JPH10226018A - 広い温度範囲で制振性能に優れた樹脂複合型制振金属板 - Google Patents

広い温度範囲で制振性能に優れた樹脂複合型制振金属板

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JPH10226018A
JPH10226018A JP4725097A JP4725097A JPH10226018A JP H10226018 A JPH10226018 A JP H10226018A JP 4725097 A JP4725097 A JP 4725097A JP 4725097 A JP4725097 A JP 4725097A JP H10226018 A JPH10226018 A JP H10226018A
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JP
Japan
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polyester
glass transition
metal plate
temperature range
resin
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JP4725097A
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English (en)
Inventor
Motoo Sato
始夫 佐藤
Takashi Saito
隆司 斉藤
Tadashige Nakamoto
忠繁 中元
Tetsuo Toyoda
哲夫 十代田
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Kobe Steel Ltd
Original Assignee
Kobe Steel Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 低温状態から高温状態までの広い温度範囲で
制振性能に優れ、かつ、優れた常温での加工性等を備え
た樹脂複合型制振金属板を提供する。 【解決手段】 2枚の金属板間に中間樹脂層を挟持して
なる複合型制振金属板である。前記中間樹脂層がポリエ
ステルおよび多価イソシアネート化合物との反応物であ
り、このとき用いるポリエステルがガラス転移温度が異
なり、かつ相溶性がない樹脂を3種類以上混合したもの
である。混合するポリエステルとして、ガラス転移温度
が−40℃〜0℃の範囲内にあるポリエステル(A)
と、ガラス転移温度が0℃〜20℃の範囲内にあるポリ
エステル(B)と、ガラス転移温度が20℃〜100℃
の範囲内にあるポリエステル(C)とを用いるとよい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、2枚の金属板間に
粘弾性樹脂を挟持してなる樹脂複合型制振金属板に係わ
るもので、特に常温から高温までの広い温度範囲におい
て、優れた制振性能と良好な加工性、さらには優れた抵
抗溶接性を有する樹脂複合型制振金属板に関する。
【0002】
【従来の技術】樹脂複合型制振金属板は、2枚の金属板
の間に粘弾性樹脂(以下、中間樹脂という)層を介在さ
せ、その中間樹脂により鋼板に加えられる振動エネルギ
を熱エネルギに変換放散させる騒音防止材料である。こ
の樹脂複合型制振金属板は、最近の騒音規制強化に対す
るニーズに対応し、自動車のオイルパンや各種カバー等
のエンジン部品用途、階段、ドア、床材等の建材用途、
モーターやコンプレッサーカバー等の汎用エンジン部品
などに広く使用され、もしくは使用が検討されている。
【0003】一般に、このような樹脂複合型制振金属板
の制振性能(騒音等の振動エネルギを熱エネルギに変
換、放散させる能力)は、損失係数(η)で表される。
この制振性能は、ある一定温度でピークを示す特性を示
し、このピーク特性温度の近傍で使用するのが最も効果
的であることが知られている。
【0004】この樹脂複合型制振金属板の中間樹脂とし
ては、従来からポリウレタン(特開昭47−19277
号公報)、ポリエステル(特開昭50−143880号
公報)、ポリアミド(持開昭51−79146号公
報)、ポリイソブチレン(特開昭54−43251号公
報)、エチレン/α−オレフィン(特開昭55−846
