JPH10180179A - 分子膜の製造方法および製造装置 - Google Patents

分子膜の製造方法および製造装置

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JPH10180179A
JPH10180179A JP9301527A JP30152797A JPH10180179A JP H10180179 A JPH10180179 A JP H10180179A JP 9301527 A JP9301527 A JP 9301527A JP 30152797 A JP30152797 A JP 30152797A JP H10180179 A JPH10180179 A JP H10180179A
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Japan
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substrate
solution
coating solution
roll
molecular film
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JP9301527A
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English (en)
Inventor
Tadashi Otake
忠 大竹
Norihisa Mino
規央 美濃
Yukio Nomura
幸生 野村
Toru Nakagawa
徹 中川
Kazufumi Ogawa
小川  一文
Sanemori Soga
眞守 曽我
Yasuo Takebe
安男 武部
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Panasonic Holdings Corp
Original Assignee
Matsushita Electric Industrial Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】少なくともシラン系化合物と溶媒からなる溶液
を用いて基材とシラン系化合物間で脱離反応を起こさせ
てシロキサン結合を形成し、基材上に膜厚1μm以下
0.1nm以上の範囲の分子膜を形成する。 【解決手段】表面に活性水素を有する基材(2)の表面
に、例えばクロロシラン系化合物を含む塗布溶液を塗布
し、基材表面の活性水素と前記シラン系化合物のクロル
基との間で脱塩化水素反応を起こさせ、基材表面にシラ
ン系化合物を共有結合させる分子膜の製法において、低
水蒸気濃度雰囲気状態に保持されているチャンバー(11)
内に、前記基材を送り込み、転写装置(6,7)を用いて、
前記基材の表面にシラン系化合物と溶媒とを含む塗布溶
液を塗布し、前記基材表面の活性水素と前記シラン系化
合物のクロル基との間で脱塩化水素反応を起こさせ、そ
の後チャンバー内または外で前記塗布後の未反応塗布溶
液を除去する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、シラン系化合物を
シロキサン結合を介して基材表面に共有結合させた分子
膜を製造する方法およびその製造装置に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】アルキル基もしくはフルオロアルキル基
を含む分子の末端にクロロシリル基を有するクロロシラ
ン系化合物を、表面に活性水素を有するガラス等の表面
に塗布し、脱塩化水素反応により共有結合させて分子膜
を形成することはすでに提案されている。
【0003】従来の技術としては、クロロシラン系化合
物を含む塗布溶液に、基材を浸漬する方法がある(特開
平1−70917号公報,EP 0492545A)。
別の例としては、クロロシラン系化合物を気体で基材表
面に接触させ、反応させる方法も提案されている。また
アルコキシシラン系化合物を用いる場合、水溶液にして
加水分解させてコーティング膜を形成する方法が提案さ
れている(東京都立工業センター研究報告第22号57
〜60頁(1993年))。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
浸漬法は、被膜形成物が平板でなく異型の場合は表面に
沿って液が反応するために異型表面に膜形成が可能で優
れた方法であるといえるが、浸漬用の液量が多くなくて
はならず、基材の出し入れ操作が必要で、操作が繁雑に
なり操作時間も長く、結果としてコストが高くなるとい
う問題があり、また、クロロシラン系化合物は水分と反
応しやすいため、ポットライフが短いという問題があ
る。さらに、浸漬法では基材全体にクロロシラン系化合
物が接触し反応するため、クロロシラン系化合物を塗布
したくない面がある場合、不都合になる。
【0005】また、クロロシラン系化合物を気体で基材
表面に接触させ、反応させる方法は、均一に分子膜を形
成することが困難であるという問題がある。同様の問題
はアルコキシシラン系化合物やイソシアネートシラン系
化合物でも起こる。またアルコキシシラン系化合物の水
溶液を使用する場合は、厚膜となり、膜厚のむらが生じ
やすい。これはイソシアネートシラン系化合物も同じで
ある。
【0006】本発明は、前記従来の問題を解決するた
め、成膜に必要な液量を少なくし、塗布溶液のポットラ
イフに気を使うことを必要とせず、基材の操作を容易に
し、全体としてコストの安い分子膜の製造方法および膜
の製造装置を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するた
め、本発明の分子膜の製造方法は、表面に活性水素を有
する基材の表面に、少なくともクロル基、アルコキシ基
及びイソシアネート基から選ばれる少なくとも一つの反
応基を持つシラン系化合物を含む塗布溶液を塗布し、基
