JPH10142153A - 呼気中成分の光学的測定方法及び装置 - Google Patents

呼気中成分の光学的測定方法及び装置

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JPH10142153A
JPH10142153A JP31283496A JP31283496A JPH10142153A JP H10142153 A JPH10142153 A JP H10142153A JP 31283496 A JP31283496 A JP 31283496A JP 31283496 A JP31283496 A JP 31283496A JP H10142153 A JPH10142153 A JP H10142153A
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component
around
raman spectrum
breath
wavelength
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JP31283496A
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English (en)
Inventor
Hiroshi Yamamoto
博司 山本
Seizo Uenoyama
晴三 上野山
Giyoumei Toku
暁鳴 竇
Kaoru Ou
かおる 王
Kentaro Shimada
健太郎 島田
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Arkray Inc
Original Assignee
KDK Corp
Kyoto Daiichi Kagaku KK
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 ラマン分光法を利用した、短時間で、直接的
に、呼気中成分を定量でき、消耗品も不要な測定方法を
提供すること。 【構成】 呼気中の測定しようとする各成分について、
その成分の濃度とラマンスペクトル強度の間の相関が良
好な波長をその成分に固有の測定波長として選択し、積
分球型セルホルダー内に保持された球状セルに採取され
た呼気検体に対し励起光を照射し、窒素に固有の測定波
長でのラマンスペクトルと、測定しようとする各成分に
ついてのそれぞれ予め選択された測定波長でのラマンス
ペクトルを測定し、窒素のラマンスペクトル強度に対す
る各成分のラマンスペクトル強度比を求め、各成分につ
いての窒素とのラマンスペクトル強度比と濃度について
予め作成した検量線を用いて呼気中の各成分を定量分析
する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は臨床検査の分野にお
いて、ラマン光を利用して呼気中成分、例えばアセト
ン、アセトアルデヒド、イソプレン、アンモニア、酪
酸、吉草酸、酸素、窒素、二酸化炭素などの濃度(存在
量や存在比)を比較的安価な装置で、しかも短時間に測
定する方法と装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】呼気中には血液や尿と同じように、40
0種類以上の揮発性化合物が含まれている。これらの呼
気中成分は糖尿病、肝・腎障害、先天性アミノ酸代謝異
常、腸内発酵、糖質吸収不全、生体内脂質過酸化などの
各種疾病や化学物質による中毒などと深く関係している
ことが明らかになりつつある。また、これらは特有の臭
気によって臨床診断学上からも極めて重要な物質となっ
ている。呼気検査のメリットは非侵襲で、血液などに較
べて検体採取の容易さにあり、被検者の身体的かつ精神
的負担を軽減できる。
【0003】被検ガス中成分の分析方法としては、ガス
クロマトグラフィー及びガスクロマトグラフィー質量分
析計(GC−MS)法、タンデムマススペクトロメトリ
ー法、IR法、半導体センサー法などがある。ガスクロ
マトグラフィー及びガスクロマトグラフィー質量分析計
法は、何らかの手段で濃縮させた呼気検体をガスクロマ
トグラフ又はガスクロマトグラフィー質量分析計で分離
精製後定量する。ガスクロマトグラフの検出器としては
水素炎イオン化検出器(FID)が主で、その他、炎光
光度検出器(FPD)、光イオン化検出器(PID)な
どがある。
【0004】水素炎検出器は多くの化合物の定量が可能
であるが、無機化合物や硫化物に対して感度が低い。炎
光光度検出器は硫化物に対しては水素炎検出器より高感
度であり、光イオン化検出器はハロゲン化炭化水素と不
飽和化合物に対しては水素炎検出器より高感度である。
【0005】概してガスクロマトグラフィー及びガスク
ロマトグラフィー質量分析計法は、装置の使用にあたり
頻繁に校正と保守が必要になり、また各物質に対して検
出器により感度に違いがあるため、汎用法としての使用
が困難であるという欠点がある。しかも高価な装置が必
要であり、操作も煩雑である。
【0006】タンデムマススペクトロメトリー法は近年
開発された分析技術であり、質量−電荷比に基づいて化
合物の分離を行うことが出来る。このためガスクロマト
グラフィー等による分離が不要で、高感度であるが、装
置が極めて高価格である。IR法は多成分の同定と高感
度の定量が可能である。しかし、炭化水素のように分子
構造が類似しているものや同じ置換基を持つ化合物を含
むサンプルのスペクトルはかなり類似しており、それぞ
れを識別することは困難である。
【0007】半導体センサー法で用いるセンサーは、半
導体材料として酸化チタンや酸化第二銅といった酸化物
を用い、これを熱処理により非化学量論組成酸化物にし
て半導体特性を付与して製造したものである。このセン
サーは被検ガスが半導体に吸着すると半導体中のバンド
構造が変化し、電気抵抗や電気容量が変化することを利
用して、その電気特性の変化から被検ガスを検知する。
半導体センサーは原理上酸素分圧に対しても敏感で、検
知ガスのみならず酸素分圧によっても電気抵抗や電気容
量が変化するため、酸素が存在してその分圧が変化する
ような環境下では、信頼性の点で問題がある。
【0008】また、ラマン分光法を利用した方法もあ
る。特開平6−229914号公報及び特開平6−22
9915号公報には、高出力光パルス発生器の出力をラ
マンファイバ−に入射させ、光出力の変化からガスの有
