JPH10258230A - 脱硫型吸油剤、吸油剤及び油処理材並びに被処理油中の硫黄分の処理方法及び被処理油の処理方法 - Google Patents

脱硫型吸油剤、吸油剤及び油処理材並びに被処理油中の硫黄分の処理方法及び被処理油の処理方法

Info

Publication number
JPH10258230A
JPH10258230A JP4709797A JP4709797A JPH10258230A JP H10258230 A JPH10258230 A JP H10258230A JP 4709797 A JP4709797 A JP 4709797A JP 4709797 A JP4709797 A JP 4709797A JP H10258230 A JPH10258230 A JP H10258230A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
oil
treated
water
absorbing agent
treating
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP4709797A
Other languages
English (en)
Inventor
Kishiyun Kin
▲煕▼濬 金
Kazuhiro Eguchi
和弘 江口
Masao Kobayashi
征夫 小林
Katsuo Mori
勝男 森
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
KIYOUEISHIYA KK
KYOEISHA KK
Original Assignee
KIYOUEISHIYA KK
KYOEISHA KK
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by KIYOUEISHIYA KK, KYOEISHA KK filed Critical KIYOUEISHIYA KK
Priority to JP4709797A priority Critical patent/JPH10258230A/ja
Publication of JPH10258230A publication Critical patent/JPH10258230A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Treatment Of Liquids With Adsorbents In General (AREA)
  • Removal Of Floating Material (AREA)
  • Water Treatment By Sorption (AREA)
  • Solid-Sorbent Or Filter-Aiding Compositions (AREA)
  • Fats And Perfumes (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 吸油性に優れ、脱硫作用のある吸油剤及び処
理後の回収が容易な油処理材並びに硫黄分の処理方法及
び被処理油の処理方法を提供する。 【解決手段】 ビシクロ[2.2.1]ヘプテン─2等
からなる吸油性に優れる重合体に、塩基性無機塩を配合
して、特に、脱硫型の吸油剤を得る。また、吸油剤を水
溶性の素材、特に、ポリビニルアルコールからなる袋状
容器に収納した油処理材を得る。脱硫型吸油剤には、特
に、アルカリ金属、アルカリ土類金属の炭酸塩、水酸化
物等の塩基性無機塩が配合され、焼却処理時等に亜硫酸
ガス等の有害ガスが環境中に放出されることがない。更
に、油処理材は、その包装容器のすべてが水に溶解し、
水に溶解しない包装容器構成成分等からなる固形物など
が水中に分散し、沈降することがなく、二次災害を起こ
す恐れがない。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】第1発明は、被処理油を処理
した後、吸油剤を焼却処分すると同時に被処理油中の硫
黄分を脱硫し、処理するための脱硫型吸油剤に関する。
また、第3発明は、ビシクロ[2.2.1]ヘプテン─
2等からなる吸油性重合体と塩基性無機塩とを含有し、
吸油性、保油性等に優れ、且つ脱硫作用をも有する吸油
剤に関する。更に、第5発明は、水に溶解する素材から
なる包装容器と、この包装容器に収納される吸油性重合
体を含む吸油剤とからなる油処理材に関する。また、第
6発明は、特定の油処理材であって、被処理油を含む水
と接触させた場合に、固形物が水の中に分散せず、又は
沈降しない油処理材に関する。尚、この油処理材におい
ても塩基性無機塩を併用すれば、脱硫作用をも併せ有す
る油処理材とすることができる。
【0002】更に、第9発明は、上記の特定の吸油剤を
用いて被処理油を処理し、処理後の吸油剤の焼却処分若
しくは油の回収時に、被処理油中の硫黄分を脱硫し、処
理する方法に関する。また、第10発明は、包装容器に
収納される吸油剤、この吸油剤に吸収された被処理油及
び包装容器の構成成分からなるゲル体を容易に形成する
ことができ、このゲル体は水中に沈降することなく、水
面近傍に浮遊し、容易に回収することができる被処理油
の処理方法に関する。
【0003】
【従来の技術】近年、海洋、河川等における流出油の処
理或いは排水中の油分の回収等が、環境保全上の大きな
問題となっている。また、工場、家庭などから排出され
る小量の廃油、又は工場内における機械、装置からの漏
油等の簡便な処理方法が強く望まれている。そして、こ
れら流出油、廃油或いは漏油などの回収又は処理の有力
な手段として、吸油剤又は吸油材によって油類を吸収す
る方法が従来より採られている。この吸油剤等として
は、油類の性状、処理環境等によって以下の各種のもの
が使用されているが、それぞれ問題を抱えている。
【0004】(1) 乳化分散剤を特に河川などの流水中に
散布すれば、流出油等は水とともに乳化混濁し、分散さ
れる。この分散された流出油等は微生物などによって分
解、処理される。この乳化分散剤による方法は低コスト
であり、且つ散布後の回収も不要である。しかし、言い
換えれば吸油剤等の回収を要する場合は使用できず、ま
た微生物などによる分解、処理であるため大量の水を必
要とする。従って、狭い湾内、中小河川等においては使
用することができず、流出油等が多量である場合も用い
ることができない。更に、乳化分散剤は水中の富栄養化
の原因となり得るものであり、赤潮などが発生すること
もある。
【0005】(2) アミノ酸エステル系又はソルビトール
系の有機化合物からなる液状の流出油ゲル化剤を使用す
ることもできる。このゲル化剤は、流出油を取り込んで
凝集し、ゲル化するため、処理後の回収は比較的容易で
ある。また、この方法では、回収後のゲル化剤から蒸留
によって非処理油を再生することもできる。しかし、海
面上で使用した場合は凝集したゲルが微粒子となって回
収が困難になるという問題がある。
