JPH10139684A - 歯周組織再生促進薬および促進用歯科材料 - Google Patents

歯周組織再生促進薬および促進用歯科材料

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JPH10139684A
JPH10139684A JP8301986A JP30198696A JPH10139684A JP H10139684 A JPH10139684 A JP H10139684A JP 8301986 A JP8301986 A JP 8301986A JP 30198696 A JP30198696 A JP 30198696A JP H10139684 A JPH10139684 A JP H10139684A
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cell growth
growth factor
thrombin
tissue regeneration
periodontal tissue
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JP8301986A
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Sachiyo Sakamoto
幸代 坂本
Akane Takemura
あかね 武村
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Sunstar Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 有効性、安定性、安全性、操作性に優れた歯
周組織再生促進用の製剤組成物および歯科材料の提供。 【解決手段】 歯周組織再生有効量のトロンビンと、所
望によりペプチド性細胞増殖因子とを製剤上許容される
賦形剤、担体等と合してなる歯周組織再生組織用の製剤
組成物および歯科材料。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、歯周組織再生促進
薬および促進用歯科材料、さらに詳しくは、歯周炎によ
り破壊された歯根膜を再生し、正常な歯根と結合組織間
を付着を促進するために用いる薬剤および歯科材料に関
する。
【0002】
【従来の技術】従来、歯周炎の治療方法としては、主と
してスケーリング等により機械的に歯周ポケット内のプ
ラークを除去する方法が採用され、また、重篤な場合に
は歯周外科的処置がなされ、加えて、最近では、抗生物
質による化学療法も試みられている。しかし、これらの
療法は、歯周炎の進行を阻止するには有効な方策ではあ
るものの、破壊された歯周組織を積極的に修復、再生さ
せるものではなく、臨床症状の改善は、あくまで生体の
自己治癒力に依存するものである。また、歯周組織は、
硬組織(歯根)と軟組織(歯肉)が、歯根膜を介した線
維性の強固な結合により付着するという他の組織には見
られない構造を有しているが、従来の治療方法では、歯
根膜が再生する前に歯肉表面の上皮組織が歯周ポケット
内創傷面を被覆してしまう(上皮のダウングロース)た
めに、上皮組織と歯根との正常な結合組織が再生でき
ず、強い結合が生じない。このため、容易に歯周ポケッ
トが再形成され、ひいては歯周炎の再発と歯肉の退縮が
高頻度に生じる。このため、正常な線維性結合を再生さ
せる方法として、最近では、生体適合性の高いバリアー
膜により上皮のダウングロースを抑制し、歯根膜再生の
ためのスペースを確保する誘導組織再生法(GTR膜)
が応用されるようになってきている。しかし、この方法
は術者の技術レベルによるところが大きく、また、適用
できない形態の部位もあるため、予知性が低いという問
題点がある。さらに、本質的に、この方法は物理的な空
間確保を行うだけで、積極的に組織の再生を促進するた
めの薬効剤は含有されていない。一方、最近、組織を構
築する幾つかの細胞の機能を促進する因子の適用が提案