無を検出するガス検出器が記載されており、特開平6−
242002号公報には、気道内の混合ガスの組成及び
濃度を測定する方法が記載されている。前者はガスの有
無の確認のみで、濃度測定や各種成分の同定には及んで
おらず、後者は手術時の麻酔の制御・調節のための麻酔
モニターである。呼気中の各種成分の検出や濃度の測定
を行う臨床的検査方法としてのラマン分光法の利用はい
まだなされていない。
【発明が解決しようとする課題】
【0009】呼気を検体とした場合、定量測定を行うに
は測定呼気容量を厳しく制御して一定に保たねばならな
い。しかし、肺活量等の要因によりヒトが一回の呼吸で
吐き出す呼気の量には個人差が大きく、また対象が気体
であるゆえ、一定量を採取するのは容易ではない。
【0010】ラマン分光法を呼気中成分の分析に利用し
ようとする場合、ラマン散乱光強度の大きさも問題とな
る。一般に、ラマン散乱光強度が弱い上に、呼気中成分
の濃度が低いため、定量精度を確保するのに十分な強度
のラマン散乱光を得るのが容易ではない。
【0011】本発明は、呼気中成分、例えばアセトン、
アセトアルデヒド、イソプレン、アンモニア、酪酸、吉
草酸、酸素、窒素、二酸化炭素などの濃度(存在量、存
在比)を測定する際に、比較的安価で、短時間で簡便
に、各成分の濃度を測定する方法と装置を提供すること
を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】上記課題を解決するため、本発明では、呼
気中の各成分がそれぞれ固有のラマンスペクトルを持
ち、そのため混合ガス中での各成分の識別や濃度の測定
が可能なことを利用する。そして、ラマン散乱光を増強
するために積分球型のセルホルダーとそのセルホルダー
に保持される球状セルを使用する。積分球型セルホルダ
ーを使用することにより、ラマン散乱光が増強され、S
/N比が改良されて定量精度が向上する。
【0013】本発明の好ましい第1の局面では、呼気採
取量の変動を補正するために呼気中の窒素濃度を基準と
して各成分を定量測定する。空気中に体積で約78%を
占める窒素は、呼吸などで肺内に吸入されても、代謝さ
れずに排出される。それ故、排出された呼気中の窒素の
濃度は、ほぼ一定であり、個人差も少ない。つまり、濃
度の安定した窒素を対照成分として利用することで、個
人差を排除して他の呼気中成分の濃度を測定し、データ
の絶対値化を図るものである。
【0014】すなわち、本発明の第1の局面は、呼気中
の測定しようとする各成分について、その成分の濃度と
ラマンスペクトル強度の間の相関が良好な波長をその成
分に固有の測定波長として選択し、呼気検体に対しラマ
ン励起光を照射し、窒素に固有の測定波長でのラマンス
ペクトルと、測定しようとする各成分についてのそれぞ
れ選択された測定波長でのラマンスペクトルを測定し、
窒素のラマンスペクトル強度に対する各成分のラマンス
ペクトル強度比を求め、各成分についての窒素とのラマ
ンスペクトル強度比と濃度について予め作成した検量線
を用いて呼気中の各成分を定量分析する測定方法であ
る。この方法によれば、検体の一定量を採取することが
容易でない呼気に対しても各成分濃度の絶対値を容易に
測定することができるようになる。
【0015】本発明の第2の局面では、呼気中の各成分
がそれぞれ固有のラマンスペクトルを持ち、そのため混
合ガス中での各成分の識別や濃度の測定が可能なことを
利用するとともに、呼気採取量の変動を補正するために
複数成分の濃度比を求める。すなわち、本発明の第2の
局面は、呼気中の測定しようとする複数成分について、
各成分の濃度とラマンスペクトル強度の間の相関が良好
な波長をその成分に固有の測定波長として選択し、呼気
検体に対しラマン励起光を照射し、その複数成分につい
てのそれぞれ選択された測定波長でのラマンスペクトル
を測定し、その複数成分のラマンスペクトル強度から、
各成分についてラマンスペクトル強度と濃度について予
め作成した検量線を用いてその複数成分の濃度比を求め
る測定方法である。
【0016】複数成分の濃度比を求めることによって
も、検体の一定量を採取することが容易でない呼気に対
しても複数成分の正確な濃度比を求めることができ、診
断に有効な指標を得ることができるようになる。そし
て、本発明の測定方法は、呼気検体に対しラマン励起光
を照射するだけであるので、短時間で直接的に呼気中成
分を定量でき、消耗品も不要である。
【0017】各成分の濃度とラマンスペクトル強度の間
の相関が良好な波長は、相関係数Rが0.8以上、好ま
しくは0.9以上の波長である。ここで、相関係数R
は、各成分を単独で含む複数濃度の試料について測定
し、次の(1)式により算出される値である。
【数1】 xi:各成分の各点の濃度 yi:xiに対するラマンスペクトル強度 X :各成分の濃度の平均値 Y :ラマンスペクトル強度の平均値
【0018】測定しようとする呼気中の成分として、酸
素、窒素、二酸化炭素、水蒸気、アセトン、アセトアル
デヒド、アンモニア、イソプレン、イソ−酪酸、n−酪
酸、イソ−吉草酸、n−吉草酸、プロピオン酸、エタノ
ール等を含んでいる。各成分の好ましい測定波長は上記
(1)式の相関係数Rが0.9以上の波長であり、それ
らを波数で示すと、酸素に対しては、1530〜1590cm-1
付近から選択し、窒素に対しては、2304〜2364cm-1
近から選択し、二酸化炭素に対しては、1255〜1315cm
-1付近又は1335〜1415cm-1付近から選択し、アセトン
に対しては、751〜811cm-1付近、1706〜1766cm-1
近、2680〜2740cm-1付近、2830〜2967cm-1付近又は
2967〜3054cm-1付近から選択し、アセトアルデヒドに
対しては、488〜518cm-1付近、841〜901cm-1付近、
895〜955cm-1付近、1084〜1144cm-1付近、1369〜14
68cm-1付近、1722〜1782cm-1付近、2666〜2786cm
-1付近、2786〜2890cm-1付近又は2906〜2966cm-1
近から選択し、イソプレンに対しては、494〜585cm-1
付近、751〜811cm-1付近、924〜1042cm-1付近、104
7〜1107cm-1付近、1273〜1343cm-1付近、1358〜146
3cm-1付近、1619〜1679cm-1付近、2715〜2775cm