材表面の活性水素と前記シラン系化合物の反応基との間
で脱離反応を起こさせ、基材表面にシラン系化合物を共
有結合させる分子膜の製造方法において、低水蒸気濃度
雰囲気状態に保持されているチャンバー内に、前記基材
を送り込み、転写装置を用いて、前記基材の表面にシラ
ン系化合物と溶媒とを含む塗布溶液を塗布し、前記基材
表面の活性水素と前記シラン系化合物の反応基との間で
脱離反応を起こさせ、その後チャンバー内または外で前
記塗布後の未反応塗布溶液を除去することを特徴とす
る。
【0008】前記においてシラン系化合物としてクロロ
シラン化合物を用いた場合は脱離反応として脱塩化水素
反応が起こり、アルコキシシラン化合物を用いた場合は
脱離反応として脱アルコール反応が起こる。
【0009】前記方法においては、さらに転写装置の少
なくとも塗布溶液部分周囲を覆う内側チャンバーを備え
たことが好ましい。これにより、塗布溶液中のシラン系
化合物の加水分解をさらに防ぐことができる。
【0010】また前記方法においては、前記チャンバー
の前記基材の入り口及び出口を、外気と仕切るためのエ
アーカーテンを備えたことが好ましい。これにより、塗
布溶液中のシラン系化合物の加水分解をさらに防ぐこと
ができる。
【0011】また前記方法においては、転写手段が、塗
布溶液を支持体上に展開する工程と、上記支持体上に展
開した溶液を膜形成を必要とする基材上に写し取る工程
からなることが好ましい。基材上に均一に塗布液をコー
ティングするためである。
【0012】また前記方法においては、転写手段がロー
ルコート手段であることが好ましい。もっとも安価に塗
布できるからである。また、基材の幅が例えば1〜10
mのような広いものであっても処理できる。
【0013】また前記方法においては、シラン系化合物
が、アルキル基もしくはフルオロアルキル基を含むこと
が好ましい。とくにフルオロアルキル基を含むと、撥水
性、撥油性、防汚性等が向上し好ましい。
【0014】また前記方法においては、溶媒が活性水素
を有さない溶媒であることが好ましい。活性水素を有す
る溶媒であると、シラン系化合物と反応してしまうから
である。
【0015】また前記方法においては、前記活性水素を
有さない溶媒が、炭化水素化合物、シロキサン系化合
物、及びハロゲン化炭化水素から選ばれる少なくとも一
つであることが好ましい。
【0016】また前記方法においては、塗布溶液のシラ
ン系化合物と溶媒の混合比が、シラン系化合物の存在
量:0.05〜20重量%の範囲であり、かつ塗布溶液
の動粘度が0.5〜5000cst(at 25℃)の範
囲であることが好ましい。ロールコートに適するからで
ある。
【0017】また前記方法においては、基材が板ガラス
であり、塗布溶液の塗布面と反対側の面をあらかじめ樹
脂フィルムでマスクしておくことが好ましい。マスク無
しの場合でも塗料の非塗布面はシラン系化合物との反応
はそれ程起こらないが、マスクをすることにより、完全
に非塗布面の保護ができる。
【0018】次に本発明の分子膜の製造装置は、チャン
バー内に、入り口から出口まで基材を移送する装置と、
前記基材の表面にシラン系化合物と溶媒とを含む塗布溶
液を塗布するための転写装置と、前記チャンバー内を低
水蒸気濃度雰囲気状態に保持する装置とを含み、前記チ
ャンバーの中または外に塗布後の未反応塗布溶液を除去
する装置を備えたことを特徴とする。
【0019】前記装置においては、さらに転写装置の少
なくとも塗布溶液部分周囲を覆う内側チャンバーを備え
たことが好ましい。また前記装置においては、前記チャ
ンバーの前記基材の入り口及び出口を、外気と仕切るた
めのエアーカーテンを備えたことが好ましい。
【0020】また前記装置においては、低水蒸気濃度雰
囲気状態を保持する装置が、水蒸気濃度範囲で0kg/
3 以上0.0076kg/m3 以下のガスを導入する
装置であることが好ましい。
【0021】また前記装置においては、転写装置が、塗
布溶液を支持体上に展開する工程と、上記支持体上に展
開した溶液を膜形成を必要とする基材上に写し取る工程
からなることが好ましい。
【0022】また前記装置においては、転写装置がロー
ルコート装置であることが好ましい。また前記装置にお
いては、内側チャンバー内に、さらに低水蒸気濃度気体
を供給する手段を設けたことが好ましい。
【0023】また前記装置においては、前記支持体上へ
の塗布溶液の展開が、溶液の支持体上への滴下、支持体
の溶液中への浸漬、溶液、蒸気または溶液の霧の支持体
への接触による支持体表面への溶液の付着であることが
好ましい。
【0024】また前記装置においては、前記ロールコー
ト装置が、塗布溶液を展開するためのドクターロール
と、基材に塗布溶液を均一厚さに塗布するためのコーテ
ィングロールと、基材の裏から基材を押圧するためのバ
ックアップロールとから少なくとも構成されることが好
ましい。
【0025】また前記装置においては、前記ロール周辺
の水蒸気濃度を前記数値範囲内で管理する箇所が、少な
くとも前記ロール表面に前記溶液が付着するまたは滞留
する部分を含む空間であることが好ましい。
【0026】また前記装置においては、前記基材表面か
ら未反応塗布溶液を除去する装置が、気体の吹き付け、
加温蒸発除去、減圧蒸発除去、気体による吹き飛ばし除
去、及び液体による洗浄除去から選ばれる少なくとも一
つの装置であることが好ましい。
【0027】前記した通り、本発明方法及び装置によれ
ば、成膜に必要な液量を少なくし、塗布溶液のポットラ
イフに気を使うことを必要とせず、基材の操作を容易に
し、全体としてコストの安い分子膜の製造方法および膜
の製造装置を提供するができる。
【0028】
【発明の実施の形態】本発明においては、基材とシラン
系化合物間でシロキサン結合を形成し、基材上に形成さ
れた膜厚0.1nm以上1μm以下の範囲の分子膜を得
るものである。
【0029】ここで、前記シラン系化合物とはアルキル