されており、細胞増殖因子が特に効果の面で有用である
ことが報告されている。しかし、これらの因子は多量の
投与によって、生体へ既知の作用以外の副作用を与える
可能性がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】このような事情に鑑
み、本発明は、有効性、安定性、操作性、安全性に優れ
た歯周組織再生促進用の薬剤および歯科材料を提供する
ことを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、トロンビン
が、歯根膜由来線維芽細胞の培地において細胞増殖効果
を示し、歯周組織再生、上皮ダウングロース抑制を助成
するin vivo生理活性を示すことを見いだした。また、
トロンビンとペプチド性細胞増殖因子を組み合わせるこ
とにより、細胞増殖およびin vivo活性において相乗効
果が示されることをも見いだした。
【0005】トロンビンは、血液凝固機作に作用する酵
素の一つであり、通常の結紮によって止血困難な小血
管、毛細血管および実質臓器からの出血などへの局所用
止血剤として使用されており、創傷治癒全般に有効であ
ることが既に知られている。また、トロンビンがヒト皮
膚由来線維芽細胞(D. Michel et al: J.Dermatol.Sc
i.,1(5): 325-33,1990)の細胞増殖に作用することも
知られている。しかし、その歯周組織再生促進作用は、
これまで知られていない。なお、歯科外科手術時の補助
材料であるエナメルマトリックス[EmdogainTM(BIORA
社製)としてヨーロッパ等の国々で上市]については、
トロンビンとの組み合わせが有効であることが示されて
いるが(特開昭63−170307号)、トロンビン
は、手術を容易にするために、一時的に材料の歯根への
接着を高め、止血することを目的として添加されている
ため、歯周組織の再生を促進するものではない。ペプチ
ド性細胞増殖因子については、近年、外傷、火傷などに
より皮膚あるいは粘膜に生じた創傷や、疾患により破壊
された組織の修復に有用であることが報告されている。
例えば、形質転換細胞増殖因子(TGF)は、外科的に
投与すると局所創傷治癒、体内創傷治癒に有効であるこ
とが示されている(米国特許5,482,851号、特公
平6−059230号)。また、血小板由来細胞増殖因
子(PDGF)についても、皮膚の創傷治癒(Lynch et
al: J.Clin.Invest.,84,640-646,1989)、潰瘍治
癒(Pierce et al: J.Cell Biochem., 45,319-326,1
991)を促進することが知られている。さらに、これら
の細胞増殖因子は、歯周組織の再生についても有用であ
ることも報告されている(WO90/04974号)。
また、これら細胞増殖因子とトロンビンについては、い
くつかの報告がある。トロンビンとTGFまたはPDG
Fの組み合わせでは、トロンビンが接着性成分のフィブ
リン形成を開始させる目的で使用され、創傷治癒全般に
有効であることが知られている(米国特許5,368,8
53号)。また、TGF−β1との組合わせは、ヒト軟
髄膜由来細胞に、細胞増殖効果を与えることが報告され
ている(O.Motohashi et al: Neurosci. Lett., 190 :
105-108,1995)。しかしながら、歯周組織再生促進に
ペプチド性細胞増殖因子とトロンビンとの組み合わせが
有効であることは未だ知られていない。
【0006】歯周炎による組織の損傷は、一般的な創傷
とは明らかに異なるものである。すなわち、創傷とは、
摩擦、剥離、挫傷、打撲、切傷などに挙げられる、主に
物理的外力を原因として起こる出血を伴うものである。
それに対して、歯周炎による組織の損傷は、ある特定の
微生物に起因する局所炎症によって引き起こされるた
め、出血を伴わない。さらに、一般的に創面は上皮と結
合組織で構成されているのに対し、歯周組織は軟組織で
ある上皮、歯根膜、歯肉組織の他、硬組織である歯槽
骨、セメント質で構成されている。そして、歯周組織が
