度をより一
層向上することができる。
【0062】この場合、コリオリの力Fcはキャリアの
質量と速度を変数としローレンツ力FLはキャリアの移
動速度を変数とするので、両半導体を製造する上での不
純物濃度や組成等を、両半導体におけるキャリアの質量
又は速度の少なくとも一方が同程度となるよう設定して
両半導体を製造することが好ましい。
【0063】また、第3の発明における上記の第2の態
様の角速度検出装置において、前記第1と第2の半導体
におけるキャリアの移動挙動への周囲の磁界の影響を排
除する手段と、前記第1と第2の半導体におけるキャリ
アが周囲の磁界から受ける力を前記第1の軸回りの角速
度に伴い発生する力に影響を及ぼすことなく抑制する手
段のいずれかの手段を有するものとした。
【0064】この構成の第4の態様の角速度検出装置で
は、第1の半導体と第2の半導体におけるキャリアの移
動方向を逆向きとして、上記のように加速度に起因する
外乱成分の相殺し、加えて、磁界の影響排除又は磁界か
らうける力(ローレンツ力)の抑制を行なう。よって、
この第3の発明の第4の態様の角速度検出装置によれ
ば、キャリアに作用する磁界と加速度といった外乱の検
出精度への影響を排除して、第1の軸回りの角速度の検
出精度をより一層向上することができる。
【0065】また、第3の発明における上記の第2の態
様又は第3の態様の角速度検出装置において、更に、前
記第1の出力手段から出力された第1の信号と前記第2
の出力手段から出力された第2の信号とに共通して重畳
した外乱成分に該当する信号を、前記第1と第2の信号
の演算処理を通して該第1,第2の信号から抽出し、出
力する手段を有するものとした。
【0066】この構成の第5の態様の角速度検出装置で
は、上記したように加速度や磁界等の外乱が加わったこ
とにより、第1の信号についてはこれを減じるよう、第
2の信号についてはこれを増加するよう、両信号に共通
して重畳した外乱成分に該当する信号は、第1と第2の
信号の演算処理を通してこれら信号から抽出され、出力
される。よって、加速度や磁界に起因する外乱成分しか
含まない出力信号から、これら外乱の程度を検出でき
る。よって、この第3の発明の第5の態様の角速度検出
装置によれば、高い精度で第1の軸回りの角速度を検出
できると共に、加速度や磁気といった外乱の重畳程度を
も正確に検出することができる。
【0067】
【発明の実施の形態】次に、本発明に係る角速度検出装
置の実施の形態を、当該装置を車両に搭載した場合の実
施例に基づき説明する。図3は、実施例の角速度検出装
置10の車両における搭載の様子を模式的に示す模式図
である。
【0068】図示するように、角速度検出装置10は、
車両Jの直進方向に+y軸方向を一致させ、このy軸と
直交するx軸が車軸に沿った方向に、z軸が鉛直方向に
沿った方向とそれぞれ一致するようにして、搭載されて
いる。角速度検出装置10は、磁気遮蔽機能を発揮する
筐体12を有し、当該筐体内に後述の検出・処理部20
を収納する。なお、この角速度検出装置10で得られた
信号は、当該信号を用いて制御対象機器を制御する他の
装置、例えば、車両旋回に伴いz軸回りの角速度が加わ
って車両が傾斜した場合に車両姿勢をほぼ水平に維持す
るサスペンション装置等の車両の姿勢制御装置に出力さ
れる。
【0069】筐体12は、鉄やその合金(例えば、7
8.5%Ni−Fe合金(ニッケル−鉄合金))等の高
透磁率/強磁性の金属を用いて形成した金属製パッケー
ジであり、外部の磁束線をパッケージの実質部分に集中
させる。よって、この筐体12は、磁気シールドとして
機能し、その内部を磁気的な影響が実質的に排除された
環境とする。なお、このような金属製パッケージを用い
た磁気シールドに限らず、反磁性体を利用した磁気シー
ルド、具体的には超伝導体を使用した微弱磁界の磁気シ
ールドや、導体を利用した磁気シールド等の手法を採る
こともできる。また、パッケージの構造としては、単層
構造や2層,3層といった多層構造を採ることもでき
る。
【0070】上記の筐体12に収納された検出・処理部
20は、その概略構成を示すブロック図である図4に示
すように、半導体22と信号処理回路24とを備える。
半導体22は、ホウ素,インジウム等のp型不純物を添
加して製造されたp型半導体であり、駆動電圧の印加を
受けると、キャリアたる正孔mhを移動させる。
【0071】この半導体22は、対向する2対の電極が
形成されており、y軸に沿って対向する一対の電極が駆
動電極25a,25b、x軸に沿って対向する電極が検
出電極26a,26bとされている。駆動電極25a,
25bは、交流電源27が接続されており、半導体22
に交流電圧を印加する。また、検出電極26a,26b
は、信号処理回路24における差動増幅器28の両入力
に接続されており、当該差動増幅器には、正孔mhの移
動によって得られた電極間の電圧(電極電圧)がそれぞ
れ出力される。なお、この電極電圧が出力される様子に
ついては後述する。
【0072】ここで、半導体22並びに電極の製造の概
略について簡単に説明する。半導体22は、図4の5−
5線断面図である図5に示すように、上記したp型不純
物がイオン注入法によりシリコンウエハ(n型)の表面
に添加されたp型領域である。そして、駆動電極25
a,25bおよび検出電極26a,26bは、このウエ
ハ表面への酸化シリコン被膜(SiO2 被膜)等の絶縁
膜形成,コンタクト・ホール・パターニング,アルミニ
ウムを用いた電極・配線パターニング等を経て形成され
