JPH10179185A - ピリドキサール5’−リン酸をコファクターとして反応を触媒する触媒抗体 - Google Patents

ピリドキサール5’−リン酸をコファクターとして反応を触媒する触媒抗体

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JPH10179185A
JPH10179185A JP8339486A JP33948696A JPH10179185A JP H10179185 A JPH10179185 A JP H10179185A JP 8339486 A JP8339486 A JP 8339486A JP 33948696 A JP33948696 A JP 33948696A JP H10179185 A JPH10179185 A JP H10179185A
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JP
Japan
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reaction
antibody
compound
pyridoxal
phosphate
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JP8339486A
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English (en)
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Ikuo Fujii
郁雄 藤井
Fujie Tanaka
富士枝 田中
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SEIBUTSU BUNSHI KOGAKU KENKYUSHO KK
Original Assignee
SEIBUTSU BUNSHI KOGAKU KENKYUSHO KK
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 アミノ酸の化学変換(レトロアルドール反
応、アルドール反応)の新規反応方法の提供。 【解決手段】 ピリドキサール5’−リン酸とβ−ヒド
ロキシα−アミノ酸とから生成するイミンを還元して得
られるアミンをハプテンとして、抗原刺激により産生さ
れる触媒抗体を使用し、ピリドキサール5’−リン酸を
コファクターとして反応に関与させて、アルデヒドとグ
リシンからβ−ヒドロキシα−アミノ酸を生成するアル
ドール反応及びその逆反応であるレトロアルドール反応
を行う。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、アミノ酸の化学変
換を行なう方法、及びその方法に使用する触媒抗体に関
する。さらに詳しくは、アルドール反応及びレトロアル
ドール反応を行なう方法、並びにこれらの反応を触媒す
る触媒抗体に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】アル
ドール反応及びレトロアルドール反応は、炭素−炭素結
合の生成と解裂を行う反応として、有機化学的に重要な
反応であるだけでなく、生体内でのエネルギー代謝や生
体分子の生合成にも関わるため、生化学的にも重要な反
応である。
【0003】このようなアルドール反応には、アルデヒ
ドとグリシンからβ-ヒドロキシα-アミノ酸を生成する
反応があり、また、レトロアルドール反応には、この逆
反応としての、β-ヒドロキシα-アミノ酸のアルデヒド
とグリシンへの解裂反応がある。このような反応には、
酵素により触媒し得るものもあり、場合によっては、さ
らに補酵素が反応に関与していることもある。一般に、
酵素は所定のアミノ酸20種から構成されるタンパク質
であり、酵素単独では、触媒残基としてこれらのアミノ
酸しか利用できないため、触媒可能な反応の種類には限
界がある。しかし、酵素は、補酵素を反応に関与させる
ことにより、効率の良い反応経路を経て反応を触媒した
り、触媒し得る反応の種類を増やしたりすることを可能
にしている。
【0004】しかし、補酵素が反応に関与することで触
媒可能な反応の種類が増えたとしても、天然に存在する
酵素の種類は有限であるため、酵素を反応触媒として利
用する限り、生産可能な物質の種類はおのずと限られて
くる。今日、酵素反応を利用して、既に工業的に多くの
有用物質が生産されているが、人間が生産を目的とする
物質すべてが、これらの酵素反応によって必ずしも得ら
れるわけではない。
【0005】近年、抗体の持つ多様性と高い分子認識能
に着目し、目的とする基質に対して高選択的に反応を行
なうための触媒として、触媒抗体を用いることが期待さ
れ、実際に、このような触媒抗体が報告されてきている
[Lerner,R.A.ら,サイエンス(Science),252,659,
(1991)、及びJanda,K.D.ら,サイエンス,244,437,
(1989)]。触媒抗体は、一般的には、反応を触媒させ
るためにデザインした抗原を、哺乳動物に免疫すること
により得られる。抗原をデザインすることにより、所望
の、酵素では得られないような基質特異性を有する触媒
抗体を得ることも可能である。
【0006】しかしながら、触媒抗体も酵素と同じくタ
ンパク質であり、触媒残基として20種のアミノ酸しか
利用できないという制限を受けるため、これらのアミノ
酸のみから構成される触媒抗体単独では、所望のありと
あらゆる反応を触媒するには十分とはいえない。
【0007】そこで、触媒抗体の抗原結合部位において
触媒反応を行なう際についても、酵素反応における補酵
素のような、外来のコファクター(cofactor)
を、抗体を構成するタンパク質のアミノ酸残基に加えて
反応に関与させる方法をとれば、より活性の高い触媒抗
体や、また、抗体のアミノ酸残基のみによっては触媒で
きない反応を触媒できるような抗体の作成が可能になる
