JPH10178223A - 固体レーザ装置 - Google Patents

固体レーザ装置

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Publication number
JPH10178223A
JPH10178223A JP33691796A JP33691796A JPH10178223A JP H10178223 A JPH10178223 A JP H10178223A JP 33691796 A JP33691796 A JP 33691796A JP 33691796 A JP33691796 A JP 33691796A JP H10178223 A JPH10178223 A JP H10178223A
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JP
Japan
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wavelength
laser
light
semiconductor laser
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Application number
JP33691796A
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English (en)
Inventor
Katsuhiko Shimomura
克彦 下村
Kenji Suzuki
健司 鈴木
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Mitsui Chemicals Inc
Original Assignee
Mitsui Chemicals Inc
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 励起光の高出力化およびレーザ媒質における
吸収効率の向上によって、高効率かつ高出力な固体レー
ザ装置を提供する。 【解決手段】 固体レーザ装置は、レーザ媒質26を含
む光共振器23と、レーザ媒質26を励起する励起光3
1を放射するブロードエリア型半導体レーザ21と、半
導体レーザ21から放射される放射光32を反射して、
半導体レーザ21に帰還するためのミラー30と、半導
体レーザ21とミラー30との間に介在する波長選択素
子29などで構成される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、分析、計測、医
療、ディスプレー、光記録などの分野で、光源として使
用される固体レーザ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】図12は、従来の固体レーザ装置の一例
を示す構成図である。固体レーザ装置は、励起光11を
放射する光源である半導体レーザ1と、励起光11を集
束するレンズ系2および光共振器3が、光軸5上に配置
されて構成されている。光共振器3は、レーザ媒質6と
出力ミラー7とで構成される。
【0003】レーザ媒質6の端面6aには励起光11の
波長に対して透過率が80%以上で、かつレーザ媒質6
の発振波長に対して反射率が99.9%のコーティング
が施される。また、レーザ媒質6の端面6bにはレーザ
媒質6の発振波長に対して反射率が0.1%以下のコー
ティングが施される。一方、出力ミラー7の端面7aに
はレーザ媒質6の発振波長に対して反射率が99.0%
のコーティングが施され、これら2つの端面6a、7a
によってレーザ媒質6の発振波長における光共振器構造
が形成される。
【0004】半導体レーザ1から放射された励起光11
がレンズ系2によって集束されて、レーザ媒質6に入射
すると、レーザ媒質6中に反転分布が形成されて光増幅
が可能になる。この結果、光共振器3においてレーザ発
振が起こり、その一部が出力ミラー7を透過して出力光
13として出力される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】こうした固体レーザ装
置を高出力化するには、励起用の半導体レーザ1の高出
力化、励起光11の伝搬損失の低減、レーザ媒質6にお
ける励起光11の吸収効率の向上、光共振器3での発振
効率の向上、等が挙げられる。
【0006】励起光11の波長はレーザ媒質6の吸収効
率がピークとなる波長と一致するのが理想的であり、半
