JPH10244698A - サーマルヘッド - Google Patents

サーマルヘッド

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JPH10244698A
JPH10244698A JP5126697A JP5126697A JPH10244698A JP H10244698 A JPH10244698 A JP H10244698A JP 5126697 A JP5126697 A JP 5126697A JP 5126697 A JP5126697 A JP 5126697A JP H10244698 A JPH10244698 A JP H10244698A
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田 純 一 米
Makoto Kashiwatani
谷 誠 柏
Taihei Noshita
下 敦 平 埜
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Abstract

(57)【要約】 【課題】炭素を主成分とする保護膜を有するサーマルヘ
ッドであって、保護膜の腐食や摩耗が極めて少なく、し
かも熱や機械的衝撃に対しても保護膜の割れや剥離の発
生を防止して、十分な耐久性を有し、長期に渡って高い
信頼性を発揮し、これにより、長期に渡って高画質の感
熱記録を安定して行うことができるサーマルヘッドの提
供。 【解決手段】発熱体を保護する保護膜として、発熱体側
に形成され、セラミックを主成分とする少なくとも1層
からなる下層保護膜と、この下層保護膜上に形成され、
炭素を主成分とする上層保護膜とを有し、この上層保護
膜の膜厚が0.005〜0.1μmとすることにより、
上記課題を解決する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、各種のプリンタ、
プロッタ、ファックス、レコーダ等に記録手段として用
いられる感熱記録を行うためのサーマルヘッドの技術分
野に属する。
【0002】
【従来の技術】超音波診断画像の記録に、フィルム等を
支持体として感熱記録層を形成してなる感熱材料を用い
た感熱記録が利用されている。また、感熱記録は、湿式
の現像処理が不要であり、取り扱いが簡単である等の利
点を有することから、近年では、超音波診断のような小
型の画像記録のみならず、CT診断、MRI診断、X線
診断等の大型かつ高画質な画像が要求される用途におい
て、医療診断のための画像記録への利用も検討されてい
る。
【0003】周知のように、感熱記録は、感熱材料の感
熱記録層を加熱して画像を記録する、発熱体と電極とを
有する発熱素子が一方向(主走査方向)に配列されたグ
レーズが形成されたサーマルヘッドを用い、グレーズを
感熱材料(感熱記録層)に若干押圧した状態で、両者を
前記主走査方向と直交する副走査方向に相対的に移動し
つつ、MRI等の画像データ供給源から供給された記録
画像の画像データに応じて、グレーズの各画素の発熱体
にエネルギーを印加して発熱させることにより、感熱材
料の感熱記録層を加熱して画像記録を行う。
【0004】このサーマルヘッドのグレーズには、感熱
材料を加熱する発熱体、あるいはさらに電極等を保護す
るため、その表面に保護膜が形成されている。従って、
感熱記録時に感熱材料と接触するのは、この保護膜で、
発熱体は、この保護膜を介して感熱材料を加熱し、これ
により感熱記録が行われる。保護膜の材料には、通常、
耐摩耗性を有するセラミック等が用いられているが、保
護膜の表面は、感熱記録時には加熱された状態で感熱材
料と慴接するため、記録を重ねるにしたがって摩耗し、
劣化する。
【0005】この摩耗が進行すると、感熱画像に濃度ム
ラが生じたり、保護膜としての強度が保てなくなるた
め、発熱体等を保護する機能が損なわれ、最終的には、
画像記録ができなくなる状態に陥る(ヘッド切れ)。特
に、前述の医療用途のように、高品質で、かつ高画質な
多階調画像が要求される用途においては、高品質化およ
び高画質化を計るために、ポリエステルフィルム等の高
剛性の支持体を使用する感熱フィルムを用い、さらに、
記録温度(印加エネルギー)や、感熱材料へのサーマル
ヘッドの押圧力を高く設定する方向にある。そのため、
通常の感熱記録に比して、サーマルヘッドの保護膜にか
かる力や熱が大きく、摩耗や腐食(腐食による摩耗)が
進行し易くなっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】このようなサーマルヘ
ッドの保護膜の摩耗を防止し、耐久性を向上する方法と
して、保護膜の性能を向上する技術が数多く検討されて
おり、中でも特に、耐摩耗性や耐蝕性に優れた保護膜と
して、炭素を主成分とする保護膜(以下、カーボン保護
膜とする)が知られている。
【0007】例えば、特公昭61−53955号および
特公平4−62866(前記出願の分割出願)の各公報
には、サーマルヘッドの保護膜として、ビッカーズ硬度
が4500kg/mm2以上のカーボン保護膜を形成すること
により、優れた耐摩耗性と共に、保護膜を十分に薄くし
て優れた応答性も実現したサーマルヘッド、およびその
製造方法が開示されている。このようなカーボン保護膜
は、ダイアモンドに極めて近い特性を有するもので、非
常に硬度が高く、また、化学的にも安定である。そのた
め、感熱材料との摺接に対する耐摩耗性や耐蝕性という
点では優れた特性を発揮する。しかしながら、カーボン
保護膜は、優れた耐摩耗性を有するものの、硬いが故に
脆い、すなわち靭性が低く、発熱素子の加熱によるヒー
トショックや熱的なストレスによって、比較的容易に割
れや剥離が生じてしまうという問題点がある。
【0008】このような問題点に対し、特開平7−13
2628号公報には、下層のシリコン系化合物層と、そ
の上層のダイアモンドライクカーボン層との2層構造の
保護膜を有することにより、ヒートショック等による保
護膜の摩耗および破壊を大幅に低減し、高画質記録が長
期に渡って可能なサーマルヘッドが開示されている。し
かしながら、ダイアモンドライクカーボン層とシリコン
系化合物層との熱膨張係数の違いによるストレスや、記
録中に感熱材料とサーマルヘッド(グレーズ)との間に
混入する異物による機械的衝撃等によって、やはり割れ
や剥離が生じてしまうという問題点がある。このように
保護膜に割れや剥離が生じると、ここから摩耗や腐食、
さらには腐食による摩耗が進行して、サーマルヘッドの
耐久性が低下してしまい、やはり、長期に渡って高い信
頼性を発揮することはできない。