ている。この際、駆動電極25a,25bの対向間隔並
びに検出電極26a,26bの対向間隔は、所定の値に
設定される。
【0073】本実施例では、上記のように駆動電極25
a,25bの対向間隔Lは所定の値とされている。ま
た、交流電源27の電圧実効値E0 は、既述した数式3
で表わされる値とされている。従って、正孔mhは、こ
の駆動電圧(実効値E0 )に基づく電場εの影響を受け
るので、数式10で表わされるクーロン力Fによりy軸
方向に沿って移動する。
【0074】
【数10】
【0075】ここで、qhは正孔mhの電荷である。
【0076】このクーロン力Fは、駆動電極25a,2
5bの対向間隔Lを用いて表わすと、ε=EIN/Lであ
ることから数式11となる。
【0077】
【数11】
【0078】そして、この電場からのクーロン力Fに基
づく正孔mhの加速度αは、次の数式12で表わされ、
正孔mhのy軸方向の速度vyは、次の数式13で表わ
される。
【0079】
【数12】
【0080】ここで、mhは正孔mhの有効質量であ
る。
【0081】
【数13】
【0082】つまり、正孔mhは、駆動電極25a,2
5bから印加を受ける駆動電圧に応じてy軸方向に上記
の速度vyで移動することになる。
【0083】次に、正孔mhが速度vyでy軸方向に沿
って移動している最中に図4に示すようにz軸回りに時
計回りの角速度ωが加わった場合の正孔mhの挙動につ
いて説明する。なお、説明の便宜上、駆動電極25aが
正極で駆動電極25bが負極の場合を例に採り説明す
る。
【0084】この際、正孔mhは、数式11で表わされ
る電場からのクーロン力Fに基づいて、+y軸方向に移
動し、この正孔mhには、数式1におけるme,vにm
h,vy(数式13の速度)を代入した次の数式14で
表わされるコリオリの力Fcが加わる。
【0085】
【数14】
【0086】この場合、コリオリの力Fcが作用する方
向は、座標軸とz軸回りの角速度ωの方向(時計回り)
の関係から、図中の座標軸における+x軸方向となる。
このため、正孔mhは、このコリオリの力Fcを受け、
図4に示すように+y軸から+x軸方向にずれた点線の
軌跡で移動する。そして、コリオリの力Fcにより正孔
mhがx軸に沿った方向(+x軸方向)に移動する際の
速度vxは、コリオリの力Fcを有効質量mhで除算し
た加速度の積分で求められ、以下の数式15で表わされ
る。
【0087】
【数15】
【0088】つまり、図6の出力線図に示すように、駆
動電圧(実効値E0 )に対して、正孔mhのy軸方向の
速度vyはその位相が90゜ずれ(数式13参照)、コ
リオリの力Fcによって生じるx軸方向の速度vxはそ
の位相が180゜ずれる(数式15参照)。
【0089】そして、検出電極26a,26bから出力
される電極電圧は、信号処理回路24の差動増幅器28
で差動増幅され、検出電圧Vout となる。この場合、電
極電圧、延いては検出電圧Vout は、この検出電極26
a,26bに単位時間当たりに到達する正孔mhの数に
ほかならない。よって、この検出電圧Vout は、上記数
式15で表わされる速度vxに比例するので、図6に示
すように、駆動電圧(実効値E0 )に対してその位相が
180゜ずれ、x軸方向の速度vxと同位相で出力され
る。
【0090】こうして得られた検出電圧Vout (検出出
力)は、差動増幅器28下流のバンドパスフィルタ29
に入力される。このバンドパスフィルタ29は、駆動電
圧の周波数fと異なる周波数の信号を遮蔽するよう構成
されているので、バンドパスフィルタ29からは、この
周波数fに一致した信号のみがその下流に出力される。
【0091】信号処理回路24は、上記した差動増幅器
28,バンドパスフィルタ29に加え、サンプリングI
C30,31と、両サンプリングICからの信号を加算
して出力する加算器32と、その出力を整流して出力す
る整流器33とを備える。この両サンプリングICは、
参照信号を参照しつつその周波数の位相の所定範囲に亘
ってサンプリング対象信号を抽出するものであり、サン
プリングIC30は、0゜〜180゜の位相の範囲にお
いて、サンプリング対象信号を抽出しこれを加算器32
に出力する。また、サンプリングIC31は、180゜
〜360゜の位相の範囲において、サンプリング対象信
号を抽出しこれを加算器32に出力する。
【0092】この場合、サンプリングIC30は、交流
電源27の駆動電圧をインバータ34,35を経て参照
信号として入力し、バンドパスフィルタ29からの出力
(検出電圧Vout )を、インバータ36での位相反転を
経てサンプリング対象信号として入力する。このため、
このサンプリングIC30から加算器32へは、図6に
示すように、位相が反転した検出電圧Vout から0゜〜
180゜の位相範囲で抽出した出力信号S1が出力され
る。また、サンプリングIC31は、交流電源27の駆
動電圧をインバータ34での位相反転を経て参照信号と
して入力し、バンドパスフィルタ29からの出力(検出
電圧Vout )をサンプリング対象信号として直接入力す
る。このため、このサンプリングIC31からは、図6
に示すように、検出電圧Vout から180゜〜360゜
の位相範囲で抽出した出力信号S2が出力される。
【0093】こうして出力された出力信号S1,S2
は、加算器32で加算されて出力信号S3(図6参照)
とされる。そして、この出力信号S3は、整流器33で
整流され最終的な検出出力Sout として検出・処理部2