導体レーザ1として単一縦モードの半導体レーザを使用
することによって、安定した光励起を行うことができ
る。
【0007】しかしながら、単一縦モードの半導体レー
ザの出力は現時点で200mW程度が限界であり、この
ときの出力光13は数mW程度しか得られない。
【0008】本発明の目的は、励起光の高出力化および
レーザ媒質の吸収効率の向上を図ることによって、高効
率かつ高出力な固体レーザ装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、レーザ媒質を
含む光共振器と、該レーザ媒質を励起する励起光を放射
する半導体レーザとを備えた固体レーザ装置において、
前記半導体レーザは、縦多モード発振する半導体レーザ
であって、半導体レーザから放射される放射光を反射し
て、該半導体レーザに帰還するための光帰還手段と、半
導体レーザと光帰還手段との間に介在する波長選択素子
とを備えることを特徴とする固体レーザ装置である。本
発明に従えば、縦多モード発振する半導体レーザが高い
出力を有するため、励起光の高出力化を実現できる。一
方、縦多モード発振する半導体レーザから放射される励
起光のスペクトル半値幅は1.2nm程度であり、例え
ばレーザ媒質としてNd3+イオンが1%程度ドープされ
たY3Al512結晶を使用する場合、その吸収スペクト
ルの半値幅は1nm以下であるため、結晶長1mmの場
合には励起光の1/2以下しかレーザ媒質に吸収されな
い。その対策として、半導体レーザから放射される放射
光を波長選択素子を介して再び半導体レーザに帰還する
ことによって、半導体レーザの発振スペクトルを波長選
択素子の選択帯域に制限することができる。そのため、
波長選択素子の選択帯域を狭帯域なものに設定すること
によって、半導体レーザの発振スペクトルを狭帯域化で
き、レーザ媒質の吸収効率を格段に向上させることがで
きる。こうして励起光の高出力化およびレーザ媒質の吸
収効率の向上によって、固体レーザ装置の高出力化・高
効率化を実現できる。なお、本発明に係る波長選択素子
として、グレーティング、複屈折フィルタ、誘電体多層
膜コーティング、等の波長フィルタが使用可能である。
【0010】また本発明は、波長選択素子の透過スペク
トルの半値全幅が0.8nm〜3.0nmの範囲にある
ことを特徴とする。本発明に従えば、波長選択素子の透
過スペクトルの半値全幅を0.8nm未満に狭くし過ぎ
ると、波長選択素子の透過損失が大きくなってしまい、
半導体レーザからの励起光強度が減少してしまう。ま
た、波長選択素子の透過スペクトルの半値全幅を3.0
nmより大きくし過ぎると、励起光のスペクトルがレー
ザ媒質の吸収スペクトルよりブロードになって、レーザ
媒質での吸収効率が低下する。したがって、波長選択素
子の透過スペクトルを適切な範囲、すなわち半値全幅で
0.8nm〜3.0nmの範囲内に設定することが好ま
しい。
【0011】また本発明は、波長選択素子は、誘電体多
層膜を用いたバンドパスフィルタであることを特徴とす
る。本発明に従えば、グレーティングや複屈折フィルタ
と比べて、配置角度の精度を緩和でき、しかも小型で軽
量なフィルタが得られるため、固体レーザ装置の組立が
容易になり、装置を小型化できる。
【0012】また本発明は、レーザ媒質は、Nd3+イオ
ンを添加したY3Al512結晶であることを特徴とす
る。本発明に従えば、Y3Al512結晶(YAG)は波
長809nm付近に半値幅が約1nmの吸収ピークを有
し、レーザ媒質としての発振効率も優れている。また、
波長809nm付近の近赤外領域の半導体レーザは一般
的なAlGaAs系の化合物半導体で製造可能であり、
高出力で長寿命のものを使用できる。また、ブロードエ
リア型の半導体レーザを使用すると、発振スペクトルが
一般にブロードになるが、波長選択素子による励起光の
狭帯域化によってレーザ媒質の吸収効率を高く維持で
き、高効率のレーザ発振が可能になる。
【0013】また本発明は、光共振器におけるレーザ発
振がNd3+イオンの43/249/2遷移で行われること
を特徴とする。43/249/2遷移によるレーザ発振は
いわゆる擬3準位系であり、レーザ発振波長と一致する
光吸収が存在するため、レーザ媒質の結晶長を長くして
励起光の吸収効率を向上しようとすると、レーザ出力が
むしろ低下するという問題がある。本発明によれば、波
長選択素子による励起光の狭帯域化によってレーザ媒質
の結晶長を長くすることなく励起光の吸収効率を向上す