55号公報)、EVA(特開昭57−34949号公
報)、架橋ポリオレフィン(特開昭59−152847
号公報)、ポリビニルアセタール(特開昭60−881
49号公報)などが検討されており、アスファルト、合
成ゴム、アクリル系粘着剤、エポキシ樹脂なども制振性
能を有することが知られている。
【0005】これらのうち、アクリル系粘着剤、合成ゴ
ム(イソブチレンゴム)、EVA等の常温で柔軟な樹脂
では、常温付近の温度域で比較的高い制振性を有してい
るが、常温における樹脂の凝集力が弱いため接着強度が
小さく、成形加工に耐えられず、かつ耐熱性もないの
で、これらの制振金属板は、平板に近い状態で使用され
る建材用途に利用されるのが通例である。
【0006】また、共重合、ブレンド等により変性され
たポリオレフィン系樹脂、例えば、エチレン/α−オレ
フィン系樹脂などは、前者に比ベ50〜100℃の高温
域で比較的高い制振性を発揮する。また、常温における
樹脂の凝集力も強く、成形加工に対する対応力もあるの
で、当該樹脂を用いた制振金属板は、自動車のオイルパ
ン等の高温で使用されるエンジン部品用途に適している
と言われている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記の
樹脂組成物を用いることで特定の温度域では優れた制振
性能を得ることは可能であるが、自動車エンジンのオイ
ルパンに用いる場合のように、エンジン始動時の常温付
近、具体的には20℃程度の低温状態から、定常走行の
定常運転状態の120℃程度に及ぶ高温状態までの広い
温度範囲で優れた制振性能を発揮し、騒音の軽減を図る
ことのできる樹脂はいまだに見い出されていないのが現
状である。
【0008】本発明は、上記問題に鑑み、低温状態から
高温状態までの広い温度範囲で制振性能に優れ、かつ、
優れた常温での加工性と、あるいは更に優れた抵抗溶接
性を兼ね備えた樹脂複合型制振金属板を提供することを
目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の樹脂複合型制振
金属板は、2枚の金属板間に中間樹脂層を挟持してなる
複合型制振金属板であって、前記中間樹脂層がポリエス
テルおよび多価イソシアネート化合物との反応物であ
り、このとき用いるポリエステルがガラス転移温度が異
なり、かつ相溶性がない樹脂を3種類以上混合したもの
であることを特徴とする。
【0010】この場合、請求項2に記載したように、混
合するポリエステルとして、ガラス転移温度が−40℃
〜0℃の範囲内にあるポリエステル(A)と、ガラス転
移温度が0℃〜20℃の範囲内にあるポリエステル
(B)と、ガラス転移温度が20℃〜100℃の範囲内
にあるポリエステル(C)とを用いるとよい。
【0011】また、請求項3に記載したように、ポリエ
ステル(A)と、ポリエステル(B)と、ポリエステル
(C)との混合割合は、重量%で、A:20〜40%、
B:5〜10%、C:50〜75%とするのがよい。
【0012】さらに、請求項4に記載したように、ポリ
エステル(A)、ポリエステル(B)及びポリエステル
(C)の内の1種以上が、そのポリエステルの属するガ
ラス転移温度範囲内で異なるガラス転移温度を有し、か
つ相溶性のない2品種以上のポリエステルの混合樹脂を
用いるのがよい。
【0013】以下、本発明の樹脂複合型制振金属板につ
いて詳しく説明する。本発明の制振金属板は、基本的に
2枚の金属板の間に、中間樹脂層が配置されて構成され
たものであり、前記金属板としては、特に限定されるも
のではなく、冷間圧延鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板
や電気亜鉛めっき鋼板等の亜鉛系めっき鋼板、クロメー
ト処理鋼板、リン酸塩処理鋼板等の表面処理鋼板、ステ
ンレス鋼板、あるいは銅板、アルミ板、チタン板などの
非鉄材のいずれであってもよく、また、コイル状原板、
切板のいずれであってもよい。原板の板厚は、特に限定
されないが、成形加工性や抵抗溶接性を考慮すれば、
0.2〜2mmのものが好ましい。
【0014】このような金属板の間に配置される中間樹
脂層は、飽和共重合ポリエステル(以下、特記した場合
を除き、単にポリエステルという)が多価イソシアネー
ト化合物(以下、特記した場合を除き、単にイソシアネ
ート化合物という)によって架橋されてなる反応硬化樹
脂層からなる。さらに、このポリエステルは、合成する
