JPH10240059A - 加熱定着ロール - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 （修正有） 【課題】 トナー画像を加熱、加圧して記録媒体上に定
着させる複写機やプリンター等の加熱定着ロールに係わ
り、特に使用中の熱的環境において撓みを生ずることな
く軽量化し、かつ熱源の容量増加なしに立上がり時間を
短縮できる省エネルギー可能の加熱定着ロールを提供す
る。 【解決手段】 アルミニウム合金製円筒１の内周面上に
炭素繊維強化樹脂複合材２を積層してなる加熱定着ロー
ル。前記炭素繊維強化樹脂複合材の内周面上にアルミニ
ウム合金材層を積層してなる加熱定着ロール。前記アル
ミニウム合金製円筒の内周面上および／または前記アル
ミニウム合金材層内周面上に遠赤外線放射性陽極酸化皮
膜を施してなる加熱定着ロール。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、トナー画像を加熱、加
圧して記録媒体上に定着させる複写機やプリンター等の
加熱定着ロールに係わり、特に加熱立上がり時間が短縮
され、かつ作動中の撓みが少ない、耐熱、軽量性に優れ
た加熱定着ロールに関する。

【０００２】

【従来技術】感光体上に形成された潜像にトナーを塗布
して得られたトナー像を記録媒体に転写し、これを定着
用加熱ロールと加圧ロールとの間を加圧通過させてトナ
ー像を溶融定着する構成の複写機、プリンター等の電子
機器が文書複写用に、あるいはパソコン、ワープロ、フ
ァクシミリ等のプリンター用に汎用されている。従来こ
の種の複写機の基本部分である定着用加熱ロールは、ア
ルミニウム合金筒体の内側にハロゲンランプ等の加熱手
段を具備し、記録媒体と接する外周面にはフッソ樹脂被
覆離形層を設けて構成されている。

【０００３】従来、定着ロールに求められる特性すなわ
ち、高熱伝導性、非磁性、平滑面加工性、適度な強度等
を兼備することであるが、この特性を充足する材料とし
てアルミニウム合金が最も重用され、その製造は、押出
筒体の切削加工に依存してきた。しかし、最近における
上記複写機、プリンター等の趨勢は、軽量、小型化およ
び迅速な立上がり性能が強く求められていることであ
り、この実現に苦心が払われている。定着ロールの構成
から立上がり速度の向上を図る試みはいくつか提案され
ている。

【０００４】例えば (1)特開昭57-155572 は、ロールの
肉厚を中央部で厚く、端部に向けて薄肉化してロールの
曲げ強さを損なわずに熱容量を減少させ、これによって
ウオームアップ時間を短縮させようとする提案である。
(2) 特開平5-113729には、特定のAl-Mn系合金からなる
ロールの加熱内周面に遠赤外放射性に優れた自然発色
（黒色）陽極酸化皮膜層を形成したものを構成する。こ
れによってロールの熱吸収性、熱伝達性、均熱性が向上
し、加熱立上がり時間の短縮をもたらすとする提案がな
されている。

【０００５】さらに、(3) 特開平8-74838は、アルミニ
ウム合金板を管状に成形し繋ぎ目を溶接し、これをさら
に冷間引き抜き加工するロールの製造方法が提案され、
これによって偏肉を減少し、薄肉化することによって加
熱立上がり時間の短縮を図るものである。

【０００６】これらの提案は、相応の改善効果がみられ
るものの、近来要求されるような軽量、小型化には効果
が十分でなく、特にアルミニウム合金材を現状以上に薄
肉化しようとすれば使用時において定着ロールに撓みが
起こり、これによってロール面と記録媒体間に隙間が生
じトナーの定着機能が著しく損なわれることが明らかに
なってきた。このことは最近のようにカラー複写、カラ
ープリントが多くなり、色むら、色違い、汚染等重大な
欠陥を招くことも分かってきた。すなわちアルミニウム
合金材の薄肉化はもはや限界に達したと認識される。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記のよう
な現状に鑑みてなされたもので、定着ロールに対する要
求である、軽量化、小型化、立上がり時間の一層の短縮
およびそれによる改善された省エネルギーを実現する加
熱定着ロールの開発を目的とする。

【０００８】

【課題を解決するための手段】そこで、本発明者等は、
かかる従来の課題を解決すべく種々試験研究の結果、ア
ルミニウム合金板と炭素繊維強化樹脂複合材を積層した
材料からなる定着ロールが意外にも熱的安定性に富み、
特に使用中に撓みを起こさない顕著な効果を有すること
を見出し、この発明に到達した。