【0006】(3) ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊
維及びポリスチレン繊維等、疎水性樹脂からなる繊維、
又はそれらにより構成される不織布からなる合成繊維系
吸油材も実用化されている。この吸油材の吸油作用は毛
細管現象によって繊維の間隙に油類を吸着、保持するも
のである。また、この吸油材は容易にマット状等とする
ことができ、形態安定性に優れ、長期に渡って保管して
おくこともできる。しかし、低粘性油については吸油能
力がほとんどなく、吸油後の吸油材に力を加えた場合、
吸収されていた非処理油が容易に再放出されてしまう。
そして、このように再放出し易いため、その吸油量は体
積比で10倍程度と高いにもかかわらず、実際に回収で
きるのは体積比で2倍程度と非常に低い場合もある。更
に、油の吸着に長時間を要するとの問題もある。
【0007】上記の吸油剤又は吸油材は、それぞれ特徴
があり、それなりに効果を有している。しかし、同時に
それぞれ上述の特有の問題を有するものでもある。この
ような状況下、 (5) ポリノルボルネン、t−ブチルスチレン−ジビニル
ベンゼン共重合体及びt−ブチルメタクリレート又はネ
オペンチルメタクリレートの重合体若しくはこれらの共
重合体の架橋物等の吸油性重合体を使用した粉末状油ゲ
ル化剤が注目されている。この粉末状油ゲル化剤は吸油
性が非常に高く、しかも吸油後のゲルの形態も安定して
おり、回収が容易である。また、水分は吸着せず、比重
が0.4〜0.6程度と軽量であるため、水中に沈んで
しまうこともない。
【0008】しかし、軽量であって非常に飛散し易いた
め、使用時、人が吸入したり、衣服、皮膚等に付着し易
い。更に、強風下においては使用することができないと
の問題もある。そのため、このゲル化剤については、飛
散し難く、扱い易いものへの改良が望まれている。ま
た、この粉末状油ゲル化剤を袋状容器等、包装容器に収
納して使用することも多い。この包装容器を構成する素
材としては、川面、海上等に投下された場合に、速やか
に水に溶解し、被処理油と吸油剤との接触が容易になさ
れるものが好ましい。そのような素材としては、実用的
には水溶性の紙が使用されることも多い。
【0009】しかし、上記の水溶性の紙はすべてが水に
溶解するものではなく、水に溶解しない構成成分をも有
する。そのため、水に溶解する速度は遅く、吸水して膨
潤しながら溶解していく傾向にある。また、水に溶解し
ない構成成分そのもの、或いはこの構成成分が被処理油
を取り込みつつ相当量の水を吸収して形成される固形物
が、水中に分散し、又は沈降するとの問題がある。この
ように水中に沈降した紙の成分と被処理油とは回収が難
しく、川底、海底等に堆積して新たな災害を引き起こす
恐れが大きい。
【0010】尚、上記(1) の乳化分散剤以外のものは油
類を回収した後、廃棄、焼却等、何らかの処理が必要と
なる。そして、廃棄の場合は埋め立てのための用地の問
題などがあるため、一般には被処理油を吸収、吸着した
処理剤等を焼却して処分している。しかし、焼却時、被
処理油に含まれている硫黄分或いは海水から処理剤等に
混入した塩素分から、酸化硫黄、硫化水素等の硫黄化合
物又は塩化水素等の塩素化合物等の有毒ガスが発生する
ため、人体への影響或いは環境汚染等が懸念されてい
る。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記問題を
解決するものであり、第1発明は、吸油性重合体に、特
に炭酸カルシウム、水酸化カルシウム等の塩基性無機塩
を配合することにより、使用後、焼却処分と同時に被処
理油中の硫黄分などを脱硫、処理するための脱硫型吸油
剤を提供することを課題とする。また、第3発明は、ビ
シクロ[2.2.1]ヘプテン─2等からなる吸油性重
合体に、上記の塩基性無機塩を配合した吸油剤を提供す
るものである。更に、第5及び第6発明は、吸油性重合
体を含む吸油剤を、水に溶解する素材からなる包装容器
に収納して使用することにより、水に溶解しない包装容
器の構成成分が被処理油、場合によっては更に吸油剤を
取り込んで水中に沈降し、二次災害を引き起こす恐れの
ない油処理材を提供することを課題とする。
【0012】また、第9発明は、第1発明の脱硫型吸油
剤及び第3発明の吸油剤を使用して、特定の操作によっ
て、その中に含まれる硫黄分を脱硫、処理する方法を提
供することを課題とする。更に、第10発明は、吸油
剤、この吸油剤に吸収された被処理油及び包装容器の構
成成分からなるゲル体が容易に形成され、且つ水に溶解
しない包装容器の構成成分と、被処理油とからなり、水
中に分散し、又は沈降する固形物などが形成されること
のない被処理油の処理方法を提供することを課題とす
る。本発明の脱硫型吸油剤、吸油剤及び油処理材は、吸
油性、保油性等に優れ、且つ取り扱い易く、強風時など
の環境下でも容易に使用することができる。加えて、被
処理油を吸収し、膨潤した吸油剤等の粒子は安定したゲ
ル体となり回収し易い。
【0013】
【課題を解決するための手段】第1及び第3発明におい
て特定する脱硫型吸油剤及び吸油剤は、流出油、廃油、
漏油及び浮上油等、何らかの処理を要する油類(この
「油類」との用語は、通常の油ばかりではなく、有機溶
媒をも意味するものとする。)、或いはこれら油類を含
む油水混合系などにおいて使用することができる。しか
も、各種の油類を多量に吸収し、且つ吸収された油類が
容易に流出することがなく、吸油性及び保油性等に優れ
る。また、第5及び第6発明において特定する油処理材
は、水に溶解する素材からなる包装容器を使用すること
により、水に溶解しない包装容器構成成分、或いはこの
構成成分が被処理油を取り込んで形成される固形物など
が、水中に分散し、又は沈降することがない。
【0014】第1発明の脱硫型吸油剤は、吸油性重合体
と、塩基性無機塩とを含有することを特徴とする。ま
た、第3発明の吸油剤は、ビシクロ[2.2.1]ヘプ
テン−2及びその置換誘導体のうちの少なくとも一方か
らなる吸油性重合体と、塩基性無機塩とを含有すること
を特徴とする。
【0015】第1発明の上記「吸油性重合体」として
は、ビシクロ[2.2.1]ヘプテン─2からなる重合
体が挙げられる。また、1−ヘキセン、1−オクテン、
イソオクテン、1−ノネン、1−デセン及び1−ドデセ
ン等のα−オレフィンからなる重合体を使用することも
できる。更に、ビニルシクロヘキサン等の脂環式ビニル
化合物、ドデシルアリルエーテル等の炭化水素基を有す
るアリルエーテルなどからなる重合体を用いることもで
きる。また、少なくとも1個の炭素数3〜30の脂肪族
炭化水素基を有するアルキル(メタ)アクリレート、ア
ルキルアリール(メタ)アクリレート、脂肪族ビニルエ
ステル及びアルキルスチレン等から選ばれる少なくとも
1種の不飽和化合物からなる重合体を使用することもで
きる。これらの重合体は適宜の2種以上の単量体からな
る共重合体であってもよい。更に、吸油性重合体とし
て、これら重合体及び共重合体の1種のみを用いてもよ
いし、2種以上を併用してもよい。
【0016】第3発明における上記「ビシクロ[2.