原料、つまり酸成分とグリコール成分の選択で決定され
る樹脂の骨格と反応後の分子量等で決まる樹脂の粘弾性
特性から、ガラス転移温度の異なる樹脂を3種類以上を
混合してなるものであり、かつこの混合する樹脂は相互
に混じり合わない性質、つまり相溶性のないものであ
る。
【0015】従来、飽和共重合ポリエステルは、シャー
プな溶融挙動から、樹脂そのものの粘弾性を発現する温
度域が狭いため、良好な制振性能を発現する温度も特定
の狭い温度域に限定されており、かつ粘弾性を示す温度
域においては凝集力が不足するため実用上制振性を示す
温度においてさえ、接着強度が弱く、したがってそれ以
上の温度においては十分な強度が得られなかった。すな
わち、通常、制振性能がピークを示す温度は、ガラス転
移温度よりも40〜60℃高く、単一品種のポリエステ
ルでは、狭い温度範囲でのみ良好な制振金属板となるに
過ぎなかった。また、たとえ、ガラス転移温度の異なる
ポリエステルを混合するとしても、各ポリエステルが相
溶性のある場合には、混合物の特性は混合した各ポリエ
ステルの平均特性となり、広い温度範囲に対する制振性
能の向上効果はみられない。
【0016】これに対して、本発明では、中間樹脂層を
特定のポリエステルの混合樹脂と多価イソシアネート化
合物との反応硬化樹脂層としたので、本発明の樹脂複合
型制振金属板では、広い温度範囲で制振性能に優れ、か
つ良好な成形加工性に必要なせん断接着強度を有する。
【0017】まず、本発明において使用するポリエステ
ルについて説明する。使用するポリエステルとして、粘
弾性スぺクトロメーターにより測定したガラス転移温度
が−40℃〜100℃の範囲内にあり、かつガラス転移
温度が異なるポリエステルを少なくとも3種類以上、好
ましくは4種類以上混合したものを使用する。さらに、
混合する各ポリエステルは相溶性のないものを用いる。
これにより、混合前の各ポリエステルのガラス転移温度
特性を残すことができ、各ポリエステル単独では満足す
ることができない広範な温度領域における制振性能を補
うことが可能となる。
【0018】室温から120℃の高温にわたる広い温度
範囲において、優れた制振性能を確保するには、常温域
の制振性能を得るためにはガラス転移温度が−40℃〜
0℃の範囲内にあるポリエステル(A)が必要であり、
高温域での制振性能を得るためにはガラス転移温度が2
0℃〜100℃の範囲内にあるポリエステル(C)が必
要となる。さらに中温域の制振性能を得るためには、ガ
ラス転移温度が0℃〜20℃(但し、0℃および20℃
を除く)の範囲内にあるポリエステル(B)が必要とな
る。また、かかるポリエステルA,B,Cは、互いに溶
け合うことなく、相分離状態を得るために非相溶である
ことが必要である。かかるポリエステルとしては、結晶
性ポリエステルは相溶性を有しないため好適であり、ま
た非晶性ポリエステルについても相溶性を有しないもの
は使用可能である。
【0019】前記A,B,Cの各ポリエステルについて
は、単一の品種に限らず、ガラス転移温度が各ガラス転
移温度範囲内にある複数の品種を混合したものを用いて
もよい。この場合、複数品種のポリエステルは相溶性が
あってもよいが、相溶性を有しない方が、各温度領域に
おける制振性能をより一層向上させることができる。例
えば、常温域での制振性能のより一層の向上を図るため
には、ポリエステル(A)として、ガラス転移温度が−
40℃〜0℃の範囲内にあるポリエステルであって、ガ
ラス転移温度が異なり、かつ相溶性のないものを2種類
以上(例えば、品種A1と品種A2)を混合したものを
用いることが望ましく、具体的には結晶性ポリエステル
同士、あるいは結晶性ポリエステルと非晶性ポリエステ
ルとの両者を混合して用いるのがよい。この時の配合割
合は特に限定されず、例えば等量ずつ配合すればよい。
【0020】前記(A),(B),(C)の各ポリエス
テル(各ポリエステルには複数品種のポリエステルを混
合したものを含む)の好ましい配合割合(重量%)につ
いては、常温域で制振性能を発揮するガラス転移温度の
低いポリエステル(A)の配合割合は20〜40%がよ
い。この割合が20%よりも少ないと常温域の損失係数
で評価した制振性能が低下し、目標とする損失係数が得
られない。また、40%を超えて配合すると、常温域の
損失係数は問題ないレベルとなるが、高温域で制振性能
を発揮するガラス転移温度の高いポリエステルの配合量
が減少し、結果として、高温域での損失係数が低下す
