JPH10170479A - たて型多段式電気泳動装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】簡単な装置で効率的な分析が可能な電気泳動装
置を提供すること。 【解決手段】上部と下部の緩衝液槽６，７と該槽を連結
する平板状のフレーム８より成る電気泳動槽２、平板状
をし開口部を備えた前方泳動プレート９と同様に平板状
をした後方泳動プレート１０によりゲル板３を収納する
ゲル室１１を形成し上下方向に沿って多段に複数の開口
部を備え電気泳動槽２のフレーム８に装着されるゲル板
収納部材４、及び該開口部より挿入されゲル板３に試料
孔を形成するくし状部材１７でたて型多段式電気泳動装
置１を構成する。ゲル板３に多段に形成された試料孔に
試料を注入し緩衝液とゲル板を介して試料に通電し試料
を電気泳動分析する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明はたて型電気泳動装置にお
いて、ゲル板に多段に試料孔を形成して電気泳動する装
置に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】たて型電気泳動装置は、蛋白質あるいは
核酸等の生体成分の分離、分析等に好適な方法として最
近普及が著しい。一般に電気泳動装置は、二枚の泳動プ
レ−ト板の間にゲルの原料を入れ、その上端部にサンプ
ルコウムと称するくし状部材を配置してゲル板を作成
し、そのゲル板をたて方向に電気泳動装置に装填して、
ゲル板の上端部に形成された試料孔に試料を注入して電
気泳動を行うものである。電気泳動分析が広汎に使用さ
れるにつれて、一度に大量の試料を電気泳動分析しよう
とする要望が生じているが、このような装置として、複
数のゲル板を装置に装填して同一条件下で泳動して多数
の試料の比較ができる二連スラブ電気泳動装置や六連ミ
ニ電気泳動スラブ装置等が知られている。また、くし状
部材の突起数を小さく多数にして、ゲルの試料孔を多く
する方法も知られている。逆に、くし状部材を長大なも
のに作り替えて、それに応じたゲル板と装置などを作る
ことも可能である。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題］しかしな
がら、以上の従来の技術では、一度に大量の試料を電気
泳動分析する場合において数々の問題点がある。先ず、
二連スラブ電気泳動装置や六連ミニ電気泳動スラブ装置
は、ゲル板を複数に横並びにするので大掛かりとなり、
また六連ミニ電気泳動スラブ装置では、ゲル板を作成せ
ず既成のゲル板を使用する方法もあるが、その分高価と
なる。さらに、くし状部材の突起数を多くすることは突
起部が小さくなり、その突起部に応じて形成される試料
孔への試料注入に細心の注意を必要とし、その上電気泳
動結果のバンドが見にくくなり、泳動分離パターンが不
明確になる等の欠点を有していた。そして、くし状部材
を長大にすることは、それに見合った大型の電気泳動装
置が必要となり、移動あるいは保管に不便であることに
加え、ゲルや緩衝液等を作る為の試薬類を多く使用する
欠点を有する。 【０００４】そこで本発明は、従来のこうした事情に鑑
み成されたもので、これらの常法の電気泳動装置等のす
べては、ゲル板の上端部に１個所すなわち一段に試料孔
を形成することのみが基本とされているのに着目し、鋭
意研究を重ねた結果、ゲル板に多段の試料孔を形成させ
る電気泳動装置の考えに至った。本発明は、一枚のゲル
板に一段試料孔に加えて、二段、或いは多段の試料孔を
形成して、常法の電気泳動装置の泳動プレートの一部を
作り替えるだけで、常法とほぼ同じ試料注入方法と電気
泳動条件で、短時間泳動なら常法の数倍の試料を電気泳
動することができるたて型多段式電気泳動装置の提供を
目的とするものである。

【０００５】

【課題を解決するための手段】すなわち本願発明は、上
部と下部の緩衝液槽と該槽を連結する平板状のフレーム
より成る電気泳動槽、平板状をし開口部を備えた前方泳
動プレートと平板状をした後方泳動プレートより成りゲ
ル板を収納するゲル室を形成し上下方向に沿って多段に
複数の開口部を備え電気泳動槽のフレームに装着される
ゲル板収納部材、及び該開口部より挿入されゲル板に試
料孔を形成するくし状部材より構成され、ゲル板に多段
に形成された試料孔に試料を注入し緩衝液とゲル板を介
して試料に通電し試料を電気泳動分析することを特徴と
するたて型多段式電気泳動装置である。