完全に機能するためには、歯槽骨、セメント質の再生に
加え、その間にある結合組織である歯根膜の再生が重要
であると考えられている。この歯根膜組織は、歯根と歯
槽骨間で強固な線維性結合を形成する歯根膜由来線維芽
細胞で構成されており、この細胞はアルカリホスファタ
ーゼ活性、タンパク質合成、コラーゲン合成において、
他の組織の線維芽細胞には見られない高い活性を示し、
線維芽細胞の中でも非常に特殊な性質を有している。ま
た、歯根膜由来線維芽細胞は、周辺の細胞(セメント芽
細胞、歯槽骨芽細胞)に分化するといわれている。そこ
で、歯周組織再生過程においては、この歯根膜由来線維
芽細胞が他の上皮細胞や骨細胞よりいち早く根面に向か
って運動、付着することが必要である。したがって、歯
周炎による歯周組織の破壊と一般創傷は、再生過程にお
いて中心となる細胞と、その機能が異なるため、一般創
傷における組織再生における知見を歯周組織再生に当て
はめることはできない。かくして、本発明におけるトロ
ンビン単独の作用および細胞増殖因子との組み合わせに
よる相乗作用は新たな知見である。
【0007】本発明は、このような本発明者らの新規な
知見に基づいて完成したもので、(1)歯周組織再生有
効量のトロンビンを含むことを特徴とする歯周組織再生
促進薬、(2)さらに、有効量のペプチド性細胞増殖因
子を含む上記(1)1記載の歯周組織再生促進薬、
(3)歯周組織再生有効量のトロンビンを製剤上許容さ
れる担体に担持させてなることを特徴とする歯周組織再
生促進用歯科材料、および(4)さらに、有効量のペプ
チド性細胞増殖因子を担持する上記(3)記載の歯周組
織再生促進用歯科材料、を提供するものである。
【0008】本発明で用いるペプチド性細胞増殖因子と
しては、血小板由来細胞増殖因子(PDGF)または形
質転換細胞増殖因子(TGF)が好ましい。本発明にお
いては、トロンビンは単独でも、歯周病によって破壊さ
れた組織を再生する効果を有するが、ペプチド性細胞増
殖因子と組み合わせると、相乗効果によりトロンビンの
活性をさらに促進し、歯周組織の再生をさらに促進す
る。このトロンビンまたはペプチド性細胞増殖因子類と
トロンビンとの組み合わせは、例えば、生分解性のゲル
剤のような製剤組成物として、また、モノフィラメン
ト、フィルム、繊維集合体、スポンジなどの形状を有す
る構造体に固定化または含浸させた歯科材料として用い
ることができる。これらを用いることにより、上皮のダ
ウングロースを防ぎながら歯周組織の再生を促進し、正
常な線維性結合がすみやかに達成される。また、現在上
市されているGTR膜の片面または両面にトロンビンま
たはペプチド性細胞増殖因子類とトロンビンとの組み合
わせを固定した場合あるいはゲル剤を片面または両面に
塗付した場合にも、GTR膜により確保された歯肉弁と
歯根面間のスペースに歯根膜や歯槽骨由来の組織が増加
するのを促進することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明で用いるトロンビンは、商
業的に入手できるものいずれもが使用でき、例えば、日
本製薬株式会社、株式会社ミドリ十字などから市販され
ているものが使用できる。歯周組織再生有効量として
は、製剤の場合も、歯科材料の場合も、100〜10,
000単位/gが好ましい。
【0010】ペプチド性細胞増殖因子としては、血小板
由来細胞増殖因子、形質転換細胞増殖因子、上皮細胞増
殖因子、インシュリン様細胞増殖因子等のペプチド性細
胞増殖因子があり、特に、血小板由来細胞増殖因子(P
DGF)、形質転換細胞増殖因子(TGF)が望まし
い。形質転換細胞増殖因子(TGF)には、TGF−
α、TGF−β、TGF−γがあるが、このうちTGF
−βが最も好ましい。これらのペプチド性細胞増殖因子
も、商業的に入手できるものいずれもが使用でき、例え
ば、米国Gibco社、米国Upstate Biotechnology社などか
ら市販されており、容易に入手することができる。これ
らの使用量は、製剤の場合も、歯科材料の場合も、0.
