JPH10212262A - 2−ベンジルコハク酸化合物の光学分割方法 - Google Patents

2−ベンジルコハク酸化合物の光学分割方法

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JPH10212262A
JPH10212262A JP1944297A JP1944297A JPH10212262A JP H10212262 A JPH10212262 A JP H10212262A JP 1944297 A JP1944297 A JP 1944297A JP 1944297 A JP1944297 A JP 1944297A JP H10212262 A JPH10212262 A JP H10212262A
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Japan
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acid compound
benzylsuccinic acid
mixture
benzylsuccinic
solution
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JP1944297A
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English (en)
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Keisuke Matsuyama
恵介 松山
Kazutoshi Toyoda
和俊 豊田
Kazuto Yoshida
和人 吉田
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Nagase and Co Ltd
Original Assignee
Nagase and Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 医薬中間体などとして実用に供するに充分な
光学純度を有する光学活性な(S)-2-ベンジルコハク酸化
合物を効率的に高収率で得る方法を提供する。 【解決手段】 所定の構造式(I)により表される(S)-2-
ベンジルコハク酸化合物と(R)-2-ベンジルコハク酸化合
物との混合物から、(S)-2-ベンジルコハク酸化合物、ま
たは(R)-2-ベンジルコハク酸化合物を分離する、以下の
工程を包含する方法。工程(1)の溶液に含有される溶媒
が水とアルコール類との混合物であることを特徴とす
る。 (1) (S)-2-ベンジルコハク酸化合物と(R)-2-ベンジル
コハク酸化合物との混合物を含有する溶液に、(R)-1-フ
ェニルエチルアミンまたは(S)-1-フェニルエチルアミン
を添加して、ジアステレオマー塩を形成する工程; (2) ジアステレオマー塩を溶液から分離する工程;お
よび (3) 分離したジアステレオマー塩から(S)-2-ベンジル
コハク酸化合物または(R)-2-ベンジルコハク酸化合物を
遊離させる工程。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、(S)-2-ベンジルコ
ハク酸化合物と(R)-2-ベンジルコハク酸化合物との混合
物を特定のアミン化合物により光学分割し、医薬中間体
として許容される純度を有する(S)-2-ベンジルコハク酸
化合物または(R)-2-ベンジルコハク酸化合物を分離する
方法に関する。さらに詳細には、本発明は(S)-2-ベンジ
ルコハク酸を工業規模で分離し得る方法に関する。
【0002】
【従来の技術】光学活性な2-ベンジルコハク酸化合物
は、糖尿病治療剤として有用な光学活性な2-ベンジル-3
-(4-メチルピペリジニルカルボニル)プロピオン酸な
どを製造するための重要中間体として利用され得る。糖
尿病治療剤としての生理活性については、(S)-2-ベンジ
ル-3-(4-メチルピペリジニルカルボニル)プロピオン
酸が、ラセミ体の2-ベンジル-3-(4-メチルピペリジニ
ルカルボニル)プロピオン酸よりも有効であることが知
