JPH10142228A - ポリアミン分析方法 - Google Patents

ポリアミン分析方法

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JPH10142228A
JPH10142228A JP29518696A JP29518696A JPH10142228A JP H10142228 A JPH10142228 A JP H10142228A JP 29518696 A JP29518696 A JP 29518696A JP 29518696 A JP29518696 A JP 29518696A JP H10142228 A JPH10142228 A JP H10142228A
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浩 里園
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ポリアミン分析方法を提供する。 【解決手段】 本発明に係るポリアミン検出方法は、ポ
リアミンの2以上のアミノ基にピレン蛍光分子を結合さ
せてラベル化し、該ピレン蛍光分子を光励起することの
より生じるエキシマー蛍光を検出することからなる。さ
らに、本発明に係るポリアミン検出方法は、ポリアミン
にピレン蛍光分子を2個以上結合してラベル化し、該ピ
レン分子を光励起し、励起後一定時間経過後該エキシマ
ー蛍光減衰曲線を検出することからなる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ポリアミン分析方
法に関する。
【0002】
【従来の技術】生体ポリアミン(プトレシン、カダベリ
ン、スペルミジン、スペルミン)は、種々のガン患者の
尿中高値を示すことが知られている。この場合に要求さ
れる測定感度は高くpmol程度である。従来一般に用いら
れている分析方法は蛍光色素によるラベル化と、HPL
Cによる分離を組合せた方法である。
【0003】ラベル化試薬としてはアミノ基に反応する
ものが多く使用される。この際、ポリアミンと混在する
アミノ基含有の他の成分、例えばアミノ酸、オリゴペプ
チド等が同様にラベル化される。従って、蛍光ラベル化
されたポリアミンを他の成分と分離しなければならない
という問題点があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記問題に鑑
み、たとえモノアミノ基含有成分を多量に混在する場合
でも、該モノアミノ基含有成分を分離することなく、簡
便に高感度で選択的にポリアミン及びその混合物を分析
する方法を見出し本発明を完成するに至った。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記の問題
を解決するべく鋭意研究し、ポリアミンの2以上のアミ
ノ基にピレン蛍光分子でラベル化すると、該ピレン蛍光
分子を光励起した際に効率的にエキシマー蛍光を生じる
ことを見出し本発明を完成するに至った。
【0006】すなわち、本発明は、2以上のアミノ基を
有するポリアミン(又は混合物)を、ピレン基を有する
ラベル化試薬でラベル化し、ピレン基に基づくモノマー
蛍光よりも長波長領域(450〜520nm)に生じる
蛍光の蛍光強度及び/又は蛍光強度減衰曲線の測定に基
づき前記ポリアミン(またはその混合物)量を分析する
方法を提供するものである。
【0007】また、本発明は、前記ピレン基に基づく蛍
光よりも長波長領域に生じる蛍光が、前記ポリアミンの
2以上のアミノ基が前記試薬でラベル化され、前記ピレ
ン基の光励起に基づき前記ポリアミンの分子内で形成さ
れるエキシマー蛍光であることを特徴とする、前記ポリ
アミンを分析する方法を提供するものである。
【0008】さらに、本発明は、前記ポリアミン混合物
が、少なくとも、リシン、オルニチン、プトレシン、カ
ダベリン、スペルミジン、スペルミンからなる群のいず
れか1つを含むものであることを特徴とする前記ポリア
ミンを分析する方法を提供するものである。
【0009】以下本発明を実施の形態に即して詳しく説
明する。
【0010】
【発明の実施の形態】