2.1]ヘプテン─2」(以下、「ノルボルネン」とい
う。)は、貴金属化合物及びアルコールなどの還元剤の
存在化、開環重合させることができる。しかし、この方
法によって得られる重合体は、緻密な塊状物となってし
まうため吸油剤としては好ましくない。一方、n─ブタ
ノ─ルに溶解された三塩化ルテニウムからなる触媒系、
又は六塩化タングステン、アルキルアルミニウムと芳香
族溶媒からなる触媒系の存在下、大気圧以上の圧力にお
いて単量体を不完全に開環重合させ、その後、反応生成
物の沸点以上の温度で圧力を急減させる方法によって重
合することもできる。この方法によって得られる重合体
は、粒状であって吸油剤の用途に適している。尚、ノル
ボルネンは、開環重合に特に差し障りがなければ、適宜
位置の1個又は2個以上の水素が短鎖のアルキル基など
によって置換された誘導体であってもよい。また、第1
発明においても、このノルボルネンの置換誘導体を使用
することができる。
【0017】上記「脱硫型吸油剤」及び上記「吸油剤」
は吸油性重合体を主成分として含む。この吸油性重合体
は脱硫型吸油剤等を100重量%(以下、単に%とい
う。)とした場合に、50%以上、特に60%以上、更
には70%以上とすることが好ましい。吸油性重合体の
含有量がこの範囲であれば、吸油性重合体が本来有する
優れた吸油性及び保油性の効果が十分に奏される。
【0018】また、吸油性重合体の粒径は、10〜10
00μm、特に50〜800μm、更には100〜60
0μm程度が好ましい。この粒径が10μm未満の場合
は、粒子が凝集し易くなる。更に、粘度の低い油類を処
理する場合、吸油剤の油類と接触している表層のみが短
時間のうちに油類を吸着し、膨潤する。そのため、粒子
間の油類の流通が阻害され、更に粒子間の水分が外に排
出されない、所謂ゲルブロック現象によって、吸油速度
が低下する。また、粒径が1000μmを越える場合
は、吸油剤の粒子の表層が油類と接触して、膨潤し、油
類が表層を越えて内部にまで侵入し難くなり、吸油量が
低下するため好ましくない。
【0019】第1及び第3発明における上記「塩基性無
機塩」としては、吸油性重合体に配合して、分散、混合
することができ、且つ使用後の吸油剤等を焼却処分する
に際し、被処理油中の硫黄分から発生する亜硫酸ガス等
のSOx 、H2 Sなどと反応し、これを硫酸塩等にする
ことができるものを用いることができる。この塩基性無
機塩としては、特に、第2及び第4発明のように、「ア
ルカリ金属の炭酸塩、アルカリ金属の水酸化物、アルカ
リ土類金属の炭酸塩及びアルカリ土類金属の水酸化物」
のうちの少なくとも1種を使用することが好ましい。
【0020】上記の炭酸塩としては、正塩、炭酸水素塩
及び炭酸水酸化物塩のいずれも使用することができる。
また、塩を構成するアルカリ金属、アルカリ土類金属も
いずれであってもよいが、ナトリウム、カリウム、カル
シウム、マグネシウム、バリウム及び亜鉛等が、コス
ト、入手のし易さ等の面からより一般的である。更に、
水酸化物の場合も、通常、水酸化カルシウム、水酸化マ
グネシウム及び水酸化バリウム等を使用することができ
る。
【0021】また、上記の塩基性無機塩の粒径は特に限
定されないが、0.01〜900μm、特に0.05〜
300μm、更には0.5〜100μm程度が好まし
い。この粒径が0.05μm、特に0.01μm未満で
は、塩基性無機塩の粒子は凝集してしまって取り扱い難
く、且つ吸油性重合体に分散、混合させる場合の作業性
に劣り好ましくない。一方、粒径が900μmを越える
場合は、吸油剤等の燃焼時、発生するSOx などとの反
応性が低下し、SOx などの一部がそのまま大気中に放
出されてしまうことがあるため好ましくない。
【0022】塩基性無機塩の、ノルボルネン等からなる
重合体などの吸油性重合体への配合量は、適度に均一に
分散、混合させることができる限り、特に制限はされな
い。しかし、所要量以上の塩基性無機塩を配合する必要
はなく、被処理油の種類、性状等によって適宜の配合量
とすればよい。この配合量を、吸油性重合体100%に
対して、1〜20%、特に2〜15%、更には3〜10
%程度とすれば、吸油性重合体が本来有する吸油性及び
保油性等が損なわれることはない。更に、この程度の配
合量であれば、均一に分散、混合させることができ、均
質な脱硫型吸油剤等を得ることができる。
【0023】第5発明の油処理材は、水に溶解する素材
からなる包装容器と、該包装容器に収納される吸油性重
合体を含む吸油剤とからなることを特徴とする。また、
第6発明の油処理材は、水に溶解する素材からなる包装
容器と、該包装容器に収納される吸油性重合体を含む吸
油剤とからなる油処理材であって、被処理油を含む水と
接触させた場合に、固形物が上記水中に分散せず、又は
沈降しないことを特徴とする。
【0024】上記「包装容器」は水に溶解する素材によ
って構成される。この水に溶解するとは、包装容器を構
成する素材の実質的にすべてが水に溶解するとの意味で
ある。更に、通常、この素材はほとんど吸油することは
ない。尚、吸水により膨潤し易い素材である場合は、た
とえ吸油性のないものであっても、水に溶解する過程に
おいて、少量の被処理油等が取り込まれることもある。
また、同時に相当量の水が吸収されるため、水中に沈降
してしまって、回収することが難しい固形物などが形成
されるとの大きな問題を生ずる恐れがある。そのため、
包装容器を構成する素材は、速やかに水に溶解するとと
もに、水に溶解する過程において吸水によって膨潤し難
いものであることがより好ましい。
【0025】更に、包装容器の形状等は特に制限されな
いが、輸送、保管、取り扱い時等に容易に破損しない程
度の強度を有するフィルムからなる袋状容器とすること
が好ましい。また、その寸法も人が手で海上等に投下す