001〜0.1重量%が好ましい。
【0011】本発明の歯周組織再生促進薬は、常法に従
って、非毒性、有効量のトロンビンまたはトロンビンと
ペプチド性細胞増殖因子との組み合わせを、製剤上許容
される賦形剤または希釈剤と合して通常の製剤組成物、
例えば、ケル剤、液剤、乳剤などの外用剤とすることが
でき、例えば、溶剤、等張化剤、乳化剤、懸濁剤、安定
化剤等を配合してもよい。例えば、ゲル剤の場合、キサ
ンタンガム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシビニル
ポリマー、セルロース誘導体、ゼラチン、ヒアルロン
酸、デンプン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸とグ
リコール酸の混合物からなる群から選ばれるコポリマー
1種以上を含有する場合、安定性に優れ、好ましい。こ
れらゲル剤は、トロンビンおよびペプチド性細胞増殖因
子を保持し、局所にシリンジ等を用いて注入または塗布
して用いることができ、かつ、拡散制御の可能な粘性を
有することが好ましい。
【0012】本発明の歯周組織再生促進用歯科材料は、
常法に従って、非毒性、有効量のトロンビンまたはトロ
ンビンとペプチド性細胞増殖因子との組み合わせを、製
剤上許容される担体に担持させて得ることができる。担
体としては、例えば、モノフィラメント、膜状、網状、
フィルム状、繊維集合体の担体が挙げられ、その素材と
して、コラーゲン、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリ
グリコール酸、乳酸とグリコール酸の混合物からなるコ
ポリマー、合成ポリアミノ酸、ポリビニルアルコール、
ポリグラクチン、キチン、キトサンなどが挙げられる。
このうち、担体がフィルム状の場合、素材がポリ乳酸ポ
リマーであるものが好ましい。また、スポンジ状担体も
使用でき、この場合、ゼラチンスポンジ、コラーゲンス
ポンジなどが挙げられる。これら生分解性のモノフィラ
メント、フィルム、繊維集合体、スポンジなどの形状を
有する構造物に、トロンビンまたはペプチド性細胞増殖
因子とトロンビンを、例えば、固定化または含浸させて
担持させる場合には、構造物を湿潤しうる溶媒にトロン
ビンまたはペプチド性細胞増殖因子を共に溶解し、この
溶液で構造物を処理する。トロンビンまたはペプチド性
細胞増殖因子を共に固定化させて担持させる場合には、
構造物に加工する前の素材に結合または吸着させて保持
させた後、構造物に加工することも可能である。
【0013】かくして、本発明の歯周組織再生促進薬お
よび促進用歯科材料は、歯周外科処置あるいは根面滑沢
処置後の歯周ポケットに直接適用することにより使用で
きる。治療すべき症状、部位により適宜増減できるが、
トロンビン量にして1〜100単位、また、ペプチド性
細胞増殖因子量にして1回に1〜数10μgの用量によ
り所望の歯周組織再生効果が発揮される。また、既存の
GTR膜の両面または片面に塗布して歯周組織再生誘導
術に用いることができる。さらに、抜歯窩にシリンダー
タイプのインプラント(人工歯根)を臨床適用する場
合、施術部位の骨頂付近および顎骨の骨幅が不十分で適
応しない時が少なくない。骨造成術には従来、自家骨移
植法や人工代用骨移植法が用いられてきたが、前者は骨
採取が安易には行えず、後者は予後の確実性が低いとい
った問題がある。そこで、本発明の促進薬を単独で、ま
たはGTR膜に塗布し、インプラントの植立の前または
同時に抜歯窩およびインプラント周辺に適用することに
よって、骨量を増大させることが可能である。 さらに、
顎骨等の大きな欠損の整形にも、同様にこれらを適用で
きる。インプラント植立後には、周囲に骨吸収を伴った
炎症を生じることがある。その場合にも、本発明を歯周
組織再生誘導術に用い、インプラント周囲の歯槽骨の増
生を図ることができる。