基もしくはフルオロアルキル基を含む化合物であること
が好ましい。フルオロアルキル基を有する化合物の具体
例として、ヘプタデカフルオロ1,1,2,2テトラヒ
ドロデシルトリクロロシラン等の一般化学式Cn
2n+1(CH2)2SiCl3 (nは1〜30の正の整数)で
示されるフルオロアルキルシラン化合物が利用可能であ
る。
【0030】また、前記クロロシラン系化合物を溶解す
る溶媒としては、クロロシラン系化合物と反応する活性
水素を持たない溶媒であればよい。たとえば、上記フル
オロアルキルシラン化合物に対しては炭化水素系溶媒、
ハロゲン化炭化水素系溶媒、アルキルシロキサン系溶
媒、シリコーンオイル溶媒などが上げられる。その具体
例をそれぞれの溶媒に対して示すと炭化水素系溶媒とし
てはテルペン油等の一般化学式Cn2n+2(nは正の整
数)またはCn2nなどで示される石油類の溶媒で、ハ
ロゲン化炭化水素系溶媒としてはオクタデカフルオロオ
クタン等の一般化学式Cn2n-m+2m(nは正の整数、
mは正の整数、Xはハロゲン)で示される溶媒である。
アルキルシロキサン系溶媒としてはヘキサメチルジシロ
キサン等のR 1(R23SiO)n4(nは正の整数、
1 ,R2 ,R3 ,R4 はアルキル基)で示される直鎖状
シリコーン溶媒またはオクタメチルシロキサン等の一般
化学式(R12SiO)n(nは正の整数、R1 ,R2
アルキル基)で標記される環状シリコーン溶媒、または
これらを任意に混合したものが好ましい。
【0031】上記のクロロシラン系化合物を含む溶液を
基材表面に写し取る方法としては、ロールコート法やパ
ッド印刷法等が上げられる。いずれの方法においてもロ
ール上、パッド上、基板上など溶液が存在する状態とな
る箇所は、水蒸気濃度で0kg/m3 以上0.0076
kg/m3 以下の範囲に保持することが好ましい。
【0032】本発明で用いることができる化学吸着剤と
しては、下記のものを例示することができる。 (1) CH3(CH2rSiXpCl3-p (2) CH3(CH2sO(CH2tSiXpCl3-p (3) CH3(CH2u−Si(CH32(CH2v−S
iXpCl3-p (4) CF3COO(CH2wSiXpCl3-p 但し、pは0〜2の整数、rは1〜25の整数、sは0
〜12の整数、tは1〜20の整数、uは0〜12の整
数、vは1〜20の整数、wは1〜25の整数を示す。
また、Xは、水素、アルキル基、アルコキシル基、含フ
ッ素アルキル基または含フッ素アルコキシ基である。
【0033】さらに、具体的な吸着化合物として下記に
示す(5)-(11)が挙げられる。 (5) CH3CH2O(CH215SiCl3 (6) CH3(CH22Si(CH32(CH215Si
Cl3 (7) CH3(CH26Si(CH32(CH29 Si
Cl3 (8) CH3COO(CH215SiCl3 (9) CF3(CF27−(CH22−SiCl3 (10) CF3(CF25−(CH22−SiCl3 (11) CF3(CF27−C64−SiCl3 また、上記クロロシラン系の化学吸着剤の代わりに、全
てのクロロシリル基をイソシアネート基に置き換えたイ
ソシアネート系の化学吸着剤、例えば下記に示す(12)-
(16)を用いてもよい。 (12) CH3−(CH2rSiXp(NCO)3-p (13) CF3−(CH2rSiXp(NCO)3-p (14) CH3(CH2sO(CH2tSiXp(NCO)
3-p (15) CH3(CH2u−Si(CH32(CH2v−S
iXp(NCO)3-p (16) CF3 COO(CH2wSiXp(NCO)3-p 但し、p、r、s、t、u、v、wおよびXは、前記と
同様である。
【0034】前記の吸着剤に代えて、下記(17)-(23)に
具体的に例示する吸着化合物を用いてもよい。 (17) CH3CH2O(CH215Si(NCO)3 (18) CH3(CH22Si(CH32(CH215Si
(NCO)3 (19) CH3(CH26Si(CH32(CH29Si
(NCO)3 (20) CH3COO(CH215Si(NCO)3 (21) CF3(CF27−(CH22−Si(NCO)3 (22) CF3(CF25−(CH22−Si(NCO)3 (23) CF3(CF27−C64−Si(NCO)3 また、化学吸着剤として、一般に、SiXk(OA)4-k
(Xは、前記と同様、Aはアルキル基、kは0、1、2
または3)で表される物質を用いることが可能である。
中でも、CF3−(CF2n−(R)q−SiXp(O
A)3-p(nは1以上の整数、好ましくは1〜22の整
数、Rはアルキル基、ビニル基、エチニル基、アリール
基、シリコンもしくは酸素原子を含む置換基、qは0ま
たは1、X、Aおよびpは前記と同様)で表される物質
を用いると、よりすぐれた防汚性の被膜を形成できる
が、これに限定されるものではなく、これ以外にも、C
3−(CH2r−SiXp(OA)3-pおよびCH3
(CH2s−O−(CH2t−SiXp(OA)3-p、C
3−(CH2u−Si(CH32−(CH2v−Si
p(OA)3-p、CF3COO−(CH2w−SiX
p(OA)3-p(但し、p、r、s、t、u、v、w、X
およびAは、前記と同様)などが使用可能である。
【0035】さらに、より具体的な化学吸着剤として
は、下記に示す(24)-(47)を挙げることができる。 (24) CH3CH2O(CH215Si(OCH33 (25) CF3CH2O(CH215Si(OCH33 (26) CH3(CH22Si(CH32(CH215Si
(OCH33 (27) CH3(CH26Si(CH32(CH29Si
(OCH33 (28) CH3COO(CH215Si(OCH33 (29) CF3(CF25(CH22Si(OCH33 (30) CF3(CF27−C64−Si(OCH33 (31) CH3CH2O(CH215Si(OC253 (32) CH3(CH22Si(CH32(CH215Si