ることができ、高効率のレーザ発振が可能になる。
【0014】また本発明は、光共振器内に光共振器の発
振波長を変換する波長変換素子を備え、波長変換された
光を出力光として光共振器外に取出すことを特徴とす
る。本発明に従えば、光共振器内に波長変換素子を配置
する構成において、励起光から基本波への波長変換、お
よび基本波から出力光への波長変換という2段階の波長
変換を経由することになって、一般に全体の変換効率が
低下する傾向にあるが、波長選択素子による励起光の狭
帯域化によってレーザ媒質による基本波発振の効率が向
上し、最終的に波長変換された出力光の出力も大幅に向
上できる。
【0015】また本発明は、波長変換素子はKNbO3
単結晶であることを特徴とする。本発明に従えば、KN
bO3 単結晶の非線形光学定数は、実用的な無機結晶の
中で最大であるため、レーザ媒質による基本波を効率よ
く第2高調波や和周波等に変換することができる。
【0016】以下、本発明の原理について詳説する。図
1に示すように、固体レーザ装置は、励起光31を放射
する光源であるブロードエリア型半導体レーザ21と、
励起光31を集束するレンズ系22および光共振器23
が、光軸25上に配置されて構成されている。半導体レ
ーザ21の前側端面21aから放射された励起光31が
レンズ系22によって集束されて、レーザ媒質26に入
射すると、レーザ媒質26中に反転分布が形成され、光
共振器23の内部でレーザ発振が起こり、その一部が出
力ミラー27を通過して出力光33として出力される。
【0017】一方、半導体レーザ21から後方には、レ
ンズ28、波長選択素子29およびミラー30が光軸2
5に沿って配置されている。半導体レーザ21の後側端
面21bから放射された放射光32は、レンズ28によ
りコリメートされ、波長選択素子29を通過した後、ミ
ラー30により反射され、再び波長選択素子29を通過
してレンズ28により集光されて、半導体レーザ21に
帰還する。
【0018】こうした配置において、半導体レーザ21
の前側端面21aとミラー30との間で外部共振器36
を構成している。外部共振器36の発振波長は、半導体
レーザ21自体のゲイン分布と、外部共振器36内の全
光学素子のロスの分布により決定される。しかし、半導
体レーザ21のゲイン分布は半値幅30nmと広く、ま
た波長選択素子29以外の光学素子のロスの波長依存性
は極めて小さいため、外部共振器36の発振波長は波長
選択素子29の特性によって実質上決定される。すなわ
ち、波長選択素子29の透過波長において光学ロスが極
小となるため、この周辺の波長が外部共振器36の発振
波長となる。
【0019】ここで、波長選択素子29の透過スペクト
ルを狭帯域のバンドパス特性に設定することによって、
透過波長からの微小な波長差でロスが急激に増大するた
め、放射光32のスペクトルは狭帯域化する。前側端面
21aの透過率は波長依存性が殆ど無いため、励起光3
1のスペクトルは放射光32のスペクトルと等しくな
る。こうして放射光32の狭帯域化とともに励起光31
も狭帯域化し、その中心波長をレーザ媒質26の吸収ピ
ークに一致させることによって、レーザ媒質26におけ
る励起光31の吸収効率が格段に向上する。これによっ
て出力光33の出力も増大し、固体レーザ装置の高効率
化・高出力化を実現できる。
【0020】以上の説明では、外部共振器36を半導体
レーザ21の前側端面21aとミラー30との間で構成
する例を示したが、外部共振器構造は半導体レーザ21
の後側端面21bとレーザ媒質26の入射側端面26a
との間で構成することも可能である。この場合、半導体
レーザの前側端面21aを出射した励起光31はレンズ
系22を通過した後、レーザ媒質26の端面26aで部
分的に反射され、再びレンズ系22を通過して半導体レ
ーザ21に帰還する。この配置では、波長選択素子をレ
ンズ22aとレンズ22bの間に挿入することが望まし
い。レンズ22aとレンズ22bの間では励起光31が
平行光となっていて、波長選択素子が最も有効に機能す
るからである。
【0021】なお、波長選択素子を挿入した外部共振器
構造を単一モード型半導体レーザに適用することは既に
公知である(特開平6−75261)。しかし、単一モ
ード型半導体レーザは発振スペクトル全体のシフトおよ
び安定化が可能であるが、上述のようなスペクトルが狭
帯域化するという効果はなく、出力光の出力には殆ど変
化がない。すなわち、励起光スペクトルの狭帯域化によ
る高効率化・高出力化という効果は、波長選択素子を挿