のではないかと考えられる。さらに、外来のコファクタ
ーを反応に関与させて用いるこのような触媒抗体によっ
て、触媒抗体反応の実施可能な範囲が拡がるということ
だけでなく、補酵素を利用する天然酵素の反応機構の研
究にも寄与すると考えられる。
【0008】そこで、本願発明者らは、この着想を上記
のアルドール反応及びレトロアルドール反応に適用し、
コファクターを反応に関与させて触媒抗体反応を行う新
規な反応方法の提供を目的として、これら反応を触媒す
るための触媒抗体を案出、開発した。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、アルドール反
応を行なう方法であって、触媒抗体、及びコファクター
としてピリドキサール5’−リン酸を用いることを特徴
とする方法を提供する。 さらに、本発明は、触媒抗体とピリドキサール5’−
リン酸の存在下に、アルデヒドとグリシンを反応させる
ことを含んでなる、β−ヒドロキシα−アミノ酸の製造
方法を提供する。本発明の別の態様では、レトロアルド
ール反応を行なう方法であって、触媒抗体、及びコファ
クターとしてピリドキサール5’−リン酸を用いること
を特徴とする方法を提供する。さらに、本発明の別の態
様では、触媒抗体とピリドキサール5’−リン酸の存在
下に、β−ヒドロキシα−アミノ酸を反応させることを
含んでなる、アルデヒドとグリシンを製造する方法を提
供する。本発明は、さらに上記反応において使用する新
規な触媒抗体を提供する。
【0010】本発明のアルドール反応とは、コファクタ
ーとしてピリドキサール5’−リン酸が反応に関与す
る、アルデヒドとグリシンからβ−ヒドロキシα−アミ
ノ酸を生成する反応をいう。また、本発明におけるレト
ロアルドール反応とは、コファクターとしてピリドキサ
ール5’−リン酸が反応に関与する、β−ヒドロキシα
−アミノ酸からアルデヒドとグリシンを生成する反応を
いう。
【0011】本明細書に用いられる「コファクター」な
る語は、触媒抗体反応において、抗体に可逆的に結合し
て触媒抗体の十分な触媒活性の発現に寄与する物質を意
味する。一般にコファクターは、人工的に合成された化
合物でも、酵素反応において補酵素又は補因子として関
与しているような天然に存在する物質でもよい。
【0012】本発明では、コファクターとしてピリドキ
サール5’−リン酸を使用する。ピリドキサール5’−
リン酸は、重要な補酵素の1つであり、主としてアミノ
酸の化学変換反応に関与する。ピリドキサール5’−リ
ン酸のアルデヒド基は、種々のアミンとイミンを形成す
る。これにより、ピリドキサール5’−リン酸は、反応
が進行する際に生じるカルバニオン中間体を安定化す
る。即ち、形成されたイミンはピリジン環と共役してい
るため、電荷の非局在化が起こり、カルバニオンが安定
化される。本発明の反応が進行するためには、カルバニ
オンの安定化が不可欠であるため、このような物質は、
本発明のコファクターとして特に好ましい。本発明で用
いるコファクター(ピリドキサール5’−リン酸)は、
それ自身がカルバニオンを生成し安定化する能力を有し
ている。従って、本発明の触媒抗体は、抗体の抗原結合
部位で、基質とコファクターを寄せ集める効果を有する
ことにより、反応を触媒し得ると期待される。触媒抗体
において、所望の触媒残基を適切な位置に誘導すること
は、通常、非常に困難である。本発明の方法によれば、
カルバニオンを安定化する能力を有する、このようなコ
ファクターを用いることによって、その困難を回避する
ことができると考えられる。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明のアルドール反応には、公
知のアルデヒドが使用し得る。典型的には、式(II): R2−CHO (II) [式中、R2は、アシル、アシルアミノ、アルキルオキ
シ、アルキルチオ、ヒドロキシ又はフェニルによって置
換されていてもよい、アルキル基若しくはフェニル基を
表す]で表される化合物が使用し得る。
【0014】本発明のレトロアルドール反応には、公知
のβ−ヒドロキシα−アミノ酸が使用し得る。典型的に
は、式(III):
【化3】 [式中、R3は、R2と同意義である]で示される化合物
が使用し得る。
【0015】このような化合物は、市販で入手可能であ
るか、又は当業者によって一般に用いられる標準的な方
法によって、市販によって得られない程度まで容易に合
成することができる。
【0016】本発明のアルドール反応及びレトロアルド
ール反応に使用し得る触媒抗体は、Lerner, R. A. らサ
イエンス, 252, 659, (1991)に記載の技術を用い、ハプ
テンと担体とを結合させて作成した免疫抗原を哺乳動物
に免疫することにより得ることができる。
【0017】本発明の方法において用いる触媒抗体の作
成において、ハプテンとして使用する物質としては、ピ
リドキサール5’−リン酸とβ−ヒドロキシα−アミノ
酸とが結合してできるイミンを還元して得られるアミン
が使用し得る。
【0018】即ち、本発明の触媒抗体は、式(I):
【化4】 [式中、R1は、アシル、アシルアミノ、アルキルオキ
シ、アルキルチオ、ヒドロキシ又はフェニルによって置
換されていてもよい、アルキル基若しくはフェニル基を
表す]で表される化合物をハプテンとして、哺乳動物を
免疫することによって作製し得る。
【0019】本発明で用いるハプテンは、下記反応式A
[式中、R1は前記と同意義である]に示す合成経路に
従って合成することができる。反応式A
【化5】 即ち、N-Bocグリシンメチルエステルとアルデヒドのア
ルドール反応により得られる化合物 (4) のN-脱保護に
より、化合物 (5) を得る。化合物 (5) をピリドキサー
ル5’−リン酸のイミンとし、NaBH3CN で還元して、
化合物 (6) を得る。化合物 (6) の加水分解により、ハ
プテン (3) を得る。ハプテン (3) をヒドロキシスクシ
ンイミドの活性化エステルを経る方法によりアミンと反