0から外部の制御装置、例えば既述したサスペンション
装置等の車両の姿勢制御装置に出力される。
【0094】この検出出力Sout は、正孔mhに加わっ
たコリオリの力Fcにより生じるものであり、コリオリ
の力Fcはz軸回りの角速度ωに比例するので、角速度
ωに比例した出力となる。そして、検出出力Sout の入
力を受けたサスペンション装置は、その有する電子制御
装置にて検出出力Sout に基づき角速度ω(ヨーレイ
ト)を演算し、この角速度ωに基づいて、例えばショッ
クアブソーバの減衰力を各輪について制御し、車両の姿
勢制御等を図る。もっとも、検出・処理部20自体に角
速度ωを演算する電子制御装置を備え付けることもでき
る。
【0095】上記した信号処理回路24における各種論
理回路は、半導体を製造する上での集積技術を用いて、
図5のシリコンウエハに集約・形成されている。つま
り、検出・処理部20は、角速度検出のための半導体2
2とその信号処理のための信号処理回路24とを、共通
のシリコンウエハに有しており、いわゆるワンチップ部
品である。
【0096】以上説明した本実施例の角速度検出装置1
0は、以下の利点を有する。
【0097】角速度検出装置10は、検出・処理部20
自体を筐体12内に収納して磁気シールドする。よっ
て、検出・処理部20に及ぼされる磁気的な影響は実質
的に排除され、筐体12では完全には遮蔽できなかった
僅かな磁気の影響しか検出・処理部20には及ばない。
このため、半導体22における正孔mhは、駆動電圧を
受けてy軸方向に移動する際、その有する電荷と磁束密
度で定まるローレンツ力を受けない。若しくは、このロ
ーレンツ力を極僅かしか受けない。
【0098】また、角速度検出装置10では、角速度検
出のための半導体22をp型半導体としキャリアを正孔
mhとしたので、キャリアの有効質量はキャリアが電子
eである場合より大きくなる(mh>me)。よって、
正孔mhが受けるローレンツ力FL(数式9参照)を有
効質量の増大を通して抑制することができ、この際に、
正孔mhが受けるコリオリの力Fc(数式14)を変化
させることはない。このため、正孔mhが駆動電極25
a,25bから駆動電圧を受けてy軸方向に移動する際
の正孔mhの移動挙動は、ほぼコリオリの力Fcによっ
て定めることができる。しかも、筐体12により正孔m
hが受ける磁気的な影響は排除されていることと相俟っ
て、正孔mhは、z軸回りの角速度に基づくコリオリの
力Fcと駆動電圧による力とが反映したの移動挙動を採
り、x軸方向の運動に限ってはコリオリの力Fcのみが
反映したものとなる(数式15)。
【0099】従って、本実施例の角速度検出装置10に
よれば、筐体12による磁気シールドと有効質量の増大
を通したローレンツ力FLの抑制とにより、高い精度で
z軸回りの角速度を検出することができる。
【0100】また、角速度検出装置10は、その信号処
理回路24にバンドパスフィルタ29とサンプリングI
C30,31とを有するので、以下の利点がある。
【0101】例えば、車両の旋回時等に車両にx軸方向
の横加速度が加わると、当該加速度は角速度検出装置1
0にも当然及ぶことになる。そして、この横加速度は、
図1でもって説明したように、正孔mhの移動挙動に影
響を及ぼす外乱となる。しかし、通常、このような横加
速度は、半導体22に印加する駆動電圧EIN(数式3)
の周波数fと無関係に加わる。このため、加わった横加
速度に起因する外乱成分(加速度成分)は、検出電極2
6a,26bからの検出電圧Vout に駆動電圧の周波数
fとは異なる周波数で重畳するので、検出電圧Vout が
入力されるバンドパスフィルタ29により遮蔽され、検
出電圧Vout から取り除かれる。
【0102】また、仮に横加速度が駆動電圧EINの周波
数fと一致した周波数で加わっても、その位相までが駆
動電圧EINの位相と一致することはないので、外乱成分
(加速度成分)は、検出電圧Vout に駆動電圧の位相と
ずれた位相で重畳する。従って、位相がずれて重畳した
外乱成分(加速度成分)は、バンドパスフィルタ29下
流のサンプリングIC30,31により除去され、検出
電圧Vout から取り除かれる。
【0103】従って、加算器32には、バンドパスフィ
ルタ29およびサンプリングIC30,31により、加
速度に起因する外乱成分が含まれない検出電圧Vout が
入力されるので、整流器33からは、この外乱成分が除
去された最終的な検出出力Sout が得られる。このた
め、本実施例の角速度検出装置10によれば、より高い
精度でz軸回りの角速度を検出することができる。
【0104】更に、角速度検出装置10では、上記した
ように角速度の検出精度の向上を図る上で、半導体22
をその製造方法や物性が周知のp型半導体としてキャリ
アを正孔mhとしたに過ぎず、半導体22の製造に当た
って特有の工程等をなんら必要としない。しかも、半導
体22のほかに必要とする差動増幅器28,バンドパス
フィルタ29等の論理回路をも周知の集積技術で製造す
ることができる。よって、角速度検出装置10によれ
ば、検出精度の向上とコスト低下とを両立することがで
きる。
【0105】加えて、検出・処理部20をシリコンウエ
ハを用いたワンチップ部品とするので、その取り扱いの
簡便化を図ることができると共に、より一層の小型化を
も図ることができる。
【0106】次に、他の実施例(第2,第3実施例)に
ついて説明する。これら第2,第3実施例は、上記の第
1実施例が角速度検出のために単一の半導体22を用い
