JPH10132802A - 表面官能基検出方法 - Google Patents

表面官能基検出方法

Info

Publication number
JPH10132802A
JPH10132802A JP8291504A JP29150496A JPH10132802A JP H10132802 A JPH10132802 A JP H10132802A JP 8291504 A JP8291504 A JP 8291504A JP 29150496 A JP29150496 A JP 29150496A JP H10132802 A JPH10132802 A JP H10132802A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
reaction
group
functional group
detection method
compound
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP8291504A
Other languages
English (en)
Inventor
Masayuki Okamoto
昌幸 岡本
Riyouko Hachikawa
亮子 八川
Masanobu Wakasa
正信 若狭
Tatsuji Wakizaka
達司 脇阪
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kao Corp
Original Assignee
Kao Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kao Corp filed Critical Kao Corp
Priority to JP8291504A priority Critical patent/JPH10132802A/ja
Publication of JPH10132802A publication Critical patent/JPH10132802A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Abstract

(57)【要約】 【課題】各種の材料表面に存在する官能基を高選択的に
検出可能な測定方法の提供。 【解決手段】材料表面に存在しない元素を含む化合物を
材料表面の官能基と常温で気相において選択的に反応さ
せ、反応後の材料表面を元素分析する。元素はハロゲ
ン、特にフッ素又は塩素が好ましく、化合物としてはこ
れらの元素をC1〜C4までのアルキル鎖に含むものが好
ましい。分析手段はESCA、AES、XMA、SIM
Sなどから所要に応じて適宜選択され、反応と組み合わ
せられる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は材料表面に存在する
官能基の検出に関するものであり、より詳しくは、材料
表面に存在する官能基を特定元素を含む化合物と反応さ
せ、次いで元素分析を行うことにより、当該官能基の検
出を行うことに関する。
【0002】
【従来の技術】材料表面に存在する官能基を解析するこ
とは、種々の用途において有用である。例えば高分子材
料の表面に存在する官能基は、その材料の性能、例えば
吸着性、接着性、潤滑性、濡れ性、防曇作用その他の性
能発現に関与すると考えられるが、これを正確に分離検
出することができれば様々な知見が得られる。また例え
ば、特定の物理的或いは化学的表面処理を行った後に、
目的とする表面状態が得られたか否かを、官能基の解析
によって判定することもできる。こうした事例は、材料
が無機材料であるか有機材料であるか、或いは生体試料
であるかを問わず、枚挙に暇がない。
【0003】表面に存在する元素の分析が可能な手法は
多数知られている。これらは光、X線、電子、イオンな
どをプローブとして用い、表面から放射される二次イオ
ン、オージェ電子、光電子、特性X線などを検出してエ
ネルギー分析を行うものであり、XPS(X線励起光電
子分光)又はESCA、AES(オージェ電子分光)、
XMA(X線マイクロアナリシス)、SIMS(二次イ
オン質量分析)などがよく用いられる。これらは測定可
能な深さや感度、測定時間、分析領域などがそれぞれ異
なり、目的とする用途に応じて適宜選択して使用されて
いる。しかしながらこれらの分析手法によっても、官能
基が混在する複雑な系において正確な解析を行うのは困
難である。
【0004】特定の官能基を選択的に解析する方法とし
て、官能基を特定の化合物と反応させ、この反応に由来
する表面上の標識を分光分析により解析することが提案
されている。例えば中山らは各種官能基の修飾反応を提
案しており(Y. Nakayama etal., J. Polym. Sci., Pol
ym. Chem. Ed., 26, 559 (1988))、本出願人による特
開平6-27057号は、ドライプレーティングにより表面官
能基に金属を結合させ、結合に由来するマスフラグメン