応させ化合物 (7) を得、チオールの還元により、化合
物 (8) を得る。化合物 (8) をマレイミド-KLH と反応
させ、免疫抗原 (KLH-3) を得る。
【0020】次に、BALB/c マウスを上記免疫抗原 (KLH
-3) で免疫し、モノクローナル抗体を入手する。即ち、
BALB/c マウス(雌4週齢)を免疫抗原 (KLH-3) で免疫
し、4回の免疫後に脾臓を摘出する。常法に従い細胞融
合を行ない、形成したハイブリドーマを酵素標識抗体測
定法 (ELISA) を用いてスクリーニングし、ハプテン結
合活性の抗体を産生するハイブリドーマを得る。限界希
釈法によるクローニングを繰り返し、単クローン IgG
産生ハイブリドーマを選別し、それらの培養上清を、ろ
過とアフィニティクロマトグラフィー (抗マウス (IgG
+ IgM) カラムとプロテイン G カラム) によって精製
し、モノクローナル抗体を得る。
【0021】本発明の触媒抗体の触媒活性を試験する際
には、場合により、試験を行う前に、上記で作成した抗
体をさらに処理する必要がある。即ち、本発明の触媒抗
体はピリドキサール5’−リン酸をコファクターとする
が、ピリドキサール5’−リン酸のアルデヒド基はタン
パク質のリジン残基のアミノ基と非特異的にイミンを形
成するので、抗体の触媒活性を正しく評価するために、
必要に応じ、ハプテン存在下に抗体のリジン残基のアミ
ノ基を酢酸 N−ヒドロキシスクシンイミドエステルを
用いてアセチル化しておく。アセチル化した抗体は、そ
の後、ゲルろ過と透析によって精製する。このように作
成した抗体を用いて、ピリドキサール5’−リン酸存在
下にアルドール反応又はレトロアルドール反応を行な
い、HPLC分析により抗体の触媒活性を評価する。
【0022】本発明のアルドール反応は、pH約7〜約
8、約20℃〜約37℃で行うのがよい。アルデヒドと
グリシンは、約1:1〜約1:10のモル比で混合し、
これにアルデヒド1モルに対して約1/10〜約1/1
00モルの、触媒酵素とピリドキサール5’−リン酸を
それぞれ添加するのがよい。本発明のアルドール反応に
使用し得る溶媒は、公知の緩衝液、例えばHEPESや
リン酸緩衝液等であり、一級アミンを含まない緩衝液が
好ましい。
【0023】本発明のレトロアルドール反応は、pH約
7〜約8、約20℃〜約37℃で行うのがよい。触媒酵
素とピリドキサール5’−リン酸を、β−ヒドロキシα
−アミノ酸1モルに対し、それぞれ約1/10〜約1/
100モル添加するのがよい。本発明のレトロアルドー
ル反応に使用し得る溶媒は、公知の緩衝液、例えばHE
PESやリン酸緩衝液等であり、一級アミンを含まない
緩衝液が好ましい。
【0024】以下に、実施例を記載し、本発明をさらに
詳しく説明するが、これらは、本発明の範囲の限定を意
図するものではない。実施例中に使用される略語は、以
下に定義する意味を有する。 N−Boc: N-tert-ブトキシカルボニル LDA: リチウムジイソプロピルアミド KLH: スカシガイヘモシアニン(keyhole limpet h
emocyanin) BSA: ウシ血清アルブミン
【0025】
【実施例】実施例 1 ハプテン (13) の合成
【化6】
【0026】1. 化合物 (14) の合成 N-Boc グリシンメチルエステル (521.8 mg, 2.76 mmol)
の THF (3.0 mL) 溶液に LDA のヘプタン−THF−エチ
ルベンゼン溶液 (Aldrich社より購入)(2M, 4.28 mL,
8.56 mmol) を -78 ℃ で加えた。10 分後、同じ温度
で、4-アセトアミドベンズアルデヒド (474.3 mg, 2.91
mmol) の THF (5.5 mL) 溶液を加えた後、3 時間かけ
て室温まで昇温した。反応混合物を氷冷飽和塩化アンモ
ニウム溶液に加え、酢酸エチルで抽出した。合わせた有
機相を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥
後、溶媒を留去した。次いでシリカゲルフラッシュカラ
ムクロマトグラフィー(酢酸エチル)による精製で、化
合物 (14) (549.2 mg, 57%) を得た。1 H NMR (600 MHz, CDCl3): δ 7.63 (brs, 1H x 1/2),
7.58 (brs, 1H x 1/2),7.44 (d, J = 8.0 Hz, 2H x 1/
2), 7.42 (d, J = 8.0 Hz, 2H x 1/2), 7.26 (d,J = 8.
0 Hz, 2H x 1/2), 7.17 (d, J = 8.0 Hz, 2H x 1/2),
5.40 (d, J = 8.0Hz, 1H x 1/2), 5.30 (d, J = 7.1 H
z, 1H x 1/2), 5.16 (brs, 1H x 1/2), 5.12 (brs, 1H
x 1/2), 4.66 (1H x 1/2), 4.46 (1H x 1/2), 3.74 (s,
3H x 1/2), 3.69 (s, 3H x 1/2), 2.15 (s, 3H), 1.43
(s, 9H x 1/2), 1.34 (s, 9H x 1/2).
【0027】2. 化合物 (15) の合成 化合物 (14) (682.9 mg, 1.94 mmol) の塩化メチレン
(5.0 mL) 溶液にトリフルオロ酢酸 (1.0 mL) を室温で
加え、9 時間攪拌した。溶媒を減圧下に溜去し、HPLC
(アセトニトリル/0.1% トリフルオロ酢酸水溶液 = 10/
90、保持時間 7.6分) で精製し、化合物 (15)(642.5 m
g, 91%) を得た。1 H NMR (500 MHz, CD3OD): δ 7.65-7.34 (4H), 5.28-
5.26 (1H), 4.36 (d, J =4.3 Hz, 1H x 1/2), 4.25 (d,
J = 4.4 Hz, 1H x 1/2), 3.84 (s, 3H x 1/2),3.77
(s, 3H x 1/2), 2.17 (s, 3H).