入した外部共振器構造を縦多モード発振する半導体レー
ザに適用することにより実現できるものである。
【0022】本発明においては、波長選択素子29の透
過スペクトル幅が狭いほど励起光31のスペクトルも狭
帯域化する傾向があり、この観点からは波長選択素子2
9の透過スペクトル幅は狭いほど好ましい。しかし、励
起光31の狭帯域化には一定の限界があり、波長選択素
子29の透過スペクトル幅を狭くし過ぎると、放射光3
2が波長選択素子29において大きなロスを受けること
になる。すなわち、波長選択素子29の透過スペクトル
幅は、一定の最適範囲が存在することになる。本発明に
おいては、実験によって(実施例2参照)この最適な透
過スペクトルの半値全幅が0.8〜3.0nmであるこ
とが好ましいことを見出している。
【0023】本発明における波長選択素子29として
は、グレーティング、複屈折フィルター、誘電体多層膜
コーティングによるバンドパスフィルタ等を用いること
ができるが、精密な角度調整を必要としない点、少ない
素子数で構成できる点から、誘電体多層膜コーティング
によるバンドパスフィルタを用いることが好ましい。
【0024】また、Nd3+イオンを添加したY3Al5
12結晶は、809nm付近の吸収ピークの半値幅が約1
nmと狭いため、通常の縦多モード発振する半導体レー
ザの光吸収効率が低くなる。このため、Nd3+イオンを
添加したY3Al512結晶をレーザ媒質26として用い
る場合、本発明により励起光31のスペクトルを狭帯域
化して励起することが固体レーザの出力・効率の向上に
資する。
【0025】本発明における縦多モード発振する半導体
レーザとしては活性層に平行な方向の光閉じ込めを行っ
ていないいわゆるブロードエリア型や、同方向に光閉じ
込めを行ういわゆる実屈折率導波型や、複素屈折率導波
型があげられる。なかでもブロードエリア型がより高い
励起出力を出すので好ましい。
【0026】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)図1は、本発明の第1実施形態を示す
構成図である。固体レーザ装置は、励起光源であるブロ
ードエリア型の半導体レーザ21と、励起光31を集束
するレンズ系22と、光共振器23と、外部共振器用光
学系24とが光軸25上に配置されて構成されている。
レンズ系22は、コリメートレンズ22aと集光レンズ
22bとで構成される。光共振器23は、レーザ媒質2
6と出力ミラー27とで構成される。外部共振器用光学
系24は、レンズ28と、波長選択素子29と、光帰還
用のミラー30とで構成される。
【0027】半導体レーザ21は、ブロードエリア型の
縦多モード発振するので、発光領域の厚さ1μm、スト
ライプ幅50μmのAlGaAs系半導体レーザであ
り、その最大出力は1W、発振波長は809nm、スペ
クトルの半値全幅は1.2nmである。レンズ22a、
22bおよび28は、何れも焦点距離4.1mm、開口
数(NA)0.45のプラスチックレンズで構成され
る。レーザ媒質26は、Nd3+イオンが1.4at%添
加されたY3Al512単結晶であり、その結晶長は1m
mである。出力ミラー27は材質がBK7で形成され、
一方の端面27aの曲率半径は7.8mmであり、他方
の端面27bは平面である。レーザ媒質26の端面26
bと出力ミラー27の端面27aとの距離は光軸105
上で5mmに設定される。
【0028】レーザ媒質26の端面26aには励起光3
1の波長809nmおいて透過率が83%で、かつ発振
光の波長946nmにおいて反射率が99.9%である
コーティングが施され、もう一方の端面26bには波長
946nmにおいて反射率が0.1%であるコーティン
グが施されている。一方、出力ミラー27の曲面状の端
面27aには波長946nmにおいて反射率が99.0
%のコーティングが施されている。ここで、2つの端面
26a、27aの間で波長946nmの発振光に対する
光共振器23が構成される。
【0029】半導体レーザ21の前側端面21aから放
射された励起光31がレンズ系22によって集束され
て、レーザ媒質26に入射すると、レーザ媒質26中に
反転分布が形成され、光共振器23において波長946
nmのレーザ発振がおこり、その一部が出力ミラー27
を透過して出力光33として出力される。
【0030】一方、半導体レーザ21の後側端面21b
から放射された放射光32は、レンズ28によって平行
光となり、波長選択素子29を通過した後、ミラー30