(ポリアミン、及びポリアミンを含む試料)本発明の方
法で分析可能なポリアミン、ポリアミン混合物、又はそ
れらを含む試料は特に限定されない。溶液状態の試料で
も、半固体状態の試料でも、さらには固体状態の試料で
もよく、適当な溶媒により、以下で説明するラベル化反
応を行える濃度に希釈されるものであればよい。
【0011】具体的には、生体からの試料としては、尿
サンプル、血液サンプル等に含まれるポリアミン類であ
る。また、本発明に係る方法を用いる際の上記試料の前
処理についても特に制限はないが、以下に説明するよう
に、本発明に係る方法は、ポリアミンのアミノ基にラベ
ル化するものであり、しかも蛍光測定による検出方法を
用いるものであるため、共存する種々の成分をあらかじ
め除去することは好ましいことである。具体的な前処理
としては、混在する酸性の成分を除去、又は混在する蛋
白質成分の除去が挙げられる。混在する酸性の成分を除
去するためには通常のイオン交換カラムクロマト法によ
り容易に可能であり、また、混在する蛋白質成分を除去
するためには、通常の酸、有機溶媒、又は加熱による方
法等を容易に行うことができる。特に蛋白質成分中には
強い蛍光を示すものがあり、本発明に係る方法において
バックグラウンド蛍光の原因となることから、本発明に
係る方法を高感度分析に使用するためには好ましい処理
である。
【0012】さらに、本発明に係る方法は、ポリアミン
に多量のモノアミン成分が混在していてもよい。ここで
モノアミン成分としては、具体的には、上記の生体試料
中の種々のアミノ酸成分が挙げられる。本発明に係る方
法においては、ピレン基を有するラベル化試薬によるラ
ベル化反応によりこれらのモノアミン成分もまた非選択
的にラベル化される。一方これらラベル化されたモノア
ミン成分は光励起によりピレン基自体の蛍光を発生する
が、本発明に係るピレン基自体の蛍光よりも長波長領域
の蛍光、又はエキシマー形成によるエキシマー蛍光は全
く発生させない。従って、本発明に係る方法は、これら
混在するモノアミン成分の存在には影響されるものでな
い。
【0013】さらに、ポリアミン成分が試料中で特別の
構造を有し、遊離の形では存在しない場合には、その特
別な構造を種々の化学反応を含む処理により分解し、ポ
リアミンを遊離させることも好ましい前処理である。具
体的には、ポリアミンが抱合型で存在する場合、ポリア
ミンを含む試料をあらかじめ加水分解してポリアミンを
遊離の形にすることは好ましい処理である。
【0014】(分析可能なポリアミン)本発明に係る方
法により分析されるポリアミンについては特に制限はな
く、分子中に2個以上のアミノ基がある成分であればよ
い。ここでアミノ基は1級アミノ基、2級アミノ基、又
は3級アミノ基を意味するが、本発明においては、1級
アミノ基、又は2級アミノ基が好ましく、特に1級アミ
ノ基を2以上有する成分が好ましい。
【0015】また、本発明に係る方法により分析される
ポリアミンは、分子中にさらに種々の他の置換基がある
構造を有していてもよい。具体的には、他の置換基があ
る構造としては、アミノ酸構造、核酸構造、糖構造、蛋
白構造、脂質構造が挙げられる。蛋白構造としては、よ
り具体的には2個以上のアミノ基を有するアミノ酸、又
はそのアミノ酸を含むオリゴペプチド(蛋白質を含む)
が挙げられる。2個以上のアミノ基を有するアミノ酸の
例としてリシン、オルニチンが挙げられる。さらには、
アルキル骨格、または環状アルキル骨格を有するポリア
ミン、芳香族環を含むポリアミン、その他のポリアミン
化合物が本発明の分析の対象となる。このうち、本発明
に係る方法は特に生体ポリアミンとして知られている、
プトレシン、カダベリン、スペルミジン、スペルミン等
のポリアミン、またはそれらの混合物を分析するために
好ましいものである。
【0016】本発明に係る方法は、各ポリアミン成分が
単独で存在する状態でも好ましく使用可能であり、この
場合には当該ポリアミンの存在量が分析可能となる。
【0017】さらには本発明に係る方法は、複数のポリ
アミン成分が混合した状態でも好ましく使用可能であ
る。この場合には、存在するポリアミンの全量が分析可