【０００９】請求項１に記載の発明の加熱定着ロール
は、アルミニウム合金製円筒の内周面上に炭素繊維強化
樹脂複合材を積層してなることを特徴とするものであ
る。請求項２に記載の発明の加熱定着ロールは、前記炭
素繊維強化樹脂複合材の内周にアルミニウム合金材層を
積層してなることを特徴とするものである。請求項３に
記載の発明の加熱定着ロールは、前記アルミニウム合金
製円筒の内周面上および／または前記アルミニウム合金
材層内周面上に遠赤外線放射性陽極酸化皮膜層を施して
なることを特徴とするものである。請求項４に記載の発
明の加熱定着ロールは、前記アルミニウム合金製円筒の
外周面上に陽極酸化皮膜層を介してフッソ樹脂被覆層を
形成してなることを特徴とするものである。

【００１０】

【作用】請求項１の発明によれば、アルミニウム合金製
円筒の内周面上に炭素繊維強化樹脂複合材を積層し一体
化した加熱定着ロールであるため、薄肉、軽量にもかか
わらず熱的安定性に優れ、特に使用中撓みを起こさない
顕著な効果を有することが見出された。

【００１１】請求項２の発明によれば、 前記炭素繊維
強化樹脂複合材の内周面上にアルミニウム合金板層を積
層してなること、換言すれば炭素繊維強化樹脂複合材層
を挟んだアミニウム合金材層からなる加熱定着ロールで
あり、ハロゲンランプ等の発熱源からの熱吸収は、最内
周のアルミニウム合金材層を経由してなされるため、合
金層の高熱伝導率に助けられて熱分布が均一化され、ま
た炭素繊維強化樹脂複合層の熱的劣化を緩和する。

【００１２】請求項３の発明によれば、前記アルミニウ
ム合金製円筒の内周面上および／または前記アルミニウ
ム合金材層内周面上に遠赤外線放射性陽極酸化皮膜層を
施してなる加熱定着ロールであるため、ロール中心部の
発熱源からの熱吸収性がよくロール本体内の均熱性に優
れ、従って立上がり時間の短縮に貢献する。炭素繊維強
化樹脂複合材の熱伝導率の低レベルをよくカバーし、特
にロールの軸方向の均熱性を高める。

【００１３】請求項４の発明によれば、前記アルミニウ
ム合金製円筒の外周面上に陽極酸化皮膜層を介してフッ
ソ樹脂被覆層を形成してなる加熱定着ロールであるた
め、陽極酸化皮膜の微孔質表面にフッソ樹脂を強固に被
覆し、ロールと記録媒体との離型性および記録媒体のク
ッション性増加によるトナー画像鮮明化に有効である。

【００１４】

【発明の実施の形態】図１、および図２は、請求項４の
発明の一例を示す加熱定着ロールの縦断面図およ側面図
で、アルミニウム合金製円筒からなる合金層１の内周面
上に炭素繊維強化樹脂複合材層２を積層し、さらにアル
ミニウム合金製円筒の合金材層１の内周面上および外周
面上に遠赤外放射性陽極酸化皮膜層３を施し、前記アル
ミニウム合金円筒の外周面上に前記陽極酸化皮膜層を介
してフッソ樹脂皮膜層４を形成してなる加熱定着ロール
６である。

【００１５】また、図３は、請求項２の発明の一例を示
す加熱定着ロールの縦断面図で、アルミニウム合金製円
筒からなる合金層１の内周面上に積層した炭素繊維強化
樹脂複合材層２の内周面上にさらにアルミニウム合金材
層１を積層してなる加熱定着ロール６である。この例で
はさらにアルミニウム合金製円筒の外表面上に陽極酸化
皮膜３、さらにその面上にフッソ樹脂皮膜層４を施して
なる加熱定着ロールである。

【００１６】本発明において、アルミニウム合金材の種
類は特に限定せず、従来公知の定着ロール用合金がいず
れも適宜採用できる。すなわちＡｌ−Ｍｇ系合金ＪＩＳ
Ａ５０５２−Ｈ３４、ＪＩＳ Ａ５０５６−Ｈ３４、
Ａｌ−Ｃｕ系合金（特開昭60-92443）、Ａｌ−Ｎｉ系合
金（特開昭63-11640）、Ａｌ−Ｍｎ系合金（特開平5-11
3729）等である。また、素材の形態も圧延板、押出し
材、引抜き材等いずれであっても良い。肉厚均等性、内
部組織均質性、表面平滑性、コスト等から圧延板が最も
好ましい。