ること、及び風によって吹き飛ばされることなく所定の
位置に投下することができることなどを考慮した適宜の
大きさとすればよい。上記「水に溶解する素材」として
は、蛋白質、デンプン等の天然高分子を使用することが
できる。更に、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオ
キシド、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等
の合成高分子を用いることもできる。尚、この水に溶解
する素材としては、第7発明のように、水に速やかに溶
解し、且つ水に溶解しない構成成分を含有せず、また、
水に溶解する過程において吸水によって大きく膨潤する
ことのない「ポリビニルアルコール」が特に好ましい。
【0026】第5及び第6発明における吸油性重合体と
しては、第1及び第3発明におけると同様のものを使用
することができる。更に、これらの各発明においても吸
油性重合体としては、第8発明のようにビシクロ[2.
2.1]ヘプテン─2及びその置換誘導体のうちの少な
くとも一方からなるものを用いることが好ましい。ま
た、吸油剤を100%とした場合に、吸油性重合体は5
0%以上、特に60%以上、更には70%以上とするこ
とが好ましい。更に、塩基性無機塩を併用することもで
き、それによって第1及び第3発明と同様に脱硫作用を
有する油処理材とすることができる。この塩基性無機塩
としては、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ金属の水酸
化物、アルカリ土類金属の炭酸塩及びアルカリ土類金属
の水酸化物等が好ましい。
【0027】包装容器は川面、海上等に投下後、水に溶
解してしまうため回収する必要はない。特に、この包装
容器を構成する素材が生分解するものであれば、環境汚
染の問題はより小さくなり好ましい。第5及び第6発明
においては、吸油性重合体を含む吸油剤を包装容器に収
納することにより、海上等、風の強いところであって
も、所要量の油処理材を所定の位置に正確に投下するこ
とができる。そのため、被処理油を効率よく処理するこ
とができ、また、被処理油を吸収した吸油剤及び包装容
器の構成成分はゲル体を形成して水面に浮くため、処理
後の回収も容易である。
【0028】更に、第5及び第6発明の油処理材では、
水に溶解しない包装容器の構成成分、或いはこの構成成
分が被処理油を取り込んで形成される固形物などが、水
中に分散し、又は沈降するなどという問題もなく、より
確実に被処理油を回収し、処理することができる。尚、
ここで、ゲル体とは、被処理油を吸収した吸油剤の粒子
等が密に集合し、攪拌しても分離、分散することのない
集合体を意味する。また、このゲル体には、被処理油を
吸収した吸油剤の粒子等が緩やかに集合し、例えば、指
で押圧した場合に、比較的容易に崩れてしまう凝集体が
含まれていてもよい。
【0029】尚、吸油性重合体、特にノルボルネン等か
らなる重合体のように分子量の大きいものでは、適量の
軟化剤を添加してもよい。この軟化剤によって、塩基性
無機塩の配合、吸油剤の造粒及びその成形加工等が容易
になる。この軟化剤としては、各種の可塑剤、界面活性
剤等を使用することができる。可塑剤としては、リン酸
エステル、フタル酸エステル及びオキシ酸エスル等を使
用することができる。また、界面活性剤としては、カル
ボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エス
テル塩等の陰イオン界面活性剤の他、陽インオ界面活性
剤、非イオン界面活性剤など、各種の界面活性剤を用い
ることができる。
【0030】ノルボルネン等からなる重合体では、この
軟化剤としては特に炭素数12〜18の脂肪酸の塩が好
ましい。脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、
パルミチン酸、ステアリン酸等の飽和酸及び不飽和酸で
あるオレイン酸が一般的である。更に、塩は、通常、ア
ルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩であり、ナトリウ
ム塩、カリウム塩、カルシウム塩及びマグネシウム塩等
が挙げられる。これらの塩の中では特にステアリン酸カ
ルシウムが好ましく、この塩を添加することによって、
塩基性無機塩の配合が容易となり、また吸油剤の造粒及
びこの粒子を用いた成形加工も容易となり好ましい。
【0031】上記の軟化剤の添加量は、ノルボルネン等
からなる重合体などの吸油性重合体を100%とした場
合に、1〜30%、特に3〜20%、更には5〜15%
程度が好ましい。また、この軟化剤が吸油性を有するも
のである場合は、その性質を考慮した添加量とすればよ
い。更に、軟化剤が水溶性である場合は、海上、河川等
において使用するに際し、軟化剤が水中に流出すること
もあり得るため、所要量以上を添加しないように留意す
る必要がある。
【0032】また、本発明の脱硫型吸油剤、吸油剤及び
油処理材に用いられる吸油剤には、通常、樹脂、ゴムな
どに添加されて使用される各種の添加剤を配合すること
もできる。そのような添加剤としては、酸化防止剤、紫
外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤等が挙げられる。更に、
必要に応じて蛍光顔料等の顔料などを添加し、適宜の色
調に着色することもできる。尚、ノルボルネン等からな
る重合体などの吸油性重合体に、塩基性無機塩、軟化剤
等を配合、添加するに際し、相当に加熱する場合もあ
る。従って、本発明では、特に、そのような工程におけ
る熱劣化を防止するため、例えばジブチルヒドロキシト
ルエン等のフェノール系の酸化防止剤を、吸油性重合体