【0009】本発明の目的は、前記従来技術の問題点を
解決することにあり、炭素を主成分とする保護膜を有す
るサーマルヘッドであって、保護膜の腐食や摩耗が極め
て少なく、しかも熱や機械的衝撃に対しても保護膜の割
れや剥離の発生を防止して、十分な耐久性を有し、長期
に渡って高い信頼性を発揮し、これにより、長期に渡っ
て高画質の感熱記録を安定して行うことができるサーマ
ルヘッドを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に、本発明は、発熱体を保護する保護膜として、前記発
熱体側に形成され、セラミックを主成分とする少なくと
も1層からなる下層保護膜と、この下層保護膜上に形成
され、炭素を主成分とする上層保護膜とを有し、この上
層保護膜の膜厚が0.005〜0.1μmであることを
特徴とするサーマルヘッドを提供する。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明のサーマルヘッドに
ついて、添付の図面に示される好適実施例を基に詳細に
説明する。
【0012】図1に、本発明のサーマルヘッドを利用す
る感熱記録装置の一例の概略図が示される。図1に示さ
れる感熱記録装置10(以下、記録装置10とする)
は、例えばB4サイズ等の所定のサイズのカットシート
である感熱材料(以下、感熱材料Aとする)に感熱記録
を行うものであり、感熱材料Aが収容されたマガジン2
4が装填される装填部14、供給搬送部16、サーマル
ヘッド66によって感熱材料Aに感熱記録を行う記録部
20、および排出部22を有して構成される。
【0013】このような記録装置10においては、マガ
ジン24から感熱材料Aを1枚引き出し、記録部20ま
で感熱材料Aを搬送して、サーマルヘッド66を感熱材
料Aに押圧しつつ、グレーズの延在方向すなわち主走査
方向(図1および図2において紙面と垂直方向)と直交
する副走査方向に感熱材料Aを搬送して、記録画像(画
像データ)に応じて各発熱素子を発熱することにより、
感熱材料Aに感熱記録を行う。
【0014】感熱材料Aは、透明なポリエチレンテレフ
タレート(PET)フィルムなどの樹脂フィルムや紙等
を支持体として、その一面に感熱記録層を形成してなる
ものである。このような感熱材料Aは、100枚等の所
定単位の積層体(束)とされて袋体や帯等で包装されて
おり、図示例においては、所定単位の束のまま感熱記録
層を下面として記録装置10のマガジン24に収納さ
れ、一枚づつマガジン24から取り出されて感熱記録に
供される。
【0015】マガジン24は、開閉自在な蓋体26を有
する筐体であり、感熱材料Aを収納して記録装置10の
装填部14に装填される。装填部14は、記録装置10
のハウジング28に形成された挿入口30、案内板32
および案内ロール34,34、停止部材36を有してい
る。マガジン24は、蓋体26側を先にして挿入口30
から記録装置10内に挿入され、案内板32および案内
ロール34に案内されつつ、停止部材36に当接する位
置まで押し込まれることにより、記録装置10の所定の
位置に装填される。また、装填部14には、マガジンの
蓋体26を開閉するための、図示しない開閉機構が設け
られている。
【0016】供給搬送手段16は、装填部14に装填さ
れたマガジン24から感熱材料Aを1枚取り出して、記
録部20に搬送するものであり、吸引によって感熱材料
Aを吸着する吸盤40を用いる枚葉機構、搬送手段4
2、搬送ガイド44、および搬送ガイド44の出口に位
置する規制ローラ対52を有する。搬送手段42は、搬
送ローラ46と、この搬送ローラ46と同軸のプーリ4
7a、回転駆動源に接続されるプーリ47bならびにテ
ンションプーリ47cと、この3つのプーリに張架され
るエンドレスベルト48と、搬送ローラ46とローラ対
を成すニップローラ50とを有して構成され、吸盤40
によって枚葉された感熱材料Aの先端を搬送ローラ46
とニップローラ50とによって挟持して、感熱材料Aを
搬送する。
【0017】記録装置10において記録開始の指示が出
されると、前記開閉機構によって蓋体26が開放され、
吸盤40を用いた枚葉機構がマガジン24から感熱材料
Aを一枚取り出し、感熱材料Aの先端を搬送手段42
(搬送ローラ46とニップローラ50とから成るローラ
対)に供給する。搬送ローラ46とニップローラ50と
によって感熱材料Aが挟持された時点で、吸盤40によ
る吸引は開放され、供給された感熱材料Aは、搬送ガイ
ド44によって案内されつつ搬送手段42によって規制
ローラ対52に搬送される。なお、記録に供される感熱
材料Aがマガジン24から完全に排出された時点で、前
記開閉手段によって蓋体26が閉塞される。
【0018】搬送ガイド44による搬送手段42から規
制ローラ対52までの距離は、感熱材料Aの搬送方向の
長さより若干短く設定されている。搬送手段42による
搬送で感熱材料Aの先端が規制ローラ対52に至るが、
規制ローラ対52は最初は停止しており、感熱材料Aの
先端はここで一旦停止して位置決めされる。この感熱材
料Aの先端が規制ローラ対52に至った時点で、サーマ
ルヘッド66(グレーズ)の温度が確認され、サーマル
ヘッド66の温度が所定温度であれば、規制ローラ対5
2による感熱材料Aの搬送が開始され、感熱材料Aは、
記録部20に搬送される。
【0019】記録部20は、サーマルヘッド66、プラ
テンローラ60、クリーニングローラ対56、ガイド5
8、サーマルヘッド66を冷却するヒートシンク67、
冷却ファン76およびガイド62を有する。サーマルヘ
ッド66は、例えば、最大B4サイズまでの画像記録が
可能な、約300dpiの記録(画素)密度の感熱記録
を行うもので、保護膜に特徴を有する以外は、感熱材料
Aへの感熱記録を行う発熱素子が一方向(主走査方向)
に配列されるグレーズが形成された公知の構成を有する
ものである。このサーマルヘッド66には、冷却のため
のヒートシンク67が固定される。また、サーマルヘッ
ド66は、支点68aを中心に上下方向に回動自在な支
持部材68に支持されている。このサーマルヘッド66
のグレーズについては、後に詳述する。なお、本発明の
サーマルヘッド66の幅(主走査方向)、解像度(記録
密度)、記録階調等には特に限定は無いが、幅は5cm〜
50cm、解像度は6dot/mm(約150dpi)以上、記
録階調は256階調以上であるのが好ましい。
【0020】プラテンローラ60は、感熱材料Aを所定
位置に保持しつつ所定の画像記録速度で図中の矢印方向
に回転し、主走査方向と直交する副走査方向(図2中の
矢印x方向)に感熱材料Aを搬送する。クリーニングロ
ーラ対56は、弾性体である粘着ゴムローラ(図中上