【０００６】

【発明の実施の形態】以下、本発明についてその実施例
を示す図面とともに説明する。まず図１〜図２におい
て、１はたて型多段式電気泳動装置で、主に電気泳動槽
２とゲル板３を成形かつ収納するゲル板収納部材４より
成り、電気泳動槽２は緩衝液５が収納され上部に位置す
る上部緩衝液槽６、該槽６より下部に位置する下部緩衝
液槽７、及びそれら槽６，７を連結している平板状をし
たフレーム８より構成されている。ゲル板収納部材４
は、前方に位置する前方泳動プレート９と後方に位置す
る後方泳動プレート１０、及び該プレート９，１０に挟
圧されゲル板３が収納されるゲル室１１を形成するため
のサイドスペーサ１２より構成されている。前方泳動プ
レート９の中段部は開口されており、ゲル板収納部材４
は、上端の開口部と合わせて上下方向に二段すなわち多
段に開口部を有することになる。ここにおいて上端部の
開口部を第１の開口部１４、前方泳動プレート９に設け
られた開口部を第２の開口部１５とそれぞれ称する。１
６は電極で、試料に通電しそれを電気泳動分析する作用
をする。

【０００７】次に、図３〜図６に基づいて多段試料孔を
有するゲル板３の作成方法について説明する。第２の開
口部１５を備えた前方泳動プレ−ト板９と後方泳動プレ
−ト板１０との間に、ゲル板３の厚さに応じたサイドス
ペーサ１２を挟み、くし状部材１７を前方泳動プレ−ト
９の第２の開口部１５に挿入する。第２の開口部１５
は、くし状部材７の挿入あるいは試料の注入等のため、
斜めの溝になっている方が望ましく、くし状部材７等の
挿入される器具に応じた穴の形であれば斜めの溝や、ま
た角形の開口部に限定するものではない。また、泳動プ
レ−ト９，１０は、通常ガラスで形成されているが、こ
れに限定されるものではなくアクリル板などの透明で硬
質な絶縁体の素材であればよい。そして、後方泳動プレ
ート１０の上端部には切欠部１８が設けられており、そ
こを通って緩衝液５を第１の開口部１４へ導くものであ
る（図２参照）。従って、ゲル室１１へのゲル液の注入
は、切欠部１８より下方までになる。

【０００８】そして次に、ゲル溶液の液漏れ防止のた
め、二枚重ねの泳動プレート板９，１０の両縁と底辺部
の縁、それにくし状部材１７が挿入されている第２の開
口部１５に沿って、透明粘着テ−プ１９を満遍なく巻付
けておく。そして、ゲル溶液を二枚の泳動プレ−ト板
９，１０の第１の開口部１４から泳動プレ−ト板９，１
０内すなわちゲル室１１にフラスコ２９より注ぎ込み、
その後くし状部材１７を第１の開口部１４から挿入し、
直ちにバインダ２０で泳動プレート板９，１０の両脇を
挟み押さえる。このとき用いるくし状部材１７は、第２
の開口部１５に挿入したものと同じであることが扱い上
便利で好ましく、また同じ泳動分離パターンが現れる上
で好ましいが、特にそのことに限定するものではない。
かくしてゲル室１１に導かれたゲル液は、ゲル化しゲル
板３が形成される。

【０００９】次に、図７〜図８に基づいてゲル化し形成
されたゲル板３について説明する。ゲル溶液がゲル化し
たら、二枚重ねの泳動プレ−ト板９，１０の両縁と底辺
部の縁、それに第２の開口部１５に沿って貼られてあっ
た透明粘着テープ１９を剥がす。次いで泳動プレ−ト板
９，１０の第１の開口部１４に差してあるくし状部材１
７と第２の開口部１５に挿入されたくし状部材１７を引
き抜くと、第１の開口部１４に一段目試料孔２１と第２
の開口部１５の所に二段目試料孔２２が、上下方向に沿
って二段に形成されたゲル板３が形成される。この場
合、上記のごとく試料孔は二段に限定されるものでな
く、二段目試料孔２２との構成と同じものを複数にして
も同様な目的を達成できることはいうまでもない。次
に、二段に形成された試料孔２１，２２にスポイト２３
等で、適宜の量の緩衝液５を前以て注入しておく。これ
によりゲル板３作成時にくし状部材１７の突起部が、お
互いに接触し試料孔２１，２２が壊れるのを防止でき
る。

