JPH1017695A - 高撥水性表面を有する物品及びその製法 - Google Patents

高撥水性表面を有する物品及びその製法

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JPH1017695A
JPH1017695A JP8188881A JP18888196A JPH1017695A JP H1017695 A JPH1017695 A JP H1017695A JP 8188881 A JP8188881 A JP 8188881A JP 18888196 A JP18888196 A JP 18888196A JP H1017695 A JPH1017695 A JP H1017695A
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卓三 斉藤
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 塩害防止、着雪防止、汚染防止等のための、
高撥水性表面を有する物品の提供。 【解決手段】 平均粒子径0.1〜0.5μmのテトラ
フルオロエチレン(THF)樹脂粒子の積み重なりによ
り形成されたミクロンオーダーの空隙を有する非定形多
孔質体の表面に、図1に示されるような、直径10〜1
00μmの窪み、及び/又は幅5〜150μmの亀裂が
多数存在する高撥水性表面を有するTHF樹脂非定形多
孔質体。この多孔質体は通常、基材表面にポリイミドま
たはポリアミドイミドにより固定された状態で使用さ
れ、上記TFE樹脂、ポリアミック酸を含む水溶性有機
液体に発泡剤及び/又は凝集剤を添加混合して得られた
混合液を基材上に塗布した後、加熱してポリイミドまた
はポリアミドイミドを形成させることにより製造するこ
とができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、改善された撥水性
表面を有するテトラフルオロエチレン樹脂非定形多孔質
体及びそれがポリイミドまたはポリアミドイミドにより
基材上に固定されている物品とその製法に関する。
【0002】
【従来の技術】産業機器や家庭用機器等の表面に、撥水
性、耐候性や防汚性等の特性を付与することが要求され
ている。このような表面特性を持たせるために、従来物
品表面をブラストやエッチングで粗面化しさらにプライ
マー等で処理した後、非粘着性に優れたポリテトラフル
オロエチレン(PTFE)等の含フッ素樹脂粒子を含有
したエナメル等の塗料を塗装し、乾燥後350−400
℃で焼成処理を行い、物品表面に含フッ素樹脂を塗装す
る方法が多く用いられてきた。
【0003】これらは含フッ素樹脂の有する撥水特性を
利用したものであるが、物品の撥水性は、形成材質の撥
水特性のみならず、その表面状態によっても大きく影響
されることが知られている。そこで、近年物品のより高
い撥水性を求めて、物品表面に存在する微小突起によっ
て実際の表面積を見かけの表面積より大きくして水との
見かけの接触角を大きくする試みがなされている。
【0004】例えば、特開平4−283268号公報に
は、分子量8000−10000程度のポリテトラフル
オロエチレンオリゴマーをメッキ液中に分散して、オリ
ゴマーをメッキ膜に共折させて撥水性の金属複合体を形
成することが記されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来の方法で
は一度凹凸な層を形成した後に撥水層を形成する工程が
必要となり、撥水層に弗素樹脂を使用する場合には塗膜
形成のための焼成処理が必要となるため、撥水層を形成
する基材物品として弗素樹脂の焼成処理温度に耐える材
料に限定される欠点があった。
【0006】さらに、メッキ法では撥水膜を形成する物
品としてメッキ作業の出来るものに限定される欠点があ
った。
【0007】本発明の発明者は、先に含フッ素樹脂粒子
が互いに接触しうる状態のもとで、該含フッ素樹脂のD
SC測定による融解開始温度以上、かつ融解終了温度以
下の温度で含フッ素樹脂粒子相互を表面融着させること
により、特定の粒子径を有する高分子量含フッ素樹脂粒
子相互の容易に粒子が脱落しない積み重なりにより非定