側)と、通常のローラとからなるローラ対であり、粘着
ゴムローラが感熱材料Aの感熱記録層に付着したゴミ等
を除去して、グレーズへのゴミの付着や、ゴミが画像記
録に悪影響を与えることを防止する。
【0021】図示例の記録装置10において、感熱材料
Aが搬送される前は、支持部材68は上方に回動して、
サーマルヘッド66のグレーズとプラテンローラ60と
が接触する直前の待機位置となっている。前述の規制ロ
ーラ対52による搬送が開始されると、感熱材料Aは、
次いでクリーニングローラ対56に挟持され、さらに、
ガイド58によって案内されつつ搬送される。感熱材料
Aの先端が記録開始位置(グレーズに対応する位置)に
搬送されると、支持部材68が下方に回動して、グレー
ズとプラテンローラ60とで感熱材料Aが挟持されて、
記録層にグレーズが押圧された状態となり、感熱材料A
はプラテンローラ60によって所定位置に保持されつ
つ、プラテンローラ60等によって副走査搬送される。
この搬送に伴い、グレーズの各発熱素子を記録画像に応
じて加熱することにより、感熱材料Aに感熱記録が行わ
れる。
【0022】感熱記録が終了した感熱材料Aは、ガイド
62に案内されつつ、プラテンローラ60および搬送ロ
ーラ対63に搬送されて排出部22のトレイ72に排出
される。トレイ72は、ハウジング28に形成された排
出口74を経て記録装置10の外部に突出しており、画
像が記録された感熱材料Aは、この排出口74を経て外
部に排出され、取り出される。
【0023】図2に、サーマルヘッド66のグレーズ
(発熱素子)の概略断面図を示す。図示例において、グ
レーズは、基板80の上(図示例のサーマルヘッド66
は、上から感熱材料Aに押圧されるので、図2中では下
となる)に形成されるグレーズ層(畜熱層)82、その
上に形成される発熱(抵抗)体84、その上に形成され
る電極86、およびその上に形成される、発熱体84あ
るいはさらに電極86等を保護するための保護膜等を有
して構成される。図示例においては、好ましい態様とし
て保護膜が2層構成を有するもので、発熱体84および
電極86を覆って形成されるセラミックを主成分とする
下層保護膜88と、下層保護膜88の上に上層保護膜と
して形成される、本発明の特徴的な部分である、炭素を
主成分とする保護膜すなわちカーボン保護膜90とから
保護膜が構成される。
【0024】本発明に用いられるサーマルヘッド66
は、このカーボン保護膜90以外は、基本的に公知のサ
ーマルヘッド66と同様の構成とすることができる。従
って、それ以外の層構成や各層の材料には特に限定はな
く、公知のものが各種利用可能である。具体的には、基
板80としては耐熱ガラスやアルミナ、シリカ、マグネ
シアなどのセラミックス等の電気絶縁性材料が、グレー
ズ層82としては耐熱ガラスやポリイミド樹脂等の耐熱
性樹脂等が、発熱体84としてはニクロム(Ni-Cr)、タ
ンタル、窒化タンタル等の発熱抵抗体が、電極86とし
てはアルミニウム、銅等の導電性材料が、各種利用可能
である。なお、グレーズ(発熱素子)には、真空蒸着、
CVD(Chemical Vapor Deposition) 、スパッタリング
等のいわゆる薄膜形成技術およびフォトエッチング法を
用いて形成される薄膜型発熱素子と、スクリーン印刷な
どの印刷ならびに焼成によるいわゆる厚膜形成技術およ
びエッチングを用いて形成される厚膜型発熱素子とが知
られているが、本発明に用いられるサーマルヘッド66
は、いずれの方法で形成されたものであってもよい。ま
た、一度0.1μm以上にカーボン膜を成膜した後、こ
のカーボン膜を剥離したり、ラッピングして0.1μm
以下のカーボン保護膜90に加工してもよい。
【0025】上述のように、図示例のサーマルヘッド6
6は、好ましい態様として、カーボン保護膜90と下層
保護膜88の2層構成の保護膜を有する。このような下
層保護膜を有することにより、耐摩耗性、耐蝕性、耐腐
食摩耗性等の点でより好ましい結果を得ることができ、
より耐久性が高く、長寿命のサーマルヘッドが実現でき
る。本発明のサーマルヘッド66に形成される下層保護
膜88としては、サーマルヘッドの保護膜と成り得る耐
熱性、耐蝕性および耐摩耗性を有する材料であるセラミ
ックスを主成分とするものであれば特に限定されず、各
種のセラミックス材料が使用可能である。
【0026】具体的には、窒化珪素、炭化珪素、酸化タ
ンタル、酸化アルミニウム、サイアロン、酸化珪素、窒
化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化セレン、およびこれ
らの混合物等が例示され、中でも特に、耐熱性が優れて
いること、力学強度、靱性が優れていること等の点で、
窒化珪素、炭化珪素等は好適に利用される。また、下層
保護膜には、物性調整のため、金属等の微量の添加物が
含まれてもよい。下層保護膜88の形成方法には特に限
定はなく、前述の厚膜形成技術や薄膜形成技術等を用い
て、公知のセラミックス膜(層)の形成方法で形成され
る。
【0027】下層保護膜88の厚さには特に限定はない
が、好ましくは2μm〜20μm程度、より好ましくは
4μm〜15μm程度である。下層保護膜88の厚さを
上記範囲とすることにより、耐摩耗性と熱伝導性(すな
わち記録感度)とのバランスを好適に取ることができる
等の点で好ましい結果を得る。また、下層保護膜88は
多層構成でもよい。下層保護膜88を多層構成とする際
には、異なる材料を用いて多層構成としてもよく、ある
いは、同じ材料で密度等の異なる層を有する多層構成で
あってもよく、あるいは、その両者を有するものであっ
てもよい。
【0028】本発明に用いられるサーマルヘッド66
は、このような下層保護膜88の上に、上層保護膜とし
て、炭素を主成分とするカーボン保護膜90を有する。
これにより、カーボン保護膜90の有する優れた耐摩耗
性や耐蝕性が得られ、前述のヒートショックや熱ストレ
ス、カーボン保護膜90の割れや剥離をある程度抑制す
ることが可能である。しかしながら、前述したように、
カーボン保護膜90の膜厚を一般に行われるような厚さ
(例えば、前述の特開平7−132628号公報では
0.5〜2.0μm)にした場合には、下層(図示例で
は下層保護膜88)との熱膨張係数の違いによるストレ
スが生じやすく、このストレスや、不純物による機械的
衝撃等に起因して、やはり割れや剥離が生じてしまう。
【0029】これに対し、本発明のサーマルヘッド66
においては、カーボン保護膜90の厚さは、0.005
〜0.1μm、好ましくは0.005〜0.05μm、
最も好ましくは0.005〜0.01μmとする。0.