により反射され、再び波長選択素子29を通過した後、
レンズ28により集光されて、半導体レーザ21に帰還
する。この結果、半導体レーザ21の前側端面21aと
ミラー30との間で外部共振器36が形成されることに
なる。外部共振器36の発振波長は波長選択素子29の
透過波長で決定される。
【0031】波長選択素子29は、厚さ0.5mmのB
K7製の基板上に誘電体多層膜コーティングを施したバ
ンドパスフィルタであり、その透過率は波長808.5
nmにおいて85%の最大値を示し、透過スペクトルの
半値全幅(FWHM)は0.8nmである(図2参
照)。こうした選択特性を有する波長選択素子29を用
いることによって、放射光32の中心波長は808.5
nmとなり、そのスペクトルの半値全幅は0.5nmに
なった。
【0032】半導体レーザ21の前側端面21aの透過
率は809nm付近での波長依存性が殆ど無いため、励
起光31のスペクトルは放射光32のスペクトルと等し
く、その中心波長は808.5nm、スペクトル半値全
幅は0.5nmとなった。
【0033】図3(a)は励起光31のスペクトル、図
3(b)はブロードエリア型半導体レーザ単体のスペク
トルをそれぞれ示すグラフである。これらのグラフを見
ると、波長選択素子29を用いた光帰還によって励起光
31のスペクトルが半値全幅1.2nmから半値全幅
0.5nmに狭帯域化したことが判る。レーザ媒質26
であるNd:YAGの吸収スペクトルの半値全幅は約1
nmであるため、励起光31はレーザ媒質26において
高効率で吸収される。
【0034】第1実施形態の固体レーザ装置の出力特性
を図4(a)に示す。縦軸は出力光33の出力であり、
横軸は励起光31の出力(前側端面21aの直近で測
定)である。グラフを見ると、励起光31の出力が90
0mWのとき、出力光33の出力は56mWであること
が判る。
【0035】(第1比較例)次に第1比較例について説
明する。第1比較例は図12の構成と同様であり、固体
レーザ装置は、ブロードエリア型の半導体レーザ1と、
レンズ系2と、光共振器3とが光軸5上に配置されて構
成され、第1実施形態と比べて外部共振器用光学系24
が存在しない点で相違する。
【0036】第1比較例において、半導体レーザ1は、
ストライプ幅50μmのAlGaAs系半導体レーザで
あり、その最大出力は1W、発振波長は809nm、ス
ペクトルの半値全幅は1.2nmである。レンズ2a、
2bは、焦点距離4.1mm、開口数(NA)0.45
のプラスチックレンズである。レーザ媒質6は、Nd3+
イオンが1.4at%添加されたY3Al512単結晶で
あり、結晶長は1mmである。出力ミラー7はBK7製
であり、端面7aの曲率半径は7.8mm、端面7bは
平面である。レーザ媒質6の端面6bと出力ミラー7の
端面7aとの間の距離は、光軸5上で5mmである。
【0037】レーザ媒質6の端面6aには、励起光11
の波長809nmおいて透過率が83%で、発振光の波
長946nmにおいて反射率が99.9%であるコーテ
ィングが施され、もう一方の端面6bには波長946n
mにおいて反射率が0.1%以下であるコーティングが
施されている。一方、出力ミラー7の端面7aには波長
946nmにおいて反射率が99.0%のコーティング
が施されている。ここで、2つの端面6a、7aによっ
て波長946nmの光に対する光共振器3が形成され
る。
【0038】第1比較例においては、半導体レーザ1の
スペクトルを何ら制御していないため、励起光11のス
ペクトル半値全幅は半導体レーザ1単体のものと同じ
1.2nmであった。レーザ媒質6であるNd:YAG
の吸収スペクトルの半値全幅は約1nmなので、レーザ
媒質6における励起光11の吸収効率は第1実施形態と
比較して低くなる。
【0039】第1比較例の出力特性を図4(b)に示
す。励起光11の出力が900mW(端面1aの直近で
測定)のとき、出力光13の出力は33mWだった。図
4(a)と(b)のグラフを比較すると、本発明によっ
てレーザ媒質の励起効率が向上し、同一出力の励起光か
ら約2倍の出力が得られることが判る。
【0040】(第2比較例)次に第2比較例について説
明する。第2比較例は図1の構成と同様であるが、半導
体レーザ21として単一モード型のものを使用した点が
相違する。
【0041】半導体レーザ21は、発光領域の厚さ1μ
mで、ストライプ幅3μmの単一モード型のAlGaA
s系半導体レーザであり、その最大出力は200mW、
