JPH10219414A - 高強度高延性タングステン合金の製造方法 - Google Patents

高強度高延性タングステン合金の製造方法

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JPH10219414A
JPH10219414A JP3442297A JP3442297A JPH10219414A JP H10219414 A JPH10219414 A JP H10219414A JP 3442297 A JP3442297 A JP 3442297A JP 3442297 A JP3442297 A JP 3442297A JP H10219414 A JPH10219414 A JP H10219414A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高強度高延性で強度と延性のバランスが
良好なタングステン合金を得る。 【解決手段】 Wを重量%で85〜98%含有し、残部
がNi,Feを主成分としたタングステン合金に、加工
強化・中間熱処理・再加工強化・後熱処理の処理を与え
る。 【効果】 延性の大幅な低下を招くことなく高強度
化することができ、強度、延性ともに優れたタングステ
ン合金が得られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、タングステン合金
を高強度化するとともに良好な延性が得られる高強度高
延性タングステン合金の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】W−
Fe−Ni合金は、タングステンの性質を利用して、高
強度で高延性の材料として、各種用途に使用されてい
る。この合金は、通常は、85〜98重量%のタングス
テンと、残部がバインダーとなるNiとFeからなる粉
末を調製、混合した後、CIP(冷間等方加工プレス)
などによって成形体とした後に、バインダーの液相線温
度以上に加熱して焼結することによって製造されてい
る。また、用途によっては、図3に示すように、さらに
強度を向上させるために、焼結合金にスエージング加工
などの冷間または温間の加工強化を行い、さらに所望に
よりその後、後熱処理を行っている。
【0003】しかし、上記の方法では、高強度化は可能
であるものの逆に延性が大きく低下するため、高い強度
とともに良好な延性が要求される用途では、上記処理が
施された合金は機械的性質としては不十分であるという
問題がある。本発明は、上記事情を背景としてなされた
ものであり、強度、延性ともに優れたタングステン合金
が得られる高強度高延性タングステン合金の製造方法を
提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
本発明のうち、第1の発明の高強度高延性タングステン
合金の製造方法は、Wを重量%で85〜98%含有し、
残部がNi,Feを主成分としたタングステン合金に、
加工強化・中間熱処理・再加工強化・後熱処理の処理を
与えることを特徴とする。
【0005】同じく第2の発明の高強度高延性タングス
テン合金の製造方法は、第1の発明において、加工強化
を加工率(断面減少率)8〜14%とした冷間または温
間(400〜600℃)加工により与え、かつ該加工強
化後の中間熱処理温度を1000〜1200℃とし、さ
らに再加工強化を加工率(断面減少率)16〜22%と
した冷間または温間加工により与え、かつ該再加工強化
後に後熱処理を施すことを特徴とする。
【0006】さらに、第3の発明の高強度高延性タング
ステン合金の製造方法は、第2の発明において、加工強
化と再加工強化の加工率(断面減少率)の合計が30%
以下であることを特徴とする。
【0007】なお、本発明が適用されるタングステン合
金は、W以外では、Ni、Feを主成分とするものであ
るから、W、Ni、Fe以外のその他の成分を少量含有
していてもよく、Co、Mn等の適宜の成分を加えるこ
とができる。また、上記タングステン合金は、通常は焼
結体として提供されるものであり、各成分粉末または合
金粉末により成形体を製作し、これを焼結することによ
り得られる。この際に使用される粉末としては、例えば
W粉末、その他の成分粉末ともに、3〜5μmとするの
が望ましい。これにより優れた強度と延性を得ることが
一層可能になる。但し、上記焼結体を含め、上記加工強
化等が施されるタングステン合金を得るまでの工程は適
宜選択可能であり、本発明として特にその内容が限定さ
れるものではない。
【0008】次に、上記タングステン合金に与えられる
加工強化および再加工強化に際しては、その加工の種別
は特に限定されず、加工強化と再加工強化において加工
の種別を変えることも可能である。加工種としては、例
えば、押抜き加工、スエージ加工等が採用される。ま
た、各加工は1回で行う他に複数パスで行ってもよく、
1回以上の回数で適宜のパス数が選択される。なお、加