1μm超では、カーボン保護膜90に加わる応力が緩和
されにくく、熱膨張係数の違いによるストレスや、不純
物による機械的衝撃等に起因して、カーボン保護膜90
のひび割れ、下層保護膜88からの剥離等が生じてしま
うので好ましくない。一方、0.005μmを下限とし
たのは、膜として形成されるための最小の厚さと考えら
れるためであり、膜として形成される限り特に限定され
るものではない。このようにカーボン保護膜90の厚さ
を非常に薄くすることにより、カーボン保護膜90のひ
び割れ、剥離等を有効に防止することができる。しか
も、カーボン保護膜90は化学的に非常に安定であるた
め、非常に薄い膜であるにも関わらず、セラミックス膜
である下層保護膜の化学腐食を有効に防止し、サーマル
ヘッドの寿命を長くすることができる。従って、本発明
のサーマルヘッド66は十分な耐久性を有し、長期に渡
って高い信頼性を発揮し、これにより、長期に渡って高
画質の感熱記録を安定して行うことができる。
【0030】このようなカーボン保護膜90の硬度には
特に限定はなく、サーマルヘッドの保護膜として十分な
硬度を有すればよい。例えば、ビッカーズ硬度で300
0〜5000kg/mm2が好適に例示される。また、この硬
度は、カーボン保護膜90の厚さ方向に対して、一定と
しても、あるいは変化させてもよく、硬度をカーボン保
護膜90の厚さ方向に変化させる場合には、この硬度の
変化は連続的であっても段階的であってもよい。
【0031】このようなカーボン保護膜90の形成方法
には特に限定はなく、公知の厚膜形成技術や薄膜形成技
術で形成されるが、好ましくは、炭化水素ガスを反応ガ
スとして用いるプラズマCVDによって硬質カーボン膜
を形成する方法、および焼結カーボン材やグラッシーカ
ーボン材等のカーボン材をターゲット材とするスパッタ
リングによって硬質カーボン膜を形成する方法が例示さ
れる。
【0032】図3に、カーボン保護膜90としてスパッ
タカーボン膜を形成するスパッタリング装置の概念図を
示す。スパッタリング装置100は、基本的に、真空チ
ャンバ102と、ガス導入部104と、スパッタリング
手段106と、基板ホルダ108とを有して構成され
る。
【0033】真空チャンバ102は、後述するカソード
112の磁場が影響を受けないようにSUS304等の
非磁性材料で形成されるのが好ましい。また、本発明の
カーボン保護膜90を形成に用いられる真空チャンバ1
02は、初期排気の到達圧力で2×10-5Torr以下、好
ましくは5×10-6Torr以下、成膜中は1×10-4Torr
〜1×10-2Torrを達成する真空シール性を有するのが
好ましい。真空チャンバ102に取り付けられる真空排
気手段110としては、ロータリーポンプ、メカニカル
ブースタポンプ、ターボポンプを組み合わせた排気手段
が好適に例示され、また、ターボポンプの代わりにディ
フュージョンポンプやクライオポンプを用いた排気手段
も好適に例示される。真空排気手段110の排気能力や
数は、真空チャンバ102の容積や成膜時のガス流量等
に応じて適宜選択すればよい。また、排気速度を高める
ために、バイパス配管を用いた配管の排気抵抗の調整
や、オリフィスバルブを設けてその開口度調整等の方法
で、排気速度を調整可能なように構成してもよい。
【0034】ガス導入部104は、プラズマを発生する
ためのガスを導入する部位で、導入部がOリング等で真
空シールされたステンレス製のパイプ等を用いて、真空
チャンバ102内にガスを導入する。また、ガスの導入
量は、マスフローコントローラ等の公知の方法で制御さ
れる。ガス導入部104は、ガスを基本的に真空チャン
バ102内のプラズマ発生領域の近傍に拭き出すように
構成される。また、吹き出し位置は、発生するプラズマ
の分布に影響を与えないように最適化するのが好まし
い。スパッタカーボン膜を生成するためのプラズマ発生
用のガスとしては、例えば、ヘリウム、ネオン、アルゴ
ン、クリプトン、キセノン等の不活性ガスが用いられる
が、中でも特に、価格および入手の容易性の点で、アル
ゴンガスが好適に用いられる。
【0035】スパッタリングでは、カソード112にス
パッタリングするターゲット材114を配置し、カソー
ド112を負電位にすると共に、ターゲット材114の
表面にプラズマを発生させることにより、ターゲット材
114(その原子)を弾き出して、対向した配置した基
板(すなわち、サーマルヘッド66のグレーズ)の表面
に付着させ、堆積することにより成膜する。スパッタリ
ング手段106は、このカソード112、ターゲット材
114の配置部、シャッタ116等を有するものであ
る。
【0036】ターゲット材114の表面にプラズマを発
生する際には、直流電源118のマイナス側を直接カソ
ード112に接続し、300V〜1000Vの直流電圧
を印加する。直流電源118の出力としては、1kW〜
10kW程度の範囲であり、スパッタカーボン膜の生成
に必要にして十分な出力を有するものを適宜選択すれば
よい。なお、カソード112の形状は、スパッタカーボ
ン膜が形成される基板の形状等に応じて適宜決定すれば
よい。また、アーク防止等の点で、2kHz〜20kH
zにパルス変調した直流電源も好適に利用可能である。
また、プラズマの発生には、高周波電源も利用可能であ
る。高周波電源を用いる場合には、マッチングボックス
を介してカソード112に高周波電圧を印加することに