る。
【0021】ガラス転移温度が20℃〜100℃の高温
域にあるポリエステル(C)の配合割合は、好ましくは
50〜75%とする。この配合割合が50%よりも少な
いと、高温域(測定温度:80〜120℃)での損失係
数の高い温度範囲が狭くなり、目的の特性を示さなくな
る。一方、配合量が75%を超えても、高温域の制振特
性には問題ないが、常温域で制振性能を発揮するガラス
転移温度が−40〜0℃にあるポリエステルの配合量が
減少し、常温域での損失係数が低下するため、この配合
量を上限とする。
【0022】常温域で制振性能を発揮するポリエステル
(A)と高温域で制振性能を発揮するポリエステル
(C)の両者を混合するのみでは、中温度域(40〜6
0℃)で損失係数が低下するので、この温度域で制振性
能の優れたポリエステル(B)を配合する。このガラス
転移温度が0〜20℃であるポリエステル(B)の配合
割合は少量でその効果を発揮するので、好ましくは5〜
10%の配合とする。配合量が5%未満の少量では、配
合効果があまり認められないので、5%を下限とする。
一方、配合量が10%を超えても制振性能は良好な状態
を保持するが、制振性能のトータル特性として見た時、
常温域の低下や高温域での低下のどちらかが認められ、
トータル特性を満足させるためには、10%を上限とす
る。
【0023】また、制振金属板の製造時における加工性
を考慮すると、本発明に用いるポリエステルとしては、
キシレン、トルエン、MEK、酢酸エチル等の汎用溶剤
に可溶であるものが望ましい。ポリエステルとして、汎
用溶剤に可溶なものを用いると、制振金属板の製造工程
において、このポリエステルを溶剤に溶解して液状とす
ることにより、金属板表面への塗工が容易になり、得ら
れる中間樹脂層へのエアー等のガスの巻き込みがなくな
る。さらには、樹脂複合型制振金属板加工時の抵抗溶接
性付与のために中間樹脂層中に添加する導電性粉末やフ
ィラー、各種添加剤の添加、混合が容易になる。
【0024】次に、中間樹脂層すなわち反応硬化樹脂層
を形成する第二の必須成分であるイソシアネート化合物
について説明する。本発明に用いるイソシアネート化合
物は、分子内に少なくとも2個以上のイソシアネート基
を有する公知のイソシアネート化合物が各種使用可能で
あり、特に限定されない。具体的には、2,4−トリレ
ンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネー
ト(通称TRI)やTDIをトリメチロールプロパンな
どに付加したTDI系アダクトポリイソシアネート、例
えば市販品として、コロネートL,コロネートHL(以
上日本ポリウレタン工業製)、ディスモフェンL、ディ
スモジュールN(住友バイエルウレタン製)、予め反応
させた重合ポリイソシアネート、例えば市販品として、
スプラッセ3240,スプラッセ3250,コロネート
2030,コロネート2031(日本ポリウレタン工業
製)、ディスモジュールIL,ディスモジュールHL
(住友バイエルウレタン製)があり、またイソシアネー
トをカプロラクタム等でマスキングしたブロックドイソ
シアネート、予め低分子量ポリエーテルと前述の多価イ
ソシアネートとを反応させた末端イソシアネートプレポ
リマー等を挙げることができ、それらのいずれもが使用
可能であるが、接着強度を顕著に向上させることから、
本発明にとって好ましいのは、アダクトポリイソシアネ
ートおよび重合ポリイソシアネートである。
【0025】飽和共重合ポリエステルに対する多価イソ
シアネート化合物の添加量は、重量平均分子量より計算
した飽和共重合ポリエステル中の水酸基1当量に対し
て、0.1〜10.0当量が好ましい。多価イソシアネ
ート化合物の添加量が0.1当量未満では、樹脂層全体
の接着強度が小さいため、成形加工時の樹脂の剥離、ず
れ、および塗装焼き付け処理時に樹脂のはみ出し等の問
題を生じるおそれがある。一方、多価イソシアネート化
合物の添加量が10.0当量を超えると、常温近傍の制
振性能が大幅に低下するようになる。
【0026】前記反応硬化樹脂は、上記ポリエステルが
イソシアネート化合物によって架橋されてなる粘弾性樹
脂であり、これにより中間樹脂層が形成される。この粘
弾性樹脂は、ポリエステルとイソシアネート化合物とを
含有する樹脂組成物が加熱処理を受け、ポリエステルの
水酸基とイソシアネート化合物のイソシアネート基が反
応することで生成される。