(OC253 (33) CH3(CH26Si(CH32(CH29Si
(OC253 (34) CF3(CH26Si(CH32(CH29Si
(OC253 (35) CH3COO(CH215Si(OC253 (36) CF3COO(CH215Si(OC253 (37) CF3COO(CH215Si(OCH33 (38) CF3(CF29(CH22Si(OC253 (39) CF3(CF27(CH22Si(OC253 (40) CF3(CF25(CH22Si(OC253 (41) CF3(CF2764Si(OC253 (42) CF3(CF29(CH22Si(OCH33 (43) CF3(CF25(CH22Si(OCH33 (44) CF3(CF27(CH22SiCH3(OC
252 (45) CF3(CF27(CH22SiCH3(OCH3
2 (46) CF3(CF27(CH22Si(CH3)2OC25 (47) CF3(CF27(CH22Si(CH3)2OCH3
【0036】
【実施例】以下に本発明の膜の製造方法および膜の製造
装置の具体的実施例を説明する。 《実施例1》ここでは本発明の膜の製造方法に則した膜
の製造装置の一つであるロールコート成膜装置を例に用
いて膜の製造方法並びに膜の製造装置を説明する。ま
た、それ以外の方法についても随時説明する。
【0037】図1は本発明の膜の製造方法に則した膜の
製造装置の一つであるロールコート成膜装置の概略構成
図である。このロールコート成膜装置1は、基材2を挿
入口3からチャンバー11内に導入し、出口4から膜形
成基材5を吐出する構成になっている。装置内部にはド
クターロール6、コーティングロール7、搬送ロール
8、クロロシラン系溶液を滴下させるノズル9、規定の
水蒸気濃度にしたガス(乾燥窒素ガス)を供給するノズ
ル10、規定の水蒸気濃度雰囲気を維持するためのチャ
ンバー11である。
【0038】クロロシラン系溶液を滴下させるノズル9
に上記溶液を供給するためのクロロシラン系溶液の備蓄
ボトル、クロロシラン系溶液を供給するポンプ、供給パ
イプおよび廃液を回収するためのボトル、廃液回収受け
具ならびに廃液回収パイプが具備されているが、煩雑な
ため図中からは省略した。
【0039】上記のロールコート成膜装置において、コ
ーティングロール7はドクターロール6に接触または押
しつけられた構成となっており、この両ロールの接触部
分にクロロシラン系化合物と溶媒からなる溶液を供給
し、コーティングロール7を回転させることにより、コ
ーティングロール7の円筒部分表面に溶液が展開する。
このコーティングロール7を基材2表面に接触または押
しつけて回転させることにより、このコーティングロー
ルの円筒部分表面の溶液が基材表面に写し取られる。溶
液を写し取った基材は搬送ロール8でロールコート成膜
装置出口4に送られるが、その間も規定の水蒸気濃度に
保持したガス(乾燥窒素ガス)が供給されており、その
間に膜形成に寄与しなかった溶液または溶媒が自然蒸発
により除去される。
【0040】以上のような操作において基材上でどのよ
うな反応が行われているかを説明する。クロロシラン系
化合物としてヘプタデカフルオロ1,1,2,2テトラ
ヒドロデシルトリクロロシランを用い、溶媒としてオク
タメチルシクロテトラシロキサンを用いた。クロロシラ
ン系化合物の濃度は1vol.%溶液とした。コーティング
ロール7とドクターロール6の接点上にノズル9を設置
し、上記ノズルより上記溶液を滴下し、上記コーティン
グロールの回転により上記コーティングロールの円筒部
分表面に均一に溶液を展開させた。この上記溶液が存在
する空間、すなわち上記ドクターロールと上記コーティ
ングロール及び上記ノズルがある部分にはカバーがなさ
れ、その内部に乾燥窒素ガスが供給され、上記空間の水
蒸気濃度は0.0075kg/m3 であることを確認し
た。この水蒸気濃度に保持することにより、ヘプタデカ
フルオロ1,1,2,2テトラヒドロデシルトリクロロ
シランのクロロシリル基の水による加水分解を抑えるこ
とができ、また上記コーティングロール、ドクターロー
ル表面の水分の除去もしくは付着を抑えることができ、
また投入された基材表面の余分な水分を除去もしくは付
着を抑えることができる。このような構成において投入
された基材とコーティングロールの接触または押しつけ
によりコーティングロール円筒表面部分に展開した溶液
は基材に写し取られる。この状態の基材表面の模式図を
図2に示す。基材21表面に存在する活性な水素を有す
る基(図2中では水酸基22)と、写し取られた溶液2
3中の溶質ヘプタデカフルオロ1,1,2,2テトラヒ
ドロデシルトリクロロシラン(図2中では略して楕円で
表す)24とは、脱塩化水素反応して基材表面とシロキ
サン結合を成した構造の薄膜25を形成する。その後、
反応に寄与しなかった溶液が基材上に存在する場合は溶
質を含む溶液が基材表面から除去され、溶質が全て反応
した場合は溶媒が基材表面から除去される。なお、ここ
に示す膜の状態は一つの例示(説明図)であって、配
列、配向が異なる場合はもちろんのこと、この例示より
も厚い膜を形成する場合もある。また、言うまでもない
が、図2の様に片側から反応が進むことなどなく、基板
の各所で同時に膜形成の反応が行われると推測される。
【0041】ここで、本実施例と異なる形態の基材上へ
の溶液写し取りの例を示す。図3はその例である。図1
ではノズル9によりクロロシラン系化合物と溶媒からな
る溶液を滴下していたが、本例では、浸漬ロール31を
設けて、バッド等の容器に入れた上記溶液32に上記浸
漬ロールを浸漬させる。この操作で上記溶液が浸漬ロー
ル円筒部分表面及び内部に含浸する。上記浸漬ロールを
コーティングロール33に接触させて、上記溶液を上記
コーティングロール円筒部分表面に写し取り、さらに図
1の実施例と同じように基材34表面に写し取らせるこ
とで膜を形成することができる。
【0042】図4は図1および図3に示すようなロール