より、プラズマを発生させる。その際には、マッチング
ボックスによってインピーダンス整合を行い、高周波電
圧の反射波が入射波に対して25%以下となるように調
整する。高周波電源としては、工業用の13.56MH
zで、1kW〜10kW程度の範囲で、スパッタカーボ
ン膜の生成に必要にして十分な出力を有するものを適宜
選択すればよい。
【0037】ターゲット材114は、In系ハンダや機
械的な固定手段を用いて直接カソード112に固定して
もよいが、通常は、無酸素鋼やステンレス等からなるバ
ッキングプレート120をカソード112に固定し、そ
の上にターゲット材114を前述のようにして張り付け
る。また、カソード112およびバッキングプレート1
20は水冷可能に構成され、これにより、間接的にター
ゲット材114も水冷される。なお、スパッタカーボン
膜を形成するために用いられるターゲット材114とし
ては、焼結カーボン材、グラッシーカーボン材等が好適
に例示される。また、その形状は、基板の形状に応じて
適宜決定すればよい。
【0038】スパッタカーボン膜の形成は、カソード1
12の内部に永久磁石や電磁石等の磁石112aを配置
し、ターゲット材114表面に磁場を形成してプラズマ
を閉じ込めてスパッタリングを行うマグネトロンスパッ
タリングも好適に利用可能である。このマグネトロンス
パッタリングは、成膜速度が早い点で好ましい。永久磁
石や電磁石の形状や位置、数、生成する磁場の強さ等は
形成するスパッタカーボン膜の厚さや膜厚分布、ターゲ
ット材114の形状等に応じて適宜決定される。また永
久磁石として、Sm-Co 磁石やNd-Fe-B 磁石等の高磁場が
発生可能な磁石を用いることにより、プラズマを十分閉
じ込めることができる等の点で好ましい。
【0039】基板ホルダ108は、サーマルヘッド66
を固定して、基板となるグレーズをカソード112に対
して対向して固定するものである。また、必要に応じ
て、カソード112に対して、グレーズを回転や移動可
能に構成してもよく、基板のサイズ等に応じて適宜選択
すればよい。基板とターゲット材114との距離には特
に限定はなく、20mm〜200mm程度の範囲で、膜厚分
布が均一になる距離を選択設定すればよい。
【0040】本発明に用いるサーマルヘッド66を作製
する際には、スパッタカーボン膜と下層保護膜88との
密着性を向上するために、スパッタカーボン膜の形成に
先立ち、下層保護膜88の表面をプラズマでエッチング
するのが好ましい。そのために、図示例のスパッタリン
グ装置100においては、基板ホルダ108に、高周波
電圧を印加するためのバイアス電源122が接続されて
いる。バイアス電源122は、マッチングボックスを介
して基板に高周波電圧を印加するもので、工業用の1
3.56MHzで、1kW〜5kW程度のものから適宜
選択すればよい。また、エッチングの強さは、基板に印
加されるバイアス電圧を目安にすればよく、通常、負の
100V〜500Vの範囲で、適宜最適化を図ればよ
い。
【0041】図4に、カーボン保護膜90としてDLC
膜を形成する(プラズマ)CVD装置の概念図を示す。
CVD装置130は、基本的に、真空チャンバ132
と、ガス導入部134と、プラズマ発生手段136と、
基板ホルダ138と、基板バイアス電源140とを有し
て構成される。
【0042】真空チャンバ132は、プラズマ発生用の
磁場が影響を受けないようにSUS304等の非磁性材
料で形成されるのが好ましい。また、カーボン保護膜9
0を形成に用いられる真空チャンバ132は、初期排気
の到達圧力で2×10-5Torr以下、好ましくは5×10
-6Torr以下、成膜中は1×10-4Torr〜1×10-2Torr
を達成する真空シール性を有するのが好ましい。真空チ
ャンバ132に取り付けられる真空排気手段133とし
ては、ロータリーポンプ、メカニカルブースタポンプ、
ターボポンプを組み合わせた排気手段が好適に例示さ
れ、また、ターボポンプの代わりにディフュージョンポ
ンプやクライオポンプを用いた排気手段も好適に例示さ
れる。真空排気手段133の排気能力や数は、真空チャ
ンバ132の容積や成膜時のガス流量等に応じて適宜選
択すればよい。また、排気速度を高めるために、バイパ
ス配管を用いた配管の排気抵抗の調整や、オリフィスバ
ルブを設けてその開口度調整等の方法で、排気速度を調
整可能なように構成してもよい。
【0043】真空チャンバ132において、プラズマや
プラズマ発生用の電磁波によってアークが発生する箇所
は、絶縁性部材で覆ってもよい。絶縁性部材としては、
MCナイロン、テフロン(PTFE)、PPS(ポリフ
ェニレンスルフィド)、PEN(ポリエチレンナフタレ
ート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)等が利
用可能である。なお、PENやPET等を用いる場合に
は、絶縁性部材からの脱ガスで真空度を低下する場合が
あるので、このような材料を用いる場合には、注意が必
要である。
【0044】ガス導入部134aは、プラズマを発生す
るためのガスを導入する部位、他方、ガス導入部134
bは、反応ガスを導入する部位で、共に、導入部がOリ
ング等で真空シールされたステンレス製のパイプ等を用
いて、真空チャンバ132内にガスを導入する。また、
ガスの導入量は、マスフローコントローラ等の公知の方
法で制御される。両ガス導入部134は、ガスを基本的