られている(特開平5-310693号を参照)。
【0003】従来、2-ベンジルコハク酸を光学分割して
光学純度の高い(S)-2-ベンジルコハク酸化合物を得る方
法としては、光学分割剤として1-フェニルエチルアミン
を用い、そして溶媒として水を用いる方法(Arkiv Kemi
Mineral Ged 26B No.11 (1948))が知られている。
【0004】しかし、この方法によってラセミ体の2-ベ
ンジルコハク酸を光学分割した場合に得られる(S)-2-ベ
ンジルコハク酸の光学純度は40%e.e.程度であり、9
8%e.e.以上の光学純度を得るためには、上記の方法に
よって生成した(S)-2-ベンジルコハク酸を多く含む混合
物に対して、さらに少なくとも2回以上の再結晶を行う
ことが必要であった。従って、98%e.e.以上の光学純
度を必要とする生理活性物質を製造するためには満足す
べき方法とは言い難い。
【0005】このような観点から、(S)-2-ベンジルコハ
ク酸化合物と(R)-2-ベンジルコハク酸化合物との混合物
から、光学純度の高い2-ベンジルコハク酸化合物をより
少ない工程で効率的に分離する方法が求められている。
特に、光学純度の高い(S)-2-ベンジルコハク酸を得るた
めの工業的規模で実施し得る効率的な方法が強く求めら
れている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記従来の
課題を解決するためになされたものであり、その目的と
するところは、医薬中間体として実用に供するに充分な
光学純度(98%e.e.以上、好ましくは99%e.e.以
上)を有する光学活性な(S)-2-ベンジルコハク酸化合物
を効率的に高収率で得る方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、以下の構造式
(I)により表される(S)-2-ベンジルコハク酸化合物と(R)
-2-ベンジルコハク酸化合物との混合物から、(S)-2-ベ
ンジルコハク酸化合物または(R)-2-ベンジルコハク酸化
合物を分離する、以下の工程を包含する方法において、
工程(1)の溶液に含有される溶媒が水とアルコール類と
の混合物であることを特徴とする、方法を提供する:
【0008】
【化4】
【0009】(ここで、R1、R2、R3は独立して、水
素、ハロゲン原子、低級アルキル基、および低級アルコ
キシ基からなる群から選択される) (1) (S)-2-ベンジルコハク酸化合物と(R)-2-ベンジル
コハク酸化合物との混合物を含有する溶液に、(R)-1-フ
ェニルエチルアミンまたは(S)-1-フェニルエチルアミン
を添加して、ジアステレオマー塩を形成する工程; (2) ジアステレオマー塩を溶液から分離する工程;お
よび (3) 分離したジアステレオマー塩から(S)-2-ベンジル
コハク酸化合物または(R)-2-ベンジルコハク酸化合物を
遊離させる工程。
【0010】本明細書において用いられる用語「ハロゲ
ン原子」とは、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素原子
を指し、用語「低級アルキル基」とは、1個〜6個の炭
素原子を有する、直鎖、分枝鎖、または環状のアルキル
基を指し、そして用語「低級アルコキシ基」とは、アル
キル部分が1個〜6個の炭素原子を有する直鎖、分枝
鎖、または環状のアルキル基を有するアルキルオキシ基
を指す。
【0011】一つの実施態様においては、本発明は、上
記の構造式(I)により表される(S)-2-ベンジルコハク酸
化合物と(R)-2-ベンジルコハク酸化合物との混合物か
ら、(S)-2-ベンジルコハク酸化合物を分離する、以下の
工程を包含する方法において、工程(1)の溶液に含有さ
れる溶媒が水とアルコール類との混合物であることを特
徴とする、方法を提供する: (1) (S)-2-ベンジルコハク酸化合物と(R)-2-ベンジル
コハク酸化合物との混合物を含有する溶液に、(R)-1-フ
ェニルエチルアミンを添加して、ジアステレオマー塩を
形成する工程; (2) ジアステレオマー塩を溶液から分離する工程;お
よび (3) 分離したジアステレオマー塩から(S)-2-ベンジル
コハク酸化合物を遊離させる工程。