-1付近、2849〜2909cm-1付近、2896〜2975cm-1
近、2975〜3059cm-1付近、3074〜3144cm-1付近又は
3466〜3526cm-1付近から選択し、アンモニアに対して
は、3198〜3258cm-1付近又は3315〜3375cm-1付近か
ら選択し、イソ−酪酸に対しては、1254〜1314cm-1
近、1357〜1417cm-1付近又は2871〜3018cm-1付近か
ら選択し、n−酪酸に対しては、2866〜2926cm-1
近、2951〜3011cm-1付近又は3011〜3067cm-1付近か
ら選択し、イソ−吉草酸に対しては、2829〜2889cm-1
付近、2951〜3011cm-1付近又は3011〜3067cm-1付近
から選択し、n−吉草酸に対しては、2945〜3005cm-1
付近又は3005〜3061cm-1付近から選択し、プロピオン
酸に対しては、2875〜2935cm-1付近又は2935〜2962c
-1付近から選択し、エタノールに対しては、853〜913
cm-1付近、2852〜2910cm-1付近、2910〜3008cm-1
付近又は3630〜3690cm-1付近から選択することができ
る。
【0019】これらの物質の定量測定に適したピーク位
置を図17にまとめて示してある。図17の図表中の数
値は全て波数cm-1である。酸素の1555cm-1付近のピ
ークはO=Oからの振動によるものと考えられる。窒素の2
331cm-1付近のピークはN≡Nからの振動によるものと
考えられる。二酸化炭素の1283cm-1付近のピーク及び
1385cm-1付近のピークは全対称伸縮振動によるものと
考えられる。
【0020】アセトンの805cm-1付近のピーク、1080
cm-1付近のピーク、1429cm-1付近のピーク及び2940
cm-1付近のピークはCH3からの振動、1237cm-1付近
のピークはCH3Cからの振動、1710cm-1付近のピークは
COからの振動によるものと考えられる。
【0021】アセトアルデヒドの518cm-1付近のピー
ク及び1124cm-1付近のピークはC-C=Oからの振動、871
cm-1付近のピークはCH3からの振動、925cm-1付近の
ピーク、1438cm-1付近のピーク、2860cm-1付近のピ
ーク及び2936cm-1付近のピークはCH3からの振動、139
9cm-1付近のピーク及び2696cm-1付近のピーク2817
cm-1付近のピークはCHからの振動、1753cm-1付近の
ピークはC=Oからの振動、2725cm-1付近のピーク及び2
836cm-1付近のピークはCHからの共鳴によるものと考
えられる。
【0022】イソプレンの524cm-1付近のピーク、555
cm-1付近のピーク及び1078cm-1付近のピークはCCC
からの振動、1002cm-1付近のピーク、1303cm-1付近
のピーク及び3104cm-1付近のピークはCHからの振動、
781cm-1付近のピーク、2926cm-1付近のピーク、300
1cm-1付近のピーク及び3029cm-1付近のピークはCH2
からの振動、954cm-1付近のピーク、1388cm-1付近
のピーク、1433cm-1付近のピーク、2879cm-1付近の
ピーク及び2945cm-1付近のピークはCH3からの振動、1
649cm-1付近のピークはCCからの振動によるものと考
えられる。
【0023】アンモニアの3228cm-1付近のピークはNH
2からの振動、3345cm-1付近のピークはNH3からの振動
であると考えられる。イソ−酪酸の1284cm-1付近のピ
ークはCOOHからの振動、1387cm-1付近のピーク、2940
cm-1付近のピーク及び2988cm-1付近のピークはCH3
からの振動、2901cm-1付近のピークはCH(CH3)2からの
振動であると考えられる。
【0024】n−酪酸の2896cm-1付近のピークはCH2
からの振動、2981cm-1付近のピークはCH3からの振
動、3037cm-1付近のピークはCOOHからの振動であると
考えられる。イソ−吉草酸の2858cm-1付近のピークは
CHCH3とCH3からの振動、2981cm-1付近のピークはCH3
からの振動、3037cm-1付近のピークはCOOHからの振動
であると考えられる。
【0025】n−吉草酸の2975cm-1付近のピークはCH
3からの振動、3031cm-1付近のピークはCOOHからの振
動であると考えられる。プロピオン酸の2906cm-1付近
のピークはCH2からの振動、2962cm-1付近のピークはC
H3からの振動、3037cm-1付近のピークはCOOHからの振
動であると考えられる。
【0026】エタノールの883cm-1付近のピークはCCO
からの振動、2883cm-1付近のピーク及び2978cm-1
近のピークはCH3からの振動、2940cm-1付近のピーク
はCH2からの振動であると考えられる。
【0027】本発明は呼気を検体とした臨床検査の手法
として使用する。呼気中には約400種類にものぼる生
体由来の化合物が存在している。大気中の主要成分であ
る窒素や酸素をはじめとして、二酸化炭素、アセトン、
エタノール、アセトアルデヒド、アンモニアなどが、呼
気中には含まれるが、各成分濃度については健常人であ
っても個人差がみられ、健常人とある疾患に罹患した患
者との間にも有意な差がみられるのが一般的である。ま
た各成分の呼気中含有濃度も、物質によりppmレベル
のものからppbレベルのものまで様々である。本発明
の第1の局面によれは、呼気中の窒素濃度を基準にする
ことによりこれらの各種成分の絶対濃度を求めることが
できる。
【0028】二酸化炭素は過換気症候群の指標である。
過換気症候群とは主として重症の神経症や若い女性のヒ
ステリーにより過剰換気が起こり、動脈血中から二酸化
炭素排泄量が異常に多くなり、重炭酸と炭酸の比が増加
してpHが上昇し、高度の呼吸アルカローシスを起こす
場合を言う。よって、排泄された呼気中の二酸化炭素濃
度が高ければ、過換気症候群であると判定できる。
【0029】呼気中のアセトンをはじめとするケトン体
は、その大部分が肝臓での脂質のβ−酸化反応の中間代
謝産物として生成する。糖尿病のような病理状態では、
大量の脂肪酸が利用されるため、生体が脂肪酸の代謝産
物を利用しきれず、肝臓からのアセトンが血中へ出現
し、血中濃度の増加と同時に呼気中アセトン濃度も増加