【0028】3. 化合物 (16) の合成 化合物 (15)( 532.4 mg, 1.45 mmol) のメタノール (2.
0 mL) 溶液に、ピリドキサール5’−リン酸 一水和物
(409.4 mg, 1.54 mmol) の水−1N NaOH (pH 7)(4.0 mL)
溶液を 0 ℃ で加えた。2 分後、NaBH3CN (60.8 mg, 0.
967 mmol) を加え、同温度で 2.5 時間攪拌した。HPLC
(アセトニトリル/0.1% トリフルオロ酢酸水溶液 = 5/9
5-20/80、保持時間 14.3 分と 15.1 分) で精製し、化
合物 (16)(480.3 mg, 68%) を得た。さらに、HPLC (ア
セトニトリル/0.1% トリフルオロ酢酸水溶液 = 7/93)
で、化合物 (16)のジアステレオマーをそれぞれ分離し
た (それぞれの保持時間 18 分及び 21 分) 。次に、化
合物 (16) のジアステレオマーそれぞれの相対配置を決
定した。まず最初に、化合物(15)の相対配置を決定す
る。化合物(15a)と(15b)の割合が異なるジアステレ
オマー混合物から、化合物(11a)と(11b)のジアステ
レオマー混合物を誘導して(11a)と(11b)とに分離
し、それぞれのレトロアルドール反応の反応速度を比較
する。ここで、化合物(11)に構造が類似しているフェ
ニルセリンのジアステレオマーそれぞれの反応速度と対
比する。即ち、フェニルセリンのレトロアルドール反応
において、erythro-体の方がthreo-体よりも反応速度が
速いことに基づいて、反応速度の速い化合物(11a)をe
rythro-体、反応速度の遅い化合物(11b)をthreo-体と
決定した。化合物(15a)と(15b)それぞれの割合は、
化合物(11a)と(11b)それぞれの割合に対応している
ことから、化合物(15a)が erythro-体、化合物(15
b)が threo-体であると決定された。相対配置が決定さ
れた化合物(15a)及び(15b)から化合物(16a)及び
(16b)を、上記の化合物(16)の合成と同様にそれぞ
れ個別に合成した。これを、上記の合成及び分離により
得た、化合物(16)の各ジアステレオマー(保持時間18
分及び21分)と比較して、保持時間18分のジアステレオ
マーを(16a)(erythro)、保持時間21分のジアステレ
オマーを(16b)(threo)と決定した。 化合物 (16a): (erythro) 1H NMR (500 MHz, CD3OD):
δ 8.10 (s, 1H), 7.58 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 7.35
(d, J = 8.5 Hz, 2H), 5.16 (d, J = 5.4 Hz, 1H), 5.0
5 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 4.40 (d, J = 15.7 Hz, 1H),
4.27 (d, J = 15.7 Hz, 1H), 4.00 (d, J = 5.4 Hz, 1
H), 3.78 (s, 3H), 2.58 (s, 3H), 2.16 (s, 3H). FA
BMS: m/z 484 (M+ + H). 化合物 (16b): (threo) 1H NMR (500 MHz, CD3OD):
δ 8.03 (s, 1H), 7.58(d, J = 8.5 Hz, 2H), 7.38 (d,
J = 8.5 Hz, 2H), 5.18 (d, J = 4.5 Hz, 1H), 5.03-
4.95 (m, 2H), 4.37 (d, J = 15.7 Hz, 1H), 4.15 (d,
J = 15.7 Hz, 1H), 3.95 (d, J = 4.5 Hz, 1H), 3.79
(s, 3H), 2.49 (s, 3H), 2.18 (s, 3H).FABMS: m/z 484
(M+ + H). HR-FABMS: C20H27O9N3P (M+ + H) 計算
値: 484.1485, 実測値: 484.1466.
【0029】4. 化合物 (13) の合成 化合物 (16) [(16a) と (16b) の 1:1 混合物] (143.5
mg, 0.297 mmol) と 0.5 N NaOH (1.5 mL) の混合物を
室温で 1.5 時間攪拌した。1N HCl を加えて酸性(pH
2)にした後、HPLC (アセトニトリル/0.1% トリフル
オロ酢酸水溶液 =5/95、保持時間 10.7 分) で精製し、
化合物 (13) [ジアステレオマーの 1:1 混合物] (76.4
mg, 55%) を得た。さらに、上記3で合成した化合物 (1
6a)と化合物 (16b)から、上と同じ方法で化合物(13a)
(13b)を個別に合成し、分析した。 化合物 (13a): (erythro) 1H NMR (500 MHz, CD3O
D): δ 8.06 (s, 1H), 7.58 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 7.4
0 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 5.27 (d, J = 4.7 Hz, 1H),
5.06 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 4.47 (d, J = 15.3 Hz, 1
H), 4.34 (d, J = 15.3 Hz, 1H), 4.08 (d, J = 4.7 H
z, 1H), 2.59 (s, 3H), 2.16 (s, 3H). FABMS: m/z 4
70 (M+ + H). HR-FABMS: C19H25O9N3P (M+ + H) 計算
値:470.1328,実測値: 470.1337. 化合物 (13b): (threo) 1H NMR (500 MHz, CD3OD):
δ 7.97 (s, 1H), 7.58(d, J = 8.5 Hz, 2H), 7.42 (d,
J = 8.5 Hz, 2H), 5.25 (d, J = 4.3 Hz, 1H), 4.95
(d, J = 8.0 Hz, 2H), 4.38 (d, J = 15.3 Hz, 1H), 4.