に真空チャンバ132内のプラズマ発生領域の近傍に拭
き出すように構成される。また、吹き出し位置、特に反
応ガスのガス導入部134bの吹き出し位置は、膜厚分
布にも影響するので、基板(サーマルヘッド66のグレ
ーズ)の形状等に合わせて最適化するのが好ましい。D
LC膜を生成するためのプラズマ発生用のガスとして
は、例えば、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプト
ン、キセノン等の不活性ガスが用いられるが、中でも特
に、価格および入手の容易性の点で、アルゴンガスが好
適に用いられる。他方、DLC膜を生成するための反応
ガスとしては、メタン、エタン、プロパン、エチレン、
アセチレン、ベンゼン等の炭化水素化合物のガスが例示
される。なお、ガス導入部134aおよびガス導入部1
34bは、共に、用いるガスに応じてマスフローコント
ローラのセンサを調整する必要がある。
【0045】DLC膜(カーボン保護膜90)を形成す
るプラズマCVDにおいて、プラズマ発生手段として
は、直流放電、高周波放電、直流アーク放電、マイクロ
ECR波放電等が利用可能であり、特に、直流アーク放
電およびマイクロECR波放電はプラズマ密度が高く、
高速成膜に有利である。図示例のCVD装置130は、
マイクロECR波放電を利用するものであり、プラズマ
発生手段136は、マイクロ波電源142、磁石14
3、マイクロ波導波管144、同軸変換器146、誘電
体板148、放射状アンテナ150等を有して構成され
る。
【0046】直流放電は、基板−電極間に負の直流電圧
を印加することによりプラズマを発生させる。直流放電
に用いる直流電源は、1〜10kW程度のもので、DL
C膜の生成に必要にして十分な出力を有するものを適宜
選択すればよい。また、アーク防止等の点で、2kHz
〜20kHzにパルス変調した直流電源も好適に利用可
能である。高周波放電は、マッチングボックスを介して
電極に高周波電圧を印加することにより、プラズマを発
生させる。その際には、マッチングボックスによってイ
ンピーダンス整合を行い、高周波電圧の反射波が入射波
に対して25%以下となるように調整する。高周波放電
を行う高周波電源としては、工業用の13.56MHz
で、1kW〜10kW程度の範囲で、DLC膜の生成に
必要にして十分な出力を有するものを適宜選択すればよ
い。また、パルス変調した高周波電源も使用可能であ
る。
【0047】直流アーク放電は、熱陰極を使用してプラ
ズマを発生させる。熱陰極としては、タングステン、ホ
ウ化ランタン(LaB6)等が利用可能である。また、ホロ
ーカソードを用いた直流アーク放電も利用可能である。
直流アーク放電に用いる直流電源としては、1kW〜1
0kW程度、10〜150A程度の範囲で、DLC膜の
生成に必要にして十分な出力を有するものを適宜選択す
ればよい。
【0048】マイクロ波ECR放電は、マイクロ波とE
CR磁場とによってプラズマを発生させるものであり、
前述のように、図示例のCVD装置は、このマイクロ波
放電によってプラズマを発生させる。マイクロ波電源1
42としては、工業用の2.45GHzで、1kW〜3
kW程度の範囲で、DLC膜の生成に必要にして十分な
出力を有するものを適宜選択すればよい。また、ECR
磁場発生には、所望の磁場を形成できる永久磁石や電磁
石を適宜用いればよく、図示例においては、Sm-Co 磁石
を磁石143として用いている。例えば、2.45GH
zのマイクロ波を用いる場合には、ECR磁場は875
G(Gauss) になるので、プラズマ発生領域の磁場が50
0G〜2000Gとなる磁石を用いればよい。真空チャ
ンバ132内へのマイクロ波の導入は、マイクロ波導波
管144、同軸変換器146、誘電体板148等を用い
て行われる。なお、磁場の形成状態やマイクロ波の導入
路は、DLC膜の膜厚分布に影響を与えるので、DLC
膜の膜厚が均一になるように最適化するのが好ましい。
【0049】基板ホルダ138は、サーマルヘッド66
を固定して、基板となるグレーズを放射状アンテナ15
0に対して対向して固定するものである。また、必要に
応じて、プラズマ発生手段136に対して、グレーズを
回転や移動可能に構成してもよく、基板のサイズ等に応
じて適宜選択すればよい。基板と放射状アンテナ150
との距離には特に限定はなく、20mm〜200mm程度の
範囲で、膜厚分布が均一になる距離を選択設定すればよ
い。
【0050】プラズマCVDで硬質膜を得るためには、
基板に負のバイアス電圧を印加しながら成膜を行う必要
がある。基板バイアス電源140は、このバイアス電圧
を印加するためのものである。バイアス電源には高周波
電圧の自己バイアス電圧を使用するのが好ましい。自己
バイアス電圧は、負の100V〜500Vである。高周
波電源は工業用の13.56MHzで、1kW〜5kW
程度のものから適宜選択すればよい。また、2kHz〜
20kHzにパルス変調した直流電源も利用可能であ
る。
【0051】カーボン保護膜90としてDLC膜を用い
る際においても、DLC膜と下層保護膜88との密着性
を向上するために、DLC膜の成膜に先立ち、下層保護
膜88の表面をプラズマでエッチングするのが好まし
い。エッチングの方法は、スパッタリング装置100と
同様であり、マッチングボックスを介して基板に高周波
電圧を印加する。高周波電源としては、工業用の13.