形多孔質体が形成され、これにより物品の表面に優れた
撥水性が付与されることを見いだした(特開平7−22
8822号公報)。
【0008】上記発明により得られた高撥水性表面を有
する物品は、電子顕微鏡観察により含フッ素樹脂のコロ
イド粒子及び/または同粒子の凝集(2次)粒子が、無
秩序に積み重なり、その間隙の多数のミクロンオーダー
の空隙を有する非定形多孔質体が存在することが観察さ
れる。
【0009】本発明の発明者は、前記発明で得られた含
フッ素樹脂非定形多孔質体の撥水性を更に高めることを
検討し、発泡剤及び/又は凝集剤の作用により非定形多
孔質体の表面に光学顕微鏡で観察し得るサイズの窪み、
及び/又は亀裂を生ぜしめることができ、このような表
面を有する物品が、更に高い撥水性及び撥エチレングリ
コール性をも発現せしめることを見いだした。
【0010】
【課題を解決するための手段】即ち本発明は、平均粒子
径0.1〜0.5μm好ましくは0.3μm以下のテト
ラフルオロエチレン(以下TFEという)樹脂粒子の積
み重なりにより形成されたミクロンオーダーの空隙を有
する非定形多孔質体の表面に、直径10〜100μmの
窪み、及び/又は幅5〜150μmの亀裂が多数存在す
ることを特徴とするTFE樹脂非定形多孔質体及び該非
定形多孔質体が、ポリイミドまたはポリアミドイミドに
より基材上に固定されている物品である。
【0011】また本発明は平均粒子径0.1〜0.5μ
mのTFE樹脂及びポリアミック酸を含む水溶性有機液
体に発泡剤及び/または凝集剤を添加混合し、得られた
混合液を基材上に塗布した後、これを加熱して水、水溶
性有機液体、発泡剤及び/又は凝集剤を除去すると共
に、ポリアミック酸を縮合し、ポリイミドまたはポリア
ミドイミドを形成させることを特徴とする上記物品の製
法である。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明で使用されるTFE樹脂粒
子は、TFEの単独共重合体、TFEの共重合体、又は
これらの混合物であっても良い。
【0013】TFEの共重合体を用いる場合、コモノマ
ーとしては、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、塩化ト
リフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パー
フルオロ(アルコキシエチレン)(アルコキシ基の炭素
数は1〜5)、パーフルオロ(アルキル)エチレン(ア
ルキル基の炭素数は1〜8)、エチレン、プロピレンな
どが例示できる。
【0014】特に好ましいTFE樹脂としては、PTF
E、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレ
ン共重合体(以下、FEPという。)、テトラフルオロ
エチレン/パーフルオロ(アルコキシエチレン)共重合
体(以下、PFAという。)、及びテトラフルオロエチ
レン/ヘキサフルオロプロピレン/パーフルオロ(アル
コキシエチレン)共重合体(以下、EPAという。)な
どがある。
【0015】これらのTFE樹脂粒子は、平均粒子径
0.1〜0.5μmのものであって、米国特許2,55
9,752号に記載されるポリテトラフルオロエチレン
(以下PTFEという。)の乳化重合法と同様な方法に
よって製造し得る。
【0016】本発明のTFE樹脂非定形多孔質体を電子
顕微鏡(倍率:3000倍)により観察すれば図4に示
されるように、特開平7−228822号の発明で得ら
れた撥水性物品と同様に、TFE樹脂のコロイド粒子及
び/または同粒子の凝集(2次)粒子が、無秩序に積み
重なり、その間隙に多数のミクロンオーダーの空隙を有
する非定形多孔質体を観察することが出来る。
【0017】一方、これを光学顕微鏡程度の倍率(約1
00倍)により観察すれば、平坦な粗面、換言すれば非
定形多孔質体表面に図1または図2のような直径10〜
100μm程度の多数の窪み、及び/又は幅5〜150
μm程度の多数の亀裂が見られる。
【0018】即ち、本発明の多孔質体は電子顕微鏡サイ
ズの空隙の他に、光学顕微鏡サイズの窪み、及び/又は
亀裂の存在により特徴づけられ、また両者の存在により