発振波長は808.5nm、スペクトルの半値全幅は1
-5nmである。
【0042】半導体レーザ21の発振波長は波長選択素
子29の透過波長によって決定され、波長選択素子29
の透過率は波長808.5nmにおいて85%の最大値
を示し、透過スペクトルの半値全幅は、0.8nmであ
る。
【0043】図5は第2比較例での励起光のスペクトル
を示し、図5(a)は波長選択素子29が存在する場
合、図5(b)は波長選択素子29が無い場合を示す。
図5(a)での発振波長は808.5nmであり、波長
選択素子29の最大透過波長に一致する。一方、図5
(b)での発振波長も808.5nmであり、両者とも
レーザ媒質26であるYAGの吸収スペクトルのピーク
にほぼ一致している。スペクトル半値全幅は極めて狭小
なため通常の分光器では測定不能だったが、両者とも
0.01nm以下であり、この数値はレーザ媒質26で
あるNd:YAGの吸収スペクトルの半値全幅1nmよ
り充分に小さい。
【0044】図6は第2比較例での出力特性を示し、図
6(a)は波長選択素子29が存在する場合、図6
(b)は波長選択素子29が無い場合を示す。縦軸は出
力光33の出力で、横軸は励起光31の出力である。グ
ラフを見ると、両者には殆ど差がなく、励起光31の出
力が200mWのとき、出力光33の出力はそれぞれ1
1.5mWおよび10.5mWであった。
【0045】この原因として、外部共振器構造によるス
ペクトル制御を行う前から、単一モード型の半導体レー
ザ21のスペクトル幅が、レーザ媒質26の吸収スペク
トル幅より充分に小さいため、波長選択素子を含む外部
共振器構造を適用しても、吸収効率はこれ以上向上しな
いためと考えられる。すなわち、単一モード型の半導体
レーザに波長選択素子を含む外部共振器を適用しても、
第1実施形態のような効果は生じないことが判る。
【0046】また、単一モード型半導体レーザによる光
励起を用いると、最大出力がブロードエリア型の約1/
5であるため、得られる出力光は最大11.5mWに留
まり、第1比較例の1/3、第1実施形態の1/5しか
得られないことが判る。
【0047】(第2実施形態)図7は、本発明の第2実
施形態を示す構成図である。第2実施形態は、第1実施
形態と同様な構成であるが、波長選択素子29が他の波
長選択素子29a、29b等と交換可能な構造になって
いる点が相違する。
【0048】以下、波長選択素子29の透過スペクトル
の半値全幅が、半導体レーザ21から放射される励起光
31のスペクトルに与える影響について検討した結果を
説明する。
【0049】波長選択素子29として、透過スペクトル
の半値全幅が0.3nm、0.8nm、1.8nm、
3.0nm、4.0nm、および5.0nmの誘電体多
層膜コーティングを用いた合計6種類のバンドパスフィ
ルタを用意し、順番に差し替えながら励起光31のスペ
クトルを各バンドパスフィルタについて測定し、これら
の半値全幅をそれぞれ計測した。測定条件は、ブロード
エリア型の半導体レーザ21の温度が25℃、励起光3
1の出力が900mW、単体の励起光31のスペクトル
の半値全幅は約1.1nmである。
【0050】図8は、励起光31のスペクトルの半値全
幅の測定結果を示すグラフである。横軸は波長選択素子
29の透過スペクトルの半値全幅である。グラフを見る
と、波長選択素子29の透過スペクトル半値全幅が減少
するにともない、励起光31のスペクトルも狭帯域化し
ていることが判る。たとえば波長選択素子29の半値全
幅が4.0nmおよび5.0nmの場合には、励起光3
1のスペクトルの半値全幅は波長選択素子29が無い場
合とほとんど変わらない。したがって、励起光31を狭
帯域化するには、波長選択素子29の透過スペクトルの
半値全幅を3.0nm以下に設定することが好ましい。
【0051】しかし、狭帯域化には一定の限界があり、
透過スペクトルの半値全幅が0.8nmから0.3nm
に減少しても、励起光31のスペクトルの半値全幅はほ
とんど変化していない。この場合、放射光32は波長選
択素子29において大きなロスを受けることになる。し
たがって、波長選択素子29の透過スペクトルの半値全
幅を0.8nm以上に設定することが好ましい。
【0052】(第3実施形態)図9は、本発明の第3実
施形態を示す構成図である。第3実施形態は、第1実施
形態と同様な構成であるが、光共振器23に波長変換素
子34が配置されている点が相違する。
【0053】波長変換素子34は結晶長3mmのKNb
3 単結晶で形成され、レーザ媒質26と出力ミラー2