工を温間加工で行う際には、通常は400〜600℃の
温度範囲内で行う。
【0009】なお、本系合金で最良の性能が得られる時
の例えば引張り破壊形態は、W粒のへき開破壊とマトリ
ックス相の延性破壊(デインプル模様を呈す)の混在で
ある。加工強化後、W粒の硬さを加工強化前の硬さまで
落とさず、かつマトリックス相を加工強化前の硬さレベ
ルまで落ちるような条件を選定して中間熱処理を施した
後、再加工強化を施すことにより、マトリックス相は、
その再加工強化の分だけ強化し、それに応じた十分な延
性を受けもつと同時に、W粒の方は、再加工強化前の状
態で既に強化されているため、その分だけ強度が増加す
る。その結果、主として引張強さはW粒の強度に支配さ
れ、引張り伸び(延性)はマトリックス相の延性に支配
されることから、常法に比べて、同じ延性レベルで比較
すると高強度となり、見方を変えて、同じ強度レベルで
比較すると高延性になる。本発明者らは従来例と異なる
図3に示す工程手順を採用することにより、優れた強度
および延性が確保されることを見出しており、さらに
は、以下の条件を定めることにより上記作用がより有効
に得られることも見い出している。
【0010】[各条件限定理由] (1)加工強化の加工率(8〜14%) 加工強化時に8%以上の加工率を与えないと、W粒に十
分な加工強化を与えられず、以降の工程の効果が十分に
得られない。また、加工率が14%を越えると、W粒の
変形が大きくなり過ぎて十分な延性が得られなくなる。
以上の理由で加工強化の加工率を8〜14%とするのが
望ましく、同様の理由でさらに加工率の上限を10%と
するのが一層望ましい。なお、本明細書では上記加工率
は、被加工材の断面減少率を意味しており、以下に記述
する加工率も全て同様である。
【0011】(2)中間熱処理温度(1000〜120
0℃) 上記加工強化後、マトリックス相の硬さレベルを加工強
化前と同等まで低下させるために、1000℃以上を必
要とし、かつW粒の硬さレベルを加工強化前より高いレ
ベルに確保するために1200℃以下であることが必要
とされる。したがって、中間熱処理温度として1000
〜1200℃が望ましいものとし、さらに同様の理由で
1050〜1150℃を一層望ましいものとした。な
お、上記作用を確実かつ効率的に得るためには、上記温
度範囲における中間熱処理の処理時間を8〜12時間と
するのが望ましい。
【0010】(3)再加工強化の加工率(16〜22
%) 被処理物の断面内の硬さ分布は、主に再加工強化時の加
工率に支配される。したがって、被処理物の断面内が均
一に加工され、結果として、硬さが分布を持たず均一に
なるためには再加工強化時の加工率を16%以上にする
必要がある。また、再加工強化時の加工率が22%を越
えると、W粒の変形が大きくなり過ぎ、十分な延性が得
られなくなる。以上の理由で再加工強化の加工率を16
〜22%とするのが望ましく、同様の理由でさらに加工
率の下限を18%、上限を20%とするのが一層望まし
い。
【0011】(4)加工強化と再加工強化の加工率の合
計(30%以下) 加工強化および再加工強化の加工率を上記範囲内に定め
た場合でも、両者の合計が30%を越えると、W粒への
変形力が大きくなり、上記と同様にW粒の変形が大きく
なって延性が低下する傾向がある。このため、それぞれ
の加工率の規定に加え、両者の合計を30%以下とする
のが望ましい。
【0012】(5)後熱処理 再加工強化後の合金のままでは、その機械的性質のバラ
ツキが大きいため、このバラツキをなくし、適切な強度
と延性のバランスが得られるように、再加工強化後、後
熱処理を施す。なお、上記作用を得るためには、後熱処
理温度を350℃以上とするのが望ましく、一方、10
00℃を越えると、強度が低下するため、後熱処理温度
は、目的の強度レベル、延性レベルに応じて350〜1
000℃の範囲内で選択するのが望ましい。また、後熱
処理による作用を十分かつ効率的に得るために、処理時
間は8〜12時間とするのが望ましい。なお、高強度側
を狙う場合に、強度と延性のバランスが最も良いのは3
50〜450℃の温度域で後熱処理を行う場合である。
上記温度範囲での後熱処理は、例えば、130kgf/
mm2以上の強度を必要とする場合に有効であり、この
場合にも10%以上の延性(引張伸び)が確保される。
また、低強度側でかつ延性の高いレベルを狙う場合に、
強度と延性のバランスが最も良いのは800〜1000
℃の温度域で後熱処理を行う場合である。この温度範囲
での加熱は、例えば17%以上(引張伸び)の延性を必
要とする場合に有効であり、この場合にも104〜12
8kgf/mm2の強度が確保される。
【0013】
【発明の実施の形態】以下に本発明の一実施形態を図1
のフローチャートを用いて説明する。常法により製造し
た平均粒径約5μmのW粉末93重量%と、平均粒径約
5μmのNiおよびFe粉末7重量%(ただし、Ni:
Fe重量比が7/3)とを混合し(工程P1)、これを
所定形状のゴム袋に充填して、静水圧成型によって圧縮