特開平7−228822号の発明で得られた電子顕微鏡
サイズの空隙のみからなる非定形多孔質体よりも高い撥
水性、更に撥エチレングリコール性をも発現せしめたも
のである。ここに、上記窪み及び/または亀裂の数は撥
水性表面の10〜60%の面積を占めるようにすること
が好ましい。
【0019】本発明の多孔質体は、通常、種々の基材表
面にポリイミドまたはポリアミドイミドにより固定され
た状態で使用される。
【0020】基材としては、鉄、アルミ、陶磁器、ガラ
ス、プラスチック、木材、紙などの各種材料を使用でき
る。
【0021】基材上に固定された多孔質体の厚さは、通
常5〜100μmの範囲である。5μmより薄い場合に
は、水滴が基材表面に接触してしまい、撥水性が低下す
る恐れがある。一方、厚さの上限は限定的なものではな
いが、物品表面の撥水性付与という目的のためには、1
00μm以上の厚さの多孔質体層を基材表面に付与する
ことは通常無意味であり、経済的には不利である。
【0022】本発明の多孔質体がポリイミドまたはポリ
アミドイミドにより基材上に固定された物品は、粘度1
00〜1000センチポイズ、好ましくは300−10
00センチポイズの、平均粒径0.1〜1.0μmのT
FE樹脂粒子及びポリアミック酸を含む水溶性有機液体
水溶液(以下、原液という)に、発泡剤及び/又は凝集
剤を添加混合し、次いで基材上に当該混合液を塗布した
後、これを加熱して、水、水溶性有機液体、発泡剤及び
/又は凝集剤を除去すると共にポリアミック酸を縮合し
ポリイミドまたはポリアミドイミドに変化させることに
よって製造することができる。
【0023】ポリアミック酸は、ポリイミドまたはポリ
アミドイミドを形成させ、樹脂非定形多孔質体を基材上
に固定するバインダーとして働くとともに、発泡剤及び
/又は凝集剤の作用により非定形多孔質体の表面に窪み
及び/又は亀裂を生ぜしめる作用を有する。上記ポリア
ミック酸は、通常メチルピロリドンなどの有機溶剤の存
在下、テトラカルボン酸二無水物(ジカルボン酸)とジ
アミノ化合物との低温溶液重合法により合成されるた
め、有機溶剤溶液の形で存在する。
【0024】一方、TFE樹脂のコロイド粒子は、TF
E単独又はTFEと所望のコモノマーとの水性乳化重合
法により合成されるため、水分散液の形で存在する。こ
の両者を直接混合したとしても、両者は分離してしま
い、又はTFE樹脂粒子が凝集してしまうなどの現象が
発生し、長期保存に耐える安定な原液を調製することは
困難である。
【0025】従って、安定な原液を調製するには、ポリ
アミック酸の有機溶剤溶液に、N−メチルピロリドン、
テトラヒドロフラン、フルフリルアルコールなどの水溶
性有機液体及び/又は界面活性剤、アンモニア水等を加
えて、水との混合性を改善した後、TFE樹脂の水性分
散液と混合するのが好ましい。次いで、この混合液を多
孔質体の表面に窪みまたは亀裂を発現させるに適し、か
つ塗装等の操作が容易である粘度に調節し原液を調製す
る。
【0026】TFE樹脂に対するポリアミック酸の混合
量はTFE樹脂粒子を基材上に固定するのに充分な量使
用すれば良く、通常TFE樹脂100重量部に対し5〜
30重量部程度の量が適当である。
【0027】また、原液を調製するための、上記水溶性
有機液体、界面活性剤の種類及び量は、ポリアミック酸
を合成する際に使用した有機液体の種類及び量によって
異なり、TFE樹脂分散液とポリアミック酸有機液体溶
液が安定な混合液になるようにその都度適宜選択して決
定される。
【0028】好適な水溶性有機液体としては、N−メチ
ルピロリドン、テトラヒドロフラン、フルフリルアルコ
ール、アルキレングリコールなどを例示することが出来
る。
【0029】このようにして調製された原液に、発泡剤
及び/または凝集剤が添加混合される。発泡剤及び/ま
たは凝集剤を添加、混合して得られた混合液の粘度は、
次工程における原液の塗布、及び本発明の多孔質体の形
成に重要な要素となるものであり、粘度が100センチ
ポイズよりも低い場合には、混合液は流れて窪みを埋
め、窪みは消失してしまうので、多孔質体の表面に窪み
または亀裂を発現させることが困難になり、一方粘度が
1000センチポイズよりも高い場合には塗布それ自体
が困難になる。