トをSIMSにより検出する方法を開示している。また
杉浦らは高分子表面の官能基をEPMAに高感度な標識
元素で修飾し、分析することを提案しており(「高分子
材料中微量官能基の分布分析法:誘導体化−EPMA
法」第55回分析化学討論会講演要旨集195頁)、福本ら
は劣化した高分子中のC=C二重結合を液相で臭素化
し、EPMA分析することを提案している(「誘導体化
−EPMA法による高分子材料中C=C結合の分布分
析」第55回分析化学討論会講演要旨集196頁)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】材料表面の官能基を修
飾し、分光分析により解析するためには、幾つかの要求
項目を満足させなければならない。即ちまず修飾反応の
収率は高いものでなければならず、また修飾に用いられ
る化合物が特定の官能基のみと選択的に反応するもので
ある必要がある。従来提案されているものは、これらの
点について問題があるものが多い。さらに、修飾反応が
液相において行われる場合には、反応溶液による試料の
溶解・膨潤や、修飾試薬の残留といった問題が懸念され
る。これらの点から、気相において高収率・高選択的な
反応を確立することが望まれる。本発明はこうした課題
を解決することを目的の一つとしている。
【0006】また、従来の誘導体化−分光分析手法で
は、ピーク位置の測定に基づいて官能基の解析が可能と
されているが、複数の官能基が混在してピークが重なる
ような場合、官能基を分離することが困難なことも多
く、応用範囲が狭いという問題がある。こうした点から
は、ピークの重なりの問題なしに、複数の官能基が混在
する系においても容易に解析を行うことができるように
することが望ましい。本発明の他の目的は、こうした課
題の解決に向けられている。
【0007】さらに、官能基によって特徴付けられる相
が他の相と混在しているような材料、例えばポリマーブ
レンドや表面に特定の官能基を持つ剤が分布している材
料については、これをイメージング(マッピング)する
ことで、平面における分布状態や深さ方向の分析を行う
ことが期待される。従って本発明のさらに別の目的は、
高収率・高選択的な修飾反応との組み合わせにおいて、
元素によるイメージング技術を確立することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明により提供される
官能基の検出方法は、材料表面に存在する官能基を、材
料表面に存在しない元素を含む化合物と気相において選
択的に反応させ、反応後の材料表面を元素分析すること
からなる。この場合に材料としては、検出しようとする
官能基が存在しうる系であれば有機、無機を問わない。
また均一相であっても混合相であってもよく、例えば基
材中に特定の官能基を有する活性剤が存在するような系
や、表面が内部と異なる官能基を有する構造(例えば表
面のみが化学修飾、コーティング等により改質された構
造)であってもよい。より具体的な例としては、ポリマ
ーブレンド系、高分子処理表面(プラズマ処理、化学処
理等)、繊維、毛髪、皮膚、有機粉体等がある。検出可
能な官能基の具体例としては、水酸基、カルボキシル
基、カルボニル基、及びアミノ基などが挙げられる。な
お表面とは、純粋な物理的表面だけではなく、そこから
数十オングストローム、或いは数μm入った深さまでを
含みうる概念であるが、最終的には後述する分析手段の
感度との兼ね合いによって決定される。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明によれば、材料表面に存在
する官能基は、材料表面に存在しない元素を含む化合物
と気相において、好ましくは常温で反応される。気相反
応を用いることにより、前述したような試料(材料)の
溶解や膨潤、化合物の残存といった問題がなく、測定対
象となる材料をより広範囲のものとすることができる。
また常温(25℃)での反応とすることにより、測定をよ
り容易に行うことができるようになる。こうした反応を
行う化合物としては、炭素数1〜4程度のものが蒸気圧
の点から好ましいと考えられる。またこれに含まれる元
素としては、化合物中で反応に関与しない部位に導入可
能なものが有用であり、また検出感度の面からはできる
だけ多く含まれている方が好ましい。これらの点から特
に有用な元素はハロゲンであり、中でもフッ素又は塩素
がC1〜C4アルキル鎖に含まれているような化合物が好
ましい。こうした化合物の具体例としては、トリフルオ
ロ酢酸無水物、トリフルオロエチルヒドラジン、トリフ
ルオロエタノール、ペンタフルオロベンズアルデヒド、
ペンタフルオロフェニルヒドラジン、トリクロロ酢酸無
水物、及びヘプタフルオロブチリルクロライドなどがあ
る。
【0010】上記した化合物の中でも、反応収率や選択
性の面から、官能基がカルボキシル基の場合、化合物と
してトリフルオロエタノールであるのが好ましく、また
官能基がカルボニル基の場合は、トリフルオロエチルヒ
ドラジンが好ましい。なおカルボキシル基とトリフルオ