を100%とした場合に、0.5〜7%、特に1〜5
%、更には2〜4%程度添加することが好ましい。
【0033】ノルボルネン等からなる重合体などの吸油
性重合体に、軟化剤及び各種添加剤等を添加する方法は
特に限定はされない。例えばヘンシェルミキサー、ター
ボミキサー等のミキサーによって混合し、吸油性重合体
の粒子の表面に軟化剤等を付着させることができる。し
かし、付着させただけでは、特に軟化剤などが十分に作
用しないこともあるため、混合物を更に押出成形などに
よって溶融、混練した後、造粒することが好ましい。
【0034】更に、塩基性無機塩を吸油性重合体に配合
する方法も特に限定はされない。例えば、塩基性無機塩
及び吸油性重合体の粒子を単に混合するだけでもよい
し、混合した後、振動を与え、静電気によって吸油性重
合体の表面に塩基性無機塩を付着、固着させてもよい。
この付着、固着は、吸油性重合体に塩基性無機塩を混合
した後、これを吸油性重合体の軟化点近傍の温度或いは
分解温度以下の高温、ポリノルボルネンであれば350
〜450℃程度に加熱し、吸油性重合体の表面を接着可
能な状態とすることにより実施することができる。ま
た、塩基性無機塩を、例えば炭酸カルシウムであれば8
00℃程度に加熱し、これを吸油性重合体に混合するこ
とにより、その表面に付着、固着させることもできる。
【0035】第1発明の脱硫型吸油剤及び第3発明の吸
油剤は前記のように粒状のまま使用してもよいし、加
熱、加圧することによって適宜の寸法、形状の成形体と
して用いてもよい。この成形体は、板状、円板状、棒
状、網状等どのような形状であってもよく、その寸法も
人が手に持って海上等に投下することなどを考慮した適
宜の大きさとすればよい。成形体の厚さも特に制限はさ
れず、0.1〜10mm、特に2〜5mm程度の範囲
で、取り扱い易さ等を考慮した適宜の厚さとすればよ
い。更に、脱硫型吸油剤等を粒状のまま特に親油性の多
孔質体に吸着させて使用することもでき、このように成
形体にしたり、多孔質体に吸着させたりすることによ
り、海上等、風の強いところであっても、所要量の吸油
剤を所定の位置に正確に投下することができる。そのよ
うにすれば被処理油を効率よく処理することができ、且
つ処理後の吸油剤の回収も容易である。
【0036】第9発明の被処理油中の硫黄分の処理方法
は、吸油性重合体と、塩基性無機塩とを含有する吸油剤
を、被処理油又は該被処理油を含む液体と接触させ、該
被処理油を上記吸油剤に吸収させ、その後、この被処理
油が吸収された吸油剤を燃焼させ、上記被処理油等に含
有される硫黄分と上記塩基性無機塩とを反応させること
を特徴とする。
【0037】第1発明の脱硫型吸油剤及び第3発明の吸
油剤は、その成分が水中に溶出することがなく、処理後
は、安定したゲル体となる。また、このゲル体は回収し
易い適度な硬さであり、処理後、確実に回収することが
できる。しかも、焼却処分時、若しくは油を回収する際
に、被処理油中に含まれていた硫黄が酸化されて生成す
る亜硫酸ガスなどの有害ガスは、第9発明のように、吸
油剤に含有されている塩基性無機塩と反応して固体とな
り、大気中に放出されることがない。更に、海水中の塩
分が吸油剤に取り込まれている場合でも、同様に酸化に
よって生成する塩化水素などの有害ガスが固体の塩化物
となり、大気中に放出されることがない。また、上記の
脱硫型吸油剤及び吸油剤では、吸油剤そのものに含まれ
る硫黄分等も同様に処理され、大気中に放出されること
がない。
【0038】更に、第10発明の被処理油の処理方法
は、水に溶解する素材からなる包装容器と、該包装容器
に収納される吸油性重合体を含む吸油剤とからなる油処
理材を、被処理油を含む水と接触させ、上記包装容器を
水に溶解させて、上記吸油剤に上記被処理油を吸収さ
せ、被処理油を処理する方法であって、上記吸油剤、上
記被処理油及び上記包装容器の構成成分からなり、上記
水の表面近傍に浮遊するゲル体が形成され、且つ固形物
が上記水の中に分散せず、又は沈降しないことを特徴と
する。
【0039】上記の油処理材では、吸油性重合体は水中
に溶出することがなく、処理後は、安定したゲル体が形
成される。また、第10発明のように、包装容器は水に
速やかに溶解し、且つ通常、吸油性はなく、吸水して大
きく膨潤することもない。そのため、水に溶解しない包
装容器の構成成分、或いはこれが被処理油を取り込んで
固形物を形成し、水中に分散、沈降することもない。
尚、上記「ゲル体」は相当に硬く、回収し易い。更に、
水中に沈降せず、水面近傍に浮かんでいるため、処理
後、ゲル体の全量を容易に且つ確実に回収することがで
きる。また、このゲル体との用語の意味は前記の通りで
ある。
【0040】第1発明の脱硫型吸油剤、第3発明の吸油
剤及び第5発明の油処理材は、油流出事故の際の流出油
の回収処理、機械油、燃料油などの廃油、漏油の処理、
フランジ、ポンプなどの周辺の漏油の除去処理などに使
用することができる。更に、油分分離槽における浮上油
の吸収、水系の洗浄剤或いは切削油、研削油などの浮上
油の吸収などに用いることができる。また、ガソリン、
灯油、軽油、重油等の油ばかりではなく、ベンゼン、キ
シレン、トルエン或いはエーテル、ケトン、エステル等
の各種有機溶媒の吸収、処理にも使用することができ
る。
【0041】更に、上記の脱硫型吸油剤及び吸油剤は、
被処理油を処理した後、通常、焼却処分されるが、特定
の塩基性無機塩が配合されているため、第9発明の方法
のように、焼却と同時に特に他の操作を要することな
く、被処理油中の硫黄分を脱硫し、処理することができ
る。また、被処理油を処理した後、吸油剤から油を回収
する際にも、同様の作用、効果が奏される。尚、被処理
油中の硫黄分ばかりでなく、吸油性重合体等、吸油剤の
成分そのものが硫黄分を含んでいる場合には、この硫黄