による溶液の写し取りの形態を用いずに布を用いる場合
である。一続きになった帯41をガイドを用いて図4の
様に設置する。この帯はゴムまたは含浸性の繊維状帯等
が適する。帯の一部分は上記溶液からなる霧箱42内を
通過し、通過した上記帯は基材43表面とロール44を
用いて接触し、帯上に展開した溶液が基材表面に写し取
られる。その以降の処置は図1で用いた説明と同じであ
る。
【0043】基材表面に写し取られた溶液は図2に示す
ような反応を経て膜形成するが、膜形成に寄与しなかっ
た溶液もしくは溶媒について図1で用いた説明では搬送
ロール上で自然蒸発させた。この搬送ロール部分の水蒸
気濃度が規定値以上になった場合では、基材表面に写し
取られたクロロシラン系化合物が基材表面の水酸基と反
応して膜が形成されるだけでなく上記クロロシラン系化
合物どうしが反応しあうことになり、その反応が連鎖的
に生じてポリマ化する。それを回避するために水蒸気濃
度を規定値内に保持しておく必要がある。規定の水蒸気
濃度を保持した状態で自然蒸発以外の方法について列記
する。水蒸気濃度を規定値内に保持した状態で加温した
乾燥窒素ガスを吹きかける方法、塗布溶液に溶けやす
く、また乾燥しやすい溶液をシャワー状に吹きかける方
法、搬送ロールで出口に搬送される途中の部分で減圧化
に基材を置き、乾燥を促進させる方法、または出口に乾
燥ガスの高圧気流を吹き出して乾燥させる方法(エアー
ナイフ)が採用できる。ここで、出口に乾燥ガスの高圧
気流を吹き出す方法(エアーナイフ)は、基材表面の乾
燥に寄与するほかに規定の水蒸気濃度雰囲気を保持する
ためにも有効であり、その目的のためには装置の出口だ
けでなく入口にも設けると都合が良い。
【0044】《比較例1》本発明の製造方法の効果を確
認するために、従来の製造法によりシロキサン結合を有
する膜を製造した。水蒸気濃度を保持する役割について
は実施例中に書いたとおりであり、同時に保持しなかっ
た場合の状態も例示した。ここでは、従来法の浸漬法で
の経費面を比較する。
【0045】クロロシラン系化合物として実施例と同じ
ヘプタデカフルオロ1,1,2,2テトラヒドロデシル
トリクロロシランを用い、溶媒にオクタメチルシクロテ
トラシロキサンを用い、それらから1vol.%の溶液をバ
ッド内に調製した。上記溶液の入ったバッドの設置雰囲
気を先に示す水蒸気濃度で保持し、A4判相当のガラス
板を浸漬した。浸漬時間は15分間行い、その後に溶媒
の自然乾燥15分間を行った。
【0046】膜形成を終えたガラス板の表面状態を水を
滴下して水滴とガラス板から形成される角度(接触角)
で測定した。実施例1と比較例1の比較検討した結果を
表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】表1は実施例に示す方法でA4判ガラス板
に膜を形成した場合と比較例に示す方法で同じくA4判
ガラス板に膜を形成した場合の接触角、外観目視検査、
調製液量、成膜時間の比較表である。出来上がった膜の
接触角はいずれも112度となり表面状態は同じである
ということができる。一方従来法では、外観目視検査で
は浸漬後の規定水蒸気濃度状態の不全であるため、ガラ
ス板上に多数の白濁付着物が発生し、本発明に示す方法
では、その様な付着物は確認できなかった。
【0049】また、本発明の方法により1枚のガラス板
で使用したクロロシラン系化合物の溶液量は0.4gと
なり、従来法ではA4判ガラス板が浸漬するために必要
な溶液を作成したため200gと500倍もの液量を必
要とした。但し、従来法では1枚目を作成した溶液に2
枚目の基板を浸漬しても膜形成に必要なクロロシラン系
化合物を十分含んでいるので成膜することが可能である
ことはもちろんであり、複数枚基材に膜形成ができるた
め一概に500倍になるとは言えないが、本発明の製造
法では成膜を行うたびに適切な液量の溶液で成膜する事
ができ、一方従来の浸漬法ではたとえ1枚の基板に成膜
するとしても本例では200gもの溶液を調製すること
が必要で、その時の製作要請に応じて成膜を行うために
は本発明の製造方法の方が優れている。その分だけ成膜
に要する経費が削減できる。また、溶液の保存性等を比
較しても本発明の方法が優れると言える。
【0050】次に、成膜時間では明白な差異が生じた。
本発明の実施例では15秒で1枚のガラス板に成膜で
き、しかも外観検査で問題ない膜であることが確認でき
た。しかし、従来の製造方法の浸漬方法では1800秒
と本発明の成膜時間の120倍もの時間を要し、できた
製品の品質も芳しくなかった。この点でも時間当たりの
成膜枚数に大きな違いが生じ、成膜経費の削減に本発明
の製造方法が優れている点が分かる。
【0051】その他に本発明の方式と従来の浸漬方法と
の差を示すと膜の形成面が本発明では片面に形成される
のに対し、従来法では両面に膜形成される。片方の面だ
けに膜形成が必要な場合で従来法を用いるときは何らか
の手法で予め必要としない面をカバーして膜形成の反応
が生じない工夫が必要となる。また、効果が片面であれ
ばよい場合は従来法では両面に膜形成されるため必要の
ない面に余分に膜形成してしまうため成膜経費が2倍に
なってしまう欠点を有する。
【0052】《実施例2》次にパッド印刷方法の実施例
を示す。図5はパッド印刷方式の模式図である。クロロ
シラン系化合物としてノルマルデシルトリクロロシラン
とヘプタデカフルオロ1,1,2,2テトラヒドロデシ
ルトリクロロシランの2種類を用いた。その溶媒として
パーフルオロオクタンを用いた。それぞれのクロロシラ
ン系化合物の溶液濃度は0.1vol.%とした。この溶液
を入れたガラス容器51を水蒸気濃度は0.0071k
g/m3 に保持したチャンバー内に設置した。パッド印
刷にはスタンプ状のパッド器具52を用い、そのパッド
印刷面にはゴム53を貼った。ゴムの形状は30mm×
50mmである。このゴム面を上記ノルマルデシルトリ
クロロシランからなる溶液に浸漬した。このゴムが、溶