【0014】
【実施例】以下に、実施例および試験例を挙げて本発明
をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定され
るものではない。 実施例1 成 分 量 トロンビン 100,000単位 キサンタンガム 1g 精 製 水 適量 全 量 100g 常法により、これらの成分を混合し、歯周組織再生促進
用のゲル剤を得た。
【0015】実施例2 成 分 量 トロンビン 100,000単位 カルボキシルメチルセルロース 1g 精 製 水 適量 全 量 100g 常法により、これらの成分を混合し、歯周組織再生促進
用のゲル剤を得た。
【0016】実施例3 成 分 量 血小板由来細胞増殖因子(PDGF-BB) 10mg トロンビン 10,000単位 キサンタンガム 1g 精 製 水 適量 全 量 100g 常法により、これらの成分を混合し、歯周組織再生促進
用のゲル剤を得た。
【0017】実施例4 成 分 量 血小板由来細胞増殖因子(PDGF-BB) 10mg トロンビン 10,000単位 カルボキシルメチルセルロース 1g 精 製 水 適量 全 量 100g 常法により、これらの成分を混合し、歯周組織再生促進
用のゲル剤を得た。
【0018】実施例5 成 分 量 形質転換細胞増殖因子(TGF-β1) 10mg トロンビン 10,000単位 キサンタンガム 0.5g 精 製 水 適量 全 量 100g 常法により、これらの成分を混合し、歯周組織再生促進
用のゲル剤を得た。
【0019】実施例6 成 分 量 血小板由来細胞増殖因子(PDGF-BB) 10mg トロンビン 10,000単位 アルギン酸ナトリウム 1g 精 製 水 適量 全 量 100g 常法により、これらの成分を混合したゲル剤を得、それ
をポリ乳酸膜(ガイドール社製)に被覆して、歯周組織
再生促進用の膜剤を得た。
【0020】実施例7 成 分 量 形質転換細胞増殖因子(TGF-β2) 10 mg トロンビン 10,000単位 カルボキシルメチルセルロース 1g 精 製 水 適量 全 量 100g 常法により、これらの成分を混合したゲル剤を得、それ
をポリ乳酸膜(ガイドール社製)に被覆して、歯周組織
再生促進用の膜剤を得た。
【0021】実施例8 成 分 量 血小板由来細胞増殖因子(PDGF-BB) 10mg トロンビン 10,000単位 ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)コポリマー 50g 炭酸プロピレン 適量 全 量 100g 常法により、これらの成分を混合したゲル剤を得、それ
をポリ乳酸膜(ガイドール社製)に被覆して、歯周組織
再生促進用の膜剤を得た。
【0022】試験例1 歯根膜由来線維芽細胞および骨芽細胞の増殖性に対する
作用 歯根膜由来線維芽細胞は、歯周組織において硬組織であ
るセメント質と歯槽骨との間で強固な線維性結合(歯根
膜)を形成することが知られている。歯周組織再生過程
においては、この歯根膜細胞が他の上皮組織や骨細胞よ
りいち早く根面に向かって運動、付着し増殖することが
必要である。このことから、本発明者らは、ヒト便宜的
抜去歯に残存する歯根膜より歯根膜由来線維芽細胞を初
代培養し、各種ペプチド性細胞増殖因子とトロンビンの
歯根膜由来線維芽細胞の増殖性に対する作用を、クリス
タルバイオレット染色法によって検討した。また、ラッ
ト頭蓋骨由来骨芽細胞についても初代培養し、歯根膜由
来線維芽細胞と同様に、クリスタルバイオレット染色法
を用いて増殖性を検討した。 方法 96穴の組織培養用プレートに各種細胞2,000個/
ウエル播種し、37℃で1日インキュベート後、各種ペ
プチド性細胞増殖因子およびトロンビンを1%ウシ胎児
血清を含むダルベッコ変法MEM(DMEM)培地にそ
れぞれ希釈し、それらの細胞増殖活性を測定した。ま