する。糖尿病、特にIDDM(インシュリン依存性糖尿
病)におけるインシュリン治療後、患者の血糖の利用が
増加するため、脂肪酸の酸化が減少する。そのため血中
脂肪酸の代謝産物であるケトン体濃度が減少し、呼気中
アセトン濃度も減少する。これは糖尿病の治療効果の判
定に有効な指標となり、また糖尿病患者の自己管理の指
標ともなり得る。さらに飢餓、過運動負荷、肥満の場合
のモニタまたは管理に有用である。
【0030】呼気中エタノール及びアセトアルデヒド
は、アルコール中毒症(酩酊症)の症例において、その
診断及びアルコール代謝の経過観察上、極めて有用であ
る。同様に先天性アセトアルデヒド分解酵素欠乏症にお
いても、呼気中アセトアルデヒド濃度の測定はその診断
に有効である。
【0031】肝臓疾患の際、アンモニアから尿素への代
謝が不可能となるために血中に滞まり、呼気中へのアン
モニア排出量が増加する。具体的には肝不全、腎不全
(尿毒症)の症例において、呼気中アンモニアが有意に
増加する。
【0032】酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸をはじ
めとするVFA(揮発性脂肪酸)は腸内微生物による食
物発酵作用によるものであり、肝臓疾患、アミノ酸代謝
異常などの場合、腸内微生物群のバランスが変化し、通
常の腸内VFA産生量が増加し、呼気中に排出される。
【0033】ある種の先天性疾患、例えば、フェニルケ
トン尿症(芳香族アミノ酸であるフェニルアラニンをチ
ロシンに転化するフェニルアラニン4−モノオキシゲナ
ーゼの遺伝的欠損症)やイソ吉草酸血症(ロイシン代謝
過程のイソバレリル-CoAデヒドロゲナーゼの遺伝的欠損
症)患者の呼気には特有な臭気があり、それは呼気中に
前者はフェニル酢酸が、後者はイソ吉草酸が排出される
ためである。
【0034】本発明の第2の局面により求められる複数
成分の濃度比は、呼吸商の測定の診断などに有用であ
る。呼吸商とは、個体が呼吸を営む際、酸素吸収量に対
する二酸化炭素呼出量の比(二酸化炭素呼出量/酸素吸
収量)を言う。二酸化炭素呼出量は呼気中の二酸化炭素
のラマンスペクトル強度から検量線を用いて二酸化炭素
濃度の相対値として求め、酸素吸収量はその呼気中の窒
素のラマンスペクトル強度から検量線を用いて求めた窒
素濃度の相対値に空気の窒素に対する酸素の比率をかけ
ることにより求めることができる。したがって、呼気中
の二酸化炭素と窒素のラマンスペクトル強度の測定から
呼吸商を求めることができる。呼吸商は飢餓状態では
0.8付近になり、糖尿病の際は低くなる。
【0035】本発明の方法を実施する測定装置は、光源
を備えて単一波長の光束を発生する光源部と、セル中の
呼気検体に光源部からの光束が試料用光束として照射さ
れる試料部と、セル中の呼気検体に試料用光束が照射さ
れて発生したラマン散乱光を測定対象光として取り出し
光束を調整する光学系を備えた測定対象光学調整部と、
測定対象光学調整部から出射した光束を分光する分光器
及びその分光器により分光されたスペクトル光を検出す
る検出器を備えた分光検出部と、分光検出部の検出器に
より検出された分光スペクトルの所定波長でのラマンス
ペクトル強度に基づいて各成分を定量分析するデータ処
理部とを備えている。そして、試料部は、内面が反射面
となった積分球型のセルホルダー、及び呼気検体が収容
される部分がそのセルホルダーに嵌め込まれる球状に形
成されたセルを備えたものである。
【0036】これらの物質の定量測定に適したピーク位
置を図17にまとめて示してある。図17の図表中の数
値は全て波数cm-1である。酸素の1555cm-1付近のピ
ークはO=Oからの振動によるものと考えられる。窒素の2
331cm-1付近のピークはN≡Nからの振動によるものと
考えられる。二酸化炭素の1283cm-1付近のピーク及び
1385cm-1付近のピークは全対称伸縮振動によるものと
考えられる。
【0037】アセトンの805cm-1付近のピーク、1080
cm-1付近のピーク、1429cm-1付近のピーク及び2940
cm-1付近のピークはCH3からの振動、1237cm-1付近
のピークはCH3Cからの振動、1710cm-1付近のピークは
COからの振動によるものと考えられる。
【0038】アセトアルデヒドの518cm-1付近のピー
ク及び1124cm-1付近のピークはC-C=Oからの振動、871
cm-1付近のピークはCH3からの振動、925cm-1付近の
ピーク、1438cm-1付近のピーク、2860cm-1付近のピ
ーク及び2936cm-1付近のピークはCH3からの振動、139
9cm-1付近のピーク及び2696cm-1付近のピーク2817
cm-1付近のピークはCHからの振動、1753cm-1付近の
ピークはC=Oからの振動、2725cm-1付近のピーク及び2
836cm-1付近のピークはCHからの共鳴によるものと考
えられる。
【0039】イソプレンの524cm-1付近のピーク、555
cm-1付近のピーク及び1078cm-1付近のピークはCCC
からの振動、1002cm-1付近のピーク、1303cm-1付近
のピーク及び3104cm-1付近のピークはCHからの振動、
781cm-1付近のピーク、2926cm-1付近のピーク、300
1cm-1付近のピーク及び3029cm-1付近のピークはCH2
からの振動、954cm-1付近のピーク、1388cm-1付近
のピーク、1433cm-1付近のピーク、2879cm-1付近の
ピーク及び2945cm-1付近のピークはCH3からの振動、1
649cm-1付近のピークはCCからの振動によるものと考
えられる。
【0040】アンモニアの3228cm-1付近のピークはNH
2からの振動、3345cm-1付近のピークはNH3からの振動
であると考えられる。イソ−酪酸の1284cm-1付近のピ
ークはCOOHからの振動、1387cm-1付近のピーク、2940
cm-1付近のピーク及び2988cm-1付近のピークはCH3
からの振動、2901cm-1付近のピークはCH(CH3)2からの
振動であると考えられる。
【0041】n−酪酸の2896cm-1付近のピークはCH2
からの振動、2981cm-1付近のピークはCH3からの振
動、3037cm-1付近のピークはCOOHからの振動であると
考えられる。イソ−吉草酸の2858cm-1付近のピークは
CHCH3とCH3からの振動、2981cm-1付近のピークはCH3