分をも脱硫、処理することができる。また、上記の油処
理材においても、塩基性無機塩を併用することにより、
同様に優れた脱硫作用を有するものとすることができ
る。
【0042】更に、第10発明の方法では、包装容器を
構成する素材のすべてが水に溶解し、水に溶解しない包
装容器の構成成分と、この構成成分に取り込まれる被処
理油とからなる固形物などは形成されない。そのため、
実際に河川、海洋等で被処理油の回収、処理を行った場
合に、固形物等が川底或いは海底等に沈降して堆積し、
回収不能になるという二次災害を起こす恐れがない。
【0043】
【発明の実施の形態】以下、実施例によって本発明を更
に詳しく説明する。 〔1〕第1及び第3発明に対応する実施例 (1) ポリノルボルネンへの軟化剤及び酸化防止剤の添加 粒状のポリノルボルネン88.1%とステアリン酸カル
シウム8.9%とをターボミキサーに投入し、乾燥状態
で攪拌、混合した。その後、このポリノルボルネンとス
テアリン酸カルシウムとの混合物及びこの混合物100
%に対して3%のフェノール系酸化防止剤(ジブチルヒ
ドロキシトルエン)を、押出成形機によって溶融、混練
した後、造粒し、篩によって分級し、粒径100〜60
0μmのものを選別した。粒径が100μm未満のもの
及び600μmを越えるものは、押出工程に戻し、再利
用した。この粒径が外れたものは他の用途に用いてもよ
い。
【0044】(2) 脱硫型吸油剤の調製 上記のようにして調製したステアリン酸カルシウム及び
酸化防止剤を含有するポリノルボルネン100%に対し
て、炭酸カルシウムを5%配合し、ターボミキサによっ
て乾燥状態で均一に混合した。その後、この混合物を2
50〜400℃の温度に加熱し、圧力を加えて圧縮成形
し、100cm×1000cm×3mmの板状体とし、
第1発明の脱硫型吸油剤を得た。この脱硫型吸油剤は、
実際に使用するに際しては所要の寸法に切断して用いら
れる。
【0045】(3) 脱硫型吸油剤の性能評価 上記(2) の脱硫型吸油剤に各種の油或いは有機溶媒を
吸収させ、吸収後の体積の試験前の体積に対する倍率を
評価した。その結果、高硫黄タイプの原油では9.8
倍、低硫黄タイプの原油では12.8倍、重油では1
4.9倍であった。また、ガソリンでは15.0倍、軽
油では15.2倍、灯油では14.0倍、プロセスオイ
ルでは12.0倍であった。更に、有機溶媒であるトル
エン及びキシレンではともに15.0倍であった。この
ように第1発明の脱硫型吸油剤は、油の種類にかかわり
なく、また、有機溶媒であっても優れた吸油性を有する
ものであることが分かる。
【0046】上記(1) の炭酸カルシウムが配合されて
いない吸油剤1gを800℃の温度で燃焼させた。その
結果、800μg近くの亜硫酸ガス、250μg近くの
塩化水素、10μg未満の二酸化窒素及び一酸化窒素、
並びに0.07μgの一酸化炭素と0.97μgの二酸
化炭素が発生した。しかし、上記(2) の脱硫型吸油剤を
同様にして燃焼させたところ、亜硫酸ガス及び塩化水素
は顕著に減少していた。更に、その他の各ガスの発生量
に大差はなかった。このように第1及び第3発明では、
脱硫型吸油剤及び吸油剤そのものに含まれる硫黄分など
も効果的に処理されることが分かる。
【0047】0.5リットルの水が入った水槽に5g
の重油を流入させた。この水槽中に、上記(2) の脱硫型
吸油剤1.5gを投入した。投入後15分静置したとこ
ろ、重油はすべて吸油剤に吸収され、投入した吸油剤の
体積は投入前の10倍にまで膨潤し、回収可能な硬さに
なった。この回収された吸油剤を800℃の温度で燃焼
させたところ、亜硫酸ガス及び塩化水素は極めて少量で
あった。
【0048】一方、上記(1) の炭酸カルシウムが配合さ
れていない吸油剤について同様の試験をしたところ、吸
油性能はまったく同等であった。しかし、試験後、回収
された吸油剤を同温度で燃焼させたところ、亜硫酸ガス
は20000μgであった。このように炭酸カルシウム
が配合されていない吸油剤には脱硫作用がほとんどな
く、塩基性無機塩が有する脱硫効果が裏付けられた。
【0049】〔2〕第5及び第6発明に対応する実施例 (1) ポリノルボルネンへの軟化剤及び酸化防止剤の添加 上記〔1〕、(1) と同様にして行った。 (2) 油処理材の作製 上記のようにして調製したステアリン酸カルシウム及び
酸化防止剤を含有するポリノルボルネン100%に対し
て、炭酸カルシウムを5%配合し、ターボミキサによっ
て乾燥状態で均一に混合して吸油剤を調製した。その
後、この吸油剤5〜10gを厚さ30〜100μmのポ
リビニルアルコールからなるフィルムによって構成され
る、20×30mmの大きさの袋状容器に収納して第5
及び第6発明の油処理材を作製した。また、同寸法の水
溶性の紙からなる容器に、上記の混合物を上記と同量収
納し、比較用の油処理材を作製した。
【0050】(3) 油処理材の性能評価 容量500mlのビーカー2個にそれぞれに400ml
の人工海水を入れ、その水面に各5mlのB重油を滴下
した。その後、これら2個のビーカー中の油滴上に上記
の本発明の油処理材及び比較用の油処理材をそれぞれ投
下した。その結果、第5及び第6発明の油処理材では、
投下後、数分で、包装容器を構成するポリビニルアルコ
ールからなるフィルムは完全に水に溶解し、吸油剤が重
油を吸収し始めた。
【0051】一方、比較用の油処理材では、包装容器を
構成する水溶性の紙は、投下後、数分で水に溶解し始め
たが、ポリビニルアルコールからなるフィルムに比べて
明らかに溶解の速度は小さく、更に、水を吸収して膨潤
しつつ溶解していった。その後、経時的に観察を続けた
ところ、第5及び第6発明の油処理材では、投下後、約
10分で、水面近傍にゲル体が生成し、水面下は透明と
なった。尚、この状態は48時間経過後も何ら変化がな