ロエタノールはエステル化反応を行うが、この場合にジ
−t−ブチルカルボジイミドを脱水触媒として用いるの
が好ましい。水酸基及びアミノ基の場合には、トリフル
オロ酢酸無水物が好ましく用いられる。こうした官能基
と化合物の組み合わせによって、材料の修飾反応を常
温、気相において高収率で高選択的に行うことが可能に
なる。
【0011】上に挙げた官能基が混在している系におい
ても、上記化合物を用いることによって選択的な反応を
得ることが可能であるが、水酸基とアミノ基が混在する
系においてはトリフルオロ酢酸無水物に対する反応性が
何れも高いため、両者の弁別は困難である。ペンタフル
オロベンズアルデヒドを用いるとアミノ基の方がやや選
択的に反応するが、収率その他の面からより適切な手法
が望まれるところである。本発明によれば、水酸基とア
ミノ基の混合系においては、トリフルオロ酢酸無水物で
これらの官能基を両方とも修飾した後に、さらにアンモ
ニアによる気相反応を行う。トリフルオロ酢酸無水物は
水酸基及びアミノ基を修飾して保護基となるが、気相に
おいて、即ちマイルドな条件においてアンモニアと反応
させることにより、水酸基のみを修飾から外すことがで
きることが判明したものである。なお水酸基としては、
アルコール性水酸基もフェノール性水酸基も同様に扱う
ことができる。
【0012】本発明によれば、反応後の官能基は元素分
析によって検出される。本発明により官能基と反応され
る化合物に含まれる元素は、当初の材料表面には存在し
ない種類のものであるから、適切な分光分析を行うこと
によってこの元素を、従ってこれを含む化合物と選択的
に反応した官能基を容易に検出することができる。分光
分析手段は、表面の組成を分析可能な手段であれば何で
も構わないが、一般的なものとしてX線光電子分光法
(ESCA)、2次イオン質量分析法(SIMS)、オ
ージェ電子分光法(AES)、X線マイクロアナリシス
法(XMA)などを挙げることができる。これらの手法
は、要求される感度や深さ方向の分解能に応じて選択す
ることができる。例えばESCAでは測定感度は元素濃
度で1原子%程度、AESで0.3原子%程度であるが、
SIMSではppm未満の測定も可能である。また用いる
プローブや検出法によって、測定深さはÅオーダーから
μmオーダーに変わる。
【0013】特に好ましい分析手段は、検出した元素の
イメージングを可能なものである。これは元素分析によ
り得た情報を例えばCRTなどの出力装置上にマッピン
グして視覚化するものであり、例えばESCAやSIM
Sで得た元素の存在比率情報を処理してマッピングする
ことにより分布を視覚表示するといった種々のイメージ
ング処理が考えられる。或いはまた電子顕微鏡とEDS
を組み合わせることによって、分布状態の画像マッピン
グを行うことができる。
【0014】
【実施例】
実施例1−水酸基の反応及び検出(1) 水酸基を有する材料としてポリビニルアルコールを用
い、本発明による反応及び分析を行った。まずポリビニ
ルアルコール(Aldrich社製、MW=89,000〜98,000、鹸
化度99%以上)を3wt%イオン交換水中に加熱溶解し、
ポリエチレンテレフタレートフィルム上にキャストし、
70℃で2時間乾燥して成膜した。得られたフィルムを90
0mlの反応容器に移し、500μlのトリフルオロ酢酸無水
物を加えて密封し、室温(25℃)で30分間放置し反応さ
せた。このようにして処理した試料についてESCAに
より元素分析を行った。ESCA測定はパーキンエルマ
ー社製PHI-5400を用い、X線源としてMg・Kα1.2線を1
5keV-20mA(300W)で使用した。反応前と反応後のESC
Aスペクトルを図1(a)(b)に示す。
【0015】反応後のスペクトルにはトリフルオロ酢酸
無水物に由来するピークが明瞭に示されており、また元
素濃度の計算から、反応収率はほぼ100%であることが
判明した。ESCAの感度は1原子%程度までである
が、より厳密に測定を行うことが必要な場合には、例え
ばSIMSのようなより高感度の測定手段を用いること
により、水酸基の検出を行うことが可能であると考えら
れる。
【0016】実施例2−水酸基の反応及び検出(2) 水酸基を有する材料として、アルコール性水酸基を持つ
ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)とフェノ
ール性水酸基を持つポリ(4−ビニルフェノール)の2
種類を用いた。これらの試料(前者はAldrich社製MW=3
00,000、後者はポリサイエンス社製、MW=22,000)はそ
れぞれメタノール及びエタノールを溶媒として3wt%溶
液とし、実施例1と同様にキャストし成膜した。得られ
たフィルムのそれぞれを実施例1と同様にしてトリフル
オロ酢酸無水物と反応させ、ESCA測定を行った。反
応前と反応後のESCAスペクトルを図2(a)(b)(ポリ
(2−ヒドロキシエチルメタクリレート))及び図3
(a)(b)(ポリ(4−ビニルフェノール))に示す。