【0030】ここで使用される発泡剤としては、10〜
200℃、好ましくは30℃〜100℃の温度範囲で分
解し、分解ガスを発生する無機または有機化合物(以
下、化学発泡剤という。)、及び沸点が10〜200
℃、好ましくは30℃〜100℃の範囲の水に不溶性の
有機液体(以下、物理発泡剤という。)がある。
【0031】例えば、化学発泡剤としては炭酸アンモニ
ウム、炭酸水素ナトリウム、アゾジカルボンアミド、ア
ゾビスイソブチロニトリル、及びN,N′−ジニトロソ
ペンタメチレンテトラミン等があり、物理発泡剤として
は、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族系発泡
剤、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系発泡
剤、及びジクロロペンタフルオロプロパン、オクタフル
オロブタン、デカフルオロペンタン等のフッ素化有機液
体系発泡剤等がある。
【0032】又、ここで使用される凝集剤としては、水
中に分散した状態のTFE樹脂のコロイド粒子を凝集さ
せる効果のある300℃以下の温度で分解または気化し
て除去し得る無機化合物または有機化合物であれば如何
なるものであっても良いが、特に沸点が10〜200℃
の範囲の、水に不溶性または難溶性の有機液体、例えば
ペンタン、ベンゼン、ジクロロペンタフルオロプロパン
など先に物理発泡剤として例示した化合物が有利に使用
される。
【0033】この場合、原液に発泡剤を添加したときに
は多孔質体表面に窪みが、一方、凝集剤を添加混合した
ときには亀裂が発現するが、前述の通り物理発泡剤と凝
集剤とは同一化合物を含んでいるので、同一化合物でも
発泡剤として作用する場合と凝集剤として作用する場合
がある。同一化合物が、発泡剤として作用するか、凝集
剤として作用するかは次の様なメカニズムの差によって
生ずるものと思われる。
【0034】先ず、多孔質体表面に窪みを形成させる発
泡剤としての作用を期待する際には、原液と発泡剤との
均質組成物を作る。即ち、化学発泡剤の場合には発泡剤
を原液中に溶解させることであり、一方、物理発泡剤の
場合には界面活性剤などを添加し発泡剤を原液中で乳化
させることである。
【0035】このようにして得られた原液と発泡剤との
混合液を基材上に塗布して加熱する。この加熱により発
泡剤は分解または気化して原液中に気泡を発生させ、次
いでこの気泡が破裂して原液の表面に窪みを作る。窪み
発生後も加熱を続けることにより、原液中に含まれてい
た液体成分が蒸発除去され、固体成分であるTFE樹脂
粒子とポリアミック酸とが基材上に残るが、この加熱に
よりポリアミック酸は分子内縮合を起こしポリイミドま
たはポリアミドイミドに変化し、基材上にTFE樹脂粒
子からなる多孔質体を固定する。
【0036】一方、多孔質体表面に亀裂を形成させる凝
集剤としての作用を期待する際には、原液と凝集体との
非均一系組成物を作る。即ち、超音波などを作用させ原
液と凝集剤との分散液をつくることである。TFE樹脂
は疎水性であるため、分散液中の凝集剤の油滴中に多く
含まれるようになる。
【0037】この状態の上記分散液を基材上に塗布し加
熱すると、凝集剤は蒸発し、凝集剤の油滴中に含まれる
TFE樹脂粒子は凝集する。更に加熱を継続することに
より、原液中に含まれる液体成分が蒸発除去され、固体
成分であるTFE樹脂粒子とポリアミック酸とが基材上
に残るが、この際の加熱によりポリアミック酸はポリイ
ミドまたはポリアミドイミドに変化し、TFE樹脂粒子
を基材上に固定する。そして、先に述べたTFE樹脂粒
子の凝集体の間隙が、亀裂として発現する。
【0038】以上の如く加熱は発泡剤、凝集剤による窪
みまたは亀裂の形成及び原液中に含まれる液体成分の蒸
発除去、並びにポリアミック酸の分子内縮合によるポリ
イミドまたはポリアミドイミドを形成させ、基材上にT
FE樹脂粒子からなる多孔質体を固定する作用を有する
が、更に基材表面に塗布したTFE樹脂粒子を相互に表
面融着させることによって、容易に粒子が脱落しない非
定形多孔質体を作る作用も有する。
【0039】TFE樹脂粒子を相互に表面融着するため
には、DSC測定による融解開始温度以上での加熱が望