能である。この際、以下説明するように、上記複数のポ
リアミン成分を分離することなく存在するポリアミンの
総量が分析可能とするものである。上記混合物の各成分
毎の量については、HPLC等の手段により混合物を分
離して分析することも可能である。
【0018】(ラベル化試薬)本発明に係る方法に使用
可能なラベル化試薬はピレン基を有するものである。こ
こでピレン基は無置換ピレン環、及び置換ピレン環を含
むものである。置換ピレン環の置換基は特に制限はない
が、エキシマー形成を阻害しない置換基またはエキシマ
ー形成を促進する置換基が好ましく使用可能である。本
発明に係る方法においては、特に無置換ピレン環を有す
るラベル化試薬が好ましい。
【0019】また本発明に係る方法に使用可能なラベル
化試薬はピレン基が含まれていればその他の構造には特
に制限されない。従って、通常公知の又は市販のアミノ
基ラベル化用の種々のピレン含有ラベル化試薬が好まし
く使用可能である。本発明においては特にスクシンイミ
ジルピレンブチレートが好ましく使用可能である。
【0020】本発明においては、ラベル化試薬の反応選
択性は、1級アミノ基に優先的に反応する試薬に限定さ
れることはなく、2級アミノ基に反応するものでもよ
い。また、1級および2級のアミノ基のラベル化反応が
混在してもよい。従って、ポリアミンの構造により3以
上のピレン基でラベル化される場合もあり得る。この場
合であっても、以下説明するように、分子内の2つのピ
レン基によるエキシマーが形成され、エキシマー蛍光が
観測可能となり、従って、本発明に係る方法を用いてポ
リアミン分析が可能となる。
【0021】本発明に係る方法においては、上記のピレ
ン基を含むラベル化試薬により、試料中に混在するモノ
アミノ基を有する成分中のアミノ基も非選択的にラベル
化するものであるが、この場合、分子内でエキシマー形
成が不可能でありエキシマー蛍光は発生しない。
【0022】さらに、過剰のラベル化試薬が未反応又は
加水分解を受けて後溶液中に混在していても上記と同様
にエキシマー蛍光は生じないので分離する必要はない。
【0023】(エキシマー蛍光)一般に知られているよ
うに、1分子内にピレンなどの芳香族分子を2個持つ場
合(例えば1,3−ビス−(1−ピレニル)−プロパ
ン)、光励起された励起状態においてピレンが会合し、
分子内エキシマー蛍光を発する。ここでエキシマー蛍光
は励起分子の2分子会合により生じるものであり、この
会合が1分子内で生じる場合は、該蛍光強度は、分子の
濃度には依存しない。さらに従来の知見によれば、上記
のエキシマーが生じるためには、2つのピレン基がエキ
シマー形成のためには、好ましい空間位置をとることが
必要であり、そのため2つのピレン基間の特定構造によ
り上記の好ましい空間位置を保持することが必要とされ
ている。
【0024】一方、本発明に係る方法においては、ラベ
ル化されたポリアミンを光励起する際に生じる蛍光を測
定するものであるが、本発明に係る方法は特に、ピレン
基自体からの蛍光ではなく、当該蛍光よりも長波長領域
に現われる新たな蛍光を観測するものである。この新た
な蛍光は、上記説明したエキシマー蛍光と同様に、ポリ
アミン分子内でピレン基を光励起することにより形成さ
れるエキシマーに基づく蛍光(エキシマー蛍光)と考え
られる。すなわち、本発明者は、生体内で見出される種
々のポリアミンの2以上のアミノ基にピレン基を有する
ラベル化試薬でラベル化することにより、ピレン基自体
からの蛍光のみならず、エキシマー蛍光と考えられる当
該蛍光よりも長波長領域に新たな蛍光が観測されるこ
と、さらにその蛍光強度はポリアミンの種類(化学構
造)にはほとんど依存しないことを見出した。また、種
々のポリアミンの混合物の場合には、得られる当該蛍光
の強度は、存在するポリアミンの総量に比例することを
見出した。また、上記の結果は、ポリアミン混合物とし
て、生体内ポリアミンであるプトレシン、カダベリン、
スペルミジン、スペルミン又は、ジアミノアミノ酸であ
るリシン、オルニチン、又はこれらの混合物でも適用さ
れることを見出した。図1には、スペルミジンをピレン
基ラベル化試薬でラベル化したときの蛍光スペクトルを