かった。
【0052】一方、比較用の油処理材でも、水面近傍に
凝集体が形成されたが、経時とともに油滴を同伴し、水
を吸収して膨潤した水溶性の紙がビーカーの底に向かっ
て沈降し始めた。また、30分後には、水溶性の紙の水
に溶解しなかったと思われる構成成分である繊維質と油
滴とが一体となって水中に浮遊し、水面に浮いている凝
集体より下の水中は一様に薄い褐色となった。更に、1
時間経過後には、重油を取り込んだ繊維質がビーカーの
底面に沈降し、堆積し始めた。
【0053】更に、この重油を取り込んだ繊維質は、数
時間後にはほぼ全量がビーカーの底面に堆積し、水面近
傍の凝集体と、この堆積物との間は、ほとんど無色透明
な状態となった。この状態は48時間を経過した後も変
化しなかった。これは、例えば、この比較用の油処理材
を海洋上に流出した重油の処理に使用した場合、重油を
取り込んだ繊維質がかなり多量に海底に堆積することを
示唆しており、このような二次災害が想定される比較用
の油処理材は実用上、大きな問題があることが分かる。
【0054】尚、いずれの油処理材も一見、同様の外観
を呈するゲル体又は凝集体を形成することは上記の通り
である。しかし、第5及び第6発明の油処理材によって
形成されるゲル体は相当に硬く、指で押圧しても重油は
容易に滲み出ることがなく、実用時に回収が容易である
ことが裏付けられた。一方、比較用の油処理材によって
形成される凝集体は、本発明の油処理材の場合のゲル体
に比べてかなり柔らかく、指で押圧すれば容易に重油が
滲み出る状態であった。このように比較用の油処理材で
は、二次災害の恐れがあるばかりではなく、処理後の凝
集体の回収作業も、本発明の油処理材の場合のゲル体と
比べて困難であることが予測される。
【0055】尚、本発明においては、前記具体的実施例
に示すものに限られず、目的、用途に応じて本発明の範
囲内で種々変更した実施例とすることができる。例え
ば、この吸油剤は、籾殻、藁、パルプ、綿、多孔質石
灰、多孔質シリカ、多孔質パーライト、ポリプロピレン
繊維、発泡ウレタンフォーム等の従来公知の吸油剤や充
填物を併用して用いることができる。
【0056】
【発明の効果】第1発明の脱硫型吸油剤及び第3発明の
吸油剤では、ノルボルネン等からなる重合体などの吸油
性重合体に、塩基性無機塩が配合されている。この塩基
性無機塩は、被処理油中の硫黄分から生成する亜硫酸ガ
スなどの有害ガスと反応して、これらを固体の塩として
しまうため、大気中に放出される有害ガスの量が顕著に
減少した。また、第5及び第6発明によれば、被処理油
は速やかに吸収され、且つ被処理油が油処理材の包装容
器とともに水中に分散、沈降することもなく、二次災害
の恐れのまったくない油処理材を得ることができる。
【0057】更に、第9発明の被処理油中の硫黄分の処
理方法によれば、吸油剤を海上、河川等に流出した被処
理油等と接触させ、吸収させて処理した後、被処理油が
吸収された吸油剤を燃焼させるという簡便な方法によっ
て、被処理油に含有される硫黄分から発生する亜硫酸ガ
ス等の有害ガスの大気中への放出を著しく減少させるこ
とができる。また、第10発明によれば、吸油性重合体
を含む吸油剤を収納した包装容器は、水と接触して容易
に溶解し、吸油剤、被処理油及び包装容器の構成成分か
らなるゲル体が水面近傍に形成され、容易にこれを回収
することができる。尚、この包装容器を構成する素材は
水に溶解しない構成成分を含有せず、且つ水によって大
きく膨潤することもない。従って、この包装容器の構成
成分そのもの、或いはこれが被処理油、更には吸油剤を
取り込んで固形物を形成し、水中に分散し、又は沈降す
ることがない。
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C09K 3/00 C09K 3/00 V C11B 15/00 C11B 15/00 (72)発明者 森 勝男 愛知県豊川市美幸町1丁目26番地 株式会 社共栄社内

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 吸油性重合体と、塩基性無機塩とを含有
    することを特徴とする脱硫型吸油剤。
  2. 【請求項2】 上記塩基性無機塩は、アルカリ金属の炭
    酸塩、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の炭
    酸塩及びアルカリ土類金属の水酸化物のうちの少なくと
    も1種である請求項1記載の脱硫型吸油剤。
  3. 【請求項3】 ビシクロ[2.2.1]ヘプテン−2及
    びその置換誘導体のうちの少なくとも一方からなる吸油
    性重合体と、塩基性無機塩とを含有することを特徴とす
    る吸油剤。
  4. 【請求項4】 上記塩基性無機塩は、アルカリ金属の炭
    酸塩、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の炭
    酸塩及びアルカリ土類金属の水酸化物のうちの少なくと
    も1種である請求項3記載の吸油剤。
  5. 【請求項5】 水に溶解する素材からなる包装容器と、
    該包装容器に収納される吸油性重合体を含む吸油剤とか
    らなることを特徴とする油処理材。
  6. 【請求項6】 水に溶解する素材からなる包装容器と、
    該包装容器に収納される吸油性重合体を含む吸油剤とか
    らなる油処理材であって、被処理油を含む水と接触させ
    た場合に、固形物が上記水の中に分散せず、又は沈降し
    ないことを特徴とする油処理材。
  7. 【請求項7】 上記水に溶解する素材はポリビニルアル
    コールである請求項5又は6記載の油処理材。
  8. 【請求項8】 上記吸油性重合体は、ビシクロ[2.