ましいが、本発明においてはポリイミドまたはポリアミ
ドイミド形成により、TFE樹脂粒子の相互融着を助け
るので、上記温度以下で行うことも可能である。しか
し、更に温度を上げDSC測定による融解終了温度以上
で長時間加熱すると、含フッ素樹脂粒子は全面融着して
多孔質体は消失し、表面は平滑となり撥水性は低下して
いくので加熱温度は融解終了温度以下が好ましい。
【0040】本発明により得られた物品は、高撥水性表
面を有する多孔質体であるが、その多孔性測定法は後記
の最大イソプロピルアルコール拡散径テストによって行
う。PTFEの切削シートではこの値が滴下時の直径約
5mmのままであるのに対し、本発明の物品は高度の多
孔質体であるため、IPAが塗膜内に浸透し滴下時の直
径から直径20mm程度まで拡散する。
【0041】また本発明のような高撥水性の物品におい
ては従来の接触角測定では撥水性の測定が困難である。
特開平4−283268号の発明では、これを転水角
度、すなわち水滴を物品表面に滴下した時に表面に付着
せずに表面上を水滴が転がる物品表面の最小角度を測定
したが、本発明の物品は更に撥水性が高く、50mgの
水滴(72.8dyne/cm)による測定では転水角
の差が出ないほど撥水性に優れているので、本発明にお
いては後述するように、30mgのエチレングリコール
液滴(50.2dyne/cm)を用いて転水角を測定
した。転水角が小さい程、撥水性に優れているが本発明
の物品ではこの値が通常50/500以下であり、極め
て撥水性の高い物品が得られる。
【0042】本発明の高撥水性表面を有する物品は、塩
害防止塗膜(例えば、電気絶縁硝子等)、着雪防止塗膜
(例えば、パラボラアンテナ用)、汚染防止塗膜(例え
ば、液輸送用、電池用)、液体分離用塗膜(例えば、油
/水の分離)等を必要とする物品に好適に使用すること
が出来る。
【0043】
【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明す
る。尚、実施例に用いた原液の調製、塗装法、製品の物
性測定法は以下の通りである。
【0044】<原液の調製>平均粒径0.17μmのP
FAコロイド粒子を16.2wt%及びポリアミック酸
を2.9wt%含む、フルフリルアルコール、N−メチ
ルピロリドン、及びアンモニア水からなる粘度650セ
ンチポイズの水溶性有機液体を調製し、これを原液とし
た。
【0045】<塗装法>口径0.8mmのノズルにて3
kg/cm2 の空気圧で厚み1mm×幅50mm×長さ
100mmのアルミ板にスプレー塗装した後、所定の温
度、時間で強制循環炉で乾燥した。
【0046】<粘度測定法>B型粘度計(型式BL、東
京計器製造所製)により粘度を測定した。(No.3ロ
ーター使用、60rpm.)
【0047】<転水角測定法>長さ550mmの板の一
方を上げることによって傾斜をつくり、この上に多孔質
体を形成したアルミ板(幅50mm長さ100mm)を
おいてこの表面8mm上のノズルからエチレングリコー
ルの30mg(50.2dyne/cm)の液滴を落と
す。この液滴が表面に落ちた後止まらずにその傾斜に沿
って転がり落ちる最小の傾斜を水平距離500mmに対
し上がった距離(mm)、即ち傾斜角の正接値で表す。
【0048】<多孔性測定法(最大イソプロピルアルコ
ール拡散径テスト)>非定形多孔質体にイソプロピルア
ルコール(以下、IPAという。)をマイクロシリンジ
を用いて0.01ml滴下し、液の最大拡散径(mm)
を測定する。
【0049】[実施例1]原液50gに発泡剤としてジ
クロロペンタフルオロプロパン(HCFC225)を5
g、及び界面活性剤としてP−ノニルフェノールポリエ
チレングリコールエーテルを0.5g添加混合し、粘度
700センチポイズの混合液を得た。この混合液をアル
ミ板にスプレー塗装し、これを170℃で20分間乾燥
し、多数の窪みが存在する高撥水性表面を有する物品を
得た。この物品の転水角の正接値及びIPA拡散径を測
定した。結果を表1に示す。
【0050】[実施例2〜3]原液50gに発泡剤とし
て15wt%の炭酸アンモニウム水を表1に示される量
それぞれ添加混合し、表1に示される粘度の混合液を得
た。この混合液をアルミ板にスプレー塗装し、これを2