からの振動、3037cm-1付近のピークはCOOHからの振動
であると考えられる。
【0042】n−吉草酸の2975cm-1付近のピークはCH
3からの振動、3031cm-1付近のピークはCOOHからの振
動であると考えられる。プロピオン酸の2906cm-1付近
のピークはCH2からの振動、2962cm-1付近のピークはC
H3からの振動、3037cm-1付近のピークはCOOHからの振
動であると考えられる。
【0043】エタノールの883cm-1付近のピークはCCO
からの振動、2883cm-1付近のピーク及び2978cm-1
近のピークはCH3からの振動、2940cm-1付近のピーク
はCH2からの振動であると考えられる。
【0044】本発明は呼気を検体とした臨床検査の手法
として使用する。呼気中には約400種類にものぼる生
体由来の化合物が存在している。大気中の主要成分であ
る窒素や酸素をはじめとして、二酸化炭素、アセトン、
エタノール、アセトアルデヒド、アンモニアなどが、呼
気中には含まれるが、各成分濃度については健常人であ
っても個人差がみられ、健常人とある疾患に罹患した患
者との間にも有意な差がみられるのが一般的である。ま
た各成分の呼気中含有濃度も、物質によりppmレベル
のものからppbレベルのものまで様々である。本発明
の第1の局面によれは、呼気中の窒素濃度を基準にする
ことによりこれらの各種成分の絶対濃度を求めることが
できる。
【0045】二酸化炭素は過換気症候群の指標である。
過換気症候群とは主として重症の神経症や若い女性のヒ
ステリーにより過剰換気が起こり、動脈血中から二酸化
炭素排泄量が異常に多くなり、重炭酸と炭酸の比が増加
してpHが上昇し、高度の呼吸アルカローシスを起こす
場合を言う。よって、排泄された呼気中の二酸化炭素濃
度が高ければ、過換気症候群であると判定できる。
【0046】呼気中のアセトンをはじめとするケトン体
は、その大部分が肝臓での脂質のβ−酸化反応の中間代
謝産物として生成する。糖尿病のような病理状態では、
大量の脂肪酸が利用されるため、生体が脂肪酸の代謝産
物を利用しきれず、肝臓からのアセトンが血中へ出現
し、血中濃度の増加と同時に呼気中アセトン濃度も増加
する。糖尿病、特にIDDM(インシュリン依存性糖尿
病)におけるインシュリン治療後、患者の血糖の利用が
増加するため、脂肪酸の酸化が減少する。そのため血中
脂肪酸の代謝産物であるケトン体濃度が減少し、呼気中
アセトン濃度も減少する。これは糖尿病の治療効果の判
定に有効な指標となり、また糖尿病患者の自己管理の指
標ともなり得る。さらに飢餓、過運動負荷、肥満の場合
のモニタまたは管理に有用である。
【0047】呼気中エタノール及びアセトアルデヒド
は、アルコール中毒症(酩酊症)の症例において、その
診断及びアルコール代謝の経過観察上、極めて有用であ
る。同様に先天性アセトアルデヒド分解酵素欠乏症にお
いても、呼気中アセトアルデヒド濃度の測定はその診断
に有効である。
【0048】肝臓疾患の際、アンモニアから尿素への代
謝が不可能となるために血中に滞まり、呼気中へのアン
モニア排出量が増加する。具体的には肝不全、腎不全
(尿毒症)の症例において、呼気中アンモニアが有意に
増加する。
【0049】酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸をはじ
めとするVFA(揮発性脂肪酸)は腸内微生物による食
物発酵作用によるものであり、肝臓疾患、アミノ酸代謝
異常などの場合、腸内微生物群のバランスが変化し、通
常の腸内VFA産生量が増加し、呼気中に排出される。
【0050】ある種の先天性疾患、例えば、フェニルケ
トン尿症(芳香族アミノ酸であるフェニルアラニンをチ
ロシンに転化するフェニルアラニン4−モノオキシゲナ
ーゼの遺伝的欠損症)やイソ吉草酸血症(ロイシン代謝
過程のイソバレリル-CoAデヒドロゲナーゼの遺伝的欠損
症)患者の呼気には特有な臭気があり、それは呼気中に
前者はフェニル酢酸が、後者はイソ吉草酸が排出される
ためである。
【0051】本発明の第2の局面により求められる複数
成分の濃度比は、呼吸商の測定の診断などに有用であ
る。呼吸商とは、個体が呼吸を営む際、酸素吸収量に対
する二酸化炭素呼出量の比(二酸化炭素呼出量/酸素吸
収量)を言う。二酸化炭素呼出量は呼気中の二酸化炭素
のラマンスペクトル強度から検量線を用いて二酸化炭素
濃度の相対値として求め、酸素吸収量はその呼気中の窒
素のラマンスペクトル強度から検量線を用いて求めた窒
素濃度の相対値に空気の窒素に対する酸素の比率をかけ
ることにより求めることができる。したがって、呼気中
の二酸化炭素と窒素のラマンスペクトル強度の測定から
呼吸商を求めることができる。呼吸商は飢餓状態では
0.8付近になり、糖尿病の際は低くなる。
【0052】本発明の方法を実施する測定装置は、光源
を備えて単一波長の光束を発生する光源部と、セル中の
呼気検体に光源部からの光束が試料用光束として照射さ
れる試料部と、セル中の呼気検体に試料用光束が照射さ
れて発生したラマン散乱光を測定対象光として取り出し
光束を調整する光学系を備えた測定対象光学調整部と、
測定対象光学調整部から出射した光束を分光する分光器
及びその分光器により分光されたスペクトル光を検出す
る検出器を備えた分光検出部と、分光検出部の検出器に
より検出された分光スペクトルの所定波長でのラマンス
ペクトル強度に基づいて各成分を定量分析するデータ処
理部とを備えている。そして、試料部は、内面が反射面
となった積分球型のセルホルダー、及び呼気検体が収容
される部分がそのセルホルダーに嵌め込まれる球状に形
成されたセルを備えたものである。
【0053】好ましくは、光源部は単一波長の光束を試
料用光束と補正用光束とに分割するビームスプリッタを
備えており、データ処理部はその補正用光束を検出して
得られる励起光成分の検出強度を基準にしてラマンスペ
クトル強度を補正する機能をさらに備えている。これに
より、光源強度の変動を補正して再現性のよい測定結果
を得ることができる。また、分光検出部はマルチチャン
ネル光検出器を備え、測定しようとする波長領域を同時
に検出するポリクロメータであることが好ましい。以
下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本
発明はこれに限定されるものではない。
【0054】
【実施例】ここで、本発明の測定法を実施するための測