7との間に位置する。レーザ媒質26の端面26bと波
長変換素子34の端面34aとの距離は光軸25上で
0.5mmであり、波長変換素子34の端面34bと出
力ミラー27の端面27aとの距離は光軸25上で3m
mである。波長変換素子34の端面34a、34bに
は、波長946nmにおいて反射率が0.1%以下であ
るコーティングが施され、レーザ媒質26の端面26a
および出力ミラー27の端面27aによって、レーザ媒
質26の発振波長946nmの光に対する光共振器23
が形成されている。
【0054】動作に関して、第1実施形態と同様に、半
導体レーザ21の前側端面21aから放射された励起光
31がレンズ系22によって集束されて、レーザ媒質2
6に入射すると、レーザ媒質26中に反転分布が形成さ
れ、光共振器23において波長946nmのレーザ発振
がおこり、基本波35として光共振器23内に蓄積され
る。基本波35は、波長変換素子34を通過することに
より波長473nmの第2高調波に変換され、出力光3
3として光共振器外に取り出される。
【0055】一方、半導体レーザ21の後側端面21b
から放射された放射光32は、レンズ28によって平行
光となり、波長選択素子29を通過した後、ミラー30
により反射され、再び波長選択素子29を通過した後、
レンズ28により集光されて、半導体レーザ21に帰還
する。この結果、半導体レーザ21の前側端面21aと
ミラー30との間で外部共振器36が形成されることに
なる。外部共振器36の発振波長は波長選択素子29の
透過波長で決定される。
【0056】波長選択素子29は、第1実施形態と同様
に、波長808.5nmにおいて85%の最大値を示
し、透過スペクトルの半値全幅(FWHM)は0.8n
mであるバンドパスフィルタである。こうした波長選択
素子29を用いることによって、放射光32および励起
光31の中心波長は808.5nmとなり、そのスペク
トルの半値全幅は1.2nmから0.5nmに狭帯域化
された。レーザ媒質26であるNd:YAGの吸収スペ
クトルの半値全幅は約1nmであるため、励起光31は
レーザ媒質26において高効率で吸収されることにな
る。
【0057】第3実施形態の固体レーザ装置の出力特性
を図11(a)に示す。縦軸は第2高調波である出力光
33の出力であり、横軸は励起光31の出力(前側端面
21aの直近で測定)である。グラフを見ると、励起光
31の出力が900mWのとき、出力光33の出力は3
9mWであることが判る。
【0058】(第3比較例)図10は、第3比較例を示
す構成図である。第3比較例は波長変換素子を含むこと
を除いては図12の構成と同様であり、固体レーザ装置
は、ブロードエリア型の半導体レーザ1と、レンズ系2
と、波長変換素子4を含む光共振器3とが光軸5上に配
置されて構成され、第3実施形態と比べて外部共振器用
光学系24が存在しない点で相違する。
【0059】波長変換素子4は結晶長3mmのKNbO
3 単結晶で形成され、レーザ媒質6と出力ミラー7との
間に位置する。レーザ媒質6の端面6bと波長変換素子
4の端面4aとの距離は光軸5上で0.5mmであり、
波長変換素子4の端面4bと出力ミラー7の端面7aと
の距離は光軸5上で3mmである。波長変換素子4の端
面4a、4bには、波長946nmにおいて反射率が
0.1%以下であるコーティングが施され、レーザ媒質
6の端面6aおよび出力ミラー7の端面7によって、レ
ーザ媒質6の発振波長946nmの光に対する光共振器
3が形成されている。
【0060】第3比較例においては、半導体レーザ1の
発振スペクトルを何ら制御していないため、励起光11
のスペクトル半値全幅は半導体レーザ1単体のものと同
じ1.2nmであった。レーザ媒質6であるNd:YA
Gの吸収スペクトルの半値全幅は約1nmなので、レー
ザ媒質6における励起光11の吸収効率は第3実施形態
と比較して低くなる。
【0061】第3比較例の出力特性を図11(b)に示
す。励起光11の出力が900mW(端面1aの直近で
測定)のとき、第2高調波である出力光13の出力は1
7mWだった。図11(a)と(b)のグラフを比較す
ると、本発明によってレーザ媒質の励起効率が向上し、
同一出力の励起光から約2倍の高調波出力が得られるこ
とが判る。
【0062】
【発明の効果】以上詳説したように本発明によれば、高
出力の励起光が得られるブロードエリア型の半導体レー
ザを用いて、かつ波長選択素子を含む帰還光学系を採用
することによって、半導体レーザの発振スペクトルを狭