示すものである。ラベル化試薬のみの場合には、ピレン
自体の蛍光スペクトルのみが観測される(励起波長34
5nmで375nm及び395nmに発光極大)が、ス
ペリミジンとの反応の結果、ピレン基自体の発光は減少
し、新たに475nmを極大とする発光が観測される。
この蛍光は上記説明したエキシマー蛍光と考えられ、水
を含む極性溶媒中では特に強く観測されるものであり、
含水極性溶媒中では、例えば疎水的相互作用によるピレ
ン芳香環同士が近接して位置しているものと考えられ
る。当該エキシマー蛍光強度は溶媒の組成(含水率、極
性溶媒の種類、及びそれらの存在比)に依存する。
【0025】これらポリアミンはそれぞれ以下の化学構
造を有するアミンである。これらの1級アミノ基間の空
間距離は、C−C(及びC−N)結合の数で評価して、
5(プトレシン)〜13個(スペルミン)の範囲であ
り、1級アミノ基と2級アミノ基間の空間距離は、4〜
5個の範囲である。
【0026】
【化1】
【0027】これらの種々のポリアミンの標準品混合物
をラベル化反応して後、そのまま蛍光測定してエキシマ
ー蛍光(475〜550nm)強度を測定して得られた
蛍光強度と、さらにこの混合物をHPLCで分離し、そ
れぞれのラベル化されたポリアミンのピークに基づくエ
キシマー蛍光強度(グラジエント溶媒によるエキシマー
蛍光強度を補正した後)を測定し各成分の蛍光強度積分
値の和とは同じ値(変動係数5%)を示した(図1)。
【0028】この結果は、本発明に係る分析方法におい
ては、これらの広範囲に異なる構造を有するポリアミン
化合物のピレン基に基づくエキシマー蛍光強度は実質的
に同じであることを意味するものである。
【0029】従って、本発明に係る方法を使用すること
により、混在するモノアミン成分による阻害を受けない
で、ポリアミンの種類に拘らず、試料中に存在する全ポ
リアミン量を簡便に分析することが可能であることを示
すものである。
【0030】(蛍光測定)本発明に係る方法において使
用可能な蛍光測定装置については特に制限はない。ピレ
ン基を励起する励起光(波長345nmが好ましい)、
及びエキシマー蛍光を観測する検出器(波長475nm
が好ましい)があればよい。また、測定に適した試料濃
度、測定セル、測定条件についても特に制限はなく、通
常公知の条件、器具等を好ましく使用できる。必要なら
ば、測定条件の最適化についても通常公知の方法で可能
である。
【0031】具体的な測定手段の一例としては、ポリア
ミン混合物(プトレシン、カダベリン、スペルミジン、
スペルミンの等量混合物)を溶媒テトラヒドロフラン−
DMSO−水(1:2:1体積/体積)を用いてスクシンイ
ミジルピレンブチレートによりラベル化した試料濃度
(ポリアミンに換算して)1×10-5〜10-8Mの溶液を1
〜4mlの石英セルにて測定する。この際励起波長は3
45nmであり、測定波長は475nmである。得られ
るエキシマー蛍光強度については、波長475nmから
550nmまでの範囲の強度を積分する。ポリアミンを
加えない条件、又はラベル化しない試料をバックグラウ
ンド(又はコントロールとして)同条件で測定する。
【0032】(全ポリアミン量算出方法)得られるエキ
シマー蛍光強度に基づいて試料中の全ポリアミンを算出
(定量)する方法においても特に限定はされない。例え
ば、既知濃度の単一のポリアミンの標準品((株)和光
純薬から入手可能)を用いて、本発明に係るラベル化反
応を行い、蛍光測定により得られるエキシマー蛍光強度
から検量線を作成することにより好ましくポリアミンの
量を算出することが可能である。
【0033】または、濃度既知のポリアミンの標準品を
添加する標準添加法も好ましく使用可能である。この場
合、上で説明したように試料中に含まれていると推定さ
れるポリアミンの1種を用いることが好ましく。具体的
には、例えば、既知濃度のリシン又はスペルミジンを試
料に添加した後にラベル化試薬で処理して得られるエキ
シマー蛍光強度を測定し、この測定値と上記の標準品を
添加せずに得られるエキシマー蛍光強度の測定値を比較
することにより試料中のポリアミンの量を分析すること
が可能となる。
【0034】(エキシマー蛍光の蛍光減衰曲線)本発明