15 (d, J = 15.3Hz, 1H), 4.00 (d, J = 4.3 Hz, 1H),
2.48 (s, 3H), 2.18 (s, 3H). FABMS:m/z 470 (M+ +
H). HR-FABMS: C19H25O9N3P (M+ + H) 計算値:470.13
28, 実測値: 470.1337.
【0030】実施例2 ハプテン (13) の担体タンパクへの結合
【化7】
【0031】1. 化合物 (17) の合成 化合物 (13) [ジアステレオマーの 1:1 混合物] (26.4
mg, 0.0564 mmol)、N-ヒドロキシスクシンイミド (7.1
mg, 0.0617 mmol)、シスタミン二塩酸塩 (49.9 mg, 0.
222 mmol)、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカ
ルボジイミド塩酸塩(23.1 mg, 0.120 mmol) の混合物
を CH3CN (1.0 mL)-40 mM Na2HPO4-NaH2PO4, pH 7.2
(0.5 mL) 中、室温で20 時間攪拌した。HPLC (アセトニ
トリル/0.1% トリフルオロ酢酸水溶液 = 8/92) で精製
し、化合物 (17a)(保持時間 10.8 分, 4.4 mg, 13%)と
化合物(17b)(保持時間 12.3 分, 8.3 mg, 24%)を得
た。生成した化合物(17)の各ジアステレオマーの相対
配置は、上記実施例1の化合物(13a)と化合物 (13b)か
ら、上と同じ方法でそれぞれ個別に合成した化合物(17
a)及び(17b)との比較により決定した。 化合物 (17a): (erythro) 1H NMR (500 MHz, CD3OD):
δ 7.94 (s, 1H), 7.58 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 7.36
(d, J = 8.6 Hz, 2H), 4.86 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 4.4
1 (d, J = 14.8 Hz, 2H), 4.27 (d, J = 14.8 Hz, 1H),
3.84 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 3.45-3.25 (m, 4H), 3.05
-2.95 (m, 2H), 2.76-2.53 (m, 2H), 2.55 (s, 3H), 2.
17 (s, 3H). FABMS: m/z 604 (M+ + H). HR-FABMS:
C23H35O8N5PS2 (M+ + H) 計算値:604.1665, 実測値 60
4.1693. 化合物 (17b): (threo) 1H NMR (500 MHz, CD3OD):
δ 8.06 (s, 1H), 7.59(d, J = 8.6 Hz, 2H), 7.37 (d,
J = 8.6 Hz, 2H), 4.35 (d, J = 15.3 Hz, 2H), 4.18
(d, J = 15.3 Hz, 2H), 3.79 (d, J = 6.7 Hz, 1H), 3.
68-3.62 (m, 1H), 3.55-3.50 (m, 1H), 3.33-3.29 (m,
2H), 3.07-3.02 (m, 2H), 2.49-2.82 (m, 2H), 2.51
(s, 3H), 2.18 (s, 3H). FABMS: m/z 604 (M+ + H).
HR-FABMS:C23H35O8N5PS2 (M+ + H) 計算値:604.1665,
実測値: 604.1690.
【0032】2. 化合物 (18a) の合成 上記1で合成した化合物 (17a) (7.3 mg, 0.012 mmol)
の CH3CN (0.1 mL)-H2O (1.0 mL) 溶液に、ジチオスレ
イトール (DDT) (10.2 mg, 0.066 mmol) の 200mM Na2H
PO4-NaH2PO4, pH 7.2 (0.2 mL) 溶液を室温で加えた。2
時間後、0.5 NHCl を加えて酸性(pH2)にした後、HP
LC (アセトニトリル/0.1% トリフルオロ酢酸水溶液 =
8/92、保持時間 12.5 分)で精製し、化合物 (18a) (5.1
mg, 80%) を得た。1 H NMR (500 MHz, CD3OD): δ 8.03 (s, 1H), 7.60 (d,
J = 8.5 Hz, 2H), 7.39(d, J = 8.5 Hz, 2H), 4.90
(d, J = 8.1 Hz, 1H), 4.41 (d, J = 14.6 Hz, 1H), 4.
33 (d, J = 14.6 Hz, 1H), 3.89 (d, J = 8.1 Hz, 1H),
3.40-3.31 (m, 1H), 3.14-3.07 (m, 1H), 2.54 (s, 3
H), 2.45-2.37 (m, 1H), 2.30-2.23 (m, 1H), 2.16 (s,
3H). FABMS: m/z 528 (M+ + H). HR-FABMS: C21H30
O8N4PS2 (M++ H) 計算値:529.1522, 実測値:529.154
7.
【0033】3. 化合物 (18b) の合成 化合物 (18a) の合成と同じ方法により、上記1で合成
した化合物 (17b)(8.3mg,0.014mmol) から化合物 (1
8b) を合成し、HPLC (アセトニトリル/0.1% トリフル
オロ酢酸水溶液 = 8/92、保持時間 13.9 分) 精製によ
り、化合物 (18b)(3.8mg,52%) を得た。1 H NMR (500 MHz, CD3OD): δ 8.08 (s, 1H), 7.60 (d,
J = 8.6 Hz, 2H), 7.39(d, J = 8.6 Hz, 2H), 4.36
(d, J = 15.1 Hz, 1H), 4.24 (d, J = 15.1 Hz, 1H),
3.85 (d, J = 6.4 Hz, 1H), 3.50-3.45 (m, 1H), 3.35-
3.30 (m, 1H), 2.66-2.50 (m, 2H),, 2.54 (s, 3H), 2.