ているのに対し、半導体を2個用いる点で相違する。な
お、以下の説明に当たっては、第1実施例と同一の機能
を果たすものについては、同一の符号を用いることとす
る。
【0107】第2実施例の角速度検出装置10Aは、図
7に示す検出・処理部40を筐体12に収納して有す
る。この検出・処理部40は、図示するように、第1半
導体42と第2半導体44と信号処理回路46とを有す
る。この第1半導体42,第2半導体44は、角速度検
出装置10における半導体22と同様、p型半導体であ
り、駆動電圧の印加を受けて正孔mhを移動させる。
【0108】第1半導体42は、直流電圧源47と接続
され、駆動電極25a,25bから所定電圧値の直流電
圧の印加を受け、第2半導体44は、同様にして直流電
圧源48から直流電圧の印加を受ける。この場合、各半
導体に印加する電圧の極性が逆とされているので、具体
的には、第1半導体42では駆動電極25bの側が正極
で、第2半導体44では駆動電極25aの側が正極とさ
れている。よって、図示するように、正孔mhは、第1
半導体42では−y軸方向に、第2半導体44では+y
軸方向に移動する。
【0109】なお、この角速度検出装置10Aにあって
も、車両への搭載は角速度検出装置10と同様にしてな
されており、また、第1,第2半導体における駆動電極
25a,25bの対向間隔も角速度検出装置10と同
様、予め定められた間隔Lとされている。
【0110】この角速度検出装置10Aでは、正孔mh
の移動方向が第1半導体42と第2半導体44とで逆向
きであるため、z軸回りに角速度ωが時計回りに生じる
と、これにより正孔mhに加わるコリオリの力Fcは、
図1でもって説明したように、x軸方向に沿っては第1
半導体42と第2半導体44で逆向きとなる。しかし、
正孔mhのy軸方向の速度が逆向きなため、既述したよ
うにコリオリの力Fcは、図中に記すように、正孔mh
に対しては同じ向きに加わる。よって、正孔mhは、第
1半導体42,第2半導体44においてそれぞれコリオ
リの力Fcが加わった側にy軸からずれた点線の軌跡で
移動する(図1参照)。そして、コリオリの力Fcを受
けた正孔mhがそれぞれの半導体における検出電極26
a,26bに到達すると、各半導体における検出電極か
ら得られる電極電圧が信号処理回路46に出力される。
なお、第1,第2半導体に直流電圧を印加するこの角速
度検出装置10Aにあっても、検出電極からの電極電圧
は、それぞれの検出電極に単位時間当たりに到達する正
孔mhの数にほかならない。
【0111】信号処理回路46は、第1半導体42の検
出電極26a,26bと接続された差動増幅器49と、
第2半導体44の検出電極26a,26bと接続された
差動増幅器50と、両差動増幅器からの信号を減算して
出力する減算器51と、加算して出力する加算器52と
を備える。差動増幅器49,50からは、該当する第
1,第2半導体の検出電極からの電極電圧が差動増幅さ
れ、第1半導体42からの検出電圧V1out と第2半導
体44からの検出電圧V2out とが、減算器51および
加算器52に出力される。そして、減算器51に入力さ
れて減算された検出電圧V1out と検出電圧V2out
は、最終的な第1の検出出力S1out として検出・処理
部40から外部の制御装置に出力される。また、加算器
52に入力されて加算された検出電圧V1out と検出電
圧V2out は、最終的な第2の検出出力S2out とし
て、やはり検出・処理部40から外部の制御装置に出力
される。
【0112】次に、上記のように構成した第2実施例の
角速度検出装置10Aでのz軸回りの角速度ωの検出の
様子について説明する。
【0113】車両が定速の直進走行等をしているために
x軸方向の横加速度が加わっていない場合には、第1半
導体42,第2半導体44の正孔mhには、z軸回りの
角速度ωによって生じるコリオリの力Fcが加わる。こ
の場合、既述したように、検出・処理部40は筐体12
に収納されていることから、磁気的な影響は実質的に排
除されているので、正孔mhはその有する電荷と磁束密
度で定まるローレンツ力を受けないことになる。
【0114】よって、正孔mhは、x軸方向にはコリオ
リの力Fcしか受けないことになり、図7に点線で示し
た軌跡で移動し、第1,第2半導体の検出電極26a,
26bからは、このコリオリの力Fc、即ち角速度ωを
反映した電極電圧しか得られない。そして、第1半導体
42と第2半導体44とでは正孔mhは図示するように
x軸方向に逆向きに移動するので、第1半導体42で正
孔mhが検出電極26aに到達すれば、第2半導体44
ではその逆の検出電極26bに到達する。従って、差動
増幅器49,50からは、その極性が異なるもののその
大きさが等しい値の電圧として、上記の検出電圧V1ou
t と検出電圧V2out とが出力され、これら電圧には角
速度ωしか反映していない。
【0115】このため、極性が異なる検出電圧V1out
と検出電圧V2out の減算演算を行なう減算器51から
の検出出力S1out は、角速度ωのみが反映し、その角
速度ωの2倍の大きさの角速度についての出力となる。
一方、両検出電圧の加算演算を行なう加算器52からの
検出出力S2out は、ゼロとなる。
【0116】今、車両にx軸方向の横加速度αが+x軸
方向に加わったとすると、第1半導体42,第2半導体
44における正孔mhにはその慣性力Faが共に−x軸
方向に加わる。このため、第1半導体42における正孔
mhの軌跡は図中点線で示す軌跡から−x軸方向にず