【0027】反応硬化樹脂の架橋密度は、特に限定され
ず、適用する用途における必要特性に応じて自由に設定
すればよい。一般に、架橋密度が低い方が制振性に優れ
るが接着強度が低くなり、成形加工性に劣るようにな
る。逆に高いものでは、接着性および耐熱性に優れる
が、制振性が劣るようになる。
【0028】反応硬化樹脂の特徴を良好に発揮させると
いう観点からは、重量平均分子量に換算した際の飽和共
重合ポリエステルの水酸基1当量に対して、イソシアネ
ート化合物中のイソシアネート基が1〜5当量程度とす
ることが望ましい。飽和共重合ポリエステルの水酸基に
対するイソシアネート化合物のイソシアネート基の量を
1当量以上とすることにより、反応硬化樹脂に良好な凝
集力を付与し、優れた接着強度を得ることができ、成形
加工時の層間のずれや剥離を防止できる。一方、同様に
イソシアネート基を5当量以下にすることにより、良好
な制振性能を発揮させ、かつ、過剰なイソシアネート基
と空気中の水分との反応に伴う経時的な特性劣化、特に
制振性能やスポット溶接性の劣化を防止することがで
き、耐久性にも優れた制振金属板を得ることができる。
【0029】なお、中間樹脂層の層厚は特に限定はな
く、用途に応じて適宜設定すればよいが、通常、20〜
150μm 程度でよく、より好ましくは35〜60μm
程度がよい。樹脂層厚が20μm 未満と薄い場合には、
制振金属板の特徴である制振性能が低くなり、騒音を効
果的に低下させることができない。一方、樹脂層厚が1
50μm を越えて厚くなると、制振性能には問題ない
が、成形加工時に樹脂を挟持する2枚の金属板のずれが
大さくなり、成形加工性が低下する。
【0030】本発明の制振金属板の中間樹脂層(粘弾性
樹脂層)に、請求項5に記載したとおり、溶接性を付与
するための導電性物質を含有させることによって、導電
性を付与し、樹脂複合型制振金属板をスポット溶接、シ
ーム溶接、プロジェクション溶接等の抵抗溶接可能な材
料とすることができる。
【0031】このような目的で使用される導電性物質と
しては、鉄、ステンレス、ニッケル、鋼、黄銅、亜鉛な
どの金属を粉末状、フレーク状、ファイバー状に加工し
た金属材料を挙げることができる。これらの導電性物質
は、単独または2種類以上組み合わせて使用することも
できる。この導電性物質は、その形状が粉末の場合には
その平均粒径(篩を使用して分級した場合には、算術平
均で求まる値)をdとすると、積層後の樹脂層厚をtと
した時の比d/tの値が、1.0以上2.5以下となる
ような粉末を用いることが望ましい。平均粒径が樹脂層
厚よりも小さいと、制振金属板の抵抗溶接性が安定せ
ず、溶接時に溶接不良が発生するなどの不具合が起こる
おそれがある。
【0032】さらに、導電性物質の添加量は、中間樹脂
層の0.5〜5体積%を占めるようになる量が望まし
い。0.5体積%未満では、複合型制振金属板のスポッ
ト溶接性が不十分となり、スパークや焼けが発生した
り、シーム溶接時にナゲットが連続して生成しない等の
溶接不良が発生するおそれがある。また、5体積%を超
えて添加すると、スポット溶接性やシーム溶接性は十分
に安定するが、金属板と中間樹脂層との接着強度や制振
性能が低下し好ましくない。よって、添加量として望ま
しい範囲は、0.5体積%以上、5体積%以下とする。
【0033】次に本発明の樹脂複合型制振金属板の製造
方法について述べる。本発明で用いる中間樹脂層を製造
するために用いる樹脂組成物は、一般的には、互いに相
溶性がなくかつガラス転移温度の異なる3種類以上のポ
リエステルを各々単独で、あるいは混合したものと、イ
ソシアネート化合物をそれぞれ別に保管しておき、制振
金属板製造の際にこれらの樹脂を混合して使用する。す
なわち、中間樹脂層を形成する際、溶剤中で所定の配合
割合に混合したポリエステル溶液とイソシアネート化合
物とを混合した混合樹脂溶液を形成し、これを金属板に
塗布する。導電性物質等を中間樹脂層に含有させる場合
は、混合樹脂溶液に導電性物質等の添加物を混合して用
いることは勿論である。
【0034】樹脂組成物の金属板への塗布方法は任意で
あり、例えば、直接金属板の一方に添加物を混合した混
合樹脂溶液を塗布し、他方の金属板には添加物配合の混
合樹脂溶液、あるいは添加物を配合していない混合樹脂
溶液を塗布する。塗工方法は、特に限定されないが、ロ
ールコーター、コンマコーター、スプレー、ドクターナ
イフコーターが好ましい。