液を基板に写し取るための支持体として働く。次にA4
判ガラス板54にゴム面を押し込み(図中矢印のよう
に)、溶液をガラス板面に写し取らせた。次にガラス面
から溶媒が自然乾燥するまで待った。次に別のパッド器
具で同様にヘプタデカフルオロ1,1,2,2テトラヒ
ドロデシルトリクロロシラン溶液をガラス板上に写し取
らせ、自然乾燥するまで待った。以上の工程を乾燥空気
により水蒸気濃度0.0071kg/m3 に保持した空
間で行った。以上のような操作を終えたガラス板を水蒸
気濃度を管理した空間から取り出し、先に示したと同様
の水滴による接触角測定を行った。
【0053】ノルマルデシルトリクロロシランからなる
膜が形成された箇所の接触角は100度であるのに対
し、ヘプタデカフルオロ1,1,2,2テトラヒドロデ
シルトリクロロシランからなる膜が形成された箇所の接
触角は111度となった。これはそれぞれの材料に起因
する接触角度の差である。一方、膜形成を施さなかった
箇所の接触角は30度以下であった。また、パッド印刷
法によって膜形成を行った上記ガラス板を水に浸し、水
から引き上げると膜形成を行った箇所だけがはっきり3
0mm×50mmの形状で水をはじき、膜形成を行って
いない部分は水に濡れる現象を示した。以上より、パッ
ド印刷法を用いると膜形成を必要とする部分だけに膜形
成することができ、実施例1に示したロールコート法と
は異なった状態のガラス基板を提供することができる。
【0054】《実施例3》上述の実施例はいずれも支持
体が固体の例であったが、次に液体の場合の例を示す。
図6は支持体に液体を用いた工程の模式図である。クロ
ロシラン化合物としてノルマルオクタデシルトリクロロ
シランを用い、溶媒には鎖状シリコーンオイル混合物
(東レダウコーニングシリコーン株式会社製ストレート
ジメチルシリコーンオイル)を用い、濃度0.1vol.%
の溶液61を調製した。支持体には上記鎖状シリコーン
オイル混合物および上記ノルマルオクタデシルトリクロ
ロシランが相溶しない液体が必要で、ここではフッ素系
液体62(フロリナ−ト(商標);住友3M株式会社
製)を用いた。水蒸気濃度を0.0063kg/m3
保持した閉鎖空間に15cm角のバッド63を設置し、
その中に上記フッ素系液体をバッドの隅々まで十分拡が
るだけ張り、その上に静かに上記ノルマルオクタデシル
トリクロロシランと鎖状シリコーンオイル混合物からな
る溶液を約10ml滴下した。
【0055】上記溶液はフッ素系液体上に均一に展開さ
れた。このバッドに3インチ直径のシリコン基材64を
浸漬し、直ちに引き上げ(図中矢印のように)、そのま
ま溶媒が蒸発するまで乾燥させた。以上の操作によりノ
ルマルオクタデシルトリクロロシランからなる膜がシリ
コン基板上に形成された。
【0056】以上の実施例ではガラス基材、シリコン基
材を使用したが、これらの他に活性な水素を表面に露出
させた基材であればその材質を問わない。上記条件に見
合う各種金属、金属酸化物、セラミックス、プラスチッ
クなどが有効である。
【0057】また、本実施例では水蒸気濃度は規定を0
kg/m3 から0.0076kg/m3 に保持するため
のガス供給ノズルを示したが、本実施例のようにガスを
供給せずとも吸湿装置などの設置により水蒸気濃度を規
定値に制御できれば、本実施例の方法に依らないことは
もちろんである。また、ガス供給方式などの場合は排気
装置を設ける必要があることもある。本実施例ではその
ような設備を省略している。
【0058】《実施例4》図7は、転写法を用いる膜の
製造装置の一つであるロールコーターの概略構成を示
す。このロールコーター70のチャンバー71内には、
基材81の入口72と出口73を有し、内部にはドクタ
ーロール74、コーティングロール75、バックアロー
ラ87などの要素を備えている。ロール76などで表さ
れる基材の搬送装置により、入口72から導入された基
材はコーティングロール75を経て出口73から装置外
へ排出される。容器77に入れられた基材に塗布するシ
ラン系化合物を含む溶液78は、ポンプ79を備えたパ
イプ80aにより吸引され、パイプ80bからドクター
ロール74、コーティングロール75との間の外周面に
供給される。入口72および出口73には、それぞれ8
2および83で示すように低水蒸気濃度気体(好適には
乾燥した窒素ガスまたは乾燥空気)を供給してエアカー
テン84および85を形成している。また、ドクターロ
ール74とコーティングロール75の上部を覆うカバー
86(内チャンバー)を設け、このカバー内へパイプ8
8から低水蒸気濃度気体(好適には乾燥した窒素ガスま
たは乾燥空気)89を供給することにより、それらの周
囲を低水蒸気濃度が望ましくは0.0076kg/m3
(25℃で相対湿度35%以下に相当)以下に維持する
ようになっている。なお、図7では、入口と出口以外は
密閉されているように表されているが、溶媒その他が適
切に排出されるような通気排出路が設けてある。
【0059】上記のロールコーターにおいて、コーティ
ングロール75はドクターロール74によって接触また
は押しつけらており、この部分にシラン系化合物を含む
溶液を供給し、コーティングロール75を回転させる
と、コーティングロール75の外周円筒面にこの溶液が
均一に付着する。さらに、このコーティングロール75
を基材81表面に接触または押しつけて回転させること
により、この溶液を基材表面に均一に塗布することがで
きる。そして、装置内部が低水蒸気濃度に維持されてい
るので、脱塩化水素反応前の、基材に塗布されるシラン
系化合物と雰囲気中の水分との反応を防ぐことができ
る。
【0060】このように本実施例は、低水蒸気濃度雰囲
気下でロールコーターのコーティングロールの外周円筒
面に少なくともシラン系化合物を含む溶液を供給しなが
ら、そのコーティングロールを基材表面に接触または押
しつけて回転させることにより、前記溶液を基材表面に
塗布する(図7のA)。この時、シラン系化合物と表面