れ、正孔mhは速く検出電極26aに到達する。一方、
第2半導体44における正孔mhの軌跡は図中点線で示
す軌跡から−x軸方向にずれ、検出電極26bへの正孔
mhの到達は遅れる。このため、第1半導体42の検出
電極26a,26bから差動増幅器49を経て得られる
検出電圧V1outは、正孔mhが速く到達する分大きく
なり、第2半導体44からの検出電圧V2out は、正孔
mhが遅く到達する分小さくなる。しかも、この電圧の
増加分・減少分△Vは、同一の慣性力Faが同一方向に
正孔mhに加わることから、その絶対値としては同じと
なる。そして、検出電圧V1out と検出電圧V2out は
その極性が異なることから、例えば、検出電圧V1out
が正の極性であれば、この検出電圧V1out は、正極の
ままその電圧値の絶対値が増加し(V1out +△V)、
検出電圧V2out は、負極のままその電圧値の絶対値が
減少する(−V2out+△V)。
【0117】このため、減算器51でこの検出電圧V1
out と検出電圧V2out の減算演算が行なわれると、検
出電圧V1out の電圧の増加分△Vと検出電圧V2out
の電圧の減少分△Vは相殺される。そして、電圧の増加
分・減少分は、横加速度αが加わったことにより生じた
ものであるので、この減算器51からの検出出力S1ou
t は、この横加速度による外乱成分が除外され、角速度
ωのみが反映した出力となる。この結果、この第2実施
例の角速度検出装置10Aによれば、横加速度による外
乱成分が含まれない検出出力S1out からz軸回りの角
速度を検出することができるので、その検出精度が向上
する。なお、横加速度が−x軸方向に加わった場合も同
様である。
【0118】一方、加算器52で上記の両検出電圧の加
算演算が行なわれると、検出電圧V1out と検出電圧V
2out は極性が異なることから、この両検出電圧に含ま
れる角速度ωの反映成分は加算演算を経て相殺される。
よって、加算器52からの検出出力S2out は、車両に
加わった横加速度αのみが反映した出力となる。この結
果、この第2実施例の角速度検出装置10Aによれば、
横加速度による外乱成分しか含まない検出出力S2out
から横加速度αを正確に検出することができる。
【0119】また、この角速度検出装置10Aにあって
も、検出・処理部40自体を筐体12内に収納して磁気
シールドすると共に、キャリアを正孔mhとしたので、
第1実施例の角速度検出装置10と同様、磁気シールド
とローレンツ力FLの抑制とを通して、高い精度でz軸
回りの角速度を検出することができる。つまり、この第
2実施例の角速度検出装置10Aによれば、横加速度と
磁気の影響を排除若しくは抑制を通して、z軸回りの角
速度の検出精度のより一層の向上を図ることができる。
【0120】更に、第1半導体42,第2半導体44を
共にp型半導体としたり、検出・処理部40をワンチッ
プ部品化したことにより、検出精度の向上とコスト低下
とを両立並びに一層の小型化をも図ることができる。
【0121】次に、第3実施例について説明する。第3
実施例の角速度検出装置10Bは、図8に示す検出・処
理部53を有する。この検出・処理部53は、図示する
ように、第1半導体54と第2半導体56と信号処理回
路58とを有する。この第3実施例においては、第1半
導体54は、p型半導体であり正孔mhをキャリアとす
る。一方、第2半導体56は、n型半導体であり電子e
をキャリアとする。
【0122】そして、第1半導体54と第2半導体56
は、共通の直流電圧源57に並列に接続されており、駆
動電極25a,25bから所定電圧値の直流電圧の印加
を受ける。従って、各半導体では上記したようにそのキ
ャリアの極性が逆であるので、図示するように、電圧の
印加を受けると、第1半導体54では、正孔mhが+y
軸方向に移動し、第2半導体56では電子eが−y軸方
向に移動する。
【0123】なお、この角速度検出装置10Bにあって
も、車両への搭載の様子は、角速度検出装置10,10
Aと同様である。
【0124】この角速度検出装置10Bであっても、角
速度検出装置10Aと同様に、キャリア(正孔mh,電
子e)の移動方向は第1半導体54と第2半導体56と
で逆向きとなる。よって、z軸回りに角速度ωが時計回
りに生じた場合の各キャリア(正孔mh,電子e)への
コリオリの力Fcの加わり方と、キャリアの移動の様子
は、角速度検出装置10Aで述べた通りとなる。つま
り、キャリア(正孔mh,電子e)は、図示するよう
に、第1半導体54,第2半導体56においてy軸から
ずれた点線の軌跡で移動する。そして、コリオリの力F
cを受けたキャリア(正孔mh,電子e)がそれぞれの
半導体における検出電極26a,26bに到達すると、
各半導体における検出電極から得られる電極電圧が信号
処理回路58に出力される。なお、この角速度検出装置
10Bにあっても、検出電極からの電極電圧は、それぞ
れの検出電極に単位時間当たりに到達するキャリア(正
孔mh,電子e)の数にほかならない。
【0125】信号処理回路58は、第2実施例における
信号処理回路46と同様に、各半導体からの電極電圧が
入力される差動増幅器49,50を有する。また、この
ほかに、差動増幅器49に接続された増幅器59と、こ
の増幅器59および差動増幅器50からの信号を加算し
て出力する加算器60と、減算して出力する減算器61
とを備える。この差動増幅器49,50からは、信号処
理回路46と同様に、電極電圧の差動増幅を経て第1半