【0035】樹脂組成物の塗布後、室温ないし好ましく
は100〜200℃の温度に加熱して溶剤を除去した
後、加熱積層圧着して金属板と中間樹脂層とを積層化す
る。金属板への積層接着温度は、樹脂組成物に120〜
250℃の加熱が与えられるようにすればよく、加熱プ
レスの場合には、30秒〜3分間程度、加熱ロールによ
る連続積層の場合には2秒〜1分程度の接触時間であれ
ばよい。
【0036】
【実施例】以下、本発明の実施例を挙げ、具体的に説明
する。ポリエステルおよび架橋剤(硬化剤)としてのイ
ソシアネート化合物として、下記のものを用意した。な
お、下記ポリエステルは互いに相溶性のないものであ
る。 A1:ガラス転移温度Tg=−9℃、平均分子量14,000
の非晶性ポリエステル A2:ガラス転移温度Tg=−20℃、平均分子量15,000
の結晶性ポリエステル B :ガラス転移温度Tg=12℃、平均分子量11,000
の結晶性ポリエステル C1:ガラス転移温度Tg=28℃、平均分子量19,000
の非晶性ポリエステル C2:ガラス転移温度Tg=65℃、平均分子量18,000
の非晶性ポリエステル イソシアネート化合物:コロネート2247(日本ポリウレ
タン工業製)
【0037】予め、上記A1〜C2のポリエステルをキ
シレンに溶解し、固形分40%の溶液とした。このポリ
エステル溶液を、下記表1に示すように、(A1+A
2):B:(C1+C2)=(20〜40):(0〜1
0):(50〜75)の割合に混合し、上記イソシアネ
ート化合物を表1に示す添加量(重量平均分子量により
計算した飽和共重合ポリエステル中の水酸基1当量に対
する硬化剤中のイソシアネート基の当量値)で混合して
混合樹脂溶液とした後、その一部を除いて、導電性物質
として粒径44〜74μm の純Ni粉末を1〜3体積%
添加した樹脂組成物を粘弾性樹脂とした。金属板として
は、板厚0.8mmの冷延鋼板を用いた。
【0038】
【表1】
【0039】冷延鋼板への樹脂の塗布方法は、バーコー
ターを用いて、一方の鋼板には乾燥層厚で45μm とな
るように金属粉末を混合した樹脂組成物(一部には金属
粉末を添加しない混合樹脂溶液を使用)を塗装し、他方
の鋼板には乾燥層厚で5μmとなるように金属粉末を添
加しない混合樹脂溶液を塗装し、溶剤を乾燥させた後、
2枚の鋼板を重ね合わせて、熱プレスにより加熱、圧着
して樹脂複合型制振鋼板を得た。この時の乾燥条件は、
160℃に加熱したオーブン中で1分保持し、溶剤を除
去した。熱プレスの条件は、200℃×2分の圧着と
し、この時の面圧は20kgf/cm2 とした。
【0040】得られた制振鋼板に60℃×24時間のエ
ージング処理を行った後、以下の特性を調査した。調査
結果を下記表2に示す。 せん断接着強度の測定:得られた樹脂複合型制振鋼板
から幅35mm、スリット間隔10mmの形状の試験片を採
取し、引張速度5mm/分、室温25℃にてJIS−K−
6850に準拠して測定した。 T剥離強度の測定:同様に上記制振鋼板から25mm幅
×200mmのサイズの試験片を採取し、引張速度100
mm/分、室温25℃にてJIS−K−6854に準拠し
て測定した。 損失係数の測定:同様に上記制振鋼板から15mm幅×
200mmのサイズの試験片を採取し、複素弾性率測定装
置を用いた片持ち梁の共振法によって測定し、500H
zにおける損失係数の値を20℃〜120℃の温度範囲
で測定した。 スポット溶接性の調査:同様に上記制振鋼板から30
mm幅×100mmのサイズの試験片を採取し、1.6mmt
の冷延鋼板との組み合わせで下記のスポット溶接条件で
溶接し、溶接打点部の外観不良の発生有無を目視判定し
た。 〔溶接条件〕 ・溶接機:定置式ダイレクトスポット溶接機 ・電極チップ:チップ先端径6mmφ−40Rのドーム型
電極 ・加圧力:300kgf ・溶接電流:12kA ・通電時間:18サイクル/60Hz
【0041】
【表2】
【0042】表2に示される結果より、実施例1〜11
の樹脂複合型制振鋼板によれば、広い温度範囲で良好な
制振性能を有し、また接着強度も高いため加工性も良好
であることがわかる。また、導電性物質を添加したもの
では、良好なスポット溶接性を備えたものとなってお
り、幅広い用途に適用可能であることがわかる。
【0043】図1は、データを見やすくするために一部
の実施例、比較例(実施例1,2,4,9,11及び1
5、並びに比較例1,3及び6)について温度と損失係