【0012】別の実施態様においては、本発明は、上記
の構造式(I)により表される(S)-2-ベンジルコハク酸化
合物と(R)-2-ベンジルコハク酸化合物との混合物から、
(R)-2-ベンジルコハク酸化合物を分離する、以下の工程
を包含する方法であって、工程(1)の溶液に含有される
溶媒が水とアルコール類との混合物であることを特徴と
する、方法を提供する: (1) (S)-2-ベンジルコハク酸化合物と(R)-2-ベンジル
コハク酸化合物との混合物を含有する溶液に、(S)-1-フ
ェニルエチルアミンを添加して、ジアステレオマー塩を
形成する工程; (2) ジアステレオマー塩を溶液から分離する工程;お
よび (3) 分離したジアステレオマー塩から(R)-2-ベンジル
コハク酸化合物を遊離させる工程。
【0013】本発明においては、上記混合物はラセミ体
の混合物であり得る。また、上記の構造式においては、
1、R2、およびR3はそれぞれ水素であり得る。
【0014】上記混合物中の2-ベンジルコハク酸化合物
の分離されるべき光学異性体と、1-フェニルエチルアミ
ンとのモル比は、約1:1〜1:6の範囲内であり得
る。
【0015】上記工程(1)の溶液に含有される水とアル
コール類との容積比は、約1:4〜4:1の範囲内であ
り得る。好ましくは、上記アルコール類はメタノールで
ある。
【0016】本発明は、上記溶液から分離したジアステ
レオマー塩を、再結晶により精製する工程をさらに包含
し得る。好ましくは、上記再結晶に用いられる溶媒は、
水、アルコール類、およびこれらの混合物からなる群か
ら選択される。
【0017】本発明は、工程(3)で遊離させた2-ベンジ
ルコハク酸化合物を再結晶する工程をさらに包含し得
る。好ましくは、上記再結晶に用いられる溶媒は、水、
アルコール類、およびこれらの混合物から群から選択さ
れる。
【0018】
【発明の実施の形態】ラセミ体の2-ベンジルコハク酸化
合物は、以下の方法で製造することができる。すなわ
ち、マロン酸ジエチルと塩化ベンジルとを、メタノール
中のナトリウムエトキシドの存在下で縮合させることに
より、ベンジルマロン酸ジエチルを得る。このベンジル
マロン酸エステルに、ブロム酢酸エチルを反応させ、2-
ベンジル-2-エトキシカルボニルコハク酸ジエチルを得
る。次いで、Liebigs Ann.256,95(1890)に記載の方法に
従って、この2-ベンジル-2-エトキシカルボニルコハク
酸ジエチルをケン化し、そして脱炭酸させることによ
り、上記ラセミ体の2-ベンジルコハク酸が得られる。他
のラセミ体の2-ベンジルコハク酸化合物も上記と同様の
方法により製造し得る。
【0019】本発明に用いられる(S)-1-フェニルエチル
アミンおよび(R)-1-フェニルエチルアミンは市販品が容
易に入手可能である。
【0020】本発明の方法による2-ベンジルコハク酸化
合物の光学分割は、代表的には、以下の工程を経て達成
される。
【0021】なお、以下の工程は(S)-2-ベンジルコハク
酸化合物の光学分割について記載しているが、光学分割
剤を(R)-1-フェニルエチルアミンに代えて(S)-1-フェニ
ルエチルアミンを用いることにより、(R)-2-ベンジルコ
ハク酸化合物が同様に得られる。
【0022】まず、(S)-2-ベンジルコハク酸化合物と
(R)-2-ベンジルコハク酸化合物との混合物を、アルコー
ル類と水とを含有する適切な溶媒に溶解し、2-ベンジル
コハク酸化合物の溶液を調製する。アルコール類として
は、メタノール、エタノール、2-プロパノールなどが挙
げられる。メタノールが好ましい。このように、本発明
の方法によれば、上記溶媒をアルコール類と水との混合
溶媒とすることによって、水のみを溶媒とする場合と比
べて、顕著に高い光学純度の(S)-2-ベンジルコハク酸化
合物を容易に得ることができる。
【0023】得られる(S)-2-ベンジルコハク酸化合物の
光学純度という観点から、上記溶媒における水とアルコ
ール類との容積比は、好ましくは約1:5〜約5:1、
より好ましくは約1:4〜約4:1である。特にアルコ
ール類としてメタノールを用いる場合、上記容積比は好
ましくは約1:4〜約4:1、より好ましくは約2:1