た、対照として培地のみと、ペプチド性細胞増殖因子と
トロンビンとを各々単独で添加した培地を用いた。各検
体について5日間培養後、10%ホルマリン溶液で細胞
を固定し、クリスタルバイオレットで染色、590nmに
おける吸光度から細胞数を計測した。対照(培地のみ)
の計数値を100%とした場合の、各種検体添加時の相
対的割合を図1および図2に示す。
【0023】結果 図1および図2に示すごとく、トロンビンを単独に培地
中に添加することで、歯根膜由来線維芽細胞および骨芽
細胞の細胞増殖活性が促進する。また、ペプチド性細胞
増殖因子であるPDGF-BBまたはTGF-β類の比較
的低濃度における細胞増殖活性が、トロンビンの添加に
より相乗的に高められた。したがって、トロンビンは単
独で歯根膜由来線維芽細胞および骨芽細胞の細胞増殖活
性を促進するが、ペプチド性細胞増殖因子の同時添加に
より、さらに促進することが示された。ここでのデータ
は、T検定によって有意(*P<0.01)であった。
以上の結果から、トロンビン単独またはトロンビンとペ
プチド性細胞増殖因子の組合わせは歯周組織再生の促進
に有効であり、かつ骨の再生促進においても有効である
ことが示された。
【0024】試験例2 本発明の製剤組成物の局所有用性 (1) イヌ歯肉剥離掻爬手術後の歯周組織再生過程に
対する作用 方法 イヌ歯肉剥離掻爬手術後の歯周組織再生過程に対する上
記実施例で得られた製剤組成物の各種の作用を病理学的
定量法により検討した。ブラッシング等によって健常な
歯周組織を確立した上下顎小臼歯部に、常法にしたがっ
て歯肉剥離掻爬手術を施した。この際、後の病理組織学
的定量化の基準点とするため、歯槽骨の削除を実施する
前後で、根面にノッチと呼ばれる基準点を付与した。検
体は処方例で示した実施例1、3および5で得られたゲ
ル剤を投与し、対照として右側上下顎には同様の処方で
細胞増殖因子を配合しないもの、トロンビンを配合しな
いもの、両方を配合しないものを投与した。手術後は歯
肉弁を復位し、縫合とパックによる保護を1週間施し
た。評価は、術後4週目に被検部位を採取し、常法によ
り組織標本を作成した後、顕微鏡下で接眼マイクロメー
ターを用いて各部位間の距離を測定し、以下の数1およ
び数2の式により、上皮のダウングロース率および線維
性付着率を計算して定量化した。
【0025】
【数1】
【0026】
【数2】
【0027】結果 結果を表1に示す。
【0028】
【表1】
【0029】表1に示すごとく、本発明の製剤組成物は
薬効剤無添加群に比ベ、上皮のダウングロースを抑制す
るとともに、線維性付着率に対して明らかに促進作用を
示した。トロンビンおよび細胞増殖因子単独において
も、薬効剤無添加群と比較して作用がみられたが、実施
例3および5の組み合わせ製剤組成物では、さらに相乗
的な促進作用が示された。
【0030】(2)サルの歯周組織再生誘導法における
組織再生過程への作用 方法 サルの歯周組織再生誘導法の組織再生過程に対する本発
明の製剤組成物および歯科材料の作用を病理組織学的定
量評価法により検討した。ブラッシング等により健常な
歯周組織を確立した上下顎小臼歯部に、常法に従って歯
肉剥離掻爬手術を施した。この際、後の病理組織学的定
量化の基準点とするため、歯槽骨の削除を実施する前後
で、根面にノッチと呼ばれる基準点を付与した。検体と
して、実施例1、3および5で得られたゲル剤をポリ乳
酸膜(ガイドール社製)の歯根面側に塗布した膜および
実施例6の膜剤を用い、被検部位に組織誘導再生法に準
じて適用した。対照として右側上下顎には同様の処方で
細胞増殖因子を配合しない膜、トロンビンを配合しない
膜、その両方を配合しない膜を適用した。手術後は歯肉
弁を復位し、縫合とパックによる保護を1週間施した。
評価は術後4週目に被検部位を採取し、常法により組織
標本を作成した後、顕微鏡下で接眼マイクロメーターを