17 (s, 3H). FABMS: m/z 528 (M+ + H).HR-FABMS: C
21H30O8N4PS2 (M+ + H) 計算値:529.1522, 実測値: 5
29.1543.
【0034】4. KLH 縮合体 (KLH-13a) の合成 化合物 (18a) (0.79 mg, 0.0015 mmol) のH2O (100 μ
L) 溶液にマレイミド活性化KLH(Pierce社より購入)の
180 mM Na2HPO4-NaH2PO4, 50 mM EDTA, pH 7.1 溶液
(タンパク濃度 2 mg/mL, 1.25 mL) を室温で加えた。24
時間後、反応混合物をゲルろ過 (Sephadex G-25M, PD-
10) (Pharmacia社製) (PBS buffer) で精製し、KLH 縮
合体 (KLH-13a)を得た。KLH-13a の epitope density、
即ち化合物(18a)のKLHへの導入量は、5,5'-ジチオビ
ス(2-ニトロ安息香酸) (DTNB) を用いる Ellman 法[El
lman G.L.ら,Arch.Biochem.Biophys.,74,443(19
58)]によって決定した (9.5 ハプテン/KLH (分子量 1
00000 あたり))。
【0035】5. KLH 縮合体 (KLH-13b) の合成 上記4のKLH 縮合体 (KLH-13a) の合成と同じ方法によ
り、化合物 (18b)(0.79mg, 0.0015 mmol) からKLH 縮合
体 (KLH-13b)を得た。KLH-13b の epitope density、即
ち化合物(18b)のKLHへの導入量は、Ellman 法によっ
て決定した (11.5 ハプテン/KLH (分子量 100000 あた
り))。
【0036】KLH 縮合体 (KLH-13a) 溶液とKLH 縮合体
(KLH-13b) 溶液の 1:1 混合物を免疫に用いた。KLH縮合
体のタンパク濃度は、BCA 法(BCA試薬:Pierce社より購
入)によって決定した(タンパク濃度:0.9 mg/mL)。
【0037】6. BSA 縮合体 (BSA-13a) の合成 化合物 (18a) (2.29 mg, 0.0043 mmol) のH2O (100 μ
L) 溶液に マレイミド活性化 BSA(Pierce社より購入)
の 180 mM Na2HPO4 -NaH2PO4, 50 mM EDTA, pH7.1 溶液
(タンパク濃度 8.6 mg/mL, 450 μL) を室温で加え
た。24 時間後、反応混合物をゲルろ過 (Sephadex G-25
M, PD-10) (Pharmacia社製) (PBS buffer) で精製し、B
SA 縮合体 (BSA-13a)を得た。BSA-13a の epitope dens
ity 、即ち化合物(18a)のBSAへの導入量は、Ellman
法によって決定した (6.5 ハプテン/BSA)。BSA-13a の
タンパク濃度は、前記と同様に BCA 法によって決定し
た (タンパク濃度 3.8-4.0 mg/mL)。
【0038】7. BSA 縮合体 (BSA-13b) の合成 前記のBSA 縮合体 (BSA-13a) の合成と同じ方法によ
り、化合物 (18b)(2.29 mg, 0.0043 mmol)からBSA 縮合
体 (BSA-13b)(タンパク濃度 2.5-3.4 mg/mL)を得た。B
SA-13b の epitope density、即ち化合物(18b)のBSA
への導入量をEllman法によって決定した(7.1 ハプテン/
BSA)。
【0039】BSA 縮合体 (BSA-13a) 溶液とBSA 縮合体
(BSA-13b) 溶液の 1:1 混合物を、以下の実施例に記載
するすべての ELISA に用いた。
【0040】実施例3 基質の合成 1. 化合物 (11) の合成
【化8】 実施例1に記載の方法で合成した化合物 (14) [ジアス
テレオマー の 1:1 混合物] (800.4 mg, 2.27 mmol)、
メタノール (4 mL)、0.5 N NaOH (8 mL) の混合物を室
温で 9 時間攪拌した。反応混合物を塩酸酸性にした
後、酢酸エチルで抽出した。合わせた有機相を飽和食塩
水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を留去し
た。反応残渣をアセトニトリル (4 mL)-塩化メチレン
(4 mL) に溶かし、室温でトリフルオロ酢酸 (2 mL) を
加えた。20 時間後、溶媒を減圧下に溜去し、HPLC (ア
セトニトリル/0.1% トリフルオロ酢酸水溶液 = 3/97)
で精製し、化合物 (11a) (保持時間 14.6 分, 94.2 mg,
17%)、 (11b) (保持時間 17.3分, 127.4 mg, 24%)、
(11a) と (11b) の混合物 (41.8 mg, 8%) を得た。 化合物 (11a): (erythro) 1H NMR (600 MHz, CD3OD):
δ 7.60 (d, J = 8.6 Hz, 2H), 7.41 (d, J = 8.6 Hz,
2H), 5.33 (d, J = 3.4 Hz, 2H), 4.29 (d, J =3.4 Hz,
2H), 2.17 (s, 3H). FABMS: m/z 239 (M+ + H). H
R-FABMS: C11H14O4N2 (M+ + H) 計算値:239.1031, 実
測値 239.1049. 化合物 (11b): (threo) 1H NMR (600 MHz, CD3OD): δ
7.63 (d, J = 8.6 Hz,2H), 7.48 (d, J = 8.6 Hz, 2H),
5.34 (d, J = 3.4 Hz, 2H), 4.18 (d, J = 3.4 Hz, 2
H), 2.17 (s, 3H). HR-FABMS: C11H14O4N2 (M+ + H)
計算値:239.1031, 実測値:239.1009.