〜約4:1、さらに好ましくは約1.5:1〜約3:1
である。メタノールに代えて他のアルコール類(例え
ば、エタノール、2-プロパノールなど)を用いた場合、
上記容積比の最適値が変化し得るが、当業者はかかる最
適値を容易に決定することができる。2-ベンジルコハク
酸化合物の上記構造式(I)におけるR1〜R 3として、そ
れぞれ水素に代えて種々の置換基を導入した場合におけ
る上記容積比の最適値についても同様である。
【0024】本発明において用いられる(S)-2-ベンジル
コハク酸化合物と(R)-2-ベンジルコハク酸化合物との混
合物の混合比は任意である。通常はラセミ体が用いられ
る。
【0025】(S)-2-ベンジルコハク酸化合物と(R)-2-ベ
ンジルコハク酸化合物との混合物の溶液を撹拌しなが
ら、この溶液に(R)-1-フェニルエチルアミンを添加し、
(S)-2-ベンジルコハク酸化合物と(R)-1-フェニルエチル
アミンとのジアステレオマー塩(以下、本明細書中にお
いては単に「ジアステレオマー塩」という)を形成させ
ることができる。
【0026】本発明において用いられる(R)-1-フェニル
エチルアミンの量は、混合物中に含まれる(S)-2-ベンジ
ルコハク酸化合物に対して約1.0〜約6.0モル当
量、好ましくは約2.0〜約5.0モル当量、さらに好
ましくは約3.5〜約4.5モル当量であり得る。
【0027】(S)-および(R)-2-ベンジルコハク酸化合物
に、(R)-1-フェニルエチルアミンを添加してジアステレ
オマー塩を形成する際の温度は、2-ベンジルコハク酸化
合物が溶解するに充分な温度であればよく、通常、撹拌
条件下で、常温〜約100℃、好ましくは、約30〜約95
℃、さらに好ましくは約50〜約75℃である。
【0028】このようにして得られたジアステレオマー
塩の溶液を適当な温度(例えば、5℃〜20℃)まで冷却
し、結晶を析出させる。必要に応じて、種晶を溶液に添
加して結晶を析出させる。析出した結晶を、通常の物理
的手段(例えば遠心ろ過、遠心分離など)によって溶液
から分離し、ジアステレオマー塩の結晶を得る。
【0029】このようにして得られたジアステレオマー
塩は、精製することなく次の工程に用いられ得るが、必
要に応じて、得られたジアスレオマー塩を再結晶により
精製し得る。再結晶に用いられ得る溶媒としては、水、
または有機溶媒(例えば、アルコール類、カルボン酸エ
ステル類)と水との混合物が挙げられる。精製効率の点
から、水が好ましい。通常、上記ジアステレオマー塩の
再結晶は1回で十分である。
【0030】このようにして得られたジアステレオマー
塩の結晶から、(S)-2-ベンジルコハク酸を通常の遊離方
法を用いて遊離させる。このような遊離方法としては、
例えば、(1)ジアステレオマー塩の結晶に酸を添加
し、遊離した(S)-2-ベンジルコハク酸化合物を適切な溶
媒を用いて抽出する方法がある。また、(2)ジアステ
レオマー塩の結晶に強塩基を添加し、遊離した(R)-1-フ
ェニルエチルアミンを除去し、次いで酸で処理し遊離し
た(S)-2-ベンジルコハク酸化合物を適切な溶媒を用いて
抽出するか、または析出した結晶を濾取する方法があ
る。さらに、(3)ジアステレオマー塩を酸性の水溶液
に添加し、遊離した(S)-2-ベンジルコハク酸化合物を抽
出することなく結晶として析出させる方法が挙げられ
る。
【0031】(1)の方法では、得られたジアステレオ
マー塩に酸(例えば、塩酸、硫酸などの鉱酸)を添加す
ることにより、ジアステレオマー塩から(S)-2-ベンジル
コハク酸化合物および(R)-1-フェニルエチルアミンのア
ンモニウム塩を生成させる。遊離した(S)-2-ベンジルコ
ハク酸化合物を、適切な溶媒(例えば、ジエチルエーテ
ル、酢酸エチル、クロロホルムなど)を用いて抽出する
ことにより、(S)-2-ベンジルコハク酸化合物を得る。
【0032】(2)の方法では、得られたジアステレオ
マー塩に強塩基(例えば、NaOH)を添加することによっ
て、ジアステレオマー塩から(S)-2-ベンジルコハク酸化
合物のナトリウム塩、および(R)-1-フェニルエチルアミ
ンを生成させる。生成した(R)-1-フェニルエチルアミン
を適切な溶媒(例えば、トルエン、ジエチルエーテル、