    2.1]ヘプテン−2及びその置換誘導体のうちの少な
    くとも一方からなるものである請求項5乃至7のいずれ
    か1項に記載の油処理材。
  9. 【請求項9】 吸油性重合体と、塩基性無機塩とを含有
    する吸油剤を、被処理油又は該被処理油を含む液体と接
    触させ、該被処理油を上記吸油剤に吸収させ、その後、
    この被処理油を吸収した吸油剤を燃焼させて、上記被処
    理油に含まれている硫黄分と上記塩基性無機塩とを反応
    させることを特徴とする被処理油中の硫黄分の処理方
    法。
  10. 【請求項10】 水に溶解する素材からなる包装容器
    と、該包装容器に収納される吸油性重合体を含む吸油剤
    とからなる油処理材を、被処理油を含む水と接触させ、
    上記包装容器を水に溶解させて、上記吸油剤に上記被処
    理油を吸収させ、被処理油を処理する方法であって、上
    記吸油剤、上記被処理油及び上記包装容器の構成成分か
    らなり、上記水の表面近傍に浮遊するゲル体が形成さ
    れ、且つ固形物が上記水の中に分散せず、又は沈降しな
    いことを特徴とする被処理油の処理方法。
JP4709797A 1996-07-04 1997-02-14 脱硫型吸油剤、吸油剤及び油処理材並びに被処理油中の硫黄分の処理方法及び被処理油の処理方法 Pending JPH10258230A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP4709797A JPH10258230A (ja) 1996-07-04 1997-02-14 脱硫型吸油剤、吸油剤及び油処理材並びに被処理油中の硫黄分の処理方法及び被処理油の処理方法

Applications Claiming Priority (5)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP19559696 1996-07-04
JP9-19756 1997-01-17
JP1975697 1997-01-17
JP8-195596 1997-01-17
JP4709797A JPH10258230A (ja) 1996-07-04 1997-02-14 脱硫型吸油剤、吸油剤及び油処理材並びに被処理油中の硫黄分の処理方法及び被処理油の処理方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH10258230A true JPH10258230A (ja) 1998-09-29

Family

ID=27282760

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP4709797A Pending JPH10258230A (ja) 1996-07-04 1997-02-14 脱硫型吸油剤、吸油剤及び油処理材並びに被処理油中の硫黄分の処理方法及び被処理油の処理方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH10258230A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR20020075351A (ko) * 2002-09-05 2002-10-04 차연선 수분 필터
JP2018050568A (ja) * 2016-09-30 2018-04-05 日東富士製粉株式会社 肉製品、肉製品の臭みの低減方法、及び肉製品の臭みの低減剤

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR20020075351A (ko) * 2002-09-05 2002-10-04 차연선 수분 필터
JP2018050568A (ja) * 2016-09-30 2018-04-05 日東富士製粉株式会社 肉製品、肉製品の臭みの低減方法、及び肉製品の臭みの低減剤

Similar Documents

Publication Publication Date Title
CA2161416C (en) Improved sorbent system
Po Water-absorbent polymers: a patent survey
US20100059448A1 (en) Magnetic particles for water purification and water treatment method employing the same
CA2718196C (en) Flocculant composition for dewatering solids laden slurries
Eom et al. Electrospinning fabrication of magnetic nanoparticles-embedded polycaprolactone (PCL) sorbent with enhanced sorption capacity and recovery speed for spilled oil removal
CN100333827C (zh) 回收油和清洁环境的组合物
Aboul-Gheit et al. Adsorption of spilled oil from seawater by waste plastic
JPH10258230A (ja) 脱硫型吸油剤、吸油剤及び油処理材並びに被処理油中の硫黄分の処理方法及び被処理油の処理方法
Po et al. Hydrolysis lignin as a sorbent and basis for solid composite biofuel
JPH10273650A (ja) 被処理油の処理方法及び固形燃料
CA1107267A (en) Absorbent composition for oil and the like
Mahmoud et al. Organogels as oil sorbers for oil spill treatment
US20210284558A1 (en) Composition and method for recovery and/or bioremediation of oil spills and/or hydrocarbons
JPH10147772A (ja) 複合吸油材
JP2550262B2 (ja) 吸油剤
RU73618U1 (ru) Сорбент для очистки воды
JPH0824640A (ja) 下水処理用添加剤および下水処理方法
Kizil et al. Organogels and hydrogels for oil/water separation
JP2000053951A (ja) 脱硫型吸油剤
Ali et al. Synthesis and characteristics of oleophilic gel polymer for oil spills cleanup
JPH06504300A (ja) 炭化水素類の転化方法
Bhardwaj et al. Sorption and Desorption Analyses of Sorbents for Oil-spill Control
CN1580174A (zh) 高效憎水吸油微珠
Maia et al. Ecofriendly biocomposites for the remediation of contaminated marine water by solvents and organic oils
JP2000154378A (ja) スカム含有廃水のゲル化剤、及び、これを用いたスカムの処理方法