00℃で20分間乾燥し、多数の窪みが存在する高撥水
性表面を有する物品を得た。これらの物品の転水角の正
接値及びIPA拡散径を測定した。結果を表1に示す。
また、実施例2で得られた物品の電子顕微鏡写真(倍率
100倍)を図1に、電子顕微鏡写真(倍率3000
倍)を図3に示す。
【0051】[実施例4〜5]原液50gに発泡剤とし
てn−ヘキサンを2.5g、及び界面活性剤としてP−
ノニルフェノールポリエチレングリコールエーテルを表
1に示される量それぞれ添加混合し、表1に示される粘
度の混合液を得た。この混合液をアルミ板にスプレー塗
装し、これを170℃で20分間乾燥し、多数の窪みが
存在する高撥水性表面を有する物品を得た。これらの物
品の転水角の正接値及びIPA拡散径を測定した。結果
を表1に示す。
【0052】[実施例6〜7]原液50gに発泡剤とし
てn−ヘキサンを2.5g、及び界面活性剤としてエタ
ノールを表1に示される量それぞれ添加混合し、表1に
示される粘度の混合液を得た。この混合液をアルミ板に
スプレー塗装し、これを170℃で20分間乾燥し、多
数の窪みが存在する高撥水性表面を有する物品を得た。
これらの物品の転水角の正接値及びIPA拡散径を測定
した。結果を表1に示す。
【0053】化学発泡剤により発泡または物理発泡剤に
界面活性剤を加えて発泡させて得られた上記各実施例の
物品は、転水角測定及びIPA拡散径テストの結果、い
ずれも高撥水性の多孔質体であり、また図1に示される
ように、多数の窪みが存在する表面を有するものである
ことが観察された。
【0054】
【表1】
【0055】[実施例8〜9]原液50gに界面活性剤
を添加せず、凝集剤としてHCFC225を表1に示さ
れる量添加混合し、表1に示される粘度の混合液を得
た。この混合液をアルミ板にスプレー塗装し、これを2
00℃で20分間乾燥し、多数の亀裂が存在する高撥水
性表面を有する物品を得た。この物品の転水角の正接値
及びIPA拡散径を測定した。結果を表2に示す。ま
た、実施例9の電子顕微鏡写真を図2に示す。
【0056】[実施例10]原液50gに界面活性剤を
添加せず、凝集剤として10wt%の硝酸アンモニウム
水3.3gを添加混合し、粘度110センチポイズの混
合液を得た。この混合液をアルミ板にスプレー塗装し、
これを200℃で20分間乾燥し、多数の亀裂が存在す
る高撥水性表面を有する物品を得た。この物品の転水角
の正接値及びIPA拡散径を測定した。結果を表2に示
す。
【0057】界面活性剤を添加せず、凝集剤のみを添加
して得られた上記各実施例のものは転水角測定及びIP
A拡散径テストの結果、いずれも高撥水性の多孔質体で
あり、また図2に示されるように、多数の亀裂が存在す
る表面を有するものであることが観察された。
【0058】
【表2】
【0059】[比較例1]発泡剤も凝集剤も添加せず、
原液のまま50gをアルミ板にスプレー塗装し、これを
170℃で20分間乾燥し、撥水性表面を有する物品を
得た。この物品の転水角の正接値及びIPA拡散径を測
定した。結果を表1に示す。また、この物品の電子顕微
鏡写真(倍率100倍)を図4に示す。発泡剤や凝集剤
を添加せず、原液のみを塗装して得られた物品は、窪み
も亀裂も存在しないものであることが観察され、また転
水角測定の結果、本発明の物品に比べて撥水性が低い。
【0060】[比較例2]原液50gに発泡剤として1
5wt%の炭酸アンモニウム水を6.7g,及び界面活
性剤としてP−ノニルフェノールポリエチレングリコー
ルエーテルを4g添加混合し、粘度50センチポイズの
混合液を得た。この混合液をアルミ板にスプレー塗装
し、これを200℃で20分間乾燥し、高撥水性表面を
有する物品を得た。この物品の転水角の正接値及びIP
A拡散径を測定した。結果を表3に示す。発泡剤により
発泡させたものであるが、混合液の粘度が低過ぎたた
め、窪みができなかった。
【0061】[比較例3]原液50gに発泡剤としてn
−ヘキサン10gを添加混合し、粘度1200センチポ
イズの混合液を得た。この混合液は粘度が高すぎ、基材
への塗装が不可能であったため、転水角の正接値及びI
PA拡散径を測定することができなかった。
【0062】
【表3】
【0063】