帯域化できるため、レーザ媒質の吸収効率を格段に向上
できる。
【0063】こうして励起光の高出力化およびレーザ媒
質の吸収効率の向上によって、固体レーザ装置の高出力
化・高効率化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態を示す構成図である。
【図2】波長選択素子29の透過スペクトルを示すグラ
フである。
【図3】図3(a)は励起光31のスペクトル、図3
(b)はブロードエリア型半導体レーザ単体のスペクト
ルをそれぞれ示すグラフである。
【図4】図4(a)は第1実施形態の出力特性、図4
(b)は第1比較例の出力特性をそれぞれ示すグラフで
ある。
【図5】第2比較例での励起光スペクトルを示すグラフ
であり、図5(a)は波長選択素子29が存在する場
合、図5(b)は選択波長素子29が無い場合を示す。
【図6】第2比較例での出力特性を示すグラフであり、
図6(a)は波長選択素子29が存在する場合、図6
(b)は選択波長素子29が無い場合を示す。
【図7】本発明の第2実施形態を示す構成図である。
【図8】第2実施形態での励起光31のスペクトルの半
値全幅の測定結果を示すグラフである。
【図9】本発明の第3実施形態を示す構成図である。
【図10】第3比較例を示す構成図である。
【図11】図11(a)は第3実施形態の出力特性、図
11(b)は第3比較例の出力特性をそれぞれ示すグラ
フである。
【図12】従来の固体レーザ装置の一例を示す構成図で
ある。
【符号の説明】
22 レンズ系 23 光共振器 24 外部共振器用光学系 25 光軸 26 レーザ媒質 27 出力ミラー 28 レンズ 29 波長選択素子 30 ミラー 31 励起光 32 放射光 33 出力光 34 波長変換素子 36 外部共振器

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 レーザ媒質を含む光共振器と、 該レーザ媒質を励起する励起光を放射する半導体レーザ
    とを備えた固体レーザ装置において、 前記半導体レーザは、縦多モード発振する半導体レーザ
    であって、 半導体レーザから放射される放射光を反射して、該半導
    体レーザに帰還するための光帰還手段と、 半導体レーザと光帰還手段との間に介在する波長選択素
    子とを備えることを特徴とする固体レーザ装置。
  2. 【請求項2】 波長選択素子の透過スペクトルの半値全
    幅が0.8nm〜3.0nmの範囲にあることを特徴と
    する請求項1記載の固体レーザ装置。
  3. 【請求項3】 波長選択素子は、誘電体多層膜を用いた
    バンドパスフィルタであることを特徴とする請求項1ま
    たは2記載の固体レーザ装置。
  4. 【請求項4】 レーザ媒質は、Nd3+イオンを添加した
    3Al512結晶であることを特徴とする請求項1〜3
    のいずれかに記載の固体レーザ装置。
  5. 【請求項5】 光共振器におけるレーザ発振がNd3+
    オンの43/249/2遷移で行われることを特徴とする
    請求項1〜4記載の固体レーザ装置。
  6. 【請求項6】 光共振器内に光共振器の発振波長を変換
    する波長変換素子を備え、波長変換された光を出力光と
    して光共振器外に取出すことを特徴とする請求項1〜5
    のいずれかに記載の固体レーザ装置。
  7. 【請求項7】 波長変換素子はKNbO3 単結晶である
    ことを特徴とする請求項6記載の固体レーザ装置。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010109070A (ja) * 2008-10-29 2010-05-13 Osaka Prefecture Univ 多波長レーザー発振装置およびそれを備えてなるテラヘルツ波発生装置
JPWO2017022142A1 (ja) * 2015-08-04 2017-11-30 三菱電機株式会社 半導体レーザ装置

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JP2010109070A (ja) * 2008-10-29 2010-05-13 Osaka Prefecture Univ 多波長レーザー発振装置およびそれを備えてなるテラヘルツ波発生装置
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