クロロホルムなど)を用いて除去する。次に、(S)-2-ベ
ンジルコハク酸化合物のナトリウム塩を含有する残渣に
酸(例えば、塩酸、硫酸など)を加えて(S)-2-ベンジル
コハク酸化合物を得る。
【0033】(3)の方法では、得られたジアステレオ
マー塩を塩酸、硫酸などの水溶液に添加することによ
り、ジアステレオマー塩から(S)-2-ベンジルコハク酸化
合物および(R)-1-フェニルエチルアミンのアンモニウム
塩を生成させる。遊離した(S)-2-ベンジルコハク酸化合
物をこの水溶液から結晶として析出させ、濾過して(S)-
2-ベンジルコハク酸化合物を得る。
【0034】上記の方法により得られた(S)-2-ベンジル
コハク酸化合物は、再結晶により精製し得る。再結晶に
用いられ得る溶媒としては、有機溶媒(例えば、アルコ
ール類、カルボン酸エステル類)と水との混合物が挙げ
られる。精製効率の点から、アルコール類(例えば、メ
タノール、エタノール、2-プロパノールなど)と水との
混合物が好ましい。
【0035】通常、上記(S)-2-ベンジルコハク酸化合物
の再結晶は1回で十分である。(S)-2-ベンジルコハク酸
化合物を再結晶することにより、(S)-2-ベンジルコハク
酸化合物を、より高い光学純度で得ることができる。
【0036】このようにして得られた(S)-2-ベンジルコ
ハク酸化合物は光学純度が極めて高いので、種々の生物
活性物質、特に医薬を製造するための中間体として有用
である。
【0037】本発明で用いられる(S)-2-ベンジルコハク
酸化合物と(R)-2-ベンジルコハク酸化合物との混合物は
ラセミ体に限定されず、この混合物の混合比は任意であ
る。例えば、ジアステレオマー塩を分離した後の溶液か
ら、(R)-2-ベンジルコハク酸化合物を多く含む2-ベンジ
ルコハク酸化合物を回収し、適切な方法でラセミ化する
ことにより、再度上記の光学分割工程に供し得る(S)-お
よび(R)-2-ベンジルコハク酸化合物の混合物が得られ
る。ラセミ化の方法としては、(R)-2-ベンジルコハク酸
化合物を多く含む2-ベンジルコハク酸化合物を塩基性溶
液(例えば、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム
水溶液)中で加熱する方法、および公知の方法によって
メチルエステル化した後、メタノール中のナトリウムメ
トキシドの存在下で加熱してラセミ化した後、加水分解
する方法が挙げられる。
【0038】さらに、酵素による光学分割、化学的不斉
合成法などにより得られた、(S)-および(R)-2-ベンジル
コハク酸化合物の一方を比較的多く含む混合物に本発明
の方法を実施することにより、目的とする光学異性体の
光学純度を容易により高くすることができる。
【0039】
【実施例】以下の実施例により、本発明をさらに詳細に
説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されな
い。実施例においては、2-ベンジルコハク酸の光学純度
は、下記の分析条件を用いる高速液体クロマトグラフィ
ー(以下、本明細書中で「HPLC」という)を用いて
測定した。光学純度の測定方法は、以下のHPLC法に
限定されず、他の公知の方法によって行い得る。
【0040】2-ベンジルコハク酸に対するHPLC条件 カラム ;CHIRALCEL OD(ダイセル化学工業社製) 移動相 ;ヘキサン:2-プロパノール:トリフルオロ酢
酸(95:5:0.3(容積比)) 流 速 ;1.0mL/分 検 出 ;UV,220nm カラム温度;常温(20〜25℃) また、実施例においては、以下に示される施光度を有す
る1-フェニルエチルアミン(山川薬品工業(株)製)を
用いた。
【0041】(R)-1-フェニルエチルアミン;[α]D=+4
0.2°(neat) なお、使用する1-フェニルエチルアミンの光学純度は、
得られる(S)-2-ベンジルコハク酸の光学純度を限定する
ことはない。従って1-フェニルエチルアミンの光学純度
によらず、実質的に光学的に純粋な2-ベンジルコハク酸
化合物を得ることが可能である。
【0042】(実施例1)(S)-2-ベンジルコハク酸と
(R)-2-ベンジルコハク酸とのラセミ体の混合物(14.8g,7