定装置の実施例を図1と図2に示す。図1は装置構成の
ブロック図であり、光源部1、試料部2、測定対象光学
調整部3、補正光学調整部4、分光検出部5及びデータ
処理部6からなる。図2に図1のブロック図を詳細に表
した具体的な例を示す。光源部1は、単一波長光を発生
する励起光源7と、励起光源7からの励起波長のみを透
過させ、その他の光は反射するバンドパスフィルター2
7と、励起光源7からの光束を試料用光束24sと補正
用光束24rとに分割するために、光路上に斜めに置か
れたスライドガラス9と、スライドガラス9を挟んで試
料部2の試料11に試料用光束24sを収束させるため
の光源集光レンズ8及び集光レンズ10を備えている。
【0055】光源7としては、例えばレーザ装置が用い
られる。レーザ装置としては連続発振をするArイオン
レーザ、Krイオンレーザ、He−Neレーザ、He−
Cdレーザ、Nd:YAGレーザなど、又はパルスレー
ザなどを用いることができ、近紫外域から近赤外域に渡
る広い波長範囲のレーザから選択して利用することが出
来る。レーザ装置以外の光源としてハロゲンランプなど
の多波長光を発生する光源を分光器と組み合わせて用い
ることもできる。
【0056】試料部2には呼気試料11がセル26に入
れられて設置され、その呼気試料11に試料用光束24
sが照射される。呼気試料は例えばテドラーバッグ(du
Pont社の登録商標)にいったん収容した後、セル26
に供給することができる。セル26は有底のセルであっ
てもよく、フローセルであってもよい。
【0057】図3(A),(B)は、図2中の試料部2
で用いられるセルとセルホルダーの例を示す。セル26
は石英製の球形フローセルであり、円筒状の入口26a
と出口26bを備えている。セルホルダー30は互いに
組み合わされる2つの部材30aと30bとからなり、
2つの円筒状セル保持部分32a,32bと、セル保持
部分32a,32bにつながる積分球部分34と、この
セルホルダーに保持されたセル26に励起光を照射する
ための入射孔36と、セル26内の試料から発生した散
乱光を外部に取り出すための外方向に開いた出射孔38
とを備えている。積分球部分34は反射面となってい
る。積分球部分34に入射した励起光は、多重反射をし
て散乱光を増強する。
【0058】再び、図2に戻って説明する。測定対象光
学調整部3は、試料セル26中に収められた試料11に
試料用光束24sが照射されて発生した散乱光から励起
光と同じ波長成分を除去して蛍光とラマン散乱光を含ん
だ測定対象光を取り出すフィルタ手段14と、散乱光を
分光器の入口スリット25に収束させるようにビームを
調整する光学系13,15とを備えている。測定対象光
学調整部3の出口位置には、測定対象光学調整部3から
の試料用光束24sと補正光学調整部4から出射した補
正用光束24rとを同一の光路上に置く合波手段とし
て、光路上に斜めに置かれたスライドガラス16が設け
られている。
【0059】測定対象光学調整部3におけるフィルタ手
段14は、励起光波長をノッチ領域に含むホログラフィ
ック・ノッチ・フィルタ、又は励起光波長を含みそれよ
り短波長側を遮蔽するカットフィルタであることが望ま
しい。ホログラフィック・ノッチ・フィルタは、所望の
波長領域のみを遮蔽し、その他の領域の波長光を透過さ
せるものである。その遮蔽される領域(ノッチ領域)に
励起光波長が含まれたものを使用することで、測定対象
光学調整部3から出射する試料用光束24sは測定対象
光成分のみを含んだものとなる。
【0060】ホログラフィック・ノッチ・フィルタは例
えばKAISER OPTICAL SYSTEMS. INC.(アメリカ)から入
手することが出来る。ホログラフィック・ノッチ・フィ
ルタ14は、例えばノッチ領域に含まれる波長光を完全
に遮蔽し、ノッチ領域以外の波長領域の光は80%以上
を透過させる特性を持っている。
【0061】補正光学調整部4は、励起光源部1でスラ
イドガラス9により分割された補正用光束24rの光量
を減衰させる減衰フィルタ17と、光路を折り曲げるミ
ラー18を備えている。補正用光束24rは光源からの
励起光強度の変動によるスペクトル光強度の変動を補正
するものであり、そのような補正を必要としない場合
は、光源部1でのスライドガラス9、補正光学調整部4
及び合波手段であるスライドガラス16は不要になる。
補正用光束24rは光源7からの励起光のみを含み、試
料を経ていないため、試料には依存せず、光源からの強
度変動を忠実に表したものとなる。
【0062】分光検出部5は、測定対象光学調整部3か
らの試料用光束24sと補正光学調整部4から出射した
補正用光束24rとをスライドガラス16から入口スリ
ット25を経て取込み分光する分光器21と、その分光
器21により分光されたスペクトル光を検出する検出器
20とを備えている。
【0063】分光検出部5は検出器20としてマルチチ
ャンネル光検出器を備え、測定しようとする波長領域を
同時に検出するポリクロメータであることが望ましい。
分光検出部5がポリクロメータであるときは、測定しよ
うとする波長領域を同時に検出することができ、所定領
域の測定対象光スペクトルと励起光とを同時に検出する
ことが出来る。その結果、測定対象光の各波長の検出時
間と励起光との検出時間に差が生じない。しかし、測定
対象光の各波長の検出時間と励起光との検出時間に差が
生じてもよい場合は、分光検出部5は分光器21として
波長走査型の分光器を備え、検出器20としてシングル
チャンネル光検出器を備え、測定しようとする波長領域
を順次検出するものであってもよい。
【0064】データ処理部6は、処理演算コントロール
部22と出力装置23を備え、分光検出部5の検出器2
0により検出された分光スペクトル中の励起光成分の検
出強度を基準にして測定対象光強度を補正する機能を有
する。
【0065】処理演算コントロール部22は各部の動作
を制御したり、分光検出部5が検出した信号をスペクト
ル解析や多変量解析などの処理を行い、分光検出部5に
より検出された分光スペクトル中の励起光成分の検出強
度を基準にして測定対象光の検出強度を補正するデータ
処理も行い、光源の変動が補正されたラマン散乱スペク
トルを演算したり、測定対象光強度から試料の定性や定
量も行う。出力装置23は処理演算コントロール部22
で処理されたデータを出力するプリンタやディスプレイ
などである。