【0041】実施例4 免疫 実施例2により製造した抗原(KLH縮合体:KLH-13a と
KLH-13b の混合物)の50 μg/ 50μL生理食塩水を等量
の完全フロイントアジュバント(DIFCO社より購入)と
混合し、Balb/c マウス(4週齢、雌)(日本エスエル
シーより購入)4匹に腹腔内注射した。10日後と20
日後、抗原 50 μg/ 50μL生理食塩水と等量の不完全
フロイントアジュバントとの混合液を追加免疫した。そ
の7日後に血清を尾静脈より採取し、この血清の抗体価
を、実施例2で合成した BSA縮合体を用いるELISAによ
り測定した。最初の免疫から数えて、42日め、77日
め、179日め、231日めに、それぞれ別のマウス1
匹ずつに、抗原 100μg/100μLの生理食塩水溶液を尾
静脈より投与(最終免疫)した。
【0042】実施例5 ハイブリドーマの作製 最終免疫より3日後にマウスから脾臓を摘出し、その脾
細胞とミエローマ細胞(X63/Ag8653) をPEGを用いる
方法に従って細胞融合した[Harlow,E. 及びLane,
D.,Antibodies A Laboratory Manual(Cold Spring Ha
rbor Laboratory)(1988)]。細胞をHAT選択培地(0.
1mM ヒポキサンチン、0.4μM アミノプテリン、0.016mM
チミジン、10%ウシ胎児血清RPMI培地)を加えた
96ウエルプレートにまいた。コロニーの現れたウエル
の培養上清について、ペルオキシダーゼ結合抗マウスIg
G(Amersham社より購入)を2次抗体として用いるELISA
を行ない、ハプテン結合活性をもつIgGを産生するハイ
ブリドーマを選別した。陽性のウエルについて、限界希
釈法によるクローニング[Harlow,E. 及び Lane,D.,
前掲]を繰り返し、最終的に、12種のクローンを得
た。
【0043】実施例6 モノクローナル抗体の調製 実施例5により作製した12種のハイブリドーマを完全
培地で培養した。培養上清をろ過 (0.45 μm)とアフィ
ニティクロマトグラフィー [抗マウス (IgG + IgM) カ
ラム(日本ガイシ製)とプロテイン G カラム(Pharmac
ia社製)]で精製した。
【0044】実施例7 ハプテンに対して高い結合活性を持つモノクローナル抗
体の特定 実施例5により調製した12種のモノクローナル抗体の
うちハプテンに対して高い結合活性を持つ抗体を、抗体
0.1 μg/mL、化合物 (13a) 25 μM、化合物 (13b) 25
μM を用いる競合的 ELISAにより決定した。
【0045】着色の程度により、ハプテン結合活性を有
する12種のモノクローナル抗体のうち、10H2 がハプ
テンに対して最も高い結合活性を示すことがわかった。
この抗体10H2 は231日めに最終免疫したマウスから
得られた抗体である。この抗体10H2 を産生するハイブ
リドーマをハイブリドーマPYA 10H2と命名した。なお、
ハイブリドーマPYA 10H2は、工業技術院生命工学工業技
術研究所に寄託されている(寄託日:平成8年11月2
7日;受託番号:FERM P−15958)。
【0046】実施例8 抗体10H2 のアセチル化 抗体10H2 (26.8 μM) の 50 mM HEPES (pH 8.0) 溶液
0.8 mL、200 mM Na2HPO4-NaH2PO4 (pH 7.2) 0.8 mL 、
ハプテン (13a) (2 mM) の水溶液 60 μL、および、ハ
プテン (13b) (2 mM) の水溶液 60 μL の混合物に、室
温で酢酸 N-ヒドロキシスクシンイミドエステル (10.6
mg) を加えた。1.5 時間後、反応混合物をゲルろ過 (Se
phadex G-25M, PD-10) (50 mM HEPES, pH 8.0) により
精製した。タンパク質を含むフラクションは、50 mM HE
PES, pH 8.0 で透析し、さらに、ゲルろ過 (Sephadex G
-25M, PD-10) (50 mM HEPES, pH 8.0) で精製し、セン
トリコン-30 (Amicon社製) (50 mM HEPES, pH 8.0) を
用いて濃縮、緩衝液交換を行なった。
【0047】試験例1 化合物(11)を基質とするレトロアルドール反応、及び
触媒活性の測定 アセチル化した抗体10H2 の 50 mM HEPES (pH 8.0) 溶
液 (90 μL) に、実施例3で合成した化合物 (11b) の
DMSO 溶液 (5 μL) とピリドキサール5’−リン酸の 5
0 mM HEPES (pH 8.0) 溶液 (5 μL) を 24 ℃ で加え、
振とう混和し、抗体濃度 10 μM、基質 (11b) の濃度 1
00 μM、ピリドキサール5’−リン酸の濃度 20 μM の
反応溶液とした。HPLC (YMC ODS AM-303、アセトニトリ
ル/0.1%トリフルオロ酢酸水溶液 = 30/70,254nm) に
より、反応溶液中の生成した4-アセトアミドベンズアル
デヒド(保持時間 5.7 分)の量を経時的に追跡し、レ
トロアルドール反応の反応初速度を求めた。また、抗体
を加えない反応溶液中の4-アセトアミドベンズアルデヒ
ド(保持時間 5.7 分)の量を同様に経時的に追跡し、
バックグラウンドのレトロアルドール反応の反応初速度
を求めた。アセチル化した抗体10H2 を用いた場合の反
応初速度は、抗体を加えない場合の反応初速度の 4 倍
を示したので、触媒抗体であると特定した。アセチル化
した抗体10H2を用いた場合の反応初速度から、バックグ