56MHzで、1kW〜5kW程度のものから適宜選択
すればよい。また、エッチングの強さは、基板に印加さ
れるバイアス電圧を目安にすればよく、通常、負の10
0V〜500Vの範囲で、適宜最適化を計ればよい。
【0052】以上、本発明の感熱記録システムに付いて
詳細に説明したが、本発明は上述の例に限定されず、各
種の改良や変更を行ってもよいのはもちろんである。
【0053】
【実施例】以下、本発明の具体的実施例を挙げ、本発明
をより詳細に説明する。
【0054】[実施例1]図3に示されるスパッタリン
グ装置100を用意した。詳細は以下のとおりである。
【0055】a.真空チャンバ102 真空排気手段110として、排気速度が1500L(リ
ットル)/分のロータリーポンプ、同12000L/分
のメカニカルブースタポンプ、および同3000L/秒
のターボポンプを、それぞれ1台ずつ有する、SUS3
04製で容積が0.5m3の真空チャンバ102。なお、
ターボポンプの吸引部にオリフィスバルブを配置して、
開口度を10〜100%まで調整できるように構成して
ある。
【0056】b.ガス導入部104 最大流量100〜500[sccm]のマスフローコントロー
ラと、直径6ミリのステンレス製パイプを用いて構成し
た。ステンレス製パイプと真空チャンバ102との接合
部は、Oリングによって真空シールした。なお、以下に
示すスパッタカーボン膜の生成時には、プラズマ発生用
ガスとしてアルゴンガスを用いた。
【0057】c.スパッタリング手段106 永久磁石112aとしてSm-Co 磁石を内部に配置した、
幅600mm×高さ200mmの矩形のカソード112を用
いた。バッキングプレート120としては、矩形状に加
工した焼結カーボン材を用い、カソード112にIn系
ハンダを用いて張り付けた。また、カソード112内部
を水冷することにより、磁石、カソード112およびバ
ッキングプレート120裏面を冷却した。また、電源1
18として、最大出力8kWの負電位の直流電源を用い
た。なお、この直流電源は、2kHz〜10kHzの範
囲でパルス状に変調できるように構成してある。
【0058】d.基板ホルダ108 基板(すなわち、サーマルヘッド66のグレーズ)とタ
ーゲット材114との距離が50mm〜150mmの間で調
整可能な構成を有する。なお、以下に示すスパッタカー
ボン膜の生成時には、基板とターゲット材114との距
離は100mmとした。また、エッチング用の高周波電圧
が印加できるように、基板によるサーマルヘッドの保持
部分を浮遊電位にした。
【0059】e.バイアス電源122 基板ホルダ108に、マッチングボックスを介して高周
波電源を接続した。高周波電源は、周波数13.56M
Hzで、最大出力は3kWである。また、この高周波電
源は、自己バイアス電圧をモニタすることにより、負の
100V〜500Vの範囲で高周波出力が調整可能に構
成されている。
【0060】<サーマルヘッドの作製>このようなスパ
ッタリング装置100を用いて、以下に示すようにして
サーマルヘッド(京セラ社製 KGT-260-12MPH8)のグレ
ーズの表面に、上層保護膜としてスパッタカーボン膜を
形成し、サーマルヘッドを作製した。なお、この基とな
るサーマルヘッドには、グレーズの表面に保護膜として
厚さ11μmの窒化珪素膜(Si3N4)が形成されている。
従って、本実施例では、この窒化珪素膜が下層保護膜で
あり、上層保護膜となるスパッタカーボン膜は、この窒
化珪素膜の上層に成膜される。
【0061】グレーズがターゲット材114に対向する
ように、真空チャンバ102内の基板ホルダ108にサ
ーマルヘッド66を固定した。なお、サーマルヘッドの
上層保護膜の形成部分以外(すなわち、グレーズ以外)
には、あらかじめマスキングを施しておいた。サーマル
ヘッドを固定後、真空チャンバ102内の圧力が5×1
-6Torrになるまで真空排気した。真空排気を継続しな
がら、ガス導入部104によってアルゴンガスを導入
し、ターボポンプに設置したオリフィスバルブによっ
て、真空チャンバ102内の圧力が5.0×10-3Torr
になるように調整した。次いで、基板に高周波電圧を印
加し、自己バイアス電圧−300Vで10分間、下層保
護膜(窒化珪素膜)のエッチングを行った。
【0062】エッチング終了後、ターゲット材114と
して焼結グラファイト材をバッキングプレート120に
固定(In系ハンダで張り付け)して、真空チャンバ1
02内の圧力が5.0×10-3Torrとなるようにアルゴ
ンガス流量およびオリフィスバルブを調整し、シャッタ
116を閉じた状態でターゲット材114に直流電力
0.5kWを5分間印加した。次いで、真空チャンバ1
02内の圧力を保ったまま、直流電力を5kWとしてシ
ャッタ116を開き、形成されるスパッタカーボン膜が
0.1μmとなるまでスパッタリングを行い、上層保護
膜として厚さ0.1μmのスパッタカーボン膜を形成し
たサーマルヘッドを作製した。さらに、全く同様にし
て、上層保護膜として、厚さ0.05μmおよび0.0
1μmのスパッタカーボン膜を形成したサーマルヘッド
も作製した。なお、スパッタカーボン膜の膜厚は、あら
かじめ成膜速度を求めておき、所定の膜厚となる成膜時
間を算出して、成膜時間で制御した。具体的には、膜厚
0.1μmの場合には2分間、膜厚0.05μmの場合
には1分間、膜厚0.01μmの場合には12秒間の成
膜時間で行った。
【0063】<性能評価>このような3種類の本発明の
サーマルヘッドと、感熱材料(富士フィルム社製ドライ
画像記録用フィルム)とを用いて、図1の感熱記録装置
により、5000枚の感熱記録テストを行った。その結
果、カーボン保護膜90の膜厚が0.1μm、0.05
μmおよび0.01μmのいずれのサーマルヘッドも、
カーボン保護膜90の割れや剥離が生じることはなく、
また、摩耗もほとんど認められなかった。
【0064】[実施例2]図4に示される(プラズマ)
CVD装置130を用意した。詳細は以下のとおりであ
る。
【0065】a.真空チャンバ132 前記実施例1と同様のものを用いた。
【0066】b.ガス導入部134 前記実施例1と同構成のものを用いた。ただし、プラズ
マ発生ガス用と反応ガス用の2つの導入部を設けた。な
お、後に示すDLC膜の形成時には、プラズマ発生用ガ
スとしてアルゴンガスを用いた。
【0067】c.プラズマ発生手段136 発振周波数2.45GHz、最大出力1.5kWのマイ