【0066】この実施例の動作を説明すると、光源部1
からの試料用光束24sは試料部2の試料11に照射さ
れる。試料11からの散乱光は測定対象光学調整部3を
経て励起光と同じ波長成分が除去され、スライドガラス
16を経て入口スリット25から分光器21に入射す
る。一方、励起光源部1でスライドガラス9により分割
された補正用光束24rは、補正光学調整部4を経て光
量が調整され、スライドガラス16を経て入口スリット
25から分光器21に入射する。補正用光束24rによ
り励起光強度の変動によるスペクトル光強度の変動が補
正されて、各成分のラマンスペクトル強度が検出され
る。
【0067】図2の測定装置は、入射光に対して、呼気
試料11からの散乱光の測定方向のなす角をθとする
と、本実施例では、θ=90°としているが、これに限
るものではなく、0°≦θ<360°であればよい。
【0068】スライドガラス9,16は、他の種類の透
明板ガラスとすることができる。スライドガラスを初め
とする透明板ガラスは、透過光強度を強めるのに好都合
である。また、ミラー18も透明板ガラスとすることが
できる。
【0069】図2,図3の実施例の測定装置により呼気
中成分の幾つかを測定した例を示す。図4は空気に含ま
れる酸素、窒素及び水(水蒸気)のスペクトルを表した
ものである。1561cm-1付近のピークは酸素ガス由来、
2334cm-1付近のピークは窒素ガス由来、3659cm-1
近のピークは水蒸気由来のピークである。
【0070】図5はアセトンガスのスペクトルを表した
ものである。図6は図5のスペクトルのうち、2940cm
-1付近のピーク強度と濃度との相関関係を調べた結果で
ある。図6では、縦軸は呼気中のアセトンのピーク強度
を同呼気中の窒素のピーク強度で補正し、両者の比とし
て示したものである。その相関関係の相関係数Rは0.98
4である。この結果から、本発明の方法では、呼気中成
分程度の低濃度ガスであってもピーク強度と濃度との間
に直線関係が得られることがわかる。このような低濃度
ガスの定量が可能になっているのは、積分球型セルホル
ダーによりラマン散乱強度が増強されている結果であ
る。各成分について、このようなピーク強度(又はピー
ク面積)と濃度との相関関係を予め測定しておくことに
より、それを検量線として各成分を定量できることが分
かる。
【0071】図7から図16に、アセトアルデヒドガ
ス、アンモニアガス、イソプレンガス、イソ−酪酸ガ
ス、n−酪酸ガス、イソ−吉草酸ガス、n−吉草酸ガ
ス、プロピオン酸ガス、エタノールガス、及び二酸化炭
素ガス(大陽酸素株式会社製 99.9%高純度二酸化
炭素ガス)のそれぞれのラマンスペクトルを表す。
【0072】
【発明の効果】本発明は積分球型セルホルダーに保持さ
れたセル内の呼気検体に対し励起光を照射して各成分に
ついて選択された測定波長でのラマンスペクトルを測定
し、そのラマンスペクトル強度に基づいて各成分を定量
分析するようにしたので、呼気中成分のような低濃度の
ガスのラマン散乱強度を定量に必要な強度で検出できる
ようになり、定量精度が向上する。また、窒素のラマン
スペクトル強度に対する各成分のラマンスペクトル強度
比を基にして各成分の濃度を求めるようにすれば、検体
の一定量を採取することが容易でない呼気に対しても各
成分濃度の絶対値を容易に測定することができるように
なる。また、複数成分の濃度比を求めることによって
も、検体の一定量を採取することが容易でない呼気の対
しても複数成分の正確な濃度比を求めることができ、診
断に有効な指標を得ることができるようになる。そし
て、本発明の測定方法は、呼気検体に対しラマン励起光
を照射するだけであるので、短時間で直接的に呼気中成
分を定量でき、消耗品も不要である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の測定装置の概略を示すブロック図であ
る。
【図2】図1のブロック図を詳細に表した具体的な装置
構成図である。
【図3】(A)は積分球型セルホルダーの斜視図、
(B)はそのセルホルダーの分解斜視図とセルの斜視図
である。
【図4】 酸素、窒素及び水蒸気のスペクトルを表した
図である。
【図5】 アセトンガスのスペクトルを表した図であ
る。
【図6】 アセトンガスの2940cm-1付近のピーク強度
と濃度との相関関係を示す図である。
【図7】 アセトアルデヒドガスのラマンスペクトルを
表した図である。
【図8】 アンモニアガスのラマンスペクトルを表した
図である。
【図9】 イソプレンガスのラマンスペクトルを表した
図である。
【図10】 イソ−酪酸ガスのラマンスペクトルを表し
た図である。
【図11】 n−酪酸ガスのラマンスペクトルを表した
図である。
【図12】 イソ−吉草酸ガスのラマンスペクトルを表
した図である。
【図13】 n−吉草酸ガスのラマンスペクトルを表し
た図である。
【図14】 プロピオン酸ガスのラマンスペクトルを表
した図である。
【図15】 エタノールガスのラマンスペクトルを表し
た図である。
【図16】 二酸化炭素ガスのラマンスペクトルを表し
た図である。
【図17】 呼気中物質の定量測定に適したピーク位置
を示した図表である。
【符号の説明】
1 光源部 2 試料部 3 測定対象光学調整部 4 補正光学調整部 5 分光検出部 6 データ処理部 26 セル 30 セルホルダー
フロントページの続き (72)発明者 王 かおる 京都府京都市南区東九条西明田町57番地 株式会社京都第一科学内 (72)発明者 島田 健太郎 京都府京都市南区東九条西明田町57番地 株式会社京都第一科学内

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 呼気中の測定しようとする各成分につい
    て、その成分の濃度とラマンスペクトル強度の間の相関
    が良好な波長をその成分に固有の測定波長として選択
    し、 呼気検体を積分球型セルホルダー内に保持された球状セ
    ルに採取し又は流し、 その呼気検体に対し励起光を照射し、測定しようとする
    各成分についてのそれぞれ選択された前記測定波長での
    ラマンスペクトルを測定し、 各成分のラマンスペクトル強度に基づいて各成分を定量
    分析することを特徴とする呼気中成分の光学的測定方
    法。
  2. 【請求項2】 各成分の濃度とラマンスペクトル強度の