導体54からの検出電圧V1out と第2半導体56から
の検出電圧V2out とが出力される。この場合、検出電
圧V1out は、増幅器59によりその増幅率βで増幅さ
れた検出電圧V1’out として出力される。そして、こ
の検出電圧V1’out と検出電圧V2out は、加算器6
0での加算を経て、最終的な第1の検出出力S1out と
して外部の制御装置に出力される。また、減算器61に
入力されて減算された検出電圧V1’out と検出電圧V
2out は、最終的な第2の検出出力S2out として外部
の制御装置に出力される。なお、増幅器59の増幅率β
については後述する。
【0126】次に、上記のように構成した第3実施例の
角速度検出装置10Bでのz軸回りの角速度ωの検出の
様子について説明する。
【0127】車両が定速の直進走行等をしているために
x軸方向の横加速度が加わっていない場合には、第1半
導体54の正孔mhと第2半導体56の電子eには、z
軸回りの角速度ωによって生じるコリオリの力Fcがx
軸方向に加わる。また、この第3実施例では、検出・処
理部53は筐体12に収納されていないので、正孔mh
と電子eには、その有する電荷と磁束密度B(磁束の向
きは−z軸方向)で定まるローレンツ力FLもx軸方向
に加わる。
【0128】この際の正孔mh,電子eへのコリオリの
力Fcとローレンツ力FLの加わり方は、図2でもって
説明したように、コリオリの力Fcはx軸方向に沿って
逆向きであり、ローレンツ力FLはx軸方向に同じ向き
となる。よって、正孔mh,電子eは、図8に点線で示
した軌跡で移動し、第1,第2半導体の検出電極26
a,26bからは、このコリオリの力Fc(角速度ω)
とローレンツ力FLとを反映した電極電圧が得らる。
【0129】ここで、正孔mhと電子eのy軸方向の移
動方向が逆であることから、正孔mhの移動速度をvy
hとすれば、電子eの移動速度は−vyeと表わすこと
ができる(hは正孔mhについての速度であることを、
eは電子eについての速度であることを示す)。よっ
て、正孔mhについてのコリオリの力をFch,ローレ
ンツ力をFLhとし、電子eについてのコリオリの力を
Fce,ローレンツ力をFLeとすると、これらは数式
1,数式2のコリオリの力Fc,ローレンツ力FLであ
るので、上記のy軸移動速度等を用いれば次の数式16
で表わされる。なお、式中、mhは正孔mhの有効質
量、meは電子eの有効質量である。
【0130】
【数16】
【0131】そして、正孔mhは、コリオリの力Fch
とローレンツ力FLhとを合わせた合力(2・mh・ω
・vyh+B・q・vyh)を受けて検出電極26bに
到達し、第1半導体54の検出電極26a,26bから
電極電圧が得られる。また、電子eは、コリオリの力F
ceとローレンツ力FLeの合力(−2・me・ω・v
ye+B・q・vye)を受けて検出電極26aに到達
し、第2半導体56の検出電極26a,26bから電極
電圧が得られる。この場合、正孔mhと電子eとでは、
その有する電荷の極性が異なり、到達する検出電極にお
ける電極が逆(正孔mhにあっては検出電極26b、電
子eに合っては検出電極26a)であることから、第1
半導体54,第2半導体56から得られる電極電圧の極
性は同極となり、差動増幅器49,50からの検出電圧
V1out と検出電圧V2out も同じ極性の出力となる。
【0132】また、第1半導体54では、ローレンツ力
FLhは正孔mhの検出電極26bへの到達を早めるよ
う働くので、その分だけ電極電圧(検出電圧V1out )
が増加する。しかし、第2半導体56では、ローレンツ
力FLeは電子eの検出電極26aへの到達を遅らせる
よう働くので、その分だけ電極電圧(検出電圧V2out
)が減少する。ここで、第1半導体54での電極電圧
の増加分を△V1とし、第2半導体56での減少分を△
V2とすると、その比の値(△V1/△V2)は、正孔
mhについてのコリオリの力Fchの大きさと電子eに
ついてのコリオリの力Fceの大きさがほぼ等しい、即
ち正孔mhの有効質量mhと電子eの有効質量meがほ
ぼ等しい半導体では、具体的には、AlAs(有効質量
mh=0.76,有効質量me=0.5)やInAs
(有効質量mh=0.026,有効質量me=0.02
2)等の半導体では、数式16から、FLh/FLeと
ほぼ等しくなる。つまり、上記の比の値(△V1/△V
2)は、第1半導体54における正孔mhのy軸方向の
移動速度vyhと第2半導体56における電子eの移動
速度vyeの比の値(vyh/vye)となる。なお、
通常、電子eの移動速度vyeは正孔mhの移動速度v
yhより大きいことから、この比の値(vyh/vy
e)は1未満である。
【0133】また、正孔mhについてのコリオリの力F
chの大きさと電子eについてのコリオリの力Fceの
大きさが異なる場合(有効質量mh≠有効質量me)に
は、上記の比の値(△V1/△V2)は、移動速度vy
hと移動速度vyeの比の値(vyh/vye)にコリ
オリの力Fchとコリオリの力Fceの比の値(Fch
/Fce=有効質量mh/有効質量me)を加味したも
のとなる。
【0134】この第3実施例では、信号処理回路58の
有する増幅器59における増幅率βが、第1半導体5
4,第2半導体56での電極電圧の増加分△V1と減少
分△V2の比の値(△V1/△V2)に相当する値とさ
れている。従って、増幅器59により検出電圧V1out
を増幅率βで増幅した検出電圧V1’out と検出電圧V