クロ波電源142を用いた。マイクロ波は、マイクロ波
導入管144で真空チャンバ132近傍まで導き、同軸
変換器146で変換後、真空チャンバ132内の放射状
アンテナ150に導入した。プラズマ発生部は、幅60
0mm×高さ200mmの矩形のものを用いた。さらに、E
CR用磁場は、Sm-Co 磁石を複数個、誘電体板148の
形状に合わせて配置することで形成した。
【0068】d.基板ホルダ138 前記実施例1と同様のものを用いた。なお、DLC膜の
形成時には、基板と放射状アンテナ150との距離は1
50mmとした。
【0069】e.基板バイアス手段140 基板ホルダ138に、マッチングボックスを介して高周
波電源を接続した。高周波電源は、周波数13.56M
Hzで、最大出力は3kWである。また、この高周波電
源は、自己バイアス電圧をモニタすることにより、負の
100V〜500Vの範囲で高周波出力が調整可能に構
成されている。また、このCVD装置130では、この
基板バイアス手段140で基板エッチング手段を兼ねて
いる。
【0070】<サーマルヘッドの作製>このようなCV
D装置130を用いて、以下に示すようにしてサーマル
ヘッド(前記実施例1と同じ物)のグレーズの表面に、
上層保護膜としてDLC膜を形成し、サーマルヘッドを
作製した。従って、前記実施例1と同様に、窒化珪素膜
が下層保護膜で、その上に上層保護膜となるDLC膜が
形成される。
【0071】グレーズが放射状アンテナ150に対向す
るように、真空チャンバ132内の基板ホルダ138に
サーマルヘッドを固定した。なお、サーマルヘッドの上
層保護膜の形成部分以外(すなわち、グレーズ以外)に
は、あらかじめマスキングを施しておいた。サーマルヘ
ッドを固定後、真空チャンバ132内の圧力が5×10
-6Torrになるまで真空排気した。真空排気を継続しなが
ら、ガス導入部134aによってメタンガスを導入し、
ターボポンプに設置したオリフィスバルブによって、真
空チャンバ132内の圧力が5.0×10-3Torrになる
ように調整した。次いで、マイクロ波電源142を駆動
してマイクロ波を真空チャンバ132内に導入し、マイ
クロ波ECRプラズマを発生させ、さらに、基板に高周
波電圧を印加し、自己バイアス電圧−300Vで10分
間、下層保護膜(窒化珪素膜)のエッチングを行った。
【0072】エッチング終了後、自己バイアス電圧を−
300Vとして高周波電圧の印加を継続しながら、真空
チャンバ132内の圧力が5.0×10-3Torrになるよ
うにメタンガスを導入してプラズマCVDを行い、上層
保護膜として厚さ0.1μmのDLC膜を形成したサー
マルヘッドを作製した。なお、DLC膜の膜厚は、あら
かじめ成膜速度を求めておき、所定の膜厚となる成膜時
間を算出して、成膜時間で制御した。具体的には、膜厚
0.1μmの場合には21秒間で行った。
【0073】<性能評価>この作製したサーマルヘッド
と、感熱材料とを用いて、図1の感熱記録装置により実
施例1と同様の性能評価を行った。その結果、いずれの
サーマルヘッドも、カーボン保護膜90の割れや剥離が
生じることはなく、また、摩耗もほとんど認められなか
った。
【0074】[比較例] <サーマルヘッド>以下の各種のサーマルヘッドを用意
した。 a.上層保護膜として、実施例1で用いたスパッタリン
グ装置100を用いて、実施例1と成膜時間以外は同じ
条件で、成膜時間20分間、厚さ1.0μmのスパッタ
カーボン膜を形成したサーマルヘッド。 b.上層保護膜として、実施例2で用いたCVD装置1
30を用いて、実施例2と成膜時間以外は同じ条件で、
成膜時間210秒間で、厚さ1.0μmのDLC膜を形
成したサーマルヘッド。
【0075】<性能評価>このような3種類のサーマル
ヘッドを用いて、実施例1と同様の性能評価を行った。
その結果、aおよびbのサーマルヘッドは、100枚の
記録により、カーボン保護膜90の割れや剥離が生じて
しまった。以上の結果より、本発明の効果は明らかであ
る。
【0076】
【発明の効果】以上、詳細に説明したように、本発明に
よれば、保護膜の腐食や摩耗が極めて少なく、しかも熱
や機械的衝撃に対しても保護膜の割れや剥離の発生も好
適に防止して、十分な耐久性を有し、長期に渡って高い
信頼性を発揮し、これにより、長期に渡って高画質の感
熱記録を安定して行うことができるサーマルヘッドを実
現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のサーマルヘッドを利用する感熱記録
装置の一例の概念図である。
【図2】 本発明のサーマルヘッドの発熱素子の構成を
示す概略図である。
【図3】 本発明のサーマルヘッドのカーボン保護膜を
形成するスパッタリング装置の一例の概念図である。
【図4】 本発明のサーマルヘッドのカーボン保護膜を
形成する(プラズマ)CVD装置の一例の概念図であ
る。
【符号の説明】
10 (感熱)記録装置 14 装填部 16 供給搬送手段 20 記録部 22 排出部 24 マガジン 66 サーマルヘッド 80 基板 82 グレーズ層 84 発熱(抵抗)体 86 電極 88 下層保護膜 90 カーボン保護膜(上層保護膜) 100 スパッタリング装置 102,132 真空チャンバ 104,134 ガス導入部 106 スパッタリング手段 108,138 基板ホルダ 110,133 真空排気手段 112 カソード 114 ターゲット材 116 シャッタ 118 電源 120 バッキングプレート 122 バイアス電源 130 (プラズマ)CVD装置 136 プラズマ発生手段 140 基板バイアス電源 142 マイクロ波電源 144 マイクロ波導入管 146 同軸変換器 148 誘電体板 150 放射状アンテナ A 感熱材料

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】発熱体を保護する保護膜として、前記発熱
    体側に形成され、セラミックを主成分とする少なくとも
    1層からなる下層保護膜と、この下層保護膜上に形成さ
    れ、炭素を主成分とする上層保護膜とを有し、 この上層保護膜の膜厚が0.005〜0.1μmである
    ことを特徴とするサーマルヘッド。
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