    間の相関が良好な波長は、相関係数Rが0.8以上、好
    ましくは0.9以上の波長である請求項1に記載の呼気
    中成分の光学的測定方法。
  3. 【請求項3】 測定しようとする呼気中の成分として、
    酸素、窒素、二酸化炭素、水蒸気、アセトン、アセトア
    ルデヒド、アンモニア、イソプレン、イソ−酪酸、n−
    酪酸、イソ−吉草酸、n−吉草酸、プロピオン酸及びエ
    タノールからなる群のうちの成分を含み、各成分の測定
    波長を波数で示すと、 酸素に対しては、1530〜1590cm-1付近から選択し、 窒素に対しては、2304〜2364cm-1付近から選択し、 二酸化炭素に対しては、1255〜1315cm-1付近又は1335
    〜1415cm-1付近から選択し、 アセトンに対しては、751〜811cm-1付近、1706〜1766
    cm-1付近、2680〜2740cm-1付近、2830〜2967cm-1
    付近又は2967〜3054cm-1付近から選択し、 アセトアルデヒドに対しては、488〜518cm-1付近、84
    1〜901cm-1付近、895〜955cm-1付近、1084〜1144c
    -1付近、1369〜1468cm-1付近、1722〜1782cm-1
    近、2666〜2786cm-1付近、2786〜2890cm-1付近又は
    2906〜2966cm-1付近から選択し、 イソプレンに対しては、494〜585cm-1付近、751〜811
    cm-1付近、924〜1042cm-1付近、1047〜1107cm-1
    付近、1273〜1343cm-1付近、1358〜1463cm-1付近、
    1619〜1679cm-1付近、2715〜2775cm-1付近、2849〜
    2909cm-1付近、2896〜2975cm-1付近、2975〜3059c
    -1付近、3074〜3144cm-1付近又は3466〜3526cm-1
    付近から選択し、 アンモニアに対しては、3198〜3258cm-1付近又は3315
    〜3375cm-1付近から選択し、 イソ−酪酸に対しては、1254〜1314cm-1付近、1357〜
    1417cm-1付近又は2871〜3018cm-1付近から選択し、 n−酪酸に対しては、2866〜2926cm-1付近、2951〜30
    11cm-1付近又は3011〜3067cm-1付近から選択し、 イソ−吉草酸に対しては、2829〜2889cm-1付近、2951
    〜3011cm-1付近又は3011〜3067cm-1付近から選択
    し、 n−吉草酸に対しては、2945〜3005cm-1付近又は3005
    〜3061cm-1付近から選択し、 プロピオン酸に対しては、2875〜2935cm-1付近又は29
    35〜2962cm-1付近から選択し、 エタノールに対しては、853〜913cm-1付近、2852〜29
    10cm-1付近、2910〜3008cm-1付近又は3630〜3690c
    -1付近から選択する請求項2に記載の呼気中成分の光
    学的測定方法。
  4. 【請求項4】 各成分について、窒素とのラマンスペク
    トル強度比と濃度についての検量線を予め作成してお
    き、 ラマンスペクトルの測定では、窒素に固有の測定波長で
    のラマンスペクトルと、測定しようとする各成分につい
    てのそれぞれ選択された測定波長でのラマンスペクトル
    とを測定して、窒素のラマンスペクトル強度に対する各
    成分のラマンスペクトル強度比を求め、前記検量線を用
    いて呼気中の各成分を定量分析する請求項1に記載の呼
    気中成分の光学的測定方法。
  5. 【請求項5】 各成分について、ラマンスペクトル強度
    と濃度についての検量線を予め作成しておき、 ラマンスペクトルの測定では、複数成分についてのそれ
    ぞれ選択された測定波長でのラマンスペクトルを測定し
    て、前記検量線を用いてその複数成分の濃度比を求める
    請求項1に記載の呼気中成分の光学的測定方法。
  6. 【請求項6】 光源を備えて単一波長の光束を発生する
    光源部と、 内面が反射面となった積分球型のセルホルダー、及び呼
    気検体が収容される部分が前記セルホルダーに嵌め込ま
    れる球状に形成されたセルを備え、そのセル中の呼気検
    体に前記光源部からの光束が試料用光束として照射され
    る試料部と、 前記セル中の呼気検体に試料用光束が照射されて発生し
    たラマン散乱光を測定対象光として取り出し光束を調整
    する光学系を備えた測定対象光学調整部と、 前記測定対象光学調整部から出射した光束を分光する分
    光器及びその分光器により分光されたスペクトル光を検
    出する検出器を備えた分光検出部と、 前記分光検出部の検出器により検出された分光スペクト
    ルの所定波長でのラマンスペクトル強度に基づいて各成
    分を定量分析するデータ処理部と、を備えたことを特徴
    とする呼気中成分の光学的測定装置。
  7. 【請求項7】 前記データ処理部は、窒素のラマンスペ
    クトル強度に対する各成分のラマンスペクトル強度比に
    基づいて各成分を定量分析する請求項6に記載の呼気中
    成分の光学的測定装置。
  8. 【請求項8】 前記データ処理部は、複数成分について
    のそれぞれ選択された測定波長でのラマンスペクトル強
    度に基づいて複数成分の濃度比を求める請求項6に記載
    の呼気中成分の光学的測定装置。
  9. 【請求項9】 前記光源部は単一波長の光束を試料用光
    束と補正用光束とに分割するビームスプリッタを備えて
    おり、 前記データ処理部は、その補正用光束を検出して得られ
    る励起光成分の検出強度を基準にしてラマンスペクトル
    強度を補正する機能をさらに備えている請求項6,7又
    は8に記載の呼気中成分の光学的測定装置。
  10. 【請求項10】 前記分光検出部はマルチチャンネル光
    検出器を備え、測定しようとする波長領域を同時に検出
    するポリクロメータである請求項6,7,8又は9に記
    載の呼気中成分の光学的測定装置。
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