【0017】図2及び図3の何れの場合も、反応後のス
ペクトルにはトリフルオロ酢酸無水物に由来するピーク
が明瞭に示されており、また元素濃度の計算から、反応
収率はこれらの場合にもほぼ100%であった。
【0018】実施例3−カルボキシル基の反応及び検出 カルボキシル基を有する材料としてポリアクリル酸を用
いた。まずポリアクリル酸(Aldrich社製、MW=250,00
0)をメタノール中に3wt%溶解し、実施例1と同様に
してキャストフィルムとした。得られたフィルムを900m
lの反応容器に移し、1mlのトリフルオロエタノール、
ピリジン100μl及びジ−t−ブチルカルボジイミド50μ
lを加えて密封し、室温(25℃)で4時間放置し反応さ
せた。このようにして処理した試料についてESCAに
より元素分析を行った。反応前と反応後のESCAスペ
クトルを図4(a)(b)に示す。この場合にも反応後のスペ
クトルにはトリフルオロエタノールに由来するピークが
明瞭に示されており、本発明によってカルボキシル基も
選択的に検出することができることがわかる。元素濃度
の計算から、反応収率はこの場合にもほぼ100%であっ
た。
【0019】実施例4−カルボニル基の反応及び検出
(1) カルボニル基を部分的に有する材料として、ポリビニル
メチルケトンを用いた。ポリビニルメチルケトン(Aldr
ich社製、MW=500,000)をアセトン中に3wt%溶解し、
実施例1と同様にしてキャストフィルムとした。得られ
たフィルムを900mlの反応容器に移し、1mlのトリフル
オロエチルヒドラジンを加えて密封し、室温(25℃)で
4時間放置し反応させた。このようにして処理した試料
についてESCAにより元素分析を行った。反応前と反
応後のESCAスペクトルを図5(a)(b)に示す。この場
合にも反応後のスペクトルにはトリフルオロエチルヒド
ラジンに由来するピークが明瞭に示されており、反応収
率は91%であった。
【0020】実施例5−カルボニル基の反応及び検出
(2) カルボニル基を部分的に有する材料として、実施例4と
同様にポリビニルメチルケトンを用いた。ポリビニルメ
チルケトン(Aldrich社製、MW=500,000)をアセトン中
に3wt%溶解し、実施例1と同様にしてキャストフィル
ムとした。得られたフィルムを900mlの反応容器に移
し、1gのペンタフルオロフェニルヒドラジンを加えて
密封し、室温(25℃)で2時間放置し反応させた。この
ようにして処理した試料についてESCAにより元素分
析を行った。反応前と反応後のESCAスペクトルを図
6(a)(b)に示す。この場合にも反応後のスペクトルには
ペンタフルオロフェニルヒドラジンに由来するピークが
明瞭に示されており、反応収率は25%であった。
【0021】実施例6−アミノ基の反応及び検出(1) アミノ基を部分的に有する材料として4,4'−ジアミノジ
フェニルエーテルを用いた。4,4'−ジアミノジフェニル
エーテル(和光純薬製)をアセトン中に3wt%溶解し、
アルミカップ上に分散させて試料を調製した。実施例1
と同様にしてトリフルオロ酢酸無水物と反応させ、ES
CA測定を行った。反応前と反応後のESCAスペクト
ルを図7(a)(b)に示す。この場合にも反応後のスペクト
ルにはトリフルオロ酢酸無水物に由来するピークが明瞭
に示されており、この化合物によってアミノ基を検出す
ることができることがわかる。また収率もほぼ100%で
あった。
【0022】実施例7−アミノ基の反応及び検出(2) 実施例1で明らかなように、トリフルオロ酢酸無水物は
水酸基に対してもほぼ100%の収率で反応し、水酸基と
アミノ基が混在する系においてはこの化合物のみを用い
たのではピークが重なるため、選択的に検出することが
できない。そこで実施例1及び実施例6において、トリ
フルオロ酢酸無水物と反応させた後に、さらにアンモニ
ア500μlと4時間気相反応させた。反応後のESCAス
ペクトルを図1(c)(実施例1の場合)及び図7(c)(実
施例6の場合)にそれぞれ示す。これらの図から明らか
なように、アンモニアとの反応によってポリビニルアル
コールのスペクトルはほぼ、トリフルオロ酢酸無水物と
の反応前(図1(a))に戻っているが、4,4'−ジアミノ
ジフェニルエーテルの場合には殆ど変化がない。
【0023】上記のことから、トリフルオロ酢酸無水物
とアンモニアを用いる二段階反応により、アミノ基のみ
を選択的に反応させ、検出することができることが判明
した。これは水酸基とアミノ基の求核性の相違によるも
のと考えられる。なおその後の検討により、アンモニア
との反応時間は5分程度でも十分であることが分かって
いる。さらに、アンモニアによる水酸基の逆反応は、ア
ルコール性水酸基だけでなく、フェノール性水酸基につ
いても有効であることが判明している。従ってこれらの
水酸基が混在する系においても、上記の二段階反応によ
って、水酸基とアミノ基を選択的に検出することが可能
である。
【0024】実施例8−アミノ基の反応及び検出(3) アミノ基を部分的に有する材料として実施例6と同様に