1.2mmol)を、撹拌しながらメタノール(22.5ml)と脱塩
水(52.5ml)との混合物に添加することにより、2-ベンジ
ルコハク酸の水溶液を調製した。得られた水溶液を65℃
まで加熱し、(R)-(+)-1-フェニルエチルアミン(17.3g,
142.3mmol)を滴下した。滴下終了後、溶液を徐々に38℃
まで冷却した。再び65℃まで加熱した後、2時間かけて
24℃まで冷却した。次いで、この混合物を22℃〜24℃で
2時間、撹拌しつづけた後、析出した結晶を濾取した。
濾過ケーキを脱塩水(15.0ml)で洗浄し、乾燥して、(S)-
2-ベンジルコハク酸と(R)-1-フェニルエチルアミンとの
ジアステレオマー塩(14.9g)を得た。得られたジアステ
レオマー塩の一部に希塩酸を添加し、遊離した(S)-2-ベ
ンジルコハク酸をジエチルエーテルで抽出し、溶媒を除
去し、HPLC分析したところ、(S)-2-ベンジルコハク酸の
光学純度は91.6%e.e.であった。
【0043】このジアステレオマー塩(14.7g)に、脱
塩水(20.0ml)および48%NaOH水溶液(6.80g)を添加
し、激しく撹拌して、(R)-1-フェニルエチルアミンを遊
離させた。遊離した(R)-1-フェニルエチルアミンをトル
エン(20ml×2)で抽出し、除去した。次いで、水溶液
に35%HCl水溶液(8.93g)および脱塩水(5.0ml)を添
加し、(S)-2-ベンジルコハク酸の結晶を析出させた。こ
の混合物を5℃まで冷却し、30分間撹拌し、結晶形態の
(S)-2-ベンジルコハク酸を濾取した。得られた(S)-2-ベ
ンジルコハク酸を脱塩水(10ml)で洗浄し、乾燥して、
(S)-2-ベンジルコハク酸の粗結晶(6.36g)を得た。得
られた粗結晶形態の(S)-2-ベンジルコハク酸の光学純度
は91.9%e.e.であった。
【0044】この粗結晶(5.63g)に、2-プロパノール(1
5.4ml)と脱塩水(32.8ml)とを添加し、50℃まで加熱して
結晶を溶解した。その後、1時間かけて24℃まで冷却
し、24℃で1時間撹拌した後、析出している結晶を濾取
した。得られた結晶を脱塩水8.00mlで洗浄し、乾燥して
(S)-2-ベンジルコハク酸(3.51g)を得た。得られた
(S)-2-ベンジルコハク酸の光学純度は99.6%e.e.で
あった。
【0045】
【発明の効果】本発明によって、医薬中間体などとして
実用に供するに充分な光学純度(98%e.e.以上、好ま
しくは99%e.e.以上)を有する光学活性な(S)-2-ベン
ジルコハク酸化合物を効率的に高収率で得る方法が提供
される。
【0046】本発明の大きな利点としては、最小限の精
製工程、例えば、必要に応じて高々1回の(S)-ベンジル
コハク酸の再結晶により、98%e.e.以上の極めて高い
光学純度を有する(S)-2-ベンジルコハク酸を得ることが
できることが挙げられる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C07C 59/64 C07C 59/64 // C07M 7:00

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 以下の構造式(I)により表される(S)-2-
    ベンジルコハク酸化合物と(R)-2-ベンジルコハク酸化合
    物との混合物から、(S)-2-ベンジルコハク酸化合物また
    は(R)-2-ベンジルコハク酸化合物を分離する、以下の工
    程を包含する方法において、工程(1)の溶液に含有され
    る溶媒が水とアルコール類との混合物であることを特徴
    とする、方法: 【化1】 (ここで、R1、R2、R3は独立して、水素、ハロゲン
    原子、低級アルキル基、および低級アルコキシ基からな
    る群から選択される) (1) (S)-2-ベンジルコハク酸化合物と(R)-2-ベンジル
    コハク酸化合物との混合物を含有する溶液に、(R)-1-フ
    ェニルエチルアミンまたは(S)-1-フェニルエチルアミン
    を添加して、ジアステレオマー塩を形成する工程; (2) 該ジアステレオマー塩を溶液から分離する工程;