水酸基が縮合反応を起こし、シラン系化合物と基材表面
が、下記式1のように共有結合を形成する。
【0061】
【化1】
【0062】その後、この基材をロールコーター内部の
低水蒸気濃度雰囲気下で乾燥し、塗布した溶液の溶媒お
よび基材と結合していないシラン系化合物を蒸発除去す
る(図7のB)。これにより、基材上には基材表面と共
有結合を形成しているシラン系化合物のみが残る。さら
に、この基材をロールコーター外部の水分を含む空気と
接触させると、下記式2のように加水分解する。
【0063】
【化2】
【0064】次いで乾燥雰囲気下で乾燥すると(図7の
C)、下記式3のようにシラン系化合物どうしが縮合反
応を起こし、シロキサン結合を介して基材表面と共有結
合した膜が形成される。
【0065】
【化3】
【0066】なお図7のBに示される工程は、チャンバ
ー71の外にあっても良い。上記の製造装置を用いて、
シロキサン結合を有する膜を製造した。すなわち、コー
ティングロール75とドクターロール74の材質とし
て、ブチルゴムを用いた。シラン系化合物には、化学式
817(CH2)2SiCl3で示されるフルオロアルキル
トリクロロシランを用い、その溶媒には非水系の溶媒で
あるオクタメチルシクロテトラシロキサンを用いて1vo
l.%溶液を調製した。コーティングロール75とドクタ
ーロール74、およびロールコーター70内部を低水蒸
気濃度雰囲気にするために、水蒸気濃度は0.03kg
/m3 以下の窒素ガスを供給した。
【0067】基材81としてフロートガラスのトップ面
を上に向け、上の面にシラン系化合物からなる被膜が形
成されるように、ロールコーターに供給した。前記フロ
ートガラスのボトム面は、シラン系化合物が接触しない
ようにポリエチレンテレフタレートからなるカバーフィ
ルムで覆い、マスクした。チャンバー内に供給されたガ
ラス基材は、コーティングロール75のドクターロール
74および基材81への押しつけ量を調整することによ
って、室温において前記溶液をフロートガラスの表面へ
0.5〜1μmの厚さに均一に塗布した。その後、この
フロートガラスを図7のBの位置で、水蒸気濃度:0.
03kg/m3 以下の乾燥窒素を用いて乾燥した。さら
に、このフロートガラスを、チャンバーの外に取り出
し、水分を含む空気中の雰囲気下で乾燥した。この水分
の存在下で、フロートガラスに塗布されたシラン系化合
物どうしが縮合反応を起こし、シロキサン結合を介して
基材表面と共有結合した膜が形成された。その後、前記
カバーフィルムを除去した。このフロトガラスは、シラ
ン系化合物の残基成分が共有結合した撥水、撥油面を外
側にし、カバーフィルムでマスクした面を内側にした、
合わせガラスに有用であった。
【0068】なお前記実施例ではクロロシラン系化合物
を膜形成材料として使用したが、アルコキシシラン系化
合物またはイソシアネート系化合物も同様に使用するこ
とができる。アルコキシシラン系化合物を用いて膜を形
成するときは、塗布溶液を弱酸性にすることが好まし
い。事前にアルコキシシラン系化合物を含む塗布溶液を
弱酸性にすることもできるが、例えば図7のパイプ80
bと同じようなパイプを別途配備してそこからドクター
ロール74に弱酸性溶液を滴下することも可能である。
このようにロールにより塗布される直前に弱酸性にする
方がさらに望ましい。
【0069】
【発明の効果】以上のように本発明の成膜方法で平板状
の基材へ膜形成が可能となり、従来の浸漬方法に比べて
生産性を大幅に向上でき、製造経費を大幅に削減するこ
とができる。よって、その工業的価値は大なるものであ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例の分子膜の製造装置のロー
ルコート成膜装置の概略構成図。
【図2】 溶液が基材表面に写し取られた時の基材表面
の模式図。
【図3】 図1とは異なる形態の基材上への溶液写し取
りの例。
【図4】 布を用いた基材上への溶液写し取りの例。
【図5】 パッド印刷方式の模式図。
【図6】 支持体に液体を用いた工程の模式図。
【図7】 本発明の別の実施例の分子膜の製造装置のロ
ールコート成膜装置の概略構成図。
【符号の説明】
1 ロールコート成膜装置 2 被膜形成基材 3 挿入口 4 出口 5 膜形成基材 6 ドクターロール 7 コーティングロール 8 搬送ロール 9 クロロシラン系溶液を滴下させるノズル 10 規定の水蒸気濃度にしたガス(乾燥窒素ガス)を
供給するノズル 11 規定の水蒸気濃度雰囲気を維持するためのチャン
バー 21 基材 22 表面に存在する活性な水素を有する基(図中では
水酸基) 23 写し取られた溶液 24 ヘプタデカフルオロ1,1,2,2テトラヒドロ
デシルトリクロロシラン(図中では略して楕円で表す) 25 基材表面とシロキサン結合を成した構造の薄膜 31 浸漬ロール 32 バッド等の容器に入れた溶液 33 コーティングロール 34 基材 41 一続きになった帯 42 溶液からなる霧箱 43 基材 44 ロール 51 溶液を入れたガラス容器 52 パッド器具 53 ゴム 54 ガラス板 61 溶液 62 フッ素系液体 63 バッド 64 シリコン基
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI B05D 3/00 B05D 3/00 F 7/24 302 7/24 302Y C03C 17/32 C03C 17/32 D (72)発明者 中川 徹 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 (72)発明者 小川 一文 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 (72)発明者 曽我 眞守 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 (72)発明者 武部 安男 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内