【発明の効果】本発明の多孔質体は電子顕微鏡サイズの
空隙の他に光学顕微鏡サイズの窪み、及び/又は亀裂の
存在により、電子顕微鏡サイズの空隙のみからなる非定
形多孔質体よりも更に高い撥水性、更に撥エチレングリ
コール性を得ることができるので、塩害防止塗膜、着雪
防止塗膜、汚染防止塗膜、液体分離用塗膜等、広い用途
に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例2の方法で得られた本発明の物品の撥
水性含フッ素樹脂表面の電子顕微鏡写真(倍率100
倍)である。
【図2】 実施例9の方法で得られた本発明の物品の撥
水性含フッ素樹脂表面の電子顕微鏡写真(倍率100
倍)である。
【図3】 実施例2の方法で得られた本発明の物品の撥
水性含フッ素樹脂表面の電子顕微鏡写真(倍率3000
倍)である。
【図4】 比較例1の方法で得られた物品の含フッ素樹
脂表面の電子顕微鏡写真(倍率100倍)である。
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C08J 7/04 CFG C08J 7/04 CFGS 9/24 CEW 9/24 CEW C08L 79/08 LRC C08L 79/08 LRC // C08L 27:18

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 平均粒子径0.1〜0.5μmのテトラ
    フルオロエチレン樹脂粒子の積み重なりにより形成され
    たミクロンオーダーの空隙を有する非定形多孔質体の表
    面に直径10〜100μmの窪み、及び/又は幅5〜1
    50μmの亀裂が多数存在することを特徴とする高撥水
    性表面を有するテトラフルオロエチレン樹脂非定形多孔
    質体。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の非定形多孔質体が、ポリ
    イミドまたはポリアミドイミドにより基材上に固定され
    ている高撥水性表面を有する物品。
  3. 【請求項3】 平均粒子径0.1〜0.5μmのテトラ
    フルオロエチレン樹脂及びポリアミック酸を含む水溶性
    有機液体に発泡剤及び/又は凝集剤を添加混合し、得ら
    れた混合液を基材上に塗布した後、これを加熱して水、
    水溶性有機液体、発泡剤及び/又は凝集剤を除去すると
    共に、ポリアミック酸を縮合し、ポリイミドまたはポリ
    アミドイミドを形成させることを特徴とする請求項2記
    載の高撥水性表面を有する物品の製法。
  4. 【請求項4】 平均粒子径0.1〜0.5μmのテトラ
    フルオロエチレン樹脂粒子及びポリアミック酸を含む水
    溶性有機液体水溶液に発泡剤及び/又は凝集剤を添加混
    合して得られた混合液の粘度が、100〜1000セン
    チポイズであることを特徴とする請求項3記載の高撥水
    性表面を有する物品の製法。
  5. 【請求項5】 発泡剤が、10〜200℃の温度範囲で
    分解し分解ガスを発生する無機または有機化合物、及び
    沸点が10〜200℃の範囲の水に不溶性の有機液体か
    ら選ばれる請求項3または4に記載の高撥水性表面を有
    する物品の製法。
  6. 【請求項6】 凝集剤が、300℃以下の温度で分解ま
    たは気化して除去し得る無機化合物または有機化合物で
    ある請求項3〜5のいずれかに記載の高撥水性表面を有
    する物品の製法。
  7. 【請求項7】 DSC測定による融解開始温度以上、融
    解終了温度以下の温度で加熱することを特徴とする請求
    項3〜6のいずれかに記載の高撥水性表面を有する物品
    の製法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH08113756A (ja) * 1994-10-14 1996-05-07 Du Pont Mitsui Fluorochem Co Ltd 撥水性含フッ素樹脂表面を有する物品の製造方法

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