    および (3) 該分離したジアステレオマー塩から(S)-2-ベンジ
    ルコハク酸化合物または(R)-2-ベンジルコハク酸化合物
    を遊離させる工程。
  2. 【請求項2】 以下の構造式(I)により表される(S)-2-
    ベンジルコハク酸化合物と(R)-2-ベンジルコハク酸化合
    物との混合物から、(S)-2-ベンジルコハク酸化合物を分
    離する、以下の工程を包含する方法において、工程(1)
    の溶液に含有される溶媒が水とアルコール類との混合物
    であることを特徴とする、方法: 【化2】 (ここで、R1、R2、R3は独立して、水素、ハロゲン
    原子、低級アルキル基、および低級アルコキシ基からな
    る群から選択される) (1) (S)-2-ベンジルコハク酸化合物と(R)-2-ベンジル
    コハク酸化合物との混合物を含有する溶液に、(R)-1-フ
    ェニルエチルアミンを添加して、ジアステレオマー塩を
    形成する工程; (2) 該ジアステレオマー塩を溶液から分離する工程;
    および (3) 該分離したジアステレオマー塩から(S)-2-ベンジ
    ルコハク酸化合物を遊離させる工程。
  3. 【請求項3】 以下の構造式(I)により表される(S)-2-
    ベンジルコハク酸化合物と(R)-2-ベンジルコハク酸化合
    物との混合物から、(R)-2-ベンジルコハク酸化合物を分
    離する、以下の工程を包含する方法であって、工程(1)
    の溶液に含有される溶媒が水とアルコール類との混合物
    であることを特徴とする、方法: 【化3】 (ここで、R1、R2、R3は独立して、水素、ハロゲン
    原子、低級アルキル基、および低級アルコキシ基からな
    る群から選択される) (1) (S)-2-ベンジルコハク酸化合物と(R)-2-ベンジル
    コハク酸化合物との混合物を含有する溶液に、(S)-1-フ
    ェニルエチルアミンを添加して、ジアステレオマー塩を
    形成する工程; (2) 該ジアステレオマー塩を溶液から分離する工程;
    および (3) 該分離したジアステレオマー塩から(R)-2-ベンジ
    ルコハク酸化合物を遊離させる工程。
  4. 【請求項4】 前記混合物がラセミ体の混合物である、
    請求項1から3のいずれかに記載の方法。
  5. 【請求項5】 R1、R2、およびR3がそれぞれ水素で
    ある、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
  6. 【請求項6】 前記混合物中の2-ベンジルコハク酸化合
    物の分離されるべき光学異性体と、1-フェニルエチルア
    ミンとのモル比が、約1:1〜1:6の範囲内である、
    請求項1から5のいずれかに記載の方法。
  7. 【請求項7】 工程(1)の溶液に含有される水とアルコ
    ール類との容積比が、約1:4〜約4:1の範囲内であ
    る、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
  8. 【請求項8】 前記アルコール類がメタノールである、
    請求項1から7に記載の方法。
  9. 【請求項9】 前記溶液から分離した前記ジアステレオ
    マー塩を、再結晶により精製する工程をさらに包含す
    る、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
  10. 【請求項10】 前記再結晶に用いられる溶媒が、水、
    アルコール類、およびこれらの混合物からなる群から選
    択される、請求項9に記載の方法。
  11. 【請求項11】 工程(3)で遊離させた2-ベンジルコハ
    ク酸化合物を再結晶する工程をさらに包含する、請求項
    1から10のいずれかに記載の方法。
  12. 【請求項12】 前記再結晶に用いられる溶媒が、水、
    アルコール類、およびこれらの混合物からなる群から選
    択される、請求項11に記載の方法。
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