4,4'−ジアミノジフェニルエーテルを用いた。4,4'−ジ
アミノジフェニルエーテル(和光純薬製)をアセトン中
に3wt%溶解し、アルミカップ上に分散させて試料を調
製した。得られた試料を900mlの反応容器に移し、1ml
のペンタフルオロベンズアルデヒドを加えて密封し、室
温(25℃)で2時間放置し反応させた。このようにして
処理した試料についてESCAにより元素分析を行っ
た。反応前と反応後のESCAスペクトルを図8(a)(b)
に示す。この場合にも反応後のスペクトルにはペンタフ
ルオロベンズアルデヒドに由来するピークが明瞭に示さ
れており、反応収率は56%であった。
【0025】実施例9−ポリマーブレンドのイメージン
グ測定 ポリビニルアルコール樹脂とポリメチルメタクリレート
樹脂(50/50(wt%))を200℃でロール混練し、急冷する
ことによりポリマーブレンドサンプルを作成した。サン
プルをポリエステル樹脂に包埋し、ウルトラミクロトー
ムによって断面を作成した。実施例1と同様にしてこれ
をトリフルオロ酢酸無水物と反応させた後、ウルトラミ
クロトームによって表層を数μmカットし、Pt-Pd蒸着を
行ってから、FE−SEM(電界放射型走査電子顕微
鏡:日立製S-4000)/EDS(エネルギー分散型X線分
析装置:HORIBA社製EMAX-3770)を用いて表面のイメー
ジング測定を行った。加速電圧は15keVとした。
【0026】図9に、FE−SEM/EDSによるマッ
ピング画像を示す。そこに示されているように、ポリマ
ーブレンドサンプル中における相分離がマッピングによ
り視覚化されて観察可能である。即ちポリビニルアルコ
ールの水酸基はトリフルオロ酢酸無水物と反応してフッ
素が導入されており、このフッ素強度の高い相が数μm
のオーダーで海島状に分布している。このような手法を
用いることにより、官能基(官能基を持つ材料)の分布
状態をイメージングにより解析可能である。
【0027】なお、このようにしてトリフルオロ酢酸無
水物と反応させることは、TEM(透過型電子顕微鏡)
用の試料作成の場合などに、疎水化を行うためにも有用
である。例えばTEMの場合、試料は切片を水に浮かべ
て採取しているが、水溶性試料の場合には切片が水に溶
解してしまうという問題がある。そこで水酸基やカルボ
キシル基を有する水溶性試料の場合、先にトリフルオロ
酢酸無水物と反応させて疎水化し、次いで切片を作成す
るとこうした問題が解決できる。実際に本発明者らは実
施例9の例において、トリフルオロ酢酸無水物で修飾し
た後にTEM試料を作成したが、この前処理は有効であ
り、染色後のTEM観察により、上記のポリマーブレン
ドサンプル中のポリマーの分布状態が、マッピングによ
る結果と対応するものであることが確認された。この疎
水化は、修飾によるエステル化、及びトリフルオロ基の
導入などに起因するものと考えられる。
【0028】
【発明の効果】以上述べたところから理解されるよう
に、本発明によれば、材料表面の特定の官能基を、その
材料表面に存在しない元素を含む化合物と常温で気相に
おいて選択的に反応させた後に元素分析することによっ
て、高度に選択的且つ高感度で、しかもイメージング
(マッピング)可能に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ポリビニルアルコールについての(a)トリフル
オロ酢酸無水物との反応前、(b)反応後、及び(c)さらに
アンモニアと反応させた後のESCAスペクトルであ
る。
【図2】ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)
についての(a)トリフルオロ酢酸無水物との反応前、及
び(b)反応後のESCAスペクトルである。
【図3】ポリ(4−ビニルフェノール)についての(a)
トリフルオロ酢酸無水物との反応前、及び(b)反応後の
ESCAスペクトルである。
【図4】ポリアクリル酸についての(a)トリフルオロエ
タノールとの反応前、及び(b)反応後のESCAスペク
トルである。
【図5】ポリビニルメチルケトンについての(a)トリフ
ルオロエチルヒドラジンとの反応前、及び(b)反応後の
ESCAスペクトルである。
【図6】4,4'−ジアミノジフェニルエーテルについての
(a)トリフルオロ酢酸無水物との反応前、(b)反応後、及
び(c)さらにアンモニアと反応させた後のESCAスペ
クトルである。
【図7】ポリビニルアルコール樹脂とポリメチルメタク
リレート樹脂のポリマーブレンドについての、トリフル
オロ酢酸無水物と反応させた後のFE−SEM/EDS
によるマッピング画像である。
【図8】ポリビニルメチルケトンについての(a)ペンタ
フルオロフェニルヒドラジンとの反応前、及び(b)反応
後のESCAスペクトルである。
【図9】4,4'−ジアミノジフェニルエーテルについての
(a)ペンタフルオロベンズアルデヒドとの反応前、及び