【００１７】炭素繊維強化複合材中の炭素繊維は、ピッ
チ系、レーヨン系、アクリロニトリル系等いずれも適用
できる。複合材中の炭素繊維の含有量は、マトリックス
樹脂１００重量部に４０〜８５重量部、好ましくは５０
〜７０重量部が良い。繊維としては実質的には炭素繊維
を主体とするが、少量のガラス繊維等が混用されても良
い。その場合ガラス繊維等は、炭素繊維に直交する方向
に混用されるのが適している。

【００１８】炭素繊維強化複合材としては、補強繊維が
一方向となった一方向シートあるいは繊維方向が交差す
るクロスシートのいずれでも良く、また両者を積層した
ものも良い。炭素繊維複合材の製造は、繊維束を連続的
に引き出し、マトリックス樹脂に炭素繊維を複合組成す
る方法は、プリプレグ法、ハンドレイアップ法、フィラ
メントワインデイング法等種々の常用手段が適用される
が一般にはプリプレグ法が適している。例えば溶媒含浸
法、無溶媒ホットメルト含浸法等がそれである。

【００１９】マトリックス樹脂としては、いわゆる耐熱
性樹脂すなわち、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽
和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹
脂、ビスマレイミド樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、
レゾルシン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセター
ル樹脂等のほか、それらの共重合体樹脂が挙げられる
が、好ましくは金属との接着性等に優れるエポキシ樹脂
である。そして特に耐熱性を向上させた樹脂としては、
多官能エポキシ樹脂すなわち、フェノールノボラックエ
ポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、トリ
グリシジルイソシアヌレート樹脂等があり、さらに耐熱
性と強靭性とを兼備したものとしてヒダントイン型エポ
キシ樹脂を５０重量％以上を含有するエポキシ樹脂も好
ましい。マトリックス樹脂の耐熱性を改良するため、他
のエポキシ化合物、熱可塑性樹脂、無機質充填材等の添
加も有効である。

【００２０】［実施例］以下、本発明の実施例につい
て、図１、２を参照して説明する。アルミニウム合金材
は、表１に示す組成であり、（Ｎｏ．１〜６）は、Ｎ
ｏ．４、ＪＩＳ−６０６１の押出し管である以外は、圧
延板を溶接して製作した円筒である。合金材Ｎｏ．３
は、特公平7-116639および特開平5-113729に開示される
Ａｌ−Ｍｎ系遠赤外線放射性合金である。

【００２１】

【表１】

【００２２】炭素繊維は、引っ張り弾性率４０ｔ／ｍｍ
² の”ダイヤリード（登録商標）Ｋ１３７１０”（三
菱化学社製）を、マトリックス樹脂１００重量部に対し
て６０重量部、マトリックス樹脂は、エポキシ樹脂”ア
ラルダイトＧＹ−２６０”（日本チバガイギー社製）を
使用した。引き抜き成形した炭素繊維強化複合シート材
にアルミニウム合金板を接着積層した。接着剤は、エポ
キシ系樹脂”ダイナミックボンドＢ−９１０”（大日本
色材社製）を使用した。

【００２３】加熱定着ロールは、図１、２に示すよう
に、アルミニム合金製円筒１の内周面上に炭素繊維強化
樹脂複合材２を積層し、アルミニウム合金性円筒１の内
外周面上には、一部に厚さ２０μｍの陽極酸化皮膜層を
施した。アルミニウム合金製円筒の外表面にはフッソ樹
脂皮膜層を形成した。

【００２４】表２には、上記のように製作した、本発明
の加熱定着ロール(外径20mm.×長さ314.4mm.）について
構成と特性を示してある。Ｎｏ．５２および５３は、合
金Ｎｏ．５の合金の肉厚、炭素繊維強化複合樹脂の厚を
変えた場合の結果である。表２においてロールの撓み量
は、長さ284.4mm.のゴムロールに片側荷重2.0Kgf/mm²で
押しつけときの長さ方向中央における初期撓み量（A）
と、80℃において７日間保持後の荷重解除後の測定値
（B）である。また、立上がり所要時間は、発熱体（400
Wハロゲンランプ）に入電後、ロール表面温度が220℃に
到達するまでの時間（sec.）である。