用いて各部位間の距離を測定し、以下の数3の式により
新生セメント質形成率を計算して定量化した。
【0031】
【数3】
【0032】結果 結果を表2に示す。
【0033】
【表2】
【0034】表2に示すごとく、本発明の製剤組成物お
よび歯科材料は薬効剤無添加群に比ベ、新生セメント質
の形成を顕著に促進した。トロンビンおよび細胞増殖因
子単独においても薬効剤無添加群と比較して作用がみら
れたが、実施例3および5の組み合わせ処方の検体で
は、さらに相乗的な促進作用が示された。あらかじめ薬
剤を固定した膜剤(実施例6)についても上記と同様の
結果を得た。 また、いずれの処方においても被検部位に
骨性癒着および歯根吸収は発生しなかった。
【0035】(3)イヌの骨再生誘導法における骨形成
過程への作用 方法 イヌの骨再生誘導法の骨形成過程に対する本発明の製剤
組成物および歯科材料の作用を病理組織学的定量評価法
により検討した。ブラッシング等により健常な歯周組織
を確立した下顎小臼歯部を抜去し、その4ヶ月後、近遠
心幅10mm、頬舌幅4mm、深さ5mmの頬側裂開型骨欠損
を作成した。 検体として、実施例2、4および5で得ら
れたゲル剤をポリ乳酸膜(ガイドール社製)の歯根面側
に塗布した膜および実施例7の膜剤を用い、被検部位に
適用した。膜剤は、ミニスクリューを用いて骨面に固定
した。 対照として右側下顎には同様の処方で細胞増殖因
子を配合しない膜、トロンビンを配合しない膜、その両
方を配合しない膜を適用した。手術後は歯肉弁を復位
し、縫合とパックによる保護を1週間施した。術後8週
目に被検部位を採取し、常法により組織標本を作成した
後、画像解析装置を用いて骨形成量を測定した。
【0036】結果 結果を表3に示す。
【0037】
【表3】
【0038】表3に示すごとく、本発明の製剤組成物お
よび歯科材料は薬効剤無添加群に比ベ、新生骨の形成を
顕著に促進した。トロンビンおよび細胞増殖因子単独に
おいても、薬効剤無添加群と比較して作用がみられた
が、実施例4および5の組み合わせ処方の検体では、さ
らに相乗的な促進作用が示された。あらかじめ薬剤を固
定した膜剤(実施例7)についても上記と同様の結果を
得た。
【0039】
【発明の効果】以上記載したごとく、本発明によれば、
有効性、安定性、安全性、操作性にす優れた歯周組織再
生促進用の製剤組成物および歯科材料が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 トロンビン存在下でのPDGF−BBおよび
TGF−βの歯根膜由来線維芽細胞増殖促進効果を示す
グラフ。
【図2】 トロンビン存在下でのPDGF−BBおよび
TGF−βの骨芽細胞増殖促進効果を示すグラフ。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 歯周組織再生有効量のトロンビンを含む
    ことを特徴とする歯周組織再生促進薬。
  2. 【請求項2】 さらに、有効量のペプチド性細胞増殖因
    子を含む請求項1記載の歯周組織再生促進薬。
  3. 【請求項3】 ペプチド性細胞増殖因子が、血小板由来
    細胞増殖因子または形質転換細胞増殖因子である請求項
    2記載の歯周組織再生促進薬。
  4. 【請求項4】 歯周組織再生有効量のトロンビンを製剤
    上許容される担体に担持させてなることを特徴とする歯
    周組織再生促進用歯科材料。
  5. 【請求項5】 さらに、有効量のペプチド性細胞増殖因
    子を担持する請求項4記載の歯周組織再生促進用歯科材
    料。
  6. 【請求項6】 ペプチド性細胞増殖因子が、血小板由来
    細胞増殖因子または形質転換細胞増殖因子である請求項
    5記載の歯周組織再生促進用歯科材料。
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