(b)反応後のESCAスペクトルである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 脇阪 達司 和歌山県和歌山市湊1334 花王株式会社研 究所内

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 材料表面に存在する官能基の検出方法で
    あって、前記材料表面に存在しない元素を含む化合物を
    前記官能基と気相において選択的に反応させ、反応後の
    材料表面を元素分析することを特徴とする検出方法。
  2. 【請求項2】 前記官能基が水酸基、カルボキシル基、
    カルボニル基、及びアミノ基の少なくとも1つである、
    請求項1の検出方法。
  3. 【請求項3】 前記元素がハロゲン元素である、請求項
    1又は2の検出方法。
  4. 【請求項4】 前記化合物がC1〜C4までのアルキル鎖
    に前記元素としてF又はClを含み、反応が常温におい
    て行われる、請求項1から3の何れか1の検出方法。
  5. 【請求項5】 前記化合物が、トリフルオロ酢酸無水
    物、トリフルオロエチルヒドラジン、トリフルオロエタ
    ノール、ペンタフルオロベンズアルデヒド、ペンタフル
    オロフェニルヒドラジン、トリクロロ酢酸無水物、及び
    ヘプタフルオロブチリルクロライドからなる群より選択
    される、請求項1から4の何れか1の検出方法。
  6. 【請求項6】 前記官能基がカルボキシル基であり、前
    記化合物がトリフルオロエタノールである、請求項2の
    検出方法。
  7. 【請求項7】 前記官能基がカルボニル基であり、前記
    化合物がトリフルオロエチルヒドラジンである、請求項
    2の検出方法。
  8. 【請求項8】 前記官能基が水酸基又はアミノ基であ
    り、前記化合物がトリフルオロ酢酸無水物である、請求
    項2の検出方法。
  9. 【請求項9】 前記官能基が水酸基の混在系におけるア
    ミノ基であり、前記反応後にさらにアンモニアによる気
    相反応を行う、請求項8の検出方法。
  10. 【請求項10】 前記元素分析が元素のイメージング測
    定を可能な手法により行われる、請求項1から9の何れ
    か1の検出方法。
  11. 【請求項11】 前記元素分析がX線光電子分光法、2
    次イオン質量分析法、オージェ電子分光法、又はX線マ
    イクロアナリシス法により行われる、請求項1から9の
    何れか1の検出方法。
JP8291504A 1996-11-01 1996-11-01 表面官能基検出方法 Pending JPH10132802A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP8291504A JPH10132802A (ja) 1996-11-01 1996-11-01 表面官能基検出方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP8291504A JPH10132802A (ja) 1996-11-01 1996-11-01 表面官能基検出方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH10132802A true JPH10132802A (ja) 1998-05-22

Family

ID=17769748

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP8291504A Pending JPH10132802A (ja) 1996-11-01 1996-11-01 表面官能基検出方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH10132802A (ja)

Cited By (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2003279508A (ja) * 2002-03-25 2003-10-02 Matsushita Electric Ind Co Ltd 有機材料の分散状態を評価する方法
WO2004003532A1 (ja) * 2002-06-28 2004-01-08 Canon Kabushiki Kaisha 飛行時間型二次イオン質量分析法を用いたプローブ担体の分析方法
JP2005531648A (ja) * 2002-04-11 2005-10-20 カルボマー インク 生体適合性物質およびプローブ類
JP2006017705A (ja) * 2004-06-03 2006-01-19 Kao Corp 揮発性有機化合物の検出方法
WO2007145232A1 (ja) * 2006-06-13 2007-12-21 Kyoto University 二次イオン質量分析方法及びイメージング方法
JP2008224563A (ja) * 2007-03-15 2008-09-25 Mitsubishi Electric Corp 油中カルボニル化合物の分析方法