においては、該エキシマー蛍光の蛍光減衰曲線に基づき
ポリアミンの量を分析することも可能である。この場
合、エキシマー蛍光に基づく蛍光のみを選択的に測定す
ることが可能となり、より高感度の測定が可能となる。
【0035】この際時間分解蛍光スペクトル測定装置は
特に限定されず、ピレン基の励起手段と、得られるエキ
シマー蛍光を時間分解して測定する手段を有していれば
よい。
【0036】
【実施例】以下実施例に基づき本発明を具体的に説明す
るが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に
限定されるものではない。
【0037】(実施例1)ポリアミンとして、オルニチ
ン、リシン、プトレシン、カダベリン、スペルミジン、
及びスペルミンそれぞれの単一物、及びこれらの等量混
合物(各100nmol)を、それぞれスクシンイミジルピレ
ンブチレート(1nmol、molecular Probes社製)、と室
温で200μlのテトラヒドロフラン−DMSO−水(1:
2:1体積/体積)中で混合し、約15時間反応させてラ
ベル化を行った。
【0038】ラベル化ポリアミン混合物の分離は、高速
液体クロマトグラフ(以下HPLCという)(条件:カ
ラム;TSKgel SuperOctyl(4.6mm×5cm、東ソー)、移
動相;水−アセトニトリルのグラジエント溶離(アセト
ニトリル濃度50-80%/20分、直線)を行った。分離され
た各ピークは、通常のピレン基の蛍光波長(励起波長3
45nm、観測波長375nm)及び、ピレンエキシマー蛍
光波長(励起波長345nm、観測波長475nm)で検出
した(図2)。
【0039】さらに、HPLCで分離した上記のそれぞ
れのラベル化ポリアミンの質量分析(TOF−MS、島
津製作所(株)製MALDI IV)の結果は、これら
のすべてのポリアミンの2箇所でラベル化されているこ
とが示された。この結果は、スクシンイミジルピレンブ
チレートにより主に1級アミノ基にラベル化されている
ことを示すものである。
【0040】図3には、同様にスクシンイミジルピレン
ブチレートでラベル化したリシン、オルニチン、アラニ
ン、グリシン及びブランク試料の反応混合物の蛍光スペ
クトルを示したものである。この場合測定溶液中には、
未反応の試薬及びその加水分解物(それぞれスクシンイ
ミジルピレンブチレート及びピレン酪酸)も同時に過剰
に存在し、全ての試料でこれらに由来する蛍光が強く観
測される(蛍光ピーク375nm)。
【0041】ブランク及びモノアミノ化合物について
は、ピレン自体の蛍光よりも長波長の蛍光であるエキシ
マー蛍光(極大波長475nm)はまったく観測されな
い。これに対して、ポリアミンであるリシン、オルニチ
ンにつては470−600nm付近に新たなエキシマー蛍光が明
瞭に観測される。
【0042】さらに、この測定試料のエキシマー蛍光領
域でのリシン、オルニチンによるエ蛍光の時間減衰曲線
を図4に示す。励起光に比較して、新たな蛍光の発光の
遅延は、この発光がエキシマー形成に基づくエキシマー
蛍光であることを示すものである。
【0043】(実施例2)各アミン成分のラベル化反応
後のエキシマー蛍光領域である470-600nmの蛍光強度を
それぞれの試料で比較した結果を下の表に示す。ポリア
ミンとしてリシンとオルニチンを、またモノアミンとし
てアラニンとグリシンを測定して比較した。
【0044】 =============================== アミン 蛍光強度(ブランク補正後、単位は任意) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− リシン 0.9 オルニチン 0.8 グリシン 〜0 アラニン 〜0 =============================== ポリアミン(リシン、オルニチン)が顕著な強度の増加
を示し、モノアミン(グリシン、アラニン)には全く強
度の増加はみられない。また、リシンとオルニチンは実
質的に同じ強度を示した。
【0045】(実施例3)モノアミン類が過剰量共存し
ている条件下での、ポリアミンのエキシマー蛍光への影
響。