2out とは、同じ極性の出力であると共に、ローレンツ
力FLによる出力の増加分・減少分が同じ程度とされた
ものとなる。
【0135】このため、この検出電圧V1’out と検出
電圧V2out の加算演算を行なう加算器60からの検出
出力S1out は、ローレンツ力FLによる出力の増加分
・減少分が相殺されて、角速度ωのみが反映した出力と
なる。一方、両検出電圧の減算演算を行なう減算器61
からの検出出力S2out は、コリオリの力Fcによる出
力成分が相殺されて、ローレンツ力FLのみが反映した
出力となる。
【0136】今、車両にx軸方向の横加速度αが−x軸
方向に加わったとすると、第1半導体54,第2半導体
56における正孔mh,電子eにはその慣性力Faが共
に+x軸方向に加わる。このため、第1半導体54で
は、上記した場合よりより速く検出電極26bに正孔m
hが到達して、検出電圧V1out は増加し、第2半導体
56では、検出電極26aへの電子eの到達はより遅延
して、検出電圧V2outは減少する。そして、横加速度
αが加わったことによる検出電圧の増加分と減少分は、
正孔mhについての慣性力Fa(=α/mh)と電子e
についての慣性力Fa(=α/me)の比の値(mh/
me)だけ相違する。しかし、この比の値(mh/m
e)を加味した増幅率βでの増幅器59による増幅によ
り、検出電圧V1’out における加速度成分と検出電圧
V2out における加速度成分とは、近似した値となる。
【0137】このため、加算器60でこの検出電圧V
1’out と検出電圧V2out の加算演算が行なわれる
と、両検出電圧における増加分と減少分は相殺される。
そして、この電圧の増加分・減少分は、横加速度αと磁
界との影響により生じた外乱成分であるので、この加算
器60からの検出出力S1out は、やはりこれら外乱成
分が除外され、角速度ωのみが反映した出力となる。こ
の結果、この第3実施例の角速度検出装置10Bによれ
ば、横加速度と磁界による外乱成分が含まれない検出出
力S1out からz軸回りの角速度を検出することができ
るので、その検出精度が向上する。
【0138】一方、減算器61で検出電圧V1’out と
検出電圧V2out の減算演算が行なわれると、検出電圧
V1’out と検出電圧V2out は極性が同じであること
から、この両検出電圧に含まれる角速度ωの反映成分は
減算演算を経て相殺される。よって、加算器52からの
検出出力S2out は、車両に加わった横加速度αと磁界
が反映した出力となる。この結果、この第3実施例の角
速度検出装置10Bによれば、横加速度と磁界による外
乱成分しか含まない検出出力S2out を得ることがで
き、車両に加わった横加速度や磁気といった外乱の程度
をこの検出出力S2out から正確に検出することができ
る。
【0139】以上本発明の実施例について説明したが、
本発明は上記の実施例や実施形態になんら限定されるも
のではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種
々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【0140】例えば、上記の実施例では、角速度検出装
置10を車両に搭載するに当たって図3に示すように当
該装置を水平に設置し、この車両に加わるz軸回りの角
速度を検出することとしたが、車両にx軸回りの回転運
動(ローリング)が加わった際の角速度を検出するよう
構成することもできる。この場合には、角速度検出装置
10を垂直にして車両に搭載し、その際に、当該検出装
置におけるy軸を車両の直進方向に、z軸を車軸方向に
それぞれ一致させれば良い。また、y軸回りの回転運動
(ピッチング)が加わった際の角速度を検出するよう構
成することもできる。この場合には、角速度検出装置1
0を垂直にして車両に搭載し、その際に、当該検出装置
におけるy軸を車軸方向に、z軸を車両の直進方向にそ
れぞれ一致させれば良い。更には、車両に限らず、航空
機や産業用ロボット等の種々の移動体に搭載することも
できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の半導体と第2の半導体を有し、両半導体
におけるキャリアの移動方向が逆向きとした本発明の角
速度検出装置において、両半導体のそれぞれのキャリア
の採る移動挙動を説明するための説明図。
【図2】第1の半導体と第2の半導体を有し、両半導体
におけるキャリアの移動方向が逆向きで電荷の極性が異
なるものとした本発明の角速度検出装置において、両半
導体のそれぞれのキャリアの採る移動挙動を説明するた
めの説明図。
【図3】第1実施例の角速度検出装置10の車両におけ
る搭載の様子を模式的に示す模式図。
【図4】この角速度検出装置10における検出・処理部
20の概略構成を示すブロック図。
【図5】検出・処理部20における半導体22並びに電
極の製造の概略を説明するために用いた図4の5−5線
断面図。
【図6】角速度検出装置10による角速度検出の様子を
説明するための出力線図。
【図7】第2実施例の角速度検出装置10Aにおける検
出・処理部40の概略構成を示すブロック図。
【図8】第3実施例の角速度検出装置10Bにおける検
出・処理部53の概略構成を示すブロック図。
【図9】半導体を用いた本発明の角速度検出装置の検出
原理とその問題点を説明するための説明図。
【符号の説明】