JP2011069725A (ja) * 2009-09-25 2011-04-07 Hiroshima Univ 官能基の測定方法
CN111141773A (zh) * 2019-12-31 2020-05-12 湖北亿纬动力有限公司 一种负极片粘结剂分布检测方法及染色装置
JP2021508039A (ja) * 2018-06-21 2021-02-25 エルジー・ケム・リミテッド 分離膜活性層の製造前に分離膜活性層を構成するアミン化合物を定量する方法、分離膜活性層中のポリアミド又は未反応のアミン化合物を定量する方法、及び分離膜活性層の製造条件の設定基準又は製造条件を設定する方法

Cited By (12)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2003279508A (ja) * 2002-03-25 2003-10-02 Matsushita Electric Ind Co Ltd 有機材料の分散状態を評価する方法
JP2005531648A (ja) * 2002-04-11 2005-10-20 カルボマー インク 生体適合性物質およびプローブ類
WO2004003532A1 (ja) * 2002-06-28 2004-01-08 Canon Kabushiki Kaisha 飛行時間型二次イオン質量分析法を用いたプローブ担体の分析方法
JP2006017705A (ja) * 2004-06-03 2006-01-19 Kao Corp 揮発性有機化合物の検出方法
JP4527603B2 (ja) * 2004-06-03 2010-08-18 花王株式会社 揮発性有機化合物の検出方法
WO2007145232A1 (ja) * 2006-06-13 2007-12-21 Kyoto University 二次イオン質量分析方法及びイメージング方法
US7960691B2 (en) 2006-06-13 2011-06-14 Kyoto University Second ion mass spectrometry method and imaging method
JP5120955B2 (ja) * 2006-06-13 2013-01-16 国立大学法人京都大学 二次イオン質量分析方法及びイメージング方法
JP2008224563A (ja) * 2007-03-15 2008-09-25 Mitsubishi Electric Corp 油中カルボニル化合物の分析方法
JP2011069725A (ja) * 2009-09-25 2011-04-07 Hiroshima Univ 官能基の測定方法
JP2021508039A (ja) * 2018-06-21 2021-02-25 エルジー・ケム・リミテッド 分離膜活性層の製造前に分離膜活性層を構成するアミン化合物を定量する方法、分離膜活性層中のポリアミド又は未反応のアミン化合物を定量する方法、及び分離膜活性層の製造条件の設定基準又は製造条件を設定する方法
CN111141773A (zh) * 2019-12-31 2020-05-12 湖北亿纬动力有限公司 一种负极片粘结剂分布检测方法及染色装置

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Ivanov et al. Determination of functional groups on polymer surfaces using fluorescencelabelling
JPH10132802A (ja) 表面官能基検出方法
Caprioli et al. High sensitivity mass spectrometric determination of peptides: direct analysis of aqueous solutions
Lanauze et al. Ink adhesion on corona‐treated polyethylene studied by chemical derivatization of surface functional groups
Sakurai et al. Digestion of plastic materials for the determination of toxic metals with a microwave oven for household use
Hinder et al. Migration and segregation phenomena of a silicone additive in a multilayer organic coating
Yoshihara et al. Interlaboratory study on the degradation of poly (vinyl chloride), nitrocellulose and poly (tetrafluoroethylene) by x‐rays in XPS
