JPH10209530A - 炭酸ガスレーザ発振器 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 発振器を大形化することなく、またレーザ出
力の低下を可及的に小さくすることができ、かつメンテ
ナンス周期の長い高速軸流形炭酸ガスレーザ発振器を提
供すること。 【解決手段】 電気絶縁材よりなる放電管１ａに、軸方
向に離間する陽極６ａと陰極５ａとからなる電極を配設
し、この電極間に直流高電圧を印加する炭酸ガスレーザ
発振器において、陰極５ａを円筒状とすると共に、円筒
状陰極５ａの陽極方向の端部から、陰極５ａの内方向に
なだらかに縮径する曲面状肩部を形成し、放電管１ａの
陰極側の内径を、陰極５ａの曲面状肩部の開口端の内径
よりも小さく形成したことを特徴としている。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、炭酸ガスレーザ発振器
に関する。

【０００２】

【従来の技術】炭酸ガスレーザ発振器は、レーザ共振器
内にＣＯ2 、Ｎ2 、Ｈｅ等の混合ガスを所定圧力で封入
し、これに高電圧を印加してグロー放電を発生させ、こ
の放電によってＣＯ2 分子から放出される光を光共振器
によって増幅して、エネルギー密度の高いレーザビーム
を得るものである。

【０００３】図３は、高速軸流形と呼ばれる方式の炭酸
ガスレーザ発振器の構造を示す、一部断面図である。同
図において１ａ，１ｂは石英や強化ガラス等の電気絶縁
材から形成された放電管、２は放電管１ａ，１ｂと同様
の材質から成る絶縁管、３ａ，３ｂは直流高圧電源、４
ａ，４ｂは放電管１ａ，１ｂと絶縁管２とを連結する導
電材から形成されたホルダ、５ａ，５ｂはホルダ４ａ，
４ｂ内に設けられた円筒形状の陰極、６ａ，６ｂは放電
管１ａ，１ｂ内に設けられた陽極であり、それぞれ直流
高圧電源３ａ，３ｂに連結される。なお、安全上各陽極
６ａ，６ｂは電気的に接地されている。

【０００４】放電管１ａのＸ1 側端部には全反射鏡７が
設けられると共に、放電管１ｂのＸ2 側端部には部分透
過鏡８が設けられている。９は作動ガスを循環させるた
めのブロア、１０ａは放電によって温度上昇したガスの
熱を除去するための電気的に接地された熱交換器、１０
ｂはブロア９の圧縮熱によって温度上昇したガスの熱を
除去するための熱交換器である。放電管１ａ、１ｂには
作動ガス循環用の配管１１ａ，１１ｂが連結され、配管
１１ａ，１１ｂの他端は熱交換器１０ｂに連結されてい
る。１３ａ，１３ｂはセラミック等の絶縁物から形成さ
れたホルダである。

【０００５】以上により構成される炭酸ガスレーザ発振
器において、陽極６ａと陰極５ａおよび陽極６ｂと陰極
５ｂとの間に夫々高電圧を印加することにより、陽極６
ａと陰極５ａおよび陽極６ｂと陰極５ｂとの間に夫々グ
ロー放電が発生する。他方、ＣＯ2 、Ｎ2 、Ｈｅ等から
成る作動ガスは夫々陽極６ａ，６ｂから陰極５ａ，５ｂ
に向かって符号１２で示す矢印の方向に高速で流され
る。このようにグロー放電を発生してレーザの励起が行
われ、全反射鏡７と部分透過鏡８との間で繰り返して増
幅された後、レーザ光１３が部分透過鏡８を透過して外
部に放出される。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】ところが、図３に示さ
れる従来の装置では、陰極と陽極間、即ち５ａー６ａ、
及び５ｂー６ｂ間のグロー放電によって発生したイオン
はそれぞれ陰極５ａ、５ｂにかかる電位傾度により加速
され高エネルギーとなって陰極５ａ，５ｂの表面に衝突
し、陰極物質がスパッタとして放出される。ここで従来
の要部拡大図４により、陰極５ａの近傍の放電状態を説
明する。

【０００７】図４において、１４ａはグロー放電の形状
を模式的に示している。絶縁材よりなるホルダ１３ａに
支持された放電管１ａと、導電材よりなるホルダ４ａに
支持された陰極５ａとは、軸方向に間隙を設けて配置さ
れる。一方陰極５ａは、内経が陽極側、即ちＸ1 方向側
に拡径するテーパ状に形成されている。さらにテーパ部
の開口端の内径は、絶縁材からなるホルダ１３ａの内径
よりも大きい円筒形状に形成されている。このため、陰
極５ａのテーパ終端部Ｐに電界の集中が起き、放電管内
を広がったグロー放電１４ａは、電流を増加しても、陰
極全体に広がることなく、陰極５ａのテーパ終端部Ｐに
集中する。ここで、放出されるスパッタの量は、陰極部
における放電電流密度にほぼ比例する。こうしてスパッ
タとして放出された陰極物質、例えばニッケルスパッタ
は発振器内部を高速で循環しているガス流によって下流
側へと流され、その一部は絶縁管２の内壁面に付着す
る。