10,10A,10B…角速度検出装置 12…筐体 20…検出・処理部 22…半導体 24…信号処理回路 25a,25b…駆動電極 26a,26b…検出電極 27…交流電源 28…差動増幅器 29…バンドパスフィルタ 30,31…サンプリングIC 32…加算器 33…整流器 34,35,36…インバータ 40…検出・処理部 42…第1半導体 44…第2半導体 46…信号処理回路 47…直流電圧源 48…直流電圧源 49,50…差動増幅器 51…減算器 52…加算器 53…検出・処理部 54…第1半導体 56…第2半導体 57…直流電圧源 58…信号処理回路 59…増幅器 60…加算器 61…減算器 S1…出力信号 S2…出力信号 S3…出力信号 Sout…検出出力 S1out…第1の検出出力 S2out…第2の検出出力 Vout…検出電圧 V1out,V1’out…検出電圧 V2out…検出電圧 mc1,mc2…キャリア e…電子 mh…正孔 ω…角速度

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 軸回りの角速度が発生する第1の軸と交
    差する第2の軸に沿って、キャリアが移動可能な半導体
    を有し、該半導体におけるキャリアの移動挙動に基づい
    て前記第1の軸回りの角速度を検出する装置であって、 前記半導体のキャリアの移動方向に交差する方向の磁界
    を低減する手段を有することを特徴とする角速度検出装
    置。
  2. 【請求項2】 軸回りの角速度が発生する第1の軸と交
    差する第2の軸に沿って、キャリアが移動可能な半導体
    を有し、該半導体におけるキャリアの移動挙動に基づい
    て前記第1の軸回りの角速度を検出する装置であって、 前記半導体におけるキャリアが周囲の磁界から受ける力
    を、前記第1の軸回りの角速度に伴い発生する力に影響
    を及ぼすことなく抑制する手段を有することを特徴とす
    る角速度検出装置。
  3. 【請求項3】 請求項2記載の角速度検出装置であっ
    て、 前記半導体は正孔をキャリアとするp型半導体である角
    速度検出装置。
  4. 【請求項4】 軸回りの角速度を検出する装置であっ
    て、 前記角速度が発生する第1の軸と交差する第2の軸に沿
    って、キャリアが移動可能な半導体と、 該半導体におけるキャリアの移動挙動に基づいた信号を
    出力する出力手段と、 前記第1の軸回りの角速度以外の外乱が加わって前記信
    号に重畳した外乱成分を除去する除去手段とを備えるこ
    とを特徴とする角速度検出装置。
  5. 【請求項5】 請求項4記載の角速度検出装置であっ
    て、 前記除去手段は、 前記キャリアの移動挙動を変化させる加速度が加わるこ
    とで前記信号に重畳した加速度起因外乱成分を遮蔽する
    フィルタ手段を有する角速度検出装置。
  6. 【請求項6】 請求項4記載の角速度検出装置であっ
    て、 前記半導体は、 前記第2の軸に沿ったキャリアの移動方向が互いに逆向
    きとされた第1の半導体と第2の半導体とからなり、 前記出力手段は、 前記第1,第2の半導体におけるキャリアの移動挙動に
    基づいて前記第1の軸回りの角速度に応じた信号をそれ
    ぞれ出力する第1の出力手段と第2の出力手段とからな
    り、 前記除去手段は、 前記第1の出力手段から出力された第1の信号と前記第
    2の出力手段から出力された第2の信号とに共通して重
    畳した外乱成分を、前記第1と第2の信号の演算処理を
    通して相殺する手段を有する角速度検出装置。
  7. 【請求項7】 請求項6記載の角速度検出装置であっ
    て、 前記第1と第2の半導体は、それぞれが有するキャリア
    の電荷の極性が異なるものとされている角速度検出装
    置。
  8. 【請求項8】 請求項6記載の角速度検出装置であっ
    て、 前記第1と第2の半導体におけるキャリアの移動挙動へ
    の周囲の磁界の影響を排除する手段と、前記第1と第2
    の半導体におけるキャリアが周囲の磁界から受ける力を
    前記第1の軸回りの角速度に伴い発生する力に影響を及
    ぼすことなく抑制する手段のいずれかの手段を有する角
    速度検出装置。
  9. 【請求項9】 請求項6又は請求項7記載の角速度検出
    装置であって、更に、 前記第1の出力手段から出力された第1の信号と前記第
    2の出力手段から出力された第2の信号とに共通して重
    畳した外乱成分に該当する信号を、前記第1と第2の信
    号の演算処理を通して該第1,第2の信号から抽出し、
    出力する手段を有する角速度検出装置。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008185344A (ja) * 2007-01-26 2008-08-14 Epson Toyocom Corp ジャイロモジュール
JP2010117374A (ja) * 2010-02-24 2010-05-27 Epson Toyocom Corp ジャイロモジュール

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2008185344A (ja) * 2007-01-26 2008-08-14 Epson Toyocom Corp ジャイロモジュール
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