【００２５】

【表２】

【００２６】［比較例］表１に示す比較例のアルミニウ
ム合金３種について、表２に示すように炭素繊維強化複
合材を積層使用しない従来公知の代表的な定着ロールを
製作して供試し、比較した。

【００２７】表２において実施例および比較例をみる
と、炭素繊維強化樹脂複合材を積層した本発明の加熱定
着ロールは、軽量化、撓み量の減少、立上がり時間の減
少が明らかであり、本発明の目的を達成していることが
認められる。なお、ロールの弾性率は、比較例の３〜４
倍に増大し、撓み量が１／３〜１／４に減少しているこ
とは、この種の複合材料では希有のものであり、耐熱、
安定性に優れたロールであることが判明した。

【００２８】

【発明の効果】請求項１の発明の加熱定着ロールにおい
ては、アルミニウム合金製円筒の内周面上に炭素繊維強
化樹脂複合材を積層し、一体化したロールであるため薄
肉、軽量にもかかわらず熱的安定性に優れ、特に使用中
の撓み量が少ない。しかも定着ロールの立上がり時間減
少が顕著であり、定着ロールの熱媒体の容量増加なしに
この効果を奏しうるため省エネルギーに貢献する。

【００２９】請求項２の発明の加熱定着ロールは、炭素
繊維強化樹脂複合材層を挟んだアルミニウム合金材層か
らなるため、発熱源からの熱吸収は最内周のアルミニウ
ム合金層を経由してなされ、ロールの熱分布が均一化さ
れ、また炭素繊維強化樹脂複合材層の熱的劣化を緩和す
る。

【００３０】請求項３の発明の加熱定着ロールは、前記
アルミニウム合金製円筒の内周面上および／または前記
アルミニウム合金材層内周面上に遠赤外線放射性陽極酸
化皮膜層を施してなるため、ロール中心部の発熱源から
の熱吸収性がよくロール本体内の均熱性に優れ、従って
立ち上が時間の短縮に貢献する。炭素繊維強化樹脂複合
材の熱伝導率のレベルをよくカバーし、特にロールの軸
方向の均熱性を高める効果が得られる。

【００３１】請求項４の発明の加熱定着ロールは、前記
アルミニウム合金製円筒の外周面上に陽極酸化皮膜層を
介してフッソ樹脂被覆層を形成してなるため、陽極酸化
皮膜の微孔質表面にフッソ樹脂を強固に被覆し、ロール
と記録媒体との離型性および記録媒体のクッション性増
加によるトナー画像鮮明化に有効である。

【００３２】以上のように本発明の加熱定着ロールは、
アルミニウム合金材と炭素繊維強化樹脂複合材とを積層
した新規な構成になるものであり、その作用効果は、現
在複写機やプリンターに希求されている課題、すなわち
軽量化、加熱立上がりの迅速化を解決したものであり、
この分野への貢献は大きいものである。

【図面の簡単な説明】

【図１】アルミニウム合金製円筒の内周面上に炭素繊維
強化複合樹脂板を積層してなる本発明の加熱定着ロール
の一例を示す縦断面図。

【図２】図１の加熱定着ロールの側面図。

【図３】アルミニウム合金製円筒の内周面上に炭素繊維
強化樹脂複合材層を積層し、さらにその内周面上にアル
ミニウム合金材層を積層してなる本発明の別の加熱定着
ロールの一例を示す縦断面図。

【符号の説明】

１ アルミニウム合金材層 ２ 炭素繊維強化樹脂複合材層 ３ 陽極酸化皮膜層 ４ フッソ樹脂皮膜層 ５ 発熱体 ６ 加熱定着ロール

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 後藤 慎二 東京都中央区日本橋室町４丁目３番18号 スカイアルミニウム株式会社内

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 アルミニウム合金製円筒の内周面上に炭
   素繊維強化樹脂複合材を積層してなることを特徴とする
   加熱定着ロール。
2. 【請求項２】 前記炭素繊維強化樹脂複合材の内周面上
   にアルミニウム合金材層を積層してなることを特徴とす
   る加熱定着ロール。
3. 【請求項３】 前記アルミニウム合金製円筒の内周面上
   および／または前記アルミニウム合金材層内周面上に遠
   赤外線放射性陽極酸化皮膜層を施してなることを特徴と
   する請求項１および請求項２記載の加熱定着ロール。
4. 【請求項４】 前記アルミニウム合金製円筒の外周面上
   に陽極酸化皮膜層を介してフッソ樹脂被覆層を形成して
   なることを特徴とする請求項１ないし請求項３記載の加
   熱定着ロール。