【０００８】図３に示される装置では、スパッタが絶縁
管２の内面に付着するにつれて、絶縁管２の絶縁特性が
低下する。この絶縁管２の絶縁特性が低下すると、陰極
５ａと接地された熱交換器１０ａとの間に異常放電が起
こり、予期するグロー放電が得られなくなる。このた
め、放電管内におけるグロー放電が不安定になり、ひい
ては、レーザ出力が低下する。

【０００９】さらに、スパッタの一部が反射鏡７および
部分透過鏡８の内面に付着してレーザー出力を低下させ
ていた。このため、絶縁管１ａ，１ｂ，２、反射鏡７お
よび部分透過鏡８等を定期的に補修する必要があり、コ
スト高となっていた。

【００１０】また、絶縁管２の絶縁特性を維持する方法
として、絶縁管２のＸ方向の長さを長くすることが考え
られるが、発振器が大形化するという欠点があった。

【００１１】本発明の目的は、発振器を大形化すること
なく、またレーザ出力の低下を可及的に小さくすること
ができ、かつメンテナンス周期の長い高速軸流形炭酸ガ
スレーザ発振器を提供することである。

【００１２】

【課題を解決するための手段】本第１の発明は、電気絶
縁材よりなる放電管に、軸方向に離間する陽極と陰極と
からなる電極を配設し、両電極間に直流高電圧を印加す
る炭酸ガスレーザ発振器に適用される。その特徴とする
ところは、陰極を円筒状とすると共に、円筒状陰極の陽
極方向の端部側に該端部から陰極の内方向になだらかに
内径が縮径する曲面状肩部を形成し、放電管の端部を支
持する電気絶縁材よりなる絶縁ホルダの端部と陰極の曲
面状肩部の開口端部とを軸方向に実質的に突き合わせ、
かつ放電管の端部の内径を、陰極の曲面状肩部の開口端
の内径よりも小さく形成したことである。

【００１３】本第２の発明は、電気絶縁材よりなる放電
管に、軸方向に離間する陽極と陰極とからなる電極を配
設し、両電極間に直流高電圧を印加する炭酸ガスレーザ
発振器に適用される。その特徴とするところは、陰極を
円筒状とすると共に、円筒状陰極の両端部に該両端部か
ら陰極の内方向になだらかに内経が縮径する曲面状肩部
を形成し、放電管の端部を支持する電気絶縁材よりなる
絶縁ホルダの端部と陰極の陽極方向の曲面状肩部の開口
端部とを軸方向に実質的に突き合わせ、かつ絶縁ホルダ
の陰極側端部の内径を陰極の陽極側肩部の開口端の内径
よりも小さく形成したことである。

【００１４】

【発明の実施の形態】以下、本発明を図示の実施例によ
り、詳細に説明する。図１は、本発明の実施例の要部拡
大図であって、図４に相当する図である。なお、図４と
同じ構成部品には、同じ符号を付してある。図１におい
て、陰極５ａはその円筒部の内径が陽極側、即ち図のＸ
1 方向側に内側に向かってなだらかに縮径する曲面状肩
部が形成されている。さらに、陰極５ａの内径は、放電
管１ａの内径より小さい方が、レーザ光の共振領域を制
限して、レーザビームのモード形状が好転するので望ま
しい。

【００１５】レーザ発振器の稼動は、従来装置、即ち図
３に示された装置と同様であって、ブロア９により作動
ガスを循環させるとともに、電極５ａ−６ａおよび５ｂ
−６ｂ間に高電圧を印加してグロー放電を発生させる。
ところで、図１に示されるごとく、陰極５ａの陽極側開
口部にはなだらかな曲面状肩部を有し、かつ陽極側端部
の内径が絶縁材よりなるホルダ１３ａの内径よりも大き
く、またホルダ１３ａの端部と陰極５ａの端部とは軸方
向に実質的に間隙を有しないため、陰極端の電界集中が
緩和される。この結果、グロー放電１４ａは陰極５ａの
曲面状部に広がって発生する。