数の関係を整理したものであるが、本発明実施例では2
0〜120℃において良好な制振性能を有していること
が認められる。特に、(A1+A2)を20〜40%の
範囲内、(C1+C2)を50〜75%の範囲内で配合
したもの(実施例11、15)では、低温域から高温域
にわたり、0.1以上の損失係数が確保されており、優
れた制振性能が得られている。一方、比較例では低温域
及び/又は高温域における制振性能の劣化が著しいこと
がわかる。
【0044】
【発明の効果】本発明の樹脂複合型制振金属板によれ
ば、中間樹脂層を非相溶性の3種以上のポリエステルと
多価イソシアネート化合物との反応物からなる粘弾性樹
脂により形成したので、広い温度範囲で制振性能に優
れ、しかも高い接着強度をも具備しているので成形加工
性にも優れる。特に3種のポリエステルとして、請求項
2〜4の条件を満足するものを用いることにより、室温
から120℃に及ぶ高温までの広い温度範囲で優れた制
振性能が得られる。さらには、請求項5のように、導電
性物質を添加することにより、安定した抵抗溶接性をも
兼備するものとなる。従って、本発明の樹脂複合型制振
金属板は、広い温度範囲で良好な制振性能が要求され
る、例えば自動車のエンジン部品や汎用エンジンカバー
等の素材として好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例及び比較例の樹脂複合型制振鋼板におけ
る温度と損失係数との関係を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 十代田 哲夫 兵庫県加古川市金沢町1番地 株式会社神 戸製鋼所加古川製鉄所内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 2枚の金属板間に中間樹脂層を挟持して
    なる複合型制振金属板であって、前記中間樹脂層がポリ
    エステルおよび多価イソシアネート化合物との反応物で
    あり、このとき用いるポリエステルがガラス転移温度が
    異なり、かつ相溶性がない樹脂を3種類以上混合したも
    のであることを特徴とする広い温度範囲で制振性能に優
    れた樹脂複合型制振金属板。
  2. 【請求項2】 混合するポリエステルとして、ガラス転
    移温度が−40℃〜0℃の範囲内にあるポリエステル
    (A)と、ガラス転移温度が0℃〜20℃の範囲内にあ
    るポリエステル(B)と、ガラス転移温度が20℃〜1
    00℃の範囲内にあるポリエステル(C)とを用いる請
    求項1に記載した樹脂複合型制振金属板。
  3. 【請求項3】 ポリエステル(A)と、ポリエステル
    (B)と、ポリエステル(C)との混合割合が重量%
    で、A:20〜40%、B:5〜10%、C:50〜7
    5%である請求項2に記載した樹脂複合型制振金属板。
  4. 【請求項4】 ポリエステル(A)、ポリエステル
    (B)及びポリエステル(C)の内の1種以上が、その
    ポリエステルの属するガラス転移温度範囲内で異なるガ
    ラス転移温度を有し、かつ相溶性のない2品種以上のポ
    リエステルの混合樹脂である請求項2又は3に記載した
    樹脂複合型制振金属板。
  5. 【請求項5】 中間樹脂層に溶接性を付与するための導
    電性物質が含有されいる請求項1〜4のいずれか1項に
    記載した樹脂複合型制振金属板。
JP4725097A 1997-02-13 1997-02-13 広い温度範囲で制振性能に優れた樹脂複合型制振金属板 Pending JPH10226018A (ja)

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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2007013618A1 (ja) * 2005-07-29 2007-02-01 Toyo Boseki Kabushiki Kaisha 熱収縮性ポリエステル系フィルムおよびその製造方法
CN111823668A (zh) * 2020-06-30 2020-10-27 嘉峪关天源新材料有限责任公司 一种适应于较宽温度范围的减振板及制备方法

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