Mannion et al. Alpha spectroscopy substrates based on thin polymer films
Chiarcos et al. Quantification of molecular weight discrimination in grafting to reactions from ultrathin polymer films by matrix-assisted laser desorption/ionization time-of-flight mass spectrometry
Gardella et al. Static secondary ion mass spectroscopy for study of surface hydrolysis of poly (tert-butyl methacrylate)
Hobbs et al. The use of chemical contrast in the SEM analysis of polymer blends
von Holtum et al. Accessing the Primary Solid–Electrolyte Interphase on Lithium Metal: A Method for Low‐Concentration Compound Analysis
Kałȩdkowski et al. Synthesis of phenol–formaldehyde resole resins in the presence of tetraalkylammonium hydroxides as catalysts
Schmitz et al. Investigation of the “Surface” and “Interphase” composition of adhesion promoter/thermoplastic olefin systems: the effect of adhesion promoter bake temperature
Tao et al. Inductively coupled plasma atomic emission spectrometric determination of beryllium in aluminium-based alloys and rock samples by introducing beryllium into the plasma as ethylberyllium species
Al-Bayati Estimation of some organophosphorus pesticides using carbon paste electrode coupled with molecularly imprinted polymers
Ninomiya et al. Quantitative analysis of arsenic element in a trace of water using total reflection X-ray fluorescence spectrometry
Saraswati et al. Determination of mercury in zinc ore concentrate reference materials using flow injection and cold-vapor atomic absorption spectrometry
Zheng et al. Determination of total phosphorus in soil and sludge by an effective headspace gas chromatographic method
Morrison et al. Non-contact detection of thiodiglycol vapors and associated degradation products using atmospheric flow tube mass spectrometry
Gardella Jr Multitechnique spectroscopic analysis of polymer surfaces
Joshi Auger electron spectroscopy
Ohashi et al. Kinetics of back extraction of nickel dithizonate
Zahran et al. Correlating the potentiometric selectivity of cyclosporin-based electrodes with binding patterns obtained from electrospray ionization-mass spectrometry
Hill et al. Post-fracture analyses of polyethylene—metal interfaces