【００１６】すなわち、グロー放電１４ａは、陰極５ａ
全体に広がって発生するため、陰極部における、グロ−
放電の集中がさけられることになる。

【００１７】このように、陰極部におけるグロ−放電の
密度の低下により、放出されるスパッタの量が大幅に減
少した。このため、絶縁管２の内壁に付着するスパッタ
の量は、著しく低減される。この結果、絶縁管２の絶縁
特性の低下を防ぐことができ、異常放電が起こりにく
く、レーザ出力の低下の度合いが極めて遅くなる。

【００１８】勿論、スパッタ量が著しく低減することに
より、絶縁管１ａ，１ｂ，２、反射鏡７および部分透過
鏡８等の補修周期が長くなるため、補修費用を低減する
ことができる。さらに絶縁管２のＸ方向の長さを長尺に
する必要がなく、レーザ発振器を小型化することができ
る。

【００１９】図２は、本発明の他の実施例を示したもの
で、図１に示された実施例につけ加えて陰極５ａは、そ
の円筒部の内径が絶縁管２側、即ち図２のＸ2 方向側に
も内側に向かってなだらかに縮径する曲面状肩部が形成
されている。さらに、陰極５ａの内径は、放電管１ａの
内径より小さい方が、レーザ光の共振領域を制限して、
レーザビームのモード形状が好転するので望ましい。こ
の場合も、陰極部におけるグロ−放電の密度の低下によ
り、放出されるスパッタの量を大幅に低減させることが
できた。

【００２０】以上の説明は、ガス流の方向を陽極から陰
極に流した場合を示したが、陰極から陽極へガスを流す
こともできる。また、陰極の内径を放電管の内径よりも
大きくしても、モード形状が悪化することとなるが、ス
パッタの量を低減させることに関して実効がある。

【００２１】

【発明の効果】以上の説明で明らかなように、本発明に
よれば、円筒状陰極の陽極方向の端部から、陰極の内方
向になだらかに縮径する曲面状肩部を形成し、かつ放電
管の陰極側の内径を、前記曲面状肩部の開口端の内径よ
りも小さく形成することにより、グロー放電の陰極面上
での集中が緩和される結果、陰極５ａ、５ｂの表面から
放出されるスパッタが、著しく低減され、絶縁管の絶縁
特性の低下を防ぐことができ、異常放電が起こりにく
く、レーザ出力の低下の度合いが極めて遅くなる。勿
論、スパッタ量が著しく低減することにより、絶縁管、
反射鏡および部分透過鏡等の補修周期が長くなるため、
補修費用を低減することができる。さらに絶縁管のＸ方
向の長さを長尺にする必要がなく、レーザ発振器を小型
化することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施例の要部拡大断面図

【図２】本発明の他の実施例の要部拡大断面図

【図３】従来例を示す一部断面正面図

【図４】図３の要部拡大断面図

【符号の説明】

１ａ 放電管 ３ａ 直流高圧電源 ４ａ ホルダ ５ａ 陰極 ６ａ 陽極

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 電気絶縁材よりなる放電管に、軸方向に
   離間する陽極と陰極とからなる電極を配設し、前記両電
   極間に直流高電圧を印加する炭酸ガスレーザ発振器にお
   いて、前記陰極を円筒状とすると共に、前記円筒状陰極
   の前記陽極方向の端部側に該端部から陰極の内方向にな
   だらかに内径が縮径する曲面状肩部を形成し、前記放電
   管の端部を支持する電気絶縁材よりなる絶縁ホルダの端
   部と前記陰極の曲面状肩部の開口端部とを軸方向に実質
   的に突き合わせ、かつ前記放電管の端部の内径を、前記
   陰極の曲面状肩部の開口端の内径よりも小さく形成して
   なる炭酸ガスレーザ発振器。
2. 【請求項２】 電気絶縁材よりなる放電管に、軸方向に
   離間する陽極と陰極とからなる電極を配設し、前記両電
   極間に直流高電圧を印加する炭酸ガスレーザ発振器にお
   いて、前記陰極を円筒状とすると共に、前記円筒状陰極
   の両端部に該両端部から陰極の内方向になだらかに内径
   が縮径する曲面状肩部を形成し、前記放電管の端部を支
   持する電気絶縁材よりなる絶縁ホルダの端部と前記陰極
   の陽極方向の曲面状肩部の開口端部とを軸方向に実質的
   に突き合わせ、かつ前記絶縁ホルダの陰極側端部の内径
   を前記陰極の陽極側肩部の開口端の内径よりも小さく形
   成してなる炭酸ガスレーザ発振器。
3. 【請求項３】 前記陰極の円筒部の内径が、前記放電管
   の内径よりも小さく形成してなる請求項１または請求項
   ２に記載の炭酸ガスレーザ発振器。