【0046】モノアミン化合物(アラニン及びグリシ
ン)をそれぞれ約100倍量共存したリシンの混合物
を、実施例1と同様の条件でラベル化し、得られた反応
溶液の蛍光を測定した。この条件下で測定されたエキシ
マー蛍光の強度は相対強度で0.9であった。比較とし
て、モノアミン化合物が共存しない条件下で同様のラベ
ル化した反応溶液の蛍光を測定した。この場合測定され
たエキシマー蛍光の強度は相対強度で0.9であった。す
なわち、これらの蛍光強度には有意の差が見られず、多
量のモノアミン類の共存には全く影響されないことが明
らかである。この結果は、本発明に係るポリアミン分析
方法は、試料中に多量のモノアミン化合物の共存には影
響を受けないことを示している。
【0047】(実施例4)ポリアミン分析用検量線作
成。
【0048】種々のポリアミン(リシン、オルニチン、
プトレシン、カダベリン、スペルミジン、スペルミン)
の濃度対エキシマー蛍光強度をプロットしたものを図5
〜10に示す。これらの検量線は、実質的に同じであ
り、ポリアミンの種類によりほとんど依存しないことが
示される。この結果は、本発明に係るポリアミン分析方
法は、試料中の種々のポリアミンの混合物からなる全ポ
リアミンを簡便に分析することが可能であることを示す
ものである。さらに、HPLC等の分離手段を使用し、
単一成分の検量線を用いてさらに高感度の分析も可能と
するものである。
【0049】さらには、これらの検量線に基づき、本発
明に係る方法による検出限界は、約50nM程度(ブラ
ンク値の標準偏差値の3倍のシグナルを与える濃度)で
あることが示される。
【図面の簡単な説明】
【図1】スクシンイミジルピレンブチレート(2.5m
M)のみ、及びスペリミジン(1mM)との反応後の蛍
光スペクトルを示す図である。
【図2】ポリアミン化合物の混合物(プトレシン、カダ
ベリン、スペルミジン、スペルミン、各100pmol)を、
ピレン基でラベル化し、HPLCで分離し、エキシマー
蛍光測定により検出したクロマトグラムを示す図であ
り、(A)は励起波長345nm、蛍光観測波長475
nmでのクロマトグラムであり、(B)は励起波長34
5nm、蛍光観測波長375nmでのクロマトグラムで
ある。
【図3】ピレンでラベル化した各種アミノ酸(オルニチ
ン、リシン、アラニン、グリシン)の蛍光スペクトル
(水−DMSO(1:1体積/体積)中で5×10-6Mのポリ
アミンを、1×10-4Mスクシンイミジルピレンブチレー
ト(DMSO−THF(1:1体積/体積)100μlでラベ
ル化して得られた溶液をアセトニトリルで10倍に希釈
して得られた溶液)を示す図である。
【図4】ピレンでラベル化したオルニチン及びリシンの
エキシマー蛍光減衰曲線を示す図である。
【図5】リシンの検量線を示す図である。
【図6】オルニチンの検量線を示す図である。
【図7】スペルミンの検量線を示す図である。
【図8】スペルミジンの検量線を示す図である。
【図9】プトレシンの検量線を示す図である。
【図10】カダベリンの検量線を示す図である。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 2以上のアミノ基を有するポリアミン
    を、ピレン基を有するラベル化試薬でラベル化し、45
    0〜520nmでの波長領域に生じる蛍光の蛍光強度及
    び/又は蛍光強度減衰曲線の測定に基づき前記ポリアミ
    ン量を分析する方法。
  2. 【請求項2】 前記波長領域に生じる蛍光が、前記ポリ
    アミンの2以上のアミノ基が前記試薬でラベル化され、
    前記ピレン基の光励起に基づき前記ポリアミンの分子内
    で形成されるエキシマー蛍光であることを特徴とする請
    求項1記載の方法。
  3. 【請求項3】 請求項1〜2のいずれか1項に記載の方
    法において、さらに、前記ポリアミン混合物が、少なく
    とも、リシン、オルニチン、プトレシン、カダベリン、
    スペルミジン、スペルミンからなる群のいずれか1つを
    含むものであることを特徴とする方法。
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