Claims (21)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 表面に活性水素を有する基材の表面に、
    少なくともクロル基、アルコキシ基及びイソシアネート
    基から選ばれる少なくとも一つの反応基を持つシラン系
    化合物を含む塗布溶液を塗布し、基材表面の活性水素と
    前記シラン系化合物の反応基との間で脱離反応を起こさ
    せ、基材表面にシラン系化合物を共有結合させる分子膜
    の製造方法において、 低水蒸気濃度雰囲気状態に保持されているチャンバー内
    に、前記基材を送り込み、転写装置を用いて、前記基材
    の表面にシラン系化合物と溶媒とを含む塗布溶液を塗布
    し、前記基材表面の活性水素と前記シラン系化合物の反
    応基との間で脱離反応を起こさせ、その後チャンバー内
    または外で前記塗布後の未反応塗布溶液を除去すること
    を特徴とする分子膜の製造方法。
  2. 【請求項2】 さらに転写装置の少なくとも塗布溶液部
    分周囲を覆う内側チャンバーを備えた請求項1に記載の
    分子膜の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記チャンバーの前記基材の入り口及び
    出口を、外気と仕切るためのエアーカーテンを備えた請
    求項1に記載の分子膜の製造方法。
  4. 【請求項4】 転写装置が、塗布溶液を支持体上に展開
    する工程と、上記支持体上に展開した溶液を膜形成を必
    要とする基材上に写し取る工程からなる請求項1に記載
    の分子膜の製造方法。
  5. 【請求項5】 転写装置がロールコート装置である請求
    項1に記載の分子膜の製造方法。
  6. 【請求項6】 シラン系化合物が、アルキル基もしくは
    フルオロアルキル基を含む請求項1に記載の分子膜の製
    造方法。
  7. 【請求項7】 溶媒が活性水素を有さない溶媒である請
    求項1に記載の分子膜の製造方法。
  8. 【請求項8】 前記活性水素を有さない溶媒が、炭化水
    素化合物、シロキサン系化合物、及びハロゲン化炭化水
    素から選ばれる少なくとも一つである請求項7に記載の
    分子膜の製造方法。
  9. 【請求項9】 塗布溶液のシラン系化合物と溶媒の混合
    比が、シラン系化合物の存在量:0.05〜20重量%
    の範囲であり、かつ塗布溶液の動粘度が0.5〜500
    0cst(at 25℃)の範囲である請求項1に記載の
    分子膜の製造方法。
  10. 【請求項10】 基材が板ガラスであり、塗布溶液の塗
    布面と反対側の面をあらかじめ樹脂フィルムでマスクし
    ておく請求項1に記載の分子膜の製造方法。
  11. 【請求項11】 チャンバー内に、入り口から出口まで
    基材を移送する装置と、前記基材の表面にシラン系化合
    物と溶媒とを含む塗布溶液を塗布するための転写装置
    と、前記チャンバー内を低水蒸気濃度雰囲気状態に保持
    する装置とを含み、前記チャンバーの中または外に塗布
    後の未反応塗布溶液を除去する装置を備えた分子膜の製
    造装置。
  12. 【請求項12】 さらに転写装置の少なくとも塗布溶液
    部分周囲を覆う内側チャンバーを備えた請求項11に記
    載の分子膜の製造装置。
  13. 【請求項13】 前記チャンバーの前記基材の入り口及
    び出口を、外気と仕切るためのエアーカーテンを備えた
    請求項11に記載の分子膜の製造装置。
  14. 【請求項14】 低水蒸気濃度雰囲気状態を保持する装
    置が、水蒸気濃度範囲で0kg/m3 以上0.0076
    kg/m3 以下のガスを導入する装置である請求項11
    に記載の分子膜の製造装置。
  15. 【請求項15】 転写装置が、塗布溶液を支持体上に展
    開する工程と、上記支持体上に展開した溶液を膜形成を
    必要とする基材上に写し取る工程からなる請求項11に
    記載の分子膜の製造装置。
  16. 【請求項16】 転写装置がロールコート装置である請
    求項11に記載の分子膜の製造装置。
  17. 【請求項17】 内側チャンバー内に、さらに低水蒸気
    濃度気体を供給する手段を設けた請求項12に記載の分
    子膜の製造装置。
  18. 【請求項18】 前記支持体上への塗布溶液の展開が、
    溶液の支持体上への滴下、支持体の溶液中への浸漬、溶
    液、蒸気または溶液の霧の支持体への接触による支持体
    表面への溶液の付着である請求項15に記載の分子膜の
    製造装置。
  19. 【請求項19】 前記ロールコート装置が、塗布溶液を
    展開するためのドクターロールと、基材に塗布溶液を均
    一厚さに塗布するためのコーティングロールと、基材の
    裏から基材を押圧するためのバックアップロールとから
    少なくとも構成される請求項16に記載の分子膜の製造
    装置。
  20. 【請求項20】 前記ロール周辺の水蒸気濃度を前記数
    値範囲内で管理する箇所が、少なくとも前記ロール表面
    に前記溶液が付着するまたは滞留する部分を含む空間で
    ある請求項14に記載の分子膜の製造装置。
  21. 【請求項21】 前記基材表面から未反応塗布溶液を除
    去する装置が、気体の吹き付け、加温蒸発除去、減圧蒸
    発除去、気体による吹き飛ばし除去、及び液体による洗
    浄除去から選ばれる少なくとも一つの装置である請求項
    11に記載の膜の製造装置。
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