ラウンドの反応初速度を差し引いて、この条件でのアセ
チル化した抗体10H2 の正味のレトロアルドール反応の
反応初速度を0.068 μM/min と決定した。なお、実施例
3で合成した化合物 (11a) のレトロアルドール反応に
ついては、同様の条件下、アセチル化した抗体10H2を用
いた場合の反応初速度は、抗体を加えない場合の反応初
速度の2.5倍を示した。
【0048】試験例2 化合物(11b)のレトロアルドール反応についての反応
速度論的解析 Random biomolecular kinetic model[Sagel,I.H.,En
zyme kinetics;JohnWiley and Sons:New York(197
5)]にしたがって解析した。
【化9】 Ab:抗体 PLP:ピリドキサール5’−リン酸 K11b=104μM KPLP=36μM α=0.2 αK11b=21μM αKPLP=7μM kcat=1.3×10-2 min-1
【0049】試験例3 4-アセトアミドベンズアルデヒドとグリシンのアルドー
ル反応、及び触媒活性の測定 アセチル化した抗体10H2の50mM HEPES(pH8.0)溶液(8
5μL)に、グリシンの50mM HEPES(pH8.0)溶液(5μ
L)、4-アセトアミドベンズアルデヒドのDMSO溶液(5μ
L)、ピリドキサール5’−リン酸の50mM HEPES(pH8.
0)溶液(5μL)を24℃で加え、振とう混和し、抗体濃
度 10μM、グリシンの濃度 5mM、4-アセトアミドベンズ
アルデヒドの濃度 1mM、ピリドキサール5’−リン酸の
濃度 20μMの反応溶液とした。HLPC(YMC ODS AM-303、
アセトニトリル/0.1%トリフルオロ酢酸水溶液=5/95
−30/70)により、反応溶液中の生成した化合物(11
a)(保持時間5.9分)および(11b)(保持時間6.7分)
の量を経時的に追跡し、アルドール反応の反応初速度を
求めた。また、抗体を加えない反応溶液中の化合物(11
a)および(11b)の量を経時的に追跡し、バックグラウ
ンドのアルドール反応の反応初速度を求めた。アセチル
化した抗体10H2を用いた場合の化合物(11a)および(1
1b)の生成初速度は、それぞれ、抗体を加えない場合の
2倍および1.8倍を示した。アセチル化した抗体10H2
を用いた場合の反応初速度から、バックグラウンドの反
応初速度を差し引いて、この条件でのアセチル化した抗
体10H2の正味のアルドール反応の反応初速度を化合物
(11a)の生成については 0.0034μM/mim、化合物(11
b)については 0.0013μM/minと決定した。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C12P 7/24 C12P 13/04 13/04 C12N 5/00 B // C12N 15/02 15/00 C (C12P 21/08 C12R 1:91) (C12N 5/10 C12R 1:91)

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アルドール反応を行なう方法であって、
    触媒抗体と、コファクターとしてピリドキサール5’−
    リン酸を用いることを特徴とする方法。
  2. 【請求項2】 触媒抗体とピリドキサール5’−リン酸
    の存在下に、アルデヒドとグリシンを反応させることを
    含んでなる、β−ヒドロキシα−アミノ酸の製造方法。
  3. 【請求項3】 レトロアルドール反応を行なう方法であ
    って、触媒抗体と、コファクターとしてピリドキサール
    5’−リン酸を用いることを特徴とする方法。
  4. 【請求項4】 触媒抗体とピリドキサール5’−リン酸
    の存在下に、β−ヒドロキシα−アミノ酸を反応させる
    ことを含んでなる、アルデヒドとグリシンを製造する方
    法。
  5. 【請求項5】 該アルデヒドが、4−アセトアミドベン
    ズアルデヒドである、請求項2又は4の方法。
  6. 【請求項6】 該触媒抗体が、ピリドキサール5’−リ
    ン酸とβ−ヒドロキシα−アミノ酸とから生成するイミ
    ンを還元して得られるアミンをハプテンとして、抗原刺
    激により産生されるものである、請求項1〜4のいずれ
    かに記載の方法。
  7. 【請求項7】 該アミンが、式(I): 【化1】 [式中、R1は、アシル、アシルアミノ、アルキルオキ
    シ、アルキルチオ、ヒドロキシ又はフェニルによって置
    換されていてもよい、アルキル基若しくはフェニル基を
    表す]で表される化合物である、請求項6に記載の方
    法。
  8. 【請求項8】 該アミンが、式(Ia): 【化2】 で表される化合物である、請求項7に記載の方法。
  9. 【請求項9】 該触媒抗体が、ハイブリドーマ PYA 10H
    2(受託番号 FERM P-15958)から産生されるものである
    請求項8に記載の方法。
  10. 【請求項10】 請求項6〜8のいずれかに記載のアミ
    ンをハプテンとする抗原刺激により産生される抗体。
  11. 【請求項11】 ハイブリドーマ PYA 10H2(受託番号
    FERM P-15958)から産生される抗体。
  12. 【請求項12】 ハイブリドーマ PYA 10H2(受託番号
    FERM P-15958)。
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