【００１０】次に、図１〜図２に基づいて、試料の注入
方法についてについて説明する。前記のごとく構成され
ている電気泳動槽２に、先ず常法により上部緩衝液槽６
の緩衝液５で浸されている一段目試料孔２１にピペット
マン２５等で適宜の量の試料２６を注入する。次に、第
２の開口部１５の所に設けられた二段目試料孔２２にも
ピペットマン２５等で適宜の量の試料２６を注入する。
各段の試料孔２１，２２の各々は、緩衝液５で浸されて
いるので試料２６を該緩衝液５より比重を大にすること
により、各段の常法通りにその試料孔２１，２２の底部
まで注ぎ込むことができる。

【００１１】次に、図１〜図２に基づいて、電気泳動の
作動についてについて説明する。常法通りに、（−）電
源コード２８と（＋）電源コード２９を、供給電源にセ
ットして、一段のみ形成された試料孔のときと全く同じ
電圧、電流にセットし、短時間泳動であれば、それに基
づいた泳動時間で電気泳動を行う。本発明に基づくゲル
板３は、複数の試料孔２１，２２が多段に形成されてい
る特殊なものであるが、常法通りの電気泳動条件でかま
わない。

【０００１２】本発明は以上の如く構成されているもの
であるから、第２の開口部１５を備えた前方泳動プレー
ト９に、くし状部材１７を挿し込んでゲル板３を作成
し、該ゲル板３に常法の一段目試料孔２１に加えて、二
段目試料孔２２、あるいはさらなる多段の試料孔を形成
することができる。二段目試料孔２２、あるいはさらな
る多段の試料孔には緩衝液５を満たすことができ、試料
２６の注入は常法と同じように行うことができ、電気泳
動のための電圧や電流、それに電気泳動時間等の泳動条
件はほぼ常法と同じに行うことができる。すなわち、ゲ
ル板３の二段目試料孔２２は、一段目試料孔２１と同じ
条件で電気泳動され、同じ泳動結果のバンドの泳動分離
パタ−ンが現れる。

【０００１３】

【発明の効果】従って、本発明のたて型多段式電気泳動
装置を使用すれば、常法とほぼ同じ試料注入方法と泳動
条件それに泳動器材で、一度に常法の数倍の試料を泳動
することができ、しかも大掛かりな装置は要せず、常法
の泳動装置の泳動プレ−トを、簡単に作り替えるだけで
なので、安価に装置を作ることができ、泳動結果のバン
ドも常法通りに得られる。

【図面の簡単な説明】

【図１】 たて型多段式電気泳動装置の正面図

【図２】 図１の２−２視断面図

【図３】 本発明に基づくゲル板の作成図及びゲル板収
納部材の説明図

【図４】 本発明に基づくゲル板の作成図及びゲル板収
納部材の説明図

【図５】 本発明に基づくゲル板の作成図及びゲル板収
納部材の説明図

【図６】 本発明に基づくゲル板の作成図及びゲル板収
納部材の説明図

【図７】 ゲル板収納部材の正面図

【図８】 ゲル板収納部材の正面図

【符号の説明】

１ たて型多段式電気泳動装置 ２ 電気泳動槽 ３ ゲル板 ４ ゲル板収納部材 ６ 上部緩衝液槽 ７ 下部緩衝液槽 ９ 前方泳動プレート １０ 後方泳動プレート １１ ゲル室 １４ 第１の開口部 １５ 第２の開口部 １６ 電極 １７ くし状部材 ２１ 一段目試料孔 ２２ 二段目試料孔

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】上部と下部の緩衝液槽と該槽を連結する平
   板状のフレームより成る電気泳動槽、平板状をし開口部
   を備えた前方泳動プレートと平板状をした後方泳動プレ
   ートより成りゲル板を収納するゲル室を形成し上下方向
   に沿って多段に複数の開口部を備え電気泳動槽のフレー
   ムに装着されるゲル板収納部材、及び該開口部より挿入
   されゲル板に試料孔を形成するくし状部材より構成さ
   れ、ゲル板に多段に形成された試料孔に試料を注入し緩
   衝液とゲル板を介して試料に通電し試料を電気泳動分析
   することを特徴とするたて型多段式電気泳動装置。