して、50mm径の棒状圧粉体を得る(工程P2)。こ
の圧粉体には必要に応じて機械加工を施し、次いで、予
備焼結(工程P3)、本焼結(工程P4)を行う。予備
焼結は、圧粉体を1300〜1400℃に加熱し、4時
間保持することにより行い、本焼結は、予備焼結後の圧
粉体を1460〜1550℃に加熱し、1時間保持して
行う。得られた焼結体には、1100℃×10時間の熱
処理を行い(工程P5)、その後、必要な機削りを冷間
で行う(工程P6)。その後、本発明における加工強化
法として押抜き加工を加工率8〜14%の範囲内で実施
し(工程P7)、その後、1000〜1200℃の範囲
内の温度で中間熱処理を施し(工程P8)、さらに再加
工強化法として、加工率16〜22%の範囲内でスエー
ジング加工を行い(工程P9)、その後、最後に350
〜1000℃の範囲内の温度で後熱処理を施す(工程P
10)。
【0014】
【実施例】上記実施形態に示す焼結体を使用して、加工
強化および再加工強化の加工率と、中間熱処理および後
熱処理の温度、時間を表1に示す条件に選定し、上記実
施形態と同様の手順により本発明の試験材(発明材)を
得た。また、比較のため、加工強化した後、直ちに後熱
処理を行ったもの(従来材に相当)と、上記加工率等の
条件を発明の範囲外としたものを比較材として用意し
た。上記により得られた発明材および比較材について引
張試験を行い、その引張強度と引張伸びを表1に合わせ
た示した。また、これら数値を両者の関係において図2
に示した。
【0015】
【表1】
【0016】表1及び図2から明らかなように、本発明
材は、比較材に比べて強度、伸びが高い傾向を有してお
り、例えば、同一強度であれば、本発明材は比較材より
も高い伸び(延性)を示し、同一の伸びであれば、本発
明材は比較材よりも高い強度を示している。したがっ
て、本発明法によれば、タングステン合金の強度、延性
が優れ、かつ両者が良好にバランスしていることが明ら
かになっている。
【0017】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の高強度高
延性タングステン合金の製造方法によれば、Wを重量%
で85〜98%含有し、残部がNi,Feを主成分とし
たタングステン合金に、加工強化・中間熱処理・再加工
強化・後熱処理の処理を与えるので、高い強度が得られ
るとともに良好な延性が確保され、高強度高延性のタン
グステン合金が得られる。
【0018】また、加工強化を加工率(断面減少率)8
〜14%とした冷間または温間加工により与え、かつ該
加工強化後の中間熱処理温度を1000〜1200℃と
し、さらに再加工強化を加工率(断面減少率)16〜2
2%とした冷間または温間加工により与え、かつ該再加
工強化後に後熱処理を施せば、上記効果がより確実にな
り、またその効果も増大する。さらに、加工強化と再加
工強化の加工率(断面減少率)の合計を30%以下とす
れば、良好な延性をより確実に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態におけるフローチャート
を示す図である。
【図2】 同じく実施例における引張強さと引張伸びを
示すグラフである。
【図3】 本発明法および従来法の概略フローチャート
を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C22F 1/00 685 C22F 1/00 685Z 686 686Z 687 687 691 691B 694 694A

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Wを重量%で85〜98%含有し、残部
    がNi,Feを主成分としたタングステン合金に、加工
    強化・中間熱処理・再加工強化・後熱処理の処理を与え
    ることを特徴とする高強度高延性タングステン合金の製
    造方法
  2. 【請求項2】 加工強化を加工率(断面減少率)8〜1
    4%とした冷間または温間加工により与え、かつ該加工
    強化後の中間熱処理温度を1000〜1200℃とし、
    さらに再加工強化を加工率(断面減少率)16〜22%
    とした冷間または温間加工により与え、かつ該再加工強
    化後に後熱処理を施すことを特徴とする請求項1記載の
    高強度高延性タングステン合金の製造方法
  3. 【請求項3】 加工強化と再加工強化の加工率(断面減
    少率)の合計が30%以下であることを特徴とする請求
    項2に記載の高強度高延性タングステン合金の製造方法
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WO2013084748A1 (ja) * 2011-12-07 2013-06-13 株式会社アライドマテリアル タングステン焼結合金
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